JP2006257111A - フェノール樹脂成形材料 - Google Patents

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Yasutaka Kimura
康孝 木村
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Abstract

【課題】 本発明は、寸法精度に優れた成形品を得ることができる、フェノール樹脂成形材料を提供することである。
【解決手段】 GPC測定による2核体以下の低分子量成分の含有量が、5%以下であるノボラック型フェノール樹脂を含有し、好ましくは、板状及び/又は層状の無機充填材を含むものであり、更に、好ましくは、前記無機充填材は、タルク及び/又はマイカを含むものであり、摺動部品として用いることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、フェノール樹脂成形材料に関するものである。
フェノール樹脂成形材料から得られる成形品は、耐熱性、電気的特性、機械的特性、寸法安定性などのバランスに優れ、自動車の機構部品や電機部品をはじめとして広範囲の分野に利用されている。
自動車の機構部品用途においては、金属部品からの置き換えが主であり、熱時の成形品強度が重要特性である。これらの用途では、熱で劣化しづらい無機充填材が用いられ、その中でもガラス繊維を充填したフェノール樹脂成形材料が主となっている。
機構部品の用途では、寸法精度は重要な特性項目である。例えば、ブレーキピストン等の摺動部品では、摺動部の寸法がその製品の性能を左右する機構上の重要箇所となっている。従来のフェノール樹脂成形材料では、成形後の寸法を要とされる寸法精度にすることは困難であり、ほとんどの場合、切削、研磨等による後工程による寸法修正が必要となるという問題点がある。
フェノール成形材料の寸法精度に影響する要因の中で、材料組成に起因していると思われる項目として下記が挙げられる。
(1)金型取り出し後の冷却過程での収縮
(2)充填材の影響
上記(1)は、樹脂成分の硬化特性が大きく影響している。フェノール樹脂は熱により化学反応が進行し硬化固化する。金型取出し時の樹脂成分の硬化度が低い、もしくは不均一だと冷却の際の線膨張による収縮が大きい、あるいは不均一になり、成形品中に歪が生じる。その結果、寸法のバラツキが大きくなる。また硬化しない成分(ゴム等)を配合すると寸法精度が低下することもある。
上記(2)は、主に金型に材料を充填する際に生じる充填材の配向によるところが大きく、ガラス繊維等のアスペクト比の大きい充填材を用いると特に顕著になる。
寸法精度を向上させる試みとして、充填材にエラストマーを配合した技術が公開されており(例えば、特許文献1参照。)、また、成形後の応力を低くするために低圧射出成形が可能な樹脂材料も公開されているが(例えば、特許文献2参照)、摺動部品として使用できるフェノール樹脂成形材料に関しては未だ満足できるものが得られていない。
特開2004−256741号公報 特開平07−278409号公報
本発明は、上記の問題を解決するために種々検討した結果なされたものであり、その目的とするところは、寸法精度に優れた摺動部品が得られるフェノール樹脂成形材料を提供することである。
このような目的は、以下(1)〜(4)に記載の本発明により達成される。
(1)GPC測定による2核体以下の低分子量成分の含有量が5%以下であるノボラック型フェノール樹脂を含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料。
(2)更に、板状及び/又は層状の無機充填材を含む(1)に記載のフェノール樹脂成形材料。
(3)前記無機充填材は、タルク又はマイカを含むものである(1)又は(2)に記載のフェノール樹脂成形材料。
(4)摺動部品に用いられる(1)〜(3)のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
本発明は、GPC測定による2核体以下の低分子量成分の含有量が5%以下であるノボラック型フェノール樹脂を含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料であり、本発明のフェノール樹脂成形材料を使用すれば、寸法精度に優れた摺動部品を得ることができる。
以下に、本発明のフェノール樹脂成形材料(以下、単に「成形材料」ということがある)について詳細に説明する。本発明は、GPC測定による2核体以下の低分子量成分の含有量が5%以下であるノボラック型フェノール樹脂を含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料である。
一般的なノボラック型フェノール樹脂は、フェノールの1核体から数十核体までを含む混合物であり1核体、2核体の低分子量成分を十数%含んでいる。成形品等の硬化物をアセトン等の有機溶剤で抽出した場合、その抽出物の大部分が1核体、2核体の低分子量成分である。
よってこのような反応性の低い1核体、2核体成分が多いノボラック型フェノール樹脂を使用したフェノール樹脂成形材料は、硬化後の成形品中に未反応成分が残存し易い。上記で述べたように成形品寸法は金型取出し時の樹脂成分の硬化度が低い、もしくは不均一だと精度が低下すると考えられる。これらのことから1核体及び2核体成分を低減することで寸法精度の向上が期待できる。
このようなノボラック型フェノール樹脂の製法としては特に限定されないが、例えば、溶融状態の樹脂に水蒸気を吹き込み2核体以下の低分子量成分を取り除く方法、フェノール類とアルデヒド類とを有機ホスホン酸を触媒として用いて反応させて得られる方法等が挙げられる。
なお、本発明の成形材料に用いられるノボラック型フェノール樹脂において、2核体以下の低分子量成分の含有量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法を用いて測定したものである。
具体的には、テトラヒドロフランを溶出溶媒として使用し、流量1.0ml/分、カラム温度40℃の条件で、示差屈折計を検出器として測定し、得られた分子量分布曲線から、樹脂全体に対する2核体成分及び1核体成分に該当する面積の比率より算出した。
装置は、
1)本体:TOSOH社製・「HLC−8120」
2)分析用カラム:TOSOH社製・「G1000HXL」1本、「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本、
を使用した。
本発明の成形材料においては、通常、ノボラック型フェノール樹脂の硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを併用することができる。ヘキサメチレンテトラミンの含有量は、ノボラック型フェノール樹脂に対して、10〜25重量%であることが好ましい。更に好ましくは、14〜20重量%である。上記下限値未満では、硬化性が低下することがあり、上記上限値を越えると熱安定性が悪化することがある。
本発明で用いられるノボラック型フェノール樹脂の含有量は、特に限定されないが、ヘキサメチレンテトラミンを配合する場合はその量を含めて、成形材料全体に対して15〜65重量%が好ましい。更に好ましくは30〜50重量%である。上記下限値未満では成形材料の生産が困難となること及び材料の流動性が低下するため成形が困難になるといった問題を生じることがある。上記上限値を超えると材料の生産性が低下することがある。
本発明の成形材料には、無機充填材を含有することができる。
上記無機充填材は、特に限定されないが、板状及び/又は層状であることが好ましい。
上記無機充填材としては、特に限定されないが、タルク、マイカ等が挙げられる。これらの無機充填材はガラス繊維に比べて配向性による異方差が発現しにくく、それにより寸法精度を向上させることができるものと推測される。
本発明の成形材料には、上記板状及び/又は層状の無機充填材以外の無機充填材を併用することができる。これらの無機充填材としては、特に限定されないが、ガラス繊維、シリカ、炭酸カルシウム等が挙げられる。また、目的とする寸法精度によっては木粉、合板粉、樹脂成形品の粉砕物等の有機充填材を用いても良い。
上記ガラス繊維を用いる場合は、特に限定されないが、通常のフェノール樹脂成形材料用のもの、例えば、繊維径10〜30μm、繊維長1〜6mmのチョップドストランドなどを使用することができる。
本発明の成形材料には、上記各成分の他に、通常のフェノール樹脂成形材料と同様に、滑剤、着色剤、硬化助剤、難燃剤などの各種添加剤を適宜配合することができる。
本発明の成形材料は、通常の方法により製造される。即ち、上記の各成分を所定の配合割合で混合し、加熱ロール、コニーダ、二軸押出機を使用して溶融混練した後、冷却、粉砕することにより得られる。
本発明の成形材料によって得られる成形品は、優れた寸法精度を有するため、このような特性が要求される自動車部品(各種モーターギアケース、モーターブラシホルダー、各種ブッシュ等モーター部品)、各種ギア部品、油圧バルブ部品等に好適に適応される。
以下、本発明の成形材料について実施例に基づいて詳細に説明する。
1.2核体以下のフェノール成分含有量の少ないノボラック型フェノール樹脂の合成
3Lの三口フラスコ中に2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸50重量%水溶液(PBTC、城北化学社製)2000重量部を添加し、5000Paの減圧下で減圧蒸留を行い70重量%の濃度とした。ここに、フェノール1000重量部を添加し、攪拌させながら110℃に昇温して、37重量%ホルムアルデヒド水溶液733重量部を60分間かけて逐次添加し、110℃で1時間還流させながら反応させた。その後、90℃まで冷却して攪拌を停止した。30分間静置により反応物分離は上層と下層に分離した。上層は樹脂相、下層は2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸水溶液となり、下層の2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸水溶液を除去した後、樹脂相を純水1000重量部添加後70℃で10分間攪拌して、30分間静置分離した後、上層の水を除去する水洗を2回行った。この後、常圧蒸留を行い130℃まで昇温して、5000Paの減圧度で減圧蒸留を行って170℃まで昇温してノボラック型フェノール樹脂(フェノール樹脂A)1103重量部を得た。
2.実施例
実施例1
成形材料全体に対して、フェノール樹脂Aを34重量%、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを6重量%、充填材としてガラス繊維を40重量%、タルクを17重量%、硬化助剤として酸化マグネシウムを1重量%、その他の添加剤として滑剤を1重量%、着色剤を1重量%配合し、170℃でのラボプラストミルのトルクで1.0kg・mになるまで加熱ロールで溶融混練し、冷却後粉砕して成形材料を得た。
実施例2
タルクの代わりにマイカを配合した以外は実施例1と同様にして、成形材料を得た。
比較例1
成形材料全体に対して、フェノール樹脂Bを34重量%、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを6重量部、充填材としてガラス繊維を57重量%、硬化助剤として酸化マグネシウムを1重量%、その他の添加剤として滑剤を1重量%、着色剤を1重量%配合し、170℃でのラボプラストミルのトルクで1.0kg・mになるまで加熱ロールで溶融混練し、冷却後粉砕して成形材料を得た。
比較例2
ガラス繊維を40重量%に減量し、タルクを17重量%配合した以外は、比較例1と同様にして成形材料を得た。
得られた成形材料を用い、以下の条件で射出成形した成形品(外径40mm、内径34mm、厚み3mm)の内径を測定して寸法精度の指標とした。これらの結果を表1下欄に示す。
(使用した原料)
(1)フェノール樹脂A:上記方法により合成したものを用いた。(2核体以下の低分子量成分は3%)
(2)フェノール樹脂B:住友ベークライト社製PR−50622(2核体以下の低分子量成分は1%)
(3)ガラス繊維:日本板硝子社製「RES03−BM38」、平均繊維長3mm、平均繊維径13μm
(4)タルク: 富士タルク工業社製 タルクDS−34
(5)マイカ: クラレ社製 マイカ200HK
(6)硬化助剤:酸化マグネシウム
(7)滑剤:ステアリン酸
(8)着色剤:カーボンブラック
(ノボラック型フェノール樹脂中の、2核体以下の低分量成分の含有量)
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法を用いて測定した。
具体的には、テトラヒドロフランを溶出溶媒として使用し、流量1.0ml/分、カラム温度40℃の条件で、示差屈折計を検出器として測定し、得られた分子量分布曲線から、樹脂全体に対する2核体成分及び1核体成分に該当する面積の比率より算出した。
装置は、
(1)本体:TOSOH社製・「HLC−8120」
(2)分析用カラム:TOSOH社製・「G1000HXL」1本、「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本、
を使用した。
(寸法特性評価)
(1)成形品
射出成形にて作成した。(射出温度:175℃、硬化時間:40秒間)
(2)寸法精度
3次元測定機により各成形品の内径を測定し、その標準偏差σを8倍した値で評価した。(n=20)
Figure 2006257111
表1の結果から明らかのように、本発明の2核体以下の低分子量成分の含有量が5%以下であるフェノール樹脂Aを含有する成形材料から得られた実施例1、2の成形品は、2核体以下の低分子量成分を10%以上含む通常のフェノール樹脂Bを含む比較例1、2に比較して、寸法精度の優れたものとなった。
本発明の成形材料は、寸法精度に優れた成形品を得ることができるフェノール樹脂成形材料として好適に使用できる。従って、この成形材料は、優れた寸法精度が必要な摺動部品等に好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. GPC測定による2核体以下の低分子量成分の含有量が5%以下であるノボラック型フェノール樹脂を含有することを特徴とする、フェノール樹脂成形材料。
  2. 更に、板状及び/又は層状の無機充填材を含む請求項1に記載のフェノール樹脂成形材料。
  3. 前記無機充填材は、タルク及び/又はマイカを含むものである請求項1又は2に記載のフェノール樹脂成形材料。
  4. 摺動部品に用いられるものである請求項1ないし3のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015205971A (ja) * 2014-04-18 2015-11-19 横浜ゴム株式会社 タイヤキャップトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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