JP6501972B2 - 正圧支援される重力湾曲法およびこの方法に適した装置 - Google Patents

正圧支援される重力湾曲法およびこの方法に適した装置 Download PDF

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Description

本発明は、ガラス板のための、正圧支援される重力湾曲法、この方法に適した装置、ならびに重力湾曲法において正圧を形成するための上方の成形工具の使用に関する。
自動車用のガラスは通常、湾曲を有している。ガラス板を湾曲させる一般的な方法はいわゆる重力湾曲(gravity bendingまたはsag bendingとも言われる)である。この場合、初期状態では平らなガラス板を、湾曲型の載置面上に配置する。次いでこの板を、少なくともその軟化温度まで加熱し、これにより重力の影響下でこの板は載置面上に当接する。したがって載置面の形状により、ガラス板の形状に影響を与えることができる。重力湾曲により、最終的な湾曲に達することができる。このような方法は例えば、英国特許出願公告第813069号明細書(GB 813069 A)により公知である。しかしながら板形状が複雑な場合、しばしば複数の段階的な湾曲方法が用いられる。典型的には、第1の湾曲ステップで重力湾曲により予備湾曲を形成し、最終的な形状は第2の湾曲ステップでしばしば、相補的な湾曲型の間でプレス湾曲により形成される。このような複数の段階的な湾曲方法は例えば、欧州特許第1836136号明細書(EP 1 836 136 B1)、米国特許出願公開第2004107729号明細書(US 2004107729 A1)、欧州特許出願公開第0531152号明細書(EP 0531152 A2)、および欧州特許出願公開第1371616号明細書(EP 1371616 A1)により公知である。
従来の重力湾曲法の欠点としては、ガラス板を効果的に軟化させるための湾曲温度が高いことと、ガラス板が所望の形状となるまでにかかる湾曲時間が長いことが挙げられる。これら両方とも製造コストを引き上げる要因となる。
欧州特許出願公開第0706978号明細書(EP 0 706 978 A2)により、正圧により支援される重力湾曲法が開示されている。この場合、湾曲させたい板を、下方の重力湾曲型と上方の成形工具との間に配置する。上方の成形工具により、上方のガラス表面上に正圧が形成され、これにより重力湾曲型内での板の成形が加速される。上方の成形工具は、全面的な接触面または周囲におけるフレーム状の接触面を有していてよい。成形工具は、ガラス板に直接接触することができ(「hard seal」)、またはガラス板の僅かに上方に位置することができる(「soft seal」)。
国際公開第2014/166793号(WO 2014/166793 A1)には、ガラス湾曲における金属ファブリックおよび金属フェルトの使用が開示されている。この場合、湾曲工具は、耐熱性の分離材料としてのファブリックまたはフェルトで被覆される。
米国特許第5328496号明細書(US 5 328 496 A)にも、ガラス板用の湾曲およびプレロードプロセスにおける工具のための被覆材としての、金属含有性の、特に特殊鋼含有性のファブリックが開示されている。
米国特許出願公開第2013/0340479号明細書(US 2013/0340479 A1)には、ガラス板の持ち上げおよび湾曲のための工具が開示されていて、この工具のフレーム状の接触面には、ガラス、金属、またはセラミックから成る耐火性の繊維が詰められている。
本発明の根底を成す課題は、さらに改善された重力湾曲法およびそのために適した装置を提供することである。特に、より高い効率で重力湾曲の支援のために正圧が形成されるのが望ましい。
本発明の課題は、本発明によれば、少なくとも1つのガラス板を湾曲させる装置であって、
少なくとも1つのガラス板をその上に配置するのに適した載置面を備えた重力湾曲型と、
前記載置面に向かい合って位置するように配置された上方の成形工具であって、前記載置面上に配置された前記少なくとも1つのガラス板の、前記載置面とは反対側の表面上に正圧を形成するのに適した上方の成形工具と、を少なくとも有し、
前記成形工具は、前記重力湾曲型の方向に開かれた中空室を形成するカバーを有しており、かつ前記カバーの縁区分に配置された、前記少なくとも1つのガラス板の、前記載置面とは反対側の前記表面に接触するためのシールリップを備えており、前記成形工具は、前記正圧を形成するために、前記中空室内にガスを導入するための手段を備えている、装置により解決される。
本発明の課題はさらに、少なくとも1つのガラス板を湾曲させる方法であって、以下の方法ステップ、すなわち
(a)少なくとも1つのガラス板を、重力湾曲型の載置面上に配置するステップと、
(b)前記ガラス板を、少なくともその軟化温度まで加熱するステップと、
(c)前記少なくとも1つのガラス板の、前記載置面とは反対側の表面上に、上方の成形工具によって正圧を形成するステップであって、前記成形工具は、前記重力湾曲型の方向に開かれた中空室を形成するカバーを有しており、かつ前記カバーの縁区分に配置された、前記少なくとも1つのガラス板の、前記載置面とは反対側の前記表面に接触するシールリップを備えており、前記中空室内にガスを導入することにより前記正圧を形成するステップと、
(d)前記ガラス板を冷却するステップと、を少なくとも有する方法により解決される。
上記装置と上記方法を、以下に一緒に説明する。この場合、説明と好適な構成とは装置および方法に同様に関わる。
本発明による装置によって行われる湾曲法は、正圧支援される重力湾曲と称することができる。従来の重力湾曲法の場合のように、重力は軟化されたガラス板に作用し、その結果、ガラス板は湾曲型に当て付けられる。しかしながらこの過程は、ガラス板に正圧を負荷することにより支援される。これにより、一方では変形は加速され、ガラス板の所望の形状により早く到達する。他方では、より低い温度で既に十分な変形を得ることができる。従って、製造コストを下げ、サイクル時間を短縮することができる。
本発明による、少なくとも1つのガラス板を湾曲させる装置は、少なくとも1つの下方の重力湾曲型と、上方の成形工具とを有している。湾曲させたいガラス板を、重力湾曲型上に降ろし、重力湾曲型と上方の成形工具との間に配置する。
本発明によれば、成形工具をシールリップによってガラス板に接触させる。本発明によるシールリップによって成形工具とガラス板との間に一貫した接続を形成することができ、これにより、より高い正圧を形成することができる。これによりガラス湾曲法のより高い効果が得られる。さらにシールリップにより、ガラスにおける損傷の危険は、金属の接触面を介してガラスに接触する成形工具によるものよりも減じられる。これは本発明の大きな利点である。
本発明は、少なくとも1つのガラス板を湾曲させる配列も含み、この配列は、本発明による装置と、重力湾曲型の載置面上に配置されたガラス板とを含む。
重力湾曲型は、載置面を有しており、この載置面は、少なくとも1つのガラス板をその上に配置するのに適している。載置面は、湾曲されるガラス板の形状を規定する。ガラス板を、少なくともその軟化温度まで加熱すると、ガラス板は重力の影響下で載置面に当接し、これにより所望の形状となる。重力湾曲型はいわゆる下方の型で、その上に板を降ろすことができるので、載置面は、ガラス板の地面に面した下方の表面に接触する。通常、ガラス板の縁領域は、載置面から突出して周方向に延在している。
本発明は、重力湾曲型の特定の形式に制限されない。載置面は好適には凹状に形成されている。凹状の形状とはこの場合、ガラス板の角隅および縁部が、載置面と規定通りに接触した状態で、湾曲型から離れる方向に湾曲している形状を意味する。
載置面は例えば全面的に形成されていてもよく、全面的にガラス板に接触されてよい。しかしながら好適な構成では、重力湾曲型はフレーム状の載置面を有している。フレーム状の載置面だけがガラス板に直接接触し、板の大部分は工具に直接には接触していない。これにより特に高い光学的品質を有した板を形成することができる。このような工具は、リング(湾曲リング)またはフレーム(フレーム型)とも呼ぶことができる。本発明の意味で「フレーム状の載置面」の概念は、全面的な型に対して本発明による工具を限定するためだけに用いられている。載置面は完全なフレームを形成する必要はなく、中断されていてもよい。載置面は、完全なフレームまたは中断されているフレームの形状で形成されている。
フレーム状の載置面の幅は好適には0.1cm〜20cmであって、特に好適には0.1cm〜5cm、例えば0.3cmである。
ガラス板の、重力湾曲型とは反対側の表面は、本発明によれば正圧により負荷される。ガラス板の、重力湾曲型とは反対側の表面は上方の表面とも呼ぶことができ、重力湾曲型に面した表面は下方の表面とも呼ぶことができる。正圧とは、本発明の意味では、周囲の圧力よりも高い圧力を意味する。軟化されたガラス板は正圧により、湾曲型内へといわば押され、これにより重力作用を支援している。
上方の成形工具は、湾曲プロセス中、重力湾曲型の載置面に向かい合って配置されており、したがってガラス板を重力湾曲型と成形工具との間に配置することができる。上方の成形工具は、載置面上に配置されたガラス板の、載置面とは反対側の表面上に正圧を形成するのに適している。成形工具は、全面的な接触面を有する型としてではなく、中空型として形成されている。成形工具は、例えば金属薄板から製造されたカバーを有している。カバーは、中空室を形成するように成形されている。中空室は閉鎖された中空室ではなく、重力湾曲型に面した大面積の開口を有している。この工具を鐘形またはフード状と称することもできる。
成形工具には少なくとも1つのシールリップが備えられている。シールリップは、湾曲させたいガラス板の上方の表面に接触するために用いられる。シールリップは、カバーの周方向に延在する縁区分に配置されていて、特に、縁区分の、中空室に面した表面上に配置されている。成形工具の中空室は、本発明によれば重力湾曲工具へと、かつガラス板に向かって開放されており、ガラス板によってシールリップを介していわば閉鎖される。これにより中空室内においてガラス板の上方の表面上に正圧を効果的に形成することができる。縁区分とは、カバーの、縁に配属された領域を称し、シールリップは通常、カバーの側縁に対して間隔を有している。
シールリップは、ガラス板の縁領域でガラス板を取り囲むようにガラス板に接触しているので、上方の表面の大部分に本発明による正圧を形成することができる。シールリップとガラス板の表面との接触領域は好適には、ガラス板の側縁に対して最大20cmの間隔を有しており、特に好適には最大10cmの間隔を有している。正圧は好適には、表面の少なくとも80%に形成され、この場合、表面の正圧によって負荷されない領域は縁領域に配置されていて、シールリップに取り囲まれた領域の外側にある。上方の成形工具により形成された圧力は表面上に均一に分配されている。
正圧は、ガラス板の表面のできるだけ大きな割合に形成されるべきである。正圧は少なくとも、重力湾曲型の載置面上に載置されるガラス板の領域上に形成されるべきであり、フレーム状の載置面の場合には、そのフレーム状の載置面によって取り囲まれた領域上に形成されるべきである。
シールリップは好適には中断されずに環状に形成されている。しかしながらシールリップは基本的に中断部を有していてもよい。この場合、中断部は、中空室内の正圧の減少が早すぎないように寸法設定されるべきである。カバーの周方向に延在する縁区分に沿って相応に曲げられる唯1つのシールリップが設けられてもよい。しかしながら複数のシールリップから成っていてもよい。
さらに、本発明による装置は、重力湾曲型と成形工具とを互いに相対的に移動させる手段を有している。これにより、重力湾曲型と成形工具とは、ガラス板を重力湾曲型上に載置した後、成形工具をガラス板に接触させるように互いに接近させられる。この接近は、重力湾曲型の移動、成形工具の移動、またはその両方の移動により行うことができる。好適な構成では、成形工具が移動させられてガラス板上に降ろされ、重力湾曲型は垂直移動を行わない。
本発明による装置はさらに、ガラス板を軟化温度まで加熱する手段を有している。典型的には、重力湾曲型と上方の成形工具とは加熱可能な湾曲炉内に、または加熱可能な湾曲室内に配置されている。加熱のためにガラス板を別個の室内に、たとえばトンネル炉内に通すこともできる。
成形工具の中空室内にガスを導入することにより正圧が形成される。このために成形工具は、中空室内にガスを導入するための手段を備えていて、これにより正圧が形成される。このために好適には、外部周辺から中空室内に通じる管(流入管)がカバー内に挿入されている。管を介して中空室内にガスを導入する。ガスは好適な態様では、安価に形成することができるので、空気、特に圧縮空気である。しかしながら原則的には、例えば二酸化炭素または窒素のような別のガスを使用することもできる。空気は、任意の形式で管を通して中空室内に、例えばベンチュリノズルまたはベンチレータによって圧送することができる。
流入ガスは好適には、通常は高温で行われる湾曲プロセスの際にガラス板を冷やさないように、加熱される。ガスの温度は好適には、ガラス板の温度にほぼ相当する。
中空室内には好適には、管出口に向かい合って位置するようにそらせ板が配置されており、これにより流入ガスはそらせ板に当接する。これにより、流入ガスがガラス板に直接当接することが阻止され、中空室全体に、もしくはシールリップによって画定された表面領域上に、均一な正圧を形成することができる。
本発明によるシールリップは好適には、フェルトまたはフリースから製造されている。特に好適には、フェルトまたはフリースの内部には、シールリップを重くするために帯材が配置されている。これによりシールリップを確実にガラス表面との接触状態に保持することができる。フェルトストリップまたはフリースストリップを、たとえば帯材の周りに巻き付けることができる。フェルトまたはフリースは好適には金属を含む、特に好適には特殊鋼を含む。フェルトまたはフリースは好適には金属含有性フェルトまたは金属フリースであり、特に好適には特殊鋼含有性フェルトまたは特殊鋼フリースである。この材料は一方では、工業的大量生産のために十分な安定性を有していて、他方ではガラス表面を損傷させないほど十分に柔らかい。フェルトまたはフリースの材料厚さは、好適には0.1mm〜10mm、特に好適には1mm〜5mmである。
帯材(おもり帯)は好適にはガラス繊維および/または金属繊維、特に好適にはガラス繊維・金属繊維混合物を含んでいる。帯材の厚さは、好適には1mm〜100mm、特に好適には5mm〜30mmである。
カバーは好適には、最大5mmの材料厚さを有しており、特に好適には2mm〜4mmの材料厚さを有している。このような僅かな材料厚さにより、成形工具の重量を僅かであるように維持することができる。カバーは好適には鋼または特殊鋼から成る。
シールリップが配置されているカバーの縁区分は、好適な構成では、成形工具の所定の配置で下方に向けられている。この縁区分は好適にはほぼ鉛直に配置されている。これにより、成形工具を好適にガラス板に接触させることができる。下方に向けられている縁区分はしばしばエプロンとも呼ばれる。カバーの側縁は、下方に向けられた縁区分の端部に配置することができ、下方に向けることができる。しかしながら、例えば、シールリップが配置されていない縁区分の端部が屈曲されて、側縁が下方を向いていないならば、機能は損なわれない。
本発明の好適な構成では、装置は、湾曲時にシールリップが、湾曲させたいガラス板の表面の上方に完全にガラス板の範囲内に配置されているように寸法設定され、構成されている。この場合、上方とは、本発明の意味では、ガラス板の平面へのシールリップの投影図が、ガラス板の面の内側に配置されることを意味している。シールリップは、湾曲させたいガラス板の側縁を越えて突出しない。カバーの縁区分もしくはカバーとシールリップとの接触領域はガラス板の上方に配置されている。したがって、成形工具を下降させることにより生じる、中空室をシールする力は、上方の表面に直接作用するので、良好なシールを、したがってより高い正圧を形成することができ、これにより湾曲法の効率は上がる。このような構成では、シールリップはカバーの縁区分を越えて突出する必要はなく、中空室から突出する必要はない。
本発明の別の好適な構成では、装置は、湾曲時に縁区分が、湾曲させたいガラス板を取り囲むように寸法設定され、構成されている。縁区分(「エプロン」)は、すなわちガラス板にいわばオーバーラップし、これによりガラス板は少なくとも平らな初期状態では、成形工具の中空室の内側に完全に配置されている。シールリップは、湾曲させたいガラス板の側縁を越えて外へ延在している。シールリップは、カバーの、ガラス板を取り囲む縁区分からガラス板の上方の表面へと延在している。シールリップはこの構成では、成形工具の中空室の内側に完全に配置されていて、縁区分を越えて突出しない。ガラス板が中空室内に嵌められており、シールリップが十分に長いならば、成形工具を、湾曲させたいガラス板のサイズに合わせる必要はなく、様々なサイズの様々なガラス板を同じ工具で処理することができるという利点がある。ガラス板の様々なサイズは、シールリップによっていわば補償される。
最後に述べた好適な構成の成形工具では、シールリップが中空室から外へ延在するようにシールリップを延長させることも勿論可能であり、これにより成形工具は、ガラス板を中空室の内側に配置することなくガラス板に接触させられる。両方の態様において、ガラス板平面上へのシールリップとカバーとの接触領域の投影図は、ガラス板を取り囲む。
ガラス板の上方の表面上の正圧は好適には、5mbar〜50mbarであり、特に好適には10mbar〜30mbarである。これにより湾曲に関して特に良好な結果が得られる。必要な圧力は湾曲温度にも依存しており、湾曲温度が高いほど、ガラス板は軟化され、必要な正圧は小さくなる。正圧は、周囲の圧力に対して正の差圧を意味する。
本発明の利点は、正圧支援により、従来の重力湾曲の場合よりも早期に所望の板形状に達することができることにある。これにより、工業的大量生産においてより短いサイクル時間を実現することができる。正圧は、好適な構成では、最大100秒の、好適には最大60秒の、特に好適には最大30秒の時間にわたって、ガラス板の上方の表面上に形成される。正圧が表面上に形成される時間は、例えば5秒〜30秒であってよい。
本発明の別の利点は、正圧支援により、従来の重力湾曲の場合よりも低い温度で湾曲させることができることにある。これにより湾曲室は比較的低い程度で加熱すればよいので、エネルギを削減できる。窓ガラスとして典型的なガラスであるソーダ石灰ガラスは、通常約630℃で湾曲させられる。本発明による正圧支援により、より低い温度で既に、例えば610℃で十分な速度で湾曲させることができる。したがって、ガラス板がソーダ石灰ガラスを含む、またはソーダ石灰ガラスから成る場合には、ガラス板が加熱される最大温度は、好適な態様では630℃未満であり、有利には620℃未満である。
しかしながら湾曲させたいガラス板は、ホウケイ酸ガラスまたは石英ガラスのような別の種類のガラスを含んでいてもよい。ガラス板の厚さは、通常、0.2mm〜10mm、好適には0.5mm〜5mmである。
本発明の別の利点は、正圧支援により、純粋な重力湾曲によるものよりも複雑な板形状を形成できることにある。従来の多段階式の湾曲プロセスでは通常、ガラス板の最終形状に達するまで、より多くの下方の湾曲型が使用され、例えば第1の下方の型は重力による予備湾曲のために、第2の下方の型はプレス湾曲のために使用されている。このために板は第1の型から持ち上げられ、第2の型の上に降ろされることもある。選択的には、互いに相対的に移動させることができる2つの異なる載置面を有する下方の湾曲型も公知であり、これにより2つの載置面のうちのどちらにガラス板を差位置するかを調節することができる。本発明による方法により既に、複雑な予備形状を形成することができるので、最終的な湾曲ステップの前に、下方の湾曲型を交換する必要はない場合も多い。したがって好適な態様では、所望の最終湾曲に到達するまでの全ての湾曲法の間に、本発明による重力湾曲型の他には別の下方の型は使用されない。本発明による正圧支援される重力湾曲に続いて、例えばプレス湾曲ステップのような別の湾曲ステップが行われてよい。しかしながらこの別のステップでは、ガラス板は重力湾曲型上に配置されたままである。これにより、湾曲炉内ではより少ない湾曲型が、またはより複雑でない湾曲型が使用され、すなわち全体としてより少ない材料が外部から湾曲炉内に装入されるという利点が得られる。これにより湾曲炉の冷却程度は比較的低く、この結果、加熱出力に関してエネルギが削減される。さらに比較的複雑でない型は、損傷に対する敏感度も低い。
方法ステップのシーケンスは、軟化温度を超過して初めて、正圧を発生させる措置がとられると解釈するものではない。むしろガラス板は、加熱中既に正圧によって負荷されてもよい。正圧は、確かに軟化温度に到達した後で初めてその効果を発揮できるが、しかしながら方法技術的な理由から、正圧を継続的に形成する方が容易な場合もある。
本発明による正圧支援される重力湾曲は、唯1つの湾曲ステップであってよい、または別の湾曲ステップの前後に行われる、複数段階から成る湾曲法の一部であってもよい。例えば、正圧支援された重力湾曲とガラス板の冷却との間に別の湾曲ステップが、例えば重力湾曲、プレス湾曲、吸引湾曲によって行われてよい。このためにガラス板を、本発明による重力湾曲型から別の湾曲型へと引き渡すことができる。
ガラス板の冷却は、本発明による重力湾曲型上で行われてよく、またはガラス板が引き渡される別の型の上で行われてもよい。冷却は、周囲温度で、または積極的な冷却により行われてよい。
本発明による重力湾曲型は可動に形成することができ、例えば台車上に置かれていてよい。したがって、重力湾曲型上にある湾曲させたいガラス板を、上方の成形工具の下方に搬送することができる。加熱のために重力湾曲型を炉に通すことができ、この場合、ガラス板は湾曲温度まで加熱される、または少なくとも予備加熱される。加熱と、正圧支援された湾曲とを、1つの湾曲炉の異なる室へと空間的に分離することにより、板を湾曲室で初めて加熱する場合よりも高いサイクル時間が達せられる。通常、湾曲温度は500℃〜700℃、好適には550℃〜650℃である。
複数の、例えば互いに重ねられた2つのガラス板も、本発明による装置および本発明による方法によって同時に湾曲させることができる。このことは、2つの個別の板が後に1つの複合ガラスへとラミネートされるべき場合に特に所望され、これによりその形状が互いに最適に適合される。これらのガラス板はこのために互いに面状に重ねられて配置され、一緒に同時に合同に湾曲される。ガラス板の間には、分離手段、例えば分離パウダ、またはファブリックが配置されるので、ガラス板を湾曲後に互いに分離させることができる。好適な態様では、この方法は、互いに重ねられた複数の、特に2つのガラス板で適用される。
本発明はさらに、重力湾曲プロセスを支援するための、上方の成形工具の使用であって、前記成形工具は、重力湾曲型の方向に開かれた中空室を形成するカバーを有しており、かつ前記カバーの縁区分に配置されたシールリップを備えており、前記成形工具によって、前記中空室内にガスを導入することにより、湾曲させたいガラス板の、前記重力湾曲型とは反対側の表面上に正圧を形成する、上方の成形工具の使用を含む。このために前記シールリップを、ガラス板の表面に接触させる。
以下に、本発明を図面及び実施例につき詳しく説明する。図面は概略図であって、正確な縮尺ではない。図面は本発明を限定するものではない。
本発明による方法の実施中における本発明による装置を示す断面図である。 本発明による上方の成形工具の構成を示す断面図である。 図2の区分Zを拡大して示した図である。 本発明の方法の実施中における本発明による上方の成形工具の別の構成を示す断面図である。 本発明による方法の実施態様のフローチャートを示す図である。
図1には、ガラス板Iを湾曲するための本発明による方法の実施中における本発明による装置が示されている。初期状態では平らなガラス板Iが、重力湾曲型1のフレーム状の載置面2上に降ろされる(図1a)。重力湾曲において通常であるように、ガラス板Iを、少なくとも軟化温度に相当する湾曲温度まで加熱する。軟化されたガラス板Iは、重力の影響下で、載置面2に密着する(図1b)。
本発明によれば、重力湾曲は上方の成形工具3によって支援される。上方の成形工具3は、ガラス板Iの、載置面2とは反対側の、上方に向いた表面O上に正圧を形成する。上方の成形工具3は、鐘形のまたはフード状の工具であって、ガラス板Iに面している中空室5を有している。上方の成形工具3は、ガラス板Iの上方の表面Oに周方向に延在するシールリップ7を介して接触しているので、ガラス板Iは中空室5を閉鎖している。中空室5内に流入する圧縮空気により、表面O上に正圧が形成される。
ガラス板Iの変形は、重力の影響下で正圧により支援される。これにより、より低い湾曲温度およびより短時間で既に所望の形状が得られる。さらに、純粋に重力湾曲によるものよりも複雑な板形状を実現することができる。上方の成形工具がシールリップ7で接触することにより、中空室5の効果的な閉鎖が行われるので、有利には高い正圧を形成することができる。ガラス板Iが、成形工具の剛性的な金属カバーではなくて柔軟なシールリップ7によって接触することにより、ガラス板Iの損傷またはガラス板Iの光学的な品質の低下を回避できる。これは本発明の大きな利点である。
図2および図3には、図1の上方の成形工具3の詳しい図が示されている。この成形工具3はカバー8を有しており、このカバー8は、僅か3mmの厚さの鋼薄板から成っている。これにより成形工具3は僅かな重量しか有していない。カバー8は中空室5を形成していて、この中空室5は、ガラス板Iの方向で開かれている。カバー8の縁区分4はほぼ鉛直に延在している(いわゆる「エプロン」)。この縁区分には、すなわち中空室5に面した側に、シールリップ7が取り付けられている。
カバー8の鉛直の縁区分4とシールリップ7とは、図1に示したように、ガラス板Iの上方に完全にガラス板Iの範囲内に配置されている。したがって縁区分4は湾曲の際に表面Oに向けられている。上方の成形工具3により形成される押圧力は表面Oに直接作用するので、中空室5の効果的なシールが得られ、高い正圧を形成することができる。シールリップ7は中空室5から突出するように延在している。
周方向に延在するシールリップ7は、材料厚さ3mmの特殊鋼フリース9から製造されている。特殊鋼フリース9のストリップは、帯材10の周りに配置される。したがってこの帯材は、シールリップ7の内側に配置されていて、シールリップ7のおもりとして機能する。帯材は、ガラス繊維と金属繊維の混合物から成っていて、直径20mmのほぼ円形の横断面を有している。このようなシールリップ7は、中空室5の良好なシールを保証し、ガラス板Iの損傷を回避するのに十分フレキシブルであり、工業的に使用できる程度に十分安定的である。
カバー8には真ん中に流入管6が備えられており、この流入管6を介して圧縮空気が中空室5内へと流入することができ、これにより正圧が形成される。流入空気が表面Oに直接当接することを回避し、均一な正圧を表面O上に形成するために、中空室5にはそらせ板11が、流入管6の開口に向かい合って位置するように配置されていて、流入空気はこのそらせ板11に当接する。
図4には、本発明の方法の実施中における本発明による上方の成形工具3の別の構成が示されている。この場合も、カバー8は鉛直に延在する縁区分4を有している。しかしながら成形工具3はより大きく形成されているので、鉛直の縁区分4は、ガラス板Iを取り囲み、これによりガラス板Iは中空室5内に配置されている。シールリップ7は縁区分からガラス板Iの表面Oへと延在している。
この構成は、上方の成形工具3を所定の形式の板のために特別に製造する必要がないという利点を有している。その代わりにシールリップ7を適切に寸法設定した状態で、様々なサイズのガラス板Iも同じ成形工具3によって湾曲させることができる。これに対して、シールリップ7のシール効果は、図1の構成よりも幾分劣る。
図5は、本発明による方法の実施例をフローチャートで示している。

一連の試験において、様々な湾曲プロセスを互いに比較した。
1.正圧による負荷なしで行われる従来の重力湾曲
2.ガラス板の上方の表面に対して5mmの間隔を置いて保持された、シールリップを備えない上方の成形工具を使用して行われる重力湾曲(EP 0 706 978 A2参照、soft seal)
3.シールリップを備えた上方の成形工具を使用して行われる本発明による重力湾曲
板をそれぞれ温度Tまで加熱した。重力湾曲型により規定された最終湾曲に到達するために必要な時間tを測定した。さらに、おおよその湾曲速度vを規定した。
結果は表1にまとめられている。
Figure 0006501972
表からわかるように、本発明の方法により、より低い湾曲温度のもとで大幅に時間を削減することができる。空気流入に関する条件が同じ場合、本発明による工具によっては、シールリップを有していない従来工具によるものよりも著しく高い圧力を形成することができる。これは本発明の大きな利点である。
1 重力湾曲型
2 重力湾曲型1の載置面
3 上方の成形工具
4 成形工具3の縁区分
5 成形工具3の中空室
6 成形工具3の流入管
7 成形工具3のシールリップ
8 成形工具3のカバー
9 シールリップ7のフェルト/フリース
10 シールリップ7の帯材
11 成形工具3のそらせ板
I ガラス板
O 載置面2とは反対側の、ガラス板Iの上方の表面
Z 成形工具3の拡大区分

Claims (15)

  1. 少なくとも1つのガラス板(I)を湾曲させる装置であって、
    少なくとも1つのガラス板(I)をその上に配置するのに適した載置面(2)を備えた重力湾曲型(1)と、
    前記載置面(2)に向かい合って位置するように配置された上方の成形工具(3)であって、前記載置面(2)上に配置された前記少なくとも1つのガラス板(I)の、前記載置面(2)とは反対側の表面(O)上に正圧を形成するのに適した上方の成形工具(3)と、を少なくとも有しており、
    前記成形工具(3)は、前記重力湾曲型(1)の方向に開かれた中空室(5)を形成するカバー(8)を有しており、かつ前記カバー(8)の縁区分(4)に配置された、前記少なくとも1つのガラス板(I)の、前記載置面(2)とは反対側の前記表面(O)に接触するためのシールリップ(7)を備えており、
    前記成形工具(3)は、前記正圧を形成するために、前記中空室(5)内にガスを導入するための手段を備えている、
    少なくとも1つのガラス板(I)を湾曲させる装置。
  2. 前記シールリップ(7)と前記表面(O)との接触領域は、前記ガラス板(I)の側縁に対して最大で20cmの間隔を有している、請求項1記載の装置。
  3. 前記シールリップ(7)は、内部に配置された帯材(10)を含むフェルトまたはフリース(9)から製造されている、請求項1または2記載の装置。
  4. 前記フェルトまたは前記フリース(9)は金属を含む、好適には特殊鋼を含む、請求項3記載の装置。
  5. 前記帯材(10)がガラス繊維および/または金属繊維を含み、好適にはガラス繊維・金属繊維混合物を含む、請求項3または4記載の装置。
  6. 前記縁区分(4)は下方に向けられていて、好適にはほぼ鉛直に配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
  7. 前記重力湾曲型(1)は、フレーム状で凹状の載置面(2)を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
  8. 前記カバー(8)は最大5mmの材料厚さを有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
  9. 少なくとも1つのガラス板(I)を湾曲させる方法であって、以下の方法ステップ、すなわち、
    (a)少なくとも1つのガラス板(I)を、重力湾曲型(1)の載置面(2)上に配置するステップと、
    (b)前記ガラス板(I)を、少なくともその軟化温度まで加熱するステップと、
    (c)前記少なくとも1つのガラス板(I)の、前記載置面(2)とは反対側の表面(O)上に、上方の成形工具(3)によって正圧を形成するステップであって、前記成形工具(3)は、前記重力湾曲型(1)の方向に開かれた中空室(5)を形成するカバー(8)を有しており、かつ前記カバー(8)の縁区分(4)に配置された、前記少なくとも1つのガラス板(I)の、前記載置面(2)とは反対側の前記表面(O)に接触するシールリップ(7)を備えており、前記中空室(5)内にガスを導入することにより前記正圧を形成するステップと、
    (d)前記ガラス板(I)を冷却するステップと、
    を少なくとも有する、少なくとも1つのガラス板(I)を湾曲させる方法。
  10. 前記シールリップ(7)は湾曲の際に、前記少なくとも1つのガラス板(I)の前記表面(O)の上方に完全に配置されている、請求項9記載の方法。
  11. 前記縁区分(4)は湾曲の際に前記少なくとも1つのガラス板(I)を取り囲み、前記シールリップ(7)は、前記ガラス板(I)の側縁を越えて延在している、請求項9または10記載の方法。
  12. 前記正圧は、5mbar〜50mbarであり、好適には10mbar〜30mbarである、請求項9から11までのいずれか1項記載の方法。
  13. 前記正圧を、最大60秒の時間内で、前記ガラス板(I)の前記表面(O)上に形成する、請求項9から12までのいずれか1項記載の方法。
  14. 前記ガラス板(I)はソーダ石灰ガラスを含み、前記ガラス板(I)を加熱する最大温度は630℃未満であり、好適には620℃未満である、請求項9から13までのいずれか1項記載の方法。
  15. 重力湾曲プロセスを支援するための、上方の成形工具(3)の使用であって、前記成形工具は、重力湾曲型(1)の方向に開かれた中空室(5)を形成するカバー(8)を有しており、かつ前記カバー(8)の縁区分(4)に配置されたシールリップ(7)を備えており、前記シールリップ(7)を、湾曲させたいガラス板(I)の表面(O)に接触させ、前記中空室(5)内にガスを導入することにより、前記成形工具(3)によって、前記ガラス板(I)の、前記重力湾曲型(1)とは反対側の表面(O)上に正圧を形成する、上方の成形工具(3)の使用。
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