JP6916483B2 - 高分子薄膜分散体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、高分子薄膜分散体の製造方法に関する。
従来、ポリL−乳酸などの高分子からなる厚さが数十から数百nmの生体適合性を有する高分子薄膜を製造する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
かかる高分子薄膜は、生体吸収性、生体分解性および組織修復性などを有することから、生体組織への適用性に優れている。
また、かかる高分子薄膜は、健常皮膚、皮膚創傷面、臓器創傷面や角膜などの生体組織に適用した場合、静電気力や濡れ性により、生体組織に対して強固に密着することが知られている。
したがって、高分子薄膜は、このような諸特性を有することから、健常皮膚、皮膚創傷面、臓器創傷面および角膜などの生体組織の被覆材などとして検討されている。
例えば、特許文献1には、以下の工程により得られることを特徴とする薄膜状構造体が開示されている。
(a)基体の液相との界面における任意形状の領域に多官能基性分子を吸着させ、
(b)吸着した多官能基性を重合および/または架橋して高分子の薄膜を形成させ、
(c)形成された薄膜を基体から剥離する。
国際公開第2006/025592号公報
しかしながら、特許文献1に記載の高分子薄膜は、多官能性分子を基体などに吸着させ、かつ、それを重合などしなければならない。そのため、特許文献1に記載の高分子薄膜は、長尺の剥離シートに対して高分子薄膜形成用溶液を連続的に塗布し、乾燥することにより高分子薄膜を形成する方法と比較して、生産効率が低く、大量生産への移行が困難であるという問題が見られた。そして、高分子薄膜分散体は、高分子薄膜を液状媒体中で細断し、分散させて製造する。そのため、高分子薄膜分散体についても、生産効率が低く、大量生産への移行が困難であるという同様の問題があった。一方で、剥離シート上に高分子薄膜を形成する方法で得られる高分子薄膜は、液状媒体中で剥離シートから容易に剥離できないために、高分子薄膜分散体を作製することが困難であるという問題があった。
本発明の目的は、生産効率が高く、大量生産に適した高分子薄膜分散体の製造方法を提供することである。
本発明の一態様によれば、
(a)工程フィルムおよび高分子薄膜を備えるフィルム状積層体と、水透過性シートとを、前記高分子薄膜と前記水透過性シートとが向い合うようにして積層する工程と、
(b)前記高分子薄膜から前記工程フィルムを剥離する工程と、
(c)ロール状に巻回して、前記高分子薄膜および前記水透過性シートが一緒にロール状に巻回された巻回体を得る工程と、
(d)前記巻回体を液状媒体中に浸漬する工程と、
(e)前記高分子薄膜から剥がれた前記水透過性シートを、前記液状媒体中から除去する工程と、
(f)前記液状媒体中の前記高分子薄膜を細断し、分散させて、高分子薄膜分散体を得る工程と、
を備える、高分子薄膜分散体の製造方法が提供される。
前述の本発明の一態様において、前記水透過性シートが、不織布および紙からなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
前述の本発明の一態様において、前記高分子薄膜の厚さが、5nm以上、1000nm以下であることが好ましい。
前述の本発明の一態様において、前記高分子薄膜を構成する高分子が、ポリ乳酸、乳酸共重合体、ポリラクトン、ラクトン共重合体およびポリペプチドからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
前述の本発明の一態様において、前記水透過性シートの透気度が、100,000秒以下であることが好ましい。
前述の本発明の一態様において、前記水透過性シートの厚さが、25μm以上であることが好ましい。
前述の本発明の一態様において、前記工程(b)における前記工程フィルムの前記高分子薄膜からの剥離力が、10mN/100mm以上、1000mN/100mm以下であることが好ましい。
前述の本発明の一態様において、前記フィルム状積層体および前記水透過性シートが、帯状であることが好ましい。
前述の本発明の一態様において、前記水透過性シートの平面視における幅寸法が、1200mm以下であることが好ましい。
前述の本発明の一態様において、前記水透過性シートには、片面に部分的に粘着剤層が設けられており、前記工程(a)では、前記高分子薄膜と前記粘着剤層とを貼合することで、前記フィルム状積層体と前記水透過性シートとを積層することが好ましい。
前述の本発明の一態様において、前記水透過性シートには、平面視における長さ方向の先端部に、前記粘着剤層が設けられていることが好ましい。
本発明によれば、生産効率が高く、大量生産に適した高分子薄膜分散体の製造方法を提供できる。
本発明の実施形態に係るフィルム状積層体を示す概略図である。 本発明の実施形態に係る粘着シートを示す概略図である。 本発明の実施形態に係る工程(a)において、フィルム状積層体と粘着シートとを積層した状態を示す概略図である。 本発明の実施形態に係る工程(b)において、高分子薄膜から工程フィルムを剥離した状態を示す概略図である。 本発明の実施形態に係る工程(c)で得られる巻回体を示す概略図である。 本発明の実施形態に係る工程(d)において、巻回体を液状媒体中に浸漬した状態を示す概略図である。 本発明の実施形態に係る工程(e)において、液状媒体中で高分子薄膜から水透過性シートが剥がれた状態を示す概略図である。 本発明の実施形態に係る工程(e)において、液状媒体中から水透過性シートを除去した状態を示す概略図である。 本発明の実施形態に係る工程(f)において、液状媒体中の高分子薄膜を細断し、分散させた状態を示す概略図である。
以下、本発明について実施形態を例に挙げて、図面に基づいて説明する。本発明は実施形態の内容に限定されない。なお、図面においては、説明を容易にするために拡大または縮小をして図示した部分がある。
本実施形態に係る高分子薄膜分散体の製造方法は、
(a)工程フィルムおよび高分子薄膜を備えるフィルム状積層体と、水透過性シートとを、前記高分子薄膜と前記水透過性シートとが向い合うようにして積層する工程と、
(b)前記高分子薄膜から前記工程フィルムを剥離する工程と、
(c)ロール状に巻回して、前記高分子薄膜および前記水透過性シートが一緒にロール状に巻回された巻回体を得る工程と、
(d)前記巻回体を液状媒体中に浸漬する工程と、
(e)前記高分子薄膜から剥がれた前記水透過性シートを、前記液状媒体中から除去する工程と、
(f)前記液状媒体中の前記高分子薄膜を細断し、分散させて、高分子薄膜分散体を得る工程と、を備える方法である。
まず、本実施形態に用いるフィルム状積層体および水透過性シートについて説明する。
(フィルム状積層体)
本実施形態に用いるフィルム状積層体10は、図1に示すように、高分子薄膜1と、工程フィルム2とを備えている。このフィルム状積層体10は、工程フィルム2に高分子薄膜形成用溶液を塗布し、高分子薄膜1を形成することによって得られる。このフィルム状積層体10は、帯状であることが好ましい。
(高分子薄膜)
高分子薄膜1としては、非水溶性高分子を含むことが好ましい。
この理由は、本実施形態における高分子薄膜の主な適用対象物は、臓器創傷面や角膜などの生体組織、表皮などであり、基本的に生体由来の粘液、汗などをその表面に有していることから、かかる粘液などに含まれる水分によって高分子薄膜が溶解することを防ぐためである。
したがって、本実施形態における高分子薄膜の材料物質は、非水溶性の高分子薄膜を形成できるものであれば、特に限定されず、従来公知の材料物質を用いることができるが、生体適合性の材料物質を用いることがより好ましい。
また、本実施形態において高分子薄膜を非水溶性とするにあたり、必ずしもその材料物質が非水溶性である必要はなく、その材料物質を加熱乾燥や架橋反応、重合などすることにより、最終的に非水溶性高分子薄膜が得られるものであればよい。
また、具体的な材料物質としては、ポリ乳酸、乳酸共重合体、ポリラクトン、ラクトン共重合体およびポリペプチドからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
この理由は、これらの材料物質を含むことにより、より均一な厚さを有する高分子薄膜を、より安定的に得ることができるためである。
また、材料物質としてポリ乳酸を用いる場合には、例えば、L−乳酸の重合体、D−乳酸の重合体、並びに、L−乳酸およびD−乳酸を含む乳酸の重合体を用いることができる。
また、L−ラクチド、D−ラクチド、およびmeso−ラクチドなどの乳酸の環状二量体であるラクチドの重合体を材料物質として用いてもよい。
また、材料物質として乳酸共重合体を用いる場合には、乳酸とその他の単量体成分との重合体を用いることができる。
上述したその他の単量体成分としては、ヒドロキシカルボン酸類(例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、および6−ヒドロキシカプロン酸など)、分子内に複数の水酸基を含む化合物類またはその誘導体(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、およびペンタエリスリトールなど)、並びに、分子内に複数のカルボン酸基を有する化合物類またはその誘導体など(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、および5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸など)が挙げられる。
また、乳酸共重合体を構成する乳酸とその他の単量体成分とを共重合する際の質量比(乳酸/その他の単量体成分)が、50/50以上99/1以下であることが好ましい。
また、材料物質としてポリラクトンを用いる場合には、例えば、ε−プロラクトン、δ−ブチロラクトン、β−メチル−δバレロラクトン、およびβ−プロピオラクトンなどのラクトンの重合体を用いることができる。
また、材料物質としてラクトン共重合体を用いる場合には、例えば、ラクトンとその他の単量体成分との重合体を用いることができる。
上述したその他の単量体成分としては、ヒドロキシカルボン酸類(例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、および6−ヒドロキシカプロン酸など)、分子内に複数の水酸基を含む化合物類またはその誘導体(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、およびペンタエリスリトールなど)、並びに、分子内に複数のカルボン酸基を有する化合物類またはその誘導体など(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、および5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸など)が挙げられる。また、上述した乳酸またはラクチドをその他の単量体成分として用いても良い。
また、ラクトン共重合体を構成するラクトンとその他の単量体成分とを共重合する際の質量比(ラクトン/その他の単量体成分)が、50/50以上99/1以下であることが好ましい。
また、材料物質としてポリペプチドを用いる場合には、例えば、ポリリシン、ポリグルタミン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリグリシン、ポリフェニルアラニン、ポリアラニン、ポリロイシン、ポリイソロイシン、ポリバリン、ポリプロリン、ポリセリン、ポリスレオニン、およびポリチロシンなどを用いることができる。
また、材料物質として、反対電荷を有する高分子電解質(ポリカチオンおよびポリアニオン)を用いることもできる。ポリカチオンを含む希薄溶液と、ポリアニオンを含む希薄溶液とを交互に基材に塗布することにより、ポリカチオンと、ポリアニオンとが積層された高分子薄膜を形成することもできる。なお、ポリカチオンとポリアニオンとの積層体としては、ポリカチオンの層と、ポリアニオンの層とを1層ずつ積層した2層の積層体としてもよいが、さらに交互に積層して4層〜20層程度の積層体としてもよい。
かかるポリカチオンとしては、ポリリシン、ポリグルタミン、ポリアスパラギン、およびポリアルギニンなどが挙げられ、ポリアニオンとしては、ポリグルタミン酸、およびポリアスパラギン酸などを挙げることができる。
また、材料物質の重量平均分子量を10,000以上2,000,000以下の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、材料物質の重量平均分子量をかかる範囲内の値とすることにより、より均一な厚さを有する高分子薄膜を、さらに安定的に得ることができるばかりか、高分子薄膜の強度をさらに向上させることができるためである。
材料物質の重量平均分子量が10,000以上であれば、高分子薄膜の強度が不十分となることを抑制できる。一方、材料物質の重量平均分子量が2,000,000以下であれば、高分子薄膜の厚さが不均一となることを抑制できる。
したがって、材料物質の重量平均分子量を30,000以上1,000,000以下の範囲内の値とすることがより好ましく、50,000以上500,000以下の範囲内の値とすることがさらに好ましい。本明細書における重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算値である。
また、材料物質は、上述したような重合体ばかりでなく、多官能性単量体であってもよい。
ただし、これらの多官能性単量体を用いて高分子薄膜を形成する場合は、多官能性単量体を重合し、あるいは、さらに架橋することが必要になる。
かかる多官能性単量体としては、例えば、アミノ酸、糖類、分子内に官能基(例えば、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、イソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基、およびシアヌル基など)を複数有する単量体、並びに、分子内に複数のビニル基を有する単量体など(例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、およびビスマレイミドなど)が挙げられる。
また、高分子薄膜1の厚さを5nm以上1000nm以下の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、高分子薄膜の厚さをかかる範囲内の値とすることにより、高分子薄膜を適用対象としての臓器創傷面や角膜などの生体組織に適用した場合に、膜強度を適度に保ちながら生体組織に対して高分子薄膜を強固に密着させることができるためである。
高分子薄膜の厚さが5nm以上であれば、膜強度が過度に低下することを抑制でき、適用対象物に対して高分子薄膜を適用した際に、高分子薄膜が過度に破断しやすくなることを抑制できる。一方、高分子薄膜の厚さが1000nm以下であれば、適用対象物に対する密着性が過度に低下することを抑制できる。
したがって、高分子薄膜1の厚さを10nm以上700nm以下の範囲内の値とすることがより好ましく、20nm以上400nm以下の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、高分子薄膜1の表面を、機能性物質により修飾することも好ましい。
ここで、「機能性物質」とは、細胞膜上にある認識タンパク質やそのリガンド、抗原や抗体など分子認識能を有する物質や、触媒や酵素など特定の反応を促進する物質、抗酸化剤やラジカル消去剤など特定の反応に関与する物質、あるいはカルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、マレイミド基など電荷や反応に関与する基や配位子などを意味する。
また、高分子電解質の電荷(静電相互作用)を利用して機能を発現させる物質も機能性物質に含まれる。
例えば、機能性物質としては、ポリエチレングリコールや糖鎖のような高分子化合物、タンパク質、ペプチド、糖鎖、ビオチン誘導体、ポリカチオンおよびポリアニオンの高分子電解質からなる群から選ばれる少なくとも一つが挙げられるが、機能性物質は、これらに何ら限定されない。
また、機能性物質の結合法としては、化学的あるいは物理的に結合させる方法がある。
まず、化学的に結合させる方法としては、高分子薄膜を構成する重合体などに導入されたアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、イソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基、シアヌル基、またはビニル基に対して、結合し得る官能基を介して結合させることができる。
例えば、機能性物質と高分子薄膜との結合反応として、ヒドロキシル基やアミノ基と、イソシアネート基との反応によるウレタン結合やユリア結合、アミノ基と、アルデヒド基との反応によるシッフ塩基の形成、メルカプト基同士のジスルフィド結合、メルカプト基と、ピリジルジスルフィド基やマレイミド基との反応や、カルボニル基と、スクシンイミド基との反応などを利用することができる。
また、物理的に結合させる方法としては、機能性物質側と高分子薄膜側との静電的相互作用、疎水性相互作用、水素結合あるいは分子間力などを用いることができる。
あるいは、高分子薄膜および機能性物質の一方にリガンドを導入し、他方にアクセプターを導入し、リガンドとアクセプターとのコンプレックスを利用して、機能性物質を高分子薄膜上に固定することができる。
具体的な組み合わせとしては、ビオチンとアビジン、糖鎖とレクチン、抗原と抗体、薬物とレセプター、並びに酵素と基質などが挙げられる。
また、酵素としては、カタラーゼ、キモトリプシン、チトクローム、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、ガラクトシダーゼ、グリコセレブロシダーゼ、血液凝固因子、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、プルラナーゼ、イソメラーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースイソメラーゼ、グルタミナーゼ、β−グルカナーゼ、およびセリンプロテアーゼなどが挙げられるが、酵素は、これらに限定されない。
(工程フィルム)
工程フィルム2としては、特に限定されない。例えば、取り扱い易さの観点から、工程フィルム2は、剥離基材と、剥離基材の少なくとも一方の面上に剥離剤が塗布されて形成された剥離剤層とを備えることが好ましい。剥離基材としては、例えば、紙基材、この紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、並びにプラスチックフィルムなどが挙げられる。
紙基材としては、グラシン紙、上質紙、コート紙、およびキャストコート紙などが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートなど)、並びにポリオレフィンフィルムなど(例えば、ポリプロピレンおよびポリエチレンなど)が挙げられる。
剥離剤としては、例えば、オレフィン系樹脂、ゴム系エラストマー(例えば、ブタジエン系樹脂、イソプレン系樹脂など)、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、およびシリコーン系樹脂が挙げられる。これらの中でも剥離剤としては、オレフィン系樹脂、ゴム系エラストマー(例えば、ブタジエン系樹脂、イソプレン系樹脂など)、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、およびフッ素系樹脂からなる群から選択されるいずれかの剥離剤であることが好ましい。剥離剤層は、帯電防止剤をさらに含有してもよく、帯電防止剤を含有していなくてもよい。
工程フィルム2の厚さは、特に限定されない。工程フィルム2の厚さは、通常、20μm以上200μm以下であり、25μm以上150μm以下であることが好ましい。
剥離剤層の厚さは、特に限定されない。剥離剤を含む溶液を剥離基材の上に塗布して剥離剤層を形成する場合、剥離剤層の厚さは、0.01μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.03μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。
剥離基材としてプラスチックフィルムを用いる場合、当該プラスチックフィルムの厚さは、3μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上90μm以下であることがより好ましく、10μm以上40μm以下であることが特に好ましい。
(高分子薄膜形成用溶液)
高分子薄膜形成用溶液における溶質としての高分子薄膜形成用の材料物質は、既に説明したため、省略する。
高分子薄膜形成用溶液における溶剤の種類としては、高分子薄膜形成用の材料物質を溶解、または均一に分散でき、加熱により蒸発する溶剤であれば、特に限定されない。例えば、溶剤としては、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、およびクロロホルムなどが好ましい。
また、溶剤の沸点としては、30℃以上120℃以下の範囲内の値とすることが好ましく、35℃以上100℃以下の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、高分子薄膜形成用溶液中の材料物質の濃度を0.1質量%以上20質量%以下の範囲内の値とすることが好ましい。
高分子薄膜形成用溶液中の材料物質の濃度が0.1質量%以上であれば、必要な厚さが得られなくなる場合があるという不具合や、溶液の粘度が最適にならないという不具合を抑制できる。一方、高分子薄膜形成用溶液中の材料物質の濃度が20質量%以下であれば、均一な塗膜が得られなくなる場合があるという不具合を抑制できる。
したがって、高分子薄膜形成用溶液中の材料物質の濃度を0.3質量%以上15質量%以下の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5質量%以上10質量%以下の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、高分子薄膜形成用溶液の粘度(測定温度:25℃)を1mPa・s以上500mPa・s以下の範囲内の値とすることが好ましい。
高分子薄膜形成用溶液の粘度が1mPa・s以上であれば、塗膜のハジキが発生するという不具合を抑制できる。一方、高分子薄膜形成用溶液の粘度が500mPa・s以下であれば、均一な塗膜が得られなくなるという不具合を抑制できる。
したがって、高分子薄膜形成用溶液の粘度(測定温度:25℃)を2mPa・s以上400mPa・s以下の範囲内の値とすることがより好ましく、3mPa・s以上300mPa・s以下の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、高分子薄膜形成用溶液の粘度は、JIS K7117−1の4.1(ブルックフィールド型回転粘度計)に準拠して測定されたものである。
また、工程フィルム2上に形成された高分子薄膜形成用溶液の塗布層を、高分子薄膜1とするための乾燥条件としては、特に限定されないが、通常40℃以上120℃以下の温度条件で、かつ6秒間以上300秒間以下の乾燥時間で行うことが好ましい。
乾燥温度が40℃以上であれば、乾燥に時間がかかり過ぎたり乾燥不足になったりする不具合を抑制できる。一方、乾燥温度が120℃以下であれば、皺やカールが生じたりする不具合を抑制できる。
また、乾燥時間が6秒以上であれば、乾燥不足になるという不具合を防止できる。一方、乾燥時間が300秒以下であれば、皺やカールが生じたりする不具合を抑制できる。
したがって、高分子薄膜形成用溶液の塗布層を高分子薄膜1とするための乾燥条件を、50℃以上110℃以下の温度条件、かつ12秒間以上180秒間以下の乾燥時間とすることがより好ましく、60℃以上100℃以下の温度条件、かつ18秒間以上120秒間以下の乾燥時間とすることがさらに好ましい。
また、高分子薄膜形成用溶液の塗布を、ロールツーロール(Roll to Roll)法にて行うことが好ましい。
この理由は、ロールツーロール法であれば、所定の厚さを有する高分子薄膜1を、より効率的に形成することができることから、フィルム状積層体10をより効率よく大量生産することができるためである。
また、ロールツーロール法を実施するにあたり、塗布装置として、特に、バーコータ、リバースグラビアコータまたはスロットダイコータを用いて行うことが好ましい。
この理由は、これらの塗布装置であれば、所定の厚さを有する高分子薄膜1を、さらに効率的に形成することができるためである。
すなわち、バーコータ、リバースグラビアコータおよびスロットダイコータであれば、ナノメートルオーダーの厚さの高分子薄膜1を、その表面に皺を発生させることなく、かつ、均一な厚さで形成できる。しかも、バーコータ、リバースグラビアコータおよびスロットダイコータは、その構造が簡単である上、経済性にも優れる。
(水透過性シート)
本実施形態に用いる水透過性シート3には、図2に示すように、片面に部分的に粘着剤層4が設けられていることが好ましい。なお、水透過性シート3とは、液体媒体をシートの一方の面側から他方の面側に透過させるシートである。
また、水透過性シート3の形状は、帯状であることが好ましい。さらに、水透過性シート3の形状が帯状である場合、水透過性シート3には、平面視における長さ方向の先端部3Aに、粘着剤層4が設けられていることが好ましい。さらに、粘着剤層4は、水透過性シート3の幅方向の全体に亘って設けられていることが好ましい。なお、水透過性シート3および粘着剤層4で本実施形態の粘着シート20が構成される。
粘着シート20は、粘着剤層4の表面に、剥離シートを有してもよい。この剥離シートは、フィルム状積層体10に水透過性シート3を積層する前に、剥離すればよい。
水透過性シート3の材料物質は、不織布および紙からなる群から選択される少なくとも一つである。
不織布の材質としては、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリオレフィン繊維、およびレーヨン繊維などが挙げられる。
紙としては、グラシン紙、上質紙、およびコート紙などが挙げられる。
水透過性シート3の透気度は、水透過性シート3における水などの透過しやすさの観点から、100,000秒以下であることが好ましく、50,000秒以下であることがより好ましい。透気度は、具体的にはJIS−P8117に則って実施例に記載の方法で測定できる。
水透過性シート3の厚さは、25μm以上であることが好ましく、30μm以上1000μm以下であることがより好ましい。水透過性シート3の厚さが25μm以上であれば、巻回体を作製し、当該巻回体を液状媒体中に浸漬した場合に、水透過性シートを通して液状媒体を巻回体に浸み込ませることができる。
また、水透過性シート3の形状が帯状である場合、水透過性シート3の平面視における幅寸法は、1200mm以下であることが好ましく、400mm以下であることがより好ましく、150mm以下であることが特に好ましい。水透過性シート3の幅寸法が1200mm以下であれば、高分子薄膜および水透過性シートを一緒にして工程フィルムから剥離する作業が容易となる。また、水透過性シート3の平面視における長さ寸法は、特に限定されないが、通常1m以上1000m以下である。
(粘着剤層)
粘着剤層4は、公知の粘着剤を用いて形成することができる。このような粘着剤としては、特に限定されないが、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、およびポリエステル系粘着剤などが挙げられる。
粘着剤層4の厚さは、作業性の観点から、1μm以上300μm以下であることが好ましく、5μm以上200μm以下であることがより好ましく、10μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。
[高分子薄膜分散体の製造方法]
次に、本実施形態の高分子薄膜分散体の製造方法について説明する。
また、本実施形態に係る高分子薄膜分散体200の製造方法は、
(a)図1に示すような、高分子薄膜1と、高分子薄膜1の片面に設けられた工程フィルム2とを備えるフィルム状積層体10と、水透過性シート3とを、高分子薄膜1と水透過性シート3とが向い合うようにして積層する工程(図3参照)と、
(b)高分子薄膜1から工程フィルム2を剥離する工程(図4参照)と、
(c)ロール状に巻回して、高分子薄膜1および水透過性シート3が一緒にロール状に巻回された巻回体100を得る工程(図5参照)と、
(d)巻回体100を液状媒体中に浸漬する工程(図6および図7参照)と、
(e)高分子薄膜1から剥がれた水透過性シート3を、液状媒体5中から除去する工程(図8参照)と、
(f)液状媒体5中の高分子薄膜1を細断し、分散させて、高分子薄膜分散体200を得る工程(図9参照)と、を備える製造方法である。
本実施形態の高分子薄膜分散体の製造方法によれば、図9に示すような高分子薄膜分散体200を製造できる。
<工程(a)>
工程(a)は、図3に示すように、フィルム状積層体10と、水透過性シート3とを、高分子薄膜1と水透過性シート3とが向い合うようにして積層する工程である。本実施形態では、帯状のフィルム状積層体10と帯状の水透過性シート3とを積層させる態様を例に挙げて説明する。ここで、図2に示すような、水透過性シート3と、水透過性シート3の片面に部分的に設けられた粘着剤層4とを備える粘着シート20を用いることが好ましい。
工程(a)においては、フィルム状積層体10と、粘着シート20とを、高分子薄膜1と粘着剤層4とを貼合することで、積層する。また、作業性の観点から、水透過性シート3の幅寸法の方が、高分子薄膜1の幅寸法よりも小さいことが好ましい。
<工程(b)>
工程(b)は、図4に示すように、高分子薄膜1から工程フィルム2を剥離する工程である。
工程(b)においては、高分子薄膜1および水透過性シート3を一緒にして、高分子薄膜1から工程フィルム2を剥離する。本実施形態では、水透過性シート3の先端部3A側(粘着剤層4が形成されている側)を起点にして、工程フィルム2を高分子薄膜1から剥離する。
工程(b)における工程フィルム2の高分子薄膜1からの剥離力は、10mN/100mm以上、1000mN/100mm以下であることが好ましく、20mN/100mm以上、500mN/100mm以下であることがより好ましく、30mN/100mm以上、350mN/100mm以下であることが特に好ましい。
上記の剥離力が10mN/100mm以上であれば、工程(a)において、工程フィルムと高分子薄膜とが剥がれやすくなるという不具合を抑制できる。また、上記の剥離力が1000mN/100mm以下であれば、工程(b)において、高分子薄膜から工程フィルムが剥離しにくくなり、高分子薄膜が破断するという不具合を抑制できる。
上記の剥離力は、例えば、工程フィルム2に用いる剥離剤の種類を変更することで調整できる。
<工程(c)>
工程(c)は、図5に示すように、ロール状に巻回して、高分子薄膜1および水透過性シート3が一緒にロール状に巻回された巻回体100を得る工程である。
工程(c)においては、工程(b)において一緒に剥離した高分子薄膜1および水透過性シート3を、一緒にロール状に巻回して、巻回体100を得る。ここで、粘着剤層4を予め除去してから、高分子薄膜1および水透過性シート3を巻回してもよい。このようにすれば、巻回体100に粘着剤層4が存在しなくなるため、得られる高分子薄膜分散体中の不純物をより少なくできる。
また、作業性の観点から、巻回体100の最外層を高分子薄膜1とすることが好ましい。また、本実施形態においては、巻回体100の状態で一旦保存しておき、その後、以下の工程(d)以降を行ってもよい。このように巻回体100の状態で保存する場合、巻回体100を仮に包装紙などで覆っておくことが好ましい。
<工程(d)>
工程(d)は、図6に示すように、巻回体100を液状媒体5中に浸漬させる工程である。
工程(d)によって、液状媒体5が巻回体100の水透過性シート3を透過する。そして、図7に示すように水透過性シート3から剥がれた高分子薄膜1が、液状媒体5中に浮遊する。
液状媒体5としては、高分子薄膜1を溶解しないものであればよく、特に制限されない。液状媒体5としては、水、塩を溶解させた水、界面活性剤を溶解させた水、および緩衝液などが挙げられる。
<工程(e)>
工程(e)は、液状媒体5中で高分子薄膜1から剥がれた水透過性シート3を、液状媒体5中から除去し、図8に示すような、高分子薄膜1が浮遊する液状媒体5を得る工程である。
水透過性シート3を液状媒体中から除去する方法としては、水透過性シート3を液状媒体中から除去できれば特に限定されないが、例えば、ピンセットなどの把持手段を用いて水透過性シート3を掴んで取り除く方法を採用できる。
<工程(f)>
工程(f)は、液状媒体5中の高分子薄膜1を細断し、分散させて、図9に示すような液状媒体5中に高分子薄膜小片1aを含む高分子薄膜分散体200を得る工程である。
高分子薄膜1を細断し、分散させる方法としては、公知の分散機または攪拌機を用いた方法を採用できる。分散機または攪拌機としては、ホモジナイザー、マイクロフルイダイザーおよびソニケーターなどを用いることが好ましい。ここで細断とは、必ずしも細かく切る必要は無く、任意の大きさに、定形または不定形に切り分けることができる。
本実施形態に係る高分子薄膜分散体200は、液状媒体5中に高分子薄膜小片1aを含むものである。そして、この高分子薄膜小片1aは、健常皮膚、皮膚創傷面、臓器創傷面や角膜などの生体組織に適用できる。
(本実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、次のような作用効果を奏することができる。
(1)生産効率が高く、大量生産に適した高分子薄膜分散体200の製造方法を提供できる。
(2)高分子薄膜分散体200の製造方法において、高分子薄膜1を工程フィルム2上に形成させた後に、工程フィルム2から高分子薄膜1を剥離する方法であるため、高分子薄膜1の平滑性を高めることができる。
(3)高分子薄膜分散体200の製造方法において、水透過性シート3に設けられた粘着剤層4を起点として、脆弱かつハンドリングが困難な高分子薄膜1を、工程フィルム2から簡便に剥離することが可能である。
(4)高分子薄膜分散体200の製造方法において、高分子薄膜1および水透過性シート3が一緒にロール状に巻回された巻回体100を用いる。そして、液状媒体5中に巻回体100を浸漬することによって、高分子薄膜1から容易に水透過性シート3を除去することが可能である。
[実施形態の変形]
本実施形態は前述の実施形態に限定されず、本実施形態の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本実施形態に含まれる。
例えば、前述の実施形態では、水透過性シート3の片面に予め粘着剤層4が設けられている粘着シート20を用いたが、これに限定されない。例えば、フィルム状積層体10と、水透過性シート3とを積層する際に、水透過性シート3に粘着剤層4を設けてもよい。また、フィルム状積層体10と、水透過性シート3とを積層する際に、水透過性シート3の上側から、フィルム状積層体10と、水透過性シート3とを接着テープで貼り付けてもよい。
前述の実施形態における水透過性シート3において、平面視における長さ方向の先端部3Aは、帯状の水透過性シート3の長さ方向の一方の端部の近傍の領域であり、一方の端部から他方の端部に向かって所定の面積を有する領域である。この先端部3Aに粘着剤層を設けることにより、水透過性シート3とフィルム状積層体10とを貼り合わせた後に、高分子薄膜1を工程フィルム2側から水透過性シート3側へ移行させ易くできる。そのため、粘着剤層4は、高分子薄膜1を移行させることができるように先端部3Aに形成されていれば、粘着剤層4の形状や材質は特に限定されない。
前記実施形態では、水透過性シート3およびフィルム状積層体10の形状を帯状としていたが、これに限定されない。水透過性シート3および高分子薄膜1を一緒にロール状に巻き取り可能な長さを有していれば、水透過性シート3およびフィルム状積層体10の形状は帯状でなくてもよい。
[実施例1]
1.巻回体の製造方法
(1)シート状積層体の製造
(1)−1 工程フィルムの製造
実施例1の工程フィルムは、基材と、基材表面に積層された剥離層とを有する。
カルボキシル基を有するポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂(三井化学株式会社製、融点180℃)100質量部を、メチルシクロヘキサン/酢酸エチル=80質量%/20質量%の混合溶媒900質量部に溶解させた溶液(固形分10質量%)に対し、脂肪族ポリイソシアネート化合物としての1,5−ペンタメチレンジイソシアネートがイソシアヌレート環を形成した化合物であるイソシアヌレート化合物(三井化学株式会社製、スタビオD−370N、固形分100質量%)10質量部を添加した後、トルエン/n−ヘプタン混合溶媒にて固形分濃度5質量%に希釈し、剥離剤組成物を調製した。
次いで、マイヤーバーを用いて、基材としての厚さ38μmの帯状のポリエチレンテレフタラートフィルム(三菱樹脂株式会社製、ダイアホイルT100)の表面に対し、得られた剥離剤組成物を塗布した後、100℃で60秒間加熱乾燥させて硬化することにより、厚さ500nmの剥離層とし、帯状の工程フィルムを得た。
(1)−2 高分子薄膜形成用溶液の調製
重量平均分子量が180,000であるポリDL乳酸(PURAC株式会社製、PURASORB20)を酢酸エチルに溶解し、固形分濃度3質量%、25℃における粘度7.1mPa・sの高分子薄膜形成用溶液を調製した。
(1)−3 高分子薄膜の形成
次いで、リバースグラビアコータを用いて、準備した工程フィルムの剥離層面に対し、得られた高分子薄膜形成用溶液を塗布した後、100℃で60秒間乾燥させ、厚さ200nmの高分子薄膜を形成し、帯状のシート状積層体を得た。
(2)粘着シートの製造
100mm幅の剥離紙(リンテック株式会社製、8K)の長さ方向の先端部(剥離紙の長さ方向の先端から10mmの領域(10mm×100mm))に乾燥後の粘着剤層の厚さが25μmになるように、粘着剤溶液(東洋インキ株式会社製、BPS−5127)を塗布し乾燥させ、水透過性シートとなる帯状のグラシン紙(坪量73g/m、透気度5,000秒、厚さ60μm、リンテック株式会社製)を貼り合わせて、帯状の粘着シートを得た。
(3)巻回体の製造
粘着シートの剥離紙を剥離し、粘着シートの粘着剤層を、シート状積層体の高分子薄膜に貼り合わせた。次いで、高分子薄膜および水透過性シートを一緒にして、工程フィルムから剥離しながら、高分子薄膜が外側になるように巻回してロール状にして、巻回体を得た。なお、得られた巻回体を構成する帯状の積層体は、幅寸法が100mmであり、長さ寸法が10mであった。
2.高分子薄膜分散体の製造
得られた巻回体を液状媒体(精製水)中に浸漬させて、高分子薄膜から剥がれた不織布を除去した。
溶液中の高分子薄膜を、ホモジナイザー(IKA社製、ULTRA−TURRAX Disperser T25 basic)を用いて細断したところ、高分子薄膜小片が分散した高粘度液体である高分子薄膜分散体が得られた。
3.測定および評価
(1)工程フィルムの剥離力
得られたシート状積層体における、高分子薄膜から工程フィルムを剥離する際の剥離力を測定した。
すなわち、シート状積層体における工程フィルムに対して粘着テープ(日東電工株式会社製、No.31B)を貼合した後、粘着テープが貼合された状態の工程フィルムを高分子薄膜から180°剥離する際の剥離力(mN/100mm)を測定した。得られた結果を表1に示す。
(2)透気度
得られたシート状積層体における、水透過性シートの透気度を、JIS−P8117に記載の方法で、透気度試験機(旭精工株式会社製、水柱式王研式透気度・平滑度試験機 KY6)を用いて測定した。
(3)高分子薄膜の剥離性評価
得られた高分子薄膜積層体を液状媒体(精製水)中に浸漬させた。
高分子薄膜積層体を目視で観察し、下記基準に沿って評価し、高分子薄膜の剥離性の評価とした。得られた結果を表1に示す。
A:液状媒体に浸漬させてから3分以内に、高分子薄膜の表面から、水透過性シートが剥がれた。
B:液状媒体に浸漬させてから3分超、10分以内に、高分子薄膜の表面から、水透過性シートが剥がれた。
F:液状媒体に浸漬させてから10分経過後であっても、高分子薄膜の表面から、水透過性シートが剥がれなかった。
[実施例2〜7]
実施例1の水透過性シートを表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、シート状積層体、巻回体、および高分子薄膜分散体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
[比較例1および2]
実施例1の水透過性シートを表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、シート状積層体および巻回体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。なお、表1に示されるように、比較例1および2のシートの透気度は∞であり、これらのシートが完全な不透気体であり、気体や液体に対して透過性を有さないことを示す。比較例1および2の巻回体を液状媒体中に浸漬させたところ、水透過性シートが剥がれなかったため、実施例1と同様の方法で高分子薄膜分散体を製造することはできなかった。
Figure 0006916483
表1に示す結果のように、シートとして水透過性を有するものを用いた場合(実施例1〜7)には、高分子薄膜の剥離性が良好であることが確認された。そのため、実施例1〜7で得られた巻回体を用いる場合、高分子薄膜分散体を容易に製造できる。これにより、実施例1〜7の高分子薄膜分散体の製造方法によれば、生産効率が高く、大量生産に適することが確認された。
一方で、シートとして水透過性を有さないものを用いた場合(比較例1および2)には、高分子薄膜の剥離性が不十分であることが分かった。
1…高分子薄膜、2…工程フィルム、3…水透過性シート、4…粘着剤層、5…液状媒体、10…フィルム状積層体、100…巻回体、200…高分子薄膜分散体。

Claims (10)

  1. (a)工程フィルムおよび高分子薄膜を備えるフィルム状積層体と、水透過性シートとを、前記高分子薄膜と前記水透過性シートとが向い合うようにして積層する工程と、
    (b)前記高分子薄膜から前記工程フィルムを剥離する工程と、
    (c)ロール状に巻回して、前記高分子薄膜および前記水透過性シートが一緒にロール状に巻回された巻回体を得る工程と、
    (d)前記巻回体を液状媒体中に浸漬する工程と、
    (e)前記高分子薄膜から剥がれた前記水透過性シートを、前記液状媒体中から除去する工程と、
    (f)前記液状媒体中の前記高分子薄膜を細断し、分散させて、高分子薄膜分散体を得る工程と、
    を備え
    前記水透過性シートの透気度が、100,000秒以下である
    ことを特徴とする高分子薄膜分散体の製造方法。
  2. 請求項1に記載の高分子薄膜分散体の製造方法において、
    前記水透過性シートが、不織布および紙からなる群から選択される少なくとも1つである
    ことを特徴とする高分子薄膜分散体の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の高分子薄膜分散体の製造方法において、
    前記高分子薄膜の厚さが、5nm以上、1000nm以下である
    ことを特徴とする高分子薄膜分散体の製造方法。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の高分子薄膜分散体の製造方法において、
    前記高分子薄膜を構成する高分子が、ポリ乳酸、乳酸共重合体、ポリラクトン、ラクトン共重合体およびポリペプチドからなる群から選択される少なくとも一種である
    ことを特徴とする高分子薄膜分散体の製造方法。
  5. 請求項1から請求項のいずれか一項に記載の高分子薄膜分散体の製造方法において、
    前記水透過性シートの厚さが、25μm以上である
    ことを特徴とする高分子薄膜分散体の製造方法。
  6. 請求項1から請求項のいずれか一項に記載の高分子薄膜分散体の製造方法において、
    前記工程(b)における前記工程フィルムの前記高分子薄膜からの剥離力が、10mN/100mm以上、1000mN/100mm以下である
    ことを特徴とする高分子薄膜分散体の製造方法。
  7. 請求項1から請求項のいずれか一項に記載の高分子薄膜分散体の製造方法において、
    前記フィルム状積層体および前記水透過性シートが、帯状である
    ことを特徴とする高分子薄膜分散体の製造方法。
  8. 請求項に記載の高分子薄膜分散体の製造方法において、
    前記水透過性シートの平面視における幅寸法が、1200mm以下である
    ことを特徴とする高分子薄膜分散体の製造方法。
  9. 請求項1から請求項のいずれか一項に記載の高分子薄膜分散体の製造方法において、
    前記水透過性シートには、片面に部分的に粘着剤層が設けられており、
    前記工程(a)では、前記高分子薄膜と前記粘着剤層とを貼合することで、前記フィルム状積層体と前記水透過性シートとを積層する
    ことを特徴とする高分子薄膜分散体の製造方法。
  10. 請求項に記載の高分子薄膜分散体の製造方法において、
    前記水透過性シートには、平面視における長さ方向の先端部に、前記粘着剤層が設けられている
    ことを特徴とする高分子薄膜分散体の製造方法。
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