JP5356320B2 - ブラシレスモータの駆動装置 - Google Patents
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Description
図1は、本願発明に係るブラシレスモータの駆動装置を適用する、自動車AT(オートマチック・トランスミッション)用油圧ポンプシステムの構成を示すブロック図である。
図1に示す自動車AT用油圧ポンプシステムでは、変速機7やアクチュエータ8にオイルを供給するオイルポンプとして、図外のエンジン(内燃機関)の出力により駆動される機械式オイルポンプ6と、モータで駆動される電動オイルポンプ1とを備えている。
電動オイルポンプ1は、直結したブラシレスモータ2により駆動され、ブラシレスモータ2は、AT制御装置(ATCU)4からの指令を受け取るモータ制御装置(MCU)3によって制御される。
エンジン駆動中は、エンジン駆動の機械式オイルポンプ6により、変速機7やアクチェータ8にオイル配管9を介してオイルパン10のオイルが供給され、このとき、ブラシレスモータ2はオフ状態であり、電動オイルポンプ1に向かうオイルは逆止弁11によって遮断される。
起動指令を受けたモータ制御装置3は、ブラシレスモータ2を駆動して電動オイルポンプ1を回転させ、電動オイル配管5内の油圧を徐々に上昇させる。
機械式オイルポンプ6の油圧が低下する一方で、電動オイルポンプ1の吐出圧が逆止弁11の開弁圧を超えるようになると、オイルは、電動オイル配管5,電動オイルポンプ1,逆止弁11,変速機7・アクチェータ8,オイルパン10の経路を通って循環する動作を行う。
モータ制御装置3は、モータ駆動回路212と、マイクロコンピュータを備えた制御器213とを含んで構成され、制御器213がAT制御装置4との間で通信を行う。
ブラシレスモータ2は、3相DCブラシレスモータ(3相同期電動機)であり、U相,V相及びW相の3相巻線215U,215V,215Wが、図示省略した円筒状の固定子に設けられ、該固定子の中央部に形成された空間に永久磁石回転子216が配置される。
スイッチング素子217a〜217fの制御端子(ゲート端子)は、制御器213に接続されており、スイッチング素子217a〜217fのオン・オフは、制御器213によってデューティ制御される。
PWM発生器251は、指令トルクに応じて決定した印加電圧指令(指令電圧)に基づき、パルス幅変調されたPWM波を生成する回路である。
ゲート信号切替器252は、モータ駆動回路212の各スイッチング素子217a〜217fがどのような動作でスイッチングするかを、通電モード決定器253の出力であるモード指令信号に基づいて決定し、該決定に従い、最終的な6つのゲートパルス信号をモータ駆動回路212に出力する。
非通電相電圧選択器257は、ブラシレスモータ2の3相端子電圧Vu,Vv,Vwの中から非通電相の電圧をモード指令信号に従い選択して出力する回路であり、前記端子電圧は、ブラシレスモータ2の中性点に対する電位差として出力される。
尚、誘起電圧は、2相の印加パルス電圧によって非通電相に誘起される電圧であり、回転子の位置により磁気回路の飽和状態が変化することから、回転子の位置に応じた誘起電圧が非通電相に発生することになり、非通電相の誘起電圧から、回転子位置を推定して、通電モードの切り替えタイミングを検出することができる。
通電モードは、電気角60degごとに順次切り替わる6通りの通電モード(1)〜(6)からなり、各通電モード(1)〜(6)においてスイッチング素子217a〜217fは、指令電圧に応じてパルス幅変調した信号で駆動される。
通電モード(2)は、スイッチング素子217a及びスイッチング素子217fをオン制御し、他を全てオフとすることで、U相に電圧Vを印加し、W相に電圧−Vを印加し、U相からW相に向けて電流を流す。
通電モード(3)は、スイッチング素子217c及びスイッチング素子217fをオン制御し、他を全てオフとすることで、V相に電圧Vを印加し、W相に電圧−Vを印加し、V相からW相に向けて電流を流す。
通電モード(4)は、スイッチング素子217b及びスイッチング素子217cをオン制御し、他を全てオフとすることで、V相に電圧Vを印加し、U相に電圧−Vを印加し、V相からU相に向けて電流を流す。
通電モード(5)は、スイッチング素子217b及びスイッチング素子217eをオン制御し、他を全てオフとすることで、W相に電圧Vを印加し、U相に電圧−Vを印加し、W相からU相に向けて電流を流す。
通電モード(6)は、スイッチング素子217e及びスイッチング素子217dをオン制御し、他を全てオフとすることで、W相に電圧Vを印加し、V相に電圧−Vを印加し、W相からV相に向けて電流を流す。
前記通電モードの切り替えを、本実施形態では、非通電相に発生する電圧(誘起電圧)と電圧閾値との比較に基づき行うようになっており、本実施形態のモータ制御装置3は、所謂位置センサレスの通電制御を行う。
具体的には、非通電相電圧選択器257が3相端子電圧Vu,Vv,Vwの中から非通電相(開放相)の電圧を選択して出力する一方、電圧閾値切替器255が電圧閾値を出力し、比較器254が、非通電相の端子電圧が電圧閾値を横切ったか否かを判断する。そして、比較器254は、非通電相の端子電圧が電圧閾値を横切って増大変化又は減少変化したときに(非通電相の端子電圧が電圧閾値に一致したときに)、モード切替トリガを通電モード決定器253に出力する。
そこで、本実施形態では、前記電圧閾値を更新して記憶する電圧閾値学習器256(電圧閾値設定手段)を設け、温度などの環境条件、ブラシレスモータ2の製造ばらつき、電圧検出回路の検出ばらつきなどに対して、電圧閾値を逐次適正値に修正し、修正結果を更新記憶して用いるように構成してある。
図5のフローチャートに示すルーチンは、制御器213(電圧閾値学習器256)によって行われる電圧閾値の学習処理の手順を示す。
まず、ステップ11では、永久磁石回転子216を、通電モード(3)に対応する角度に位置決めする。
具体的には、図6(A)に示すように、通電モード(3)に対応する印加電圧、即ち、Vu=0、Vv=Vin、Vw=−Vinを各相に加える。通電モード(3)に対応する印加電圧を各相に加えると、U相,V相及びW相の合成磁束が、図6(A)に示すようになり、係る合成磁束に永久磁石回転子216が引かれることでトルクが発生し、永久磁石回転子216のN極が、角度90degまで回転することになる。
尚、通電モード(3)に対応する印加電圧を加えたときの角度である90degは、前述のように、通電モード(4)から通電モード(5)への切り替えを行う角度位置である。
図6(A),(B)において、永久磁石回転子216を中心として扇状に塗りつぶした領域は、モータを回転駆動するときに、当該通電モードによる通電を行う角度領域を示すものであり、後述する図7〜図11の(A),(B)においても同様である。
即ち、通電モード(4)から通電モード(5)への切り替えは、前述のように、角度90degで行わせるように設定されていて、角度90degになったか否かは、通電モード(4)における開放相(非通電相)であるW相の端子電圧Vwに基づいて判断する。
そこで、通電モード(3)に対応する印加電圧を継続させている状態から通電モード(4)に切り替えた直後におけるW相の端子電圧Vwに基づき、通電モード(4)から通電モード(5)への切り替え判定に用いる電圧閾値V4-5を更新して記憶し、通電モード(4)の開放相(非通電相)であるW相の端子電圧Vwが、電圧閾値V4-5を横切ったときに(W相の端子電圧Vw=電圧閾値V4-5になったとき)、通電モード(4)から通電モード(5)への切り替えを実行させるようにする。
また、今回求めた開放相の端子電圧Vが、予め記憶している正常範囲内の値であれば、今回求めた開放相の端子電圧Vに基づく電圧閾値の更新を行い、前記正常範囲から外れている場合には、今回求めた開放相の端子電圧Vに基づく電圧閾値の更新を禁止し、電圧閾値を前回値のまま保持させるとよい。
また、開放相(非通電相)の端子電圧を、一定時間周期でA/D変換して読み込む場合には、通電モード切り替え直後の開放相の端子電圧を検出させるときに、通電モードの切り替え実行後、最初に読み込んだ開放相の端子電圧を、切り替え直後の開放相の端子電圧とすることができるが、通電モードの切り替え処理に同期してA/D変換処理を実行させてもよい。
まず、ステップ21では、永久磁石回転子216を、通電モード(4)に対応する角度に位置決めする。
具体的には、図7(A)に示すように、通電モード(4)に対応する印加電圧、即ち、Vu=−Vin、Vv=Vin、Vw=0を各相に加える。通電モード(4)に対応する印加電圧を各相に加えると、U相,V相及びW相の合成磁束が、図7(A)に示すようになり、係る合成磁束に永久磁石回転子216が引かれることでトルクが発生し、永久磁石回転子216のN極が、角度150degまで回転することになる。
尚、通電モード(4)に対応する印加電圧を加えたときの角度である150degは、前述のように、通電モード(5)から通電モード(6)への切り替えを行う角度位置である。
即ち、通電モード(5)から通電モード(6)への切り替えは、前述のように、角度150degで行わせるように設定されていて、角度150degになったか否かは、通電モード(5)における開放相(非通電相)であるV相の端子電圧Vvに基づいて判断する。
そこで、通電モード(4)に対応する印加電圧を継続させている状態から通電モード(5)に切り替えた直後におけるV相の端子電圧Vvに基づき、通電モード(5)から通電モード(6)への切り替え判定に用いる電圧閾値V5-6を更新して記憶し、通電モード(5)の開放相(非通電相)であるV相の端子電圧Vvが、電圧閾値V5-6を横切ったときに(V相の端子電圧Vv=電圧閾値V5-6になったとき)、通電モード(5)から通電モード(6)への切り替えを実行させるようにする。
まず、ステップ31では、永久磁石回転子216を、通電モード(5)に対応する角度に位置決めする。
具体的には、図8(A)に示すように、通電モード(5)に対応する印加電圧、即ち、Vu=−Vin、Vv=0、Vw=Vinを各相に加える。通電モード(5)に対応する印加電圧を各相に加えると、U相,V相及びW相の合成磁束が、図8(A)に示すようになり、係る合成磁束に永久磁石回転子216が引かれることでトルクが発生し、永久磁石回転子216のN極が、角度210degまで回転することになる。
尚、通電モード(5)に対応する印加電圧を加えたときの角度である210degは、前述のように、通電モード(6)から通電モード(1)への切り替えを行う角度位置である。
即ち、通電モード(6)から通電モード(1)への切り替えは、前述のように、角度210degで行わせるように設定されていて、角度210degになったか否かは、通電モード(6)における開放相(非通電相)であるU相の端子電圧Vuに基づいて判断する。
そこで、通電モード(5)に対応する印加電圧を継続させている状態から通電モード(6)に切り替えた直後におけるU相の端子電圧Vuに基づき、通電モード(6)から通電モード(1)への切り替え判定に用いる電圧閾値V6-1を更新して記憶し、通電モード(6)の開放相(非通電相)であるU相の端子電圧Vuが、電圧閾値V6-1を横切ったときに(U相の端子電圧Vu=電圧閾値V6-1になったとき)、通電モード(6)から通電モード(1)への切り替えを実行させるようにする。
まず、ステップ41では、永久磁石回転子216を、通電モード(6)に対応する角度に位置決めする。
具体的には、図9(A)に示すように、通電モード(6)に対応する印加電圧、即ち、Vu=0、Vv=−Vin、Vw=Vinを各相に加える。通電モード(6)に対応する印加電圧を各相に加えると、U相,V相及びW相の合成磁束が、図9(A)に示すようになり、係る合成磁束に永久磁石回転子216が引かれることでトルクが発生し、永久磁石回転子216のN極が、角度270degまで回転することになる。
尚、通電モード(6)に対応する印加電圧を加えたときの角度である270degは、前述のように、通電モード(1)から通電モード(2)への切り替えを行う角度位置である。
即ち、通電モード(1)から通電モード(2)への切り替えは、前述のように、角度270degで行わせるように設定されていて、角度270degになったか否かは、通電モード(1)における開放相(非通電相)であるW相の端子電圧Vwに基づいて判断する。
そこで、通電モード(6)に対応する印加電圧を継続させている状態から通電モード(1)に切り替えた直後におけるW相の端子電圧Vwに基づき、通電モード(1)から通電モード(2)への切り替え判定に用いる電圧閾値V1-2を更新して記憶し、通電モード(1)の開放相(非通電相)であるW相の端子電圧Vwが、電圧閾値V1-2を横切ったときに(W相の端子電圧Vw=電圧閾値V1-2になったとき)、通電モード(1)から通電モード(2)への切り替えを実行させるようにする。
まず、ステップ51では、永久磁石回転子216を、通電モード(1)に対応する角度に位置決めする。
具体的には、図10(A)に示すように、通電モード(1)に対応する印加電圧、即ち、Vu=Vin、Vv=−Vin、Vw=0を各相に加える。通電モード(1)に対応する印加電圧を各相に加えると、U相,V相及びW相の合成磁束が、図10(A)に示すようになり、係る合成磁束に永久磁石回転子216が引かれることでトルクが発生し、永久磁石回転子216のN極が、角度330degまで回転することになる。
尚、通電モード(1)に対応する印加電圧を加えたときの角度である330degは、前述のように、通電モード(2)から通電モード(3)への切り替えを行う角度位置である。
即ち、通電モード(2)から通電モード(3)への切り替えは、前述のように、角度330degで行わせるように設定されていて、角度330degになったか否かは、通電モード(2)における開放相(非通電相)であるV相の端子電圧Vvに基づいて判断する。
そこで、通電モード(1)に対応する印加電圧を継続させている状態から通電モード(2)に切り替えた直後におけるV相の端子電圧Vvに基づき、通電モード(2)から通電モード(3)への切り替え判定に用いる電圧閾値V2-3を更新して記憶し、通電モード(2)の開放相(非通電相)であるV相の端子電圧Vvが、電圧閾値V2-3を横切ったときに(V相の端子電圧Vv=電圧閾値V2-3になったとき)、通電モード(2)から通電モード(3)への切り替えを実行させるようにする。
まず、ステップ61では、永久磁石回転子216を、通電モード(2)に対応する角度に位置決めする。
具体的には、図11(A)に示すように、通電モード(2)に対応する印加電圧、即ち、Vu=Vin、Vv=0、Vw=−Vinを各相に加える。通電モード(2)に対応する印加電圧を各相に加えると、U相,V相及びW相の合成磁束が、図11(A)に示すようになり、係る合成磁束に永久磁石回転子216が引かれることでトルクが発生し、永久磁石回転子216のN極が、角度30degまで回転することになる。
尚、通電モード(2)に対応する印加電圧を加えたときの角度である30degは、前述のように、通電モード(3)から通電モード(4)への切り替えを行う角度位置である。
即ち、通電モード(3)から通電モード(4)への切り替えは、前述のように、角度30degで行わせるように設定されていて、角度30degになったか否かは、通電モード(3)における開放相(非通電相)であるU相の端子電圧Vuに基づいて判断する。
そこで、通電モード(2)に対応する印加電圧を継続させている状態から通電モード(3)に切り替えた直後におけるU相の端子電圧Vuに基づき、通電モード(3)から通電モード(4)への切り替え判定に用いる電圧閾値V3-4を更新して記憶し、通電モード(3)の開放相(非通電相)であるU相の端子電圧Vuが、電圧閾値V3-4を横切ったときに(U相の端子電圧Vu=電圧閾値V3-4になったとき)、通電モード(3)から通電モード(4)への切り替えを実行させるようにする。
また、通電モードの6通りの切り替え毎に、電圧閾値を個別に学習し、どの通電モードに切り替えるかによって、通電モードの切り替えタイミングの判定に用いる電圧閾値を選択するから、ブラスレスモータ2の個々の巻線にばらつきがあっても、各通電モードへの切り替えを適正なタイミング(所期の角度位置)で行わせることができる。
ステップ101で、エンジンのメインスイッチであるイグニッションスイッチ(IGN)がオンすると、ステップ102では、電圧閾値の学習条件が成立しているか否かを判断する。
(a)エンジン回転中である。
(b)オイル温度が学習許可領域内である
(c)ブラシレスモータ、駆動回路、制御器などについて故障診断されていない。
(d)ブラシレスモータの電源電圧が設定値を超えている。
(e)エンジン始動後から安定運転状態への移行に要する時間が経過している。
(f)同一温度条件で一度も学習されていない
条件(b)は、後述する温度条件毎の電圧閾値の学習において、電圧閾値を学習させる温度領域内であるか否かを判断するものであり、オイル温度センサ(温度検出手段)12が検出したオイル温度が、学習領域から外れている場合には、電圧閾値の学習は行わない。
条件(d)は、電源電圧が設定値を超えている(正常範囲内である)か否かに基づいて、学習精度を維持できる電源電圧であるか否かを判断するものである。
条件(e)は、エンジンが安定的に運転されていている状態において学習を許可し、始動直後のエンジン運転が不安定な状態において学習を禁止するものである。
例えば、図13に示すように、各通電モードの切り替え判断に用いる電圧閾値を、15℃、50℃、80℃、110℃の各温度毎に学習させるようにし、通電モード(2)から通電モード(3)への切り替え判断を行うときに用いる電圧閾値V2-3として、そのときの温度が80℃であったとすると、80℃に対応して記憶されている電圧閾値V2-3を用いるようにする。
尚、温度毎の電圧閾値の学習において、例えば、通電モード(2)から通電モード(3)への切り替え判断を行うときに用いる電圧閾値V2-3として、モータ温度80℃に対応する電圧閾値V2-3が学習済みであるのに対し、その他の温度条件に対応する電圧閾値V2-3が未学習であれば、80℃での学習値を全ての温度条件に適用させて、通電モード(2)から通電モード(3)への切り替え判断を行わせることができる。
また、電圧閾値の学習条件としての温度は、ブラシレスモータ2の温度若しくはモータ温度に相関する温度であればよく、モータ温度に相関する温度としては、電動オイルポンプ1が圧送するオイルの温度(オイル温度センサ12の検出値)や、エンジンの冷却水温度などを用いることができ、更には、外気温度やモータ2における消費電力などからモータ温度を推定することもできる。
前述の図5のフローチャートに従った電圧閾値の学習処理では、6通りのモード切り替え毎に6個の電圧閾値V1-2,V2-3,V3-4,V4-5,V5-6,V6-1を学習するから、3相間でばらつきがあっても、通電モードを適正なタイミングで切り替えることができる。
具体的には、図5のフローチャートに従って求めた6個の電圧閾値V1-2,V2-3,V3-4,V4-5,V5-6,V6-1それぞれの絶対値の中での最小値を求め、該最小値に基づいて、図14(A)に示すようにして、通電モードの切り替え判断に用いる各電圧閾値を設定する。
即ち、通電モードの切り替えにおいて、(1)→(2)、(3)→(4)、(5)→(6)の切り替えにおいては開放相電圧が基準電圧からマイナス側に振れ、(2)→(3)、(4)→(5)、(6)→(1)の切り替えにおいては開放相電圧が基準電圧からプラス側に振れるので、開放相電圧がマイナス側に振れるモード切替は、−最小値を電圧閾値とし、開放相電圧がプラス側に振れるモード切替は、+最小値を電圧閾値とする。
また、例えば、6通りの通電モードの切り替えのうちの一部(例えば1つ)についてのみ、電圧閾値を学習させ、この学習値の絶対値を他の通電モードの切り替え判断に用いる電圧閾値の絶対値として用いることができる。
具体的には、図14(B)に示すように、(1)→(2)、(3)→(4)、(5)→(6)のモード切替に対しては、電圧閾値V1-2,V3-4,V5-6の中での最大値、即ち、マイナス値として算出される電圧閾値V1-2,V3-4,V5-6の中で基準電圧(=0V)に最も近い値(絶対値の最小値)を選択し、該選択した電圧閾値Vを、(1)→(2)、(3)→(4)、(5)→(6)のモード切替に共通の電圧閾値として学習させる。
即ち、モータ回転速度が低くなるほど、開放相に発生する誘起電圧が低くなるので、モータ速度が低く誘起電圧が低くなるほど、電圧閾値の絶対値を小さく補正し、逆に、モータ速度が速く誘起電圧が高くなるほど、電圧閾値の絶対値を大きく補正する。これにより、モータ回転速度に依存する誘起電圧の大きさに対応させて、電圧閾値を上下させることができ、モータ回転速度が異なっても、適正なタイミング(所期の切り替え角度)で通電モードを切り替えることができる。
(数1)
電圧閾値=電圧閾値+回転速度による補正値
回転速度による補正値=回転速度*誘起電圧定数*1/2
上記回転速度に応じた電圧閾値の補正は、個別の学習結果をそのまま用いてモード切替を判断させる場合と共に、絶対値を共通化させた電圧閾値を設定する場合にも適用できる。
尚、モータの回転速度による補正値を演算式で求めても良いし、モータの回転速度を補正値に変換する変換テーブルを用いてもよい。
そこで、電圧閾値の学習を行わせる場合に、PWM生成において、低デューティとしてモータ回転の立ち上がり応答を抑制しつつ、開放相の誘起電圧を検出できるようにすることが望まれ、そのためには、後述するパルスシフトを実施するとよい。
図16において、三角波キャリアの中間値Dの値が電圧=0であり、また、電圧指令値をBとし、V相のPWMは、三角波キャリアと電圧指令値D+Bを比較した結果を用い、W相のPWMは、三角波キャリアと電圧指令値D−Bを比較した結果を用いている。
即ち、V相の上段スイッチング素子は、三角波キャリアよりも電圧指令値D+Bが高い期間においてONとなり、W相の下段スイッチング素子は、三角波キャリアが電圧指令値D−Bよりも高い期間においてONとなる。
そこで、図17に示すパルスシフトを実施することで、図16に示したPWM生成と同一のデューティで2相が共に通電している連続時間をより長くし、速度起電力の発生を抑えつつ、非通電相(開放相)に誘起される電圧の検出を可能にできる。
具体的には、三角波キャリアの上昇期間では、電圧指令値を電圧=DからXだけ離れるように、電圧指令値D+BについてはD+B+A(但し、A=X−B)に補正し、電圧指令値D−BについてはD−B−A(但し、A=X−B)に補正し、三角波キャリアの下降期間では、電圧指令値を電圧=Dに近づけるように、電圧指令値D+BについてはD+B−A(但し、A=X−B)に補正し、電圧指令値D−BについてはD−B+A(但し、A=X−B)に補正している。
上記の電圧指令値の補正によって、三角波キャリアの下降期間でV相とW相とが共に通電している時間が短くなる分だけ、三角波キャリアの上昇期間でV相とW相とが共に通電している時間が長くなり、デューティを変えずに(換言すれば、低デューティでも)、2相が共に通電している連続時間を長くすることができる。
ここで、学習の正常終了とは、図5のフローチャートに示すルーチンを少なくとも1回実施し(好ましくは複数回繰り返し)、かつ、取得した電圧閾値が正常範囲内の場合である。一方、学習の異常終了とは、アイドルストップ要求の発生などによって途中で学習処理を停止した場合や、学習を所定回数(或いは所定時間)だけ実施しても、正常範囲内の電圧閾値を取得することができなかった場合である。
一方、学習が異常終了した場合には、ステップ106へ進み、電圧閾値の記憶値を更新せずに、電圧閾値を前回値若しくは初期値(設計値)に保持させる。
アイドルストップ条件が成立していない場合(エンジンの運転が継続される場合)には、電圧閾値の学習を全て完了していない可能性、例えば、異なる温度条件に対応する電圧閾値の学習が未実施の場合などがあるため、ステップ102へ戻って、学習条件の成立判断を行う。
一方、アイドルストップ条件が成立すると、ステップ108へ進み、学習した電圧閾値と開放相電圧とを比較して通電モードを切り替えてブラシレスモータ2を駆動させる、センサレス式の駆動制御を実施する。
脱調の発生は、公知の種々の方法を採用でき、例えば、特開2001−25282号公報に開示されるように、ブラシレスモータ2の電流周期と電圧周期との比較に基づき、脱調の発生を検出することができる。
脱調が発生した場合には、ブラシレスモータ2によって電動オイルポンプ1を正常に回転駆動させることができずに、供給オイルの不足などによって変速機7の動作不良などを発生させる可能性があるので、アイドルストップを強制終了させ、エンジンを再始動させた上で、電圧閾値の学習を開始させることが好ましく、また、アイドルストップを強制終了させたときに、車両の運転者に対してランプなどで異常の発生(アイドルストップの禁止)を警告するとよい。
電圧閾値の絶対値が適正値よりも大きいと脱調し易くなり、また、過剰に小さいと効率が悪くなるので、前記再学習の結果の補正は、例えば以下のようにして行わせることができる。
また、再学習後の電圧閾値の絶対値が、脱調時の電圧閾値の絶対値と同等であれば、再学習後の電圧閾値の絶対値を設定電圧だけ小さく補正し(換言すれば、脱調時の電圧閾値の絶対値を設定電圧だけ小さく補正し)、補正後の電圧閾値を用いて通電モードの切り替えタイミングの判断を行わせる。ここで、前記設定電圧を過小に設定すると、補正した電圧閾値を用いても脱調が再発する可能性があり、逆に、前記設定電圧を過大に設定すると効率が悪くなるので、角度と電圧との相関から、なるべく小さい電圧で脱調の再発を抑制できるように前記設定電圧を予め適合する。
更に、再学習後の電圧閾値の絶対値が、脱調時の電圧閾値の絶対値よりも大きい場合には、そのままの電圧閾値を用いると脱調する可能性が高いので、脱調時の電圧閾値の絶対値を前記設定電圧だけ小さく補正した結果を、通電モードの切り替えタイミングの判断に用いるようにする。
また、イグニッションスイッチのオフなどによって自動車の運転を終了させた後の再起動時には、上記のように補正した脱調後の電圧閾値を記憶しておき、この記憶値と、初期値設定電圧閾値又は初期学習電圧閾値との加重平均などによって電圧閾値を変更してもよい。
そして、運転者が車両の運転を終了し(ステップ110)、イグニッションスイッチ(IGN)がオフされると、学習更新した電圧閾値をバックアップRAMに格納するなどして、電圧閾値の学習及びブラシレスモータ2の駆動制御を終了させる。
また、通電モードの切り替え判断に用いる電圧閾値を学習させ、学習結果に基づいてセンサレス式で通電モードの切り替えを行うブラシレスモータは、電動オイルポンプの駆動に用いるモータに限定されない。
(イ)請求項1又は2記載のブラシレスモータの駆動装置において、
通電モード毎に設定した電圧閾値から、複数の通電モードに共通の電圧閾値を設定し、この複数の通電モードに共通の電圧閾値に基づいて通電モードの切り替えを行わせる、ブラシレスモータの駆動装置。
上記構成によると、1つの電圧閾値を、複数のモード切り替えに共通的に用いるようにすることで、通電モード毎の電圧閾値の切り替えを簡易化でき、また、電圧閾値の記憶容量を節約できる。
通電モード毎に設定した電圧閾値のうちの複数の電圧閾値の中で絶対値が最小である電圧閾値を、複数の通電モードに共通の電圧閾値として設定する、ブラシレスモータの駆動装置。
上記構成によると、個別に設定した電圧閾値のうちの複数の中から最小値を選択し、複数の通電モードに共通の電圧閾値とするから、電圧閾値の要求が比較的低い通電モードであっても、非通電相の電圧と電圧閾値との比較から通電モードの切り替えタイミングを安定して判断させることができる。
前記電圧閾値を、モータ回転速度に応じて補正する、ブラシレスモータの駆動装置。
上記構成によると、モータ回転速度によって誘起電圧のレベルが変動しても、モータ回転速度に応じて電圧閾値をシフトさせることで、一定の角度位置で通電モードの切り替えタイミングを判断させることができる。
前記ブラシレスモータの温度毎に前記電圧閾値を設定する、ブラシレスモータの駆動装置。
上記構成によると、通電モードの切り替え角度での非通電相(開放相)の端子電圧が、モータ温度に影響されて変化することに対応して、電圧閾値をそのときの温度条件に対応する値に設定できる。
前記ブラシレスモータが、自動車用オートマチック・トランスミッションにオイルを圧送する電動オイルポンプであって、前記電動オイルポンプが、エンジンで駆動されてオイルを前記自動車用オートマチック・トランスミッションに圧送する機械式オイルポンプと並列に設けられ、
前記電圧閾値の設定においては、前記エンジンの運転中であって前記機械式オイルポンプによってオイルを自動車用オートマチック・トランスミッションに圧送しているときに、前記電圧閾値を設定する、ブラシレスモータの駆動装置。
上記構成によると、エンジンが停止すると、機械式オイルポンプが停止し、自動車用オートマチック・トランスミッションに対してオイルを圧送できなくなり、このときに電動オイルポンプを駆動することで、自動車用オートマチック・トランスミッションに対するオイルの圧送を継続させることができるが、電動オイルポンプの駆動状態では、電圧閾値の設定を行えないので、エンジン運転中であって、機械式オイルポンプによってオイルを自動車用オートマチック・トランスミッションに圧送しているときに、電圧閾値の設定を行う。
Claims (2)
- 複数の巻線を備えたブラシレスモータの各相に対する通電モードを、非通電相の電圧と電圧閾値とに基づいて順次切り替えるブラシレスモータの駆動装置であって、
1つの通電モードを継続させてブラシレスモータを通電モードの切り替え角度位置に停止させた状態から次の通電モードへの切り替えを行って前記切り替え角度位置における非通電相の電圧を検出し、検出した非通電相の電圧に基づいて前記電圧閾値を設定する、ブラシレスモータの駆動装置。 - 前記電圧閾値の設定においては、検出した非通電相の電圧に基づき、該電圧を検出したときに行った通電モードの切り替えの次の順番の通電モードの切り替え判断に用いる前記電圧閾値を設定する、請求項1記載のブラシレスモータの駆動装置。
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