JP6057828B2 - 非水溶性高分子薄膜転写用部材および非水溶性高分子薄膜転写用部材の製造方法 - Google Patents

非水溶性高分子薄膜転写用部材および非水溶性高分子薄膜転写用部材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、非水溶性高分子薄膜転写用部材および非水溶性高分子薄膜転写用部材の製造方法に関する。
特に、適用対象物に対して適用した際に、適用対象物の表面に密着した状態の非水溶性高分子薄膜から、支持体を容易に剥離して、安定的に非水溶性高分子薄膜のみを適用対象物の表面に転写させることができる非水溶性高分子薄膜転写用部材およびその製造方法に関する。
従来、ポリL−乳酸等の非水溶性高分子からなる膜厚が数十から数百nmの生体適合性を有する高分子薄膜を製造する技術が知られている(例えば、特許文献1および2)。
かかる高分子薄膜は、生体吸収性、生体分解性および組織修復性等を有することから、生体組織への適用性に優れている。
また、かかる高分子薄膜は、健常皮膚、皮膚創傷面、臓器創傷面や角膜等の生体組織に適用した場合、静電気力や濡れ性により、生体組織に対して強固に密着することが知られている。
したがって、高分子薄膜は、このような諸特性を有することから、健常皮膚、皮膚創傷面、臓器創傷面および角膜等の生体組織の被覆材等としての使用が検討されている。
例えば、特許文献1には、以下の工程により得られることを特徴とする薄膜状構造体が開示されている。
(a)基体の液相との界面における任意形状の領域に多官能性分子を吸着させ、
(b)吸着した多官能性分子を重合および/または架橋して高分子の薄膜を形成させ、
(c)形成された薄膜を基体から剥離する。
また、特許文献2には、膜の表面(A面)と裏面(B面)に機能性物質を有することを特徴とする薄膜状高分子構造体が開示されている。
より具体的には、例えば、以下の工程により得られる薄膜状構造体が開示されている。
(a)基体の液相との界面における任意形状の領域に多官能性分子を吸着させ、
(b)吸着させた多官能性分子を重合および/または架橋して高分子の薄膜を形成させ、
(c)形成させた薄膜のA面に機能性物質を結合させた後、さらにその上に可溶性支持膜を形成させ、
(d)薄膜および可溶性支持膜を基体から剥離させ、
(e)薄膜のB面に、A面に結合させた機能性物質と同一または別の機能性物質を結合させた後、可溶性支持膜を溶剤にて溶解させる。
WO2006/025592号公報(請求の範囲) WO2008/050913号公報(請求の範囲)
しかしながら、特許文献1に記載の高分子薄膜は、所定の溶剤等に浸漬させることによって基体から剥離した状態の薄膜を、そのまま生体組織等の対象物に適用しなければならないため、ハンドリング性が著しく低いという問題が見られた。
一方、特許文献2には、高分子薄膜に対して可溶性支持膜を積層することにより、高分子薄膜のハンドリング性を向上させる技術が記載されており、実施例においては、高分子薄膜および可溶性支持膜の積層体を、ラットの盲腸に適用し、その後、生理食塩水で可溶性支持膜を溶解する態様が記載されている。
しかしながら、可溶性支持膜を溶解するにためには多量の生理食塩水を必要とするため、例えば、臓器創傷面に高分子薄膜を適用する場合には、体液を含んだ溶解液を回収しなければならず、迅速さが要求される医療の現場等において作業工程が増えることになる。
一方、生理食塩水の量が不足して水溶性支持膜の溶解が不十分になると、高分子薄膜が適用対象物である生体膜に追従できず、高分子薄膜が破れ易くなる場合がある。
したがって、適用対象物に対して適用する際のハンドリング性に優れ、かつ、可溶性支持膜を溶解するための多量の生理食塩水を必要としない高分子薄膜の転写技術が求められていた。
そこで、本発明者らは、以上のような事情に鑑み、鋭意努力したところ、それぞれ所定の膜厚を有する非水溶性高分子薄膜と、支持体とを、接触面積率が所定の範囲内の値となるように積層することにより、上述した問題を解決することができることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の目的は、適用対象物に対して適用した際に、適用対象物の表面に密着した状態の非水溶性高分子薄膜から、支持体を容易に剥離して、安定的に非水溶性高分子薄膜のみを適用対象物の表面に転写することができる非水溶性高分子薄膜転写用部材およびその製造方法を提供することにある。
本発明によれば、適用対象物に転写される非水溶性高分子薄膜と、当該非水溶性高分子薄膜を支持するための支持体と、を積層してなる非水溶性高分子薄膜転写用部材であって、非水溶性高分子薄膜の膜厚を20〜500nmの範囲内の値とするとともに、支持体の膜厚を1〜1,000μmの範囲内の値とし、支持体が、非水溶性高分子薄膜との接触面側から反対側まで貫通してなる切り抜き部を有する支持体、または、非水溶性高分子薄膜との接触面にエンボス処理が施されてなる支持体であり、かつ、非水溶性高分子薄膜と、支持体と、の接触面積率を、非水溶性高分子薄膜の面積100%に対して、20〜80%の範囲内の値とすることを特徴とする非水溶性高分子薄膜転写用部材が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、本発明の非水溶性高分子薄膜転写用部材であれば、それぞれ所定の膜厚を有する非水溶性高分子薄膜と、支持体とを積層してあることから、非水溶性高分子薄膜を適用対象物に対して適用する際のハンドリング性を効果的に向上させることができる。
また、それぞれ所定の膜厚を有する非水溶性高分子薄膜と、支持体との接触面積率が所定の範囲内の値となるように積層していることから、適用対象物に対して適用した際に、適用対象物の表面に密着した状態の非水溶性高分子薄膜から、支持体を容易に剥離することができる。
したがって、安定的に非水溶性高分子薄膜のみを適用対象物の表面に転写することができる。
また、本発明の非水溶性高分子薄膜転写用部材を構成するにあたり、支持体が、少なくとも非水溶性高分子薄膜との接触面において、シリコーン樹脂を含むことが好ましい。
このように構成することにより、適用対象物に対して適用した際に、適用対象物の表面に密着した状態の非水溶性高分子薄膜から、支持体をより容易に剥離することができる。
また、本発明の非水溶性高分子薄膜転写用部材を構成するにあたり、非水溶性高分子薄膜が、ポリ乳酸、乳酸共重合体、ポリラクトンおよびラクトン共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含むとともに、シリコーン樹脂が、当該シリコーン樹脂からなる平滑なシリコーン膜の表面に対し、膜厚16μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼合し、温度23℃、湿度50%RHの条件下で30分間放置した後に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを引張り速さ300mm/分で180°方向に引き剥がして測定される粘着力が5〜100mN/25mmの範囲内の値となるシリコーン樹脂であることが好ましい。
このように構成することにより、適用対象物に対して適用した際に、適用対象物の表面に密着した状態の非水溶性高分子薄膜から、支持体をさらに容易に剥離することができる。
また、本発明の非水溶性高分子薄膜転写用部材を構成するにあたり、支持体が、基材と、当該基材上に形成されたシリコーン層と、の積層体であるとともに、非水溶性高分子薄膜との接触面側から反対側まで貫通してなる切り抜き部を有することが好ましい。
このように構成することにより、非水溶性高分子薄膜と、支持体との接触面積率を、容易に所定の範囲内の値に調節することができる。
また、本発明の非水溶性高分子薄膜転写用部材を構成するにあたり、支持体が、単層のシリコーン膜であるとともに、非水溶性高分子薄膜との接触面にエンボス処理が施されてなることが好ましい。
このように構成することにより、長尺の支持体を製造することができることから、非水溶性高分子薄膜と、支持体との接触面積を所定の範囲内の値に調節した非水溶性高分子薄膜転写用部材を、ロールツーロール法にて効率的に製造することができる。
また、本発明の非水溶性高分子薄膜転写用部材を構成するにあたり、非水溶性高分子薄膜における支持体との接触面とは反対側の面に、剥離シートを積層してなることが好ましい。
このように構成することにより、非水溶性高分子薄膜転写用部材の使用前において、非水溶性高分子薄膜を安定的に保護することができる。
また、本発明の非水溶性高分子薄膜転写用部材を構成するにあたり、剥離シートが、フレキシブル性を有するとともに、少なくとも非水溶性高分子薄膜との接触面において、脂環式オレフィン系樹脂を含むことが好ましい。
このように構成することにより、非水溶性高分子薄膜転写用部材を使用する際に、非水溶性高分子薄膜および支持体の積層体を、安定的に剥離シートから剥離することができる。
なお、「非水溶性高分子薄膜および支持体の積層体」も本発明の非水溶性高分子薄膜転写用部材であり、剥離シートが積層した状態の「非水溶性高分子薄膜および支持体の積層体」も本発明の非水溶性高分子薄膜転写用部材である。
また、本発明の非水溶性高分子薄膜転写用部材を構成するにあたり、剥離シートの膜厚を10〜200μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、剥離シートのフレキシブル性が好適な範囲となることから、剥離シートと、非水溶性高分子薄膜と、支持体とからなる非水溶性高分子薄膜転写用部材を、ロールツーロール法にて効率的に製造することができる。
また、本発明の別の態様は、適用対象物に転写される非水溶性高分子薄膜と、当該非水溶性高分子薄膜を支持するための支持体と、を積層してなる非水溶性高分子薄膜転写用部材の製造方法であって、下記工程(a)〜(c)を含むことを特徴とする非水溶性高分子薄膜転写用部材の製造方法である。
(a)非水溶性高分子薄膜との接触面側から反対側まで貫通してなる切り抜き部を有する支持体、または、非水溶性高分子薄膜との接触面にエンボス処理が施されてなる支持体であって、膜厚が1〜1,000μmの範囲内の値である支持体と、剥離シートと、を準備する工程
(b)剥離シート上に、非水溶性高分子薄膜形成用溶液を塗布し、膜厚が20〜500nmの範囲内の値である非水溶性高分子薄膜を形成する工程
(c)非水溶性高分子薄膜と、支持体と、の接触面積率が、非水溶性高分子薄膜の面積100%に対して、20〜80%の範囲内の値となるように、非水溶性高分子薄膜上に、支持体を積層する工程
すなわち、本発明の非水溶性高分子薄膜転写用部材の製造方法であれば、剥離シート上に形成された非水溶性高分子薄膜に対して、支持体を積層することから、剥離シートと、非水溶性高分子薄膜と、支持体とからなる所定の非水溶性高分子薄膜転写用部材を、効率よく製造することができる。
図1(a)〜(d)は、本発明の非水溶性高分子薄膜転写用部材の態様および使用方法を説明するために供する図である。 図2(a)〜(c)は、本発明の非水溶性高分子薄膜転写用部材の別の態様を説明するために供する図である。 図3(a)〜(b)は、支持体の態様について説明するために供する図である。 図4(a)〜(b)は、切り抜き部を有する支持体について説明するために供する図である。 図5(a)〜(c)は、エンボス処理が施された支持体について説明するために供する図である。 図6(a)〜(b)は、非水溶性高分子薄膜転写用部材の応用形態を説明するために供する図である。 図7(a)〜(b)は、マイクログラビアコータについて説明するために供する図である。 図8(a)〜(b)は、スロットダイコータについて説明するために供する図である。 図9は、実施例1における支持体を説明するために供する図である。 図10は、実施例2における支持体を説明するために供する図である。 図11(a)〜(b)は、実施例3における支持体を説明するために供する写真および図である。 図12は、実施例4における支持体を説明するために供する図である。 図13は、比較例2における支持体を説明するために供する図である。 図14は、比較例4における支持体を説明するために供する図である。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、適用対象物に転写される非水溶性高分子薄膜と、当該非水溶性高分子薄膜を支持するための支持体と、を積層してなる非水溶性高分子薄膜転写用部材であって、非水溶性高分子薄膜の膜厚を20〜500nmの範囲内の値とするとともに、支持体の膜厚を1〜1,000μmの範囲内の値とし、かつ、非水溶性高分子薄膜と、支持体と、の接触面積率を、非水溶性高分子薄膜の面積100%に対して、20〜80%の範囲内の値とすることを特徴とする非水溶性高分子薄膜転写用部材である。
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
1.基本的構成
最初に、図1〜2を用いて、本発明の基本的構成について説明する。
本発明の非水溶性高分子薄膜転写用部材は、図1(a)に示すように、非水溶性高分子薄膜4と、支持体6と、を積層した積層体10aであることを特徴とする。
したがって、かかる非水溶性高分子薄膜転写用部材10aの使用方法としては、まず、図1(b)に示すように、非水溶性高分子薄膜4が例えば、臓器創傷面等の適用対象物50に対して直接接触するように載置する。
次いで、そのままの状態で1〜30秒ほど放置して、非水溶性高分子薄膜4を適用対象物50の表面形状に対して十分に追従させ、密着させる。
次いで、図1(c)に示すように、適用対象物50の表面に密着した状態の非水溶性子分子薄膜4から、ピンセット等を用いて支持体6を剥離する。
その結果、図1(d)に示すように、生理食塩水を用いることなく、安定的に非水溶性高分子薄膜4のみを適用対象物50の表面に転写することができる。
また、本発明の非水溶性高分子薄膜転写用部材は、図2(a)に示すように、非水溶性高分子薄膜4における支持体6との接触面とは反対側の面に、剥離シート2を積層してなる積層体10bであることも好ましい。
この理由は、このような態様であれば、非水溶性高分子薄膜転写用部材10bの使用前において、非水溶性高分子薄膜4を安定的に保護することができるためである。
すなわち、図2(a)に示す態様の非水溶性高分子薄膜転写用部材10bであれば、非水溶性高分子薄膜4が剥離シート2および支持体6によって両側から挟持されているため、使用前の段階において、非水溶性高分子薄膜4を安定的に保護することができる。
したがって、かかる態様の非水溶性高分子薄膜転写用部材10bの使用方法は、まず、図2(b)に示すように、ピンセット等を用いて非水溶性高分子薄膜4および支持体6の積層体10aを、剥離シート2から剥離して、図2(c)に示すように、非水溶性高分子薄膜転写用部材10aを用意する。
それ以降は、図1(a)〜(d)に示すようにして、適用対象物50に対して非水溶性高分子薄膜転写用部材10aを適用し、非水溶性高分子薄膜4のみを適用対象物50の表面に転写することができる。
2.非水溶性高分子薄膜
(1)材料物質
本発明における非水溶性高分子薄膜は、非水溶性であることを特徴とする。
この理由は、本発明における非水溶性高分子薄膜の主な適用対象物は、臓器創傷面や角膜等の生体組織、表皮などであり、基本的に生体由来の粘液、汗等をその表面に有していることから、かかる粘液等に含まれる水分によって非水溶性高分子薄膜が溶解することを防ぐためである。
したがって、本発明における非水溶性高分子薄膜の材料物質は、非水溶性の高分子薄膜を形成できるものであれば、特に限定されるものではなく、従来公知の材料物質を用いることができるが、生体適合性の材料物質を用いることがより好ましい。
また、本発明において非水溶性高分子薄膜を非水溶性とするにあたり、必ずしもその材料物質が非水溶性である必要はなく、その材料物質を加熱乾燥や架橋反応、重合等することにより、最終的に非水溶性高分子薄膜が得られるものであればよい。
また、具体的な材料物質としては、ポリ乳酸、乳酸共重合体、ポリラクトン、ラクトン共重合体、ポリペプチド等が挙げられる。
また、上述した材料物質の中でも、ポリ乳酸、乳酸共重合体、ポリラクトンまたはラクトン共重合体の少なくとも一つを含むことが好ましい。
この理由は、非水溶性高分子薄膜が、材料物質としてこれらの化合物を含むことにより、より均一な膜厚を有する非水溶性高分子薄膜を、安定的に得ることができるためである。
また、材料物質としてポリ乳酸を用いる場合には、例えば、L−乳酸またはD−乳酸あるいはこれらの両者を含む乳酸の重合体を用いることが好ましい。また、L−ラクチド、D−ラクチド、meso−ラクチド等の乳酸の環状二量体であるラクチドの重合体を用いてもよい。
また、材料物質として乳酸共重合体を用いる場合には、単量体成分としての乳酸とその他の単量体成分とに由来した共重合体を用いることが好ましい。
上述したその他の単量体成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含む化合物類またはその誘導体;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を有する化合物類またはその誘導体が挙げられる。
また、乳酸共重合体を構成する乳酸とその他の単量体成分とを共重合する際の重量比は乳酸/その他の単量体成分=50/50〜99/1であることが好ましい。
また、材料物質としてポリラクトンを用いる場合には、例えば、εカプロラクトン、δブチロラクトン、βメチル-δバレロラクトン、βプロピオラクトン等のラクトンの重合体を用いることが好ましい。
また、材料物質としてラクトン共重合体を用いる場合には、例えば、ラクトンとその他の単量体成分との重合体を用いることが好ましい。
上述したその他の単量体成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含む化合物類またはその誘導体;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を有する化合物類またはその誘導体が挙げられる。また、上述した乳酸またはラクチドをその他の単量体成分として用いてもよい。
また、ラクトン共重合体を構成するラクトンとその他の単量体成分とを共重合する際の重量比はラクトン/その他の単量体成分=50/50〜99/1であることが好ましい。
また、材料物質としてポリペプチドを用いる場合には、例えば、ポリリシン、ポリグルタミン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリグリシン、ポリフェニルアラニン、ポリアラニン、ポリロイシン、ポリイソロイシン、ポリバリン、ポリプロリン、ポリセリン、ポリスレオニン、ポリチロシン等を用いることが好ましい。
また、材料物質として、反対電荷を有する高分子電解質(ポリカチオンおよびポリアニオン)の希薄溶液を交互に塗布することにより、ポリカチオンと、ポリアニオンとが積層された非水溶性高分子薄膜を形成することも好ましい。なお、ポリカチオンとポリアニオンとの積層数としては、それぞれ1層を積層した2層の積層体としてもよいが、さらに交互に積層して4層〜20層程度の積層体としてもよい。
かかるポリカチオンとしては、ポリリシン、ポリグルタミン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン等が挙げられ、ポリアニオンとしては、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸等を挙げることが好ましい。
また、材料物質の重量平均分子量を10,000〜2,000,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、材料物質の重量平均分子量をかかる範囲内の値とすることにより、より均一な膜厚を有する非水溶性高分子薄膜を、さらに安定的に得ることができるばかりか、非水溶性高分子薄膜の強度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、材料物質の重量平均分子量が10,000未満の値となると、非水溶性高分子薄膜の強度が不十分となる場合があるためである。
一方、材料物質の重量平均分子量が2,000,000を超えた値となると、非水溶性高分子薄膜の膜厚が不均一となる場合があるためである。
したがって、材料物質の重量平均分子量を30,000〜1,000,000の範囲内の値とすることがより好ましく、50,000〜500,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、材料物質は、上述したような重合体ばかりでなく、多官能性単量体であってもよい。
但し、これらの多官能性単量体を用いて非水溶性高分子薄膜を形成する場合は、多官能性単量体を重合し、あるいは、さらに架橋することが必要になる。
かかる多官能性単量体としては、例えば、アミノ酸や糖類等、分子内にアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、イソシアナート基、アルデヒド基、エポキシ基、シアヌル基等を複数有する単量体や、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ビスマレイミド等、分子内に複数のビニル基を有する単量体等が挙げられる。
(2)膜厚
また、非水溶性高分子薄膜の膜厚を20〜500nmの範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、非水溶性高分子薄膜を、適用対象物として臓器創傷面や角膜等の生体組織に適用した場合に、膜強度を適度に保ちながら生体組織に対してより強固に密着させることができるためである。
さらに、非水溶性高分子薄膜を、適用対象物として皮膚表面に適用した場合には、皮膚の肌理に追従し、より強固に密着させることができるためである。
すなわち、非水溶性高分子薄膜の膜厚が20nm未満の値となると、膜強度が過度に低下して、適用対象物に対して適用した際に、過度に破断し易くなる場合がある。一方、非水溶性高分子薄膜の膜厚が500nmを超えた値となると、適用対象物に対する密着性が過度に低下したりする場合がある。
したがって、非水溶性高分子薄膜の膜厚を25〜400nmの範囲内の値とすることがより好ましく、30〜200nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、適用対象物に対してより強固に密着させる観点からは、非水溶性高分子薄膜の膜厚を150nm以下の値とすることが特に好ましい。
(3)機能性物質による修飾
また、非水溶性高分子薄膜の表面を、機能性物質により修飾することも好ましい。
ここで、「機能性物質」とは、細胞膜上にある認識タンパク質やそのリガンド、抗原や抗体など分子認識能を有する物質や、触媒や酵素など特定の反応を促進する物質、抗酸化剤やラジカル消去剤など特定の反応に関与する物質、あるいはカルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、マレイミド基など電荷や反応に関与する基や配位子などを意味する。
また、高分子電解質の電荷(静電相互作用)を利用して機能を発現させる物質も機能性物質に含まれる。
例えば、機能性物質としては、ポリエチレングリコールや糖鎖のような高分子化合物、タンパク質、ペプチド、糖鎖、ビオチン誘導体、ポリカチオンおよびポリアニオンの高分子電解質からなる群から選択される少なくとも一つが挙げられる。
また、機能性物質の結合法としては、化学的あるいは物理的に結合させる方法がある。
まず、化学的に結合させる方法としては、非水溶性高分子薄膜を構成する重合体等に導入されたアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、イソシアナート基、アルデヒド基、エポキシ基、シアヌル基、ビニル基に対して、結合し得る官能基を介して結合させることが好ましい。
例えば、機能性物質と非水溶性高分子薄膜との結合反応として、ヒドロキシル基やアミノ基と、イソシアナート基との反応によるウレタン結合やユリア結合、アミノ基と、アルデヒド基との反応によるシッフ塩基の形成、メルカプト基同士のジスルフィド結合、メルカプト基と、ピリジルジスルフィド基やマレイミド基との反応やカルボニル基と、スクシンイミド基との反応等を利用することが好ましい。
また、物理的に結合させる方法としては、機能性物質側と非水溶性高分子薄膜側との静電的相互作用、疎水性相互作用、水素結合あるいは分子間力などを用いることが好ましい。
あるいは、非水溶性高分子薄膜側または機能性物質側にリガンドを導入させておき、機能性物質側または非水溶性高分子薄膜側に導入されたアクセプターとのコンプレックスを利用して機能性物質を非水溶性高分子薄膜上に固定することが好ましい。
具体的な組合せとしては、ビオチンとアビジン、糖鎖とレクチン、抗原と抗体、薬物とレセプター、酵素と基質などが挙げられる。
また、酵素としては、カタラーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、キモトリプシン、チトクローム、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、ガラクトシダーゼ、グリコセレブロシダーゼ、血液凝固因子、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、プルラナーゼ、イソメラーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースイソメラーゼ、グルタミナーゼ、β−グルカナーゼ、セリンプロテアーゼ等が挙げられるが、これらに何ら限定されるものではない。
3.支持体
(1)材料物質
本発明における支持体は、非水溶性高分子薄膜を支持し、非水溶性高分子薄膜転写用部材のハンドリング性を向上させるためのものである。
したがって、その材料物質としては、所定の膜厚とした場合に、所定の強度を有し、かつ、適用対象物の表面に密着した状態の非水溶性高分子薄膜から、生理食塩水を用いることなく、ピンセット等により容易に剥離できる表面特性を有していれば、特に限定されるものではない。
また、本発明における支持体は、図3(a)に示すように、強度を得るための基材6bと、表面特性を得るために基材6bの上に形成された表面層6aと、の積層体6であってもよいし、図3(b)に示すように、強度および表面特性をともに備えた単一の材料物質からなる単層の膜6であってもよい。
また、本発明における支持体を、図3(a)に示すような積層体として構成する場合、基材に用いられる材料物質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂および紙等が挙げられる。
また、上述した材料物質の中でも、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
この理由は、透明性及び耐熱性に優れるためである。
また、表面層に用いられる材料としては、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂およびウレタン樹脂等が挙げられる。
また、上述した材料物質の中でも、シリコーン樹脂であることが好ましい。
この理由は、非水溶性高分子薄膜転写用部材を適用対象物に対して適用した際に、適用対象物の表面に密着した状態の非水溶性高分子薄膜から、支持体をより容易に剥離することができるためである。
また、具体的なシリコーン樹脂としては、例えば、付加反応型、縮合反応型、紫外線硬化型、電子線硬化型等のシリコーン樹脂が挙げられる。
付加反応型シリコーン樹脂の具体例としては、分子の末端および/または側鎖に、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基を2個以上備えたオルガノポリシロキサンが挙げられる。
このような付加反応型シリコーン樹脂を用いる際には、架橋剤および触媒を併用することが好ましい。
上述した架橋剤としては、例えば、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサン、具体的には、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンおよびポリハイドロジェンシルセスキオキサン等が挙げられる。
また、上述した触媒としては、例えば、微粒子状白金、炭素粉末担体上に吸着された微粒子状白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、パラジウムおよびロジウム等の白金族金属系化合物等が挙げられる。
なお、本発明の支持体を、図3(b)に示すような単層の膜として構成する場合、その材料物質は、上述した表面層を構成する材料物質と同様にすることが好ましい。
また、支持体もしくは支持体に用いられる表面層を構成する材料物質が、所定の表面特性(粘着力)を有することが好ましい。
すなわち、支持体もしくは支持体に用いられる表面層を構成する材料物質からなる平滑な膜の表面に対し、膜厚16μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼合し、温度23℃、湿度50%RHの条件下で30分間放置した後に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを引張り速さ300mm/分で180°方向に引き剥がして測定される粘着力を5〜100mN/25mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、非水溶性高分子薄膜転写用部材を適用対象物に対して適用した際に、適用対象物の表面に密着した状態の非水溶性高分子薄膜から、支持体をさらに容易に剥離することができるためである。
すなわち、かかる粘着力が5mN/25mm未満の値となると、支持体と非水溶性高分子薄膜間の付着力が過度に低下して、特に、図2(a)に示すように、非水溶性高分子薄膜に対して剥離シートを積層する態様の場合には、剥離シートを剥離する際に、支持体から非水溶性高分子薄膜が剥離してしまう場合があるためである。一方、かかる粘着力が100mN/25mmを超えた値となると、支持体と非水溶性高分子薄膜間の付着力が過度に増加して、適用対象物の表面に密着した状態の非水溶性高分子薄膜から、支持体を剥離することが困難になる場合があるためである。
したがって、支持体もしくは支持体に用いられる表面層を構成する材料物質からなる平滑な膜の表面における上述した条件下で測定される粘着力を10〜80mN/25mmの範囲内の値とすることがより好ましく、15〜50mN/25mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、支持体に用いられるシリコーン樹脂が、複数のシリコーン樹脂の混合物である場合や、その他の成分を含む混合物である場合には、その混合物からなる平滑なシリコーン膜の表面において測定される粘着力を、上述した数値範囲内の値とすればよい。
(2)膜厚
また、支持体の膜厚を1〜1,000μmの範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、支持体の膜厚をかかる範囲内の値とすることにより、非水溶性高分子薄膜を効果的に補強してハンドリング性を高めることができる一方で、適用対象物に適用した際には、適度なフレキシブル性により、非水溶性高分子薄膜を適用対象物の表面形状に対して十分に追従させ、密着させることができるためである。
すなわち、支持体の膜厚が1μm未満の値となると、支持体を均一に形成することが困難になったり、非水溶性高分子薄膜を効果的に補強することが困難になったりする場合があるためである。一方、支持体の膜厚が1,000μmを超えた値となると、フレキシブル性が低下して、非水溶性高分子薄膜を適用対象物の表面形状に対して十分に追従させ、密着させることが困難になる場合があるためである。
したがって、支持体の膜厚を5〜500μmの範囲内の値とすることがより好ましく、10〜100μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、支持体を、図3(a)に示すような積層体として構成する場合、基材6bの膜厚を5〜999μmの範囲内の値とすることが好ましく、10〜500μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
また、表面層6aの膜厚を1〜995μmの範囲内の値とすることが好ましく、5〜100μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
(3)接触面積率
また、非水溶性高分子薄膜と、支持体と、の接触面積率を、非水溶性高分子薄膜の面積100%に対して、20〜80%の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかる接触面積率を所定の範囲内の値とすることにより、非水溶性高分子薄膜転写用部材を適用対象物に対して適用した際に、適用対象物の表面に密着した状態の非水溶性高分子薄膜から、支持体を容易に剥離することができるためである。
すなわち、かかる接触面積率が20%未満の値となると、支持体と非水溶性高分子薄膜間の付着力が過度に低下して、特に、図2(a)に示すように、非水溶性高分子薄膜に対して剥離シートを積層する態様の場合には、剥離シートを剥離する際に、支持体から非水溶性高分子薄膜が剥離してしまう場合があるためである。一方、かかる接触面積率が80%を超えた値となると、支持体と非水溶性高分子薄膜間の付着力が過度に増加して、適用対象物の表面に密着した状態の非水溶性高分子薄膜から、支持体を剥離することが困難になる場合があるためである。
したがって、非水溶性高分子薄膜と、支持体と、の接触面積率を、非水溶性高分子薄膜の面積100%に対して、25〜80%の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜80%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(4)切り抜き部
また、支持体が、図4(a)〜(b)に示すように、基材6bと、当該基材6bの上に形成された表面層6aとの積層体6であるとともに、非水溶性高分子薄膜4との接触面側から反対側まで貫通してなる切り抜き部を有することが好ましい。
この理由は、かかる切り抜き部を有することにより、非水溶性高分子薄膜と、支持体との接触面積率を、容易に所定の範囲内の値に調節することができるためである。
なお、かかる切り抜き部の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、四角形、三角形、円形、楕円形、異形等とすることができ、その形成方法としては、カッターを用いて切り抜いたり、パンチングにより切り抜いたりする方法が挙げられる。
さらに、切り抜き部は、一つの支持体に単数であってもよいし、複数であってもよい。
(5)エンボス処理
また、支持体が、図5(a)〜(c)に示すように、単層の膜6であるとともに、非水溶性高分子薄膜4との接触面にエンボス処理が施されてなることが好ましい。
この理由は、このようにエンボス処理が施されていることにより、長尺の支持体を製造することができることから、非水溶性高分子薄膜と、支持体との接触面積を所定の範囲内の値に調節した非水溶性高分子薄膜転写用部材を、ロールツーロール法にて効率的に製造することができるためである。
なお、エンボスパターンの態様は、特に限定されるものではなく、例えば、筋状、格子状等とすることができ、エンボス表面における凸部の高さは、通常、単層の膜6よりも薄くかつ1〜500μmの範囲内の値とすることができ、エンボス処理の方法としては、表面にエンボスパターンを有するように成形したフィルムに対して、単層の膜の材料物質であるシリコーン樹脂等を塗布し、乾燥させた後、剥離する方法が挙げられる。
なお、接触面積率の調節は、上述した切り抜き部やエンボス処理に限られず、例えば、シリコーン樹脂を基材上にインクジェットプリンタ等で所定パターンに印刷して調節することも好ましい。
4.剥離シート
(1)種類
剥離シートの種類としては、ハンドリング性や加工性を向上させる観点から、フレキシブル性を有する材料からなるものであれば、特に限定されるものではない。
したがって、例えば、ポリプロピレンシートやポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレンシート等のポリエステル樹脂シート、ポリカーボネート樹脂シート、等が好適に使用される。
また、フレキシブル性を有するとともに、少なくとも非水溶性高分子薄膜との接触面において、脂環式オレフィン系樹脂層を含む剥離シートを用いることが好ましい。
この理由は、このような剥離シートであれば、非水溶性高分子薄膜転写用部材を使用する際に、非水溶性高分子薄膜および支持体の積層体を、安定的に剥離シートから剥離することができるためである。
すなわち、脂環式オレフィン系樹脂であれば、非水溶性高分子薄膜に対して優れた離型性を有することから、非水溶性高分子薄膜および支持体の積層体を、剥離シートから容易に剥離することができるためである。
また、脂環式オレフィン系樹脂であれば、透明性に優れることから、例えば、着色剤を含有させたときに、優れた視認性を得ることができる。
さらに、脂環式オレフィン系樹脂であれば、耐熱性にも優れることから、シート状積層体をロールツーロール法を用いて高速で製造した場合等であっても、延びが発生することを効果的に抑制することができる。
また、脂環式オレフィン系樹脂を構成する脂環式オレフィンとしては、1環の脂環式オレフィンとして、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等が挙げられる。
また、2環の脂環式オレフィンとして、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン等が挙げられる。
また、3環の脂環式オレフィンとして、例えば、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエンまたはこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン等が挙げられる。
また、4環の脂環式オレフィンとして、例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(単にテトラシクロドデセンともいう)、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等が挙げられる。
さらに、多環の脂環式オレフィンとしては、例えば、8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ−4,9,11,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ−5,10,12,14−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−へキサヒドロアントラセンともいう)、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]−4−ペンタデセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,l6]−14−エイコセン、シクロペンタジエンの4量体等が挙げられる。
なお、上述してきた脂環式オレフィンは、それぞれ単独であるいは2種以上組合せて用いてもよい。
また、上述した脂環式オレフィンの中でも、特に、1環の脂環式オレフィン(特にシクロペンテン、シクロヘキセン)、2環の脂環式オレフィン(特にノルボルネン)および3環の脂環式オレフィン(特にジシクロペンタジエン)からなる群から選択される少なくとも一種の脂環式オレフィンを用いることが好ましい。
また、脂環式オレフィン系樹脂は、脂環式オレフィンと、エチレンまたはα−オレフィン等との共重合体であってもよい。
かかるα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜8のα−オレフィンが挙げられる。
また、脂環式ポリオレフィン系樹脂には、環状ポリオレフィン系樹脂に極性基(例えば、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミド基、エステル基、ヒドロキシル基等)を有する不飽和化合物をグラフトおよび/または共重合したものを含める。
また、脂環式オレフィン系樹脂の構造は、特に制限はされず、鎖状でも、分岐状でも、架橋状でもよいが、直鎖状であることが好ましい。
また、このような脂環式オレフィン系樹脂の分子量としては、GPC法による数平均分子量が0.5万〜30万、好ましくは1万〜15万、さらに好ましくは1.5万〜10万であることが好ましい。
この理由は、数平均分子量が低すぎると機械的強度が低下し、高すぎると成形加工性が悪くなる傾向があるためである。
また、第1の実施形態で使用する脂環式オレフィン系樹脂のガラス転移点(Tg)は、通常、50〜300℃の範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、ガラス転移点(Tg)が高いほど高温でのシート形状の保持と離型性に優れるが、高すぎると成形加工が難しくなる傾向があるためである。
したがって、脂環式オレフィン系樹脂のガラス転移点(Tg)を100〜250℃の範囲内の値とすることがより好ましく、170〜200℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、第1の実施形態における剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層は、材料物質として、脂環式オレフィン系樹脂を単独で使用することが最も好ましいが、他の熱可塑性樹脂を本発明の目的を妨げない範囲内でブレンドして用いてもよい。
また、ブレンドする樹脂の種類としては、特に制限はないが、脂環式オレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂が好ましい。
また、このようなオレフィン系樹脂の中でも、各種ポリエチレン、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、メタロセンポリエチレン、およびこれらの樹脂を熱や電子線又は触媒等により架橋できるように変性した樹脂が更に好ましい。
また、靭性を改良する目的では、オレフィン系のエラストマー、スチレン系のエラストマー等の各種熱可塑性エラストマーや耐衝撃剤等をブレンドしても良い。
また、環状オレフィン系樹脂と親和性の低い樹脂をブレンドする場合は、市販の相溶化剤等を用いることが好ましい。
また、ブレンドする樹脂の配合割合は、脂環式オレフィン系樹脂100重量部に対し、1〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、ブレンドする樹脂の配合割合が少なすぎると、ブレンド効果を得ることが困難になる一方、ブレンドする樹脂の配合割合が多すぎると、剥離シートの剥離性が悪くなる場合があるためである。
したがって、ブレンドする樹脂の配合割合を5〜45重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜20重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、本発明における剥離シートは、脂環式オレフィン系樹脂層と、他の樹脂層を1層または2層以上とを含む複層の剥離シートであってもよい。
他の樹脂層としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
(2)接触角
また、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層の表面に対する純水を用いて測定される接触角(測定温度:25℃)を40〜80°の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる接触角が上記の範囲外の値となると、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に非水溶性高分子薄膜形成用溶液または水溶性高分子溶液を塗布した際に、ハジキ等が生じて塗膜を均一に形成することが困難になる場合や、形成された非水溶性高分子薄膜または支持体を、剥離シートから剥離することが困難になる場合があるためである。
したがって、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層の表面に対する純水を用いて測定される接触角(測定温度:25℃)を45〜75°の範囲内の値とすることがより好ましく、50〜70°の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(3)膜厚
また、剥離シートの膜厚を10〜200μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、剥離シートの膜厚をかかる範囲内の値とすることにより、剥離シートのフレキシブル性が好適な範囲となることから、剥離シートと、非水溶性高分子薄膜と、支持体とからなる非水溶性高分子薄膜転写用部材を、ロールツーロール法にて効率的に製造することができるためである。
すなわち、剥離シートの膜厚が10μm未満の値となると、シート状積層体の膜厚が過度に低下して、剥離シートから非水溶性高分子薄膜および支持体の積層体を剥離することが困難になる場合がある。一方、剥離シートの膜厚が200μmを超えた値となると、フレキシブル性が過度に低下して、剥離シートと、非水溶性高分子薄膜と、支持体とからなる非水溶性高分子薄膜転写用部材を、ロールツーロール法にて効率的に製造することが困難になる場合があるためである。
したがって、剥離シートの膜厚を15〜180μmの範囲内の値とすることがより好ましく、20〜150μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(4)表面粗さ
また、剥離シートの両面もしくはいずれか一方の面における算術平均粗さRa(JIS B0601:2001に準拠して測定)を10nm以下の値とすることが好ましい。
この理由は、剥離シートの両面もしくはいずれか一方の面における算術平均粗さRaをかかる範囲内の値とすることにより、非水溶性高分子薄膜にピンホールが生じたり、その膜厚が不均一になったりすることを効果的に抑制することができるためである。
すなわち、剥離シートの両面もしくはいずれか一方の面における算術平均粗さRaが10nmを超えた値となると、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、非水溶性高分子薄膜を形成した場合に、剥離シート表面の凹凸に起因して、非水溶性高分子薄膜にピンホールが生じたり、その膜厚が不均一になったりする場合があるためである。一方、剥離シートの両面もしくはいずれか一方の面における算術平均粗さRaの値は小さければ小さい程好ましいが、過度に小さな値となると、製造上の困難が生じる場合がある。
したがって、剥離シートの両面もしくはいずれか一方の面における算術平均粗さRa(JIS B0601:2001に準拠して測定)を0〜8nmの範囲内の値とすることがより好ましく、0〜5nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層の表面における算術平均粗さに対する、剥離シートの裏面における算術平均粗さとの比が、0.8〜10であることがより好ましく、0.9〜5であることがさらに好ましい。
なお、同様の観点から、剥離シートの両面もしくはいずれか一方の面における最大表面粗さRt(JIS B0601:2001に準拠して測定)を20nm以下の値とすることが好ましく、0〜18nmの範囲内の値とすることがより好ましく、0〜15nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層の表面における最大表面粗さに対する、剥離シートの裏面における最大表面粗さとの比が、0.8〜10であることがより好ましく、0.9〜5であることがさらに好ましい。
(5)剥離力
また、実施例において記載する所定の試験方法によって測定される非水溶性高分子薄膜から剥離シートを剥離する際の剥離力を、15mN/25mm未満の値とすることが好ましく、0.1〜10mN/25mmの範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、剥離シートの剥離力を所定の範囲内の値とすることにより、非水溶性高分子薄膜を支持体と貼合した後に、非水溶性高分子薄膜から剥離シートを剥離する際に、支持体から非水溶性高分子薄膜が剥離して、非水溶性高分子薄膜が剥離シート上に残留してしまうことを防止することができるためである。
また、非水溶性高分子薄膜から剥離シートを剥離する際の剥離力は、支持体もしくは支持体に用いられる表面層の表面における非水溶性高分子薄膜に対する粘着力よりも小さいことが好ましく、具体的には5mN/25mm以上小さいことが好ましい。
(6)着色
また、剥離シートに対し、着色剤を含有させ、着色することも好ましい。
この理由は、剥離シートを着色することにより、剥離シートから非水溶性高分子薄膜および支持体の積層体を剥離する際に、その剥離境界線を視認しやすくして、より容易に剥離することができるためである。
また、かかる着色剤としては、例えば、キナクリドン系、アンスラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、モノアゾ系、不溶性アゾ系、ナフトール系、フラバンスロン系、アンスラピリミジン系、キノフタロン系、ピランスロン系、ピラゾロン系、チオインジゴ系、アンスアンスロン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系、インダンスロン系等の有機顔料や、ニッケルジオキシンイエロー、銅アゾメチンイエロー等の金属錯体、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛等の金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの金属塩、カーボンブラック、アルミニウム、雲母などの無機顔料、アルミニウムなどの金属微粉やマイカ微粉等が挙げられる。
また、染料としては、例えば、アゾ系、キノリン系、スチルベン系、チアゾール系、インジゴイド系、アントラキノン系、オキサジン系等が挙げられる。
なお、着色剤は、粉体をそのまま用いることが好ましく、あらかじめ着色ペースト、着色ペレット等に加工してから用いることも好ましい。
また、着色剤の配合量としては、剥離シートを構成する樹脂成分100重量部に対して、0.01〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましく、0.1〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜10重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
5.形態
本発明の非水溶性高分子薄膜転写用部材のサイズは、臓器創傷面等に対してそのまま適用すべく、例えば、5cm×5cm程度のサイズとしてもよいし、用途に応じて適宜裁断して使用できるように、例えば、30cm×20m程度のサイズとし、かつ、ロール状に巻いた形態としてもよい。
また、平面形状も特に限定されるものではなく、四角形、三角形、円形、異形等、どのような形状であってもよい。
さらに、図6(a)〜(b)に示すように、支持体6を部分的に非水溶性高分子薄膜4からはみ出すように形成し、剥離用のつまみ部6´を設ける等、種々の応用形態を採り得る。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、適用対象物に転写される非水溶性高分子薄膜と、当該非水溶性高分子薄膜を支持するための支持体と、を積層してなる非水溶性高分子薄膜転写用部材の製造方法であって、下記工程(a)〜(c)を含むことを特徴とする非水溶性高分子薄膜転写用部材の製造方法である。
(a)膜厚が1〜1,000μmの範囲内の値である支持体と、剥離シートと、を準備する工程
(b)剥離シート上に、非水溶性高分子薄膜形成用溶液を塗布し、膜厚が20〜500nmの範囲内の値である非水溶性高分子薄膜を形成する工程
(c)非水溶性高分子薄膜と、支持体と、の接触面積率が、非水溶性高分子薄膜の面積100%に対して、20〜80%の範囲内の値となるように、非水溶性高分子薄膜上に、支持体を積層する工程
以下、本発明の第2の実施形態を、第1の実施形態と異なる点を中心に、図面を参照しつつ、具体的に説明する。
1.工程(a1):支持体の準備工程
工程(a1)は、第1の実施形態で説明した支持体を準備する工程である。
(1)塗布方法
また、支持体形成用塗工液の塗布を、ロールツーロール法にて行うことが好ましい。
この理由は、ロールツーロール法であれば、所定の膜厚を有する支持体についても、より効率的に形成することができるためである。
より具体的には、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法およびグラビアコート法等、従来公知の方法により行うことができる。
また、支持体が、図3(a)に示すように、基材6bと、基材6bの上に形成された表面層6aと、の積層体6である場合には、基材6の上に支持体形成用塗工液を塗布して、表面層6を形成することになる。
一方、支持体が、図3(b)に示すように、単一の材料物質からなる単層の膜6である場合には、後に剥離可能な工程シート上に支持体形成用塗工液を塗布して、単層の膜6を形成することになる。
(2)支持体形成用塗工液
(2)−1 支持体形成用塗工液の材料物質
また、支持体形成用塗工液における溶質としての支持体形成用の材料物質としては、第1の実施形態において既に説明したため、省略する。
(2)−2 溶剤
また、支持体形成用塗工液は、溶剤系もしくは無溶剤系のものが使用できる。
溶剤系における溶剤の種類としては、支持体形成用の材料物質を溶解または均一に分散できるものであれば、特に限定されるものではないが、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、石油エーテル、ナフサ、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アミルアセテート、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルおよび酢酸エチル等からなる群から選択される少なくもと一種であることが好ましい。
(2)−3 塗工液の濃度
また、支持体形成用塗工液の濃度を0.1〜100重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、支持体形成用塗工液の濃度が0.1重量%未満の値となると、必要な膜厚が得られなくなる場合があるためである。
(2)−4 塗工液の粘度
また、支持体形成用塗工液の粘度(測定温度:25℃)を1〜5000mPa・sの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、支持体形成用塗工液の粘度が1mPa・s未満の値となると、塗膜のはじきが発生するとなる場合があるためである。一方、支持体形成用塗工液の粘度が5000mPa・sを超えた値となると、均一な塗膜が得られなくなるとなる場合があるためである。
したがって、支持体形成用塗工液の粘度(測定温度:25℃)を2〜4000mPa・sの範囲内の値とすることがより好ましく、3〜3000mPa・sの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、支持体形成用塗工液の粘度は、JIS K7117−1の4.1(ブルックフィールド形回転粘度計)に準拠して測定されたものである。
(2)−5 乾燥条件
また、基材または工程シート上に形成された支持体形成用塗工液の塗布層を、支持体とするための乾燥条件としては、特に限定されるものではないが、通常50〜150℃の温度条件下で、0.1〜20分間行うことが好ましい。
この理由は、乾燥温度が50℃未満の値となると、乾燥に時間がかかり過ぎたり乾燥不足になったりする場合があるためである。一方、乾燥温度が150℃を超えた値となると、シワやカールが生じたりする場合があるためである。
また、乾燥時間が0.1分未満の値となると、乾燥不足になる場合があるためである。一方、乾燥時間が20分を超えた値となると、シワやカールが生じたりする場合があるためである。
したがって、支持体形成用塗工液の塗布層を支持体とするための乾燥条件としては、60〜145℃の温度条件下で、0.2〜10分間とすることがより好ましく、70〜140℃の温度条件下で、0.3〜8分間とすることがさらに好ましい。
なお、切り抜き部の形成方法やエンボス処理の方法については、第1の実施形態で説明したため、再度の説明を省略する。
2.工程(a2):剥離シートの準備工程
工程(a2)は、第1の実施形態で説明した剥離シートを準備する工程である。
また、その製造方法としては、特に限定されるものではないが、溶液キャスティング法又は溶融押出法によって成形することが好ましい。
より具体的には、溶液キャスティング法では、溶剤に溶解した脂環式オレフィン系樹脂溶液等を支持材、例えば、平滑な金属製エンドレスベルト、平滑な樹脂フィルム等の支持材上に塗工した後、塗膜を均一に加熱し乾燥させて脂環式オレフィン系樹脂等からなる層を成膜した後、支持材から剥離することにより剥離シートが得られる。
なお、複層の剥離シートとする場合には、別の樹脂からなるフィルム上に、溶剤に溶解した脂環式オレフィン系樹脂等の溶液を塗工した後、塗膜を均一に加熱し乾燥させて脂環式オレフィン系樹脂等からなる層を成膜することにより脂環式オレフィン系樹脂等からなる層を含む複層の剥離シートが得られる。
また、溶融押出法では、脂環式オレフィン系樹脂等を押出機に供給し、リップクリアランスを1mm以下、好ましくは0.7mm以下に調整したTダイからシート状に溶融押出し、脂環式オレフィン系樹脂等のガラス転移点(Tg)±20℃の範囲に制御した鏡面冷却ロールと接触させて冷却固化することにより成形することにより脂環式オレフィン系樹脂等からなる層単層の剥離シートが得られる。
また、複層の剥離シートとする場合には、脂環式オレフィン系樹脂等と他の樹脂とを共押出機に供給し、上記と同様にして、成膜することにより脂環式オレフィン系樹脂等からなる層を含む複層の剥離シートが得られる。
また、剥離シートの具体的な内容については、第1の実施形態にて説明したため、省略する。
3.工程(b):非水溶性高分子薄膜の形成工程
工程(b)は、工程(a2)で準備した剥離シート上に、第1の実施形態で説明した非水溶性高分子薄膜を形成する工程である。
(1)塗布方法
また、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の塗布を、ロールツーロール法(roll to roll法)にて行うことが好ましい。
この理由は、ロールツーロール法であれば、所定の膜厚を有する非水溶性高分子薄膜を、より効率的に形成することができるためである。
また、ロールツーロール法を実施するにあたり、特に、マイクログラビアコータまたはスロットダイコータを用いることが好ましい。
この理由は、これらの塗布装置であれば、所定の膜厚を有する非水溶性高分子薄膜を、さらに効率的に形成することができるためである。
すなわち、マイクログラビアコータおよびスロットダイコータであれば、ナノメートルオーダーの非水溶性高分子薄膜を、その表面に皺を発生させることなく、かつ、均一な膜厚でべた塗りすることができ、しかも、構造が簡単である上、経済性にも優れるためである。
ここで、マイクログラビアコータについて、図7(a)および(b)を参照しつつ、大まかに説明する。
すなわち、図7(a)には、マイクログラビアコータ100の斜視図が示してあり、図7(b)には、マイクログラビアコータ100を矢印A方向に沿って見た場合の断面図が示してある。
図7(a)〜(b)に示すように、マイクログラビアコータ100は、原反ロール(図示せず)から繰り出されて巻取りロール(図示せず)に巻き取られる剥離シート2を、一定方向(矢印B)に沿って所定のスピードで走行させるための少なくとも1対のガイドロール(102、104)を備えている。
また、かかる少なくとも一対のガイドロール(102、104)の間で走行している剥離シート2に対して、塗布液供給パン106に収容された塗布液(図示せず)を、掻き揚げながら塗布するためのグラビアロール108を備えている。
また、かかるグラビアロール108は、通常、直径が50mm程度、長軸方向の長さが1700mm程度であり、グラビアパターンは彫刻などによって刻設されている。グラビアの線数は、特に限定されないが、15〜200#のものを使用することが好ましい。
そして、かかるグラビアロール108は、グラビアロール用駆動原(図示せず)によって、剥離シート2の走行方向とは逆方向に回転しながら、剥離シート2に対して塗布液を塗布することになる。
また、グラビアロール108には、ドクターブレード110が当接させてあり、これによりグラビアロール108に付着した余分な塗布液を掻き取ることができるため、ナノメートルオーダーの非水溶性高分子薄膜を安定的に形成することができる。
したがって、所定の膜厚を有する非水溶性高分子薄膜を、さらに効率的に形成することができる。
また、非水溶性高分子薄膜の膜厚の調整は、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の濃度および粘度、並びにグラビアの線数と走行スピードを調整することにより行うことができる。
また、マイクログラビアコータを用いる場合における非水溶性高分子薄膜形成用溶液の粘度(測定温度:25℃)は、1〜200mPa・sの範囲内の値とすることが好ましい。
また、マイクログラビアコータにおける剥離シートの走行スピードは、特に制限されないが、0.1〜100m/分の範囲内の値とすることが好ましい。
次いで、スロットダイコータについて、図8(a)および(b)を参照しつつ、大まかに説明する。
すなわち、図8(a)には、スロットダイコータ200の斜視図が示してあり、図8(b)には、スロットダイコータを矢印Aに沿って見た場合の断面図が示してある。
図8(a)〜(b)に示すように、スロットダイコータ200は、原反ロール(図示せず)から繰り出されて巻取りロール(図示せず)に巻き取られる剥離シート2を、一定方向(矢印B)に沿って所定のスピードで走行させるための少なくとも1対のガイドロール(202、204)を備えている。
また、かかる少なくとも一対のガイドロール(202、204)の間で走行している剥離シート2に対して、塗布液タンク206から、ポンプ208による加圧によって供給される塗布液(図示せず)を塗布するためのスロット210を備えている。
また、かかるスロット210は、剥離シート2の走行方向における上流側および下流側に互いに対向するように設けられたダイリップ(212、214)を備えており、かかるダイリップ(212、214)の隙間から、剥離シート2に塗布液が供給され、塗布することになる。
したがって、所定の膜厚を有する非水溶性高分子薄膜を、さらに効率的に形成することができる。
また、スロットダイコータにおける剥離シートの走行スピードは、特に制限されないが、0.1〜100m/分の範囲内の値とすることが好ましい。
また、非水溶性高分子薄膜の膜厚の調整は、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の濃度および粘度、並びにダイリップからの吐出量と剥離シートの走行スピードを調整することにより行うことができる。
また、スロットダイコータを用いる場合における非水溶性高分子薄膜形成用溶液の粘度(測定温度:25℃)は、100〜500mPa・sの範囲内の値とすることが好ましい。
(2)非水溶性高分子薄膜形成用溶液
(2)−1 非水溶性高分子薄膜形成用溶液の材料物質
また、非水溶性高分子薄膜形成用溶液における溶質としての非水溶性高分子薄膜形成用の材料物質としては、第1の実施形態において既に説明したため、省略する。
(2)−2 溶剤
また、非水溶性高分子薄膜形成用溶液における溶剤の種類としては、非水溶性高分子薄膜形成用の材料物質を溶解、または均一に分散でき、加熱により揮発するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、エタノール、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、へプタン、ペンタン、ジクロロメタン、クロロホルム、および四塩化炭素などが好ましい。溶剤の沸点としては、30〜120℃であることが好ましく、35〜80℃であることがより好ましい。
(2)−3 溶液の濃度
また、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の濃度を0.1〜20重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の濃度が0.1重量%未満の値となると、必要な膜厚が得られなくなる場合や溶液の粘度が最適にならない場合があるためである。
一方、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の濃度が20重量%を超えた値となると、均一な塗膜が得られなくなる場合があるためである。
したがって、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の濃度を0.3〜15重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜10重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(2)−4 溶液の粘度
また、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の粘度(測定温度:25℃)を1〜500mPa・sの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の粘度が1mPa・s未満の値となると、塗膜のはじきが発生する場合があるためである。
一方、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の粘度が500mPa・sを超えた値となると、均一な塗膜が得られなくなる場合があるためである。
したがって、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の粘度(測定温度:25℃)を2〜400mPa・sの範囲内の値とすることがより好ましく、3〜300mPa・sの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の粘度は、JIS K7117−1の4.1(ブルックフィールド形回転粘度計)に準拠して測定されたものである。
(2)−5 乾燥条件
また、剥離シート上に形成された非水溶性高分子薄膜形成用溶液の塗布層を、非水溶性高分子薄膜とするための乾燥条件としては、特に限定されるものではないが、通常40〜120℃の温度条件下で、0.1〜5分間行うことが好ましい。
この理由は、乾燥温度が40℃未満の値となると、乾燥に時間がかかり過ぎたり乾燥不足になったりする場合があるためである。
一方、乾燥温度が120℃を超えた値となると、シワやカールが生じたりする場合があるためである。
また、乾燥時間が0.1分未満の値となると、乾燥不足になる場合があるためである。
一方、乾燥時間が5分を超えた値となると、シワやカールが生じたりする場合があるためである。
したがって、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の塗布層を非水溶性高分子薄膜とするための乾燥条件としては、50〜110℃の温度条件下で、0.2〜3分間とすることがより好ましく、60〜100℃の温度条件下で、0.3〜2分間とすることがさらに好ましい。
4.工程(c):支持体の積層工程
工程(c)は、工程(b)において剥離シート上に形成された非水溶性高分子薄膜に対し、工程(a1)で準備した支持体を、非水溶性高分子薄膜と、支持体と、の接触面積率が、非水溶性高分子薄膜の面積100%に対して、20〜80%の範囲内の値となるように積層する工程である。
ここで、非水溶性高分子薄膜と、支持体と、の接触面積率は、支持体における切り抜き部やエンボス処理等によって決定されるため、本工程においては、剥離シート上に形成された非水溶性高分子薄膜に対して、単純に支持体を積層すればよい。
なお、積層方法としては、ロールツーロール法にて行うことが好ましいが、剥離シートおよび非水溶性高分子薄膜の積層体と、支持体とを、それぞれ所定のサイズに裁断した上で、枚葉にて積層してもよい。
以下、実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1]
1.非水溶性高分子薄膜転写用部材の製造
(1)非水溶性高分子薄膜の製造
重量平均分子量が100,000であるポリL−乳酸(PLLA、Polysciences(株)製)をジクロロメタンに溶解し、濃度0.5重量%、25℃における粘度15mPa・sの非水溶性高分子薄膜形成用溶液を調製した。
次いで、マイクログラビアコータ(康井精機(株)製、商品名:μコータ)を用いて、剥離シートとしての膜厚40μmの脂環式ポリオレフィンシート(日本ゼオン(株)製、ZF14−040)の上面に対し、非水溶性高分子薄膜形成用溶液を塗布した後、80℃で1分間乾燥させ、膜厚30nmの非水溶性高分子薄膜を形成した。
この時、使用したマイクログラビアコータにおけるグラビアロールは、直径20mm、長軸方向の長さ300mmであり、剥離シートの走行スピードは1m/分であり、マイクログラビアロールの回転速度は160rpmであった。
また、使用した剥離シートの表面(被塗布面)および裏面の算術平均粗さRaは、それぞれ1.6nmおよび3nmであり、最大表面粗さRtは、それぞれ3.6nmおよび15nmであった。
また、上述した工程で得られた非水溶性高分子薄膜および剥離シートの積層体から剥離シートを剥離する際の剥離シートの剥離力を、以下のようにして測定した。
すなわち、非水溶性高分子薄膜の表面に対し、膜厚25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にアクリル系粘着剤層を設けた粘着テープを、気泡が入らないように貼り付け、温度23℃、湿度50%RHの条件下で30分間放置した。
次いで、30分放置後に、平板に粘着テープのポリエチレンテレフタレートフィルム側を両面テープで固定し、剥離シートを引張り速さ300mm/分で180°方向に引き剥がした際の強度を測定し、剥離力の評価とした。得られた結果を表1に示す。
(2)支持体の製造
付加反応型シリコーン樹脂(信越化学(株)製、X−40−3229、固形分60重量%)100重量部に対し、白金触媒(信越化学(株)製、CAT−PL−50T、固形分2重量%)0.5重量部と、トルエン100重量部と、を加えた後、混合し、濃度30.9重量%、25℃における粘度2000mPa・sの支持体形成用塗工液を調製した。
なお、用いたシリコーン樹脂を「X−40−3229」と称する場合がある。
次いで、コンマコータを用いて、基材としての膜厚50μmのポリエステルフィルム(東洋紡(株)製、コスモシャインA−4300)の上面に対し、支持体形成用塗工液を塗布した後、130℃で2分間乾燥させ、基材上に膜厚20μmの表面層(シリコーン層)を有する総膜厚70μmの積層体を得た。
次いで、図9に示すように、得られた積層体の一部をカッターで切り抜いて50mm×70mm=3500mm2の切り抜き部を形成し、支持体とした。
なお、図9において、斜線は非水溶性高分子薄膜との接触部分を表す(他の実施例も同様)。
また、支持体(表面層側)の粘着性を、以下のようにして評価した。
すなわち、上述した支持体の製造過程において、一部をカッターで切り抜く前の状態のシリコーン層および基材とからなる積層体を用意した。
次いで、支持体(表面層側)の表面に対し、膜厚16μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを1kgのゴムローラで貼り付け、温度23℃、湿度50%RHの条件下で30分間放置した。
次いで、30分間放置後に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを引張り速さ300mm/分で180°方向に引き剥がした際の強度を測定し、粘着力の評価とした。得られた結果を表1に示す。
(3)非水溶性高分子薄膜および支持体の積層
次いで、剥離シート上に形成された非水溶性高分子薄膜の露出面と、支持体(表面層側)とが接触するように、得られた支持体を非水溶性高分子薄膜に対して貼合し、非水溶性高分子薄膜転写用部材とした。
このとき、剥離シートおよび非水溶性高分子薄膜の積層体を、予め図9に示す支持体のうち切り抜き部およびその周辺の斜線を付した部分(つまみ部以外の部分)と同じサイズに裁断し、非水溶性高分子薄膜の露出面を、支持体の斜線を付した部分のシリコーン層と接触するように貼合した。
したがって、非水溶性高分子薄膜と、支持体と、の接触面積率は、非水溶性高分子薄膜の面積100%に対して、44%であった。
2.評価
(1)剥離シートからの剥離性の評価
非水溶性高分子薄膜および支持体の積層体を、剥離シートから剥離する際の剥離性を評価した。
すなわち、得られた非水溶性高分子薄膜転写用部材における剥離シートから、非水溶性高分子薄膜および支持体の積層体を、ピンセットを用いて剥離し、その剥離性を下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
○:剥離シートから非水溶性高分子薄膜および支持体の積層体をスムーズに剥離することができ、かつ、非水溶性高分子薄膜および支持体間での剥離は生じない。
△:剥離シートから非水溶性高分子薄膜および支持体の積層体を剥離する際に、やや引っ掛かりが生じるが、非水溶性高分子薄膜および支持体間での剥離は生じない。
×:剥離シートから非水溶性高分子薄膜および支持体の積層体を剥離することができず、非水溶性高分子薄膜および支持体間での剥離が生じる。
(2)適用後の支持体の剥離性の評価
支持体を、適用対象物の表面に密着した状態の非水溶性高分子薄膜から剥離する際の剥離性を評価した。
すなわち、剥離シートを剥離した状態の非水溶性高分子薄膜転写用部材(非水溶性高分子薄膜および支持体の積層体)における非水溶性高分子薄膜面を、適用対象物としての背中の皮膚を切り取り除去したBALB/Cマウスの腸の位置に、貼り付け、5秒後に支持体を剥離し、その剥離性を下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
○:支持体が容易に剥離し、非水溶性高分子薄膜のみが適用対象物に転写される。
×:支持体を剥離することができないため、非水溶性高分子薄膜のみを適用対象物に転写することができない。
[実施例2]
実施例2では、支持体を製造する際に、図10に示すように、積層体の一部をカッターで切り抜いて10mm×20mm×4カ所=800mm2の切り抜き部を形成して支持体とし、非水溶性高分子薄膜と、支持体と、の接触面積率を33%としたほかは、実施例1と同様に非水溶性高分子薄膜転写用部材を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例3では、以下のようにして支持体を製造したほかは、実施例1と同様に非水溶性高分子薄膜転写用部材を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
すなわち、付加反応型シリコーン樹脂(ダウコーニング(株)製、Silastic Q−4850)のPART AおよびPART Bを、重量比1:1で加えた後、酢酸エチルを加えて混合し、濃度35重量%、25℃における粘度2500mPa・sの支持体形成用塗工液を調製した。
次いで、ナイフコータを用いて、表面にエンボスパターンを有するように成形した厚さ130μmのポリカーボネートフィルム(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製、ユーピロンE−2000)のエンボスパターン面に対し、支持体形成用塗工液を塗布した後、150℃で2分間乾燥させ、ポリカーボネートフィルム上に膜厚75μmのシリコーン膜を形成した。
次いで、ポリカーボネートフィルムからシリコーン膜を剥離し、かかるシリコーン膜を支持体とした。
得られた支持体には、非水溶性高分子薄膜との接触面の全面に、図11(a)〜(b)に示すようなエンボス処理が施されたため、非水溶性高分子薄膜転写用部材とした際の非水溶性高分子薄膜と、支持体と、の接触面積率は77%であった。また、支持体と非水溶性高分子薄膜のそれぞれの面積は2500mm2であった。
なお、図11(a)は、エンボス処理が施された支持体の表面の拡大写真であり、図11(b)はその模式図である。
また、用いたシリコーン樹脂を「Q−4850」と称する場合がある。
[実施例4]
実施例4では、支持体を製造する際に、表面に異なるエンボスパターンを有するように成形したポリカーボネートフィルムを用いたほかは、実施例3と同様に非水溶性高分子薄膜転写用部材を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
得られた支持体には、非水溶性高分子薄膜との接触面の全面に、図12に示すようなエンボス処理が施されたため、非水溶性高分子薄膜転写用部材とした際の非水溶性高分子薄膜と、支持体と、の接触面積率は51%であった。また、支持体と非水溶性高分子薄膜のそれぞれの面積は2500mm2であった。
[比較例1]
比較例1では、支持体を製造する際に、積層体の一部をカッターで切り抜かずにそのまま支持体とし、非水溶性高分子薄膜と、支持体と、の接触面積率を100%としたほかは、実施例1と同様に非水溶性高分子薄膜転写用部材を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
[比較例2]
比較例2では、支持体を製造する際に、図13に示すように、積層体の一部をカッターで切り抜いて66mm×86mm=5676mm2の切り抜き部を形成して支持体とし、非水溶性子分子薄膜と、支持体と、の接触面積率を10%としたほかは、実施例1と同様に非水溶性高分子薄膜転写用部材を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
[比較例3]
比較例3では、支持体を製造する際に、表面にエンボスパターンを有さないポリカーボネートフィルムを用いたほかは、実施例3と同様に非水溶性高分子薄膜転写用部材を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
得られた支持体には、非水溶性高分子薄膜との接触面に、エンボス処理が施されなかったため、非水溶性高分子薄膜転写用部材とした際の非水溶性高分子薄膜と、支持体との接触面積率は100%であった。
[比較例4]
比較例4では、支持体を製造する際に、表面に異なるエンボスパターンを有するように成形したポリカーボネートフィルムを用いたほかは、実施例3と同様に非水溶性高分子薄膜転写用部材を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
得られた支持体には、非水溶性高分子薄膜との接触面の全面に、図14に示すようなエンボス処理が施されたため、非水溶性高分子薄膜転写用部材とした際の非水溶性高分子薄膜と、支持体と、の接触面積率は10%であった。また、支持体と非水溶性高分子薄膜のそれぞれの面積は2500mm2であった。
以上、詳述したように、本発明の非水溶性高分子薄膜転写用部材等によれば、それぞれ所定の膜厚を有する非水溶性高分子薄膜と、支持体とを、接触面積率が所定の範囲内の値となるように積層することにより、適用対象物の表面に密着した状態の非水溶性高分子薄膜から、支持体を容易に剥離できるようになった。
これにより、適用対象物に対して適用した際に、安定的に非水溶性高分子薄膜のみを適用対象物の表面に転写することができるようになった。
また、適用対象物としては、主に臓器創傷面や角膜等の生体組織、表皮等であり、本発明の非水溶性高分子薄膜転写用部材等は、臓器創傷被覆材、絆創膏、皮膚保護材および皮膚保湿剤等としての使用用途が期待される。
したがって、本発明の非水溶性高分子薄膜転写用部材等は、臓器創傷面や角膜等の生体組織もしくは表皮等の適用対象物に適用される非水溶性高分子薄膜製品の高品質化に著しく寄与することが期待される。
2:剥離シート、4:非水溶性高分子薄膜、6:支持体、6a:表面層、6b:基材、10:非水溶性高分子薄膜転写用部材、6´:つまみ部、10a:非水溶性高分子薄膜転写用部材(剥離シート無し)、10b:非水溶性高分子薄膜転写用部材(剥離シート有り)、50:適用対象物、100:マイクログラビアコータ、102:ガイドロール、104:ガイドロール、106:塗布液供給パン、108:グラビアロール、110:ドクターブレード、200:スロットダイコータ、202:ガイドロール、204:ガイドロール、206:塗布液タンク、208:ポンプ、210:スロット、212:ダイリップ、214:ダイリップ、300:マイクロスクラッチ試験機、302:短針、304:ダンパー、306:磁石、308:コイル、310カートリッジ

Claims (9)

  1. 適用対象物に転写される非水溶性高分子薄膜と、当該非水溶性高分子薄膜を支持するための支持体と、を積層してなる非水溶性高分子薄膜転写用部材であって、
    前記非水溶性高分子薄膜の膜厚を20〜500nmの範囲内の値とするとともに、
    前記支持体の膜厚を1〜1,000μmの範囲内の値とし、
    前記支持体が、前記非水溶性高分子薄膜との接触面側から反対側まで貫通してなる切り抜き部を有する支持体、または、前記非水溶性高分子薄膜との接触面にエンボス処理が施されてなる支持体であり、かつ、
    前記非水溶性高分子薄膜と、前記支持体と、の接触面積率を、前記非水溶性高分子薄膜の面積100%に対して、20〜80%の範囲内の値とすることを特徴とする非水溶性高分子薄膜転写用部材。
  2. 前記支持体が、少なくとも前記非水溶性高分子薄膜との接触面において、シリコーン樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の非水溶性高分子薄膜転写用部材。
  3. 前記非水溶性高分子薄膜が、ポリ乳酸、乳酸共重合体、ポリラクトンおよびラクトン共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含むとともに、
    前記シリコーン樹脂が、当該シリコーン樹脂からなる平滑なシリコーン膜の表面に対し、膜厚16μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼合し、温度23℃、湿度50%RHの条件下で30分間放置した後に、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを引張り速さ300mm/分で180°方向に引き剥がして測定される粘着力が5〜100mN/25mmの範囲内の値となるシリコーン樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の非水溶性高分子薄膜転写用部材。
  4. 前記支持体が、基材と、当該基材上に形成されたシリコーン層と、の積層体であるとともに、前記非水溶性高分子薄膜との接触面側から反対側まで貫通してなる切り抜き部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の非水溶性高分子薄膜転写用部材。
  5. 前記支持体が、単層のシリコーン膜であるとともに、前記非水溶性高分子薄膜との接触面にエンボス処理が施されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の非水溶性高分子薄膜転写用部材。
  6. 前記非水溶性高分子薄膜における前記支持体との接触面とは反対側の面に、剥離シートを積層してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の非水溶性高分子薄膜転写用部材。
  7. 前記剥離シートが、フレキシブル性を有するとともに、少なくとも前記非水溶性高分子薄膜との接触面において、脂環式オレフィン系樹脂を含むことを特徴とする請求項6に記載の非水溶性高分子薄膜転写用部材。
  8. 前記剥離シートの膜厚を10〜200μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項6または7に記載の非水溶性高分子薄膜転写用部材。
  9. 適用対象物に転写される非水溶性高分子薄膜と、当該非水溶性高分子薄膜を支持するための支持体と、を積層してなる非水溶性高分子薄膜転写用部材の製造方法であって、
    下記工程(a)〜(c)を含むことを特徴とする非水溶性高分子薄膜転写用部材の製造方法。
    (a)前記非水溶性高分子薄膜との接触面側から反対側まで貫通してなる切り抜き部を有する支持体、または、前記非水溶性高分子薄膜との接触面にエンボス処理が施されてなる支持体であって、膜厚が1〜1,000μmの範囲内の値である支持体と、剥離シートと、を準備する工程
    (b)前記剥離シート上に、非水溶性高分子薄膜形成用溶液を塗布し、膜厚が20〜500nmの範囲内の値である前記非水溶性高分子薄膜を形成する工程
    (c)前記非水溶性高分子薄膜と、前記支持体と、の接触面積率が、前記非水溶性高分子薄膜の面積100%に対して、20〜80%の範囲内の値となるように、前記非水溶性高分子薄膜上に、前記支持体を積層する工程
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