JP6161425B2 - 電子写真感光体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真感光体の製造方法に関する。
電子写真装置に搭載される電子写真感光体として有機光導電性物質(以下、「電荷発生物質」と称する)を含有する電子写真感光体がある。現在では、電子写真装置のプロセスカートリッジや電子写真装置に用いられる電子写真感光体としては、上述の電子写真感光体が主流であり、大規模な生産が行われている。この電子写真感光体の中でも、電子写真感光体に必要な機能を各層に機能分離させて特性を向上させる積層型電子写真感光体の使用量が多い。積層型電子写真感光体の主な構成は、支持体上に下引き層、電荷発生層、正孔輸送層の順に積層する構成が採用されている。
積層型電子写真感光体を製造する方法としては、機能材料を有機溶媒に溶解させ塗布溶液(塗布液)を調製し、支持体上に塗布する方法が一般的に用いられている。近年では、各層の塗膜形成工程における有機溶剤の削減が望まれている。積層型電子写真感光体の下引き層の有機溶剤削減の提案として、金属酸化物が分散された層や電子輸送物質を分散させた層において、以下のような提案がなされている。
特許文献1には、水系分散媒にポリオール系樹脂およびブロック化イソシアネート化合物を溶解させ、金属酸化物粒子を分散させた分散液の塗膜を形成し、塗膜を加熱することで金属酸化物粒子が分散された下引き層を形成する方法が提案されている。特許文献2には、ポリオレフィン樹脂粒子と電子輸送物質を含有する粒子を含有する水分散液を作製し、この分散液の塗膜を支持体上に形成し、塗膜を加熱してポリオレフィン樹脂粒子を融解することで下引き層を形成する方法が提案されている。特許文献2では、下引き層中に電子輸送物質を含有する粒子が分散された下引き層が形成されている。
特開2010−113005号公報 特開2012−128397号公報
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示されている方法では、水系分散媒を用いて下引き層を形成することができるものの、さらなる画像均一性の向上のため、下引き層の均一性をより改善することが求められている。特許文献1では、電子輸送物質として機能する金属酸化物粒子をより均一に分散させることが必要となるが、水系分散媒中の金属酸化物粒子の分散性向上は困難である場合がある。また、特許文献2に開示されている方法は、電子輸送物質は、電子輸送物質を含有する粒子の状態で分散している下引き層を形成する方法であるため、下引き層表面の均一性が低下しやすい。従って、下引き層を形成する際に、有機溶剤を削減するとともに、下引き層表面の均一性を向上させる製造方法が望まれている。
本発明の目的は、電子写真感光体の製造方法、特に下引き層の形成方法において、有機溶剤の使用量を削減しつつ、下引き層表面の均一性を向上させ、画像均一性の高い電子写真感光体の製造方法を提供することにある。
本発明は、支持体、該支持体上に形成された下引き層、該下引き層上に形成された電荷発生層、および該電荷発生層上に形成された正孔輸送層を有する電子写真感光体の製造方法であって、該製造方法が、電子輸送物質を含む粒子を水系分散媒に分散させて分散液を調製する工程、該分散液の塗膜を該支持体上に形成する工程、および該塗膜を加熱することにより、該下引き層を形成する工程を有し、該下引き層を形成する工程において、該塗膜を加熱する温度が、該電子輸送物質の融点以上の温度であることを特徴とする電子写真感光体の製造方法に関する。
本発明によれば、有機溶剤の使用量を削減しつつ、下引き層表面の均一性を向上させ、画像均一性の高い電子写真感光体の製造方法を提供することができる。
電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。 電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。
本願の電子写真感光体の製造方法は、電子輸送物質を含む粒子を水系分散媒に分散させて分散液を調製する工程、および該分散液の塗膜を該支持体上に形成する工程を有する。上記2つの工程に加えて、該塗膜を該電子輸送物質の融点以上の温度で加熱することにより、該下引き層を形成する工程を有することを特徴とする。または、上記2つの工程に加えて、該塗膜を該電子輸送物質の融点以上の温度で加熱することにより該電子輸送物質を熔融させ、該下引き層を形成する工程を有することを特徴とする。
以下に、本願の電子写真感光体の製造方法、および電子写真感光体を構成する材料に関して説明する。本発明の電子写真感光体は、支持体、該支持体上に形成された下引き層、該下引き層上に形成された電荷発生層、および該電荷発生層上に形成された正孔輸送層を有する。
図2は、電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。図2中、21は支持体であり、22は下引き層であり、23は電荷発生層であり、24は正孔輸送層である。
一般的な電子写真感光体として、円筒状支持体上に感光層(電荷発生層、正孔輸送層)を形成してなる円筒状の電子写真感光体が広く用いられるが、ベルト状、シート状などの形状とすることも可能である。
〔下引き層〕
下引き層に用いる電子輸送物質は、有機電子輸送物質であることが好ましい。電子輸送物質としては、例えば、イミド化合物、キノン化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物が挙げられる。これらの中でも、イミド化合物、およびキノン化合物が好ましい。
イミド化合物としては、環状イミド構造を有している化合物であることが好ましく、下記式(1)で示される化合物であることが好ましい。
Figure 0006161425
式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、または置換もしくは無置換のピリジル基を示す。置換アルキル基の置換基、置換フェニル基の置換基、および置換ピリジル基の置換基としては、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、チオール基、アミノ基、アルコシキ基、シアノ基、ニトロ基、フェニル基、またはフェニルアゼニル基が挙げられる。nは、括弧内の構造の繰り返し数を示し、1または2である。
キノン化合物としては、パラキノイド構造、またはオルトキノイド構造を有している化合物が挙げられる。また、芳香環が縮合している構造を有する化合物であってもよく、複数のキノイド構造が連結している構造を有する化合物であってもよい。キノン化合物としては、下記式(2)、または下記式(3)で示される化合物であることが好ましい。
Figure 0006161425
式(2)中、R11からR18は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、または隣り合うR11からR18で示される基同士が結合して形成される−CH=CH−CH=CH−で示される2価の基を示す。
Figure 0006161425
式(3)中、XおよびXは、それぞれ独立に、炭素原子、または窒素原子を示す。Yは、酸素原子、またはジシアノメチレン基を示す。R21からR28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のフェニル基を示す。置換アルキル基の置換基、および置換フェニル基の置換基としては、アルキル基、ハロアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、チオール基、アミノ基、メトキシ基、ニトロ基、またはシアノ基が挙げられる。また、XおよびXが窒素原子である場合は、R24およびR25は存在しない。
ベンズイミダゾール化合物としては、ベンズイミダゾール環構造を有している化合物が挙げられる。また、芳香環が縮合している構造を有する化合物であってもよい。ベンズイミダゾール化合物としては、下記式(4)、(5)、または(6)で示される化合物であることが好ましい。
Figure 0006161425
式(4)中、R31からR34は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、またはアルキル基を示す。mは、括弧内の構造の繰り返し数を示し、1または2である。
式(5)中、R41からR44は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、またはアルキル基を示す。oは、括弧内の構造の繰り返し数を示し、1または2である。
式(6)中、R51およびR52は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、または置換もしくは無置換のアルキル基を示す。R53は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、または置換もしくは無置換のナフチル基を示す。置換アルキル基の置換基、置換フェニル基の置換基、および置換ナフチル基の置換基としては、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、ハロアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、チオール基、アミノ基、メトキシ基、ニトロ基、またはシアノ基が挙げられる。pは、括弧内の構造の繰り返し数を示し、1または2である。
シクロペンタジエニリデン化合物としては、シクロペンタジエニリデン構造を有する化合物が挙げられる。また、芳香環が縮合している化合物であってもよい。シクロペンタジエニリデン化合物としては、下記式(7)で示される化合物であることが好ましい。
Figure 0006161425
式(7)中、XおよびXは、それぞれ独立に炭素原子、または窒素原子を示す。Yは、酸素原子、ジシアノメチレン基、または置換もしくは無置換のフェニルイミノ基を示す。置換フェニルイミノ基の置換基として、アルキル基が挙げられる。R61からR68は、それぞれ独立に、水素原子、アルコキシカルボニル基、またはニトロ基を示す。また、XおよびXが窒素原子である場合は、R64およびR65は存在しない。
電子輸送物質は、後述する理由により、水系分散媒に対し難溶性を示す化合物であることが好ましい。水系分散媒に対して難溶性を示す電子輸送物質の指標は、水系分散媒と電子輸送物質を含有する粒子を混合した場合に、溶解する粒子が0.5質量%以下である電子輸送物質を難溶性とする。
本発明における電子輸送物質は、後述する理由により、電子輸送物質の融点が、200℃以下であることが好ましく、さらには180℃以下であることが好ましい。
本願における電子輸送物質を含む粒子は、少なくとも1種以上の電子輸送物質を含有する粒子であり、粒子中にさらに他の物質を含有してもよい。粒子中に電子輸送物質以外に含有してよい物質としては、樹脂、架橋剤、添加剤などが挙げられる。
電子輸送物質を含む粒子中に含有してもよい樹脂としては、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリオール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。中でも、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリオール樹脂、ポリアミド樹脂が好ましい。
次に、架橋剤について説明する。本発明における架橋剤としては、山下晋三,金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981年)等に記載されている化合物等を用いることができる。電子輸送物質を含む粒子中に含有してもよい架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、またはブロックイソシアネート化合物などが挙げられる。
電子輸送物質を含む粒子中に含有してもよい添加剤としては、酸化防止剤、耐光安定剤、または金属触媒などが挙げられる。
また、電子輸送物質を含む粒子を水系分散媒に分散させた分散液は、電子輸送物質を含む粒子の間で、異なる電子輸送物質を含む粒子同士を混合して作製してもよい。この分散液に、電子輸送物質を含む粒子以外に、さらに、樹脂を含む粒子、架橋剤を含む粒子、添加剤を含む粒子を混合して、分散液を調製してもよい。
樹脂を含む粒子に用いる樹脂としては、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリオール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。中でも、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリオール樹脂、ポリアミド樹脂であることが好ましい。樹脂を含む粒子には、さらに架橋剤、あるいは添加剤などを含有してもよい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、またはブロックイソシアネート化合物などが挙げられる。添加剤としては、酸化防止剤、耐光安定剤、または金属触媒などが挙げられる。
電子輸送物質を含む粒子を製造する方法としては、既存の粒子製造方法を用いることができる。上記樹脂を含む粒子、架橋剤を含む粒子、および添加剤を含む粒子は、電子輸送物質を含む粒子を製造する方法を用いて、同様に作製することができる。
以下に具体的な粒子の製造方法として粉砕法と噴霧乾燥法を示すが、限定はされない。
粉砕法としては、乾式粉砕、湿式粉砕、凍結粉砕などの方法があるが、粒子を製造する対象の材料である電子輸送物質の材質や種類に応じた粉砕方法を選択できる。粉砕機としては、軟性材料、弾性材料や樹脂系材料の粉砕に適した粉砕機がよく、例えば、超遠心粉砕機、ロータビータミル、グラインドミックス、ミキサーミルが挙げられる。また、電子輸送物質、樹脂および架橋剤を含む粒子を製造する場合や、同一粒子内に複数の種類の電子輸送物質を含有する粒子を製造する場合には、対象の材料を粉砕機で処理する前に混錬するなどの混合処理を行い、粒子を製造する。
噴霧乾燥法は、スプレードライあるいはスプレードライングと呼ばれる方法で、均一性の高い粒子を製造できる点において優れている。この方法は、溶媒あるいは分散媒に溶解あるいは分散している材料を噴霧し、溶媒あるいは分散媒を除去しながら粒子を製造し、サイクロンで捕集する構成となっている。
電子輸送物質を含む粒子を噴霧乾燥法で製造する場合について説明する。電子輸送物質を含む粒子を製造する場合には、電子輸送物質を溶解可能な溶媒に電子輸送物質を溶解させることにより電子輸送物質を含有する溶液を作製する。溶液の濃度としては、2〜15質量%であることが、得られる粒子の粒径を小さくかつ均一性良く製造できる点で好ましい。この溶液をスプレードライの装置を用いて、噴霧、乾燥を行い、電子輸送物質を含有する粒子を製造する。粒径としては、2〜15μmであることが、成膜時の膜厚均一性の点で好ましい。また、電子輸送物質、樹脂および架橋剤を含む粒子を製造する場合や、同一粒子内に複数の種類の電子輸送物質を含有する粒子を製造する場合には、これらの材料を溶解可能な溶剤に溶解させ、溶液を作製する。溶液の濃度としては、2〜15質量%であることが、粒子を製造する段階で均一性の高い粒子が得られる点で好ましい。この溶液をスプレードライの装置を用いて、噴霧、乾燥を行い、電子輸送物質を含む粒子や、電子輸送物質、樹脂および架橋剤を含む粒子を製造する。粒径としては、2〜15μmであることが、成膜時の膜厚均一性の点で好ましい。
次に、水系分散媒と電子輸送物質を含む粒子を含有する分散液に関して説明する。
水系分散媒としては、電子輸送物質を含む粒子を分散可能であり、粒子の分散状態を維持することが可能な液体である。電子輸送物質を含む粒子の分散状態を維持することが可能であるとは、水系分散媒中に分散された前記粒子が、粒子間の合一や結着が発生しない状態を維持できることを指す。
水系分散媒としては、電子輸送物質を含む粒子に対して難溶性を示す液体を水系分散媒として用いる。電子輸送物質を含む粒子に対して難溶性を示す液体に対し、別種の液体を混合して用いる場合には、液体を混合した水系分散媒が前記粒子に対して難溶性を示すように混合量を調整し、水系分散媒として用いる。電子輸送物質を含む粒子に対して難溶性を示す液体の指標は、液体と前記粒子を混合した場合に、溶解する粒子が0.5質量%以下である液体を難溶性とする。
電子輸送物質を含む粒子に対して難溶性を示す液体としては、水や、メタノールあるいはエタノールなどのアルコールであることが好ましい。電子輸送物質を含む粒子に対して難溶性を示す液体は、水系分散媒の全質量中、60質量%以上含有することが分散状態の維持の点で好ましく、100質量%含有することがより好ましい。
水系分散媒中における水の含有量は、水系分散媒の全質量に対して30質量%以上含有することが、分散状態の維持の点で好ましい。より好ましくは、水の含有量が40質量%以上であり、さらには、70質量%以上である。水系分散媒に、メタノール、エタノールを含有する場合は、水の含有量と、メタノールおよびエタノールからなる群より選択される少なくとも1種の含有量とを合計した含有量が、水系分散媒の全質量に対して60質量%以上含有することが好ましい。
水系分散媒の構成としては、電子輸送物質を含む粒子に対して難溶性を示す液体以外の液体を、粒子の分散性や分散安定性を損なわない範囲で含有してもよい。
上記難溶性を示す液体以外の液体としては、エーテル系液体、炭素数3以上のアルコール系液体、あるいはケトン系液体などが挙げられる。エーテル系液体としては、メトシキメタン、ジメトキシメタンなどの鎖状エーテルや、テトラヒドロフランやオキソランなどの環状エーテルが挙げられる。炭素数3以上のアルコール系液体としては、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。ケトン系液体としては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。これらの中でも、電子輸送物質を含む粒子の分散性を維持する観点から、エーテル系液体が好ましい。
本発明の分散液を調製する分散方法としては、既存の分散方法を用いることができる。以下に具体的な粒子の分散方法として撹拌法と高圧衝突法を示すが、限定はされない。
撹拌法について説明する。電子輸送物質を含む粒子および水系分散媒を秤量し、混合した後、撹拌機で撹拌して、分散液とする。また、電子輸送物質を含む粒子以外に、上記樹脂を含む粒子、架橋剤を含む粒子、および/または添加剤を含む粒子を混合する分散液の場合においては、それぞれの粒子を混合した後、撹拌機で撹拌して、分散液とする。撹拌機としては、高圧撹拌できる撹拌機であることが短時間で均一に分散できる点で好ましい。撹拌機としてはホモジナイザーなどが挙げられる。
分散液中の電子輸送物質を含む粒子の質量は、分散液の質量に対して10〜40質量%であることが好ましい。電子輸送物質を含む粒子と他の材料を含む粒子を混合して用いる場合、それぞれの粒子の割合は、4:10〜20:10(質量比)の範囲が好ましく、5:10〜12:10(質量比)の範囲がより好ましい。前述の比になるように、電子輸送物質を含む粒子や他の材料を含む粒子の混合量を調整する。
次に、高圧衝突法について説明する。この方法は、分散媒の沸点が低いと分散できないため、分散時には分散媒として水(水系分散媒)を用いることが好ましい。水で分散液を作製した後、他の液体を混合し、分散装置で分散し、分散液とすることができる。分散装置としてはマイクロフルイダイザーなどが挙げられる。
本発明における分散液の塗膜の形成に関して説明する。分散液の塗膜を形成する方法に関しては、浸漬塗布、スプレー塗布、リング塗布など既存の塗布方法を用いることができるが、生産性の観点から浸漬塗布であることが好ましい。この工程により支持体上に分散液を塗布し、分散液の塗膜を形成することができる。
次に、塗膜を電子輸送物質の融点以上の温度で加熱することにより、下引き層を形成する工程に関して説明する。
本願では、電子輸送物質を含む粒子を含有する分散液を塗布しているため、加熱により水系分散媒を除去すると同時に、電子輸送物質を均一に下引き層中に存在させて、下引き層表面の均一化する必要がある。
電子輸送物質の均一化させる点で、塗膜を加熱する温度は、電子輸送物質を含有する粒子中の電子輸送物質の融点以上の温度であれば、均一性の高い下引き層を形成することができる。これは、電子輸送物質の融点以上の加熱により電子輸送物質が熔融し、粒子同士の境界面が無くなることにより下引き層表面の均一性が向上しているためである。すなわち、塗膜を電子輸送物質の融点以上の温度で加熱することにより、電子輸送物質を熔融させる工程を有することにより、下引き層表面の均一性を向上させることを示している。
電子輸送物質を含む粒子以外に、樹脂および/または架橋剤を含む粒子を含有する分散液を用いた塗膜においては、電子輸送物質の融点以上の温度で加熱し、電子輸送物質の熔融物に樹脂および/または架橋剤が溶解することにより下引き層が形成される。また、電子輸送物質を含む粒子中に、さらに樹脂および/または架橋剤を含む粒子を含有する分散液の塗膜においても、電子輸送物質の融点以上の温度で加熱し、電子輸送物質の熔融物に樹脂および/または架橋剤が溶解することにより下引き層が形成される。すなわち、塗膜を加熱する温度において、樹脂および/または架橋剤が、電子輸送物質の熔融物に可溶であることを示す。電子輸送物質の熔融物に対して、樹脂および/または架橋剤が溶解することにより、それぞれの材料を含有する粒子間の境界面が無くなることにより下引き層表面の均一性が向上している。また、下引き層中に含有される電子輸送物質の含有量が多いことが、好ましい。
塗膜を加熱する温度としては、下引き層を構成する電子輸送物質の中で最も融点の低い電子輸送物質の融点よりも5℃以上の高い温度で加熱することが好ましい。また、塗膜を加熱する温度が高すぎると電子輸送物質の変性などを引き起こすため、温度は200℃以下であることが好ましく、さらには180℃以下であることが好ましい。
本願の製造方法により製造される電子写真感光体の下引き層の膜厚は、0.3μm以上30μm以下であることが好ましく、0.5μm以上15μm以下であることがより好ましい。
本願では、電子輸送物質を含む粒子を含有する分散液を調製し、この分散液を支持体上に塗布して塗膜を形成し、電子輸送物質の融点以上の温度で加熱することにより、塗布液中の有機溶剤の使用量を削減し、下引き層表面の均一性を高める結果が得られている。
特開2010−113005号公報に記載されている方法では、金属酸化物粒子を用いているため、水系媒体における金属酸化物粒子の分散性向上と、下引き層表面の均一性の向上が十分ではない場合がある。また、金属酸化物粒子の融点以上の加熱は困難であるため、塗膜を加熱する工程で均一性を向上させることも困難であると考えられる。
特開2012−128397号公報に記載されている方法は、塗布液の塗膜を加熱することで、塗膜中に含まれている樹脂を溶解させる方法である。この方法では、下引き層の電子輸送物質は粒子状態のまま下引き層内に存在するため、下引き層内の電子輸送物質の均一ではなく、下引き層表面の均一性が十分ではないと考えられる。本願では、分散液の塗膜を電子輸送物質の融点以上の温度で加熱することで、電子輸送機能を担う電子輸送物質が熔融し、粒子同士の境界面が無くなることにより、下引き層表面の均一性を向上させることができていると考えられる。
〔支持体〕
支持体としては、導電性を有するもの(導電性支持体)が好ましい。例えば、アルミニウム、アルミニウム合金などが挙げられる。アルミニウム、またはアルミニウム合金製の支持体の場合は、ED管、EI管や、これらの支持体を切削、電解複合研磨、湿式または乾式ホーニング処理した支持体を用いることもできる。また、金属製支持体や樹脂性支持体上にアルミニウム、アルミニウム合金、または酸化インジウム−酸化スズ合金等の導電材料の薄膜を形成した支持体が挙げられる。さらに、金属製支持体や樹脂性支持体上にカーボンブラック、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子、銀粒子などの導電性粒子を樹脂中に分散した導電層を形成したものも挙げられる。
また、干渉縞を抑制するために支持体はその表面を適度に荒らしておくことが好ましい。具体的には、上記支持体表面をホーニング、ブラスト、切削、電界研磨等の処理をした支持体、または、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の支持体上に導電性粒子及び樹脂を含む導電層を有する支持体を用いることが好ましい。導電層表面で反射した光が干渉して出力画像に干渉縞が発生することを抑制するために、導電層に、導電層表面を粗面化するための表面粗し付与材を含有させてもよい。
〔導電層〕
導電性粒子および樹脂を有する導電層を支持体上に形成する方法では、導電層中に導電性粒子を含む粉体が含有される。導電性粒子としては、カーボンブラックや、アルミニウム、ニッケル、鉄、クロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉体や、導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体が挙げられる。導電層は、導電性粒子と樹脂を混合した導電層用塗布液の塗膜を形成し、得られた塗膜を加熱乾燥させて形成される層である。
導電層に用いられる樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂およびアルキッド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独でも、二種以上を組合せて用いても良い。
導電層は、浸漬塗布、あるいはマイヤーバー等による溶剤塗布で形成することができる。
導電層用塗布液の溶剤としては、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。
導電層の膜厚は、0.2μm以上40μm以下であることが好ましく、1μm以上35μm以下であることがより好ましく、さらには5μm以上30μm以下であることがより好ましい。
〔下引き層〕
支持体または導電層と電荷発生層との間には、上述の下引き層が形成される。
〔電荷発生層〕
下引き層上には、電荷発生層が形成される。
電荷発生層に用いられる電荷発生物質(有機光導電性物質)としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、インジゴ顔料およびペリレン顔料が挙げられる。これら電荷発生物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。これらの中でも、特にオキシチタニウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニンなどが高感度であるため好ましい。
電荷発生層に用いられる樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、尿素樹脂が挙げられる。これらの中でも、ブチラール樹脂が特に好ましい。これらは単独、混合、または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
電荷発生層は、電荷発生物質を樹脂および溶剤とともに分散して得られる電荷発生層用塗布液の塗膜を形成し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。また、電荷発生層は、電荷発生物質の蒸着膜としてもよい。
分散方法としては、たとえば、ホモジナイザー、超音波、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルを用いた方法が挙げられる。
電荷発生物質と樹脂との割合は、樹脂1質量部に対して、電荷発生物質が0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、特には1質量部以上3質量部以下がより好ましい。
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素溶剤などが挙げられる。
電荷発生層の膜厚は、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などを必要に応じて添加することもできる。また、電荷発生層において電荷の流れが滞らないようにするために、電子輸送物質、または電子受容性物質を電荷発生層に含有させてもよい。
〔正孔輸送層〕
電荷発生層上には正孔輸送層が形成される。正孔輸送層は、正孔輸送物質、および結着樹脂を含有する。
正孔輸送物質は、正孔輸送能を有する物質であり、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、ブタジエン化合物、およびエナミン化合物が挙げられる。これらの中でも、正孔輸送物質としてトリアリールアミン化合物を用いることが電子写真特性の向上の点で好ましい。また、複数の種類の正孔輸送物質を混合して用いることもできる。
結着樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。なかでも、ポリカーボネート樹脂、またはポリエステル樹脂であることが好ましい。また、複数の種類の結着樹脂を混合して用いることもできる。
また、正孔輸送層には、正孔輸送物質および結着樹脂以外に添加剤を含有してもよい。添加剤の具体例としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤のような劣化防止剤や、離型性を付与する樹脂などが挙げられる。劣化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系対光安定剤、硫黄原子含有酸化防止剤、リン原子含有酸化防止剤が挙げられる。離型性を付与する樹脂としては、例えば、フッ素原子含有樹脂、シロキサン構造を含有する樹脂が挙げられる。
正孔輸送層は、正孔輸送物質および結着樹脂を溶剤に溶解させることによって得られる正孔輸送層用塗布液の塗膜を形成し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
正孔輸送物質と結着樹脂との割合は、結着樹脂1質量部に対して、正孔輸送物質が0.4質量部以上2質量部以下が好ましく、0.5質量部以上1.2質量部以下がより好ましい。
正孔輸送層用塗布液に用いられる溶剤としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で使用してもよいが、2種類以上を混合して使用してもよい。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤、または芳香族炭化水素溶剤を使用することが、結着樹脂の溶解性の観点から好ましい。
正孔輸送層の膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、10μm以上35μm以下であることがより好ましい。
上記各層の塗布液を塗布する際には、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法などの塗布方法を用いることができる。
〔電子写真装置〕
図1に、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
図1において、1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度をもって回転駆動される。回転駆動される電子写真感光体1の表面は、回転過程において、帯電手段(一次帯電手段:帯電ローラーなど)3により、正または負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)から出力される目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強度変調された露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の表面に、目的の画像情報に対応した静電潜像が順次形成されていく。
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5の現像剤に含まれるトナーで反転現像により現像されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が、転写手段(転写ローラーなど)6からの転写バイアスによって、転写材(紙など)Pに順次転写されていく。なお、転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて、電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に給送される。また、転写手段6には、バイアス電源(不図示)からトナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加される。
トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ搬送されてトナー像の定着処理を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へ搬送される。
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写残りの現像剤(転写残トナー)の除去を受けて清浄面化される。次いで、前露光手段(不図示)からの前露光光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、図1に示すように、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5、転写手段6およびクリーニング手段7などから複数のものを選択し、これらを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に支持して構成してもよい。そして、このプロセスカートリッジを、複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図1では、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。
以下に、具体的な分散液製造例と実施例を挙げる。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
〔分散液製造例1〕
電子輸送物質を含む粒子を含有する分散液を、以下の方法で作製した。
電子輸送物質として下記式(1−1)で示される化合物(融点:160−162℃)100部を、テトラヒドロフラン900部に溶解させ、テトラヒドロフラン溶液を調製した。得られたテトラヒドロフラン溶液を用いて、イナートループB−295を接続したミニスプレードライヤーB−290(いずれもビュッヒ社製)を用い、窒素気流下にて溶剤回収を行いながらスプレードライ法による粒子化を行った。得られた電子輸送物質を含有する粒子の粒径が2〜10μmとなるように、窒素ガス流速、インレット温度、アスピレータおよびポンプの設定を調整した。このようにして電子輸送物質を含む粒子を製造した。
Figure 0006161425
次いで、樹脂としてN−メトキシメチル化ナイロン20部を、メタノール980部に溶解させメタノール溶液を調製した。樹脂を含むメタノール溶液を上記に記載したスプレードライ法で粒子化を行った。得られた樹脂を含む粒子の粒径が2〜10μmとなるように窒素ガス流速、インレット温度、アスピレータおよびポンプの設定を調整した。このようにして樹脂を含む粒子を製造した。
次に、固形分として電子輸送物質を含む粒子20部および樹脂を含む粒子10部、水系分散媒として水56部およびメタノール24部(水/メタノール=7/3)を秤量し、混合した。混合液を、ホモジナイザーを用いて、5,000回転/分の条件で20分間撹拌を行った。このようにして電子輸送物質を含む粒子と、樹脂を含む粒子とを水系分散媒に分散させた分散液を得た。
〔分散液製造例2〕
分散液製造例1で示した電子輸送物質を、下記式(2−1)で示される化合物(融点:180−181℃)に換え、水系分散媒中のメタノールをエタノールに換えた以外は、分散液製造例1と同様の方法で分散液を作製した。
Figure 0006161425
〔分散液製造例3〕
分散液製造例1で示した電子輸送物質を、下記式(1−2)で示される化合物(融点:120−122℃)に換えた以外は、分散液製造例1と同様の方法で分散液を作製した。
Figure 0006161425
〔分散液製造例4〕
分散液製造例1で示した電子輸送物質を、式(1−2)で示される化合物に換え、同様の粒子製造方法で電子輸送物質を含有する粒子を作製した。また、樹脂をブチラール樹脂(製品名:BM−1、ブチラール化度約65mol%、水酸基約34mol%、積水化学工業(株)製)に換え、ブロックイソシアネート化合物(製品名:BWD−102、日本ポリウレタン工業(株)製)を5部添加し、ジラウリル酸ジブチルスズを0.2部加えて樹脂および架橋剤を含む粒子を作製した。この電子輸送物質を含有する粒子、樹脂および架橋剤を含む粒子を用いた以外は、分散液製造例1と同様の方法で分散液を作製した。
〔分散液製造例5〕
分散液製造例1で示した電子輸送物質を、式(1−2)で示される化合物に換え、同様の粒子製造方法で電子輸送物質を含有する粒子を作製した。また、樹脂をアセタール樹脂(製品名:BX−1、アセタール化度約66mol%、水酸基約33mol%、積水化学工業(株)製)に換え、ブロックイソシアネート化合物(製品名:BWD−102、日本ポリウレタン工業(株)製)を5部添加しジラウリル酸ジブチルスズを0.2質量%加えて樹脂および架橋剤を含む粒子を作製した。この電子輸送物質を含有する粒子、樹脂および架橋剤を含む粒子を用いた以外は、分散液製造例1と同様の方法で分散液を作製した。
〔分散液製造例6〕
電子輸送物質として式(1−2)で示される化合物60部、上記ブチラール樹脂(製品名:BM−1)を20部、ブロックイソシアネート化合物(製品名:BWD−102)を10部、ジラウリル酸ジブチルスズを0.2部を、テトラヒドロフラン900重量部に溶解させてテトラヒドロフラン溶液を調製した。得られたテトラヒドロフラン溶液を用いて、イナートループB−295を接続したミニスプレードライヤーB−290(いずれもビュッヒ社製)を用い、窒素気流下にて溶剤回収を行いながらスプレードライ法による粒子化を行った。得られた電子輸送物質、樹脂および架橋剤を含む粒子の粒径が2〜10μmとなるように、窒素ガス流速、インレット温度、アスピレータおよびポンプの設定を調整した。このようにして電子輸送物質、樹脂および架橋剤を含む粒子を製造した。
〔分散液製造例7〕
分散液製造例6で示した樹脂をアセタール樹脂(製品名:BX−1、アセタール化度約66mol%、水酸基約33mol%、積水化学工業(株)製)に換えた以外は、分散液製造例6と同様の方法で分散液を作製した。
〔実施例1〕
直径24mm、長さ257mmのアルミニウムシリンダーを支持体(導電性支持体)とした。
次に、SnOコート処理硫酸バリウム(導電性粒子)10部、酸化チタン(抵抗調節用顔料)2部、フェノール樹脂6部、シリコーンオイル(レベリング剤)0.001部をメタノール4部/メトキシプロパノール16部の混合溶剤に混合させて導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を140℃で30分間加熱することによって、膜厚が20μmの導電層を形成した。
次に、分散液製造例1で製造した分散液を用いて、上記導電層上に浸漬塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜を、200℃で60分間加熱する工程を行い、膜厚が1μmの下引き層を形成した。上記200℃で加熱する工程は、塗膜を200℃で加熱することにより電子輸送物質を熔融させるものである。
次に、電荷発生物質としてヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する。)10部を、シクロヘキサノン250部にアセタール樹脂(商品名:エスレックBX−1.積水化学工業(株)製)5部を溶解させた液に加えた。これを、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で23±3℃雰囲気下1時間分散した。分散後、酢酸エチル250部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を下引き層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を100℃で10分間乾燥させることによって、膜厚が0.26μmの電荷発生層を形成した。
次に、正孔輸送物質として下記式(CTM−1)で示される正孔輸送物質9部、下記式(CTM−2)で示される正孔輸送物質1部、結着樹脂としてポリカーボネート樹脂(ユーピロンZ−400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)、粘度平均分子量(Mv)40,000)10部を、オルトキシレン65部およびジメトキシメタン35部の混合溶媒に溶解し、正孔輸送層用塗布液を調製した。この正孔輸送層用塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を120℃で60分間加熱乾燥を行った。このようにして、円筒状支持体の長手方向上端から120mm位置の平均膜厚が20μmの正孔輸送層を形成した。
Figure 0006161425
上記の方法で、本発明の製造方法を用いた電子写真感光体を作製した。次に、評価について説明する。
<下引き層表面の均一性評価>
円筒状支持体(電子写真感光体)の長手方向上端部から120mm位置の表面を、表面粗さ測定器(サーフコーダーSE−3400、小西研究所(株)製)を用いて測定した。表面粗さの測定は、JIS B 0601:2001における十点平均粗さ(Rzjis)評価に則った評価(評価長さ10mm)を行った。結果を表1に示す。
<画像評価>
キヤノン(株)製レーザービームプリンターLBP−2510に製造した電子写真感光体を用いて画像評価を行った。画像評価にあたり、780nmのレーザー光源の露光量(画像露光量)については、電子写真感光体の表面での光量が0.3μJ/cmとなるように改造して用いた。また、評価は、温度23℃、湿度15%環境下で行った。画像評価としては、A4サイズの普通紙を用いて単色のハーフトーン画像を出力し、出力された画像を目視にて以下に示す基準で評価した。ランクAおよびランクBが、本発明の効果が得られているレベルとした。
ランクA:全面均一な画像である
ランクB:ごく一部に軽微な画像ムラがある
ランクC:画像ムラがある
ランクD:目立つ画像ムラがある
結果を表1に示す。
〔実施例2〜33〕
下引き層を表1に記載の分散液を用いて形成し、分散液の塗膜の加熱条件を表1のように変えた以外は、実施例1と同様の方法で電子写真感光体を製造した。評価も実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
〔比較例1〜5〕
下引き層を表1に記載の分散液を用いて形成し、分散液の塗膜の加熱条件を表1のように変えた以外は、実施例1と同様の方法で電子写真感光体を製造した。評価も実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
〔比較例6〕
下引き層を以下のように形成した以外は、実施例1と同様の方法で電子写真感光体を製造し、評価を行った。結果を表1に示す。
下引き層用塗布液として、酸化亜鉛微粒子(製品名:MZ300、テイカ(株)製。)12部、水溶性ナイロン(製品名:トレジンFS−350、ナガセケムテックス(株)製。)9部、ブロックイソシアネート化合物(製品名:タケネートWB−820、三井化学ポリウレタン(株)製。)14部を水65部に混合、撹拌し、比較分散液1を作製した。得られた比較分散液1を導電層上に浸漬塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜を180℃で60分加熱する工程を行い、膜厚が1μmの下引き層を形成した。
〔比較例7〕
下引き層を以下のように形成した以外は、実施例1と同様の方法で電子写真感光体を製造し、評価を行った。結果を表1に示す。
分散液製造例1で示した樹脂をポリオレフィン樹脂(製品名:ボンダインHX−8290、住友化学工業株式会社製)に換えた以外は、分散液製造例1と同様の方法で比較分散液2を作製した。得られた比較分散液2を導電層上に浸漬塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜を100℃で30分加熱する工程を行い、膜厚が1μmの下引き層を形成した。
Figure 0006161425
実施例と比較例1〜5との比較より、分散液の塗膜を加熱する温度が、塗膜中の電子輸送物質の融点以上の温度である場合、下引き層表面の均一性の高い下引き層を形成できる結果となっている。これは、粒子に含有される電子輸送物質の融点より高い温度で塗膜が加熱されることにより、電子輸送物質が熔融する現象によると考えられる。この現象により、粒子同士の境界面が無くなり、下引き層表面の均一性を高めていると考えられる。また、樹脂、架橋剤が分散液に存在する場合、粒子に含有される電子輸送物質の融点より高い温度で加熱されることにより、電子輸送物質が熔融し、電子輸送物質の熔融物に樹脂、架橋剤が溶解する現象が生じていると考えられる。この現象により、粒子同士の境界面が熔融、あるいは熔融物に溶解することにより無くなり、下引き層表面の均一性を高めていると考えられる。さらには、電子輸送物質の融点よりも5℃以上の高い温度で塗膜を加熱することにより、短時間で均一性の高い下引き層を形成できることが示されている。
実施例と比較例6との比較より、金属酸化物粒子を用いた場合には、金属酸化物粒子の融点以上で塗膜を加熱することは困難であるため、下引き層表面の均一性が実施例よりも低い結果となっている。また、実施例と比較例7との比較より、実施例のように電子輸送物質の融点以上の塗膜の加熱を行うと、下引き層表面の均一性が高められる結果が示されている。
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 クリーニング手段
8 定着手段
9 プロセスカートリッジ
10 案内手段
P 転写材
21 支持体
22 下引き層
23 電荷発生層
24 電荷輸送層

Claims (12)

  1. 支持体、該支持体上に形成された下引き層、該下引き層上に形成された電荷発生層、および該電荷発生層上に形成された正孔輸送層を有する電子写真感光体の製造方法であって、
    該製造方法が、
    電子輸送物質を含む粒子を水系分散媒に分散させて分散液を調製する工程、
    該分散液の塗膜を該支持体上に形成する工程、および
    該塗膜を加熱することにより、該下引き層を形成する工程
    を有し、
    該下引き層を形成する工程において、該塗膜を加熱する温度が、該電子輸送物質の融点以上の温度であることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  2. 前記下引き層を形成する工程において、前記塗膜中に含まれる前記電子輸送物質を熔融させる請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
  3. 前記分散液が、
    (i)前記電子輸送物質を含む粒子と、樹脂および/または架橋剤を含む粒子と、を水系分散媒に分散させた分散液、または
    (ii)前記電子輸送物質、ならびに、樹脂および/または架橋剤を含む粒子を水系分散媒に分散させた分散液である請求項1または2に記載の電子写真感光体の製造方法。
  4. 前記下引き層を形成する工程において、前記樹脂および/または該架橋剤が、前記電子輸送物質の熔融物に溶解している請求項3に記載の電子写真感光体の製造方法。
  5. 前記樹脂が、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂およびアセタール樹脂からなる群より選択される少なくとも1つである請求項3または4に記載の電子写真感光体の製造方法。
  6. 前記架橋剤が、イソシアネート化合物およびブロックイソシアネート化合物からなる群より選択される少なくとも1つである請求項3または4に記載の電子写真感光体の製造方法。
  7. 前記水系分散媒が水を含有し、該水の含有量が、前記水系分散媒の全質量に対して30質量%以上である請求項1から6のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
  8. 前記水系分散媒が、メタノールおよびエタノールからなる群より選択される少なくとも1つを含有する請求項1から7のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
  9. 前記水系分散媒が、水と、メタノールおよびエタノールからなる群より選択される少なくとも1つを含有し、
    前記水系分散媒における前記水の含有量と、前記メタノールおよび前記エタノールからなる群より選択される少なくとも1種の含有量とを合計した含有量が、前記水系分散媒の全質量に対して60質量%以上である請求項1から6のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
  10. 前記水系分散媒における前記水の含有量と、前記メタノールおよび前記エタノールからなる群より選択される少なくとも1種の含有量とを合計した含有量が、前記水系分散媒の全質量に対して100質量%である請求項9に記載の電子写真感光体の製造方法。
  11. 前記電子輸送物質が、イミド化合物およびキノン化合物からなる群より選択される少なくとも1つである請求項1から10のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
  12. 前記塗膜を加熱する温度が、200℃以下である請求項1から11のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
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