JP6000139B2 - シート状積層体およびシート状積層体の製造方法 - Google Patents

シート状積層体およびシート状積層体の製造方法 Download PDF

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本発明は、シート状積層体およびシート状積層体の製造方法に関する。
特に、適用対象物に非水溶性高分子薄膜を適用する際のハンドリング性を、効果的に向上させることができるシート状積層体およびそれを効率的に製造する製造方法に関する。
従来、ポリL−乳酸等の非水溶性高分子からなる膜厚が数十から数百nmの生体適合性を有する高分子薄膜を製造する技術が知られている(例えば、特許文献1および2)。
かかる高分子薄膜は、生体吸収性、生体分解性および組織修復性等を有することから、生体組織への適用性に優れている。
また、かかる高分子薄膜は、健常皮膚、皮膚創傷面、臓器創傷面や角膜等の生体組織に適用した場合、静電気力や濡れ性により、生体組織に対して強固に密着することが知られている。
したがって、高分子薄膜は、このような諸特性を有することから、健常皮膚、皮膚創傷面、臓器創傷面および角膜等の生体組織の被覆材等として検討されている。
例えば、特許文献1には、以下の工程により得られることを特徴とする薄膜状構造体が開示されている。
(a)基体の液相との界面における任意形状の領域に多官能性分子を吸着させ、
(b)吸着した多官能性分子を重合および/または架橋して高分子の薄膜を形成させ、
(c)形成された薄膜を基体から剥離する。
また、特許文献2には、膜の表面(A面)と裏面(B面)に機能性物質を有することを特徴とする薄膜状高分子構造体が開示されている。
より具体的には、例えば、以下の工程により得られる薄膜状構造体が開示されている。
(a)基体の液相との界面における任意形状の領域に多官能性分子を吸着させ、
(b)吸着させた多官能性分子を重合および/または架橋して高分子の薄膜を形成させ、
(c)形成させた薄膜のA面に機能性物質を結合させた後、さらにその上に可溶性支持膜を形成させ、
(d)薄膜および可溶性支持膜を基体から剥離させ、
(e)薄膜のB面に、A面に結合させた機能性物質と同一または別の機能性物質を結合させた後、可溶性支持膜を溶剤にて溶解させる。
WO2006/025592号公報(請求の範囲) WO2008/050913号公報(請求の範囲)
しかしながら、特許文献1に記載の高分子薄膜は、所定の溶剤等に浸漬させることによって基体から剥離した状態の薄膜を、そのまま生体組織等の対象物に適用しなければならないため、ハンドリング性が著しく低いという問題が見られた。
また、特許文献1に記載の高分子薄膜は、多官能性分子を基体等に吸着させ、かつ、それを重合等しなければならないため、生産効率が低く、大量生産への移行が困難であるという問題も見られた。
一方、特許文献2には、高分子薄膜に対して可溶性支持膜を積層することにより、高分子薄膜のハンドリング性を向上させる技術が記載されており、実施例においては、高分子薄膜および可溶性支持膜の積層体を、ラットの盲腸に適用し、その後、生理食塩水で可溶性支持膜を溶解する態様も記載されている。
そして、高分子薄膜を形成する方法として、多官能性分子を基体等に吸着させた後、重合等する方法以外に、SiO2基板上に高分子溶液をスピンコートし、加熱乾燥する方法も記載されている。
しかしながら、特許文献2に記載の高分子薄膜は、SiO2基板上にスピンコートにより形成された場合、基本的に、高分子薄膜を使用する直前までは、高分子薄膜と、SiO2基板とがセットになっていなければならず、その意味で実用上のハンドリング性に大きな問題があった。
また、高分子薄膜がSiO2基板上に形成されているため、予め高分子薄膜の平面形状を、使用態様に応じて加工することも困難であった。
さらに、高分子薄膜をスピンコートにより製造した場合であっても、結局、枚葉での製造となるため、生産効率が不十分であり、大量生産への移行が困難であるという問題が見られた。
そこで、本発明者らは、以上のような事情に鑑み、鋭意努力したところ、フレキシブル性を有し、脂環式オレフィン系樹脂層を含む単層または複層の剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、それぞれ所定の膜厚を有する非水溶性高分子薄膜と、水溶性高分子を含む水溶性高分子膜とを積層することにより、上述した問題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の目的は、適用対象物に非水溶性高分子薄膜を適用する際のハンドリング性を、効果的に向上させることができるシート状積層体およびそれを効率的に製造する製造方法を提供することにある。
本発明によれば、フレキシブル性を有し、脂環式オレフィン系樹脂層を含む単層または複層の剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、非水溶性高分子薄膜と、水溶性高分子を含む水溶性高分子膜と、を積層してなるシート状積層体であって、非水溶性高分子薄膜の膜厚を20〜500nmの範囲内の値とし、かつ、水溶性高分子膜の膜厚を20nm〜500μmの範囲内の値とすることを特徴とするシート状積層体が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、本発明のシート状積層体であれば、フレキシブル性を有し、脂環式オレフィン系樹脂層を含む単層または複層の剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、それぞれ所定の膜厚を有する非水溶性高分子薄膜と、水溶性高分子膜とを積層してあることから、非水溶性高分子薄膜が所定の強度を有する水溶性高分子膜に積層された状態で、ピンセット等により剥離シートから剥離し、適用対象物にそのまま適用することができる。
特に、脂環式オレフィン系樹脂層を設けることにより、剥離シートに優れた離型性を付与することができることから、シリコーン系の剥離処理剤等を使用しない場合であっても、非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体を、剥離シートから容易に剥離することができる。
また、本発明のシート状積層体を構成するにあたり、非水溶性高分子薄膜の膜厚を20〜150nmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、膜強度を適度に保ちながら適用対象物に対してより強固に密着させることができる。
また、本発明のシート状積層体を構成するにあたり、非水溶性高分子薄膜が、ポリ乳酸、乳酸共重合体、ポリラクトンまたはラクトン共重合体の少なくとも一つを含むことが好ましい。
このように構成することにより、より均一な膜厚を有する非水溶性高分子薄膜を、安定的に得ることができる。
また、本発明のシート状積層体を構成するにあたり、剥離シートの膜厚を10〜200μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、非水溶性高分子薄膜と、水溶性高分子膜とを、例えば、スピンコート用のSiO2基板上に積層する従来の方法と比較して、非水溶性高分子薄膜の運搬や取り扱いが容易になる。
さらに、非水溶性高分子薄膜の使用態様に応じて、非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜を、剥離シートごと所定平面形状となるように容易に裁断することができる。
したがって、本発明のシート状積層体であれば、適用対象物に非水溶性高分子薄膜を適用する際のハンドリング性を、効果的に向上させることができる。
また、本発明のシート状積層体を構成するにあたり、水溶性高分子が、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
このように構成することにより、剥離シートから非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体を剥離した場合であっても、当該積層体に所定の強度をより安定的に保持させて、ハンドリング性をより効果的に向上させることができる。
また、本発明のシート状積層体を構成するにあたり、剥離シートの両面もしくはいずれか一方の面における算術平均粗さRa(JIS B0601:2001に準拠して測定)を10nm以下の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、非水溶性高分子薄膜にピンホールが生じたり、その膜厚が不均一になったりすることを効果的に抑制することができる。
また、本発明のシート状積層体を構成するにあたり、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、下方から非水溶性高分子薄膜と、水溶性高分子膜と、をこの順に積層することが好ましい。
このように構成することにより、使用前の段階において、非水溶性高分子薄膜を安定的に保護することができる。
また、本発明のシート状積層体を構成するにあたり、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、下方から水溶性高分子膜と、非水溶性高分子薄膜と、をこの順に積層することが好ましい。
このように構成することにより、最表面に露出している非水溶性高分子薄膜を、剥離シートごと対象物に適用することができる。
また、本発明の別の態様は、フレキシブル性を有し、脂環式オレフィン系樹脂層を含む単層または複層の剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、非水溶性高分子薄膜と、水溶性高分子を含む水溶性高分子膜と、を積層してなるシート状積層体の製造方法であって、下記工程(a1)〜(c1)を含むことを特徴とするシート状積層体の製造方法である。
(a1)剥離シートを準備する工程
(b1)剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、非水溶性高分子薄膜形成用溶液を塗布し、膜厚が20〜500nmの範囲内の値である非水溶性高分子薄膜を形成する工程
(c1)非水溶性高分子薄膜上に、水溶性高分子溶液を塗布し、膜厚が20nm〜500μmの範囲内の値である水溶性高分子膜を形成する工程
すなわち、本発明のシート状積層体の製造方法であれば、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、非水溶性高分子薄膜形成用溶液および水溶性高分子溶液をこの順に塗布することによりシート状積層体を製造することから、枚葉式での製造ばかりでなく、例えば、ロールツーロール法での製造が可能となる。
したがって、本発明のシート状積層体の製造方法であれば、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜がこの順に積層してなるシート状積層体を効率よく大量生産することができる。
また、本発明のさらに別の態様は、フレキシブル性を有し、脂環式オレフィン系樹脂層を含む単層または複層の剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、非水溶性高分子薄膜と、水溶性高分子を含む水溶性高分子膜と、を積層してなるシート状積層体の製造方法であって、下記工程(a2)〜(c2)を含むことを特徴とするシート状積層体の製造方法である。
(a2)剥離シートを準備する工程
(b2)剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、水溶性高分子溶液を塗布し、膜厚が20nm〜500μmの範囲内の値である水溶性高分子膜を形成する工程
(c2)水溶性高分子膜上に、非水溶性高分子薄膜形成用溶液を塗布し、膜厚が20〜500nmの範囲内の値である非水溶性高分子薄膜を形成する工程
すなわち、本発明のシート状積層体の製造方法であれば、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、水溶性高分子溶液および非水溶性高分子薄膜形成用溶液をこの順に塗布することによりシート状積層体を製造することから、枚葉式での製造ばかりでなく、例えば、ロールツーロール法での製造が可能となる。
したがって、本発明のシート状積層体の製造方法であれば、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、水溶性高分子膜および非水溶性高分子薄膜がこの順に積層してなるシート状積層体を効率よく大量生産することができる。
また、本発明のシート状積層体の製造方法を実施するにあたり、工程(b1)〜(c1)または工程(b2)〜(c2)を、ロールツーロール法にて行うことが好ましい。
このように実施することにより、シート状積層体をさらに効率よく大量生産することができる。
また、本発明のシート状積層体の製造方法を実施するにあたり、工程(b1)または工程(c2)を、マイクログラビアコータまたはスロットダイコータを用いて行うことが好ましい。
このように実施することにより、所定の膜厚を有する非水溶性高分子薄膜を、より効率的に形成することができる。
図1(a)〜(d)は、本発明のシート状積層体の態様および使用方法を説明するために供する図である。 図2(a)〜(d)は、本発明のシート状積層体の態様および使用方法を説明するために供する別の図である。 図3は、非水溶性高分子薄膜の膜厚と、適用対象物に対する密着性と、の関係を説明するために供する図である。 図4(a)〜(b)は、マイクログラビアコータについて説明するために供する図である。 図5(a)〜(b)は、スロットダイコータについて説明するために供する図である。 図6(a)〜(b)は、非水溶性高分子薄膜における密着性の評価方法を説明するために供する図である。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、フレキシブル性を有し、脂環式オレフィン系樹脂層を含む単層または複層の剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、非水溶性高分子薄膜と、水溶性高分子を含む水溶性高分子膜と、を積層してなるシート状積層体であって、非水溶性高分子薄膜の膜厚を20〜500nmの範囲内の値とし、かつ、水溶性高分子膜の膜厚を20nm〜500μmの範囲内の値とすることを特徴とするシート状積層体である。
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
1.基本的構成
最初に、図1〜2を用いて、本発明の基本的構成について説明する。
まず、本発明のシート状積層体は、図1(a)に示すように、剥離シート2の上に、非水溶性高分子薄膜4と、水溶性高分子膜6と、をこの順に積層した態様(10a)とすることが好ましい。
この理由は、このような積層順で構成することにより、使用前の段階において、非水溶性高分子薄膜4を安定的に保護することができるためである。
すなわち、図1(a)に示す態様のシート状積層体10aであれば、非水溶性高分子薄膜4が剥離シート2および水溶性高分子膜6によって両側から挟持されているため、使用前の段階において、非水溶性高分子薄膜4を安定的に保護することができる。
また、図1(a)に示す態様のシート状積層体10aであれば、図1(b)に示すように、ピンセット等によって、剥離シート2から非水溶性高分子薄膜4および水溶性高分子膜6の積層体8を剥離した後、図1(c)に示すように、非水溶性高分子薄膜4および水溶性高分子膜6の積層体8を、非水溶性高分子薄膜4が適用対象物50に対して直接接触するように載置することができる。
そして、図1(c)に示すように、非水溶性高分子薄膜4および水溶性高分子膜6の積層体8に対して、例えば、生理食塩水12を加え、水溶性高分子膜6を溶解することで、図1(d)に示すように、適用対象物50に対して非水溶性高分子薄膜4を効率的に適用することができる。
また、本発明のシート状積層体は、図2(a)に示すように、剥離シート2の上に、水溶性高分子膜6と、非水溶性高分子薄膜4と、をこの順に積層する態様(10b)とすることが好ましい。
この理由は、このような積層順で構成することにより、最表面に露出している非水溶性高分子薄膜4を、剥離シート2ごと適用対象物50に適用することができるためである。
すなわち、図2(a)に示す態様のシート状積層体10bであれば、非水溶性高分子薄膜4および水溶性高分子膜6の積層体8を、剥離シート2から剥離することなく、図2(b)に示すように、シート状積層体10bの全体を、非水溶性高分子薄膜4が適用対象物50に対して直接接触するように載置することができる。
そして、図(b)および(c)に示すように、シート状積層体10bの全体に対して、例えば、生理食塩水12を加えつつ、剥離シート2を剥離し、水溶性高分子膜6を溶解することで、図2(d)に示すように、適用対象物50に対して非水溶性高分子薄膜4を効率的に適用することができる。
2.剥離シート
(1)種類
本発明における剥離シートは、ハンドリング性や加工性を向上させる観点から、フレキシブル性を有し、脂環式オレフィン系樹脂層を含む単層または複層の剥離シートであることが必要である。特に、脂環式オレフィン系樹脂層を含む単層の剥離シートであることが好ましい。
この理由は、脂環式オレフィン系樹脂であれば、非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜に対して優れた離型性を有することから、シリコーン系の剥離処理剤等を使用しない場合であっても、非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体を、剥離シートから容易に剥離することができるためである。
すなわち、シリコーン系の剥離処理剤等を使用した場合、シリコーンオイル等の低分子剥離処理剤成分が非水溶性高分子薄膜等に転移し、適用対象物に対する密着性が低下したりする場合があるためである。
この点、脂環式オレフィン系樹脂であれば、優れた寸法安定性を有することから、表面粗さの制御されたシート表面を安定的に形成することができるため、シリコーン系の剥離処理剤等を使用しない場合であっても、優れた離型性を発揮し、非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体を、剥離シートから容易に剥離することができる。
また、脂環式オレフィン系樹脂であれば、透明性に優れることから、例えば、着色剤を含有させたときに、優れた視認性を得ることができる。
さらに、脂環式オレフィン系樹脂であれば、耐熱性にも優れることから、シート状積層体をロールツーロール法にて用いて高速で製造した場合等であっても、延びが発生することを効果的に抑制することができる。
また、脂環式オレフィン系樹脂を構成する脂環式オレフィンとしては、1環の脂環式オレフィンとして、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等が挙げられる。
また、2環の脂環式オレフィンとして、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン等が挙げられる。
また、3環の脂環式オレフィンとして、例えば、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエンまたはこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン等が挙げられる。
また、4環の脂環式オレフィンとして、例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(単にテトラシクロドデセンともいう)、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等が挙げられる。
さらに、多環の脂環式オレフィンとしては、例えば、8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ−4,9,11,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ−5,10,12,14−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−へキサヒドロアントラセンともいう)、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]−4−ペンタデセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,l6]−14−エイコセン、シクロペンタジエンの4量体等が挙げられる。
なお、上述してきた脂環式オレフィンは、それぞれ単独であるいは2種以上組合せて用いてもよい。
また、上述した脂環式オレフィンの中でも、特に、1環の脂環式オレフィン(特にシクロペンテン、シクロヘキセン)、2環の脂環式オレフィン(特にノルボルネン)および3環の脂環式オレフィン(特にジシクロペンタジエン)からなる群から選択される少なくとも一種の脂環式オレフィンを用いることが好ましい。
また、脂環式オレフィン系樹脂は、脂環式オレフィンと、エチレンまたはα−オレフィン等との共重合体であってもよい。
かかるα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜8のα−オレフィンが挙げられる。
また、脂環式ポリオレフィン系樹脂には、環状ポリオレフィン系樹脂に極性基(例えば、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミド基、エステル基、ヒドロキシル基等)を有する不飽和化合物をグラフトおよび/または共重合したものを含めることができる。
また、脂環式オレフィン系樹脂の構造は、特に制限はされず、鎖状でも、分岐状でも、架橋状でもよいが、直鎖状であることが好ましい。
また、このような脂環式オレフィン系樹脂の分子量としては、GPC法による数平均分子量が0.5万〜30万、好ましくは1万〜15万、さらに好ましくは1.5万〜10万であることが好ましい。
この理由は、数平均分子量が低すぎると機械的強度が低下し、高すぎると成形加工性が悪くなる傾向があるためである。
また、本発明で使用する脂環式オレフィン系樹脂のガラス転移点(Tg)は、通常、50〜300℃の範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、ガラス転移点(Tg)が高いほど高温でのシート形状の保持と離型性に優れるが、高すぎると成形加工が難しくなる傾向があるためである。
したがって、脂環式オレフィン系樹脂のガラス転移点(Tg)を100〜250℃の範囲内の値とすることがより好ましく、170〜200℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、本発明における剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層は、材料物質として、脂環式オレフィン系樹脂を単独で使用することが最も好ましいが、他の熱可塑性樹脂を本発明の目的を妨げない範囲内でブレンドして用いてもよい。
また、ブレンドする樹脂の種類としては、特に制限はないが、脂環式オレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂が好ましい。
また、このようなオレフィン系樹脂の中でも、各種ポリエチレン、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、メタロセンポリエチレン、およびこれらの樹脂を熱や電子線又は触媒等により架橋できるように変性した樹脂が更に好ましい。
また、靭性を改良する目的では、オレフィン系のエラストマー、スチレン系のエラストマー等の各種熱可塑性エラストマーや耐衝撃剤等をブレンドしても良い。
また、環状オレフィン系樹脂と親和性の低い樹脂をブレンドする場合は、市販の相溶化剤等を用いることが好ましい。
また、ブレンドする樹脂の配合割合は、脂環式オレフィン系樹脂100重量部に対し、1〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、ブレンドする樹脂の配合割合が少なすぎると、ブレンド効果を得ることが困難になる一方、ブレンドする樹脂の配合割合が多すぎると、剥離シートの剥離性が悪くなる場合があるためである。
したがって、ブレンドする樹脂の配合割合を5〜45重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜20重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、本発明における剥離シートは、脂環式オレフィン系樹脂層と、他の樹脂層を1層または2層以上とを含む複層の剥離シートであってもよい。
他の樹脂層としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
(2)接触角
また、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層の表面に対する純水を用いて測定される接触角(測定温度:25℃)を40〜80°の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる接触角が上記の範囲外の値となると、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に非水溶性高分子薄膜形成用溶液または水溶性高分子溶液を塗布した際に、ハジキ等が生じて塗膜を均一に形成することが困難になる場合や、形成された非水溶性高分子薄膜または水溶性高分子膜を、剥離シートから剥離することが困難になる場合があるためである。
したがって、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層の表面に対する純水を用いて測定される接触角(測定温度:25℃)を45〜75°の範囲内の値とすることがより好ましく、50〜70°の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(3)膜厚
また、剥離シートの膜厚を10〜200μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、剥離シートの膜厚をかかる範囲内の値とすることにより、当該剥離シートのフレキシブル性を良好にすると共に、当該剥離シート上に積層された状態の非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体の運搬や取り扱いを容易にすることができるためである。
すなわち、剥離シートの膜厚がかかる範囲内の値であれば、積層体をシート状積層体とすることができることから、コンパクト化が容易であり、運搬時の省スペース化に効果的に寄与するばかりか、取り扱い性が向上し、指先やピンセットによって剥離シートから非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体を容易に剥離させることができる。
さらに、剥離シートの膜厚がかかる範囲内の値であれば、非水溶性高分子薄膜の使用態様に応じて、非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体を、剥離シートごと所定平面形状となるように容易に裁断することができる。
したがって、剥離シートの膜厚をかかる範囲内の値とすることにより、対象物に非水溶性高分子薄膜を提供する際のハンドリング性を、効果的に向上させることができる。
より具体的には、剥離シートの膜厚が10μm未満の値となると、シート状積層体の膜厚が過度に低下して、剥離シートから非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体を剥離することが困難になる場合がある。一方、剥離シートの膜厚が200μmを超えた値となると、シート状積層体の裁断性が過度に低下したり、フレキシブル性が過度に低下して、剥離シートごと適用対象物に適用し、後から剥離シートを剥離するといった使用態様が困難になったりする場合があるためである。
したがって、剥離シートの膜厚を15〜180μmの範囲内の値とすることがより好ましく、20〜150μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(4)表面粗さ
また、剥離シートの両面もしくはいずれか一方の面における算術平均粗さRa(JIS B0601:2001に準拠して測定)を10nm以下の値とすることが好ましい。
この理由は、剥離シートの両面もしくはいずれか一方の面における算術平均粗さRaをかかる範囲内の値とすることにより、非水溶性高分子薄膜にピンホールが生じたり、その膜厚が不均一になったりすることを効果的に抑制することができるためである。
すなわち、剥離シートの両面もしくはいずれか一方の面における算術平均粗さRaが10nmを超えた値となると、特に、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜をこの順に形成した場合に、剥離シート表面の凹凸に起因して、非水溶性高分子薄膜にピンホールが生じたり、その膜厚が不均一になったりする場合があるためである。また、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、水溶性高分子膜および非水溶性高分子薄膜をこの順に形成した場合であっても、シート状積層体を巻き取る際に、剥離シートの裏面の凹凸に起因して、非水溶性高分子薄膜にピンホールや亀裂等が生じる場合があるためである。一方、剥離シートの両面もしくはいずれか一方の面における算術平均粗さRaの値は小さければ小さい程好ましいが、過度に小さな値となると、製造上の困難が生じる場合がある。
したがって、剥離シートの両面もしくはいずれか一方の面における算術平均粗さRa(JIS B0601:2001に準拠して測定)を0〜8nmの範囲内の値とすることがより好ましく、0〜5nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層の表面における算術平均粗さに対する、剥離シートの裏面における算術平均粗さとの比が、0.8〜10であることがより好ましく、0.9〜5であることがさらに好ましい。
なお、同様の観点から、剥離シートの両面もしくはいずれか一方の面における最大表面粗さRt(JIS B0601:2001に準拠して測定)を20nm以下の値とすることが好ましく、0〜18nmの範囲内の値とすることがより好ましく、0〜15nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層の表面における最大表面粗さに対する、剥離シートの裏面における最大表面粗さとの比が、0.8〜10であることがより好ましく、0.9〜5であることがさらに好ましい。
(5)着色
また、剥離シートに対し、着色剤を含有させ、着色することも好ましい。
この理由は、剥離シートを着色することにより、剥離シートから非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体を剥離する際に、その剥離境界線を視認しやすくして、より容易に剥離することができるためである。
また、かかる着色剤としては、例えば、キナクリドン系、アンスラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、モノアゾ系、不溶性アゾ系、ナフトール系、フラバンスロン系、アンスラピリミジン系、キノフタロン系、ピランスロン系、ピラゾロン系、チオインジゴ系、アンスアンスロン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系、インダンスロン系等の有機顔料や、ニッケルジオキシンイエロー、銅アゾメチンイエロー等の金属錯体、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛等の金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの金属塩、カーボンブラック、アルミニウム、雲母などの無機顔料、アルミニウムなどの金属微粉やマイカ微粉等が挙げられる。
また、染料としては、例えば、アゾ系、キノリン系、スチルベン系、チアゾール系、インジゴイド系、アントラキノン系、オキサジン系等が挙げられる。
なお、着色剤は、粉体をそのまま用いても構わないし、あらかじめ着色ペースト、着色ペレット等に加工してから用いても構わない。
また、着色剤の配合量としては、剥離シートを構成する樹脂成分100重量部に対して、0.01〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましく、0.1〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜10重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
3.非水溶性高分子薄膜
(1)材料物質
本発明における非水溶性高分子薄膜は、非水溶性であることを特徴とする。
この理由は、本発明における非水溶性高分子薄膜の主な適用対象物は、臓器創傷面や角膜等の生体組織、表皮などであり、基本的に生体由来の粘液、汗等をその表面に有していることから、かかる粘液等に含まれる水分によって非水溶性高分子薄膜が溶解することを防ぐためである。
したがって、本発明における非水溶性高分子薄膜の材料物質は、非水溶性の高分子薄膜を形成できるものであれば、特に限定されるものではなく、従来公知の材料物質を用いることができるが、生体適合性の材料物質を用いることがより好ましい。
また、本発明において非水溶性高分子薄膜を非水溶性とするにあたり、必ずしもその材料物質が非水溶性である必要はなく、その材料物質を加熱乾燥や架橋反応、重合等することにより、最終的に非水溶性高分子薄膜が得られるものであればよい。
また、具体的な材料物質としては、ポリ乳酸、乳酸共重合体、ポリラクトン、ラクトン共重合体、ポリペプチド等が挙げられる。
また、上述した材料物質の中でも、ポリ乳酸、乳酸共重合体、ポリラクトンまたはラクトン共重合体の少なくとも一つを含むことが好ましい。
この理由は、非水溶性高分子薄膜が、材料物質としてこれらの化合物を含むことにより、より均一な膜厚を有する非水溶性高分子薄膜を、安定的に得ることができるためである。
また、材料物質としてポリ乳酸を用いる場合には、例えば、L−乳酸またはD−乳酸あるいはこれらの両者を含む乳酸の重合体を用いることができる。また、L−ラクチド、D−ラクチド、meso−ラクチド等の乳酸の環状二量体であるラクチドの重合体を用いてもよい。
また、材料物質として乳酸共重合体を用いる場合には、乳酸とその他の単量体成分との重合体を用いることができる。
上記その他の単量体成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含む化合物類またはその誘導体;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を有する化合物類またはその誘導体が挙げられる。
また、乳酸共重合体を構成する乳酸とその他の単量体成分とを共重合する際の重量比は乳酸/その他の単量体成分=50/50〜99/1であることが好ましい。
また、材料物質としてポリラクトンを用いる場合には、例えば、εカプロラクトン、δブチロラクトン、βメチル-δバレロラクトン、βプロピオラクトン等のラクトンの重合体を用いることができる。
また、材料物質としてラクトン共重合体を用いる場合には、例えば、ラクトンとその他の単量体成分との重合体を用いることができる。
上記その他の単量体成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含む化合物類またはその誘導体;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を有する化合物類またはその誘導体が挙げられる。また、上述した乳酸またはラクチドをその他の単量体成分として用いてもよい。
また、ラクトン共重合体を構成するラクトンとその他の単量体成分とを共重合する際の重量比はラクトン/その他の単量体成分=50/50〜99/1であることが好ましい。
また、材料物質としてポリペプチドを用いる場合には、例えば、ポリリシン、ポリグルタミン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリグリシン、ポリフェニルアラニン、ポリアラニン、ポリロイシン、ポリイソロイシン、ポリバリン、ポリプロリン、ポリセリン、ポリスレオニン、ポリチロシン等を用いることができる。
また、材料物質として、反対電荷を有する高分子電解質(ポリカチオンおよびポリアニオン)の希薄溶液を交互に塗布することにより、ポリカチオンと、ポリアニオンとが積層された非水溶性高分子薄膜を形成することもできる。なお、ポリカチオンとポリアニオンとの積層数としては、それぞれ1層を積層した2層の積層体としてもよいが、さらに交互に積層して4層〜20層程度の積層体としてもよい。
かかるポリカチオンとしては、ポリリシン、ポリグルタミン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン等が挙げられ、ポリアニオンとしては、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸等を挙げることができる。
また、材料物質の重量平均分子量を10,000〜2,000,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、材料物質の重量平均分子量をかかる範囲内の値とすることにより、より均一な膜厚を有する非水溶性高分子薄膜を、さらに安定的に得ることができるばかりか、非水溶性高分子薄膜の強度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、材料物質の重量平均分子量が10,000未満の値となると、非水溶性高分子薄膜の強度が不十分となる場合があるためである。
一方、材料物質の重量平均分子量が2,000,000を超えた値となると、非水溶性高分子薄膜の膜厚が不均一となる場合があるためである。
したがって、材料物質の重量平均分子量を30,000〜1,000,000の範囲内の値とすることがより好ましく、50,000〜500,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、材料物質は、上述したような重合体ばかりでなく、多官能性単量体であってもよい。
但し、これらの多官能性単量体を用いて非水溶性高分子薄膜を形成する場合は、多官能性単量体を重合し、あるいは、さらに架橋することが必要になる。
かかる多官能性単量体としては、例えば、アミノ酸や糖類等、分子内にアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、イソシアナート基、アルデヒド基、エポキシ基、シアヌル基等を複数有する単量体や、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ビスマレイミド等、分子内に複数のビニル基を有する単量体等が挙げられる。
(2)膜厚
また、非水溶性高分子薄膜の膜厚を20〜500nmの範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、非水溶性高分子薄膜を、適用対象物として臓器創傷面や角膜等の生体組織に適用した場合に、膜強度を適度に保ちながら生体組織に対してより強固に密着させることができるためである。
さらに、非水溶性高分子薄膜を、適用対象物として皮膚表面に適用した場合には、皮膚の肌理に追従し、より強固に密着させることができるためである。
すなわち、非水溶性高分子薄膜の膜厚が20nm未満の値となると、膜強度が過度に低下して、適用対象物に対して適用した際に、過度に破断し易くなる場合がある。一方、非水溶性高分子薄膜の膜厚が500nmを超えた値となると、適用対象物に対する密着性が過度に低下したりする場合がある。
したがって、非水溶性高分子薄膜の膜厚を25〜400nmの範囲内の値とすることがより好ましく、30〜200nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、適用対象物に対してより強固に密着させる観点からは、非水溶性高分子薄膜の膜厚を150nm以下の値とすることが特に好ましい。
以下、図3を用いて、非水溶性高分子薄膜の膜厚と、提供対象物に対する密着性と、の関係を説明する。
すなわち、図3には、横軸に非水溶性高分子薄膜の膜厚(nm)を採り、縦軸に臨界荷重(MN/m)を採った特性曲線が示してある。
ここで、臨界荷重とは、適用対象上に載置した非水溶性高分子薄膜に対して荷重を負荷した場合に、非水溶性高分子薄膜が適用対象から剥離したときの荷重値(mN)を非水溶性高分子薄膜の膜厚(nm)で割った値(MN/m)である。
このように、荷重値を非水溶性高分子薄膜の膜厚で割る理由は、膜厚の増加に伴って非水溶性高分子薄膜の強度が強くなることから、荷重値だけで密着性を評価した場合、薄膜の強度という要素も評価結果に含まれてしまい、非水溶性高分子薄膜の密着性のみを評価することが困難になるためである。
したがって、臨界荷重の値が大きい程、非水溶性高分子薄膜の適用対象物に対する密着性が高いことを意味する。
なお、臨界荷重の具体的な測定方法は、実施例において記載する。
図3における特性曲線からは、非水溶性高分子薄膜の膜厚が150nmを超えた値である場合、その値の変化によらず、臨界荷重の値が0.02MN/m前後に維持されていることが分かる。
一方、非水溶性高分子薄膜の膜厚が150nm以下の値となると、臨界荷重の値が急激に増加し始めることが分かる。
より具体的には、非水溶性高分子薄膜の膜厚が146nm、84nm、39nmと薄くなるにしたがって、臨界荷重の値が約0.05MN/m、0.10MN/m、0.15MN/mと急激に増加している。
以上より、図3の特性曲線からは、非水溶性高分子薄膜の膜厚を150nm以下の値とすることにより、当該非水溶性高分子薄膜の適用対象物に対する密着性を、臨界的に向上させられることが理解できる。
(3)機能性物質による修飾
また、非水溶性高分子薄膜の表面を、機能性物質により修飾することも好ましい。
ここで、「機能性物質」とは、細胞膜上にある認識タンパク質やそのリガンド、抗原や抗体など分子認識能を有する物質や、触媒や酵素など特定の反応を促進する物質、抗酸化剤やラジカル消去剤など特定の反応に関与する物質、あるいはカルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、マレイミド基など電荷や反応に関与する基や配位子などを意味する。
また、高分子電解質の電荷(静電相互作用)を利用して機能を発現させる物質も機能性物質に含まれる。
例えば、機能性物質としては、ポリエチレングリコールや糖鎖のような高分子化合物、タンパク質、ペプチド、糖鎖、ビオチン誘導体、ポリカチオンおよびポリアニオンの高分子電解質からなる群から選ばれる少なくとも一つが挙げられるが、これらに何ら限定されるものではない。
また、機能性物質の結合法としては、化学的あるいは物理的に結合させる方法がある。
まず、化学的に結合させる方法としては、非水溶性高分子薄膜を構成する重合体等に導入されたアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、イソシアナート基、アルデヒド基、エポキシ基、シアヌル基、ビニル基に対して、結合し得る官能基を介して結合させることができる。
例えば、機能性物質と非水溶性高分子薄膜との結合反応として、ヒドロキシル基やアミノ基と、イソシアナート基との反応によるウレタン結合やユリア結合、アミノ基と、アルデヒド基との反応によるシッフ塩基の形成、メルカプト基同士のジスルフィド結合、メルカプト基と、ピリジルジスルフィド基やマレイミド基との反応やカルボニル基と、スクシンイミド基との反応等を利用することができる。
また、物理的に結合させる方法としては、機能性物質側と非水溶性高分子薄膜側との静電的相互作用、疎水性相互作用、水素結合あるいは分子間力などを用いることができる。
あるいは、非水溶性高分子薄膜側または機能性物質側にリガンドを導入させておき、機能性物質側または非水溶性高分子薄膜側に導入されたアクセプターとのコンプレックスを利用して機能性物質を非水溶性高分子薄膜上に固定することができる。
具体的な組合せとしては、ビオチンとアビジン、糖鎖とレクチン、抗原と抗体、薬物とレセプター、酵素と基質などが挙げられる。
また、酵素としては、カタラーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、キモトリプシン、チトクローム、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、ガラクトシダーゼ、グリコセレブロシダーゼ、血液凝固因子、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、プルラナーゼ、イソメラーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースイソメラーゼ、グルタミナーゼ、β−グルカナーゼ、セリンプロテアーゼ等が挙げられるが、これらに何ら限定されるものではない。
(4)着色
また、非水溶性高分子薄膜に対し、着色剤を含有させ、着色することも好ましい。
この理由は、非水溶性高分子薄膜を着色することにより、剥離シートから非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体を剥離する際に、剥離境界線を視認し易くして、より容易に剥離することができるためである。
また、非水溶性高分子薄膜を適用対象物に対して適用した際に、その位置を視認し易くすることができるためである。
なお、使用可能な着色剤としては、剥離シートを着色する場合と同様の顔料等を使用することができる。
また、着色剤の配合量としては、非水溶性高分子薄膜形成用の材料物質100重量部に対して、0.01〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましく、0.1〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜10重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
4.水溶性高分子膜
(1)材料物質
本発明における水溶性高分子膜は、非水溶性高分子薄膜を支持すると共に、速やかに水に溶解する性質を有することを特徴とする。
この理由は、本発明のシート状積層体は、剥離シートから非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体を剥離し、水溶性高分子膜によって補強された状態の非水溶性高分子薄膜を、そのまま適用対象物に対して適用し、水溶性高分子膜は水に溶解させて除去することを主な使用態様としているためである。
したがって、適用対象物にそのまま水溶性高分子膜が残留すると、非水溶性高分子薄膜が有する適用対象物への強固な密着性等の特性を十分に発揮させることが困難になる場合がある。
このような理由から、本発明における水溶性高分子膜の材料物質は、所定の強度と水溶性を有する水溶性高分子であれば、特に限定されるものではなく、従来公知のものを用いることができるが、適用対象物が生体組織などである場合には、生体に対し無害であるものがより好ましい。
なお、本発明において「水溶性」とは、水、あるいは、アルコール類の水溶液等に可溶であることをいい、実用的には、生理食塩水に可溶であることが好ましい。
また、具体的な水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、グアーガム、ローカストビーンガム、アルファー化デンプン、プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、アルギン酸ソーダ、ヒアルロン酸ソーダ等を挙げることができる。
また、上述した水溶性高分子の中でも、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、ポリビニルアルコールを含むことが特に好ましい。
この理由は、生体適合性があり、汎用性があるためである。
また、水溶性高分子の重量平均分子量を10,000〜2,000,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、これらの材料物質の重量平均分子量が10,000未満の値となると、水溶性高分子膜の強度が不十分となる場合があるためである。
一方、水溶性高分子の重量平均分子量が2,000,000を超えた値となると、水溶性高分子膜の膜厚が不均一となる場合があるためである。
したがって、水溶性高分子の重量平均分子量を30,000〜1,000,000の範囲内の値とすることがより好ましく、50,000〜500,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(2)膜厚
また、水溶性高分子膜の膜厚を20nm〜500μmの範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、水溶性高分子膜の膜厚をかかる範囲内の値とすることにより、非水溶性高分子薄膜を効果的に補強することができる一方で、適用対象物に適用した際には、生理食塩水等によって速やかに溶解させることができるためである。
すなわち、水溶性高分子膜の膜厚が20nm未満の値となると、水溶性高分子膜を均一に形成することが困難になることや、非水溶性高分子薄膜を効果的に補強することが困難になる場合があるためである。一方、水溶性高分子膜の膜厚が500μmを超えた値となると、適用対象物に適用した際に、速やかに溶解・除去させることが困難になる場合があるためである。
したがって、水溶性高分子膜の膜厚を100nm〜400μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1μm〜300μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(3)着色
また、水溶性高分子膜に対し、着色剤を含有させ、着色することも好ましい。
この理由は、水溶性高分子膜を着色することにより、剥離シートから非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体を剥離する際に、剥離境界線を視認し易くして、より容易に剥離することができるためである。
また、非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体を適用対象物に対して適用した際に、その位置を視認し易くすることができるためである。
なお、使用可能な着色剤としては、剥離シートを着色する場合と同様の顔料等を使用することができる。
また、着色剤の配合量としては、水溶性高分子100重量部に対して、0.01〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましく、0.1〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜10重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、フレキシブル性を有し、脂環式オレフィン系樹脂層を含む単層または複層の剥離シートの前記脂環式オレフィン系樹脂層上に、非水溶性高分子薄膜と、水溶性高分子を含む水溶性高分子膜と、を積層してなるシート状積層体の製造方法であって、下記工程(a1)〜(c1)を含むことを特徴とするシート状積層体の製造方法である。
(a1)剥離シートを準備する工程
(b1)剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、非水溶性高分子薄膜形成用溶液を塗布し、膜厚が20〜500nmの範囲内の値である非水溶性高分子薄膜を形成する工程
(c1)非水溶性高分子薄膜上に、水溶性高分子溶液を塗布し、膜厚が20nm〜500μmの範囲内の値である水溶性高分子膜を形成する工程
すなわち、本発明のシート状積層体の製造方法であれば、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、非水溶性高分子薄膜形成用溶液および水溶性高分子溶液をこの順に塗布することによりシート状積層体を製造することから、枚葉式での製造ばかりでなく、例えば、ロールツーロール法での製造が可能となる。
したがって、本発明のシート状積層体の製造方法であれば、図1(a)に示すように、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜がこの順に積層してなる積層体を効率よく大量生産することができる。
以下、本発明の第2の実施形態を、第1の実施形態と異なる点を中心に、図面を参照しつつ、具体的に説明する。
1.工程(a1):剥離シートの準備工程
工程(a1)は、第1の実施形態で説明した剥離シートを準備する工程である。
また、その製造方法としては、特に限定されるものではないが、溶液キャスティング法又は溶融押出法によって成形することが好ましい。
より具体的には、溶液キャスティング法では、溶剤に溶解した脂環式オレフィン系樹脂溶液を支持体、例えば、平滑な金属製エンドレスベルト、平滑な樹脂フィルム等の支持体上に塗工した後、塗膜を均一に加熱し乾燥させて脂環式オレフィン系樹脂層を成膜した後、支持体から剥離することにより剥離シートが得られる。
なお、複層の剥離シートとする場合には、他の樹脂からなるフィルム上に、溶剤に溶解した脂環式オレフィン系樹脂溶液を塗工した後、塗膜を均一に加熱し乾燥させて脂環式オレフィン系樹脂層を成膜することにより脂環式オレフィン系樹脂層を含む複層の剥離シートが得られる。
また、溶融押出法では、脂環式オレフィン系樹脂を押出機に供給し、リップクリアランスを1mm以下、好ましくは0.7mm以下に調整したTダイからシート状に溶融押出し、脂環式オレフィン系樹脂のガラス転移点(Tg)±20℃の範囲に制御した鏡面冷却ロールと接触させて冷却固化することにより成形することにより脂環式オレフィン系樹脂層単層の剥離シートが得られる。
なお、複層の剥離シートとする場合には、脂環式オレフィン系樹脂と他の樹脂とを共押出機に供給し、上記と同様にして、成膜することにより脂環式オレフィン系樹脂層を含む複層の剥離シートが得られる。
なお、剥離シートの具体的な内容については、第1の実施形態にて説明したため、省略する。
2.工程(b1):非水溶性高分子薄膜の形成工程
工程(b1)は、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、非水溶性高分子薄膜形成用溶液を塗布し、膜厚が20〜500nmの範囲内の値である非水溶性高分子薄膜を形成する工程である。
(1)塗布方法
また、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の塗布を、ロールツーロール法(roll toroll法)にて行うことが好ましい。
この理由は、ロールツーロール法であれば、所定の膜厚を有する非水溶性高分子薄膜を、より効率的に形成することができるためである。
また、ロールツーロール法を実施するにあたり、特に、マイクログラビアコータまたはスロットダイコータを用いることが好ましい。
この理由は、これらの塗布装置であれば、所定の膜厚を有する非水溶性高分子薄膜を、さらに効率的に形成することができるためである。
すなわち、マイクログラビアコータおよびスロットダイコータであれば、ナノメートルオーダーの非水溶性高分子薄膜を、その表面に皺を発生させることなく、かつ、均一な膜厚でべた塗りすることができ、しかも、構造が簡単である上、経済性にも優れるためである。
ここで、マイクログラビアコータについて、図3(a)および(b)を参照しつつ、大まかに説明する。
すなわち、図3(a)には、マイクログラビアコータ100の斜視図が示してあり、図3(b)には、マイクログラビアコータ100を矢印A方向に沿って見た場合の断面図が示してある。
図3(a)〜(b)に示すように、マイクログラビアコータ100は、原反ロール(図示せず)から繰り出されて巻取りロール(図示せず)に巻き取られる剥離シート2を、一定方向(矢印B)に沿って所定のスピードで走行させるための少なくとも1対のガイドロール(102、104)を備えている。
また、かかる少なくとも一対のガイドロール(102、104)の間で走行している剥離シート2に対して、塗布液供給パン106に収容された塗布液(図示せず)を、掻き揚げながら塗布するためのグラビアロール108を備えている。
また、かかるグラビアロール108は、通常、直径が50mm程度、長軸方向の長さが1700mm程度であり、グラビアパターンは彫刻などによって刻設されている。グラビアの線数は、特に限定されないが、15〜200#のものを使用することが好ましい。
そして、かかるグラビアロール108は、グラビアロール用駆動原(図示せず)によって、剥離シート2の走行方向とは逆方向に回転しながら、剥離シート2に対して塗布液を塗布することになる。
また、グラビアロール108には、ドクターブレード110が当接させてあり、これによりグラビアロール108に付着した余分な塗布液を掻き取ることができるため、ナノメートルオーダーの非水溶性高分子薄膜を安定的に形成することができる。
また、非水溶性高分子薄膜の膜厚の調整は、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の濃度および粘度、並びにグラビアの線数と走行スピードを調整することにより行うことができる。
また、マイクログラビアコータを用いる場合における非水溶性高分子薄膜形成用溶液の粘度(測定温度:25℃)は、1〜200mPa・sの範囲内の値とすることが好ましい。
また、マイクログラビアコータにおける剥離シートの走行スピードは、特に制限されないが、0.1〜100m/分の範囲内の値とすることが好ましい。
次いで、スロットダイコータについて、図4(a)および(b)を参照しつつ、大まかに説明する。
すなわち、図4(a)には、スロットダイコータ200の斜視図が示してあり、図4(b)には、スロットダイコータを矢印Aに沿って見た場合の断面図が示してある。
図4(a)〜(b)に示すように、スロットダイコータ200は、原反ロール(図示せず)から繰り出されて巻取りロール(図示せず)に巻き取られる剥離シート2を、一定方向(矢印B)に沿って所定のスピードで走行させるための少なくとも1対のガイドロール(202、204)を備えている。
また、かかる少なくとも一対のガイドロール(202、204)の間で走行している剥離シート2に対して、塗布液タンク206から、ポンプ208による加圧によって供給される塗布液(図示せず)を塗布するためのスロット210を備えている。
また、かかるスロット210は、剥離シート2の走行方向における上流側および下流側に互いに対向するように設けられたダイリップ(212、214)を備えており、かかるダイリップ(212、214)の隙間から、剥離シート2に塗布液が供給され、塗布することになる。
また、スロットダイコータにおける剥離シートの走行スピードは、特に制限されないが、0.1〜100m/分の範囲内の値とすることが好ましい。
また、非水溶性高分子薄膜の膜厚の調整は、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の濃度および粘度、並びにダイリップからの吐出量と剥離シートの走行スピードを調整することにより行うことができる。
また、スロットダイコータを用いる場合における非水溶性高分子薄膜形成用溶液の粘度(測定温度:25℃)は、100〜500mPa・sの範囲内の値とすることが好ましい。
(2)非水溶性高分子薄膜形成用溶液
(2)−1 非水溶性高分子薄膜形成用の材料物質
また、非水溶性高分子薄膜形成用溶液における溶質としての非水溶性高分子薄膜形成用の材料物質としては、第1の実施形態において既に説明したため、省略する。
(2)−2 溶剤
また、非水溶性高分子薄膜形成用溶液における溶剤の種類としては、非水溶性高分子薄膜形成用の材料物質を溶解、または均一に分散でき、加熱により揮発するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、エタノール、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、へプタン、ペンタン、ジクロロメタン、クロロホルム、および四塩化炭素などが好ましい。溶剤の沸点としては、30〜120℃であることが好ましく、35〜80℃であることがより好ましい。
(2)−3 溶液の濃度
また、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の濃度を0.1〜20重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の濃度が0.1重量%未満の値となると、必要な膜厚が得られなくなる場合や溶液の粘度が最適にならない場合があるためである。
一方、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の濃度が20重量%を超えた値となると、均一な塗膜が得られなくなる場合があるためである。
したがって、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の濃度を0.3〜15重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜10重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(2)−4 溶液の粘度
また、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の粘度(測定温度:25℃)を1〜500mPa・sの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の粘度が1mPa・s未満の値となると、塗膜のはじきが発生する場合があるためである。
一方、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の粘度が500mPa・sを超えた値となると、均一な塗膜が得られなくなる場合があるためである。
したがって、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の粘度(測定温度:25℃)を2〜400mPa・sの範囲内の値とすることがより好ましく、3〜300mPa・sの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の粘度は、JIS K7117−1の4.1(ブルックフィールド形回転粘度計)に準拠して測定されたものである。
(2)−5 乾燥条件
また、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に形成された非水溶性高分子薄膜形成用溶液の塗布層を、非水溶性高分子薄膜とするための乾燥条件としては、特に限定されるものではないが、通常40〜120℃の温度条件下で、0.1〜5分間行うことが好ましい。
この理由は、乾燥温度が40℃未満の値となると、乾燥に時間がかかり過ぎたり乾燥不足になったりする場合があるためである。
一方、乾燥温度が120℃を超えた値となると、シワやカールが生じたりする場合があるためである。
また、乾燥時間が0.1分未満の値となると、乾燥不足になる場合があるためである。
一方、乾燥時間が5分を超えた値となると、シワやカールが生じたりする場合があるためである。
したがって、非水溶性高分子薄膜形成用溶液の塗布層を非水溶性高分子薄膜とするための乾燥条件としては、50〜110℃の温度条件下で、0.2〜3分間とすることがより好ましく、60〜100℃の温度条件下で、0.3〜2分間とすることがさらに好ましい。
3.工程(c1):水溶性高分子膜の形成工程
工程(c1)は、非水溶性高分子薄膜上に、水溶性高分子溶液を塗布し、膜厚が20nm〜500μmの範囲内の値である水溶性高分子膜を形成する工程である。
(1)塗布方法
また、水溶性高分子溶液の塗布を、ロールツーロール法にて行うことが好ましい。
この理由は、ロールツーロール法であれば、所定の膜厚を有する水溶性高分子膜についても、より効率的に形成することができるためである。
より具体的には、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法およびグラビアコート法等、従来公知の方法により行うことができる。
(2)水溶性高分子溶液
(2)−1 水溶性高分子
また、水溶性高分子溶液における溶質としての水溶性高分子としては、第1の実施形態において既に説明したため、省略する。
(2)−2 溶剤
また、水溶性高分子溶液における溶剤の種類としては、水溶性高分子溶液を溶解または均一に分散できるものであれば、特に限定されるものではないが、水、あるいは、アルコール類の水溶液等からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
(2)−3 溶液の濃度
また、水溶性高分子溶液の濃度を0.1〜20重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、水溶性高分子溶液の濃度が0.1重量%未満の値となると、必要な膜厚が得られなくなる場合があるためである。
一方、水溶性高分子溶液の濃度が20重量%を超えた値となると、均一な塗膜が得られなくなる場合があるためである。
したがって、水溶性高分子溶液の濃度を0.5〜15重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜10重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(2)−4 溶液の粘度
また、水溶性高分子溶液の粘度(測定温度:25℃)を1〜500mPa・sの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、水溶性高分子溶液の粘度が1mPa・s未満の値となると、塗膜のはじきが発生するとなる場合があるためである。
一方、水溶性高分子溶液の粘度が500mPa・sを超えた値となると、均一な塗膜が得られなくなるとなる場合があるためである。
したがって、水溶性高分子溶液の粘度(測定温度:25℃)を2〜400mPa・sの範囲内の値とすることがより好ましく、3〜300mPa・sの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、水溶性高分子溶液の粘度は、JIS K7117−1の4.1(ブルックフィールド形回転粘度計)に準拠して測定されたものである。
(2)−5 乾燥条件
また、非水溶性高分子薄膜上に形成された水溶性高分子溶液の塗布層を、水溶性高分子膜とするための乾燥条件としては、特に限定されるものではないが、通常40〜120℃の温度条件下で、0.1〜20分間行うことが好ましい。
この理由は、乾燥温度が40℃未満の値となると、乾燥に時間がかかり過ぎたり乾燥不足になったりする場合があるためである。
一方、乾燥温度が120℃を超えた値となると、シワやカールが生じたりする場合があるためである。
また、乾燥時間が0.1分未満の値となると、乾燥不足になる場合があるためである。
一方、乾燥時間が20分を超えた値となると、シワやカールが生じたりする場合があるためである。
したがって、水溶性高分子溶液の塗布層を水溶性高分子膜とするための乾燥条件としては、50〜110℃の温度条件下で、0.2〜10分間とすることがより好ましく、60〜100℃の温度条件下で、0.3〜8分間とすることがさらに好ましい。
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態は、フレキシブル性を有し、脂環式オレフィン系樹脂層を含む単層または複層の剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、非水溶性高分子薄膜と、水溶性高分子を含む水溶性高分子膜と、を積層してなるシート状積層体の製造方法であって、下記工程(a2)〜(c2)を含むことを特徴とするシート状積層体の製造方法である。
(a2)剥離シートを準備する工程
(b2)剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、水溶性高分子溶液を塗布し、膜厚が20nm〜500μmの範囲内の値である水溶性高分子膜を形成する工程
(c2)水溶性高分子膜上に、非水溶性高分子薄膜形成用溶液を塗布し、膜厚が20〜500nmの範囲内の値である非水溶性高分子薄膜を形成する工程
すなわち、本発明のシート状積層体の製造方法であれば、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、水溶性高分子溶液および非水溶性高分子薄膜形成用溶液をこの順に塗布することによりシート状積層体を製造することから、枚葉式での製造ばかりでなく、例えば、ロールツーロール法での製造が可能となる。
したがって、本発明のシート状積層体の製造方法であれば、剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、水溶性高分子膜および非水溶性高分子薄膜がこの順に積層してなる積層体を効率よく大量生産することができる。
なお、工程(a2)、(b2)および(c2)は、それぞれ第2の実施形態において説明した工程(a1)、(c1)および(b1)にそれぞれ対応した内容であるため、具体的な説明は省略する。
以下、実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1]
1.シート状積層体の製造
(1)塗布液の調製
重量平均分子量が22,000であるポリビニルアルコール(関東化学(株)製、ポリビニルアルコール500)を80℃の精製水に溶解し、濃度10重量%、25℃における粘度50mPa・sの水溶性高分子溶液Aを調製した。
また、重量平均分子量が100,000であるポリL−乳酸(PLLA、Polysciences(株)製)をジクロロメタンに溶解し、濃度0.5重量%、25℃における粘度15mPa・sの非水溶性高分子薄膜形成用溶液Aを調製した。
(2)非水溶性高分子薄膜の形成
次いで、マイクログラビアコータ(康井精機(株)製、μコータ)を用いて、剥離シートとしての膜厚40μmの脂環式ポリオレフィンシート(日本ゼオン(株)製、ZF14−040)の上面に対し、非水溶性高分子薄膜形成用溶液Aを塗布した後、80℃で1分間乾燥させ、膜厚30nmの非水溶性高分子薄膜を形成した。
このとき、使用したマイクログラビアコータにおけるグラビアロールは、線数150#、直径20mm、長軸方向の長さが300mmであり、剥離シートの走行スピードは1m/分であり、マイクログラビアロールの回転速度は160rpmであった。
また、使用した剥離シートの表面(被塗布面)および裏面の算術平均粗さRaは、それぞれ1.6nmおよび3nmであり、最大表面粗さRtは、それぞれ3.6nmおよび15nmであった。
また、使用した剥離シートの表面(被塗布面)に対する純水を用いて測定される接触角(測定温度:25℃)は、55°であった。
(3)水溶性高分子膜の形成
次いで、ナイフコータ(ヒラノテクシード(株)製、コンマコーター)を用いて、得られた非水溶性高分子薄膜の上面に対し、水溶性高分子溶液Aを塗布した後、80℃で5分間乾燥させ、膜厚40μmの水溶性高分子膜を形成し、シート状積層体を得た。
なお、得られたシート状積層体の幅は230mmであり、全長は10mであった。
2.評価
(1)剥離性の評価
得られたシート状積層体の剥離性を評価した。
すなわち、得られたシート状積層体における剥離シートから、非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体を、ピンセットを用いて剥離し、その剥離性を下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:剥離シートからの非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体の剥離がスムーズであり、非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体の破れが生じない。
○:剥離シートからの非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体の剥離がややスムーズではないが、非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体の破れが生じない。
△:剥離シートからの非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体の剥離がスムーズではないものの、非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体の破れが生じない。
×:剥離シートからの非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体の剥離が重く、非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体の破れが生じるかもしくは剥離できない。
(2)ピンホールの有無の評価
得られたシート状積層体における非水溶性高分子薄膜におけるピンホールの有無を評価した。
すなわち、得られたシート状積層体における剥離シートから、非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜のシート状積層体を、ピンセットを用いて剥離し、得られた非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体における非水溶性高分子薄膜の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立(株)製、S−3000N)を用いて観察し、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:非水溶性高分子薄膜におけるピンホールが全く認められない。
○:非水溶性高分子薄膜におけるピンホールが小さいものが僅かに認められる。
△:非水溶性高分子薄膜におけるピンホールが小さいものが多く認められる。
×:非水溶性高分子薄膜におけるピンホールが大きいものが認められる。
(3)密着性の評価
得られたシート状積層体の適用対象物に対する密着性を評価した。
すなわち、得られたシート状積層体における剥離シートから、非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜のシート状積層体を、ピンセットを用いて剥離し、得られた非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の積層体の非水溶性高分子薄膜側を適用対象物(生理食塩水で湿らせた上腕皮膚)に対して接触させ、生理食塩水を含浸させた化粧用コットンを用いて水溶性高分子膜を溶解させることにより、適用対象物に非水溶性高分子薄膜を密着させることができるかどうかについて、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:適用対象物に対して非水溶性高分子薄膜をきれいに密着させることができる。
○:適用対象物に対して非水溶性高分子薄膜をほぼ密着させることができる。
△:適用対象物に対する非水溶性高分子薄膜の密着がやや不十分である。
×:適用対象物に対して非水溶性高分子薄膜を密着させることができないか、剥離シートの剥離ができないか、または水溶性高分子膜が溶解しないかのいずれかの不具合が認められる。
[実施例2]
実施例2では、非水溶性高分子薄膜を形成する際に、非水溶性高分子薄膜形成用溶液Aに代えて、重量平均分子量が100,000であるポリL−乳酸(PLLA、Polysciences(株)製)をジクロロメタンに溶解して調製した、濃度1重量%、25℃における粘度20mPa・sの非水溶性高分子薄膜形成用溶液Bを使用し、非水溶性高分子薄膜の膜厚を60nmとしたほかは、実施例1と同様にシート状積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例3では、非水溶性高分子薄膜を形成する際に、非水溶性高分子薄膜形成用溶液Aに代えて、重量平均分子量が100,000であるポリL−乳酸(PLLA、Polysciences(株)製)をジクロロメタンに溶解して調製した、濃度2重量%、25℃における粘度25mPa・sの非水溶性高分子薄膜形成用溶液Cを使用し、非水溶性高分子薄膜の膜厚を120nmとしたほかは、実施例1と同様にシート状積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例4では、水溶性高分子膜を形成する際に、水溶性高分子溶液Aに代えて、重量平均分子量が17,000であるヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を80℃の精製水に溶解して調製した、濃度7重量%、25℃における粘度20mPa・sの水溶性高分子溶液Bを使用し、水溶性高分子膜の膜厚を30μmとしたほかは、実施例2と同様にシート状積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例5では、非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の形成順を逆にした以外は、実施例2と同様にシート状積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例6では、非水溶性高分子薄膜および水溶性高分子膜の形成順を逆にした以外は、実施例4と同様にシート状積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例7では、非水溶性高分子薄膜を形成する際に、非水溶性高分子薄膜形成用溶液Bに代えて、重量平均分子量が80,000である乳酸−グリコール酸共重合体(PLG、乳酸:グリコール酸=80:20)を酢酸エチルに溶解して調製した、濃度1重量%、25℃における粘度30mPa・sの非水溶性高分子薄膜形成用溶液Dを使用したほかは、実施例5と同様にシート状積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
[比較例1]
比較例1では、剥離シートを脂環式ポリオレフィンシートに代えて、膜厚50μmのポリエチレンテレフタレートシートを用いたほかは、実施例1と同様にシート状積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
[比較例2]
比較例2では、剥離シートを脂環式ポリオレフィンシートに代えて、膜厚50μmのポリエチレンテレフタレートシートを用いたほかは、実施例5と同様にシート状積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
Figure 0006000139
[実施例8〜11および比較例3〜4]
実施例8〜11および比較例3〜4では、非水溶性高分子薄膜の膜厚が、それぞれ実施例8:39nm、実施例9:84nm、実施例10:146nm、実施例11、190nm、比較例3:866nm、比較例4:1540nmとなるようにしたほかは、実施例1と同様にシート状積層体を作製した。
次いで、得られたそれぞれのシート状積層体の剥離シートから非水溶性高分子薄膜と水溶性高分子膜の積層体をピンセットを用いて剥離した。次いで、非水溶性高分子薄膜と水溶性高分子膜の積層体の非水溶性高分子薄膜側を、適用対象物(生理食塩水で湿らせたシリコン基板)に対して接触させ、生理食塩水を含浸させた化粧用コットンを用いて水溶性高分子膜を溶解させることにより、適用対象物に非水溶性高分子薄膜をきれいに密着させた。
次いで、図6(a)に示すように、短針302、ダンパー304、磁石306、超える308およびカートリッジ310からなるマイクロスクラッチ試験機300((株)レスカ製、CSR−2000)の短針302から適用対象物としてのシリコン基板50に密着させた状態の非水溶性高分子薄膜4に対して荷重を負荷し、非水溶性高分子薄膜4が適用対象物としてのシリコン基板50から剥離した時の荷重値(mN)を測定した。
そして、得られた荷重値(mN)を、非水溶性高分子薄膜の膜厚(nm)で割ることにより、臨界荷重(MN/m)を算出した。
より具体的には、図6(b)に示すように、横軸に短針から非水溶性高分子薄膜に負荷される応力(mN)、縦軸に非水溶性高分子薄膜から短針にかかる荷重値(mN)を示すセンサーアウトプット(V)を採った応力曲線において、縦軸方向における大きな振動が生じ始めた点を剥離点として、そのときの荷重値(mN)から臨界荷重(MN/m)を算出した。
得られた結果を表2に示す。
Figure 0006000139
以上、詳述したように、本発明のシート状積層体によれば、フレキシブル性を有し、脂環式オレフィン系樹脂層を含む単層または複層の剥離シートの脂環式オレフィン系樹脂層上に、それぞれ所定の膜厚を有する非水溶性高分子薄膜と、水溶性高分子を含む水溶性高分子膜とを積層することにより、適用対象物に非水溶性高分子薄膜を適用する際のハンドリング性を効果的に向上させることができるようになった。
適用対象物としては、主に臓器創傷面や角膜等の生体組織、表皮などであり、本発明のシート状積層体は、臓器創傷被覆材、絆創膏、皮膚保護材および皮膚保湿剤等としての用途が期待される。
また、本発明のシート状積層体の製造方法によれば、ロールツーロール法での製造が可能であるため、所定のシート状積層体を効率的に製造することができるようになった。
したがって、本発明のシート状積層体等は、臓器創傷面や角膜等の生体組織若しくは表皮などの適用対象物に適用される非水溶性高分子薄膜製品の高品質化およびその製造の効率化に著しく寄与することが期待される。
2:剥離シート、4:非水溶性高分子薄膜、6:水溶性高分子膜、10:シート状積層体、12:生理食塩水、50:適用対象物、100:マイクログラビアコータ、102:ガイドロール、104:ガイドロール、106:塗布液供給パン、108:グラビアロール、110:ドクターブレード、200:スロットダイコータ、202:ガイドロール、204:ガイドロール、206:塗布液タンク、208:ポンプ、210:スロット、212:ダイリップ、214:ダイリップ、300:マイクロスクラッチ試験機、302:短針、304:ダンパー、306:磁石、308:コイル、310:カートリッジ

Claims (12)

  1. フレキシブル性を有し、脂環式オレフィン系樹脂層を含む単層または複層の剥離シートの前記脂環式オレフィン系樹脂層上に、非水溶性高分子薄膜と、水溶性高分子を含む水溶性高分子膜と、を積層してなるシート状積層体であって、
    前記非水溶性高分子薄膜の膜厚を20〜500nmの範囲内の値とし、かつ、
    前記水溶性高分子膜の膜厚を20nm〜500μmの範囲内の値とすることを特徴とするシート状積層体。
  2. 前記非水溶性高分子薄膜の膜厚を20〜150nmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載のシート状積層体。
  3. 前記非水溶性高分子薄膜が、ポリ乳酸、乳酸共重合体、ポリラクトンまたはラクトン共重合体の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のシート状積層体。
  4. 前記剥離シートの膜厚を10〜200μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート状積層体。
  5. 前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のシート状積層体。
  6. 前記剥離シートの両面もしくはいずれか一方の面における算術平均粗さRa(JIS B0601:2001に準拠して測定)を10nm以下の値とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート状積層体。
  7. 前記剥離シートの前記脂環式オレフィン系樹脂層上に、前記非水溶性高分子薄膜と、前記水溶性高分子膜と、をこの順に積層してなる請求項1〜6のいずれか一項に記載のシート状積層体。
  8. 前記剥離シートの前記脂環式オレフィン系樹脂層上に、前記水溶性高分子膜と、前記非水溶性高分子薄膜と、をこの順に積層してなる請求項1〜6のいずれか一項に記載のシート状積層体。
  9. フレキシブル性を有し、脂環式オレフィン系樹脂層を含む単層または複層の剥離シートの前記脂環式オレフィン系樹脂層上に、非水溶性高分子薄膜と、水溶性高分子を含む水溶性高分子膜と、を積層してなるシート状積層体の製造方法であって、
    下記工程(a1)〜(c1)を含むことを特徴とするシート状積層体の製造方法。
    (a1)前記剥離シートを準備する工程
    (b1)前記剥離シートの前記脂環式オレフィン系樹脂層上に、非水溶性高分子薄膜形成用溶液を塗布し、膜厚が20〜500nmの範囲内の値である前記非水溶性高分子薄膜を形成する工程
    (c1)前記非水溶性高分子薄膜上に、水溶性高分子溶液を塗布し、膜厚が20nm〜500μmの範囲内の値である前記水溶性高分子膜を形成する工程
  10. フレキシブル性を有し、脂環式オレフィン系樹脂層を含む単層または複層の剥離シートの前記脂環式オレフィン系樹脂層上に、非水溶性高分子薄膜と、水溶性高分子を含む水溶性高分子膜と、を積層してなるシート状積層体の製造方法であって、
    下記工程(a2)〜(c2)を含むことを特徴とするシート状積層体の製造方法。
    (a2)前記剥離シートを準備する工程
    (b2)前記剥離シートの前記脂環式オレフィン系樹脂層上に、水溶性高分子溶液を塗布し、膜厚が20nm〜500μmの範囲内の値である前記水溶性高分子膜を形成する工程
    (c2)前記水溶性高分子膜上に、非水溶性高分子薄膜形成用溶液を塗布し、膜厚が20〜500nmの範囲内の値である前記非水溶性高分子薄膜を形成する工程
  11. 前記工程(b1)〜(c1)または前記工程(b2)〜(c2)を、ロールツーロール法にて行うことを特徴とする請求項9または10に記載のシート状積層体の製造方法。
  12. 前記工程(b1)または前記工程(c2)を、マイクログラビアコータまたはスロットダイコータを用いて行うことを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載のシート状積層体の製造方法。
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