JP6449668B2 - 空気清浄器 - Google Patents

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Description

本発明は、空気清浄器に関する。
従来より、芳香剤や消臭剤等の薬剤を収容した種々の空気清浄器が提案されている。例えば、特許文献1の空気清浄器では、上部に開口を有する容器に薬剤を収容し、上部開口を透湿性シートで覆っている。また、この透湿性シートは、密閉シートによって覆われ、透湿性シートから薬剤が漏れないようにしている。
そして、使用時には、密閉シートを剥がし、透湿性シートを外部に露出させる。これにより、透湿性シートを介して薬剤成分が揮散するため、芳香効果等を得ることができる。
特開2001−239126号公報
ところで、特許文献1の空気清浄器では、容器のフランジ部に透湿性シートを貼り付け、その上に密閉シートを剥離可能に貼り付けている。しかしながら、透湿性シートは、多孔質性のシートであり、表面に凹凸があるため、密閉シートを安定的に貼り付けることが難しかった。本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、通気性のあるシートを液不透過性のシートで覆う構造の空気清浄器において、液不透過性シートを確実に且つ安定的に取り付けることができる、空気清浄器を提供することを目的とする。
本発明に係る空気清浄器は、開口を有する容器と、前記容器に収容される薬剤と、前記容器の開口を塞ぎ、通気性及び吸水性を有する不織布で形成されたカバーシートと、前記カバーシートを覆う、液不透過性の遮水シートと、を備え、前記容器は、前記開口を有する容器本体と、当該容器本体の開口周縁に形成されたフランジ部と、を備え、前記カバーシートは、前記フランジ部に熱溶着により固定され、前記遮水シートは、前記カバーシートにおいて前記熱溶着が施されている領域に対して、熱溶着によって固定されており、前記薬剤は、保持材と、当該保持材に保持される水と、前記水に溶解される機能性成分と、を備え、前記保持材から前記水が蒸発可能に構成された、少なくとも1つのゲル状成形体により形成されている。
この構成によれば、カバーシートとフランジ部が溶着された領域において、遮水シートが溶着されている。そのため、この領域において、カバーシートは溶融されて緻密な樹脂となっており、溶着前の不織布のような繊維構造ではなく、表面は平滑化される。したがって、この領域において、遮水シートを溶着すると、平滑な面で溶着を行うことができるため、溶着強度が安定し、また強固にすることができる。このように、本発明に係る空気清浄器においては、通気性及び吸収性に優れた不織布を用いることができる。
カバーシートを形成する不織布は、芯材と、当該芯材の外周を覆う鞘材とを備えた芯鞘構造の繊維材により形成することができ、さらに、鞘材の融点が、前記芯材の融点より低い不織布とすることができる。これにより、カバーシートを溶着によって容器に固定する場合、鞘材の融点より高く、芯材の融点よりも低い温度でカバーシートを溶着すれば、不織布の繊維全体が溶融するのを防止することができる。
上記空気清浄器において、前記カバーシートは、前記不織布により形成された単一の層で構成することができる。例えば、カバーシートを二層以上で形成すると、カバーシートを容器の開口に接着したときに、容器に接着した層以外の層が剥がれるおそれがある。したがって、カバーシートは、一層で形成することが好ましい。
上記遮水シートは、少なくとも、前記カバーシートと接する第1層と、当該第1層を覆う第2層とを備え、前記第1層の融点が、前記第2層の融点よりも低くすることができる。
この構成によれば、遮水シートにおいてカバーシートと接する第1層の融点が、他の第2層の融点よりも低いため、例えば、遮水シートを溶着によってカバーシートに固定する場合、第1層の融点より高く、第2層の融点よりも低い温度で遮水シートを溶着すれば、遮水シートの層全体が溶融するのを防止することができる。
上記各空気清浄器において、前記容器は、少なくとも、前記カバーシートが取り付けられる接着層を含む複数層からなる積層構造を有することができ、前記接着層の融点を、他の層の融点よりも低くすることができる。
この構成によれば、例えば、カバーシートを溶着によって容器に固定する場合、接着層の融点より高く、他の層の融点よりも低い温度でカバーシートを溶着すれば、容器の層全体が溶融するのを防止することができる。
上記各空気清浄器において、前記カバーシートは、前記フランジ部の内縁及び外縁から隙間を空けた領域において熱溶着することができる。
この構成によれば、次の効果を得ることができる。まず、カバーシートとフランジ部とが溶着された領域が、フランジ部の内縁から隙間を空けて形成されているため、フランジ部の内縁付近において、カバーシートとフランジ部と間には隙間が形成される。そのため、容器が傾いたときに、この隙間に水分をためることができ、水が漏れるのを防止することができる。
また、カバーシートが、容器の内部空間に向かって下向きに押圧されたとき、カバーシートには、フランジ部の内縁の角部と対応する位置において力が集中し、カバーシートが破断する可能性がある。しかしながら、上記のように、カバーシートは、フランジ部の内縁から隙間を空けた位置で溶着されるため、下向きの力が作用したときには、カバーシートは溶着された領域の内縁からフランジ部の内縁を越えて延伸する。そのため、カバーシートにおいて、フランジ部の内縁の角部と対応する位置に力が集中するのを防止することができ、その結果、カバーシートが破断するのを防止することができる。
また、カバーシートとフランジ部とが溶着された溶着領域は、フランジ部の内縁及び外縁から隙間を空けて形成されているため、次の効果を得ることができる。すなわち、カバーシートがフランジ部の内縁において溶着されると、ヒートシールの位置が内側にずれた場合、フランジ部がない部分で溶着が行われ、カバーシートに穴が空いてしまうおそれがある。一方、カバーシートがフランジ部の外縁において溶着されると、ヒートシールがフランジ部の外縁からはみ出した場合、製造上の問題が生じるおそれがある。よって、溶着領域を、フランジ部の内縁及び外縁から隙間を空けて形成すると、カバーシートの固定を適切に行うことができる。
本発明によれば、通気性のあるシートを液不透過性のシートで覆う構造の空気清浄器において、液不透過製シートを確実に且つ安定的に取り付けることができる。
本発明に係る空気清浄器の一実施形態を示す斜視図である。 図1の平面図である。 図2の断面図である。 図1の空気清浄器におけるフランジ部の一部平面図(a)及び断面図(b)である。 図1の空気清浄器におけるフランジ部の拡大断面図である。 図1の空気清浄器の使用方法を示す断面図である。 第1溶着領域H1と非溶着領域との境界付近を示した電子顕微鏡による観察写真である。 図1の空気清浄器の他の使用方法を示す断面図である。 図1の空気清浄器の他の例及び使用方法を示す断面図である。
以下、本発明に係る空気清浄器を消臭器として用いる場合の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1はこの空気清浄器の斜視図、図2は図1の平面図、図3は図2の断面図である。
図1に示すように、この空気清浄器は、上部に開口を有し、薬剤2(ゲル状成形体)が収容される容器1を備えており、この容器1の上部開口を塞ぐように、カバーシート3が取り付けられ、さらに、このカバーシート3を覆うようにガス不透過性の遮水シート4が取り付けられている。以下、各部材について説明する。
<1.容器>
容器1は、上部に矩形状の開口111を有する直方体状の容器本体11と、この容器本体11の開口周縁から外方に延びるフランジ部12とを備えており、これらが一体的に形成されている。容器本体11は、矩形状の底壁112と、この底壁112の各辺から上方に延びる4つ側壁113とを備え、これら底壁112と側壁113とは一体的に形成されている。各側壁113は、底壁112から上方にいくにしたがって、外方に向ってやや傾斜するように形成されている。そして、各側壁113の上端部には、水平方向に延びるフランジ部12が形成されており、平面視において、矩形状になるように一体的に連結されている。また、フランジ部12の4つの角部は円弧状に形成されている。
容器1の形状は、特には限定されないが、例えば、側壁113を底面として自立できるような形状とすることができる。例えば、側壁113の長さを底壁112よりも長くしてもよいし、あるいは側壁113の長さが底壁112よりも短かったとしても、側壁113は、底面として自立できるような長さであればよい。
この容器1を構成する材料は特には限定されないが、種々の樹脂材料で形成することができる。例えば,図3に示すように、ポリエチレンテレフタレートからなる外層110と、その内側に積層され、ポリエチレンからなる内層(接着層)120と、で形成することができる。この構成により、容器本体11の内部空間側の内壁面は、内層120で形成され、外壁面は外層110で形成される。また、フランジ部12は、上面が内層120で形成され、下面が外層110で形成される。但し、容器1を構成する材料は、これ以外でもよいが、例えば、後述するように、カバーシート3との溶着を容易にするという観点からすると、カバーシート3と対向する層、つまり内層120の融点が、外層110の融点よりも低いことが好ましい。また、3層以上で形成することもできる。
<2.カバーシート>
次に、カバーシート3について説明する。カバーシートは、吸水性及び通気性を有する不織布により形成することができる。不織布としては、例えば、シルク、麻、羊毛、コットン、パルプ、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アセテート、ナイロン、アクリル、ビニロン、キュプラ、エチレン酢酸ビニル、レーヨン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルなどからなる繊維、又はこれらを組み合わせた複合繊維により形成することができる。
不織布を構成する繊維としては、例えば、芯鞘構造の繊維からなる不織布を用いることができる。この場合、例えば、ポリエチレンテレフタレートからなる芯材と、これを被覆するポリエチレンからなる鞘材とで形成された不織布を用いることができる。
また、このような不織布は、湿式抄紙法、乾式抄紙法、スパンボンド法、メルトブロー法、ラテックス樹脂ボンド法、溶剤ボンド法、スティッチボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、サーマルボンド法、エアースルー法などの方法により製造することができる。
上記のようにカバーシート3は、通気性が必要になるが、そのためには、例えば、不織布の目付を10〜200g/m2とすることが好ましく、10〜100g/m2とすることがより好ましく、10〜80g/m2とすることがさらに好ましい。また、具体的なカバーシート3の通気性としては、例えば、10〜200cm3/cm2・secであることが好ましく、20〜150cm3/cm2・secであることがより好ましく、50〜150cm3/cm2・secであることがさらに好ましい。なお、通気性の測定方法としては、例えば、JIS L1913の「6.8 通気性」の記載の方法を採用することができる。
<3.遮水シート>
遮水シート4は、上述したカバーシート3を覆うものであり、液不透過性であれば特には限定されない。例えば、ポリエチレン等を主成分とする樹脂製のシートで構成することができるが、その他、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ナイロン、セロファン、ビニロン、塩化ビニルなどを用いることもできる。また、複数の層で形成することでき、後述するように、カバーシート3への取付を考慮すると、カバーシート3と同種の材料を含む複数の層で形成することができる。例えば、図3に示すように、下から、ポリエチレンからなる第1層41、ナイロンからなる第2層42、及びポリエチレンテレフタレートからなる第3層43を積層した3層構造のシートで形成することができる。これにより、遮水シート4においてカバーシート3と対向する第1層41と、カバーシート3とが同種の材料であるため、両シート3,4の溶着が容易になる。また、溶着を容易にするという観点からすると、カバーシート3と接する層は、他の層と比べ、融点が最も低い材料であることが好ましい。但し、遮水シート4の層構造は、これ以外でもよい。
<4.薬剤>
薬剤2は、保持材と、この保持材に保持される水と、水に溶解される機能性成分と、を備え、保持材から前記水が蒸発可能に構成されたゲル状成形体により形成されている。以下、このゲル状成形体について説明する。
本実施形態においては、次に説明する(i)のゲル状成形体、(ii)のゲル状成形体、またはこれらの混合体を複数含むゲル状成形体集合物を薬剤として用いる。(i)のゲル状成形体は、アクリルアミド−アクリル酸塩共重合体を吸水性樹脂として用いて調製されたゲル状成形体である。このアクリルアミド−アクリル酸塩共重合体は、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であってもよい。また、アクリルアミド−アクリル酸塩共重合体は、そのアクリルアミドとアクリル酸との構成比率についても特に制限されるものではないが、一例としてアクリルアミド:アクリル酸の構成比が10:0.5〜10、好ましくは10:3.3〜8.2、更に好ましくは10:4.3〜6.7のものが例示される。アクリルアミド−アクリル酸塩共重合体としては、例えば、アクリルアミド−アクリル酸アルカリ金属塩共重合体が挙げられ、好ましくはアクリルアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体が挙げられる。
また、(ii)のゲル状成形体は、ノニオン型ポリアルキレンオキサイド系吸水性樹脂、アルケン−無水マレイン酸共重合体、及びポリアクリル酸塩架橋物の中の1種又は2種以上の吸水性樹脂を用いて調製したゲル状成形体である。
(ii)のゲル状成形体で使用されるノニオン型ポリアルキレンオキサイド系吸水性樹脂としては、具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、及びこれらのポリアルキレンオキサイドを主鎖とする架橋物が挙げられる。また、ポリアルキレンオキサイドを主鎖とする架橋物としては、ポリアルキレンオキサイドとポリオールをイソシアネート系化合物で架橋させたものが好適である。これらの中でも、ポリエチレンオキサイドの架橋物、ポリプロピレンオキサイドの架橋物、及びエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体の架橋物が好適である。これらのノニオン型ポリアルキレンオキサイド系吸水性樹脂は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、(ii)のゲル状成形体で使用されるオレフィン―無水マレイン酸共重合体としては、水に溶解することなく、水によって膨潤し、ゲルを形成可能である限り特に制限されない。オレフィン―無水マレイン酸共重合体として、具体的には、エチレン−無水マレイン酸共重合体、及びイソブチレン−無水マレイン酸共重合体が例示される。また、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体が使用される。イソブチレン−無水マレイン酸共重合体は、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩のものが好適に使用される。
更に、(ii)のゲル状成形体で使用されるポリアクリル酸塩架橋物としては、ポリアクリル酸を主鎖とする架橋物であって、水に溶解することなく、水によって膨潤し、ゲルを形成可能であることを限度として、特に制限されない。ポリアクリル酸塩架橋物は、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩のものが好適に使用される。
ゲル状成形体に含まれる液体の漏出を一層効果的に抑制させるという観点から、(ii)のゲル状成形体の吸水性樹脂として、好ましくはノニオン型ポリアルキレンオキサイド系吸水性樹脂、オレフィン―無水マレイン酸共重合体であり、更に好ましくはオレフィン―無水マレイン酸共重合体である。
(i)及び(ii)のゲル状成形体は、本発明に係る保持材として、所定の形状を有する各成分の吸水性樹脂が、水及び必要に応じて他の成分を吸収し膨潤することにより形成される含水ゲルである。従って、(i)及び(ii)のゲル状成形体の形成に使用される各吸水性樹脂は、(i)及び(ii)のゲル状成形体の形状、大きさ及び吸水量等に応じて、その形状やその他の特性を適宜設定すればよい。なお、このような吸水性樹脂の製造方法は公知であり、前述する各成分を用いて公知の方法に従って調製された吸水性樹脂を使用できる。
(i)及び(ii)のゲル状成形体に使用される吸水性樹脂の配合割合の一例として、該集合物の総量に対して、(i)及び(ii)のゲル状成形体に使用される吸水性樹脂が総量で、通常0.8〜20重量%、好ましくは1〜10重量%、更に好ましくは1.1〜6重量%が挙げられる。
また、(i)及び(ii)のゲル状成形体に使用される吸水性樹脂の比率としては、例えば、(i)のゲル状成形体に使用される吸水性樹脂100重量部に対して、(ii)のゲル状成形体に使用される吸水性樹脂が総量で1〜500重量部、好ましくは2〜100重量部、更に好ましくは2〜50重量部が例示される。このような比率を充足しながら各々の吸水性樹脂を含有することにより、ゲル状成形体集合物において、個々のゲル状成形体の変形やゲル状成形体に含まれる液体の漏出を一層効果的に抑制することが可能になる。
(i)及び(ii)のゲル状成形体に使用される吸水性樹脂の配合割合は、上記配合割合及び比率に基づいて適宜設定されるが、一例として、以下の配合割合が例示される。
(i)のゲル状成形体に使用される吸水性樹脂:通常0.7〜10重量%、好ましくは0.8〜5重量%、更に好ましくは0.9〜3.5重量%
(ii)のゲル状成形体に使用される吸水性樹脂:通常0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%、更に好ましくは0.2〜3.5重量%。
また、(i)及び(ii)のゲル状成形体の大きさについては、収容する容器の大きさや外観(美観)等に応じて適宜設定すればよい。例えば、(i)のゲル状成形体の場合であれば、美観を良好にして意匠的効果を高めるという観点から、通常0.05〜5.0cm3、好ましくは0.1〜5.0cm3、更に好ましくは0.2〜3.0cm3のブロック状成形体が例示される。また、例えば、(ii)のゲル状成形体の場合であれば、(i)のゲル状成形体と同様のブロック状にしてもよいが、上記ブロック状成形体よりも小さなもの(例えば、粒状、細粒状)であってもよい。
また、吸水性樹脂を使わない場合は、本発明に係る保持材として、ゲル化剤又は増粘剤を用いることができる。ゲル化剤又は増粘剤としては、例えば、以下の群からなる1又は2以上のものを用いることができる。動物性物質:ゼラチン、植物性物質:デンプン、コンニャクマンナン、タマリンドシードガム、ローカストビンガム、アルギン酸ナトリウム、グアガム、寒天、カラギーナン、ペクチン、微生物系物質:キサンタンガム、ジェランガム、カードラン、アクリル系合成物:ポリアクリル酸塩、ビニール系合成物: PVA、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、その他の合成物:CMC−Na、ポリエチレンオキサイド。
また、(i)のゲル状成形体の個数と(ii)のゲル状成形体の個数の比率については、各々の吸水性樹脂の配合割合、各々のゲル状成形体の大きさ等に応じて適宜設定される。
(i)及び(ii)のゲル状成形体は、その個々の形状については、特に制限されない。例えば、球状、直方状、星型等の幾何学体であってもよく、また動物、植物、アニメキャラクター等の特殊形状であってもよい。また、(i)及び(ii)のゲル状成形体は、それぞれ異なる形状であってもよいが、同じ形状であっても構わない。但し、本実施形態においては、球状のゲル状成形体を例として説明する。
ゲル状成形体集合物には、(i)及び(ii)のゲル状成形体を形成するために、水を含有する。ゲル状成形体集合物における水の配合割合は、(i)及び(ii)のゲル状成形体に使用される吸水性樹脂の種類等によって異なるが、一例として、該集合物の総量に対して、水が50〜99重量%、好ましくは60〜99重量%、更に好ましくは80〜99重量%となる割合が挙げられる。なお、ここで示す割合は、ゲル状成形体集合物全体に対して、(i)及び(ii)のゲル状成形体に含まれる水の総量が占める割合であり、ゲル状成形体集合物において、(i)のゲル状成形体の水の含有割合と、(ii)のゲル状成形体の水の含有割合とは、必ずしも一致する必要はない。
ゲル状成形体集合物は、機能性成分に基づく作用効果を発現させるために使用されるものであり、機能性成分を含有する。ここで機能性成分とは、ゲル状成形体集合物が使用される環境で所望の機能を発現可能である成分である。本実施形態では、機能性成分として、消臭成分を用いる。具体的には、イネ、松、ヒノキ、笹等の植物の抽出物;脱塩型ベタイン化合物;変性有機酸化合物;トリエタノールアミン;安定化二酸化塩素;アルデヒド化合物等を挙げることができる。
また、ゲル状成形体集合物における機能性成分の配合割合は、機能性成分の種類、該集合物の用途、(i)及び(ii)のゲル状成形体に使用される吸水性樹脂の種類等によって異なるが、例えば、集合物の総量に対して、機能性成分が0.1〜50重量%、好ましくは0.2〜39重量%、更に好ましくは0.4〜18.9重量%となる割合が挙げられる。なお、ここで示す割合は、ゲル状成形体集合物全体に対して、(i)及び(ii)のゲル状成形体に含まれる機能性成分の総量が占める割合である。
これらの機能性成分は、(i)及び(ii)のゲル状成形体のいずれか一方又は双方に含まれていればよいが、(i)及び(ii)のゲル状成形体の双方又は(i)のゲル状成形体に含まれていることが望ましい。なお、本発明において、機能性成分は、ゲル状成形体の内部に浸透した状態で含まれていてもよいが、ゲル状成形体の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
<5.薬剤の準備>
薬剤2は、種々の方法で準備できるが、例えば、所定の成分を含有する(i)のゲル状成形体と、所定の成分を含有する(ii)のゲル状成形体とをそれぞれ単独で調製し、得られた(i)及び(ii)のゲル状成形体を所定の割合で混合することによって製造してもよいが、以下例示する製造方法が簡便で好適である。即ち、(i)のゲル状成形体の吸水性樹脂、(ii)のゲル状成形体の吸水性樹脂、水、機能性成分、及び必要に応じてその他の成分の所定量を容器に入れて混合し、後述するように、容器1をカバーシート3及び遮水シート4により密閉し、室温で12〜24時間程度静置して、吸水性樹脂に添加成分を吸収させる。この間、必要に応じて、容器を振動させる等の手段により撹拌処理を施してもよい。
<6.カバーシート、遮水シートの容器への取付>
上記のように、容器に薬剤を収容した後、カバーシート及び遮水シートを容器に取り付ける。以下、この手順について説明する。まず、カバーシート3は、容器1のフランジ部12に取り付けられる。このときの取付方法は、特には限定されないが、例えば、ヒートシールにより取り付けることができる。以下、ヒートシールにより、カバーシート3及び遮水シート4を容器1へ取り付ける方法の一例について、図4及び図5を参照しつつ、説明する。図4はフランジ部の一部平面図(a)及び断面図(b)、図5はフランジ部の拡大断面図である。
まず、カバーシート3の周縁をヒートシールにより、フランジ部12に溶着する。このとき、例えば、カバーシート3が、ポリエチレンの鞘材を有する芯鞘構造の繊維で形成され、フランジ部12の上面(内層120)が同じくポリエチレンで形成されていれば、同種の材料であるため、溶着が容易になる。また、ヒートシールを施す領域(以下、第1溶着領域H1)は、特には限定されないが、例えば、図4に示すように、フランジ部12の内縁及び外縁から隙間d1,d2を空けた領域とすることができる。これにより、フランジ部12の内周縁から第1溶着領域H1までの間は、カバーシート3がフランジ部12を覆っているが、図5に示すように、フランジ部12には固定されておらず、カバーシート3がフランジ部12から離間可能となっている(符号Sの領域)。こうして、カバーシート3がフランジ部12に溶着されると、その領域H1では不織布が溶融され、緻密な樹脂となる。なお、不織布として芯鞘構造の繊維で形成されたものを用いる場合には、ヒートシールの温度は、鞘材の融点よりも高く、芯材の融点よりも低くすることが好ましい。これにより、鞘材は溶融するが、芯材は溶融しないため、繊維全体が溶融するのを防止することができる。また、容器1の内層120は、融点が低いポリエチレンで形成されているが、外層110はポリエチレンテレフタレートで形成されているため、外層110は溶融しない。したがって、フランジ部12全体が溶融するのを防止することができる。
続いて、遮水シート4をカバーシート3上に配置し、ヒートシールにより、遮水シート4をカバーシート3に固定する。このとき、上述したカバーシート3の第1溶着領域H1に、遮水シート4を溶着する。すなわち、第1溶着領域H1よりも狭い幅に亘ってヒートシールを施し(この領域を、以下、第2溶着領域H2と称する)、遮水シート4をカバーシート3に固定する。このとき、遮水シート4の下面(第1層41)がポリエチレンで形成され、カバーシート3が上述したポリエチレンの鞘材を有する芯鞘構造の繊維で形成されていれば、同種の材料であるため、溶着が容易に行われる。こうして、フランジ部12には、カバーシート3、及び遮水シート4がこの順で積層され、固定される。
<7.空気清浄器の使用方法>
続いて、上記のように構成された空気清浄器の使用方法について説明する。まず、図6に示すように、遮水シート4をカバーシート3から取り外す。これにより、カバーシート3が外部に露出する。カバーシート3は、通気性を有するため、外部からカバーシート3を介して、容器1内に空気が流入可能となる。そして、流入した空気に含まれる臭気は、ゲル状成形体に含まれる消臭成分と反応することにより浄化され、カバーシート3から外部へ排出される。このような空気の流入、浄化、及び排出を繰り返すことで、空気清浄器が配置された周囲の空気が浄化されていく。
<8.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、次の特徴を有している。
<8−1>
上記実施形態では、カバーシート3とフランジ部12が溶着された第1溶着領域H1において、遮水シート4が溶着されている。第1溶着領域H1において、カバーシート3は溶融され緻密な樹脂となっているため、溶着前の不織布のような繊維構造ではなく、表面は平滑化される。例えば、図7は第1溶着領域H1と非溶着領域との境界付近を示した電子顕微鏡による観察写真であるが、第1溶着領域H1は概ね平滑であるのに対し、非溶着領域は繊維構造を有し、表面が凹凸状であるのが分かる。したがって、第1溶着領域H1において、遮水シート4を溶着すると、平滑な面で溶着を行うことができるため、溶着強度が安定し、また強固にすることができる。
<8−2>
上記のように、本実施形態で使用する薬剤2は、水分を含んでいるため、遮水シート4をカバーシート3から取り外すときには、その勢いによって、薬剤の水分が容器1から飛び出すおそれがある。しかしながら、本実施形態に係る空気清浄器では、容器1の開口111が吸水性を有するカバーシート3によって覆われているため、水分が飛び出すのを防止することができる。また、容器1が傾いた場合であっても、水分はカバーシート3に吸収されるため、容器1から水分がこぼれるのを防止することができる。
<8−3>
薬剤2は、水が蒸発すると収縮するが、カバーシート3が設けられていることにより、容器1の上部開口111から離脱するのを防止することができる。
<8−4>
消臭効果を得るためには、空気がカバーシート3を介して容器1内に流入する必要があるが、本実施形態に係る空気清浄器では、カバーシート3が吸水性を有するため、空気がカバーシート3に接触しただけでも消臭効果を得ることができる。例えば、カバーシート3に薬剤2の水分が吸収されると、水分とともに消臭成分もカバーシート3に保持されるため、空気は容器1内に流入しなくても、カバーシート3に接触するだけで、消臭成分と接触する。その結果、消臭効果を得ることができる。
<8−5>
容器1には、フランジ部12が形成されているため、例えば、図8に示すように、容器1を傾けたときには、容器本体11の底壁112の周縁と、フランジ部12とが設置面Xに接触して、容器1が支持されることになる。このとき、フランジ部12によって、容器本体11の側壁113の上端部が持ち上げられ、側壁113は上部開口111から底壁112に向かって下方に傾いた状態になる。そのため、水分は、容器本体11の底壁112付近に溜まるため、容器1から漏れるのを防止することができる。
<8−6>
また、カバーシート3とフランジ部12とが溶着された第1溶着領域H1は、フランジ部12の内縁から隙間d1を空けて形成されているため、図5に示すように、フランジ部12の内縁付近において、カバーシート3とフランジ部12と間には隙間Sが形成される。そのため、容器1が傾いたときに、この隙間Sに水分をためることができ、水が漏れるのを防止することができる。
さらに、カバーシート3が、容器1の内部空間に向かって下向きに押圧されたとき、カバーシート3には、フランジ部12の内縁の角部と対応する位置において力が集中し、カバーシート3が破断する可能性がある。しかしながら、上記のように、カバーシート3は、フランジ部12の内縁から隙間d1を空けた位置で溶着されるため、下向きの力が作用したときには、カバーシート3は第1溶着領域H1の内縁からフランジ部12の内縁を越えて延伸する。そのため、カバーシートにおいて、フランジ部12の内縁の角部と対応する位置に力が集中するのを防止することができ、その結果、カバーシート3が破断するのを防止することができる。
<8−7>
また、カバーシート3とフランジ部12とが溶着された第1溶着領域H1は、フランジ部12の内縁及び外縁から隙間d1,d2を空けて形成されているため、次の効果を得ることができる。すなわち、カバーシート3がフランジ部12の内縁において溶着されると、ヒートシールの位置が内側にずれた場合、フランジ部12がない部分で溶着が行われ、カバーシート3に穴が空いてしまうおそれがある。一方、カバーシート3がフランジ部12の外縁において溶着されると、ヒートシールがフランジ部12の外縁からはみ出した場合、生産設備にカバーシート3が溶着し、連続生産が困難となるおそれがある。またカバーシート3のカットが困難となるおそれがある。よって、第1溶着領域H1は、フランジ部12の内縁及び外縁から隙間を空けて形成されることが望ましい。
<8−8>
図8の状態において、水分がカバーシート3の下端付近に接触した場合、カバーシート3が不織布で構成されていると、毛管現象によって水分はカバーシート3を伝って上方に吸い上げられていく。そのため、カバーシート3の全面に亘って水分とともに消臭成分が行き渡るため、カバーシート3による消臭効果を増大させることができる。また、容器が傾いていなくても、薬剤の一部がカバーシートに接触すると、薬剤の水分が消臭成分とともに、カバーシート3に広がっていくため、これによっても消臭効果を増大させることができる。
<9.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は、適宜組合わせ可能である。
<9−1>
上記実施形態では、薬剤の機能性成分として、消臭成分を用いたが、これに限定されるものではない。例えば、消臭成分以外に、芳香成分、消臭成分、防虫成分、抗菌成分等が挙げられる。このような機能性成分は、油性及び水溶性のいずれであってもよい。
具体的には、芳香成分としては、例えば、ラベンダ−、レモン、オレンジ、ジャスミン、ペパ−ミント等の天然香料;リモネン、タ−ピノレン、ゲラニオ−ル、シトロネロ−ル、酢酸エチル等の合成香料;及びこれらのブレンド香料等が挙げられる。
防虫成分としては、例えば、ヒノキチオール、ヒバ油、アリルイソチオシアネート、エタノール、プロパノール、1.8.シネオール等が挙げられる。
抗菌成分としては、例えば、オクチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムグルコン酸、クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、アリルイソチオシアネート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
これらの機能性成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明のゲル状成形体集合物に使用される機能性成分として、好ましくは、芳香成分及び消臭成分が挙げられる。
<9−2>
容器1が傾いたときに、容器の水を貯めるために、例えば、図9に示すように、容器本体11の開口111の周縁に内径の大きい段部115を設けることができる。これにより、図9(b)に示すように、容器1が傾いたときに、水を段部115に貯めることができ、外部に漏れるのを確実に防止することができる。
<9−3>
容器1の形状は、特には限定されず、少なくとも空気が流入したり、薬剤が揮散するための開口が形成されていればよい。したがって、直方体状以外にも、円筒状など種々の形状にすることができる。また、開口の位置は必ずしも、上部でなくてもよく、側面であってもよい。
<9−4>
カバーシート3及び遮水シート4の容器1への取付は、上述したヒートシール以外でもよい。例えば、フランジ部の全周に亘って溶着するのではなく、断続的に溶着して取り付けることもできる。
1 :容器
2 :薬剤
3 :カバーシート
4 :遮水シート
11 :容器本体
12 :フランジ部

Claims (5)

  1. 開口を有する容器と、
    前記容器に収容される薬剤と、
    前記容器の開口を塞ぎ、通気性及び吸水性を有する不織布で形成されたカバーシートと、
    前記カバーシートを覆う、液不透過性の遮水シートと、
    を備え、
    前記容器は、前記開口を有する容器本体と、当該容器本体の開口周縁に形成されたフランジ部と、を備え、
    前記カバーシートは、前記フランジ部の内縁及び外縁から隙間を空けた領域において熱溶着により固定され、
    前記遮水シートは、前記カバーシートにおいて前記熱溶着が施されている領域に対して、熱溶着によって固定されており、
    前記薬剤は、保持材と、当該保持材に保持される水と、前記水に溶解される機能性成分と、を備え、前記保持材から前記水が蒸発可能に構成された、少なくとも1つのゲル状成形体により形成されている、空気清浄器。
  2. 前記カバーシートを構成する不織布は、芯材と、当該芯材の外周を覆う鞘材とを備えた芯鞘構造の繊維材により形成され、
    前記被覆材の融点が、前記芯材の融点より低い、請求項1に記載の空気清浄器。
  3. 前記カバーシートは、前記不織布により形成された単一の層で構成されている、請求項1または2に記載の空気清浄器。
  4. 前記遮水シートは、少なくとも、前記カバーシートと接する第1層と、当該第1層を覆う第2層とを備え、
    前記第1層の融点が、前記第2層の融点よりも低い、請求項1から3のいずれかに記載の空気清浄器。
  5. 前記容器は、少なくとも、前記カバーシートが取り付けられる接着層を含む複数層からなる積層構造を有し、
    前記接着層の融点が、他の層の融点よりも低い、請求項1から4のいずれかに記載の空気清浄器。
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