JP4513914B2 - モータ制御回路,車両用ファン駆動装置及びモータ制御方法 - Google Patents
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したがって、起動時に強制転流を行う際に、雰囲気温度の上昇によって発生トルクが減少した場合には、ロータが駆動回路側の転流速度に追従せず、起動が失敗するおそれがある。そのような問題を回避するには、温度上昇時にトルクが不足しないように、十分なレベルの電圧を印加する必要がある。
尚、ここで言う「相補PWM制御」とは、インバータ回路を介してモータをPWM制御する場合、インバータ回路を構成する上アーム側,下アーム側のスイッチング素子を双方ともPWM制御するものを示す。
そこで、停止状態若しくは低速回転状態からモータを起動する場合には、相補PWM制御によりモータへの印加電圧振幅が緩やかに変化するようにした駆動信号の強制転流を行うようにすれば、駆動音の発生を抑制しつつ、上記駆動信号の電圧レベルや周波数を適宜調整することで、モータを確実に起動するためのトルクを与えることも可能となる。
以下、本発明を車両用ファン駆動装置に適用した場合の第1実施例について図1ないし図4を参照して説明する。図1は、車両に搭載されるファンモータをPWM制御により矩形波通電して駆動する装置の一構成例を示すものである。ファン駆動装置1は、例えばECU(Electronic Control Unit)などの上位コントローラ2よりPWM信号として与えられるファンの回転速度指令を信号処理部3で受けると、PWM信号のデューティに応じた電圧信号を変換生成して回転数指令変換回路4に出力する。上位コントローラ2は、例えばラジエータ内部の水温を検知する水温センサ(図示せず)や車両速度を検知する車速センサなどからの出力信号を受けて、それらの検知結果に応じた回転速度指令を出力するものである。
以上において、位置検出回路8,回転数検出回路9,デューティ指令選択回路11,強制転流時デューティ指令生成回路13,駆動方法判定回路22は、起動制御手段23を構成している。
以降は、ステップS4で「NO」と判定してステップS9に移行することになり、モータ7は、センサレス制御方式により矩形波状の駆動信号が印加されて駆動される。
すなわち、車両用のファン6を定常的に駆動している状態では風切り音が発生するため、モータ7に矩形波状の駆動電圧を印加することで駆動音が発生しても車両の乗員に対してマスキングされるので問題はない。しかし、回転が停止している状態や低速回転状態からモータ7を起動する場合には、駆動音がマスキングされ難くなり駆動音が問題となる。また、モータ7を確実に起動するためのトルクを付与する必要性もある。
図5は本発明の第2実施例を示すものであり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分について説明する。第2実施例の構成は第1実施例と同様であり、電流検出回路21を使用する場合の作用について説明する。図2相当図である図5において、ステップS5で直流励磁によるロータ位置決めを行うと、デューティ指令選択回路11は、その際にシャント抵抗20に流れる電流値を、電流検出回路21を介して検出する(ステップS11)。そして、その電流値の大きさに応じて、起動用の駆動信号である擬似正弦波の電圧振幅(最大値)を可変設定する。
図6は本発明の第3実施例を示すものである。第3実施例では、起動用駆動信号の電圧を次第に増加させる(ステップS14)。すなわち、正弦波状に変化する振幅の最大値を、ステップS14を実行する毎に増加させる。例えば、印加電圧の上限に達するまでの間に、その上限の1%分ずつ増加させる。これにより、モータ7をより滑らかに及び確実に起動することができる。
図7は本発明の第4実施例を示すものである。第4実施例では、第3実施例のステップS14に替わるステップS15において、起動用駆動信号の転流周波数と電圧とを同一の所定比で順次増加させる。例えば、周波数を2.5Hz〜25Hzまで0.05Hz/msの割合で増加させながら強制転流を行うとき、デューティを15%から0.36%/Hzの比率で上昇させる。これにより、モータ7を一層滑らかに及び確実に起動することができる。
図8は本発明の第5実施例を示すものである。第5実施例では、第4実施例と同様に起動用駆動信号の転流周波数と電圧(パラメータ)とを双方共に順次増加させるが、それらの初期値並びに増加量をデータとして、EEPROM24に記憶させる。そして、ステップS5を実行すると、デューティ指令選択回路11は、EEPROM24に記憶されている転流周波数,印加電圧の初期値(例えば周波数は2.5Hz(10極モータの場合30rpm),電圧はデューティ15%)を読み出して設定し(ステップS16)、ステップS6の強制転流を開始する。
図9〜図12は本発明の第6〜第8実施例を示すものである。第6〜第8実施例は、モータ7を強制転流させる場合に印加する起動用駆動信号波形のバリエーションを示す。図9に示す第6実施例は、図3(b)と同様の2相変調方式による擬似正弦波の分解能をより荒くしたもので、通電角を15°ステップとしたものである。
また、図10に示す第7実施例は、電圧波形を台形波状とした場合であり、(a),(b)では斜辺の傾きが異なっている。また、図11に示す第8実施例は、電圧波形を三角波状とした場合である。起動用駆動信号の波形がこれらのような場合であっても、矩形波に比較すると印加電圧の変化はより緩やかになるため、モータ7を滑らかに起動することができる。
図13及び図14は本発明の第9実施例を示すものである。図13に示す駆動装置31は、回路内部の温度を検出するための温度検出回路(温度検出手段)32を備えており、温度検出回路32の検出出力は駆動方法判定回路33に与えられている。駆動方法判定回路33は、モータ7の回転数がNmin[rpm]以下である場合に温度検出回路32の検出出力を参照し、その検出結果に応じて強制転流時に使用する駆動信号波形を選択する指示を、強制転流時デューティ指令生成回路34並びに通電相振り分け回路35に出力する。そして、第1実施例の起動制御手段23に対して、駆動方法判定回路33,強制転流時デューティ指令生成回路34を置き換えたものが起動制御手段36を構成している。
そして、検出温度が所定温度以下であれば(ステップS22:YES)、強制転流時デューティ指令生成回路34並びに通電相振り分け回路35に対し、第1実施例と同様に起動用として正弦波状の駆動信号を選択させ(ステップS23)、ステップS6’に移行して強制転流を行う。
すなわち、回路周辺の温度が低い場合は、正弦波状の駆動信号を印加してモータを低騒音で起動することが望ましいが、回路周辺の温度が高い場合には、更なる温度上昇を抑制するため、PWM制御におけるスイッチング損失による発熱を抑えつつモータを7起動するのが適切となる。したがって、温度検出回路32が検出した温度の高低に応じてモータ7の起動方式を適切に切り替えることができる。
図15及び図16は本発明の第10実施例を示すものである。図15は、第3実施例の図6相当図である。第10実施例では、ステップS7を実行した後、ステップS8でインバータ回路19による通電をOFFする前に、ステップS25において印加電圧を減少させる処理を行う。
起動用駆動信号として用いる擬似正弦波は、その他、例えば通電角が30°ステップのものでも良く、通電角が60°未満であれば良い。
強制転流時の駆動信号の印加電圧は、負荷によっては第1実施例のように一定でも構わない。また、周波数や印加電圧を最初に高く設定し、その後次第に低下させるなど、負荷トルクや慣性モーメントにより最適な値に設定すれば良い。
強制転流からセンサレス制御に移行する間にモータへの通電をOFFする期間は、電気角360°以上に限ることなく、個別の設計に応じて適宜変更すれば良い。また、通電OFF期間自体を設けるか否かについても、適宜決定すれば良い。
第2実施例を、第3〜第10実施例に適用しても良い。
第5実施例において、記憶手段はEEPROMでなくても良い。
第10実施例において、ステップS25で電圧振幅を低下させる場合に、必ずしも電気角360°で振幅がゼロになるようにする必要はない。
インバータ回路の上アーム側に、NチャネルMOSFETを使用しても良い。
インバータ回路を構成するスイッチング素子は、IGBTでも良い。
車両用のファンを駆動するものに限らず、特に起動時におけるモータの駆動音を低減する必要があるものに適用が可能である。
Claims (31)
- 180°未満の通電角となる矩形波状の駆動信号で、通電休止区間に発生する誘起電圧により位置推定し通電を行うセンサレス制御方式によりブラシレスDCモータをPWM制御するモータ制御回路において、
前記モータが前記センサレス制御を適用できない停止状態又は低速回転状態にある場合に起動指令が与えられると、相補PWM制御により前記モータへの印加電圧振幅が緩やかに変化するようにした駆動信号の強制転流により当該モータを起動した後に、前記センサレス制御に切替える起動制御手段を備え、
前記起動用駆動信号の波形は、電気角60°未満の区間毎に前記モータへの印加電圧振幅が変化するように設定される擬似正弦波であることを特徴とするモータ制御回路。 - 前記起動制御手段は、前記モータが3相である場合、前記擬似正弦波状の起動用駆動信号を、2相変調方式により前記モータに印加することを特徴とする請求項1記載のモータ制御回路。
- 前記起動制御手段は、前記強制転流を行なった後、前記モータに対する通電を所定期間だけOFFしてから、前記センサレス制御に切替えることを特徴とする請求項1又は2記載のモータ制御回路。
- 前記起動制御手段は、前記誘起電圧の振幅が、前記位置推定が可能となるレベルに達するまで前記強制転流を行なった後、前記モータに対する通電を所定期間だけOFFしてから、前記センサレス制御に切替えることを特徴とする請求項3記載のモータ制御回路。
- 前記起動制御手段は、前記誘起電圧の振幅が、前記位置推定が可能となるレベルに達すると共に、前記モータによる負荷の駆動騒音が矩形波のセンサレス制御によるモータの駆動騒音以上となるまで前記強制転流を行なうことを特徴とする請求項4記載のモータ制御回路。
- 前記起動制御手段は、前記強制転流における前記モータへの印加電圧振幅を低下させてから、前記モータに対する通電をOFFするように切り替えることを特徴とする請求項3ないし5の何れかに記載のモータ制御回路。
- 前記起動制御手段は、前記電圧振幅を低下させる場合に、電気角360°で振幅がゼロになるように低下させることを特徴とする請求項6記載のモータ制御回路。
- 前記通電をOFFする期間を、前記センサレス制御に切替える時点の回転数において電気角360°以上とすることを特徴とする請求項3ないし7の何れかに記載のモータ制御回路。
- 前記起動制御手段は、前記強制転流時における前記起動用駆動信号のモータ印加電圧振幅を、少なくとも初期段階は次第に増加させることを特徴とする請求項1ないし8の何れかに記載のモータ制御回路。
- 前記起動制御手段は、前記強制転流時における前記起動用駆動信号の周波数及びモータ印加電圧振幅を、少なくとも初期段階は一定比で次第に増加させることを特徴とする請求項1ないし8の何れかに記載のモータ制御回路。
- 前記起動制御手段は、前記起動用駆動信号のパラメータ初期値及び増加量を格納する記憶手段を備え、前記初期値及び前記増加量を可変出来るようにしたことを特徴とする請求項9又は10記載のモータ制御回路。
- 前記起動制御手段は、直流通電により前記モータのロータを位置決めしてから、前記強制転流を開始することを特徴とする請求項1ないし11の何れかに記載のモータ制御回路。
- 前記位置決めの際に、前記モータに流れる電流を検出する電流検出手段を備え、
前記起動制御手段は、前記電流の値に応じて、前記起動用駆動信号のモータ印加電圧振幅を可変設定することを特徴とする請求項12記載のモータ制御回路。 - 回路内部の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記起動制御手段は、前記起動指令が与えられると前記温度検出手段により検出される温度を参照し、前記温度が所定値以下の場合は前記相補PWM制御による駆動信号を印加して起動を行い、前記温度が所定値を超えている場合は片側PWM制御による矩形波状の駆動信号を印加して起動を行うことを特徴とする請求項1ないし13の何れかに記載のモータ制御回路。 - 前記所定値は、PWM制御を実行した結果が、前記回路の温度を内部素子の定格温度範囲内に抑えるように設定されることを特徴とする請求項14記載のモータ制御回路。
- 請求項1ないし15の何れかに記載のモータ制御回路を備え、
前記モータによって車両に搭載されるファンを駆動することを特徴とする車両用ファン駆動装置。 - 180°未満の通電角となる矩形波状の駆動信号で、通電休止区間に発生する誘起電圧により位置推定し通電を行うセンサレス制御方式によりブラシレスDCモータをPWM制御する方法において、
前記モータが前記センサレス制御を適用できない停止状態又は低速回転状態にある場合に起動指令が与えられると、相補PWM制御により前記モータへの印加電圧振幅が緩やかに変化するようにした、電気角60°未満の区間毎に前記モータへの電圧振幅が変化するように設定される擬似正弦波状の起動用駆動信号の強制転流により当該モータを起動した後に、前記センサレス制御に切替えることを特徴とするモータ制御方法。 - 前記モータが3相である場合、前記擬似正弦波状の起動用駆動信号を、2相変調方式により前記モータに印加することを特徴とする請求項17記載のモータ制御方法。
- 前記強制転流を行なった後、前記モータに対する通電を所定期間だけOFFしてから、前記センサレス制御に切替えることを特徴とする請求項17又は18記載のモータ制御方法。
- 前記誘起電圧の振幅が、前記位置推定が可能となるレベルに達するまで前記強制転流を行なった後、前記モータに対する通電を所定期間だけOFFしてから、前記センサレス制御に切替えることを特徴とする請求項19記載のモータ制御方法。
- 前記誘起電圧の振幅が、前記位置推定が可能となるレベルに達すると共に、前記モータによる負荷の駆動騒音が矩形波のセンサレス制御によるモータの駆動騒音以上となるまで前記強制転流を行なうことを特徴とする請求項19記載のモータ制御方法。
- 前記強制転流におけるモータへの印加電圧振幅を低下させてから、前記モータに対する通電をOFFするように切り替えることを特徴とする請求項19ないし21の何れかに記載のモータ制御方法。
- 前記電圧振幅を低下させる場合に、電気角360°で振幅がゼロになるように低下させることを特徴とする請求項22記載のモータ制御方法。
- 前記通電をOFFする期間を、前記センサレス制御に切替える時点の回転数において電気角360°以上とすることを特徴とする請求項19ないし23の何れかに記載のモータ制御方法。
- 前記強制転流時における前記起動用駆動信号のモータ印加電圧振幅を、少なくとも初期段階は次第に増加させることを特徴とする請求項17ないし24の何れかに記載のモータ制御方法。
- 前記強制転流時における前記起動用駆動信号の周波数及びモータ印加電圧振幅を、少なくとも初期段階は一定比で次第に増加させることを特徴とする請求項17ないし24の何れかに記載のモータ制御方法。
- 前記起動用駆動信号のパラメータ初期値及び増加量を記憶手段に格納して、前記初期値及び増加量を可変出来るようにしたことを特徴とする請求項25又は26記載のモータ制御方法。
- 直流通電により前記モータのロータを位置決めしてから、前記強制転流を開始することを特徴とする請求項17ないし27の何れかに記載のモータ制御方法。
- 前記位置決めの際に、前記モータに流れる電流を検出し、
前記電流の値に応じて、前記起動用駆動信号のモータ印加電圧振幅を可変設定することを特徴とする請求項28記載のモータ制御方法。 - 前記起動指令が与えられると温度検出手段により検出される回路内部の温度を参照し、前記温度が所定値以下の場合は前記相補PWM制御による駆動信号を印加して起動を行い、前記温度が所定値を超えている場合は片側PWM制御による矩形波状の駆動信号を印加して起動を行うことを特徴とする請求項17ないし29の何れかに記載のモータ制御方法。
- 前記所定値を、PWM制御を実行した結果が、前記回路の温度を内部素子の定格温度範囲内に抑えるように設定することを特徴とする請求項30記載のモータ制御方法。
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