JP6150647B2 - ブラシレスモータの制御装置 - Google Patents
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Description
しかし、ブラシレスモータの制御装置(プロセッサ)において、PWM出力周期毎に非通電相の電圧に基づくセンサレス制御の処理を実施すると、センサレス制御の処理負担が大きく、他の処理が滞ってしまうという問題があった。
ここで、制御装置(プロセッサ)の処理能力を高くすれば、処理の滞りを抑制することができるものの、制御装置のコスト増になってしまう。
図1は、本発明に係るブラシレスモータの制御装置の一例として、自動車用の自動変速機の油圧ポンプシステムに適用した例を示す。
図1に示す油圧ポンプシステムは、変速機構(TM)7やアクチュエータ8にオイルを供給するオイルポンプとして、図外のエンジン(内燃機関)の出力により駆動される機械式オイルポンプ6と、モータで駆動される電動オイルポンプ1とを備えている。
電動オイルポンプ1は、ブラシレスモータ(3相同期電動機)2により駆動され、ブラシレスモータ2は、モータ制御装置(MCU)3によって制御される。
モータ制御装置3は、AT制御装置(ATCU)4からの指令に基づいてブラシレスモータ2を制御する。
エンジン運転中は、エンジンで駆動される機械式オイルポンプ6が作動し、機械式オイルポンプ6から変速機構7やアクチェータ8に対してオイルが供給され、このとき、ブラシレスモータ2はオフ状態(停止状態)であって、逆止弁11によって電動オイルポンプ1に向かうオイルの流れは遮断される。
モータ起動指令を受けたモータ制御装置3は、ブラシレスモータ2を起動させて電動オイルポンプ1を回転させ、電動オイルポンプ1によるオイルの圧送を開始させる。
例えば、ブラシレスモータは、ハイブリッド車両などにおいてエンジンの冷却水の循環に用いる電動ウォータポンプを駆動するブラシレスモータとすることができ、ブラシレスモータが駆動する機器をオイルポンプに限定するものではなく、また、ブラシレスモータを自動車に搭載されるモータに限定するものではない。
モータ制御装置3は、モータ駆動回路212と、A/D変換器213aやマイクロプロセッサ(CPU,MPUなど)を備えたマイクロコンピュータ(マイコン)213bなどを含む制御ユニット213とを備え、制御ユニット213はAT制御装置4との間で通信を行う。
ブラシレスモータ2は、3相DCブラシレスモータ(3相同期電動機)であり、U相、V相及びW相の3相巻線215u、215v、215wを、図示省略した円筒状の固定子に備え、該固定子の中央部に形成した空間に永久磁石回転子(ロータ)216を回転可能に備える。
スイッチング素子217a〜217fの制御端子(ゲート端子)は、制御ユニット213に接続され、制御ユニット213は、スイッチング素子217a〜217fのオン、オフをパルス幅変調信号PWMによって制御する。
正弦波駆動は、各相に正弦波電圧を加えてブラシレスモータ2を駆動する方式である。この正弦波駆動では、回転子が回転することによって発生する誘起電圧(速度起電圧)から回転子の位置情報を得る一方、速度起電圧による回転子位置の検出周期の間で、モータ回転速度に基づき回転子位置を推定し、推定した回転子位置とPWMデューティとから、3相出力設定値を算出し、相間電圧の差で電流の向きと強さとを制御して、3相交流電流を流す。
この矩形波駆動では、通電相に対するパルス状の電圧印加によって非通電相の誘起される電圧(変圧器起電圧、パルス誘起電圧)から回転子の位置情報を得て、通電モードの切り替えタイミングを検出する。
ここで、正弦波駆動において位置検出のために検出する速度起電圧は、モータ回転速度の低下に伴って出力レベルが低下するため、低回転域では位置検出の精度が低下する。一方、矩形波駆動において位置検出のために検出するパルス誘起電圧は、モータ停止状態を含む低回転域においても位置情報を検出できる。
また、制御ユニット213は、正弦波駆動では十分な精度で位置情報を検出できない低回転領域(設定値よりもモータ回転速度が低い領域、起動時を含む)では、矩形波駆動でブラシレスモータ2を制御する。
更に、制御ユニット213は、ブラシレスモータ2のPWM制御において、モータ回転速度の検出値と目標モータ回転速度との偏差に応じてPWM制御のデューティ比を決定することで、実際のモータ回転速度を目標モータ回転速度に近づける。
図3は、矩形波駆動制御における制御ユニット213の機能ブロック図である。
制御ユニット213は、PWM発生部251、ゲート信号切替部252、通電モード決定部253、比較部254、電圧閾値切替部255、電圧閾値学習部256、非通電相電圧選択部257を備えている。
通電モード決定部253は、モータ駆動回路212の通電モード(スイッチングモード)を決定するモード指令信号を順次出力するデバイスであり、比較部254が出力するモード切替トリガ信号をトリガとして通電モードを6通りに切り替える。
尚、通電モードとは、ブラシレスモータ2の3相(U相、V相、W相)のうちでパルス電圧を印加する2相の選択パターンである。
電圧閾値切替部255は、非通電相のパルス誘起電圧と閾値との比較に基づく通電モードの切り替え制御における前記閾値を順次切り替えて出力し、閾値の切り替えタイミングは、通電モード決定部253の出力であるモード指令信号に基づき決定される。
尚、非通電相の端子電圧は、厳密にはグランドGND−端子間の電圧であるが、本実施形態では、中性点の電圧を別途検出し、この中性点の電圧とGND−端子間電圧との差を求めて、端子電圧Vu,Vv,Vwとしている。
また、電圧閾値学習部256は、通電モードの切り替えタイミングの判定に用いる閾値を更新して記憶するデバイスである。
そこで、電圧閾値学習部256は、通電モードの切り替えタイミングに相当する磁極位置でのパルス誘起電圧を検出することで、閾値を実際の切り替えタイミングで発生する誘起電圧に近づける補正を行い、電圧閾値切替部257が記憶している閾値を、補正結果に書き換える。
通電モードは、電気角60deg毎に順次切り替えられる6通りの通電モード(1)〜(6)からなり、各通電モード(1)〜(6)において、3相から選択された2相に対してパルス電圧(パルス状の電圧)を印加する。
制御ユニット213は、U相のコイルの角度位置を回転子(磁極)の基準位置(角度=0deg)としたときに、回転子の角度位置(磁極位置)が30degであるときに通電モード(3)から通電モード(4)への切り替えを行い、回転子角度位置が90degであるときに通電モード(4)から通電モード(5)への切り替えを行い、回転子角度位置が150degであるときに通電モード(5)から通電モード(6)への切り替えを行い、回転子角度位置が210degであるときに通電モード(6)から通電モード(1)への切り替えを行い、回転子角度位置が270degであるときに通電モード(1)から通電モード(2)への切り替えを行い、回転子角度位置が330degであるときに通電モード(2)から通電モード(3)への切り替えを行う。
比較部254は、非通電相の電圧(パルス誘起電圧)が閾値に達したときに次の通電モードへの切り替えを実施する角度を検出したことを示す信号を出力し、係る信号に基づき通電モード決定部253は通電モードの切り替えを実行する。
また、制御ユニット213は、通電モード(2)では、スイッチング素子217a及びスイッチング素子217fをオン制御し、他を全てオフとすることで、U相に電圧Vを印加し、W相に電圧−Vを印加し、U相からW相に向けて電流を流す。
また、制御ユニット213は、通電モード(4)では、スイッチング素子217b及びスイッチング素子217cをオン制御し、他を全てオフとすることで、V相に電圧Vを印加し、U相に電圧−Vを印加し、V相からU相に向けて電流を流す。
更に、制御ユニット213は、通電モード(6)では、スイッチング素子217e及びスイッチング素子217dをオン制御し、他を全てオフとすることで、W相に電圧Vを印加し、V相に電圧−Vを印加し、W相からV相に向けて電流を流す。
これに対し、制御ユニット213が、下段のスイッチング素子217dの駆動するPWM波と逆位相のPWM波で上段のスイッチング素子217cを駆動し、下段のスイッチング素子217dがオンであるときに、上段のスイッチング素子217cをオフし、下段のスイッチング素子217dをオフしたときに、上段のスイッチング素子217cをオンする相補制御方式で、各通電モード(1)〜(6)の通電制御を行うことができる。
また、AT制御装置4は、ブラシレスモータ2の印加電圧の指令値を、例えば以下のようにして決定する。
詳細には、AT制御装置4は、目標モータ回転数と実際のモータ回転数との偏差に基づく比例積分制御(PI制御)によって、下式に従い印加電圧(入力電圧)の指令値を決定する。
印加電圧=回転数偏差*比例ゲイン+回転数偏差積分値*積分ゲイン
回転数偏差=目標回転数−実回転数
また、目標値に実際値を近づけるための印加電圧の演算処理を、比例積分制御に限定するものではなく、比例積分微分制御(PID制御)など公知の演算処理方法を適宜採用できる。
制御ユニット213のA/D変換器213aは、非通電相の電圧のアナログ信号をデジタル信号に変換し、制御ユニット213のマイコン213bは、A/D変換器213aから出力されるデジタル信号としての電圧値と閾値とを比較して通電モードの切り替え制御を行う。
図5には、回転子角度位置が330degから30degまでの間の通電モード(3)、回転子角度位置が30degから90degまでの間の通電モード(4)、回転子角度位置が90degから150degまでの間の通電モード(5)それぞれにおける各相の電圧を示してある。また、図5に示す例では、パルス幅変調制御における出力周波数(PWM出力周波数)を12kHzとする。
つまり、PWM出力のオン中にA/D変換器213aにおけるサンプリングを行わせる必要があり、A/D変換器213aのサンプリング周期を、PWM出力周期83.3μs(12kHz)に同期させる。
図6に示す例では、PWM制御においてキャリア周期毎に増減を繰り返すPWMカウンタの谷、換言すれば、PWMカウンタ値が減少から増大に転じる点であってパルス印加電圧のパルス幅の中央付近(時刻t1、t3、t5、t7)を、電圧のA/D変換タイミング(A/D変換の開始タイミング)とする。
そして、制御ユニット213は、例えば、変換タイミングからPWM出力周期の半周期後であるPWMカウンタの山(時刻t2、t4、t6)毎の割り込み処理によって、最新の非通電相の電圧検出値のデジタルデータを読み込んで、センサレスによる矩形波駆動制御(以下、低速センサレス制御という)を実施する。
この場合、処理周期(83.3μs=PWM出力周期)に占める低速センサレス制御の処理時間の割合が高く、低速センサレス制御の処理以外の処理(以下、他の処理という)が滞る場合がある。
つまり、制御ユニット213は、PWM出力周期に同期する処理タイミングになっても、低速センサレス制御の処理を実施しない場合を設定することで、処理タイミング毎に低速センサレス制御を実施する場合よりも実施頻度を低下させ、低速センサレス制御の処理のための負担を軽減し、その分他の処理を実行できるようにする。
また、他の処理が滞ることで他のユニットへの信号送信が遅れ、制御ユニット213の故障が他のユニットにおいて誤って検出されたり、他のユニットからの信号受信が遅れることで、制御遅れが生じたりすることを抑制できる。
まず、ステップS101において、制御ユニット213は、低速センサレス制御の処理タイミングであるか否かを、間引きカウンタCT(間引きカウンタCT≧0)に基づき検出する。
一方、制御ユニット213は、間引きカウンタCT≠0であるときに低速センサレス制御を休止する間引きタイミングを検出し、間引きタイミングである場合は、ステップS102にて、間引きカウンタCTの値を1だけ減少させる処理を実施する。
なお、間引き回数n≧0であり、間引き回数n=0は、PWM出力周期に同期する処理タイミング毎に低速センサレス制御を実施することを示し、係る状態は、間引きがキャンセルされた状態であって、間引き回数nが増加するほど低速センサレス制御の実施頻度が低下することになる。
つまり、n=1の場合、低速センサレス制御を実施すると、次のPWM出力周期では低速センサレス制御が休止され(間引かれ)、次の次のPWM出力周期で低速センサレス制御を実施することを繰り返し、PWM出力周期(処理タイミング)の2回に1回の割合で低速センサレス制御が実施されることになる。
換言すれば、制御ユニット213が間引き機能を実施した場合、低速センサレス制御の実施周期は、PWM出力周期のN倍に延びることになる。
そこで、制御ユニット213は、ブラシレスモータ2の低速センサレス制御の制御性への影響を十分に小さくでき、かつ、他の処理の実施に十分な時間が確保できるような間引き回数n(制御要求頻度)を設定する。
制御ユニット213は、ステップS101で間引きカウンタCT=0を検出すると、ステップS103にて、そのときの非通電相の電圧検出値であるA/D変換データの受取り処理(電圧計測処理)を実施し、次いで、ステップS104にて、A/D変換データ(実パルス誘起電圧)と閾値との比較処理(回転子位置の推定処理)を実施し、ステップS105にて、PWM出力パターン(通電モード、パルス幅)の決定処理を行う。
制御ユニット213は、ステップS103〜ステップS105にて低速センサレス制御を実施すると、ステップS106で、間引きカウンタCTの値を0から間引き回数nにリセットする処理を行う。
例えば、ブラシレスモータ2の最大回転数(rpm)が3000rpmで、モータ極対数が3で、通電モードが6パターンであるとすると、最大回転数での通電モードの切り替え間隔Tmc(μs)は、Tmc=60÷3000÷6÷3=1111.1(μs)となる。
そして、PWM出力周期を83.3μsとすると、最大回転数での通電モードの切り替え間隔TmcにおけるPWM出力回数(=処理タイミング)は13.3回となり、間引きを行わない場合、低速センサレス制御の処理を13回実施できることになる。
そして、最大回転数であるときの13回のPWM出力回数のうちで、4回だけ低速センサレス制御を実施させるとすると、PWM出力周期の3回に1回の割合で低速センサレス制御を実施することになり、この場合の間引き回数nは2となる。つまり、間引き回数n=2は、3000rpmにおける低速センサレス制御の実施頻度の要求(制御要求頻度)を示すことになり、この間引き回数n以下であれば、低速センサレス制御を必要最低回数以上実施させることができる。
上記の設定方法に基づくモータ回転速度に対する間引き回数n(制御要求頻度)の設定例を表1に示す。
なお、間引き回数nの設定に用いるモータ回転速度を、実モータ回転速度と目標モータ回転速度との高い方とすることで、モータ回転速度の過渡状態などにおいても必要な最小実施回数だけ低速センサレス制御を実施させることができる。
図8に示す間引き回数n=1とした間引きでは、制御ユニット213は、PWM出力周期の2回に1回の割合で低速センサレス制御を実施し、低速センサレス制御を実施した周期(時刻t1)で通電モードの切り替えを行う角度位置を検出すると、通電モードを次の通電モードに切り替える処理を実行し、切り替え後の通電モードに従ってPWM出力パターンを決定する。
A/D変換器213aは、PWMカウンタの谷(時刻t1、t3、t5、t7)毎にマイコン213bから出力される変換トリガ信号に基づき、電圧のサンプリング(A/D変換)を実施する。
そして、例えば、PWMカウンタの山(時刻t2、t6)を開始タイミングとして低速センサレス制御を実施すると、低速センサレス制御を終了したタイミング(時刻t3A)から、次にPWMカウンタの山が検出されるまでの間(時刻t3A〜時刻t4)、他の処理を実施する。
換言すれば、低速センサレス制御をPWM出力周期の2回に1回の割合で実施することで、PWM出力周期の2回に1回の割合で他の処理が十分な処理時間で実施されることになり、他の処理が滞ることを抑制できる。
第2の実施形態は、処理タイミングにおける低速センサレス制御の実施頻度、つまり、間引き回数nの値を、通電モードの切り替え周期の間で変更する点が、第1の実施形態と異なる。
これにより、通電モードの切り替えタイミングに近づく前は、制御ユニット213の処理負荷を軽減して他の処理を進めることができ、また、通電モードの切り替えタイミングが近づくと低速センサレス制御の実施周期が短くなるから、通電モードの切り替えタイミングの検出遅れを抑制できる。
一方、制御ユニット213は、ステップS203〜ステップS205にて低速センサレス制御を実施すると、ステップS206以降で第2の実施形態の特徴となる処理を行う。
頻度切り替え閾値Vfcは、通電モードの切り替えタイミングの検出に用いる閾値Vmcがプラスの電圧であれば、閾値Vmcよりも所定値だけ低い電圧に設定され、閾値Vmcがマイナスの電圧であれば、閾値Vmcよりも所定値だけ高い電圧に設定される。換言すれば、頻度切り替え閾値Vfcの絶対値は、通電モードの切り替えタイミングの検出に用いる閾値Vmcの絶対値よりも小さく、通電モードの切り替え後に非通電相の電圧が閾値Vmcに達する前に達する電圧である。
一方、非通電相の電圧が頻度切り替え閾値Vfcに達した後であって通電モードの切り替え判定用の閾値Vmcに達するまでの間である場合(Vfc≦非通電相の電圧<Vmc、若しくは、Vmc<非通電相の電圧≦Vfc)、制御ユニット213は、ステップS208にて間引きカウンタCTに間引き回数n2をセットする。ここで、n1>n2≧0であり、例えば、n1=2、n2=0とすることができる。
また、通電モードの切り替えタイミングに近づく前は、低速センサレス制御の実施頻度を低くても、通電モードの切り替えタイミングの検出が遅れることにはならず、他の処理を進められることになる。
なお、間引き回数n2は、通電モードの切り替えタイミングの検出遅れを十分に小さくすることができる値として設定され、間引き回数n1は、モータ制御に影響を与えず、他の処理を十分に進められる値として設定される。
図11に示した例では、通電モードの切り替えを行ったときに(時刻t1、時刻t3)、間引き回数nがn=n1=1に設定され、低速センサレス制御を実施すると、次の処理周期で低速センサレス制御を休止することを繰り返す。ここで、低速センサレス制御が休止されるPWM出力周期においては、制御ユニット213の処理負荷が軽減され他の処理を進められることになる。
また、図12(A)のタイムチャートは、図10のフローチャートに示し処理を制御ユニット213が実施した場合における非通電相の電圧と、低速センサレス制御の実施タイミングとの相関を、n1=2、n2=0とした場合を例として示す。
図12(A)は、非通電相の電圧が通電モードの切り替えタイミングに近づくに従って低下し、閾値Vmcにまで低下したときに切り替えタイミングが検出される例であり、頻度切り替え閾値Vfcは、通電モードの切り替え判定用の閾値Vmcよりも高い値に設定してある。
一方、図12(B)には、非通電相の電圧と頻度切り替え閾値Vfcとの比較に基づく間引き回数nの変更を行わずに、間引き回数nをn=n1=2に固定した場合を例示してある。
これに対し、図12(A)に示すように、通電モードの切り替えタイミングに近づいたときに間引き回数nを減少させて例えば間引き回数n=0にすれば、非通電相の電圧がサンプリングされる毎に低速センサレス制御が実施されるから、通電モードの切り替えタイミングの遅れを抑制でき、時刻t3にて通電モードの切り替えを実施することができる。
モータ回転速度が高い場合には非通電相の電圧の変化速度が速くなり、頻度切り替え閾値を一定とすると、頻度切り替え閾値Vfcに非通電相の電圧が達してから通電モードの切り替え判定用の閾値Vmcに達するまでの時間が、低回転速度であるときに比べて短くなり、頻度を上げた状態で低速センサレス制御を十分な回数実施できずに、ブラシレスモータ2の制御性が低下する可能性がある。
そこで、モータ回転速度が高いほど、頻度切り替え閾値Vfcと通電モードの切り替え判定用の閾値Vmcとの差ΔVを拡大し、換言すれば、頻度切り替え閾値Vfcの絶対値をより小さく変更し、モータ回転速度が高くなっても、非通電相の電圧が頻度切り替え閾値Vfcに達してからの低速センサレス制御の実施回数が所定回数を超えるようにする。
図13(A)のモータ回転速度が低い状態では、時刻t1で通電モードの切り替えを行った後、時刻t4で非通電相の電圧が低回転用の頻度切り替え閾値Vfcに達し、間引き回数nがn1からn2に切り替えられ、更に、その後の時刻t5にて非通電相の電圧が通電モードの切り替え判定用の閾値Vmcに達することで、通電モードへの切り替えが行われる。
ここで、図13(B)の例では、時刻t2で非通電相の電圧が高回転用の頻度切り替え閾値Vfcに達し、時刻t2にて間引き回数nが2から0に切り替えられ、更に、時刻t3にて非通電相の電圧が通電モードの切り替え判定用の閾値Vmcに達したことが検出されて、通電モードの切り替えが実施される。
なお、間引き回数n1、n2の値は、一定値とすることができ、また、第1の実施形態と同様に、モータ回転速度に応じて可変に設定することができる。
第3の実施形態は、第2実施形態と同様に、通電モードの切り替えを行った後、次の通電モードの切り替えタイミングに近づくと、低速センサレス制御の実施頻度を増加させる(間引き回数nの値を減少させる)が、第3の実施形態では、次の通電モードの切り替えタイミングに近づいたことを前回の通電モードの切り替えからの経過時間に基づいて検出する点が異なる。
これにより、通電モードの切り替えタイミングの検出遅れを抑制しつつ、他の処理を進めることができる。
一方、制御ユニット213は、ステップS303〜ステップS305において低速センサレス制御を実施すると、ステップS306以降で、第3の実施形態の特徴となる処理を行う。
前回の通電モードの切り替えタイミングから次の通電モードの切り替えタイミングまでの予測時間Tmcは、そのときのモータ回転速度と、通電モードの切り替え周期の回転角度とから演算することができ、この通電モードの切り替え周期時間Tmcよりも所定時間ΔTだけ短い時間を頻度切り替え時間Tfcとする。
制御ユニット213は、ステップS306にて、前回の通電モードの切り替えタイミングからの経過時間Tが頻度切り替え時間Tfcに達していないことを検出すると、ステップS307にて、通電モードの切り替えを行った後に非通電相の電圧が低速センサレス制御の実施頻度(間引き回数nの値)を変更するための頻度切り替え閾値Vfcに達したか否かを検出する。
一方、非通電相の電圧が頻度切り替え閾値Vfcに達した後である場合、制御ユニット213は、ステップS309にて、間引きカウンタCTに間引き回数n4をセットする。ここで、n3>n4≧1であり、例えば、n3=2、n4=1とすることができる。
一方、制御ユニット213は、ステップS306にて、前回の通電モードの切り替えタイミングからの経過時間Tが頻度切り替え時間Tfcに達したことを検出すると、ステップS310にて、間引きカウンタCTに間引き回数n5をセットする。ここで、n3>n4>n5≧0であり、例えば、n3=2、n4=1、n5=0とすることができる。
なお、上記の第3の実施形態においても、n3、n4、n5の値、及び、頻度切り替え閾値Vfcを、モータ回転速度に応じて可変に設定することができる。
図15に示した例では、通電モードの切り替えを行ったとき(時刻t1)に、間引き回数nがn=n3=2に設定され、低速センサレス制御を実施すると、次の周期及び次の次ぎの周期で低速センサレス制御を連続して休止することを繰り返す。ここで、低速センサレス制御が休止されるPWM出力周期においては、制御ユニット213の処理負荷を軽減して他の処理を進められることになる。
間引き回数n=n3=2の状態で、非通電相の電圧が頻度切り替え閾値Vfcに達したことが検出されると(時刻t2)、間引き回数nがn=n4=1に切り替えられ、PWM出力周期毎に低速センサレス制御の実施と休止とを繰り返すようにし、低速センサレス制御の実施頻度を上げて、通電モードの切り替えに備える。
つまり、間引き回数nの切り替えを、頻度切り替え閾値Vfcを用いずに、頻度切り替え時間Tfcに基づき行わせることができ、更に、頻度切り替え時間Tfcとして長さの異なる複数の時間を設定し、前回の通電モードの切り替えタイミングからの経過時間Tが長くなるに従って、間引き回数nの減少方向の切り替えを2回以上実施させることができる。
例えば、モータ回転数(rpm)が1000rpmであるとき、モータ極対数が3で、通電モードが6パターンであるとすると、通電パターンの切り替え間隔Tmc(μs)は、Tmc=60÷3000÷6÷3=3333.3(μs)となる。
そして、PWM出力周期を83.3μsとすると、1000rpmでの通電パターンの切り替え間隔TmcにおけるPWM出力回数は40回となり、前回通電モードの切り替えを行ってからPWM出力周期40回で、通電モードの切り替えタイミングとなる。
この場合、間引き回数n=5の状態で通電モードの切り替えタイミングになる前に頻度切り替え時間Tfcに達したことを検出させるためには、通電モードの切り替えタイミングから、間引き回数n=5での低速センサレス制御の実施周期(PWM出力周期×(n+1))以上手前を、頻度切り替え時間Tfcだけ経過した時点とする必要がある。
これにより、通電モードの切り替えタイミングが検出される前に、頻度切り替え時間Tfcの経過を検出させ、間引き回数nを減じた後に通電モードの切り替えタイミングを検出させることができ、切り替えタイミングの検出遅れを抑制しつつ、低速センサレス制御の間引きを実施できる。
また、実モータ回転速度と目標モータ回転速度との乖離が大きい場合や、ブラシレスモータ2の起動時など、次回の通電モードの切り替えタイミングまでの時間の予測精度が大きく低下する場合、誤って頻度切り替え時間Tfcを過剰に短く設定すると、間引き回数nの減少設定が過剰に早まることで、低速センサレス制御の処理で他の処理が進まない処理負荷の高い状態が長く継続することになる。
このため、第3実施形態のように、頻度切り替え時間Tfcの経過に基づき間引き回数nを減少させる場合には、間引き回数nを減少させてからモータ停止(脱調)が検出されるまでの時間が長く、この間、低速センサレス制御が短い周期で繰り返し実施されることで、他の処理が進まない処理負荷の高い状態が続くことになる。
図17は、通電モードの切り替え直後は間引き回数nが2に設定され、この間引き回数n=2の状態での時刻t1にて脱調が発生した例である。
ここで、脱調によってモータが停止しており、間引き回数nを0に減少させた後も非通電相の電圧は変化せず閾値Vmcに達しないので、通電モードの切り替えが行われず、従って、間引き回数nを2に戻す処理も行われない。結果、モータ停止(脱調)が検出されるまで、間引き回数nを0とする状態が継続されることになる。
なお、図18のフローチャートにおいて、ステップS401〜ステップS405では、図14のフローチャートのステップS301〜ステップS305と同様な処理を行い、ステップS407〜ステップS411では、図14のフローチャートのステップS306〜ステップS310と同様な処理を行う。
図18のフローチャートに示すルーチンでは、制御ユニット213は、低速センサレス制御(ステップS403〜ステップS405)を実施する毎に、ステップS406にて、予測される通電モードの切り替えタイミングを過ぎてから所定時間が経過したか否かを検出する。
モータ回転速度の変動や切り替えタイミングの検出遅れなどがあったとしても、ブラシレスモータ2が脱調することなく回転していれば、時間Tes+所定時間Tαが経過する前に非通電相の電圧に基づき通電モードの切り替えタイミングが検出されるように、所定時間Tαを設定する。
一方、前回の切り替えタイミングから時間Tes+所定時間Tαが経過しても、非通電相の電圧に基づき通電モードの切り替えタイミングが検出されない場合、制御ユニット213は、ステップS412にて、間引き回数nをn3(図17に示す例では、n3=2)、つまり、通電モードの切り替え直後での間引き回数nに戻す制御を行う。
これにより、制御ユニット213がモータ停止(脱調)を検知するまで、制御ユニット213の処理負荷が低い間引き回数n=n3の状態に保持されることになり、処理負荷が高い状態に保持され他の処理が進まない状態が継続することを抑制できる。
また、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
例えば、モータ回転速度が所定速度を超える場合には、低速センサレス制御の間引きを停止し(通電モードの切り替え周期の全期間で間引き回数nを0とし)、PWM出力周期毎に低速センサレス制御を実施することとし、モータ回転速度が前記所定速度を下回る場合に、低速センサレス制御の間引きを実施することができる。
また、例えば、間引き回数nを2とするときに、平均としてPWM出力周期の3回に1回の割合で低速センサレス制御を行わせることができ、例えば、2回連続で低速センサレス制御を行わせた後、4回連続で低速センサレス制御を休止させることができる。
また、通電モードの切り替えタイミングの手前で間引き回数nを0に設定した場合、通電モードの切り替え直後の複数回の処理タイミングを他の処理の実施期間として定め、間引き回数nの設定に関わらず、低速センサレス制御を休止させることができる。
(イ)
パルス幅変調信号に応じたパルス電圧を印加する相を非通電相に誘起されるパルス誘起電圧に基づく位置情報に応じて切り替えてブラシレスモータを駆動するセンサレス制御を実施する、ブラシレスモータの制御装置であって、
前記パルス幅変調の出力周期に同期する処理タイミングでの前記センサレス制御の処理の実施頻度を、前記ブラシレスモータの回転速度に応じて変更する、ブラシレスモータの制御装置。
上記発明によると、ブラシレスモータの回転速度が増加することで、パルス電圧を印加する相の切り替え周期における処理タイミングの回数が減り、センサレス制御の処理の実施頻度が一定であると、前記切り替え周期におけるセンサレス制御の処理の実施回数が減る。そこで、ブラシレスモータの回転速度に応じて実施頻度を変更して、前記切り替え周期におけるセンサレス制御の処理の実施回数を調整する。
パルス幅変調信号に応じたパルス電圧を印加する相を非通電相に誘起されるパルス誘起電圧に基づく位置情報に応じて切り替えてブラシレスモータを駆動するセンサレス制御を実施する、ブラシレスモータの制御装置であって、
前記パルス幅変調の出力周期に同期する処理タイミングでの前記センサレス制御の処理の実施頻度を、前記パルス電圧を印加する相を切り替えてからの経過時間に基づき増加させるとともに、前記実施頻度の増加タイミングを前記ブラシレスモータの回転速度に応じて変更する、ブラシレスモータの制御装置。
上記発明によると、ブラシレスモータの回転速度が変化することで、センサレス制御の処理を所定回数だけ実施するのに要する時間が変化するので、経過時間に基づく実施頻度の増加タイミングをブラシレスモータの回転速度に応じて変更することで、実施頻度を増加させた後でのセンサレス制御の処理を所定回数以上に保持することが可能となる。
パルス幅変調信号に応じたパルス電圧を印加する相を非通電相に誘起されるパルス誘起電圧に基づく位置情報に応じて切り替えてブラシレスモータを駆動するセンサレス制御を実施する、ブラシレスモータの制御装置であって、
前記パルス幅変調の出力周期に同期する処理タイミングでの前記センサレス制御の処理の実施頻度を、前記パルス電圧を印加する相を切り替えてからの前記パルス誘起電圧に基づき増加させるとともに、前記実施頻度の増加タイミングを前記ブラシレスモータの回転速度に応じて変更する、ブラシレスモータの制御装置。
上記発明によると、ブラシレスモータの回転速度が高くなることで、パルス誘起電圧の変化速度が速くなるので、パルス誘起電圧に基づく前記実施頻度の増加タイミングを前記ブラシレスモータの回転速度に応じて変更することで、実施頻度を増加させた後でのセンサレス制御の処理を所定回数以上に保持することが可能となる。
パルス幅変調信号に応じたパルス電圧を印加する相を非通電相に誘起されるパルス誘起電圧に基づく位置情報に応じて切り替えてブラシレスモータを駆動するセンサレス制御を実施する、ブラシレスモータの制御装置であって、
前記パルス幅変調の出力周期に同期する処理タイミングでの前記センサレス制御の処理の実施頻度を、前記パルス電圧を印加する相を切り替えるタイミングに近づくにしたがって増加させるとともに、
前記パルス電圧を印加する相の切り替えが所定時間を超えて行われないときに、前記実施頻度を減少させる、ブラシレスモータの制御装置。
上記発明によると、ブラシレスモータの脱調が発生してブラシレスモータが停止すると、パルス電圧を印加する相の切り替えタイミングを検出できず、センサレス制御の処理の実施頻度が増加させた状態のまま保持されることになってしまうので、パルス電圧を印加する相の切り替えが所定時間を超えて行われないときには、脱調の可能性があるものとして実施頻度を減少させ、センサレス制御の処理負荷を軽減させる。
Claims (3)
- パルス幅変調信号に応じたパルス電圧を印加する相を非通電相に誘起されるパルス誘起電圧に基づく位置情報に応じて切り替えてブラシレスモータを駆動するセンサレス制御を実施する、ブラシレスモータの制御装置であって、
前記制御装置は、前記パルス幅変調の出力周期に同期する処理タイミングでの前記センサレス制御の処理の実施頻度を、前記パルス電圧を印加する相を切り替える切り替えタイミングで所定頻度に設定し、次の切り替えタイミングに近づくにしたがって前記所定頻度から増加させることを繰り返す、ブラシレスモータの制御装置。 - 前記制御装置は、切り替えタイミングからの経過時間が設定時間に達したとき、又は、切り替えタイミング後に前記パルス誘起電圧が設定電圧に達したときに、前記実施頻度を増加させる、請求項1記載のブラシレスモータの制御装置。
- 前記制御装置は、前記設定時間又は前記設定電圧を、前記ブラシレスモータの回転速度が高くなるほど、前記実施頻度を増加させるタイミングが早くなる方向に変更する、請求項2記載のブラシレスモータの制御装置。
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