以下、本発明の実施形態におけるブラシレスモータの駆動装置を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態におけるブラシレスモータ6の駆動装置7の構成例を示す図である。
ブラシレスモータ6は、ロータの磁極位置を検出するためのセンサを有しないセンサレスタイプのモータである。ブラシレスモータ6は、永久磁石を有するロータと、3相(U、V、W)それぞれに対応するコイルU、V、Wがロータの回転方向に順に巻装されているステータとを備えている。各相のコイルU、V、Wそれぞれは、一端がモータ端子を介して駆動装置7に接続され、他端が互いに接続されている。ブラシレスモータ6は、例えば電動オイルポンプ(EOP:Electrical Oil Pump)やラジエータファンに使用される。
駆動装置7は、インバータ回路12、電流測定部13、パルス信号生成部14、ゲートドライバ回路15及び制御装置16を備えている。
インバータ回路12は、電源9から供給される直流電力を交流電力に変換してブラシレスモータ6に印加する。インバータ回路12は、図1に示すように、6つのスイッチング素子121UH、121UL、121VH、121VL、121WH、121WLを有している。インバータ回路12は、スイッチング素子121UH〜121WLのオンとオフとを切り替えて直流電力を交流電力に変換する。
直列に接続されたスイッチング素子121UH、121ULと、直列に接続されたスイッチング素子121VH、121VLと、直列に接続されたスイッチング素子121WH、121WLとは、電源9の高電位側と接地電位との間に並列に接続されている。また、スイッチング素子121UH、121ULの接続点は、コイルUの一端に接続されている。スイッチング素子121VH、121VLの接続点、及びスイッチング素子121WH、121WLの接続点は、それぞれがコイルVの一端、コイルWの一端に接続されている。
各スイッチング素子121UH〜121WLは、例えば、FET(FieldEffectiveTransistor;電界効果トランジスタ)、あるいはIGBT(InsulatedGateBipolarTransistor;絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)である。各スイッチング素子121UH〜121WLは、還流ダイオードと並列に接続された構成を有している。また、各スイッチング素子121UH〜121WLは、ゲートドライバ回路15を介して、制御装置16から入力されるパルス幅変調信号(駆動信号)に基づいて、オンとオフとが切り替えられる。
電流測定部13は、ブラシレスモータ6に流れる電流の値(以下、「モータ電流値」という。)Imを測定する。電流測定部13は、測定したモータ電流値Imを制御装置16に出力する。例えば、電流測定部13は、シャント抵抗や電流プローブである。
パルス信号生成部14は、ブラシレスモータ6を回転させることでブラシレスモータ6のコイルに発生する誘起電圧を取得する。そして、パルス信号生成部14は、取得した誘起電圧が所定の閾値以上となった場合にパルス信号を生成する。パルス信号生成部14は、生成したパルス信号を制御装置16に出力する。以下、パルス信号生成部14の具体的な構成例を説明する。
図2は、本実施形態におけるパルス信号生成部14の構成例を示す回路図である。同図に示すように、パルス信号生成部14は、各相に対応するモータ端子の電圧を示す誘起電圧信号が入力される。パルス信号生成部14は、入力された誘起電圧信号を分圧する分圧回路(抵抗R11及び抵抗R12)、及びパルス幅変調信号のノイズを除去する1次のCRフィルタ(抵抗R11及びキャパシタC11)からなるローパスフィルタ回路141A、141B、141Cと、等価中性点電位を検出する回路142と、等価中性点電位と無通電相(開放区間)に現れる各相の誘起電圧とからパルス信号を生成するコンパレータ143A、143B、143Cと、各コンパレータ143A〜143Cの出力からチャタリング成分をカットするローパスフィルタ回路(1次のCRフィルタ)144A、144B及び144Cを有している。
ここで、等価中性点電位を検出する回路142は、例えば、U相については、V相とW相とのモータ端子電圧から等価中性点電位を検出する2相比較方式を用いている。このようにすると、等価中性点電位として略フラットな電位が得られる。なお、各相U、V、Wすべての信号を用いて、等価中性点電位を求める3相比較方式を用いるようにしてもよい。この場合は、等価中性点電位は、電源電圧の1/2を中心にした略三角波になる。
コンパレータ143A〜143Cは、誘起電圧のアナログ信号が等価中性点電位より高いときにローレベルの信号を出力し、誘起電圧のアナログ信号が等価中性点電位以下のときにハイレベルの信号を出力する。これにより、各コンパレータ143A〜143Cは、電気角120度の分解能のパルス信号を生成することになる。コンパレータ143A〜143Cが出力する信号それぞれは、ローパスフィルタ回路144A〜144Cを経て制御装置16に入力される。
制御装置16には、パルス信号生成部14から各相のコイルU、V、Wそれぞれの誘起電圧に対応するパルス信号が入力される。また、制御装置16は、電流測定部13からモータ電流値Imを取得する。制御装置16は、パルス信号及びモータ電流値Imに基づいて、ブラシレスモータ6を制御する。
制御装置16は、電流取得部111、回転磁極位置検出部112、通電指令制御部113及び通電制御部114を備えている。なお、制御装置16は、CPUや、メモリ等を用いて構成し、メモリに記憶されているプログラムをCPUに実行させて各機能部として動作させるようにしてもよい。
電流取得部111は、電流測定部13が測定したモータ電流値Imを取得する。電流取得部111は、電流測定部13から取得したモータ電流値Imを位置検出通電部115及び2相通電制御部116に出力する。
回転磁極位置検出部112は、強制転流通電部117から第2の経過信号(後述する)を取得した場合、パルス信号生成部14から入力される各相に対応するパルス信号を取得したか否かを判定する。回転磁極位置検出部112は、パルス信号生成部14から入力される各相に対応するパルス信号に基づいて、ブラシレスモータ6のロータの位置(電気角)を算出し、算出したロータ位置を通常駆動通電制御部118に出力する。また、回転磁極位置検出部112は、算出したロータ位置の変化量からロータの回転速度を算出し、算出した回転速度を通電制御部114に出力する。
通電指令制御部113には、インバータ回路12における通電パターン及びブラシレスモータ6に印加する電圧が通電制御部114から入力される。通電指令制御部113は、通電制御部114から入力された通電パターン及びブラシレスモータ6に印加する電圧に基づいて、インバータ回路12が有する各スイッチング素子121UH〜121WLのオンとオフとの切替えを指示する信号を、ゲートドライバ回路15を介してインバータ回路12に出力する。
通電制御部114には、外部から作動指令が入力される。通電制御部114は、作動指令に基づいて、停止磁極位置検出制御、2相通電制御、強制転流制御及び通常駆動通電制御の順にブラシレスモータ6を制御する。停止磁極位置検出制御は、ブラシレスモータ6のロータが停止している位置を検出する制御である。2相通電制御は、強制転流制御時にブラシレスモータ6に印加する電圧をブラシレスモータ6のコイルの抵抗値に基づいて算出する制御である。強制通電制御は、誘起電圧に基づいたフィードバックを行わず、モータを回転させる制御である。通常駆動通電制御は、誘起電圧に基づいてロータの位置の検出し、検出したロータの位置に基づいてモータを回転させるフィードバック制御である。
通電制御部114は、位置検出通電部115、2相通電制御部116、強制転流通電部117及び通常駆動通電制御部118を備えている。
位置検出通電部115は、電流取得部111から供給されるモータ電流値Imに基づいてロータが停止している位置を検出する。具体的には、位置検出通電部115は、ブラシレスモータ6に通電する複数の通電パターンそれぞれを順に選択する。位置検出通電部115は、選択した通電パターンと、ロータが停止している位置を検出するために必要なブラシレスモータ6に印加する電圧(以下、「位置検出電圧」という。)を通電指令制御部113に出力する。なお、位置検出電圧は、予め設定されている。そして、位置検出通電部115は、通電パターンごとに、モータ電流値Imが目標電流値に達するまでの時間である通電時間を測定する。位置検出通電部115は、測定した通電時間に基づいて、磁極が停止している位置を検出する。このとき、位置検出通電部115は、各通電パターンに対応する通電時間のうち、最小の通電時間に対応する通電パターンの磁極位置を磁極(ロータ)が停止している位置とする。以下、上記の磁極(ロータ)が停止している位置(以下、「磁極停止位置」という。)を検出する制御を停止磁極位置検出制御という。位置検出通電部115は、2相通電制御部116及び強制転流通電部117に決定した磁極停止位置を出力する。
図3は、本実施形態における通電パターン#1〜#6を示す概略図である。同図に示すように、通電パターン#1〜#6は、ブラシレスモータ6のロータを駆動できるパターンになっている。
通電パターン#1は、U相のコイルUからV相のコイルVに電流を流すUV通電を行う。U相がN極磁化され、V相がS極磁化される。
通電パターン#2は、U相のコイルUからW相のコイルWに電流を流すUW通電を行う。U相がN極磁化され、W相がS極磁化される。
通電パターン#3は、V相のコイルVからW相のコイルWに電流を流すVW通電を行う。V相がN極磁化され、W相がS極磁化される。
通電パターン#4は、V相のコイルVからU相のコイルUに電流を流すVU通電を行う。V相がN極磁化され、U相がS極磁化される。
通電パターン#5は、W相のコイルWからU相のコイルUに電流を流すWU通電を行う。W相がN極磁化され、U相がS極磁化される。
通電パターン#6は、W相のコイルWからV相のコイルVに電流を流すWV通電を行う。W相がN極磁化され、V相がS極磁化される。
図4は、本実施形態における2相通電制御部116の概略ブロック図の一例を示す図である。2相通電制御部116は、後述する強制転流通電時にブラシレスモータ6に印加する電圧をブラシレスモータ6のコイルの抵抗値に基づいて算出する2相通電制御を実施する。
2相通電制御部116は、ロータ位置検出部1150、通電位置算出部1151、取得電圧調整部1152、取得部1153、電流制御部1154、記憶部1155、カウント部1156、電圧測定部1157、抵抗算出部1158、通電電圧算出部1159及び記憶部1160を備えている。
ロータ位置検出部1150は、位置検出通電部115から供給される磁極停止位置を取得する。ロータ位置検出部1150は、取得した磁極停止位置を通電位置算出部1151に出力する。
通電位置算出部1151は、ロータ位置検出部1150から供給される磁極停止位置に基づいて、ブラシレスモータ6の回転トルクを発生させない、又は発生する回転トルクが最も低い通電パターンを選択する。すなわち、通電位置算出部1151は、2相通電を行う場合に磁極停止位置から回転トルクを発生させない(又は、回転トルクが低い)通電パターン(以下、「低トルク通電パターン」という。)を選択する。通電位置算出部1151は、選択した低トルク通電パターンを電圧調整部1152に出力する。なお、低トルク通電パターンは、ロータが回転しない通電パターンであれば、特に限定されない。
このような低トルク通電パターンを用いることにより、強制転流制御を行う前に必要以上の電力を消費することがない。
取得部1153は、電流取得部111から供給されるモータ電流値Imを取得する。取得部1153は、取得したモータ電流値Imを電流制御部1154に出力する。
電流制御部1154は、取得部1153から供給されたモータ電流値Imを取得する。電流制御部1154は、記憶部1155からモータ電流閾値Ithを読み出す。モータ電流閾値Ithは、2相通電制御時にブラシレスモータ6のコイルに流すモータ電流値Imの目標値である。例えば、モータ電流閾値Ithは、モータ電流値Imを流すことによるインバータ回路12の発熱や2相通電制御の実施時間に基づいて予め決定される。したがって、モータ電流閾値Ithは、記憶部1155に予め記憶されている。
電流制御部1154は、モータ電流値Imとモータ電流閾値Ithとを比較し、モータ電流値Imがモータ電流閾値Ithになるようにブラシレスモータ6に印加する電圧を上げる、又は下げる指令(以下、「電圧調整指令」)を電圧調整部1152に出力する。例えば、電流制御部1154は、モータ電流値Imとモータ電流閾値Ithとの差(又は偏差)を算出する。そして、電流制御部1154は、モータ電流値Imとモータ電流閾値Ithとの差(又は偏差)を電圧調整指令として電圧調整部1152に出力する。
また、電流制御部1154は、カウント部1156から供給される第1の経過信号(後述する)を取得すると、電圧測定部1157が測定したコイルに印加されている電圧(以下、「通電電圧」という。)Vmを取得する。そして、電流制御部1154は、通電電圧Vm及びモータ電流値Imを抵抗算出部1158に出力する。
電圧調整部1152は、通電位置算出部1151から供給された低トルク通電パターンを取得する。電圧調整部1152は、電流制御部1154から供給される電圧調整指令を取得する。電圧調整部1152は、電圧調整指令に基づいて通電電圧を算出する。例えば、ここで、電圧調整部1152は、入力される電圧調整指令、例えばモータ電流値Imとモータ電流閾値Ithとの差が小さくなるように、一般的に公知のPI(Proportional Integral)制御、又は、PID(Proportional Integral Derivative)制御を用いてブラシレスモータ6に印加する電圧(以下、「2相通電電圧」という。)を算出する。電圧調整部1152は、通電位置算出部1151から供給された低トルク通電パターン及び算出した2相通電電圧を通電指令制御部113に出力する。
カウント部1156は、2相通電制御部116が2相通電制御を実施すると、計時を開始する。例えば、カウント部1156は、電圧調整部1152から低トルク通電パターン又は2相通電電圧が出力されると計時を開始する。そして、カウント部1156は、計時した時間が所定の時間ΔT1に達した場合、計時した時間が所定の時間ΔT1に達したことを示す第1の経過信号を電流制御部1154に出力する。
電圧測定部1157は、ブラシレスモータ6に通電することでコイルに印加される通電電圧Vmを測定する。電圧測定部1157は、測定した通電電圧Vmを電流制御部1154に出力する。
抵抗算出部1158は、電流制御部1154から供給される通電電圧Vm及びモータ電流値Imを取得する。抵抗算出部1158は、通電電圧Vmからモータ電流値Imを除算することで、ブラシレスモータ6のコイルの抵抗値Rm(=Vm/Im)を算出する。抵抗算出部1158は、算出した抵抗値Rmを通電電圧算出部1159に出力する。
通電電圧算出部1159は、抵抗算出部1158から供給された抵抗値Rmを取得する。また、通電電圧算出部1159は、記憶部1160から強制通電制御時にブラシレスモータ6に流す電流値(以下、「強制電流値」という。)Ic(>モータ電流閾値Ith)を記憶部1160から読み出す。強制電流値Icは、記憶部1160に予め記憶されている。強制電流値Icは、強制転流通電部117がブラシレスモータ6に対して強制転流制御を実施する際に、ブラシレスモータ6に流す電流値である。なお、強制電流値Icは、ブラシレスモータ6が回転可能な転流回転数以上に回転させる電流値であり、且つパルス信号生成部14が各相のコイルU、V、Wそれぞれに対応するパルス信号を生成可能な電圧値を有する誘起電圧を発生させることができる電流値である。強制電流値Icは、予めブラシレスモータ6の定数から決定されてもよい。
通電電圧算出部1159は、抵抗算出部1158から供給された抵抗値Rmに強制電流値Icを乗算することで、強制通電制御時にブラシレスモータ6に印加する電圧値(以下、「強制転流電圧」という。)Vc(=Ic×Rm)を算出する。通電電圧算出部1159は、算出した強制転流電圧Vcを強制転流通電部117に出力する。
強制転流通電部117は、ブラシレスモータ6に対して、ブラシレスモータ6が回転可能な転流回転数による強制転流制御を実施する。すなわち、強制転流通電部117は、位置検出通電部115から供給される磁極停止位置を取得する。強制転流通電部117は、取得した磁極停止位置に基づいて、ブラシレスモータ6の回転トルクを発生させる、又は発生する回転トルクが最も高い通電パターンを選択する。すなわち、通電位置算出部1151は、磁極停止位置からトルクを発生させる(又は回転トルクが高い)通電パターン(以下、「高トルク通電パターン」という。)を選択する。
強制転流通電部117は、通電電圧算出部1159が算出した強制転流電圧Vcを取得する。強制転流通電部117は、高トルク通電パターンと強制転流電圧Vcとを通電指令制御部113に出力する。
強制転流通電部117は、強制転流制御を実施すると、計時を開始する。例えば、強制転流通電部117は、計時するカウント部(不図示)を備えている。強制転流通電部117は、カウント部にて計時した時間が所定の時間ΔT2に達した場合、計時した時間が所定の時間ΔT2に達したことを示す第2の経過信号を出力する。
通常駆動通電制御部118は、回転磁極位置検出部112から供給されるロータの位置及びロータの回転速度に基づいて、ブラシレスモータ6に通電する通電パターンの切り換えを制御する。例えば、通常駆動通電制御部118は、回転磁極位置検出部112から出力されるロータ位置及びロータの回転速度に基づいてブラシレスモータ6のコイルU、V、Wに通電する際に用いる通電パターンの選択を行う。そして、通常駆動通電制御部118は、選択した通電パターンと予め設定されたブラシレスモータ6に印加する電圧(以下、「通電制御電圧」という。)を通電指令制御部113に出力する。
以下、図5及び図6を用いて、ブラシレスモータ6の駆動装置7の動作を説明する。図5は、本実施形態におけるブラシレスモータ6の駆動装置7の動作を示すフローチャートである。図6は、本実施形態における駆動装置7の始動時の処理を具体的に説明するためのタイミングチャートである。図6(a)は、駆動装置7の始動時における誘起電圧のタイミングチャートである。図6(a)に示すように、縦軸が誘起電圧を示し、横軸が時間を示す。図6(b)は、駆動装置7の始動時における通電電圧のタイミングチャートである。図6(b)に示すように、縦軸が通電電圧を示し、横軸が時間を示す。図6(c)は、駆動装置7の始動時における誘起電圧のタイミングチャートである。図6(c)に示すように、縦軸がモータ電流を示し、横軸が時間を示す。
ステップS101において、位置検出通電部115は、ブラシレスモータ6に通電する複数の通電パターンそれぞれを順に選択する。位置検出通電部115は、選択した通電パターンと、予め設定された位置検出電圧を通電指令制御部113に出力する。通電指令制御部113は、位置検出通電部115から取得した通電パターン及び位置検出電圧に基づいて、各スイッチング素子121UH〜121WLのオンとオフとの切替えを指示する信号を、ゲートドライバ回路15を介してインバータ回路12に出力する。これにより、通電指令制御部113は、ブラシレスモータ6に通電する。位置検出通電部115は、通電パターンごとに、モータ電流値Imを取得し、そのモータ電流値Imが目標電流値に達するまでの時間(通電時間)を測定する。位置検出通電部115は各通電パターンに対応する通電時間のうち、最小の通電時間に対応する通電パターンの磁極位置を磁極が停止している位置である磁極停止位置とする。したがって、図6に示すように、駆動装置7は、時間T0から時間T1かけて、停止磁極位置検出制御を実施し各通電パターンに通電する。位置検出通電部115は、決定した磁極停止位置を2相通電制御部116に出力する。
ステップS102において、ロータ位置検出部1150は、位置検出通電部115から供給される磁極停止位置を取得する。ロータ位置検出部1150は、取得した磁極停止位置を通電位置算出部1151に出力する。通電位置算出部1151は、ロータ位置検出部1150から供給される磁極停止位置を取得する。通電位置算出部1151は、取得した磁極停止位置に基づいて、低トルク通電パターンを選択する。通電位置算出部1151は、低トルク通電パターンを電圧調整部1152に出力する。
ステップS103において、電流制御部1154は、取得部1153から供給されたモータ電流値Imを取得する。電流制御部1154は、記憶部1155からモータ電流閾値Ithを読み出す。電流制御部1154は、モータ電流値Imとモータ電流閾値Ithとを比較し、モータ電流値Imがモータ電流閾値Ithになるように通電電圧を上げる、又は下げる指令である電圧調整指令を電圧調整部1152に出力する。例えば、電流制御部1154は、モータ電流値Imとモータ電流閾値Ithとの差を算出する。そして、電流制御部1154は、モータ電流値Imとモータ電流閾値Ithとの差を電圧調整指令として電圧調整部1152に出力する。電圧調整部1152は、通電位置算出部1151から供給された低トルク通電パターンを取得する。電圧調整部1152は、電流制御部1154から供給される電圧調整指令を取得する。電圧調整部1152は、電圧調整指令に基づいて2相通電電圧を算出する。電圧調整部1152は、通電位置算出部1151から供給された低トルク通電パターン及び算出した2相通電電圧を通電指令制御部113に出力する。通電指令制御部113は、電圧調整部1152から取得した低トルク通電パターン及び2相通電電圧に基づいて、各スイッチング素子121UH〜121WLのオンとオフとの切替えを指示する信号を、ゲートドライバ回路15を介してインバータ回路12に出力する。これにより、通電指令制御部113は、ブラシレスモータ6に通電する。
ステップS104において、カウント部1156は、2相通電制御部116が2相通電制御を実施すると(時刻T1)、計時を開始する。カウント部1156は、計時した時間が所定の時間ΔT1に達したか否かを判定する。カウント部1156は、計時した時間が所定の時間ΔT1に達した場合、第1の経過信号を電流制御部1154に出力する(ステップS104:YES)。カウント部1156は、計時した時間が所定の時間ΔT1に達していない場合、ステップS102に戻って低トルク通電パターンの選択処理を実施する(ステップS104:NO)。
ステップS105において、抵抗算出部1158は、時間T2(時間T1+ΔT1)にて電流制御部1154から供給されるモータ電流値Imを取得する。抵抗算出部1158は電圧測定部1157から供給される現在の通電電圧Vmを取得する。抵抗算出部1158は、通電電圧Vmからモータ電流値Imを除算することで、ブラシレスモータ6のコイルの抵抗値Rm(=Vm/Im)を算出する。抵抗算出部1158は、算出した抵抗値Rmを通電電圧算出部1159に出力する。
ステップS106において、通電電圧算出部1159は、抵抗算出部1158から供給された抵抗値Rmを取得する。また、通電電圧算出部1159は、記憶部1160から強制電流値Icを記憶部1160から読み出す。通電電圧算出部1159は、抵抗算出部1158から供給された抵抗値Rmに強制電流値Icを乗算することで、強制転流電圧Vc(=Ic×Rm)を算出する。通電電圧算出部1159は、算出した強制転流電圧Vcを強制転流通電部117に出力する。したがって、図6に示すように、駆動装置7は、時間T1から時間T2かけて、モータ電流値Imがモータ電流閾値Ithになるようにフィードバック通電を実施するとともに、時間T2のタイミングにてモータ電流値Im及び通電電圧Vmからブラシレスモータ6のコイルの抵抗値Rmを算出する。そして、通電電圧算出部1159は、そのコイルの抵抗値Rmに基づいて強制転流電圧Vcを算出する。
ステップS107において、強制転流通電部117は、ブラシレスモータ6に対して、ブラシレスモータ6が回転可能な転流回転数による強制転流制御を実施する。すなわち、強制転流通電部117は、位置検出通電部115から供給される磁極停止位置を取得する。強制転流通電部117は、取得した磁極停止位置に基づいて、高トルク通電パターンを選択する。強制転流通電部117は、通電電圧算出部1159が算出した強制転流電圧Vcを取得する。強制転流通電部117は、高トルク通電パターンと強制転流電圧Vcとを通電指令制御部113に出力する。通電指令制御部113は、強制転流通電部117から取得した高トルク通電パターン及び強制転流電圧Vcに基づいて、各スイッチング素子121UH〜121WLのオンとオフとの切替えを指示する信号を、ゲートドライバ回路15を介してインバータ回路12に出力することで、ブラシレスモータ6に通電する。これにより、図6に示すように、ブラシレスモータ6を回転しコイルに誘起電圧が発生する。
ステップS108において、強制転流通電部117は、強制転流制御を実施すると(時刻T2)、計時を開始する。強制転流通電部117は、カウント部にて計時した時間が所定の時間ΔT2に達したか否かを判定する。強制転流通電部117は、計時した時間が所定の時間ΔT2に達した場合(時間T3)、第2の経過信号を通常駆動通電制御部118に出力する(ステップS108:YES)。強制転流通電部117は、計時した時間が所定の時間ΔT2に達していない場合、ステップS106に戻って強制転流電圧Vcの算出処理を実施する(ステップS108:NO)。
ステップS109において、回転磁極位置検出部112は、時間T3(T2+ΔT2)にて強制転流通電部117から第2の経過信号を取得すると、パルス信号生成部14からパルス信号を取得しているか否かを判定する。制御装置16は、パルス信号生成部14からパルス信号を取得した場合、すなわち誘起電圧が所定の閾値を超えた場合、パルス信号生成部14から入力される各相に対応するパルス信号に基づいて、ブラシレスモータ6のロータの位置(電気角)を算出する。そして、回転磁極位置検出部112は、算出したロータ位置を通常駆動通電制御部118に出力する。また、回転磁極位置検出部112は、算出したロータ位置の変化量からロータの回転速度を算出し、算出した回転速度を通電制御部114に出力する。一方、制御装置16は、パルス信号生成部14からパルス信号を取得しない場合、すなわち誘起電圧が所定の閾値未満である場合、ステップS101に処理を実施する。
ステップS110において、通常駆動通電制御部118は、回転磁極位置検出部112から出力されるロータ位置及びロータの回転速度に基づいてブラシレスモータ6のコイルU、V、Wに通電する際に用いる通電パターンの選択を行う。そして、通常駆動通電制御部118は、選択した通電パターンと予め設定された通電制御電圧を通電指令制御部113に出力する。通電指令制御部113は、通常駆動通電制御部118から取得した通電パターン及び通電制御電圧に基づいて、インバータ回路12が有する各スイッチング素子121UH〜121WLのオンとオフとの切替えを指示する信号を、ゲートドライバ回路15を介してインバータ回路12に出力することで、ブラシレスモータ6に通電する。
以下に、本実施形態における駆動装置7の効果について説明する。まず、 従来の駆動装置について説明する。図7は、コイルの温度が変化した場合での従来の駆動装置の始動時の処理を説明するためのタイミングチャートである。図7(a)は、ブラシレスモータのコイルの温度が高い場合における従来の駆動装置の始動時の処理を説明するためのタイミングチャートである。
図7(a)に示すように、周囲温度等のよりブラシレスモータのコイルの温度が高くなると、コイルの抵抗値も高くなる。これにより、予め設定された強制転流電圧を所定の時間ΔT2だけコイルに印加してもコイルに十分なモータ電流を流すことができない。したがって、ロータの所定の永久磁石と所定の磁極が釣り合う所定の磁極位置までロータを回転させてもロータの回転数が所望の回転数に至らず、誘起電圧が所定の閾値を超えることができないため、駆動装置は、強制通電制御から通常駆動通電制御に移行することができない。図7(b)は、ブラシレスモータのコイルの温度が低い場合における従来の駆動装置の始動時の処理を説明するためのタイミングチャートである。図7(b)に示すように、周囲温度等のよりブラシレスモータのコイルの温度が低くなると、コイルの抵抗値も低くなる。これにより、予め設定された強制転流電圧を所定の時間ΔT2だけコイルに印加すると、コイルに過剰なモータ電流を流してしまうことになる。したがって、ブラシレスモータには、過剰な回転トルクが発生し、所定の磁極位置を越えるようなトルクでロータを引き込んでしまう。ロータが所定の磁極位置を越えてしまった場合、ロータは所定の磁極位置で釣り合おうとするため、ロータは僅かに逆回転する。これにより、ブラシレスモータの回転数が低下し、最終的な検出時点で誘起電圧が所定の閾値未満になってしまうため、駆動装置は、強制通電制御から通常駆動通電制御に移行することができない。
図8は、本実施形態におけるコイルの温度が変化した場合での駆動装置7の始動時の処理を説明するためのタイミングチャートである。図8(a)は、ブラシレスモータのコイルの温度が高い場合における駆動装置7の始動時の処理を説明するためのタイミングチャートである。図8(a)に示すように周囲温度等のよりブラシレスモータ6のコイルの温度が高くなると、コイルの抵抗値も高くなる。ただし、駆動装置7は、時間T2において、モータ電流値Im及び通電電圧Vmからブラシレスモータ6のコイルの抵抗値Rmを算出する。そして、通電電圧算出部1159は、そのコイルの抵抗値Rmに基づいて強制転流電圧Vcを算出する。したがって、駆動装置7は、パルス信号を取得するために必要な回転トルクを発生させることができ、誘起電圧を所定の閾値以上に到達させることができる。これにより、駆動装置は、コイルの抵抗値は高くなった場合でも強制通電制御から通常駆動通電制御に移行することができる。
図8(b)は、ブラシレスモータのコイルの温度が低い場合における駆動装置7の始動時の処理を説明するためのタイミングチャートである。図8(b)に示すように周囲温度等のよりブラシレスモータ6のコイルの温度が低くなると、コイルの抵抗値も低くなる。ただし、駆動装置7は、時間T2において、モータ電流値Im及び通電電圧Vmからブラシレスモータ6のコイルの抵抗値Rmを算出する。そして、通電電圧算出部1159は、そのコイルの抵抗値Rmに基づいて強制転流電圧Vcを算出する。したがって、駆動装置7は、コイルの抵抗値が低くなることによるモータ電流の増大により発生する過剰な回転トルクを抑制し、所定の磁極位置を越えてロータを引き込むことを防止する。これにより、駆動装置7は、パルス信号を取得するために必要な回転トルクを発生させることができ、誘起電圧を所定の閾値以上に到達させることができる。これにより、駆動装置は、コイルの抵抗値は低くなった場合でも強制通電制御から通常駆動通電制御に移行することができる。
上述したように、本実施形態の駆動装置7は、モータ電流値Im及び通電電圧Vmからブラシレスモータ6のコイルの抵抗値Rmを算出する。そして、駆動装置7は、そのコイルの抵抗値Rmに基づいて強制転流電圧Vcを算出する。したがって、駆動装置7は、強制転流制御時において、コイルの温度が変化した場合でも、パルス信号を取得するために必要十分な回転トルクを発生させることができるため、ロータ位置を精度良く検出することが可能である。
また、上述したように、本実施形態の駆動装置7は、2相通電制御時にブラシレスモータ6に流す電流(モータ電流閾値Ith)は、強制電流値Icよりも低く設定されている。したがって、強制転流電圧Vcの算出段階で消費する電力を従来よりも小さくすることができる。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
上述の実施形態において、モータ電流閾値Ithと強制電流値Icとが異なる場合を説明したが、これに限定されない。例えば、図9に示すように、モータ電流閾値Ithと強制電流値Icとが略同一に設定できる場合には、2相通電電圧を強制転流電圧Vcとすることができる。
上述した実施形態における制御装置16の機能をコンピュータで実現しても良い。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。