JP2011200058A - ブラシレスモータの駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】非通電相の電圧の検出値が電圧閾値を横切ったときに、通電モードを順次切り替えるセンサレスの駆動装置において、初期位置にモータを停止させた状態から通電モードに基づく相通電を行ってモータを回転させ、該回転中における非通電相の電圧の最大値又は最小値から、通電モードの切替角度位置における非通電相の電圧を検出し、該検出した電圧に基づいて前記電圧閾値を学習する。
【選択図】図5
Description
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、モータ(巻線)のばらつきや温度環境などに因る通電モードの切り替えタイミングのずれを抑制でき、以って、効率の低下や脱調の発生を抑制できるブラシレスモータの駆動装置を提供することを目的とする。
図1は、本願発明に係るブラシレスモータの駆動装置を適用する、自動車AT(オートマチック・トランスミッション)用油圧ポンプシステムの構成を示すブロック図である。
図1に示す自動車AT用油圧ポンプシステムでは、変速機7やアクチュエータ8にオイルを供給するオイルポンプとして、図外のエンジン(内燃機関)の出力により駆動される機械式オイルポンプ6と、モータで駆動される電動オイルポンプ1とを備えている。
モータ制御装置(駆動装置)3は、ブラシレスモータ2を駆動制御して電動オイルポンプ1を駆動し、オイルパン10のオイルを、電動オイル配管5を介して変速機7やアクチュエータ8に供給する。
エンジンがアイドルストップすると、エンジン回転速度が低下し、機械式オイルポンプ6も回転速度が低下してオイル配管9の油圧が低下するので、エンジンのアイドルストップと同時に、AT制御装置4がモータ起動の指令をモータ制御装置3に送信する。
機械式オイルポンプ6の油圧が低下し、逆止弁11により阻止されていた電動オイルポンプ1の油圧が閾値を越えると、オイルは電動オイル配管5、電動オイルポンプ1、逆止弁11、変速機7・アクチェータ8、オイルパン10の経路を通って循環する動作を行う。
モータ制御装置3は、モータ駆動回路212と、マイクロコンピュータを備えた制御器213とを含んで構成され、制御器213がAT制御装置4との間で通信を行う。
ブラシレスモータ2は、3相DCブラシレスモータ(3相同期電動機)であり、U相,V相及びW相の3相巻線215U,215V,215Wが、図示省略した円筒状の固定子に設けられ、該固定子の中央部に形成された空間に永久磁石回転子216が配置される。
スイッチング素子217a〜217fの制御端子(ゲート端子)は、制御器213に接続されており、スイッチング素子217a〜217fのオン・オフは、制御器213によってデューティ制御される。
PWM発生器251は、指令トルクに応じて決定される印加電圧指令(指令電圧)に基づき、パルス幅変調されたPWM波を生成する回路である。
ゲート信号切替器252は、モータ駆動回路212の各スイッチング素子217a〜217fがどのような動作でスイッチングするかを、通電モード決定器253の出力であるモード指令信号に基づいて決定し、該決定に従い、最終的な6つのゲートパルス信号をモータ駆動回路212に出力する。
非通電相電圧選択器257は、ブラシレスモータ2の3相端子電圧Vu,Vv,Vwの中から非通電相の電圧をモード指令信号に従い選択して出力する回路であり、前記端子電圧は、ブラシレスモータ2の中性点に対する電位差として出力される。
尚、誘起電圧は、2相の印加パルス電圧によって非通電相に誘起される電圧であり、回転子の位置により磁気回路の飽和状態が変化することから、回転子の位置に応じた誘起電圧が非通電相に発生することになり、非通電相の誘起電圧から、回転子位置を推定して、通電モードの切り替えタイミングを検出することができる。
通電モードは、電気角60degごとに順次切り替わる6通りの通電モード(1)〜(6)からなり、各通電モード(1)〜(6)においてスイッチング素子217a〜217fは、指令電圧に応じてパルス幅変調した信号で駆動される。
本実施形態では、U相のコイルの角度位置を基準位置(deg)とし、通電モード(3)から通電モード(4)への切り替えを行う角度位置を30degに、通電モード(4)から通電モード(5)への切り替えを行う角度位置を90degに、通電モード(5)から通電モード(6)への切り替えを行う角度位置を150degに、通電モード(6)から通電モード(1)への切り替えを行う角度位置を210degに、通電モード(1)から通電モード(2)への切り替えを行う角度位置を270degに、通電モード(2)から通電モード(3)への切り替えを行う角度位置を330degに設定している。
通電モード(2)は、スイッチング素子217a及びスイッチング素子217fをオン制御し、他を全てオフとすることで、U相に電圧Vを印加し、W相に電圧−Vを印加し、U相からW相に向けて電流を流す。
通電モード(4)は、スイッチング素子217b及びスイッチング素子217cをオン制御し、他を全てオフとすることで、V相に電圧Vを印加し、U相に電圧−Vを印加し、V相からU相に向けて電流を流す。
通電モード(6)は、スイッチング素子217e及びスイッチング素子217dをオン制御し、他を全てオフとすることで、W相に電圧Vを印加し、V相に電圧−Vを印加し、W相からV相に向けて電流を流す。
前記通電モードの切り替えを、本実施形態では、非通電相に発生する電圧(誘起電圧)の信号をトリガに行うようになっており、本実施形態のモータ制御装置3は、所謂位置センサレスの通電制御を行う。
そこで、本実施形態では、前記電圧閾値を更新学習する電圧閾値学習器256(電圧閾値設定手段)を設け、温度環境やブラシレスモータ2のばらつきなどに対して、電圧閾値を適正値に修正し、修正結果を更新記憶して用いるように構成されていて、以下では、電圧閾値学習器256における電圧閾値の学習処理を詳細に説明する。
ステップ1では、通電モード(3)から通電モード(4)への切り替え判定に用いる電圧閾値を学習し、ステップ2は、通電モード(4)から通電モード(5)への切り替え判定に用いる電圧閾値を学習し、ステップ3は、通電モード(5)から通電モード(6)への切り替え判定に用いる電圧閾値を学習し、ステップ4は、通電モード(6)から通電モード(1)への切り替え判定に用いる電圧閾値を学習し、ステップ5は、通電モード(1)から通電モード(2)への切り替え判定に用いる電圧閾値を学習し、ステップ6は、通電モード(2)から通電モード(3)への切り替え判定に用いる電圧閾値を学習する。但し、各電圧閾値の学習順は任意であり、適宜変更することができる。
まず、ステップ11では、永久磁石回転子216を、初期位置(設定角度0deg)に位置決めする。
具体的には、予め決められた電圧Vinに基づき、U相,V相及びW相に対する印加電圧Vu,Vv,Vwを、Vu=Vin、Vv=−Vin*1/2、Vw=−Vin*1/2に設定する。
尚、前記初期位置は、通電モード(3)から通電モード(4)への切り替え角度=30degの30deg前の角度位置である0degに設定してあり、ステップ2〜ステップ6における学習においても、通電モードの切り替え角度の30deg前の角度位置を、初期位置とする。
ステップ13では、図8(A)に示すように、初期位置とするための印加電圧から通電モード(3)に対応する印加電圧に切り替えた直後における、通電モード(3)での開放相(非通電相)であるU相の端子電圧Vuを、開放相電圧V1-30として記憶する。
前記最小電圧検出時間は、通電モード(3)に対応する印加電圧に切り替えることで低下し、その後上昇に転じて定常電圧に収束するU相の端子電圧Vuの変化特性に基づき、最小電圧を検出するのに必要十分な時間として予め適合されている。
ステップ15では、通電モード(3)から通電モード(4)への切り替え判断に用いる電圧閾値V3-4を、以下の数1又は数2に従って算出する。
通電モード(3)から通電モード(4)への切り替え時の角度は30degであり、通電モード(3)での通電状態で、角度30degになるときの開放相(U相)の端子電圧Vuを、通電モード(3)での通電で0degから90degに向けてモータが回転するときの端子電圧Vuの変化に基づいて推定するものである。
通電モード(3)から通電モード(4)への切り替えタイミングの判断においては、通電モード(3)による通電中に、開放相(U相)の端子電圧Vuが、電圧閾値V3-4を下回った時点で、モータ角度が30deg付近であると推定し、通電モードを(3)から(4)に切り替える。
また、新たに算出した電圧閾値Vが、標準値(設計値)を含む正常範囲から外れている場合には、それまでの電圧閾値Vの記憶値を更新することなく、前回値のままに保持させるとよい。
次に、ステップ2における、通電モード(4)から通電モード(5)への切り替え判定に用いる電圧閾値V4-5の学習を、詳述する。
まず、ステップ21では、永久磁石回転子216を、初期位置(設定角度60deg)に位置決めする。
上記のように各相の印加電圧を設定すると、U相,V相及びW相の合成磁束が、図9(A)に示すようになり、係る合成磁束に永久磁石回転子216が引かれることでトルクが発生し、永久磁石回転子216のN極が、設定角度60degまで回転することになる。
ステップ23では、図10(A)に示すように、初期位置とするための印加電圧から通電モード(4)に対応する印加電圧に切り替えた直後における、通電モード(4)での開放相(非通電相)であるW相の端子電圧Vwを、開放相電圧V1-90として記憶する。
前記最大電圧検出時間は、通電モード(4)に対応する印加電圧に切り替えることで増大し、その後減少に転じて定常電圧に収束するW相の端子電圧Vwの変化特性に基づき、最大電圧を検出するのに必要十分な時間として、予め適合されている。
ステップ25では、通電モード(4)から通電モード(5)への切り替え判断に用いる電圧閾値V4-5を、以下の数3又は数4に従って算出する。
通電モード(4)から通電モード(5)への切り替え時の角度は90degであり、通電モード(4)での通電状態で、角度90degになるときの開放相(W相)の端子電圧Vwを、通電モード(4)での通電で60degから150degに向けてモータが回転するときの端子電圧Vwの変化に基づいて推定するものである。
通電モード(4)から通電モード(5)への切り替えタイミングの判断においては、通電モード(4)による通電中に、開放相(W相)の端子電圧Vwが、電圧閾値V4-5よりも大きくなった時点で、モータ角度が90deg付近であると推定し、通電モードを(4)から(5)に切り替える。
まず、ステップ31では、永久磁石回転子216を、初期位置(設定角度120deg)に位置決めする。
具体的には、予め決められた電圧Vinに基づき、U相,V相及びW相に対する印加電圧Vu,Vv,Vwを、Vu=−Vin*1/2、Vv=Vin、Vw=−Vin*1/2に設定する。
ステップ32では、ステップ31でU相,V相及びW相に対する印加電圧Vu,Vv,Vwを設定した後、永久磁石回転子216のN極が設定角度に到達するのに要すると見込まれる動作遅れ時間が経過していて、初期位置に停止したものと推定できるようになってから、通電モード(5)に対応する印加電圧、即ち、Vu=−Vin、Vv=0、Vw=Vinに切り替える。
ステップ33では、図12(A)に示すように、初期位置とするための印加電圧から通電モード(5)に対応する印加電圧に切り替えた直後における、通電モード(5)での開放相(非通電相)であるV相の端子電圧Vvを、開放相電圧V1-150として記憶する。
前記最小電圧検出時間は、通電モード(5)に対応する印加電圧に切り替えることで低下し、その後上昇に転じて定常電圧に収束するV相の端子電圧Vvの変化特性に基づき、最小電圧を検出するのに必要十分な時間として、予め適合されている。
ステップ35では、通電モード(5)から通電モード(6)への切り替え判断に用いる電圧閾値V5-6を、以下の数5又は数6に従って算出する。
通電モード(5)から通電モード(6)への切り替え時の角度は150degであり、通電モード(5)での通電状態で、角度150degになるときの開放相(V相)の端子電圧Vvを、通電モード(5)での通電で120degから210degに向けてモータが回転するときの端子電圧Vvの変化に基づいて推定するものである。
通電モード(5)から通電モード(6)への切り替えタイミングの判断においては、通電モード(5)による通電中に、開放相(V相)の端子電圧Vvが、電圧閾値V5-6を下回った時点で、モータ角度が150deg付近であると推定し、通電モードを(5)から(6)に切り替える。
まず、ステップ41では、永久磁石回転子216を、初期位置(設定角度180deg)に位置決めする。
具体的には、予め決められた電圧Vinに基づき、U相,V相及びW相に対する印加電圧Vu,Vv,Vwを、Vu=−Vin、Vv=Vin*1/2、Vw=Vin*1/2に設定する。
ステップ42では、ステップ41でU相,V相及びW相に対する印加電圧Vu,Vv,Vwを設定した後、永久磁石回転子216のN極が設定角度に到達するのに要すると見込まれる動作遅れ時間が経過していて、初期位置に停止したものと推定できるようになってから、通電モード(6)に対応する印加電圧、即ち、Vu=0、Vv=−Vin、Vw=Vinに切り替える。
ステップ43では、図14(A)に示すように、初期位置とするための印加電圧から通電モード(6)に対応する印加電圧に切り替えた直後における、通電モード(6)での開放相(非通電相)であるU相の端子電圧Vuを、開放相電圧V1-210として記憶する。
前記最大電圧検出時間は、通電モード(6)に対応する印加電圧に切り替えることで増大し、その後減少に転じて定常電圧に収束するU相の端子電圧Vuの変化特性に基づき、最大電圧を検出するのに必要十分な時間として、予め適合されている。
ステップ45では、通電モード(6)から通電モード(1)への切り替え判断に用いる電圧閾値V6-1を、以下の数7又は数8に従って算出する。
通電モード(6)から通電モード(1)への切り替え時の角度は210degであり、通電モード(6)での通電状態で、角度210degになるときの開放相(U相)の端子電圧Vuを、通電モード(6)での通電で180degから270degに向けてモータが回転するときの端子電圧Vuの変化に基づいて推定するものである。
通電モード(6)から通電モード(1)への切り替えタイミングの判断においては、通電モード(6)による通電中に、開放相(U相)の端子電圧Vuが、電圧閾値V6-1よりも大きくなった時点で、モータ角度が210deg付近であると推定し、通電モードを(6)から(1)に切り替える。
まず、ステップ51では、永久磁石回転子216を、初期位置(設定角度240deg)に位置決めする。
具体的には、予め決められた電圧Vinに基づき、U相,V相及びW相に対する印加電圧Vu,Vv,Vwを、Vu=−Vin*1/2、Vv=−Vin*1/2、Vw=Vinに設定する。
ステップ52では、ステップ51でU相,V相及びW相に対する印加電圧Vu,Vv,Vwを設定した後、永久磁石回転子216のN極が設定角度に到達するのに要すると見込まれる動作遅れ時間が経過していて、初期位置に停止したものと推定できるようになってから、通電モード(1)に対応する印加電圧、即ち、Vu=Vin、Vv=−Vin、Vw=0に切り替える。
ステップ53では、図16(A)に示すように、初期位置とするための印加電圧から通電モード(1)に対応する印加電圧に切り替えた直後における、通電モード(5)での開放相(非通電相)であるW相の端子電圧Vwを、開放相電圧V1-270として記憶する。
前記最小電圧検出時間は、通電モード(1)に対応する印加電圧に切り替えることで低下し、その後上昇に転じて定常電圧に収束するW相の端子電圧Vwの変化特性に基づき、最小電圧を検出するのに必要十分な時間として、予め適合されている。
ステップ55では、通電モード(1)から通電モード(2)への切り替え判断に用いる電圧閾値V1-2を、以下の数9又は数10に従って算出する。
通電モード(1)から通電モード(2)への切り替え時の角度は270degであり、通電モード(1)での通電状態で、角度270degになるときの開放相(W相)の端子電圧Vwを、通電モード(1)での通電で240degから330degに向けてモータが回転するときの端子電圧Vwの変化に基づいて推定するものである。
通電モード(1)から通電モード(2)への切り替えタイミングの判断においては、通電モード(1)による通電中に、開放相(W相)の端子電圧Vwが、電圧閾値V1-2を下回った時点で、モータ角度が270deg付近であると推定し、通電モードを(1)から(2)に切り替える。
まず、ステップ61では、永久磁石回転子216を、初期位置(設定角度300deg)に位置決めする。
具体的には、予め決められた電圧Vinに基づき、U相,V相及びW相に対する印加電圧Vu,Vv,Vwを、Vu=Vin*1/2、Vv=−Vin、Vw=Vin*1/2に設定する。
ステップ62では、ステップ61でU相,V相及びW相に対する印加電圧Vu,Vv,Vwを設定した後、永久磁石回転子216のN極が設定角度に到達するのに要すると見込まれる動作遅れ時間が経過していて、初期位置に停止したものと推定できるようになってから、通電モード(2)に対応する印加電圧、即ち、Vu=Vin、Vv=0、Vw=−Vinに切り替える。
ステップ63では、図18(A)に示すように、初期位置とするための印加電圧から通電モード(2)に対応する印加電圧に切り替えた直後における、通電モード(2)での開放相(非通電相)であるV相の端子電圧Vvを、開放相電圧V1-330として記憶する。
前記最大電圧検出時間は、通電モード(2)に対応する印加電圧に切り替えることで増大し、その後減少に転じて定常電圧に収束するV相の端子電圧Vvの変化特性に基づき、最大電圧を検出するのに必要十分な時間として、予め適合されている。
ステップ65では、通電モード(2)から通電モード(3)への切り替え判断に用いる電圧閾値V2-3を、以下の数11又は数12に従って算出する。
通電モード(2)から通電モード(3)への切り替え時の角度は330degであり、通電モード(2)での通電状態で、角度330degになるときの開放相(V相)の端子電圧Vvを、通電モード(2)での通電で300degから30degに向けてモータが回転するときの端子電圧Vvの変化に基づいて推定するものである。
通電モード(2)から通電モード(3)への切り替えタイミングの判断においては、通電モード(2)による通電中に、開放相(V相)の端子電圧Vvが、電圧閾値V2-3よりも大きくなった時点で、モータ角度が330deg付近であると推定し、通電モードを(2)から(3)に切り替える。
そして、通電モードの切り替え角度での開放相の端子電圧を求めて、これを通電モードの切り替え判断に用いる電圧閾値として学習するから、モータのばらつきや温度環境などの各種ばらつき要因に対して電圧閾値を適正値に修正でき、通電モードの切り替えタイミングが所期の角度位置からずれてしまうことを抑制できる。
次に、電動オイルポンプ1を駆動するモータとしてのブラシレスモータ2について、通電モードの切り替え判断に用いる電圧閾値の学習を行わせる場合の学習処理の流れを、図19のフローチャートに示すルーチンに従って説明する。
具体的には、以下の(a)〜(f)が全て成立している場合に、電圧閾値の学習条件が成立していると判断する。
(a)エンジン回転中である。
(b)オイル温度が学習許可領域内である
(c)ブラシレスモータ、駆動回路、制御器などについて故障診断されていない。
(d)ブラシレスモータの電源電圧が設定値を超えている。
(e)エンジン始動後から安定運転状態への移行に要する時間が経過している。
(f)同一温度条件で一度も学習されていない
上記条件(a)は、電動オイルポンプ1を駆動する要求がないことを判断するものであり、エンジン停止中であっても、電動オイルポンプ1を駆動する要求がない場合には、学習条件の成立を判定することができる。
条件(c)は、ブラシレスモータ、駆動回路、制御器などが正常であって、電圧閾値の学習が正常に行えると見込まれる場合に、学習を許可するものである。
条件(e)は、エンジンが安定的に運転されていている状態において、学習を許可するものである。
条件(f)は、各通電モードの切り替え判断に用いる電圧閾値を、ブラシレスモータ2の温度毎に学習させるに当たって、現時点の温度が、未学習の温度条件であれば学習を許可し、学習済みであれば学習処理を実行させないようにする。
尚、温度毎の学習において、例えば、通電モード(2)から通電モード(3)への切り替え判断を行うときに用いる電圧閾値V2-3として、モータ温度80℃に対応する電圧閾値V2-3が学習済みであるのに対し、その他の温度条件に対応する電圧閾値V2-3が未学習であれば、80℃での学習値を全ての温度条件に適用させて、通電モード(2)から通電モード(3)への切り替え判断を行わせることができる。
また、電圧閾値の学習条件としての温度は、ブラシレスモータ2の温度若しくはモータ温度に相関する温度であればよく、モータ温度に相関する温度としては、電動オイルポンプ1が圧送するオイルの温度(オイル温度センサ12の検出値)や、エンジンの冷却水温度などを用いることができ、更には、外気温度やモータ2における消費電力などからモータ温度を推定させることもできる。
前述の図5及び図6のフローチャートに従った電圧閾値の学習処理では、6通りのモード切り替え毎に6個の電圧閾値V1-2,V2-3,V3-4,V4-5,V5-6,V6-1を学習するから、3相間でばらつきがあっても、通電モードを適正なタイミングで切り替えることができる。
具体的には、図5及び図6のフローチャートに従って求めた6個の電圧閾値V1-2,V2-3,V3-4,V4-5,V5-6,V6-1それぞれの絶対値の中での最小値を求め、該最小値に基づいて、図21に示すようにして、通電モードの切り替え判断に用いる各電圧閾値を設定する。
また、開放相電圧が基準電圧に対してマイナス側に振れる(1)→(2)、(3)→(4)、(5)→(6)のモード切替において共通の電圧閾値を設定し、開放相電圧が基準電圧に対してプラス側に振れる(2)→(3)、(4)→(5)、(6)→(1)において共通の電圧閾値を設定してもよい。
即ち、モータ回転速度が低くなるほど、開放相に発生する誘起電圧が低くなるので、モータ速度が低く誘起電圧が低くなるほど、電圧閾値の絶対値を小さくし、逆に、モータ速度が速く誘起電圧が高くなるほど、電圧閾値の絶対値を大きくする。これにより、モータ回転速度に依存する誘起電圧の大きさに対応させて、電圧閾値を上下させることができ、モータ回転速度が異なっても、適正なタイミング(所期の切り替え角度)で通電モードを切り替えることができる。
尚、モータの回転速度による補正値を演算式で求めても良いし、モータの回転速度を補正値に変換する変換テーブルを用いてもよい。
そこで、電圧閾値の学習を行わせる場合に、PWM生成において、低デューティとしてモータ回転速度を抑制しつつ、開放相の誘起電圧を検出できるようにすることが望まれ、そのためには、後述するパルスシフトを実施するとよい。
図24において、三角波キャリアの中間値Dの値が電圧=0であり、また、電圧指令値をBとし、V相のPWMは、三角波キャリアと電圧指令値D+Bを比較した結果を用い、W相のPWMは、三角波キャリアと電圧指令値D−Bを比較した結果を用いている。
即ち、V相の上段スイッチング素子は、三角波キャリアよりも電圧指令値D+Bが高い期間においてONとなり、W相の下段スイッチング素子は、三角波キャリアが電圧指令値D−Bよりも高い期間においてONとなる。
図25に示すパルスシフトでは、三角波キャリアの山・谷(上昇・下降)のタイミングで、電圧指令値に対して補正を行っている。
ステップ103では、上記のようにして電圧閾値の学習を実施し、学習に充分な時間だけ学習条件が連続して成立していれば、学習を完了することになるが、学習途中でアイドルストップの開始要求が発生するなどして、学習条件が成立しなくなった場合には、その時点で学習処理を中止させる。
ここで、学習の正常終了とは、図5及び図6のフローチャートに示すルーチンを少なくとも1回実施し(好ましくは複数回繰り返し)、かつ、取得した電圧閾値が正常範囲内の場合である。一方、学習の異常終了とは、アイドルストップ要求の発生などによって途中で学習処理を停止した場合や、学習を所定回数(或いは所定時間)だけ実施しても、正常範囲内の電圧閾値を取得することができなかった場合である。
一方、学習が異常終了した場合には、ステップ106へ進み、電圧閾値の記憶値を更新せずに、前回値若しくは初期値(設計値)に保持させる。
ステップ107では、アイドルストップ条件が成立したか否か、換言すれば、ブラシレスモータ2によって電動オイルポンプ1を駆動させる要求が発生したか否かを判断する。
ここで、未学習の電圧閾値がなく、電圧閾値の学習が全て完了している場合には、そのままアイドルストップ条件が成立するまで待機させてもよい。
ステップ109(脱調検出手段)では、学習した電圧閾値に基づき通電モードを切り替えてブラシレスモータ2を駆動させている状態(センサレス駆動状態)で、脱調が発生したか否かを検出する。
ブラシレスモータ2が脱調した場合には、電圧閾値が不適切であるために、通電モードの切り替えタイミングが所期の角度位置からずれたものと判断し、ステップ102の学習条件の成立判断に戻る。
一方、脱調が発生しない場合には、電圧閾値が適正な値に学習されているものと判断できるので、再学習を行わせることなく、ブラシレスモータ2の駆動を継続させる。
ところで、図5及び図6のフローチャートに示した電圧閾値の学習においては、ステップ1〜ステップ6それぞれにおける最初の処理として、初期位置への位置決めを実施するが、初期位置を、設定角度(0deg、60deg、120deg、180deg、240deg、300deg)とする代わりに、通電モードのいずれかに対応するパターンで通電させ、その通電モードでの回転位置を、初期位置とすることができる。
ここでは、設定角度=0degとする相通電に代えて、通電モード(1)に対応する相通電、即ち、Vu=Vin、Vv=−Vin、Vw=0に設定することで、モータ角度の初期値を330degとする。
ここでは、設定角度=60degとする相通電に代えて、通電モード(2)に対応する相通電、即ち、Vu=Vin、Vv=0、Vw=−Vinに設定することで、モータ角度の初期値を30degとする。
ここでは、設定角度=120degとする相通電に代えて、通電モード(3)に対応する相通電、即ち、Vu=0、Vv=Vin、Vw=−Vinに設定することで、モータ角度の初期値を90degとする。
ここでは、設定角度=180degとする相通電に代えて、通電モード(4)に対応する相通電、即ち、Vu=−Vin、Vv=Vin、Vw=0に設定することで、モータ角度の初期値を150degとする。
ここでは、設定角度=240degとする相通電に代えて、通電モード(5)に対応する相通電、即ち、Vu=−Vin、Vv=0、Vw=Vinに設定することで、モータ角度の初期値を210degとする。
ここでは、設定角度=300degとする相通電に代えて、通電モード(6)に対応する相通電、即ち、Vu=0、Vv=−Vin、Vw=Vinに設定することで、モータ角度の初期値を270degとする。
電動オイルポンプ1のイナーシャをJ、トルク定数をKt、モータ電流をIとした場合、モータの角速度ωは、数14により求まる。
また、初期位置から電圧閾値を学習する通電モードに切り替えると、開放相の端子電圧は、基準電圧から増大又は減少変化した後に基準電圧に交差し、基準電圧付近に戻った時点が、そのときの通電モードに対応する角度位置になった時点であると推定することができるから、学習する通電モードに切り替えてから、開放相の端子電圧が基準電圧にまで戻るのに要した時間Treは、初期位置から学習する通電モードでの角度位置まで回転するのに要した時間であると見なすことができる。
そして、モータ温度の推定結果は、電圧閾値を温度別に学習させるときに、どの温度領域に対応させて学習させるかの判断に用いることができ、更に、誘起電圧定数,トルク定数,抵抗などの温度依存性を有するパラメータの補正に用いることができ、前記パラメータを用いて効率良くモータを制御することができる。
また、通電モードの切り替え判断に用いる電圧閾値を学習させ、学習結果に基づいてセンサレス式で通電モードの切り替えを行うブラシレスモータは、電動オイルポンプの駆動に用いるモータに限定されない。
(イ)請求項1〜3のいずれか1つに記載のブラシレスモータの駆動装置において、
前記ブラシレスモータの脱調を検出する脱調検出手段を更に備え、
前記電圧閾値設定手段は、少なくとも前記ブラシレスモータの脱調が検出されたときに、前記電圧閾値の設定を行うブラシレスモータの駆動装置。
(ロ)請求項1〜3のいずれか1つに記載のブラシレスモータの駆動装置において、
前記電圧閾値設定手段が、前記ブラシレスモータの全相に通電して、前記ブラシレスモータを初期位置に駆動するブラシレスモータの駆動装置。
(ハ)請求項1〜3のいずれか1つに記載のブラシレスモータの駆動装置において、
前記電圧閾値設定手段が、通電モードのいずれかに対応する通電を行って、前記ブラシレスモータを初期位置に駆動するブラシレスモータの駆動装置。
(ニ)請求項(ロ)又は(ハ)に記載のブラシレスモータの駆動装置において、
前記電圧閾値設定手段が、初期位置に駆動するための通電状態に設定してから、動作遅れ時間が経過してから、電圧閾値の学習を行う通電モードでの通電を開始させるブラシレスモータの駆動装置。
(ホ)請求項1〜3のいずれか1つに記載のブラシレスモータの駆動装置において、
前記電圧閾値設定手段が、通電モード毎に設定した電圧閾値から、複数の通電モードに共通の電圧閾値を設定し、この複数の通電モードに共通の電圧閾値に基づいて通電モードの切り替えを行わせるブラシレスモータの駆動装置。
(ヘ)請求項(ホ)記載のブラシレスモータの駆動装置において、
前記電圧閾値設定手段が、通電モード毎に設定した電圧閾値のうちの複数の電圧閾値の中で絶対値が最小である電圧閾値を、複数の通電モードに共通の電圧閾値として設定するブラシレスモータの駆動装置。
(ト)請求項1〜3のいずれか1つに記載のブラシレスモータの駆動装置において、
前記電圧閾値設定手段が、前記電圧閾値を、モータ回転速度に応じて補正するブラシレスモータの駆動装置。
(チ)請求項1記載のブラシレスモータの駆動装置において、
前記電圧閾値設定手段が、初期位置にモータを停止させた状態から通電モードに基づく相通電を行ってモータを回転させたときに、非通電相の電圧が基準電圧に戻るまでの時間を計測し、該時間の所定割合が経過した時点での非通電相の電圧に基づき、電圧閾値を設定するブラシレスモータの駆動装置。
(リ)請求項1〜3のいずれか1つに記載のブラシレスモータの駆動装置において、
前記ブラシレスモータが、自動車用オートマチック・トランスミッションにオイルを圧送する電動オイルポンプであって、前記電動オイルポンプが、エンジンで駆動されてオイルを前記自動車用オートマチック・トランスミッションに圧送する機械式オイルポンプと並列に設けられ、
前記電圧閾値設定手段が、前記エンジンの運転中であって前記機械式オイルポンプによってオイルを自動車用オートマチック・トランスミッションに圧送しているときに、前記電圧閾値を設定するブラシレスモータの駆動装置。
Claims (3)
- 複数の巻線を備えたブラシレスモータの各相に対する通電モードを切り替えることで、前記ブラシレスモータを回転駆動するブラシレスモータの駆動装置であって、
非通電相の電圧と電圧閾値とに基づいて前記通電モードを順次切り替える通電モード切替手段と、
初期位置にモータを停止させた状態から通電モードに基づく相通電を行ってモータを回転させ、該回転中における非通電相の電圧に基づいて前記電圧閾値を設定する電圧閾値設定手段と、
を備えるブラシレスモータの駆動装置。 - 前記電圧閾値設定手段が、通電モードに基づく相通電を開始してから計測期間内における非通電相の電圧の最大値及び/又は最小値に基づいて、前記電圧閾値を設定する請求項1記載のブラシレスモータの駆動装置。
- 前記ブラシレスモータの温度を検出する温度検出手段を更に備え、
前記電圧閾値設定手段は、前記ブラシレスモータの温度毎に前記電圧閾値を設定する請求項1又は2記載のブラシレスモータの駆動装置。
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