JP6539431B2 - シート状積層体およびシート状積層体の製造方法 - Google Patents
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特に、高分子薄膜を剥離シートから剥離する際の剥離性に優れたシート状積層体およびその製造方法に関する。
かかる高分子薄膜は、生体吸収性、生体分解性および組織修復性等を有することから、生体組織への適用性に優れている。
したがって、高分子薄膜は、このような諸特性を有することから、健常皮膚、皮膚創傷面、臓器創傷面および角膜等の生体組織の被覆材等として検討されている。
(a)基体の液相との界面における任意形状の領域に多官能性分子を吸着させ、
(b)吸着した多官能性分子を重合および/または架橋して高分子の薄膜を形成させ、
(c)形成された薄膜を基体から剥離する。
より具体的には、例えば、以下の工程により得られる薄膜状構造体が開示されている。
(a)基体の液相との界面における任意形状の領域に多官能性分子を吸着させ、
(b)吸着させた多官能性分子を重合および/または架橋して高分子の薄膜を形成させ、
(c)形成させた薄膜のA面に機能性物質を結合させた後、さらにその上に可溶性支持膜を形成させ、
(d)薄膜および可溶性支持膜を基体から剥離させ、
(e)薄膜のB面に、A面に結合させた機能性物質と同一または別の機能性物質を結合させた後、可溶性支持膜を溶剤にて溶解させる。
また、得られた高分子薄膜を基体等から剥離する際の剥離性が不安定であるため、剥離の際に高分子薄膜が破れやすくなる場合があるという問題が見られた。
しかしながら、特許文献2に記載の高分子薄膜は、SiO2基板上にスピンコートにより形成された場合であっても、結局、枚葉での製造となるため、生産効率が不十分であり、大量生産への移行が困難であるという問題が見られた。
また、得られた高分子薄膜をSiO2基板から剥離する際の剥離性が不安定であるため、剥離の際に高分子薄膜が破れやすくなる場合があるという問題が見られた。
すなわち、本発明の目的は、高分子薄膜を剥離シートから剥離する際の剥離性に優れたシート状積層体およびその製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明のシート状積層体であれば、剥離シートの高分子薄膜との接触面における表面自由エネルギーを40mJ/m2以下の値としていることから、高分子薄膜を剥離シートから剥離する際に、優れた剥離性を得ることができる。
また、算術平均粗さRaを10nm以下の値としていることから、表面自由エネルギーを40mJ/m2以下の値としているにもかかわらず、剥離シート上に高分子薄膜形成用溶液を塗布する際に、優れた塗工性を得ることができ、膜厚5〜1000nmの均一な高分子薄膜を形成することができる。
これにより、高分子薄膜の強度を均一にすることができることから、高分子薄膜を剥離シートから剥離する際の剥離性をさらに向上させることができる。
このように構成することにより、剥離シート上に高分子薄膜形成用溶液を塗布する際に、より優れた塗工性を得ることができ、ひいては、高分子薄膜を剥離シートから剥離する際の剥離性をさらに向上させることができる。
このように構成することにより、基材上に剥離処理層を有する構成の剥離シートと比較して、高分子薄膜を剥離シートから剥離する際に、高分子薄膜に対して剥離シート由来の成分が移行することを効果的に抑制することができる。
このように構成することにより、表面自由エネルギーを40mJ/m2以下の値に調整することが容易になり、また、フレキシブル性、耐熱性および化学的安定性に優れ、かつ、所定の表面特性を有する剥離シートを安価に得ることができる。
このように構成することにより、高分子薄膜の使用態様に応じて、シート状積層体を所定の平面形状となるように容易に裁断することができる。
このように構成することにより、被着体由来の水分によって高分子薄膜が溶解することを効果的に防止することができる。
このように構成することにより、より均一な膜厚を有する高分子薄膜を、より安定的に得ることができる。
このように構成することにより、所定の機能を有する水溶性機能性膜として、高分子薄膜の適用部において臓器創傷面や角膜等の生体組織、表皮などへの密着性を向上させる等の機能を付与することができるほか、高分子薄膜を支持する水溶性高分子支持膜として、高分子薄膜を積層させた状態で、ピンセット等により剥離シートから剥離し、適用対象物にそのまま適用することができる。
(a)剥離シートとして、高分子薄膜との接触面における表面自由エネルギーを40mJ/m2以下の値とし、算術平均粗さRaを10nm以下の値とする剥離シートを準備する工程
(b)剥離シート上に、高分子薄膜形成用溶液を塗布し、膜厚が5〜1000nmの範囲内の値である高分子薄膜を形成する工程
すなわち、本発明のシート状積層体の製造方法であれば、剥離シートが所定の表面特性を有することから、高分子薄膜を剥離シートから剥離する際の剥離性に優れたシート状積層体を得ることができる。
このように実施することにより、シート上積層体をより効率よく大量生産することができる。
このように実施することにより、所定の膜厚を有する高分子薄膜を、より効率的に形成することができる。
本発明の第1の実施形態は、図1(a)に示すように、剥離シート2の上に、高分子薄膜4を積層してなるシート状積層体10であって、高分子薄膜4の膜厚を5〜1000nmの範囲内の値とするとともに、剥離シート2の高分子薄膜4との接触面における表面自由エネルギーを40mJ/m2以下の値とし、算術平均粗さRaを10nm以下の値とすることを特徴とするシート状積層体10である。
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
(1)表面特性
(1)−1 表面自由エネルギー
本発明における剥離シートは、高分子薄膜との接触面における表面自由エネルギーを40mJ/m2以下の値とすることを特徴とする。
この理由は、高分子薄膜との接触面における表面自由エネルギーが40mJ/m2を超えた値となると、高分子薄膜と剥離シートとの間における相互作用が過度に強くなって、剥離シートから剥離する際に高分子薄膜が破れやすくなる場合があるためである。一方、高分子薄膜との接触面における表面自由エネルギーが過度に小さな値となると、後述する算術平均粗さRaを10nm以下の値とした場合であっても、剥離シート上に高分子薄膜形成用溶液を塗布する際に、ハジキが多くなって優れた塗工性を得ることが困難になる場合がある。その結果、高分子薄膜の膜厚が不均一になり、ひいては剥離シートから剥離する際に高分子薄膜が破れやすくなる場合がある。
したがって、剥離シートの高分子薄膜との接触面における表面自由エネルギーを20〜37mJ/m2の範囲内の値とすることがより好ましく、23〜34mJ/m2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
すなわち、図2には、横軸に剥離シートの高分子薄膜との接触面における表面自由エネルギー(mJ/m2)を採り、縦軸に高分子薄膜を剥離シートから剥離する際の剥離性(相対値)を採った特性曲線が示してある。
かかる特性曲線は、剥離シートの高分子薄膜との接触面における算術平均粗さRaを10nm以下の値とした場合の特性曲線となっている。
なお、高分子薄膜の組成や剥離シートの種類、並びに、表面自由エネルギーの測定方法等については、実施例において記載する。
すなわち、シート状積層体を10mm×10mmのサイズにカットした後、高分子薄膜の端部をピンセットでつまんで剥離シートから剥離する際の剥離性を、下記基準に沿って相対値化した。
5:剥離シートから剥離することができた高分子薄膜の面積が、10mm×10mmに対して80%以上の値である
2:剥離シートから剥離することができた高分子薄膜の面積が、10mm×10mmに対して60〜80%未満である
0:剥離シートから剥離することができた高分子薄膜の面積が、10mm×10mmに対して60%未満の値である
より具体的には、剥離シートの表面自由エネルギーが、少なくとも20mJ/m2付近では、高分子薄膜の剥離性の相対値が最大値である5前後の値をとっており、そのまま表面自由エネルギーが40mJ/m2以下の範囲において、安定的に高い値を維持している。
そして、表面自由エネルギーが40mJ/m2を超えると、剥離性の相対値が急激に減少し、表面自由エネルギーが45mJ/m2の時点で最低値の0にまで落ち込んでしまい、実使用に耐え得なくなることが理解される。
以上より、図2の特性曲線からは、剥離シートの算術平均粗さRaが10nm以下の値であることを前提とした場合、優れた剥離性を得るためには、剥離シートの表面自由エネルギーを40mJ/cm2以下の値とする必要があることが理解される。
但し、剥離シートの表面自由エネルギーが過度に小さな値となると、ハジキが多くなって塗工性が低下し、それに起因して剥離性も低下する場合があることから、剥離シートの表面自由エネルギーを20mJ/cm2以上の値とすることが好ましい。
すなわち、図3には、横軸に剥離シートの高分子薄膜との接触面における表面自由エネルギー(mJ/m2)を採り、縦軸に剥離シート上に高分子薄膜形成用溶液を塗布する際の塗工性(相対値)を採った特性曲線が示してある。
かかる特性曲線は、剥離シートの高分子薄膜との接触面における算術平均粗さRaを10nm以下の値とした場合の特性曲線となっている。
なお、高分子薄膜の組成や剥離シートの種類、並びに、表面自由エネルギーの測定方法等については、実施例において記載する。
すなわち、剥離シートの上面に対し、高分子薄膜形成用溶液を塗布し、膜厚が約6μmの塗膜を形成した後、得られた塗膜におけるハジキによる白濁を目視で観察し、下記基準に沿って相対値化した。
5:高分子薄膜形成用溶液の塗膜が、塗布後1分後であっても白濁しない
2:高分子薄膜形成用溶液の塗膜が、塗布後1分後に白濁した
0:高分子薄膜形成用溶液の塗膜が、塗布後30秒後に白濁した
より具体的には、剥離シートの表面自由エネルギーが、少なくとも20mJ/m2付近では、高分子薄膜形成用溶液の塗工性の相対値が最大値である5前後の値をとっており、剥離シートの表面エネルギーがさらに増加しても、そのまま安定的に高い値が維持される。
以上より、図3の特性曲線からは、剥離シートの算術平均粗さRaが10nm以下の値であることを前提とした場合、基本的には剥離シートの表面自由エネルギーによらず、優れた塗工性が得られることが理解される。
但し、剥離シートの表面自由エネルギーが過度に小さな値となると、ハジキが多くなって塗工性が低下する場合があることから、剥離シートの表面自由エネルギーを20mJ/m2以上の値とすることが好ましい。
また、本発明における剥離シートは、高分子薄膜との接触面における算術平均粗さRa(JIS B0601:2001に準拠して測定)を10nm以下の値とすることを特徴とする。
この理由は、高分子薄膜との接触面における算術平均粗さRaが10nm未満の値となると、剥離シート上に高分子薄膜形成用溶液を塗布する際に、剥離シート表面の凹凸に起因して、優れた塗工性を得ることが困難になる場合があるためである。その結果、高分子薄膜の膜厚が不均一になり、ひいては剥離シートから剥離する際に高分子薄膜が破れやすくなる場合があるためである。一方、高分子薄膜との接触面における算術平均粗さRaが過度に小さな値となると、材料選択の幅が過度に制限される場合がある。
したがって、剥離シートの高分子薄膜との接触面における算術平均粗さRaを0.001〜5nmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.01〜1nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、算術平均粗さRaの測定方法については、実施例において記載する。
すなわち、図4には、横軸に剥離シートの高分子薄膜との接触面における算術平均粗さRa(nm)を採り、縦軸に高分子薄膜を剥離シートから剥離する際の剥離性(相対値)を採った特性曲線が示してある。
かかる特性曲線は、剥離シートの高分子薄膜との接触面における表面自由エネルギーを40mJ/m2以下の値とした場合の特性曲線となっている。
なお、高分子薄膜の組成や剥離シートの種類、並びに、算術平均粗さRaの測定方法等については、実施例において記載する。
また、剥離性の相対値は、図2の場合と同様にして得た値である。
より具体的には、剥離シートの算術平均粗さRaが10nm以下の範囲では、剥離性の相対値を実使用に耐え得る2を超えた値に維持することができるものの、剥離シートの算術平均粗さRaが10nmを超えた範囲では、剥離性の相対値を2を超えた値に維持することが困難になって、安定的な実使用に耐え得なくなることが理解される。
以上より、図4の特性曲線からは、剥離シートの表面自由エネルギーが40mJ/m2以下の値であることを前提とした場合、優れた剥離性を得るためには、剥離シートの算術平均粗さRaを10nm以下の値とする必要があることが理解される。
(2)−1 種類
本発明における剥離シートは、単層の剥離シートであることが好ましい。
すなわち、剥離処理層および基材からなる積層タイプの剥離シートではなく、基材のみからなる単層タイプの剥離シートであることが好ましい。
この理由は、単層タイプの剥離シートであれば、積層タイプの剥離シートと比較して、高分子薄膜を剥離シートから剥離する際に、高分子薄膜に対して剥離シート由来の成分が移行することを効果的に抑制することができるためである。
したがって、剥離シートから剥離した高分子薄膜を生体組織に対して適用する場合であっても、剥離シート由来の成分による被毒の発生を効果的に防止することができる。
より具体的には、例えば、ポリオレフィン系フィルムや、脂環式ポリオレフィン系フィルムや、ポリエステル系フィルムであることが好ましい。
この理由は、これらのフィルム基材であれば、表面自由エネルギーを40mJ/m2以下の値に調整することが容易であり、また、フレキシブル性、耐熱性および化学的安定性に優れ、かつ、所定の表面特性を有する剥離シートを安価に得ることができるためである。
上述したポリオレフィン系フィルムとしては、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
脂環式ポリオレフィン系フィルムとしては、1環の脂環式オレフィン(特にシクロペンテン、シクロヘキセン)、2環の脂環式オレフィン(特にノルボルネン)および3環の脂環式オレフィン(特にジシクロペンタジエン)等が挙げられる。
また、上述したポリエステル系フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
また、剥離シートの膜厚を10〜200μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、剥離シートの膜厚をかかる範囲内の値とすることにより、高分子薄膜の使用態様に応じて、シート状積層体を所定平面形状となるように容易に裁断することができるためである。
すなわち、剥離シートの膜厚が10μm未満の値となると、シート状積層体の膜厚が過度に低下して、剥離シートから高分子薄膜を剥離することが困難になる場合があるためである。一方、剥離シートの膜厚が200μmを超えた値となると、シート状積層体の裁断性が過度に低下したり、フレキシブル性が過度に低下してハンドリング性が過度に低下したりする場合があるためである。
したがって、剥離シートの膜厚を15〜180μmの範囲内の値とすることがより好ましく、20〜150μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、所定の表面特性をより安定的に得る観点から、基材における高分子薄膜との接触面側に、剥離処理層を設けることも好ましい。
但し、上述したように、剥離処理層を設けた積層タイプの剥離シートは、基材のみからなる単層タイプの剥離シートと比較して、高分子薄膜を剥離シートから剥離する際に、高分子薄膜に対して剥離シート由来の成分が移行しやすくなる点に留意すべきである。
また、剥離処理層の種類としては、アルキド系剥離処理層、シリコーン系剥離処理層とすることが好ましい。
この理由は、これらの材料からなる剥離処理層であれば、表面自由エネルギーの調整が比較的容易だからである。
また、剥離処理層の膜厚を0.001〜10μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、剥離処理層の膜厚が0.001μm未満の値となると、剥離性能が発揮されず、剥離不良が発生する場合があるためである。一方、剥離処理層の膜厚が10μmを超えた値となると、剥離処理層の硬化が不足して、剥離時に凝集破壊が生じ、高分子薄膜に対して成分が移行する場合があるためである。
したがって、剥離処理層の膜厚を0.005〜5μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.01〜3μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、基材上に剥離処理層を設けた場合であっても、剥離シートの総膜厚は、10〜200μmの範囲内の値とすることが好ましく、14〜180μmの範囲内の値とすることがより好ましく、20〜150μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、剥離シートに対し、着色剤を含有させ、着色することも好ましい。
この理由は、剥離シートを着色することにより、剥離シートから高分子薄膜を剥離する際に、その剥離境界線を視認しやすくして、より容易に剥離することができるためである。
また、染料としては、例えば、アゾ系、キノリン系、スチルベン系、チアゾール系、インジゴイド系、アントラキノン系、オキサジン系等が挙げられる。
なお、着色剤は、粉体をそのまま用いても構わないし、あらかじめ着色ペースト、着色ペレット等に加工してから用いても構わない。
(1)材料物質
本発明における高分子薄膜は、非水溶性高分子を含むことが好ましい。
この理由は、本発明における高分子薄膜の主な適用対象物は、臓器創傷面や角膜等の生体組織、表皮などであり、基本的に生体由来の粘液、汗等をその表面に有していることから、かかる粘液等に含まれる水分によって高分子薄膜が溶解することを防ぐためである。
したがって、本発明における高分子薄膜の材料物質は、非水溶性の高分子薄膜を形成できるものであれば、特に限定されるものではなく、従来公知の材料物質を用いることができるが、生体適合性の材料物質を用いることがより好ましい。
また、本発明において高分子薄膜を非水溶性とするにあたり、必ずしもその材料物質が非水溶性である必要はなく、その材料物質を加熱乾燥や架橋反応、重合等することにより、最終的に非水溶性の高分子薄膜が得られるものであればよい。
この理由は、これらの材料物質を含むことにより、より均一な膜厚を有する高分子薄膜を、より安定的に得ることができるためである。
また、L−ラクチド、D−ラクチド、meso−ラクチド等の乳酸の環状二量体であるラクチドの重合体を用いてもよい。
上述したその他の単量体成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含む化合物類またはその誘導体;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を有する化合物類またはその誘導体が挙げられる。
また、乳酸共重合体を構成する乳酸とその他の単量体成分とを共重合する際の重量比は乳酸/その他の単量体成分=50/50〜99/1であることが好ましい。
上述したその他の単量体成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含む化合物類またはその誘導体;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を有する化合物類またはその誘導体が挙げられる。また、上述した乳酸またはラクチドをその他の単量体成分として用いてもよい。
また、ラクトン共重合体を構成するラクトンとその他の単量体成分とを共重合する際の重量比はラクトン/その他の単量体成分=50/50〜99/1であることが好ましい。
かかるポリカチオンとしては、ポリリシン、ポリグルタミン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン等が挙げられ、ポリアニオンとしては、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸等を挙げることができる。
この理由は、材料物質の重量平均分子量をかかる範囲内の値とすることにより、より均一な膜厚を有する高分子薄膜を、さらに安定的に得ることができるばかりか、高分子薄膜の強度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、材料物質の重量平均分子量が10,000未満の値となると、高分子薄膜の強度が不十分となる場合があるためである。一方、材料物質の重量平均分子量が2,000,000を超えた値となると、高分子薄膜の膜厚が不均一となる場合があるためである。
したがって、材料物質の重量平均分子量を30,000〜1,000,000の範囲内の値とすることがより好ましく、50,000〜500,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
但し、これらの多官能性単量体を用いて高分子薄膜を形成する場合は、多官能性単量体を重合し、あるいは、さらに架橋することが必要になる。
かかる多官能性単量体としては、例えば、アミノ酸や糖類等、分子内にアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、イソシアナート基、アルデヒド基、エポキシ基、シアヌル基等を複数有する単量体や、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ビスマレイミド等、分子内に複数のビニル基を有する単量体等が挙げられる。
また、高分子薄膜の膜厚を5〜1000nmの範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、高分子薄膜の膜厚をかかる範囲内の値とすることにより、高分子薄膜を、適用対象としての臓器創傷面や角膜等の生体組織に適用した場合に、膜強度を適度に保ちながら生体組織に対して強固に密着させることができるためである。
さらに、高分子薄膜を、適用対象としての皮膚表面に適用した場合には、皮膚の肌理に追従し、より強固に密着させることができるためである。
したがって、高分子薄膜の膜厚を10〜700nmの範囲内の値とすることがより好ましく、20〜400nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、高分子薄膜の表面を、機能性物質により修飾することも好ましい。
ここで、「機能性物質」とは、細胞膜上にある認識タンパク質やそのリガンド、抗原や抗体など分子認識能を有する物質や、触媒や酵素など特定の反応を促進する物質、抗酸化剤やラジカル消去剤など特定の反応に関与する物質、あるいはカルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、マレイミド基など電荷や反応に関与する基や配位子などを意味する。
また、高分子電解質の電荷(静電相互作用)を利用して機能を発現させる物質も機能性物質に含まれる。
例えば、機能性物質としては、ポリエチレングリコールや糖鎖のような高分子化合物、タンパク質、ペプチド、糖鎖、ビオチン誘導体、ポリカチオンおよびポリアニオンの高分子電解質からなる群から選ばれる少なくとも一つが挙げられるが、これらに何ら限定されるものではない。
まず、化学的に結合させる方法としては、高分子薄膜を構成する重合体等に導入されたアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、イソシアナート基、アルデヒド基、エポキシ基、シアヌル基、ビニル基に対して、結合し得る官能基を介して結合させることができる。
例えば、機能性物質と高分子薄膜との結合反応として、ヒドロキシル基やアミノ基と、イソシアナート基との反応によるウレタン結合やユリア結合、アミノ基と、アルデヒド基との反応によるシッフ塩基の形成、メルカプト基同士のジスルフィド結合、メルカプト基と、ピリジルジスルフィド基やマレイミド基との反応やカルボニル基と、スクシンイミド基との反応等を利用することができる。
あるいは、高分子薄膜側または機能性物質側にリガンドを導入させておき、機能性物質側または高分子薄膜側に導入されたアクセプターとのコンプレックスを利用して機能性物質を高分子薄膜上に固定することができる。
具体的な組合せとしては、ビオチンとアビジン、糖鎖とレクチン、抗原と抗体、薬物とレセプター、酵素と基質などが挙げられる。
また、酵素としては、カタラーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、キモトリプシン、チトクローム、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、ガラクトシダーゼ、グリコセレブロシダーゼ、血液凝固因子、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、プルラナーゼ、イソメラーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースイソメラーゼ、グルタミナーゼ、β−グルカナーゼ、セリンプロテアーゼ等が挙げられるが、これらに何ら限定されるものではない。
また、高分子薄膜に対し、着色剤を含有させ、着色することも好ましい。
この理由は、高分子薄膜を着色することにより、剥離シートから高分子薄膜を剥離する際に、剥離境界線を視認し易くして、より容易に剥離することができるためである。
また、高分子薄膜を適用対象物に対して適用した際に、その位置を視認し易くすることができるためである。
なお、使用可能な着色剤としては、剥離シートを着色する場合と同様の顔料等を使用することができるが、視認しやすさの観点から、剥離シートと高分子薄膜とが異なる色となるように着色することが好ましい。
また、着色剤の配合量としては、高分子薄膜形成用の材料物質100重量部に対して、0.01〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましく、0.1〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜10重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、図1(b)や図5(a)に示すように、本発明のシート状積層体を構成するにあたり、高分子薄膜4における剥離シート2とは反対側の面に、水溶性高分子膜6(6a、6b)を積層してなるシート状積層体10´(10a´、10b´)とすることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、所定の機能を有する水溶性機能性膜6aとして、高分子薄膜4の適用部において臓器創傷面や角膜等の生体組織、表皮などへの密着性を向上させる等の機能を付与することができるほか、高分子薄膜4を支持する水溶性高分子支持膜6bとして、高分子薄膜4を積層させた状態で、ピンセット等により剥離シート2から剥離し、適用対象物50にそのまま適用することができるためである。
また、高分子薄膜4が剥離シート2および水溶性高分子膜6(6a、6b)によって両側から挟持されているため、使用前の段階において、高分子薄膜4を安定的に保護することができる。
すなわち、図5(a)に示す態様のシート状積層体10b´であれば、図5(b)に示すように、ピンセット等によって、剥離シート2から高分子薄膜4および水溶性高分子支持膜6bを剥離した後、図5(c)に示すように、高分子薄膜4および水溶性高分子支持膜6bの積層体8を、高分子薄膜4が適用対象物50に対して直接接触するように載置することができる。
そして、図5(c)に示すように、高分子薄膜4および水溶性高分子支持膜6bの積層体8に対して、例えば、生理食塩水12を加え、水溶性高分子支持膜6bを溶解することで、図5(d)に示すように、適用対象物50に対して高分子薄膜4を効率的に適用することができる。
なお、水溶性機能性膜と、水溶性高分子支持膜と、は必ずしも別のものである必要はなく、これらの両方の機能を備えた水溶性高分子膜であってもよい。
また、水溶性高分子膜の材料物質は、水溶性機能性膜の場合であれば、臓器創傷面や角膜等の生体組織、表皮などへの密着性を向上させる等の特定の機能を有することがこのましい。
この理由は、特定の機能を有する水溶性機能性膜であれば、高分子薄膜の適用面に対して、容易かつ効果的に当該機能を付与することができるためである。
一方、水溶性高分子支持膜の場合であれば、高分子薄膜を支持すると共に、速やかに水に溶解する性質を有することが好ましい。
この理由は、図5(a)に示す態様のシート状積層体は、剥離シートから高分子薄膜および水溶性高分子支持膜の積層体を剥離し、水溶性高分子支持膜によって補強された状態の高分子薄膜を、そのまま適用対象物に対して適用し、水溶性高分子支持膜は水に溶解させて除去することを主な使用態様としているためである。
したがって、適用対象物にそのまま水溶性高分子支持膜が残留すると、高分子薄膜が有する適用対象物への強固な密着性等の特性を十分に発揮させることが困難になる場合がある。
このような理由から、水溶性高分子膜の材料物質は、臓器創傷面や角膜等の生体組織、表皮などへの密着性を向上させる等の特定の機能を有するか、もしくは、所定の強度と水溶性を有する水溶性高分子であれば、特に限定されるものではなく、従来公知のものを用いることができるが、適用対象物が生体組織などである場合には、生体に対し無害であるものがより好ましい。
なお、本発明において「水溶性」とは、水、あるいは、アルコール類の水溶液等に可溶であることをいい、実用的には、生理食塩水に可溶であることが好ましい。
この理由は、生体適合性があり、汎用性があるためである。
この理由は、水溶性高分子の重量平均分子量が10,000未満の値となると、水溶性高分子膜の強度が不十分となる場合があるためである。一方、水溶性高分子の重量平均分子量が2,000,000を超えた値となると、水溶性高分子膜の膜厚が不均一となる場合があるためである。
したがって、水溶性高分子の重量平均分子量を30,000〜1,000,000の範囲内の値とすることがより好ましく、50,000〜500,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、水溶性高分子膜の膜厚を20nm〜500μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、水溶性高分子膜の膜厚をかかる範囲内の値とすることにより、臓器創傷面や角膜等の生体組織、表皮などへの密着性を向上させる等の特定の機能を効果的に発揮することができるとともに、高分子薄膜を効果的に補強することができる一方で、適用対象物に適用した際には、生理食塩水等によって速やかに溶解させることができるためである。
すなわち、水溶性高分子膜の膜厚が20nm未満の値となると、水溶性高分子膜を均一に形成することが困難になる結果、臓器創傷面や角膜等の生体組織、表皮などへの密着性を向上させる等の特定の機能を効果的に発揮することが困難になったり、高分子薄膜を効果的に補強することが困難になったりする場合があるためである。一方、水溶性高分子膜の膜厚が500μmを超えた値となると、適用対象物に適用した際に、速やかに溶解・除去させることが困難になる場合があるためである。
したがって、水溶性高分子膜の膜厚を100nm〜400μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1μm〜300μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、水溶性高分子膜に対し、着色剤を含有させ、着色することも好ましい。
この理由は、水溶性高分子膜を着色することにより、剥離シートから高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体を剥離する際に、剥離境界線を視認し易くして、より容易に剥離することができるためである。
また、高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体を適用対象物に対して適用した際に、その位置を視認し易くすることができるためである。
なお、使用可能な着色剤としては、剥離シートを着色する場合と同様の顔料等を使用することができる。
また、着色剤の配合量としては、水溶性高分子100重量部に対して、0.01〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましく、0.1〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜10重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
本発明の第2の実施形態は、剥離シート上に、高分子薄膜を積層してなるシート状積層体の製造方法であって、下記工程(a)〜(b)を含むことを特徴とするシート状積層体の製造方法である。
(a)剥離シートとして、高分子薄膜との接触面における表面自由エネルギーを40mJ/m2以下の値とし、算術平均粗さRaを10nm以下の値とする剥離シートを準備する工程
(b)剥離シート上に、高分子薄膜形成用溶液を塗布し、膜厚が5〜1000nmの範囲内の値である高分子薄膜を形成する工程
以下、本発明の第2の実施形態を、第1の実施形態と異なる点を中心に、図面を参照しつつ、具体的に説明する。
工程(a)は、第1の実施形態で説明した所定の表面特性を有する剥離シートを準備する工程である。
また、その製造方法としては、特に限定されるものではないが、溶液キャスティング法または溶融押出法により成形することが好ましい。
より具体的には、溶液キャスティング法では、溶剤に溶解した樹脂溶液を支持体、例えば、平滑な金属製エンドレスベルト、平滑な樹脂フィルム等の支持体上に塗工した後、塗膜を均一に加熱し乾燥させて成膜することにより基材のみからなる単層タイプの剥離シートが得られる。
また、溶融押出法では、樹脂を押出機に供給し、リップクリアランスを1mm以下、好ましくは0.7mm以下に調整したTダイからシート状に溶融押出し、樹脂のガラス転移点(Tg)±20℃の範囲に制御した鏡面冷却ロールと接触させて冷却固化することにより成形することにより基材のみからなる単層タイプの剥離シートが得られる。
なお、必要に応じて、得られた剥離シートに対して1軸延伸もしくは2軸延伸などの処理を施してもよい。
なお、剥離シートの具体的な内容については、第1の実施形態にて説明したため、省略する。
工程(b)は、剥離シート上に、高分子薄膜形成用溶液を塗布し、膜厚が5〜1000nmの範囲内の値である高分子薄膜を形成する工程である。
また、高分子薄膜形成用溶液の塗布を、ロールツーロール法(roll to roll法)にて行うことが好ましい。
この理由は、ロールツーロール法であれば、所定の膜厚を有する高分子薄膜を、より効率的に形成することができることから、シート状積層体をより効率よく大量生産することができるためである。
また、ロールツーロール法を実施するにあたり、特に、リバースグラビアコータまたはスロットダイコータを用いて行うことが好ましい。
この理由は、これらの塗布装置であれば、所定の膜厚を有する高分子薄膜を、さらに効率的に形成することができるためである。
すなわち、リバースグラビアコータおよびスロットダイコータであれば、ナノメートルオーダーの高分子薄膜を、その表面に皺を発生させることなく、かつ、均一な膜厚でべた塗りすることができ、しかも、構造が簡単である上、経済性にも優れるためである。
すなわち、図6(a)には、リバースグラビアコータ100の斜視図が示してあり、図6(b)には、リバースグラビアコータ100を矢印A方向に沿って見た場合の断面図が示してある。
図6(a)〜(b)に示すように、リバースグラビアコータ100は、原反ロール(図示せず)から繰り出されて巻取りロール(図示せず)に巻き取られる剥離シート2を、一定方向(矢印B)に沿って所定のスピードで走行させるための少なくとも1対のガイドロール(102、104)を備えている。
また、かかる少なくとも一対のガイドロール(102、104)の間で走行している剥離シート2に対して、塗布液供給パン106に収容された塗布液(図示せず)を、掻き揚げながら塗布するためのグラビアロール108を備えている。
また、かかるグラビアロール108は、通常、直径が50mm程度、長軸方向の長さが1700mm程度であり、グラビアパターンは彫刻などによって刻設されている。グラビアの線数は、特に限定されないが、15〜200#のものを使用することが好ましい。
そして、かかるグラビアロール108は、グラビアロール用駆動原(図示せず)によって、剥離シート2の走行方向とは逆方向に回転しながら、剥離シート2に対して塗布液を塗布することになる。
また、グラビアロール108には、ドクターブレード110が当接させてあり、これによりグラビアロール108に付着した余分な塗布液を掻き取ることができるため、ナノメートルオーダーの高分子薄膜を安定的に形成することができる。
また、高分子薄膜の膜厚の調整は、高分子薄膜形成用溶液の濃度および粘度、並びにグラビアの線数と走行スピードを調整することにより行うことができる。
また、リバースグラビアコータを用いる場合における高分子薄膜形成用溶液の粘度(測定温度:25℃)は、1〜200mPa・sの範囲内の値とすることが好ましい。
すなわち、図7(a)には、スロットダイコータ200の斜視図が示してあり、図7(b)には、スロットダイコータを矢印Aに沿って見た場合の断面図が示してある。
図7(a)〜(b)に示すように、スロットダイコータ200は、原反ロール(図示せず)から繰り出されて巻取りロール(図示せず)に巻き取られる剥離シート2を、一定方向(矢印B)に沿って所定のスピードで走行させるための少なくとも1対のガイドロール(202、204)を備えている。
また、かかる少なくとも一対のガイドロール(202、204)の間で走行している剥離シート2に対して、塗布液タンク206から、ポンプ208による加圧によって供給される塗布液(図示せず)を塗布するためのスロット210を備えている。
また、かかるスロット210は、剥離シート2の走行方向における上流側および下流側に互いに対向するように設けられたダイリップ(212、214)を備えており、かかるダイリップ(212、214)の隙間から、剥離シート2に塗布液が供給され、塗布することになる。
また、高分子薄膜の膜厚の調整は、高分子薄膜形成用溶液の濃度および粘度、並びにダイリップからの吐出量と剥離シートの走行スピードを調整することにより行うことができる。
また、スロットダイコータを用いる場合における高分子薄膜形成用溶液の粘度(測定温度:25℃)は、1〜500mPa・sの範囲内の値とすることが好ましい。
(2)−1 高分子薄膜形成用溶液の材料物質
また、高分子薄膜形成用溶液における溶質としての高分子薄膜形成用の材料物質としては、第1の実施形態において既に説明したため、省略する。
また、高分子薄膜形成用溶液における溶剤の種類としては、高分子薄膜形成用の材料物質を溶解、または均一に分散でき、加熱により揮発するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、へプタン、ペンタン、ジクロロメタン、クロロホルム、および四塩化炭素などが好ましい。溶剤の沸点としては、30〜120℃であることが好ましく、35〜80℃であることがより好ましい。
また、高分子薄膜形成用溶液の濃度を0.1〜20重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、高分子薄膜形成用溶液の濃度が0.1重量%未満の値となると、必要な膜厚が得られなくなる場合や溶液の粘度が最適にならない場合があるためである。一方、高分子薄膜形成用溶液の濃度が20重量%を超えた値となると、均一な塗膜が得られなくなる場合があるためである。
したがって、高分子薄膜形成用溶液の濃度を0.3〜15重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜10重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、高分子薄膜形成用溶液の粘度(測定温度:25℃)を1〜500mPa・sの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、高分子薄膜形成用溶液の粘度が1mPa・s未満の値となると、塗膜のハジキが発生する場合があるためである。一方、高分子薄膜形成用溶液の粘度が500mPa・sを超えた値となると、均一な塗膜が得られなくなる場合があるためである。
したがって、高分子薄膜形成用溶液の粘度(測定温度:25℃)を2〜400mPa・sの範囲内の値とすることがより好ましく、3〜300mPa・sの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、高分子薄膜形成用溶液の粘度は、JIS K7117−1の4.1(ブルックフィールド形回転粘度計)に準拠して測定されたものである。
また、剥離シート上に形成された高分子薄膜形成用溶液の塗布層を、高分子薄膜とするための乾燥条件としては、特に限定されるものではないが、通常40〜120℃の温度条件下で、0.1〜5分間行うことが好ましい。
この理由は、乾燥温度が40℃未満の値となると、乾燥に時間がかかり過ぎたり乾燥不足になったりする場合があるためである。一方、乾燥温度が120℃を超えた値となると、皺やカールが生じたりする場合があるためである。
また、乾燥時間が0.1分未満の値となると、乾燥不足になる場合があるためである。一方、乾燥時間が5分を超えた値となると、皺やカールが生じたりする場合があるためである。
したがって、高分子薄膜形成用溶液の塗布層を高分子薄膜とするための乾燥条件としては、50〜110℃の温度条件下で、0.2〜3分間とすることがより好ましく、60〜100℃の温度条件下で、0.3〜2分間とすることがさらに好ましい。
かかる工程は、図1(b)や図5(a)に示すように、高分子薄膜4における剥離シート2とは反対側の面に、水溶性高分子膜6(6a、6b)を積層してなるシート状積層体10´(10a´、10b´)を製造する際に必要となる工程である。
すなわち、工程(b)で得られた高分子薄膜上に、水溶性高分子溶液を塗布し、水溶性高分子膜を形成する工程である。
また、水溶性高分子溶液の塗布を、ロールツーロール法にて行うことが好ましい。
この理由は、ロールツーロール法であれば、所定の膜厚を有する水溶性高分子膜を、より効率的に形成することができるためである。
より具体的には、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法およびグラビアコート法等、従来公知の方法により行うことができる。
(2)−1 水溶性高分子
また、水溶性高分子溶液における溶質としての水溶性高分子としては、第1の実施形態において既に説明したため、省略する。
また、水溶性高分子溶液における溶剤の種類としては、水溶性高分子溶液を溶解または均一に分散できるものであれば、特に限定されるものではないが、水、あるいは、アルコール類の水溶液等からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
また、水溶性高分子溶液の濃度を0.1〜20重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、水溶性高分子溶液の濃度が0.1重量%未満の値となると、必要な膜厚が得られなくなる場合があるためである。
一方、水溶性高分子溶液の濃度が20重量%を超えた値となると、均一な塗膜が得られなくなる場合があるためである。
したがって、水溶性高分子溶液の濃度を0.5〜15重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜10重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、水溶性高分子溶液の粘度(測定温度:25℃)を1〜500mPa・sの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、水溶性高分子溶液の粘度が1mPa・s未満の値となると、塗膜のハジキが発生するとなる場合があるためである。一方、水溶性高分子溶液の粘度が500mPa・sを超えた値となると、均一な塗膜が得られなくなるとなる場合があるためである。
したがって、水溶性高分子溶液の粘度(測定温度:25℃)を2〜400mPa・sの範囲内の値とすることがより好ましく、3〜300mPa・sの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、水溶性高分子溶液の粘度は、JIS K7117−1の4.1(ブルックフィールド形回転粘度計)に準拠して測定されたものである。
また、高分子薄膜上に形成された水溶性高分子溶液の塗布層を、水溶性高分子膜とするための乾燥条件としては、特に限定されるものではないが、通常40〜120℃の温度条件下で、0.1〜20分間行うことが好ましい。
この理由は、乾燥温度が40℃未満の値となると、乾燥に時間がかかり過ぎたり乾燥不足になったりする場合があるためである。一方、乾燥温度が120℃を超えた値となると、皺やカールが生じたりする場合があるためである。
また、乾燥時間が0.1分未満の値となると、乾燥不足になる場合があるためである。一方、乾燥時間が20分を超えた値となると、皺やカールが生じたりする場合があるためである。
したがって、水溶性高分子溶液の塗布層を水溶性高分子膜とするための乾燥条件としては、50〜110℃の温度条件下で、0.2〜10分間とすることがより好ましく、60〜100℃の温度条件下で、0.3〜8分間とすることがさらに好ましい。
1.シート状積層体の製造
(1)剥離シートの準備
剥離シートとして、膜厚50μmのポリオレフィンフィルム(三井化学東セロ(株)製、オピュラン X−88B #50)を準備した。
かかる剥離シートにおける高分子薄膜形成用溶液を塗布する面(高分子薄膜との接触面)における表面自由エネルギーおよび算術平均粗さRaを以下のようにして測定したところ、表面自由エネルギーは24.5mJ/m2であり、算術平均粗さRaは0.11nmであった。
剥離シートにおける高分子薄膜形成用溶液を塗布する面(高分子薄膜との接触面)における表面自由エネルギー(mJ/m2)は、各種液滴の接触角(測定温度:25℃)を測定し、その値をもとに北崎・畑理論により求めた。
すなわち、「分散成分」としてのジヨードメタン、「双極子成分」としての1−ブロモナフタレン、「水素結合成分」としての蒸留水を液滴として使用し、協和界面科学(株)製、DM−701を用いて、静滴法により、JIS R3257に準拠して接触角(測定温度:25℃)を測定し、その値をもとに北崎・畑理論により、表面自由エネルギー(mJ/m2)を求めた。
剥離シートにおける高分子薄膜形成用溶液を塗布する面(高分子膜膜との接触面)における算術平均粗さRa(nm)は、Lasertec(株)製、コンフォーカル顕微鏡 HD−100を用いて、測定倍率200倍にてJIS B0601:2001に準拠して測定した。
重量平均分子量が180,000であるポリDL乳酸(PURAC(株)製、PURASORB20)を酢酸エチルに溶解し、濃度3重量%、25℃における粘度7.1mPa・sの高分子薄膜形成用溶液を調製した。
次いで、リバースグラビアコータ(康井精機(株)製、μコータ)を用いて、準備した剥離シートの上面に対し、得られた高分子薄膜形成用溶液を塗布した後、55℃で1分間乾燥させ、膜厚200nmの高分子薄膜を形成し、シート状積層体を得た。
この時、使用したリバースグラビアコータにおけるグラビアロールは、線数150#、直径20mm、長軸方向の長さが300mmであり、剥離シートの走行スピードは1m/分であり、グラビアロールの回転速度は160rpmであった。
(1)塗工性の評価
剥離シートに対する高分子薄膜形成用溶液の塗工性を評価した。
すなわち、剥離シートの上面に対し、得られた高分子薄膜形成用溶液をマイヤーバーで塗布し、膜厚が約6μmの塗膜を形成した。
次いで、得られた塗膜におけるハジキによる白濁を目視で観察し、下記基準にそって評価し、塗工性の評価とした。得られた結果を表1に示す。
○:高分子薄膜形成用溶液の塗膜が、塗布後1分後であっても白濁しない
△:高分子薄膜形成用溶液の塗膜が、塗布後1分後に白濁した
×:高分子薄膜形成用溶液の塗膜が、塗布後30秒後に白濁した
剥離シートに対する高分子薄膜の剥離性を評価した。
すなわち、得られたシート状積層体を10mm×10mmのサイズにカットした。
次いで、高分子薄膜の端部をピンセットでつまんで剥離シートから剥離した際の剥離性を、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
○:剥離シートから剥離することができた高分子薄膜の面積が、10mm×10mmに対して80%以上の値である
△:剥離シートから剥離することができた高分子薄膜の面積が、10mm×10mmに対して60〜80%未満の値である
×:剥離シートから剥離することができた高分子薄膜の面積が、10mm×10mmに対して60%未満の値である
実施例2では、剥離シートとして、膜厚38μmのアルキド系剥離処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック(株)製、SP−PFS50 AL−5)を用いたほかは、実施例1と同様にシート状積層体を製造し、評価した。
また、かかる剥離シートにおける高分子薄膜形成用溶液を塗布する面(アルキド系剥離処理層を有する面)における表面自由エネルギーは36.1mJ/m2であり、算術平均粗さRaは0.07nmであった。得られた結果を表1および2に示す。
参考例3では、剥離シートとして、膜厚60μmのポリオレフィンフィルム(フタムラ化学(株)製、FOS#60)を用いたほかは、実施例1と同様にシート状積層体を製造し、評価した。
また、かかる剥離シートにおける高分子薄膜形成用溶液を塗布する面における表面自由エネルギーは31.4mJ/m2であり、算術平均粗さRaは0.12nmであった。得られた結果を表1および2に示す。
実施例4では、剥離シートとして、膜厚40μmのポリオレフィンフィルム(日本ゼオン(株)製、ZF14−040)を用いたほかは、実施例1と同様にシート状積層体を製造し、評価した。
また、かかる剥離シートにおける高分子薄膜形成用溶液を塗布する面における表面自由エネルギーは31.7mJ/m2であり、算術平均粗さRaは0.41nmであった。得られた結果を表1および2に示す。
比較例1では、剥離シートとして、膜厚50μmのポリエステルフィルム(東洋紡績(株)製、コスモシャインA4100)を用いたほかは、実施例1と同様にシート状積層体を製造し、評価した。
また、かかる剥離シートにおける高分子薄膜形成用溶液を塗布する面における表面自由エネルギーは45.2mJ/m2であり、算術平均粗さRaは2.81nmであった。得られた結果を表1および2に示す。
比較例2では、剥離シートとして、膜厚38μmのシリコーン系剥離処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック(株)製、SP−PET381031)を用いたほかは、実施例1と同様にシート状積層体を製造し、評価した。
また、かかる剥離シートにおける高分子薄膜形成用溶液を塗布する面(シリコーン系剥離処理が施された面)における表面自由エネルギーは、18.8mJ/m2であり、算術平均粗さRaは12.94nmであった。得られた結果を表1および2に示す。
比較例3では、剥離シートとして、膜厚38μmのシリコーン系剥離処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック(株)製、SP−PL252011)を用いたほかは、実施例1と同様にシート状積層体を製造し、評価した。
また、かかる剥離シートにおける高分子薄膜形成用溶液を塗布する面(シリコーン系剥離処理が施された面)における表面自由エネルギーは、22.5mJ/m2であり、算術平均粗さRaは13.4nmであった。得られた結果を表1に示す。
したがって、本発明のシート状積層体等は、高分子薄膜の高品質化ばかりでなく、高分子薄膜を用いた医療用品等の高品質化および生産効率の向上に著しく寄与することが期待される。
Claims (13)
- 剥離シート上に、剥離するための高分子薄膜を積層してなるシート状積層体であって、
前記高分子薄膜の膜厚を5〜1000nmの範囲内の値とするとともに、
前記剥離シートの前記高分子薄膜との接触面における表面自由エネルギーを20〜40mJ/m2の範囲内の値とし、算術平均粗さRaが10nm以下の値であって、
前記剥離シートが、脂環式ポリオレフィンフィルム、アルキド系剥離処理層を有する積層タイプのフィルム、シリコーン系剥離処理層を有する積層タイプのフィルム、またはポリ4−メチルペンテン−1フィルムであることを特徴とするシート状積層体。 - 前記剥離シートが、単層の剥離シートであることを特徴とする請求項1に記載のシート状積層体。
- 前記剥離シートの膜厚を10〜200μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一項に記載のシート状積層体。
- 前記高分子薄膜を構成する高分子が、非水溶性高分子を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート状積層体。
- 前記非水溶性高分子がポリ乳酸、乳酸共重合体、ポリラクトンまたはラクトン共重合体からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項4に記載のシート状積層体。
- 前記高分子薄膜における前記剥離シートとは反対側の面に、水溶性高分子支持膜を積層してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート状積層体。
- 前記高分子薄膜の膜厚は、10〜700nmの範囲内の値である
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のシート状積層体。 - 前記剥離シートから剥離された前記高分子薄膜は、生体組織に適用される
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のシート状積層体。 - 剥離シート上に、剥離するための高分子薄膜を積層してなるシート状積層体の製造方法であって、
下記工程(a)〜(b)を含むことを特徴とするシート状積層体の製造方法。
(a) 前記剥離シートとして、脂環式ポリオレフィンフィルム、アルキド系剥離処理層を有する積層タイプのフィルム、シリコーン系剥離処理層を有する積層タイプのフィルム、またはポリ4−メチルペンテン−1フィルムを準備し、前記高分子薄膜との接触面における表面自由エネルギーを20〜40mJ/m2の範囲内の値とし、算術平均粗さRaを10nm以下の値とする剥離シートを準備する工程。
(b)前記剥離シート上に、高分子薄膜形成用溶液を塗布し、膜厚が5〜1000nmの範囲内の値である前記高分子薄膜を形成する工程。 - 前記工程(b)を、ロールツーロール法にて行うことを特徴とする請求項9に記載のシート状積層体の製造方法。
- 前記工程(b)を、リバースグラビアコータまたはスロットダイコータを用いて行うことを特徴とする請求項9に記載のシート状積層体の製造方法。
- 前記高分子薄膜の膜厚は、10〜700nmの範囲内の値である
ことを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載のシート状積層体の製造方法。 - 前記剥離シートから剥離された前記高分子薄膜は、生体組織に適用される
ことを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載のシート状積層体の製造方法。
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