JP5253819B2 - 周囲環境中に揮発性物質を供給するためのデバイス - Google Patents

Description

本発明は、揮発性物質を（dispensing）するための装置に関する。より具体的には、本発明は、２層液体から周囲環境に揮発性物質を蒸発させて送達するための、ウィックを用いた供給用デバイスに関する。

揮発性液体を周囲環境に供給するためのウィックを用いた供給用デバイスは、当該技術分野においてよく知られている。このような供給用デバイスの非常に一般的なタイプの１つは、本質的に揮発性液体を含有する容器と、この液体に含浸され、大きな蒸発面を任意に有する多孔性の基質と連通したウィックとからなる。このような供給用デバイスは、毛管現象を利用して供給のための力を得る。ウィックは、容器の内部から、液体を蒸発させる周囲環境に液体を輸送するように作用する。これらのデバイスは、加熱要素および／またはファンなどの補助手段を付加的に含むことがある。このようなシステムで使用される液体は、加熱デバイスまたは非加熱でファン駆動のデバイスの場合、通常活性の揮発性物質と溶媒からなり、非加熱でファン非駆動のデバイスの場合には、水、溶媒、可溶化剤および活性の揮発性物質から本質的になる。

このシステムに係る問題の１つは、水性液体（aqueous-based liquid）の生成により、ウィック物質が詰まりやすくなってデバイスの効率が下がることである。さらに、これらのシステムでは、一般的に粘性のある残留物が容器内に留まるので、耐用寿命のシグナル（ＥＯＬ）を観察することができない。さらにまた、とくに大量の溶媒の存在は、コストおよび環境の面で好ましくない。

これらの問題を解決するために、溶媒および溶解剤フリーの水性液体組成物を用いたある種の試みが最近なされ、その結果、２層製剤を従来のウィックベースの供給デバイスにおいて用いるという成果が得られている。これらのデバイスの問題は、両層の同時発生の蒸発が可能ではない点である。

当技術分野のこの問題を少なくとも部分的に解決したデバイスを提供することができることがわかった。すなわち本発明は、揮発性の液体を周囲環境に放出するのに適合した供給デバイスであって、２層の状態の揮発性液体を含有する容器を具備し、この容器からは、第１および第２のキャピラリ要素が延在し、各要素は、前記液体の両方の層に含浸された下部および周囲環境に突出する上部を有し、第１のキャピラリ要素は、上層を構成する液体のみに対して浸透性を有し、第２のキャピラリ要素は、両方の層の液体に対して浸透性を有し、第２のキャピラリ要素は、上層を構成する液体に対し不浸透性を有する障壁層をその表面に有する、前記デバイスを提供する。

さらに本発明は、第１および第２のキャピラリ要素を用いて、容器から周囲環境に液体を輸送することによって、２層の状態の揮発性液体を周囲環境に供給する方法であって、
各要素は、液体の両方の層に含浸された下部および周囲環境に突出する上部を有し、第１のキャピラリ要素は、上層を構成する液体のみに対して浸透性を有し、第２のキャピラリ要素は、両方の層の液体に対して浸透性を有し、第２のキャピラリ要素は、上層を構成する液体に対し不浸透性を有する障壁層をその表面に有する、前記方法を提供する。

容器は、たとえばガラスまたはプラスチックなど、空気清浄デバイスに一般的に用いられる任意の材料から作ることができる。たとえば精油（essential oil）など、芳香剤の存在下で安定な材料が好ましい。この容器から、第１および第２のキャピラリ要素が延在する。これらは、たとえばキャピラリ要素が通過する容器内のオリフィスを遮断する、液密プラグ内における密な組付けなど、任意の従来技術による手段で配置することができる。かかるプラグは、好ましくは、圧力の均等化を可能にする曲げ部を含んでいる。代わりに、参照して本明細書に組み入れるＷＯ０３０９２７５０に記載された、曲げられたウィックなど、均一化のための任意の手段を用いてもよい。

上層の液体に対して第２のキャピラリ要素を不浸透性にする障壁層は、任意の適当な形態とすることができ、たとえば、硬化または乾燥することが可能なそれに適用された液体コーティング、あるいは粘着テープの形態のスリーブ、または任意の適当な材料が配され、密に組み付けられた筒状部材である。筒状部材は、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ＰＥＴＧ（ポリエチエレングリコールテレフタレート）、ＢＰ ｃｈｅｍｉｃａｌｓ ｌｔｄ．のＢａｒｅｘ（登録商標）樹脂、ポリエステルまたはポリスチレンから作ることができる。障壁層は、両方の層の液体に対して不浸透性を有し、下層を構成する液体のみを吸収する範囲で第２のキャピラリ要素に沿って延在することができ、つまり、障壁は、２つの層の境界の蒸発による低下を可能とするために、上層を構成する液体を通過させる第２のキャピラリ要素の一部のみに沿って、下層を構成する液体に向かって十分な距離だけ延在していてもよい。

本発明の好適な態様において、第２のキャピラリ要素の下部の側面の主要部は、障壁材によって覆われており、本質的に第２のキャピラリ要素の断面領域のみが、障壁層を有しない液体と触れている。「主要部」は、液体を完全に入れた状態で、下層の液体に触れているキャピラリ要素の少なくとも半分、好ましくはキャピラリ要素の３／４、より好ましくは側面が完全に障壁材で覆われていることを意味する。与えられた割合は、蒸発により揮発性液体を放出するためにまだ使用されていない満たされたデバイスを参照する。

本発明のさらなる態様において、第１のキャピラリ要素を、それが第２のキャピラリ要素の障壁層の外表面を実質的に覆うように配設してもよい。障壁層は、下層を構成する液体のみを吸収する範囲で第２のキャピラリ要素に沿って延在していてもよく、つまり、第２のキャピラリ要素の上部および下部の側面の主要部が、障壁層、本質的に障壁を有しない断面のみによって覆われていてもよい。

２つの層を形成する揮発性の液体は、下層を構成する水性相および上層を構成する疎水性相からなる。疎水性相は、本質的に芳香剤からなる。「芳香剤」は、単一の芳香剤、または酸、エステル、アルコール、アルデヒド、ケトン、ラクトン、ニトリル、エーテル、アセテート、炭化水素、硫黄−、窒素−、酸素含有複素環化合物、多環化合物および大環状化合物、天然由来または合成由来の精油とともに、これらの類などから選択されたものの芳香剤の混合物を意味する。このような芳香剤は、たとえばS. Arctander, Perfume Flavors and Chemicals Vols. 1 and 2, Arctander, Montclair, NJ USA 1969に記載されている。芳香剤は、安息香酸ベンジル、イソプロピルミリスチン酸塩、および炭化水素誘導体、たとえばＥｘｘｏｎのＩｓｏｐａｒ（登録商標）など、の無臭の液体を任意に含んでもよい。液体の適切な選択は、使用され得る量にのみ依存するのではなく、当業者によって完全に認識されるであろう芳香剤の性質にも依存する。好ましくは、芳香剤は、疎水性相の総量を基準にこれらの液体を最大で２５重量％含み、好ましくは最大で２０重量％含む。

「水性相」は、水性相の全体の量を基準にして、水を少なくとも４０重量％、好ましくは５０〜１００重量％含む、親水性液体を意味する。

水性相と疎水性相の比は、選定した特定のキャピラリ要素に応じて定めるが、両方の相が同時に略完全に蒸発するように選択するのが好ましい。具体的な比の値は、当業者によって容易に定められ得る。

上層を構成する液体に対して浸透性を有する第１のキャピラリ要素は、上層を構成する液体を毛管作用によってキャピラリ要素の上部から下部へと輸送するのに適した任意の材料から作ることができる。適当な材料の例として、ポリオレフィン、たとえばＰＥ（ポリエチレン）およびＰＰ（ポリプロピレン）またはその組合せが含まれる。

両方の相、すなわち水性相および疎水性相、の液体に対して浸透性を有する第２のキャピラリ要素は、毛管作用によって両方の相の液体を輸送するのに適した任意の材料から作ることができる。適当な材料の例として、ポリエステル、たとえばＰＥＴ（ポリエチレンテレフタレート）、セルロースおよびセルロースアセテートおよびその組合せが含まれる。好ましくは、第２のキャピラリ要素はセルロースから作られる。また、第２のキャピラリ要素は、ポリオレフィン、たとえばＰＥ（ポリエチレン）およびＰＰ（ポリプロピレン）またはその組合せから作ることもでき、これにさらに、毛管作用による両方の相の液体の輸送に適した材料となるような処置を施す。これは、たとえば、ポリオレフィンで作られた第２のキャピラリ要素を、エーテル硫酸ナトリウムなどの陰イオン界面活性剤またはエトキシ化脂肪アルコールなどの非イオン界面活性剤を、好ましくは水性溶液を基準として２０重量％含有する水性溶液に浸し、好ましくは使用前に室温で一晩乾燥させることが可能である浸透した材料を得ることによって達成することができる。

キャピラリ要素の形状は重要ではない。これらは、例として正方形、長方形、円または環状の部位とすることができる。キャピラリ要素の長さは、まず容器の高さに応じて定める。これらが容器の底に達して、それにより容器の全内容物を蒸発させることができるように選定するのが好ましい。

本発明のさらなる好適な態様において、上層を構成する液体および／または下層を構成する液体は、染料を含み、好ましくは識別可能な色のものを含む。揮発性液体がいったん蒸発の終点に達すると、第１および第２のキャピラリ要素は同じ色、すなわち上層を構成する液体の色、を有することとなる。この可視シグナルは、当該製品が使い切られたこと、および交換する必要があることを消費者に示す。

疎水性相用の適切な染料は、ＣｉｂａのＰｕｒｉｃｏｌｏｒ（登録商標）青ＦＢＬ５、Ｐｕｒｉｃｏｌｏｒ（登録商標）青ＡＢＬ９、Ｐｕｒｉｃｏｌｏｒ（登録商標）緑Ｕ３およびＰｕｒｉｃｏｌｏｒ（登録商標）黄ＡＹＥ２３から選択することができ、また、水性相用の染料は、ＷａｃｈｈｅｒｒのＣｏｖａｓｏｌ緑Ｗ７０３９およびＣｌａｒｉａｎｔのＶｉｔａｓｙｎ（登録商標）橙ＲＧＬから選択することができる。

本発明によるデバイスは、ウィックを用いた供給デバイスであって、加熱要素をさらに含むものにおいてとくに好適である。さらに、このウィックを用いた供給デバイスは、ファンを有してもよい。

以下、本発明の好適な態様を示し、いかなる意味にも限定するものではない図面を参照して本発明をさらに説明する。

図１を参照すると、ウィックを用いた供給デバイスは、芳香剤（８）を含有する疎水性上層と水性下層（９）の形態の揮発性液体を含有した容器（１）を具備し、これらの層は、異なる色の染料を含む。液体から容器の開口を通じて液体を外気に延在しているのは、ウィック（２）、（３）の形態の２つのキャピラリ要素であり、ウィックは、外気に露出する上部（５）、（５’）をそれぞれ有し、液体に触れる下部（４）、（４’）をそれぞれ有する。ウィックの材料は、ウィック（２）は液体の層（８）のみを吸収し、運ぶことができ、かつその一方でウィック（３）は両方の層の液体を吸収し、運ぶことができるように選択する。

ウィック（３）の下部（４’）の主要部は、密に組み付けられたポリエチレンスリーブ（６）によって覆われており、ウィック（３）に上層（８）の液体が浸透しないようにしている。液体を完全に入れた状態で、スリーブ（６）は、層間の境界の下まで延在しており、そのため、ウィック（３）の下部（４’）の下端（７）のみが液体層（９）のみに触れ、かつ、揮発性液体のほとんどが蒸発するまで、この液体がそれを介して蒸発することを確実にする。

作動する際には、図１に最初に示し、図面に白の矢印で示したように、上部液体層（８）は、ウィック（２）を通じて運ばれて蒸発し、下部液体層（９）は、下端（７）を通じて運ばれ、ウィック（３）の上部（５’）から蒸発する。

図２に示すように、これは、層間の境界がウィック（３）のスリーブ（６）の下端の下に降下するまでこのままとなる。この時点で、両方の液体層（８）、（９）は、ウィック（３）によって運ばれる。これは、白の矢印Ａ’、Ｂによって示され、その一方でウィック（２）は矢印Ａで示すように、上部液体層（８）のみを運び続ける。ウィック（３）の下端（７）が上部液体層（８）に触れ、次いでウィック（３）を通じて液体が輸送される結果として、ウィック（３）に顕著な色の変化が現れる。これは、デバイスがその寿命に達し、それを取り替えるべきであることを意味する。

図３Ａを参照し、図１および図２で説明したものと同様の作動原理に従うウィックを用いた供給デバイスを示す。唯一の違いは、２つの個別のウィックの代わりに、図３Ｂでより具体的に示す単一のウィックシステムを用いている点にある。当該ウィックを用いた供給デバイスは、下部液体層（１９）と上部液体層（１８）の形態の揮発性液体を含有する容器（１１）を具備する。容器の開口を通じて液体から外気に延在しているのはウィックであり、これは、側面において密に組み付けられたスリーブ（１６）を有する第２のキャピラリ要素（１３）から組み立てられている。該スリーブは第１のキャピラリ要素（１２）で覆われている。ウィックの材料の選択は、第１のキャピラリ要素（１２）が液体層（１８）のみを吸収して運ぶことができ、かつその一方で内側のキャピラリ要素（１３）が両方の層の液体を吸収し、運ぶことができるようになされる。ウィックの外層（１２）は、セルロースで作られたロード（rode）１３の形態の第２のキャピラリ要素が案内される管である。セルロースロッドは、密に組み付けられたスリーブ（１６）によって覆われており、上層の液体（１８）を浸透させないようにする。

作動に際して、図３Ａでまず示し、図３Ａにおいて白の矢印で示すように、上部液体層（１８）は、ウィックの外層（１２）の上部（１５）を通じて運ばれ、そしてそこから蒸発し、また、下部液体層（１９）は、下端（１７）を通じて運ばれ、ウィックの内部（１３）の上端（１７’）から蒸発する。

本発明の説明を、芳香剤を供給する観点から行った。しかし、本発明に係るデバイスは、臭気中和剤、殺虫剤、殺虫作用を有する材料、抗菌作用を有する物質またはこれらの混合物などの他の成分も送達することができる。これらの他の成分は、両方の層、水性相および／または疎水性層に存在していてもよい。これらの作用原理に加えて、芳香剤組成物は、染料およびＵＶ吸収剤などの賦形剤を含んでもよい。

本発明のさらなる態様において、２つの層を構成する揮発性液体は、臭気中和剤、殺虫剤、水溶性液体、殺虫作用を有する材料、抗菌作用を有する物質およびその混合物から選択される（単数または複数の）成分を、水性相全体の量を基準として６０重量％まで、好ましくは１〜５０重量％を含む、水性相からなる。

揮発性液体を完全に満たした状態の本発明の一態様を示す縦断面図である。 図１の態様において、揮発性液体の主要部が蒸発した後を示す縦断面図である。 本発明のさらなる態様の縦断面図である。 図３Ａの態様において、線分ＣＣ’に沿って切った断面を示す図である。

Claims (4)

1. 揮発性の液体を周囲環境に放出するのに適合したデバイスであって、２層の状態の揮発性液体を含有する容器を具備し、該容器からは、第１および第２のキャピラリ要素が延在し、各要素は、前記液体の両方の層に含浸された下部および周囲環境に突出する上部を有し、第１のキャピラリ要素は、上層を構成する液体のみに対して浸透性を有し、第２のキャピラリ要素は、両方の層の液体に対して浸透性を有し、第２のキャピラリ要素は、上層を構成する液体に対し不浸透性を有する障壁層をその表面に有し、
   ２つの層を形成する揮発性の液体は、下層を構成する水性相および上層を構成する疎水性相からなり、
   第１のキャピラリ要素がポリオレフィンから作られたものであり、
   第２のキャピラリ要素が、ポリエステル、セルロースおよびセルロースアセテートまたはその組合せから選択される材料から作られたものである、あるいは、ポリオレフィンから作られ、毛管現象によって両方の層の液体を輸送するのに適したものとなるように、当該材料がさらに処置を施されたものであり、および
   揮発性液体の少なくとも上層が染料を含有し、いったん揮発性液体の蒸発の終点に至ると、両方のキャピラリ要素が同じ色を有するように、第１および第２のキャピラリ要素が着色される、前記デバイス。
2. 第１および第２のキャピラリ要素を用いて、容器から周囲環境に液体を輸送することによって、２層の状態の揮発性液体を周囲環境に分配する方法であって、各要素は、液体の両方の層に含浸された下部および周囲環境に突出する上部を有し、第１のキャピラリ要素は、上層を構成する液体のみに対して浸透性を有し、第２のキャピラリ要素は、両方の層の液体に対して浸透性を有し、第２のキャピラリ要素は、上層を構成する液体に対し不浸透性を有する障壁層をその表面に有し、
   ２つの層を形成する揮発性の液体は、下層を構成する水性相および上層を構成する疎水性相からなり、
   第１のキャピラリ要素がポリオレフィンから作られたものであり、
   第２のキャピラリ要素が、ポリエステル、セルロースおよびセルロースアセテートまたはその組合せから選択される材料から作られたものである、あるいは、ポリオレフィンから作られ、毛管現象によって両方の層の液体を輸送するのに適したものとなるように、当該材料がさらに処置を施されたものであり、および
   揮発性液体の少なくとも上層が染料を含有し、いったん揮発性液体の蒸発の終点に至ると、両方のキャピラリ要素が同じ色を有するように、第１および第２のキャピラリ要素が着色される、前記方法。
3. 揮発性の液体を周囲環境に放出するのに適合したデバイスであって、２層の状態の揮発性液体を含有する容器を具備し、該容器からは、第１および第２のキャピラリ要素が延在し、各要素は、前記液体の両方の層に含浸された下部および周囲環境に突出する上部を有し、第１のキャピラリ要素は、上層を構成する液体のみに対して浸透性を有し、第２のキャピラリ要素は、両方の層の液体に対して浸透性を有し、第２のキャピラリ要素は、上層を構成する液体に対し不浸透性を有する障壁層をその表面に有し、
   揮発性液体の少なくとも上層が染料を含有し、いったん揮発性液体の蒸発の終点に至ると、両方のキャピラリ要素が同じ色を有するように、第１および第２のキャピラリ要素が着色される、前記デバイス。
4. 第１および第２のキャピラリ要素を用いて、容器から周囲環境に液体を輸送することによって、２層の状態の揮発性液体を周囲環境に分配する方法であって、各要素は、液体の両方の層に含浸された下部および周囲環境に突出する上部を有し、第１のキャピラリ要素は、上層を構成する液体のみに対して浸透性を有し、第２のキャピラリ要素は、両方の層の液体に対して浸透性を有し、第２のキャピラリ要素は、上層を構成する液体に対し不浸透性を有する障壁層をその表面に有し、
   揮発性液体の少なくとも上層が染料を含有し、いったん揮発性液体の蒸発の終点に至ると、両方のキャピラリ要素が同じ色を有するように、第１および第２のキャピラリ要素が着色される、前記方法。
   

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