JP6297901B2 - タイヤキャップトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

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本発明は、タイヤキャップトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、高い硬度を有し、優れた引張強さ、破断伸びを有し、耐カット性を向上し、発熱性にも優れるタイヤキャップトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
重荷重用または建設車両用の空気入りタイヤにおいては、不整地を走行することから、キャップトレッドには高い耐カット性が求められる。中でも、ダンプトラック用のタイヤは採掘物等の運搬を行うことから、耐カット性と低発熱性とのバランスが求められる。
耐カット性を向上させるためには、カーボンブラックを増量したり、樹脂を配合する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。しかし、このような従来技術では、発熱性を悪化させるという問題点があった。
特開平11−80430号公報
したがって本発明の目的は、高い硬度を有し、優れた引張強さ、破断伸びを有し、耐カット性を向上し、発熱性にも優れるタイヤキャップトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、天然ゴムおよびスチレン−ブタジエン共重合体ゴムを含むジエン系ゴムに対し、特定の特性を有するカーボンブラックの特定量、特定のフェノール樹脂の特定量およびメチレンドナー化合物の特定量を配合することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
1.天然ゴム50〜90質量部およびスチレン−ブタジエン共重合体ゴム50〜10質量部を含むジエン系ゴム100質量部に対し、
窒素吸着比表面積(NSA)が110m/gよりも大きいカーボンブラックを20〜70質量部、
下記式(1)で表される二核体フェノールを0.5〜10質量%含むフェノール樹脂を0.5〜10質量部、および
メチレンドナー化合物を0.5〜5質量部
配合してなることを特徴とするタイヤキャップトレッド用ゴム組成物。
[化1]
Figure 0006297901
(式(1)中、Aは炭素数1〜20の2価の炭化水素基またはSO基を表し、R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基を表し、n1およびn2はそれぞれ独立して、0〜4の整数を表す。)
2.前記メチレンドナー化合物が、ヘキサメチレンテトラミンまたはメトキシメチロールメラミン誘導体であることを特徴とする前記1に記載のタイヤキャップトレッド用ゴム組成物。
3.前記1または2に記載のゴム組成物をキャップトレッドに用いたことを特徴とする重荷重用または建設車両用空気入りタイヤ。
本発明によれば、天然ゴムおよびスチレン−ブタジエン共重合体ゴムを含むジエン系ゴムに対し、特定の特性を有するカーボンブラックの特定量、特定のフェノール樹脂の特定量およびメチレンドナー化合物の特定量を配合することにより、高い硬度を有し、優れた引張強さ、破断伸びを有し、耐カット性を向上し、発熱性にも優れるタイヤキャップトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
本発明のタイヤキャップトレッド用ゴム組成物は、とくに重荷重用または建設車両用空気入りタイヤのキャップトレッドに好適である。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、天然ゴム(NR)およびスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を必須成分とする。NRの配合量は、本発明の効果の観点から、ジエン系ゴム全体を100質量部としたときに、50〜90質量部が好ましく、60〜80質量部がさらに好ましい。またSBRの配合量は、本発明の効果の観点から、ジエン系ゴム全体を100質量部としたときに、50〜10質量部が好ましく、40〜20量部がさらに好ましい。
なお、NRおよびSBR以外にも他のジエン系ゴムを用いることができ、例えば、ブタジエンゴム(BR)等の公知のジエン系ゴムを配合することができる。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
(カーボンブラック)
本発明で使用されるカーボンブラックは、窒素吸着比表面積(NSA)が110m/gよりも大きいものである必要がある。110m/g以下であると、引張強さが低下し、耐カット性が悪化する。なお、窒素吸着比表面積(NSA)はJIS K6217−2に準拠して求めた値である。さらに好ましい窒素吸着比表面積(NSA)は、120 m/g以上である。
(フェノール樹脂)
本発明で使用されるフェノール樹脂は、下記式(1)で表される二核体フェノールを0.5〜10質量%、好ましくは1.0〜7.5質量%含むフェノール樹脂である(以下、特定フェノール樹脂と言うことがある)。
[化2]
Figure 0006297901
(式(1)中、Aは炭素数1〜20の2価の炭化水素基またはSO基を表し、R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基を表し、n1およびn2はそれぞれ独立して、0〜4の整数を表す。)
フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、ノボラック型レゾルシン樹脂、オイル変性フェノール樹脂等が挙げられ、本発明の効果が向上するという観点から、オイル変性フェノール樹脂、とくにカシュー変性フェノール樹脂が好ましい。フェノール樹脂の重量平均分子量は2000〜20000g/molが好ましく、5000〜10000g/molがさらに好ましい。また、フェノール樹脂の軟化点は、70〜120℃が好ましく、80〜100℃がさらに好ましい。なお重量平均分子量は、GPC法により測定したポリスチレン換算の値である。
前記式(1)で表される二核体フェノールとしては、例えば次の各種化合物が挙げられる。
[化3]

Figure 0006297901
[化4]
Figure 0006297901
[化5]

Figure 0006297901
本発明で使用される特定フェノール樹脂の調製方法としては、フェノール樹脂に前記式(1)で表される二核体フェノールを溶融混合する方法が挙げられる。溶融混合温度は例えば120℃〜240℃、好ましくは140〜220℃であり、溶融混合時間は、例えば攪拌下、1分〜120分である。また、必要に応じて溶剤を添加して均一に溶解させた後、脱溶剤して得てもよい。このようにして、本発明で使用される特定フェノール樹脂が得られる。本発明で使用される特定フェノール樹脂は、前記二核体フェノールとフェノール樹脂とが水素結合のような弱い化学結合により結合しているものと推測される。また、二核体フェノールは樹脂に対する異物となり、樹脂の架橋配列を乱すことにより、硬度、引張強さ、破断伸び、発熱性等の物性を改善するものと推測される。
(メチレンドナー化合物)
本発明のゴム組成物は、硬化剤としてメチレンドナー化合物を配合する。メチレンドナー化合物としては、例えば本発明の効果の観点から、ヘキサメチレンテトラミン、HMMM(ヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物)、PMMM(ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物)のようなメトキシメチロールメラミン誘導体、ヘキサエトキシメチルメラミン、パラ−ホルムアルデヒドのポリマーおよびメラミンのN−メチロール誘導体等が好ましく、中でもヘキサメチレンテトラミン、HMMM、PMMMのようなメトキシメチロールメラミン誘導体がさらに好ましい。
(充填剤)
本発明のゴム組成物は、各種充填剤を配合することができる。充填剤としてはとくに制限されず、適宜選択すればよいが、例えばシリカ、無機充填剤等が挙げられる。無機充填剤としては、例えばクレー、タルク、炭酸カルシウム等を挙げることができる。
(タイヤキャップトレッド用ゴム組成物の配合割合)
本発明のタイヤキャップトレッド用ゴム組成物は、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が110m/gよりも大きいカーボンブラックを20〜70質量部、前記特定フェノール樹脂を0.5〜10質量部、およびメチレンドナー化合物を0.5〜5質量部配合してなることを特徴とする。
前記カーボンブラックの配合量が20質量部未満であると、硬度が不足する。
前記カーボンブラックの配合量が70質量部を超えると、発熱性が悪化する。
前記特定フェノール樹脂の配合量が0.5質量部未満であると、添加量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。
前記特定フェノール樹脂の配合量が10質量部を超えると、引張強さ、破断伸びが低下し、耐カット性が悪化する。
前記メチレンドナー化合物の配合量が0.5質量部未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。
前記メチレンドナー化合物の配合量が5質量部を超えると、発熱性が悪化する。
本発明において、前記カーボンブラックのさらに好ましい配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、30〜60質量部である。
本発明において、前記特定フェノール系樹脂のさらに好ましい配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、1.0〜7.5質量部である。
本発明において、前記メチレンドナー化合物のさらに好ましい配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、1.0〜4.0質量部である。
本発明のタイヤキャップトレッド用ゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤキャップトレッド用ゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
本発明のタイヤキャップトレッド用ゴム組成物は、高い硬度を有し、優れた引張強さ、破断伸びを有し、耐カット性を向上し、発熱性にも優れることから、とくに、重荷重用または建設車両用空気入りタイヤのキャップトレッドに好適である。
また本発明のタイヤキャップトレッド用ゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに使用することができる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
特定フェノール樹脂の調製
住友ベークライト(株)カシュー変性フェノール樹脂PR−NR−1(重量平均分子量=7550g/mol)に対し、ビスフェノールF、ビスフェノールAまたはビスフェノールSを所定の質量%で加え、180℃で5分間溶融混合し、各種特定フェノール樹脂を得た。
従来例、実施例1〜8および比較例1〜5
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)と硬化剤を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、ゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を160℃、20分の条件でプレス加硫し、加硫ゴム試験片を作成し、以下に示す試験法で物性を測定した。
硬度(20℃):JIS K6253に基づき、20℃にて測定した。結果は、従来例の値を100として指数で示した。指数が大きいほど硬度が高いことを示す。
引張試験:JIS K6251(JIS 3号ダンベル)に基づき、100℃にて引張試験を実施し、引張強度(TB)および破断伸び(EB)を測定した。結果は従来例を100として指数で示した。指数が大きいほど強度が高いことを示す。
発熱性:(株)東洋精機製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪=10%、振幅=±2%、周波数=20Hzの条件下でtanδ(60℃)を測定し、この値をもって発熱性を評価した。結果は、従来例の値を100として指数で示した。指数が小さいほど、低発熱性であることを示す。
耐カット性:加硫ゴム試験片のサイズを50mm(縦)×100mm(横)×20mm(高さ)とし、室温にて、加硫ゴム試験片の25cm上方から質量5.4kgの鋭利な刃を自然落下させ、加硫ゴム試験片に生じた亀裂の深さ(mm)を測定した。結果は、従来例の値を100として指数で示した。指数が大きいほど、耐カット性に優れることを示す。
結果を表1に併せて示す。
Figure 0006297901
*1:NR(STR20)
*2:SBR(日本ゼオン(株)製Nipol 1502)
*3:カーボンブラック−1(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN220、窒素吸着比表面積(N2SA)=120m2/g)
*4:カーボンブラック−2(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN339、窒素吸着比表面積(N2SA)=91m2/g)
*5:比較フェノール樹脂(住友ベークライト(株)カシュー変性フェノール樹脂。重量平均分子量=7550g/mol)
*6:特定フェノール樹脂−1(前記のようにして調製したビスフェノールFを1質量%含むフェノール樹脂)
*7:特定フェノール樹脂−2(前記のようにして調製したビスフェノールFを2.5質量%含むフェノール樹脂)
*8:特定フェノール樹脂−3(前記のようにして調製したビスフェノールFを5質量%含むフェノール樹脂)
*9:特定フェノール樹脂−4(前記のようにして調製したビスフェノールFを10質量%含むフェノール樹脂)
*10:特定フェノール樹脂−5(前記のようにして調製したビスフェノールAを2.5質量%含むフェノール樹脂)
*11:特定フェノール樹脂−6(前記のようにして調製したビスフェノールAを5質量%含むフェノール樹脂)
*12:特定フェノール樹脂−7(前記のようにして調製したビスフェノールSを2.5質量%含むフェノール樹脂)
*13:特定フェノール樹脂−8(ビスフェノールF単体)
*14:PMMM(住友化学(株)製スミカノール507A)
*15:プロセスオイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*16:タッキファイヤー(荒川化学工業(株)製中国ロジンWW)
*17:老化防止剤(住友化学(株)製アンチゲン6C)
*18:ワックス(大内新興化学工業(株)製サンノック)
*19:ステアリン酸(日油(株)製ステアリン酸YR)
*20:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*21:加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製ノクセラーNS−P)
*22:硫黄(鶴見化学工業(株)製金華印油入微粉硫黄)
前記の表1から明らかなように、実施例1〜8で調製されたタイヤキャップトレッド用ゴム組成物は、天然ゴムおよびスチレン−ブタジエン共重合体ゴムを含むジエン系ゴムに対し、特定の特性を有するカーボンブラックの特定量、特定のフェノール樹脂の特定量およびメチレンドナー化合物の特定量を配合しているので、従来の従来例に対し、高い硬度を有し、優れた引張強さ、破断伸びを有し、耐カット性を向上し、発熱性にも優れることが証明された。
これに対し、比較例1は、特定フェノール樹脂の配合量が本発明で規定する下限未満であるので、硬度、引張強さ、破断伸び、耐カット性、発熱性のすべてが悪化した。
比較例2は、特定フェノール樹脂の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、引張強さ、破断伸び、耐カット性が悪化した。
比較例3は、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が本発明で規定する下限未満であるので、引張強さ、耐カット性が悪化した。
比較例4は、フェノール樹脂を配合せず、二核体フェノールを配合した例であるので、引張強さ、破断伸び、耐カット性が悪化した。
比較例5は、フェノール樹脂と二核体フェノールを溶融混合せずに、比較フェノール樹脂とビスフェノールFを個別に配合した例である。この場合、フェノール樹脂と二核体フェノールとの相互作用が発現せず、引張強さ、破断伸び、耐カット性が悪化した。

Claims (3)

  1. 天然ゴム50〜90質量部およびスチレン−ブタジエン共重合体ゴム50〜10質量部を含むジエン系ゴム100質量部に対し、
    窒素吸着比表面積(NSA)が110m/gよりも大きいカーボンブラックを20〜70質量部、
    下記式(1)で表される二核体フェノールとフェノール樹脂との溶融混合物であって、下記式(1)で表される二核体フェノールを0.5〜10質量%含むフェノール樹脂を0.5〜10質量部、および
    メチレンドナー化合物を0.5〜5質量部
    配合してなることを特徴とするタイヤキャップトレッド用ゴム組成物。
    Figure 0006297901
    (式(1)中、Aは炭素数1〜20の2価の炭化水素基またはSO基を表し、R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基を表し、n1およびn2はそれぞれ独立して、0〜4の整数を表す。)
  2. 前記メチレンドナー化合物が、ヘキサメチレンテトラミンまたはメトキシメチロールメラミン誘導体であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤキャップトレッド用ゴム組成物。
  3. 請求項1または2に記載のゴム組成物をキャップトレッドに用いたことを特徴とする重荷重用または建設車両用空気入りタイヤ。
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