JP6123268B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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この発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、タイヤ重量を軽減できる空気入りタイヤに関する。
近年では、地球温暖化対策などの環境への配慮から、タイヤを軽量化すべき要求がある。この点において、従来の空気入りタイヤでは、体積の大きいタイヤ部材(例えば、キャップトレッドゴム、サイドウォールゴムなど)を薄肉化した構成が採用されている。しかしながら、タイヤ部材を薄肉化すると、タイヤの耐摩耗性能や耐久性能が低下する。このため、更なるタイヤの軽量化が難しいという課題がある。
かかる課題に関する従来の空気入りタイヤとして、特許文献1に記載される技術が知られている。
特開2012−106625号公報
この発明は、タイヤ重量を軽減できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、この発明にかかる空気入りタイヤは、一対のビードコアと、熱可塑性シートから成ると共に端部をタイヤ幅方向外側に巻き上げて前記ビードコアを包み込む少なくとも2層のカーカス層と、複数のベルトプライを積層して成ると共に前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層と、前記カーカス層のタイヤ幅方向外側に配置されるサイドウォールゴムと、前記カーカス層の巻き上げ部に沿って配置されるインシュレーション層と、隣り合う前記カーカス層の間に介在するゴム層とを備え、且つ、前記インシュレーション層が、単一ゴム材料、ファイバー・レインフォースド・ラバー、または、コートゴムで被覆されたコード材から構成されることを特徴とする。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、一対のビードコアと、熱可塑性シートから成ると共に端部をタイヤ幅方向外側に巻き上げて前記ビードコアを包み込むカーカス層と、複数のベルトプライを積層して成ると共に前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層と、前記カーカス層のタイヤ幅方向外側に配置されるサイドウォールゴムと、前記カーカス層の巻き上げ部に沿って配置されるインシュレーション層と、前記カーカス層の巻き上げ部の外周面を覆って前記カーカス層の巻き上げ端部まで延在するゴム層とを備え、且つ、前記インシュレーション層が、単一ゴム材料、ファイバー・レインフォースド・ラバー、または、コートゴムで被覆されたコード材から構成されることを特徴とする。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、一対のビードコアと、熱可塑性シートから成ると共に端部をタイヤ幅方向外側に巻き上げて前記ビードコアを包み込むカーカス層と、複数のベルトプライを積層して成ると共に前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層と、前記カーカス層のタイヤ幅方向外側に配置されるサイドウォールゴムと、前記カーカス層の巻き上げ部に沿って配置されるインシュレーション層とを備え、前記インシュレーション層が、単一ゴム材料、ファイバー・レインフォースド・ラバー、または、コートゴムで被覆されたコード材から構成され、且つ、前記カーカス層の巻き上げ端部からタイヤ幅方向外側に5[mm]の位置における前記サイドウォールゴムの厚さと前記インシュレーション層の厚さとの総和tが、0.2[mm]≦t≦3.0[mm]の範囲内にあることを特徴とする。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、一対のビードコアと、熱可塑性シートから成ると共に端部をタイヤ幅方向外側に巻き上げて前記ビードコアを包み込むカーカス層と、複数のベルトプライを積層して成ると共に前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層と、前記カーカス層のタイヤ幅方向外側に配置されるサイドウォールゴムと、前記カーカス層の巻き上げ部に沿って配置されるインシュレーション層とを備え、前記インシュレーション層が、単一ゴム材料、ファイバー・レインフォースド・ラバー、または、コード材をコートゴムで被覆して圧延加工した部材から構成され、且つ、前記インシュレーション層のタイヤ幅方向内側の端部が、前記カーカス層の巻き上げ端部とタイヤ赤道面との間にあることを特徴とする。
この発明にかかる空気入りタイヤでは、(1)カーカス層が熱可塑性シートから成るので、カーカス層がスチールあるいは有機繊維材をコートゴムで被覆して成る構成と比較して、タイヤ重量が軽減される利点がある。また、(2)グリーンタイヤの成形工程にてカーカス層を巻き上げるときに、インシュレーション層が熱可塑性シートに対する裏打ち材として機能する。これにより、熱可塑性シートの変形が低減されて、熱可塑性シートの巻き上げ部におけるバックルの発生が抑制される利点がある。
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ1の子午断面図である。 図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤのカーカス層を示す一部拡大子午断面図である。 図3は、本実施形態に係る空気入りタイヤのインシュレーション層を示す一部拡大子午断面図である。 図4は、本実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法を示す説明図である。 図5は、本実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法を示す説明図である。 図6は、本実施形態に係る空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。 図7は、本実施形態に係る空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。 図8は、本実施形態に係る空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。 図9は、本実施形態に係る空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。 図10は、本実施形態に係る空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。 図11は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
[空気入りタイヤ]
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ1の子午断面図である。以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
本実施形態の空気入りタイヤ1は、図1に示すようにトレッド部2と、その両側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4およびビード部5とを有している。また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7と、ベルト補強層8とを備えている。
トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、トレッド面21が形成されている。トレッド面21は、タイヤ周方向に沿って延在する複数(本実施形態では4本)の主溝22が設けられている。そして、トレッド面21は、これら複数の主溝22により、タイヤ周方向に沿って延在するリブ状の陸部23が複数形成されている。また、図には明示しないが、トレッド面21は、各陸部23において、主溝22に交差するラグ溝が設けられている。陸部23は、ラグ溝によってタイヤ周方向で複数に分割されている。また、ラグ溝は、トレッド部2のタイヤ幅方向最外側でタイヤ幅方向外側に開口して形成されている。なお、ラグ溝は、主溝22に連通している形態、または主溝22に連通していない形態の何れであってもよい。
ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア51とビードフィラー52とを有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー52は、カーカス層6のタイヤ幅方向端部がビードコア51の位置で巻き上げられることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
カーカス層6は、各タイヤ幅方向両端部が、一対のビードコア51でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に巻き上げられてタイヤ径方向外側に延在され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6についての詳細は後述する。
ベルト層7は、少なくとも2枚のベルトプライ71、72を積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルトプライ71、72は、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、20度〜30度)で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。また、重なり合うベルトプライ71、72は、互いのコードが交差するように配置されている。
ベルト補強層8は、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置されてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に略平行(±5度)でタイヤ幅方向に複数並設されたコード(図示せず)がコートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。図1で示すベルト補強層8は、ベルト層7のタイヤ径方向外側においてベルト層7全体を覆うように配置されたベルト補強層81と、当該ベルト補強層81のタイヤ径方向外側においてベルト層7全体を覆うように配置されたベルト補強層82と、当該ベルト補強層82のタイヤ幅方向外側においてベルト層7のタイヤ幅方向各端部をそれぞれ覆うように配置されたベルト補強層83とで構成されている。なお、ベルト補強層8の構成は、上記に限らず、図には明示しないが、ベルト層7全体を覆うように配置される構成や、ベルト層7のタイヤ幅方向各端部をそれぞれ覆うように配置される構成のみ、またはこれらを適宜組み合わせた構成がある。すなわち、ベルト補強層8は、ベルト層7の少なくともタイヤ幅方向両端部に重なるものである。また、ベルト補強層8は、帯状(例えば幅10[mm])のストリップ材をタイヤ周方向に巻き付けて設けられている。
[カーカス層]
図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤのカーカス層を示す一部拡大子午断面図である。
上述した空気入りタイヤ1において、カーカス層6は、少なくとも2層(図1では2層で示し、図2では3層で示す)で構成されており、熱可塑性シート(61、62、63)で形成されている。そして、熱可塑性シート(61、62、63)は、各層同士が重なる間にゴム層6aが配置されている。図2においては、熱可塑性シート(61、62、63)の各層同士が重なる間以外に、ビード部5の巻き上げ部分で最も外側となる熱可塑性シート61の外側にもゴム層6aが設けられた形態を示す。
熱可塑性シート(61、62、63)は、熱可塑性樹脂、または熱可塑性樹脂中にエラストマー成分をブレンドした熱可塑性エラストマー組成物で構成されており、コードを有さないものである。
本実施形態で使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えばナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕、ポリエステル系樹脂〔例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリブチレンテレフタレート/テトラメチレングリコール共重合体、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えばポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂〔例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレンアクリル酸共重合体(EAA)、エチレンメチルアクリレート樹脂(EMA)〕、ポリビニル系樹脂〔例えば酢酸ビニル(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体〕、セルロース系樹脂〔例えば酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)〕、イミド系樹脂〔例えば芳香族ポリイミド(PI)〕などを挙げることができる。
本実施形態で使用されるエラストマーとしては、例えば、ジエン系ゴムおよびその水素添加物〔例えばNR、IR、エポキシ化天然ゴム、SBR、BR(高シスBRおよび低シスBR)、NBR、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)〕、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニルまたはジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー、含ハロゲンゴム〔例えばBr−IIR、Cl−IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHC、CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M−CM)〕、シリコーンゴム〔例えばメチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム〕、含イオウゴム〔例えばポリスルフィドゴム〕、フッ素ゴム〔例えばビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム〕、熱可塑性エラストマー〔例えばスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー〕などを挙げることができる。
このように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、少なくとも2層のカーカス層6が、そのタイヤ幅方向両端部を両ビード部5に配置したビードコア51まで延在されるとともにビードコア51のタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に巻き上げられてタイヤ径方向外側に延在された空気入りタイヤ1において、カーカス層6は、熱可塑性シート(61、62、63)で形成されてなり、少なくとも熱可塑性シート(61、62、63)の各層同士が重なる間にゴム層6aが配置されている。
この空気入りタイヤ1によれば、カーカス層6を熱可塑性シート(61、62、63)で形成し、少なくとも各層間にゴム層6aを配置したことにより、一般的な空気入りタイヤに適用されるようなタイヤ幅方向に配置されるカーカスコードがコートゴムで被覆されたカーカス層と同等にタイヤの骨格となる機能を有する。この熱可塑性シート(61、62、63)は、カーカスコードよりも軽量である。この結果、タイヤ重量をより軽減することが可能になる。
しかも、この空気入りタイヤ1によれば、カーカス層6を熱可塑性シート(61、62、63)で形成したことにより、一般的な空気入りタイヤの内側に適用されるインナーライナーにおける空気漏れを抑制する機能を有する。この結果、インナーライナーを省略することが可能になり、タイヤ重量をより軽減することが可能になる。
さらに、この空気入りタイヤ1によれば、カーカス層6を熱可塑性シート(61、62、63)で形成したことにより、カーカス層6において、カレンダー工程(ゴムのシーティング(シート加工)、織布へのゴムのコーティング(トッピング加工)などの操作を行う工程)を省略することができるため、タイヤの製造工程を簡素化することが可能になる。
なお、ゴム層6aの平均厚さは、0.05[mm]以上0.5[mm]以下であることが好ましい。0.05[mm]以上であれば製造が可能であり、0.5[mm]以下であれば重量の増加を防ぐことが可能になる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、カーカス層6をなす熱可塑性シート(61、62、63)は、単層の平均厚さが0.03[mm]以上1.0[mm]以下であり、かつ空気透過係数が3×10^ −12 [cc・cm/cm・sec・cmHg]以上500×10^ −12 [cc・cm/cm・sec・cmHg]以下であることが好ましい。
ここで、平均厚さは、測定対象タイヤをタイヤ周方向に幅20[mm]から30[mm]でタイヤ幅方向に切断し、タイヤ幅方向の長さを少なくとも8等分し、カーカス層6を構成する熱可塑性シート(61、62、63)のそれぞれの厚みを測定し、単層分について平均化して得る。また、空気透過係数は、JIS K7126「プラスチックフィルムおよびシートの気体透過度試験方法(A)」に準じ、試験気体を空気(N:O=8:2)とし、試験温度を30[℃]として得る。
この空気入りタイヤ1によれば、熱可塑性シート(61、62、63)の上記厚さの規定によりタイヤの骨格となる機能を顕著に有し、かつ上記空気透過係数の規定によりインナーライナーの機能を顕著に有することから、タイヤ重量を軽減化する効果を顕著に得ることが可能になる。なお、インナーライナーの機能を兼ね、かつタイヤ重量を軽減化する効果を顕著に得るため、熱可塑性シート(61、62、63)の単層の平均厚さを0.05[mm]以上0.6[mm]以下とすることがさらに好ましく、インナーライナーの機能を兼ね、かつタイヤ重量を軽減化する効果をより顕著に得るため、熱可塑性シート(61、62、63)の単層の平均厚さを0.08[mm]以上0.5[mm]以下とすることがより好ましい。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、ゴム層6aは、熱可塑性シート(61、62、63)との剥離強度が50[N/25mm]以上400[N/25mm]以下であることが好ましい。
ここで、剥離強度は、JIS K6256に準じて測定して得る。
この空気入りタイヤ1によれば、ゴム層6aの上記剥離強度の規定により、カーカス層6間の接着性が向上し、結果としてタイヤの耐久性を向上することが可能になる。なお、剥離強度の上限は、400[N/25mm]を超えてもよいが、タイヤ成形時に供給装置の金属ドラムに密着してハンドリング性が低下する傾向となり修正し難くなるため、400[N/25mm]とした。なお、耐久性を向上する効果を顕著に得るため、ゴム層6aの剥離強度を75[N/25mm]以上400[N/25mm]以下とすることがさらに好ましく、耐久性をより向上しタイヤ成形時のハンドリング性をより向上する効果を顕著に得るため、ゴム層6aの剥離強度を100[N/25mm]以上300[N/25mm]以下とすることがより好ましい。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、ゴム層6aは、下記式(1)中のR、R、R、RおよびRが、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数が1個以上8個以下のアルキル基で表される化合物およびホルムアルデヒドの縮合物と、メチレンドナーと、加硫剤とを含むゴム組成物であって、縮合物の配合量が、ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上80質量部以下であり、メチレンドナーの配合量/前記縮合物の配合量の比が、1以上4以下であることが好ましい。
Figure 0006123268
この空気入りタイヤ1によれば、ゴム層6aの熱可塑性シート(61、62、63)との接着性を向上することが可能になる。すなわち、ゴム層6aの熱可塑性シート(61、62、63)に対する剥離強度が向上し、カーカス層6間の接着性が向上し、結果としてタイヤとしての耐久性を向上することが可能になる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、熱可塑性シート(61、62、63)は、単層の室温における引張降伏強さが1[MPa]以上100[MPa]以下であることが好ましい。
ここで、引張降伏強さは、JIS K7113に規定の試験法で測定して得る。
この空気入りタイヤ1によれば、熱可塑性シート(61、62、63)の上記引張降伏強さの規定により、熱可塑性シート(61、62、63)を引っ張ったときの塑性変形を抑制して耐圧性を向上することが可能になる。耐圧性が向上することで、熱可塑性シート(61、62、63)の積層数を減少させ、タイヤ重量の軽減化を向上することが可能になる。なお、引張降伏強さの上限は、100[MPa]を超えてもよいが、インフレート成形時の熱可塑性シート(61、62、63)の拡大において形状が不均一になる傾向となるため、製造のし易さから、100[MPa]とした。なお、熱可塑性シート(61、62、63)の積層数を減少させ、かつ製造を容易とする効果を顕著に得るため、熱可塑性シート(61、62、63)の上記引張降伏強さを2[MPa]以上80[MPa]以下とすることがさらに好ましい。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、熱可塑性シート(61、62、63)は、単層の室温における破断伸びが80[%]以上500[%]以下であることが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、例えば、リム組み作業時に工具などによりタイヤに局所的な歪みが生じても、熱可塑性シート(61、62、63)の破断を防ぐことができるため、従来のマウント(リム組み)装置を利用することが可能である。また、上記破断伸びの確保により実使用時のタイヤ耐久性も向上する。なお、破断伸びの上限は、500[%]を超えてもよいが、実現可能な範囲として規定した。なお、熱可塑性シート(61、62、63)の耐久性を確保する効果を顕著に得るため、熱可塑性シート(61、62、63)の破断伸びを100[%]以上500[%]以下とすることがより好ましい。
なお、図1の構成では、熱可塑性シートから成る2層のカーカス層61、62が配置され、また、図2の構成では、熱可塑性シートから成る3層のカーカス層61〜63が配置されている。そして、隣り合うカーカス層61、62;62、63の間に、ゴム層6aが挟み込まれている。これにより、ゴム層6aがカバー材として機能して、隣り合うカーカス層61、62;62、63の相互接触が防止されている。
また、図1および図2の構成では、最も径方向外側にあるカーカス層62;63の外側に、ゴム層6aが配置されている。これにより、ゴム層6aがカバー材として機能して、カーカス層62;63の本体部と巻き上げ部との間の自己接触が防止されている。
また、図1および図2の構成では、空気入りタイヤ1が、最も径方向内側にあるカーカス層61の内側に、ゴム層6aを備えている。これにより、カーカス層61の本体部では、ゴム層6aが、カーカス層61の内周面を覆ってインナーライナーとして機能している。また、カーカス層6の巻き返し部では、ゴム層6aがカバー材として機能して、カーカス層61と周辺部材(例えば、サイドウォール部4を構成するサイドウォールゴム41、ビードコア51、ベルト層7の最内層のベルトプライ71など)との相互接触が防止されている。
また、図1および図2の構成では、上記のように、空気入りタイヤ1が、少なくとも2層のカーカス層6(61、62;61〜63)を備えている。しかし、これに限らず、空気入りタイヤ1が、単層のみのカーカス層6を備えても良い(図示省略)。このとき、図2の構成と同様に、空気入りタイヤ1が、カーカス層6を挟み込む一対のゴム層6a、6aを備えることが好ましい。
また、図1に示すように、複数のカーカス層6を有する構成において、1つのカーカス層61の巻き上げ端部のみがベルト層7の下層に挿入され、他のカーカス層62の巻き上げ端部がベルト層7まで到達していなくとも良い。
[インシュレーション層]
近年では、地球温暖化対策などの環境への配慮から、タイヤを軽量化すべき要求がある。この点において、従来の空気入りタイヤでは、体積の大きいタイヤ部材(例えば、キャップトレッドゴム、サイドウォールゴムなど)を薄肉化した構成が採用されている。しかしながら、タイヤ部材を薄肉化すると、タイヤの耐摩耗性能や耐久性能が低下する。このため、更なるタイヤの軽量化が難しいという課題がある。
このため、この空気入りタイヤ1では、上記のように、熱可塑性シートから成るカーカス層が採用されて、タイヤ重量が軽減されている。
一方、カーカス層が熱可塑性シートから成る構成では、カーカス層の巻き上げ端部にバックルが発生し易いという課題がある。これは、グリーンタイヤの成形工程にてカーカス層の端部をリフトして巻き上げたときに(後述する図5参照)、熱可塑性シートが大きく収縮して座屈するためと考えられる。
そこで、この空気入りタイヤ1では、カーカス層の巻き上げ部におけるバックルの発生を抑制するために、以下の構成を採用している。
図3は、本実施形態に係る空気入りタイヤのインシュレーション層を示す一部拡大子午断面図である。同図は、カーカス層6の巻き上げ端部付近の断面図を示している。
図3に示すように、この空気入りタイヤ1は、熱可塑性シート61〜63から成るカーカス層6を備え、且つ、カーカス層6の巻き上げ端部付近にインシュレーション層9を備える。
インシュレーション層9は、シート状あるいは帯状の部材である。このインシュレーション層9は、単一ゴム材料から構成されても良いし、ファイバー・レインフォースド・ラバーから構成されても良い。また、インシュレーション層9は、コード材をコートゴムで被覆して圧延加工した部材から構成されても良い。かかるコード材としては、例えば、スチールコード、有機繊維コード、モノフィラメント、撚り線などが採用され得る。
また、インシュレーション層9がコード材から成る構成では、コード材の長手方向とタイヤ周方向とのなす角が、15度以上90度以下の範囲にあることが好ましく、60度以上90度以下の範囲にあることがより好ましく、75度以上90度以下の範囲にあることがさらに好ましい。これにより、インシュレーション層9の設置に起因する転がり抵抗の悪化が抑制される。また、上記の構成では、コード材の打ち込み本数が、15[本/50mm]以上50[本/50mm]以下の範囲にあることが好ましい。
また、インシュレーション層9は、カーカス層6に積層される上記のゴム層6aよりも高い硬度を有するゴム材料から成ることが好ましい。具体的には、インシュレーション層9のゴム硬度と、ゴム層6aのゴム硬度との差が、3ポイント以上20ポイント以下の範囲内にあることが好ましく、5ポイント以上15ポイント以下の範囲内にあることがより好ましい。
また、インシュレーション層9は、図3に示すように、カーカス層6の巻き上げ部に沿って配置される。
例えば、図3の構成では、熱可塑性シートから成る3層のカーカス層61〜63と、これらのカーカス層61〜63を挟み込む4層のゴム層6aとが交互に積層されて配置されている(後述する図4(b)参照)。これにより、各カーカス層61〜63が一対のゴム層6a、6aにそれぞれ挟み込まれて、各カーカス層61〜63の両面が覆われている。また、図2に示すように、これらのカーカス層61〜63とゴム層6aとの積層体60が、ビードコア51およびビードフィラー52を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き上げられて配置されている。
また、図3に示すように、カーカス層61〜63の巻き上げ端部が、積層体60の本体部とベルト層7(最もタイヤ径方向内側にあるベルトプライ71)との間に挟み込まれて配置されている。また、カーカス層61〜63の巻き上げ端部が、タイヤ幅方向に相互に位置をずらして配置されている。また、カーカス層61〜63の巻き上げ端部のうち最もタイヤ径方向外側にある巻き上げ端部C1が、他の巻き上げ端部よりもタイヤ幅方向内側にある。
また、図1に示すように、サイドウォール部4を構成するサイドウォールゴム41が、ビード部5から積層体60の巻き上げ部に沿ってタイヤ径方向外側に延在している。そして、図3に示すように、サイドウォールゴム41のタイヤ径方向外側の端部が、積層体60の巻き上げ部とベルト層7との間に挟み込まれて配置されている。
また、インシュレーション層9が、積層体60の巻き上げ部に沿って延在して、カーカス層61〜63の本体部および巻き上げ部とベルト層7との間に挟み込まれて配置されている。具体的には、インシュレーション層9が、積層体60のゴム層6aと、最もタイヤ径方向内側にあるベルトプライ71との間に挟み込まれて配置されている。
このとき、インシュレーション層9が、サイドウォールゴム41のタイヤ径方向外側の端部から積層体60の巻き上げ端部までの領域を覆って配置されている。これにより、ベルト層7の下層にあるすべてのカーカス層61〜63の巻き上げ端部が、タイヤ幅方向にかかるインシュレーション層9の延在範囲内にある。
具体的には、インシュレーション層9のタイヤ幅方向内側の端部が、カーカス層61〜63の巻き上げ端部のうち最もタイヤ幅方向内側にある巻き上げ端部C1とタイヤ赤道面CL(図1参照)との間にある。このとき、インシュレーション層9のタイヤ幅方向内側の端部と、カーカス層61の巻き上げ端部C1とのタイヤ幅方向の距離D1が、5[mm]≦D1の範囲内にあることが好ましい。すなわち、インシュレーション層9の端部とカーカス層61の巻き上げ端部C1とが相互に位置をずらして配置されることが好ましい。かかる構成では、インシュレーション層9の端部とカーカス層61の巻き上げ端部C1とが同位置にある構成と比較して、タイヤの耐久性が向上する。
なお、巻き上げ端部の距離D1の上限は、特に限定されないが、D1≦10[mm]の範囲にあることが好ましい。これにより、インシュレーション層9によるタイヤ重量の増加が抑制される。
また、インシュレーション層9のタイヤ幅方向外側の端部が、サイドウォールゴム41のタイヤ径方向外側の端部にラップして配置されている。このとき、インシュレーション層9とサイドウォールゴム41とのラップ幅D2が、5[mm]≦D2の範囲内にあることが好ましい。これにより、サイドウォールゴム41のタイヤ径方向外側の端部からカーカス層61〜63の巻き上げ端部までの領域が、インシュレーション層9により適正に被覆される。また、インシュレーション層9の端部とサイドウォールゴム41のタイヤ径方向外側の端部とが相互に位置をずらして配置されることにより、タイヤの耐久性が向上する。
なお、上記に限らず、インシュレーション層9とサイドウォールゴム41とのラップ幅D2が、0[mm]≦D2の範囲にあれば足りる。すなわち、ラップ幅D2がD2=0[mm]であり、インシュレーション層9のタイヤ幅方向外側の端部とサイドウォールゴム41のタイヤ径方向外側の端部とが相互に突き合わされて配置されても良い(図示省略)。かかる構成としても、サイドウォールゴム41のタイヤ径方向外側の端部からカーカス層61〜63の巻き上げ端部までの領域が、インシュレーション層9により適正に被覆され得る。なお、インシュレーション層9とサイドウォールゴム41との物性が近い場合には、タイヤ加硫成形時にて、これらが流動して相互に結合できる。
また、ラップ幅D2の上限は、特に限定されないが、D2≦10[mm]の範囲にあることが好ましい。これにより、インシュレーション層9によるタイヤ重量の増加が抑制される。
[タイヤ製造方法]
図4および図5は、本実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法を示す説明図である。これらの図は、グリーンタイヤ成形工程におけるカーカス層の巻き上げ工程を模式的に示している。
空気入りタイヤ1の製造工程では、各種のタイヤ部材が成形機にかけられて、グリーンタイヤ(図示省略)が成形される。
具体的には、図4(a)に示すように、ビードコア51およびビードフィラー52の組立体と、熱可塑性シート61〜63およびゴム層6aの積層体60と、サイドウォールゴム41およびリムクッションゴム53を一体化したゴム部材と、インシュレーション層9とが、成形ドラム(図示省略)に配置されて相互に位置決めされる。このとき、図4(b)に示すように、予め、熱可塑性シート61〜63とゴム層6aとが交互に積層されて、積層体60が成形される。
次に、図5(c)に示すように、ターンアップブラダ(図示省略)が用いられて、積層体60、サイドウォールゴム41およびリムクッションゴム53が、ビードコア51およびビードフィラー52の組立体を包み込むように幅方向外側に巻き上げられる。このとき、インシュレーション層9と熱可塑性シート61〜63およびゴム層6aの積層体60とが同時に巻き上げられるので、インシュレーション層9が熱可塑性シート61〜63に対する裏打ち材として機能する。これにより、巻き上げ時における熱可塑性シート61〜63の変形が低減されて、熱可塑性シート61〜63の巻き上げ部におけるバックルが抑制される。
次に、上記の部材がターンアップブラダにより圧着されて、周方向に一様断面を有する環状部材が成形される。次に、この環状部材の外周に、ベルト層7を構成するベルトプライ71、72、ベルト補強層81〜83、トレッドゴム21などが配置されて、グリーンタイヤが成形される。
次に、このグリーンタイヤがタイヤ加硫モールド(図示省略)に充填される。次に、この加硫モールドが加熱され、グリーンタイヤの加硫が行われる。その後に、加硫後のタイヤがタイヤ加硫モールドから引き抜かれる。
[変形例]
図6〜図9は、本実施形態に係る空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。これらの図は、インシュレーション層9と、熱可塑性シート61〜63およびサイドウォールゴム41との位置関係を模式的に示している。
図3の構成では、図5に示すように、インシュレーション層9が、熱可塑性シート61〜63の巻き上げ部のうち最も径方向外側にある巻き上げ部と、ベルト層7(タイヤ径方向内側のベルトプライ71)との間に配置されている。かかる構成では、巻き上げ端部C1を最も幅方向内側まで延在させる熱可塑性シート61において、巻き上げ部におけるバックルの発生を効果的に抑制できる点で好ましい。
しかし、これに限らず、図6〜図8に示すように、インシュレーション層9が、熱可塑性シート61〜63の間に挿入されて配置されても良い。例えば、図6および図7の構成では、インシュレーション層9が、積層されて隣り合う熱可塑性シート61、62;62、63の間に挿入されて配置されている。また、図8の構成では、インシュレーション層9が、積層体60の巻き上げ部の最も内側にある熱可塑性シート63の本体部と巻き上げ部との間に挿入されて配置されている。このように、インシュレーション層9は、カーカス層6(熱可塑性シート61〜63)の巻き上げ部に沿って配置されることを条件として、任意の位置に配置され得る。
また、図6〜図8の構成では、インシュレーション層9と熱可塑性シート61〜63の積層体60とが同時に巻き上げられる。このため、巻き上げ前の状態(各図(a)参照)では、インシュレーション層9と熱可塑性シート61〜63とが、予め一体化されて位置決めされる。
また、図6〜図8の構成では、巻き上げ後の状態にて、インシュレーション層9のタイヤ幅方向内側の端部と熱可塑性シート61の巻き上げ端部C1との距離D1、ならびに、インシュレーション層9とサイドウォールゴム41とのラップ幅D2が、図3の場合と同様の関係(5[mm]≦D1かつ5[mm]≦D2)に設定される。これにより、インシュレーション層9が、熱可塑性シート61〜63の巻き上げ端部に対する裏打ち材として適正に機能する。
なお、図5〜図8の構成では、図1に示すように、タイヤ左右の巻き上げ部に対して、1つのインシュレーション層9がそれぞれ配置されている。
しかし、これに限らず、タイヤ左右の巻き上げ部に対して、複数のインシュレーション層9がそれぞれ配置されても良い(図示省略)。例えば、図5の構成において、追加のインシュレーション層9が図6〜図8に示す任意の位置に配置されても良い。
また、図5および図6〜図8の構成では、インシュレーション層9と、サイドウォールゴム41とが、別体で構成されている。かかる構成では、インシュレーション層9と、サイドウォールゴム41とをそれぞれ独立して成形できるので、製造容易性の点で優れる。すなわち、サイドウォールゴム41は一般に押し出し加工により成形されるため、シート状のインシュレーション層9と肉厚なサイドウォールゴム41とを精度良く一体成形することが難しい。
しかし、これに限らず、図9に示すように、インシュレーション層9とサイドウォールゴム41とを一体成形しても良い。
また、図3の構成では、上記のように、サイドウォールゴム41が、カーカス層61〜63の巻き上げ部に沿ってタイヤ径方向外側に延在して、タイヤ径方向外側の端部をベルト層7とカーカス層61〜63との間に挿入して配置されている。また、インシュレーション層9とサイドウォールゴム41とが、所定のラップ幅D2をもって配置されている。かかる構成では、サイドウォールゴム41およびインシュレーション層9の双方が、カーカス層61〜63の巻き上げ部に対する裏打ち材として機能する。これにより、カーカス層61〜63の巻き上げ部におけるバックルの発生が抑制される。
一方で、既存の空気入りタイヤでは、ベルト層7(最も径方向内側のベルトプライ71)のタイヤ幅方向外側の端部とカーカス層6の巻き上げ部との間に、ベルトエッジクッションが配置される場合がある(図示省略)。この場合には、インシュレーション層9が、このベルトエッジクッションに対して所定のラップ幅D2をもって配置されることにより、カーカス層61〜63の巻き上げ部におけるバックルの発生が抑制される。
また、図3において、タイヤ幅方向の最も内側にあるカーカス層6の巻き上げ端部C1からタイヤ幅方向外側に向かって5[mm]の位置に点Pをとる。このとき、点Pにおけるインシュレーション層9の厚さとサイドウォールゴム41の厚さとの和(ゲージt。図示省略。)が、0.2[mm]≦t≦3.0[mm]の範囲内にある。また、ゲージtは、0.3[mm]≦t≦2.0[mm]の範囲内にあることが好ましく、0.3[mm]≦t≦1.0[mm]の範囲内にあることがより好ましい。これにより、カーカス層6の巻き上げ端部C1付近におけるカーカス層6とベルト層7との層間ゲージが適正化される。
例えば、図3では、サイドウォールゴム41がベルト層7の端部付近で終端しているため、点Pにおけるゲージtが、この位置におけるインシュレーション層9の厚さに等しい。一方で、サイドウォールゴム41が点Pまで延在する構成では、上記のように、インシュレーション層9の厚さとサイドウォールゴム41の厚さにより、ゲージtが定義される。
なお、インシュレーション層9の厚さは、タイヤ幅方向に一定である必要はなく、例えば、タイヤ幅方向内側に向かうに連れて徐々に減少しても良い。これにより、インシュレーション層9の端部の厚みによる段差を小さくできるので、この位置におけるエア溜まりを抑制できる。また、インシュレーション層9が薄肉構造を有することにより、インシュレーション層9の設置による重量増加を抑制できる。
図10は、本実施形態に係る空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。同図は、図1に記載した空気入りタイヤ1の変形例を示している。
本実施形態の空気入りタイヤ1では、図10の変形例に係る空気入りタイヤの子午断面図に示すように、熱可塑性シート(61、62)は、タイヤ幅方向最大幅(タイヤ幅方向最大展開幅)の熱可塑性シート(図10では熱可塑性シート61)のタイヤ幅方向両端部C1が、タイヤ幅方向最大幅(タイヤ幅方向最大展開幅)のベルト層(図10ではベルトプライ71)のタイヤ幅方向端部B1よりもタイヤ幅方向内側に位置することが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ幅方向最大幅の熱可塑性シート(図10では熱可塑性シート61)のタイヤ幅方向両端部C1を、タイヤ幅方向最大幅のベルト層(図10ではベルトプライ71)のタイヤ幅方向端部B1よりもタイヤ幅方向内側に位置するように構成することで、ショルダー部3に各部材の端が集中する事態を防ぐことが可能になる。各部材の端が集中すると、端と端とが向き合う部分が屈曲点となり、耐圧性および耐久性が低下する傾向となる。すなわち、この空気入りタイヤ1によれば、屈曲点の発生を抑制し、耐圧性および耐久性を向上することが可能になる。
しかも、熱可塑性シート(61、62)をビードコア51にて巻き上げた部分がサイドウォール部4に配置されるため、サイドウォール部4において熱可塑性シート(61、62)の積層が増す(図10では2倍)。このように構成することで、熱可塑性シート(61、62)の積層数を減少させてタイヤ重量の軽減化を向上しつつ、サイドウォール部4の耐圧性を確保することが可能になる。
なお、図10においては、タイヤ幅方向最大幅ではない熱可塑性シート(図10では熱可塑性シート62)のタイヤ幅方向両端部C2も、タイヤ幅方向最大幅のベルト層(図10ではベルトプライ71)のタイヤ幅方向端部B1よりもタイヤ幅方向内側に位置するように構成している。このように構成することで、屈曲点の発生をより抑制し、耐圧性および耐久性を向上する効果を顕著に得ることが可能になる。また、図10においては、タイヤ幅方向最大幅の熱可塑性シート(図10では熱可塑性シート61)のタイヤ幅方向両端部C1を、タイヤ幅方向最大幅ではないベルト層(図10ではベルト層72)のタイヤ幅方向端部B2よりもタイヤ幅方向内側に位置するように構成している。このように構成することで、屈曲点の発生をより抑制し、耐圧性および耐久性を向上する効果を顕著に得ることが可能になる。さらに、図10においては、タイヤ幅方向最大幅ではない熱可塑性シート(図10では熱可塑性シート62)のタイヤ幅方向両端部C2も、タイヤ幅方向最大幅ではないベルト層(図10ではベルト層72)のタイヤ幅方向端部B2よりもタイヤ幅方向内側に位置するように構成している。このように構成することで、屈曲点の発生をより抑制し、耐圧性および耐久性を向上する効果を顕著に得ることが可能になる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図10に示すように、タイヤ幅方向最大幅の熱可塑性シート(図10では熱可塑性シート61)のタイヤ幅方向両端部C1を、タイヤ幅方向最大幅のベルト層(図10ではベルトプライ71)のタイヤ幅方向端部B1よりもタイヤ幅方向内側に位置させた構成において、熱可塑性シート(61、62)は、タイヤ幅方向最大幅の熱可塑性シート(図10では熱可塑性シート61)のタイヤ幅方向両端部(C1−C1)の間隔CWと、タイヤ幅方向最大幅のベルト層(図10ではベルトプライ71)のタイヤ幅方向幅BWとの関係が、0.10≦CW/BW≦0.95の範囲を満たすことが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ幅方向最大幅の熱可塑性シート(図10では熱可塑性シート61)のタイヤ幅方向両端部C1を、タイヤ幅方向最大幅のベルト層(図10ではベルトプライ71)のタイヤ幅方向端部B1よりもタイヤ幅方向内側に位置するように構成した場合の、耐圧性および耐久性を向上する効果を顕著に得ることが可能になる。なお、耐圧性および耐久性を向上する効果をより顕著に得るため、0.15≦CW/BW≦0.95の範囲を満たすことがより好ましい。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、熱可塑性シート(61、62、63)は、タイヤ周方向に対する引張降伏強さαと、タイヤ幅方向に対する引張降伏強さβとの関係が、1<β/α≦5の範囲を満たすことが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ幅方向に対する引張降伏強さβを、タイヤ周方向に対する引張降伏強さαよりも大きくすることで、タイヤ周方向は変形しやすく、タイヤ幅方向は変形しにくくなる。この結果、タイヤの接地形状(接地長)をより適切にすることができるので、操縦安定性を向上することが可能になる。
なお、熱可塑性シート(61、62、63)において、タイヤ周方向に対する引張降伏強さαと、タイヤ幅方向に対する引張降伏強さβとの関係を、1<β/α≦5の範囲とするには、以下の方法がある。
例えば、延伸成形により熱可塑性シート(61、62、63)のタイヤ周方向とタイヤ幅方向との延伸率を異ならせ剛性を異ならせる。
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、一対のビードコア51、51と、熱可塑性シート61〜63から成ると共に端部をタイヤ幅方向外側に巻き上げてビードコア51を包み込むカーカス層6と、複数のベルトプライ71、72を積層して成ると共にカーカス層6のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層7と、カーカス層6のタイヤ幅方向外側に配置されるサイドウォールゴム41と、カーカス層6の巻き上げ部に沿って配置されるインシュレーション層9とを備える(図1および図3参照)。
かかる構成では、(1)カーカス層6が熱可塑性シート61〜63から成るので、カーカス層がスチールあるいは有機繊維材をコートゴムで被覆して成る構成と比較して、タイヤ重量が軽減される利点がある。また、かかる構成では、(2)グリーンタイヤの成形工程にてカーカス層6を巻き上げるときに、インシュレーション層9が熱可塑性シート61〜63に対する裏打ち材として機能する(図5参照)。これにより、熱可塑性シート61〜63の変形が低減されて、熱可塑性シート61〜63の巻き上げ部におけるバックルの発生が抑制される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1は、少なくとも2層のカーカス層61〜63と、隣り合うカーカス層61、62;62、63の間に介在するゴム層6aとを備える(図3参照)。かかる構成では、ゴム層6aが、熱可塑性シートであるカーカス層61〜63のカバー材として機能して、隣り合うカーカス層61、62;62、63の相互接触を防止する。これにより、カーカス層61〜63の間に発生する剪断応力が緩和されて、タイヤの耐久性が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6の本体部と巻き上げ部との間に介在するゴム層6a(図2および図3では、最もタイヤ径方向外側にある熱可塑性シート63の径方向外側面を覆うゴム層6a)を備える。かかる構成では、ゴム層6aがカバー材として機能して、熱可塑性シートであるカーカス層6の本体部と巻き上げ部との間の自己接触を防止する。これにより、カーカス層6の本体部と巻き上げ部との間に発生する剪断応力が緩和されて、タイヤの耐久性が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6の巻き上げ部の外周面を覆ってカーカス層6の巻き上げ端部(複数のカーカス層61〜63を有する構成では、これらのカーカス層61〜63の巻き上げ端部のうち最もタイヤ幅方向内側にある巻き上げ端部C1)まで延在するゴム層6a(図2および図3では、最もタイヤ径方向内側にある熱可塑性シート61の径方向内側面を覆うゴム層6a)を備える。かかる構成では、ゴム層6aがカバー材として機能して、熱可塑性シートであるカーカス層6の巻き上げ部と隣接部材(図3では、サイドウォールゴム41、タイヤ径方向内側のベルトプライ71など)との接触を防止する。これにより、カーカス層6の巻き上げ部と隣接部材との間に発生する剪断応力が緩和されて、タイヤの耐久性が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、インシュレーション層9が、サイドウォールゴム41のタイヤ径方向外側の端部からカーカス層6の巻き上げ端部(複数のカーカス層61〜63を有する構成では、これらのカーカス層61〜63の巻き上げ端部のうち最もタイヤ幅方向内側にある巻き上げ端部C1)までの領域に延在する(図3参照)。これにより、インシュレーション層9がカーカス層6の巻き上げ部を適正にカバーして、巻き上げ部におけるバックルの発生が効果的に抑制される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1は、積層された複数のカーカス層61〜63を備える(図3参照)。また、インシュレーション層9が、複数のカーカス層61〜63の巻き上げ端部のうち最もタイヤ幅方向内側にある巻き上げ端部C1にラップして配置される。これにより、インシュレーション層9がカーカス層6の巻き上げ部を適正にカバーして、巻き上げ部におけるバックルの発生が効果的に抑制される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、カーカス層6の巻き上げ端部(複数のカーカス層61〜63を有する構成では、これらのカーカス層61〜63の巻き上げ端部のうち最もタイヤ幅方向内側にある巻き上げ端部C1)からタイヤ幅方向外側に5[mm]の位置Pにおけるサイドウォールゴム41の厚さとインシュレーション層9の厚さとの総和t(図示省略)が、0.2[mm]≦t≦3.0[mm]の範囲内にある(図3参照)。これにより、カーカス層6の巻き上げ端部C1付近におけるカーカス層6とベルト層7との間の層間ゲージが適正化される利点がある。すなわち、0.2[mm]≦tであることにより、層間ゲージが適正に確保されて、タイヤの耐久性が向上する。また、t≦3.0[mm]であることにより、転がり抵抗の悪化が抑制される。
また、この空気入りタイヤ1では、インシュレーション層9が、コートゴムで被覆されたコード材から成ることが好ましい(図示省略)。これにより、インシュレーション層9の強度が適正に確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、インシュレーション層9が、ゴム層6aの硬度よりも高い硬度を有するゴム材料から成ることが好ましい。これにより、インシュレーション層9の強度が適正に確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、インシュレーション層9のタイヤ幅方向内側の端部が、カーカス層6の巻き上げ端部(複数のカーカス層61〜63を有する構成では、これらのカーカス層61〜63の巻き上げ端部のうち最もタイヤ幅方向内側にある巻き上げ端部C1)とタイヤ赤道面CLとの間にある。これにより、インシュレーション層9がカーカス層6の巻き上げ部を適正にカバーして、巻き上げ部におけるバックルの発生が効果的に抑制される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、熱可塑性シート61〜63の平均厚さが、0.03[mm]以上1.00[mm]以下の範囲内にあり、且つ、熱可塑性シート61〜63の空気透過係数が、3×10^ −12 [cc・cm/cm・sec・cmHg]以上500×10^ −12 [cc・cm/cm・sec・cmHg]以下の範囲内にある。前者により、熱可塑性シート61〜63の強度が適正に確保される利点があり、また、後者により、熱可塑性シート61〜63がインナーライナーとしての機能を有する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、ゴム層6aと熱可塑性シート61〜63との剥離強度が、50[N/25mm]以上400[N/25mm]以下の範囲内にある。これにより、ゴム層6aと熱可塑性シート61〜63との間の接着性が向上して、タイヤの耐久性が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、ゴム層6aが、上記した式(1)で表される化合物およびホルムアルデヒドの縮合物と、メチレンドナーと、加硫剤とを含むゴム組成物から成る。また、式(1)のR、R、R、RおよびRが、水素、ヒドロキシル基、または、1個以上8個以下の炭素原子数を有するアルキル基である。また、縮合物の配合量が、ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下の範囲内にある。また、メチレンドナーの配合量が、ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上80質量部以下の範囲内にある。また、メチレンドナーの配合量と前記縮合物の配合量との比が、1以上4以下の範囲内にある。これにより、ゴム層6aと熱可塑性シート61〜63との間の接着性が向上して、タイヤの耐久性が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、熱可塑性シート61〜63の室温における引張降伏強さが、1[MPa]以上100[MPa]以下の範囲内にある。これにより、熱可塑性シート61〜63の強度および製造容易性を適正に確保できる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、熱可塑性シート61〜63の室温における破断伸びが、80[%]以上500[%]以下の範囲内にある。これにより、熱可塑性シート61〜63の強度を適正に確保できる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、カーカス層6の巻き上げ端部(複数のカーカス層61〜63を有する構成では、これらのカーカス層61〜63の巻き上げ端部のうち最もタイヤ幅方向内側にある巻き上げ端部C1)が、複数のベルトプライ71、72のうち最も幅広なベルトプライ71のタイヤ幅方向外側の端部よりもタイヤ幅方向内側にある(図3参照)。これにより、ショルダー部3におけるタイヤ部材の端部の集中が抑制されて、タイヤの耐圧性および耐久性が適正に確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、カーカス層6の左右の巻き上げ端部(複数のカーカス層61〜63を有する構成では、これらのカーカス層61〜63の巻き上げ端部のうち最もタイヤ幅方向内側にある巻き上げ端部C1)の距離CWと、複数のベルトプライ71、72のうち最も幅広なベルトプライ71の幅BWとが、0.10≦CW/BW≦0.95の関係を有する(図10参照)。これにより、タイヤの耐圧性および耐久性が適正に確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、熱可塑性シート61〜63が、配向性を有する。また、熱可塑性シート61〜63のタイヤ周方向に対する引張降伏強さαと、タイヤ幅方向に対する引張降伏強さβとが、1<β/α≦5の関係を有する。かかる構成では、熱可塑性シート61〜63におけるタイヤ幅方向の引張降伏強さβがタイヤ周方向の引張降伏強さαよりも大きい(1<β/α)ので、熱可塑性シート61〜63がタイヤ周方向に変形し易く、タイヤ幅方向に変形し難くなる。これにより、タイヤの接地形状(接地長)が適正に確保されて、タイヤの操縦安定性が向上する利点がある。
図11は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
この性能試験では、相互に異なる複数の空気入りタイヤについて、(1)タイヤ重量、(2)耐久性能および(3)耐バックル性能に関する評価が行われた(図11参照)。この性能試験では、タイヤサイズ235/40R18の空気入りタイヤが試作されて用いられる。
(1)タイヤ重量に関する評価では、タイヤ重量が計測されて、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が小さいほどタイヤ重量が小さく、好ましい。
(2)耐久性能に関する評価は、ドラム径1707[mm]の室内ドラム試験機を用いた低圧耐久試験により行われる。また、空気入りタイヤがJlS D−4230の規定に基づいてJATMA規定の適用リムに装着され、この空気入りタイヤにJATMA規定の最高空気圧が付与される。そして、空気入りタイヤに付与する荷重を、JATMA規定の最大負荷能力から5時間毎に20[%]ずつ増加させて、タイヤが故障するまでの走行時間が測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
(3)耐バックル性能に関する評価は、各種類の空気入りタイヤを20本ずつ試作して解体し、カーカス層の巻き上げ部におけるバックル(シワ)の発生の有無が観察される。このバックルの発生が無ければ、適正といえる。
なお、図11において、ゴム層と熱可塑性シートとの剥離強度指数は、以下のように測定される。まず、ゴム層と熱可塑性シートとを積層した積層体を成形し、この積層体を加硫して幅25[mm]に切断して、積層体の短冊状試験片を作成する。そして、この短冊状試験片の剥離強度をJIS K6256に従って測定し、下記の基準(0)〜(6)で7段階に指数化する。この評価は、(1)以上であれば、良好といえる。
(0)…0[N/25mm]以上20[N/25mm]未満
(1)…20[N/25mm]以上25[N/25mm]未満
(2)…25[N/25mm]以上50[N/25mm]未満
(3)…50[N/25mm]以上75[N/25mm]未満
(4)…75[N/25mm]以上100[N/25mm]未満
(5)…100[N/25mm]以上200[N/25mm]未満
(6)…200[N/25mm]以上
実施例1〜6の空気入りタイヤ1は、図2および図3の構成を有し、熱可塑性シートから成るカーカス層61〜63と、ゴム層6aとの積層体60を備える。また、これらの空気入りタイヤ1は、図4および図5の製造方法により製造される。
従来例の空気入りタイヤでは、図1の構成において、カーカス層6が、有機繊維材から成るコード材をコートゴムで被覆して成る構造を有する。
試験結果に示すように、実施例1〜6の空気入りタイヤ1では、タイヤが軽量化され、また、バックルの発生が適正に抑制されることが分かる。また、インシュレーション層9の配置(距離D1およびラップ幅D2)が適正化されることにより、タイヤの耐久性が向上することが分かる。
1:空気入りタイヤ、2:トレッド部、3:ショルダー部、4:サイドウォール部、41:サイドウォールゴム、5:ビード部、51:ビードコア、52:ビードフィラー、53:リムクッションゴム、6:カーカス層、61〜63:熱可塑性シート、6a:ゴム層、60:積層体、7:ベルト層、71、72:ベルトプライ、8:ベルト補強層、9:インシュレーション層、21:トレッドゴム、22:主溝、23:陸部、81〜83:ベルト補強層

Claims (19)

  1. 一対のビードコアと、
    熱可塑性シートから成ると共に端部をタイヤ幅方向外側に巻き上げて前記ビードコアを包み込む少なくとも2層のカーカス層と、
    複数のベルトプライを積層して成ると共に前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層と、
    前記カーカス層のタイヤ幅方向外側に配置されるサイドウォールゴムと、
    前記カーカス層の巻き上げ部に沿って配置されるインシュレーション層と
    隣り合う前記カーカス層の間に介在するゴム層とを備え、且つ、
    前記インシュレーション層が、単一ゴム材料、ファイバー・レインフォースド・ラバー、または、コートゴムで被覆されたコード材から構成されることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記カーカス層の本体部と巻き上げ部との間に介在するゴム層を備える請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記カーカス層の巻き上げ部の外周面を覆って前記カーカス層の巻き上げ端部まで延在するゴム層を備える請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記インシュレーション層が、前記サイドウォールゴムのタイヤ径方向外側の端部から前記カーカス層の巻き上げ端部までの領域に延在する請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  5. 積層された複数の前記カーカス層を備え、且つ、
    前記インシュレーション層が、前記複数のカーカス層の巻き上げ端部のうち最もタイヤ幅方向内側にある巻き上げ端部にラップして配置される請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記カーカス層の巻き上げ端部からタイヤ幅方向外側に5[mm]の位置における前記サイドウォールゴムの厚さと前記インシュレーション層の厚さとの総和tが、0.2[mm]≦t≦3.0[mm]の範囲内にある請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記インシュレーション層が、前記ゴム層の硬度よりも高い硬度を有するゴム材料から成る請求項2〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記インシュレーション層のタイヤ幅方向内側の端部が、前記カーカス層の巻き上げ端部とタイヤ赤道面との間にある請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  9. 前記熱可塑性シートの平均厚さが、0.03[mm]以上1.00[mm]以下の範囲内にあり、且つ、前記熱可塑性シートの空気透過係数が、3×10 −12 [cc・cm/cm・sec・cmHg]以上500×10 −12 [cc・cm/cm・sec・cmHg]以下の範囲内にある請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  10. 前記ゴム層と前記熱可塑性シートとの剥離強度が、50[N/25mm]以上400[N/25mm]以下の範囲内にある請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  11. 前記ゴム層が、式(1)で表される化合物およびホルムアルデヒドの縮合物と、メチレンドナーと、加硫剤とを含むゴム組成物から成り、
    式(1)のR、R、R、RおよびRが、水素、ヒドロキシル基、または、1個以上8個以下の炭素原子数を有するアルキル基であり、
    前記縮合物の配合量が、ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下の範囲内にあり、
    前記メチレンドナーの配合量が、ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上80質量部以下の範囲内にあり、
    前記メチレンドナーの配合量と前記縮合物の配合量との比が、1以上4以下の範囲内にある請求項1〜10のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
    Figure 0006123268
  12. 前記熱可塑性シートの室温における引張降伏強さが、1[MPa]以上100[MPa]以下の範囲内にある請求項1〜11のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  13. 前記熱可塑性シートの室温における破断伸びが、80[%]以上500[%]以下の範囲内にある請求項1〜12のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  14. 前記カーカス層の巻き上げ端部が、前記複数のベルトプライのうち最も幅広なベルトプライのタイヤ幅方向外側の端部よりもタイヤ幅方向内側にある請求項1〜13のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  15. 前記カーカス層の左右の巻き上げ端部の距離CWと、前記複数のベルトプライのうち最も幅広なベルトプライの幅BWとが、0.10≦CW/BW≦0.95の関係を有する請求項1〜14のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  16. 前記熱可塑性シートが、配向性を有し、且つ、
    前記熱可塑性シートのタイヤ周方向に対する引張降伏強さαと、タイヤ幅方向に対する引張降伏強さβとが、1<β/α≦5の関係を有する請求項1〜15のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  17. 一対のビードコアと、
    熱可塑性シートから成ると共に端部をタイヤ幅方向外側に巻き上げて前記ビードコアを包み込むカーカス層と、
    複数のベルトプライを積層して成ると共に前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層と、
    前記カーカス層のタイヤ幅方向外側に配置されるサイドウォールゴムと、
    前記カーカス層の巻き上げ部に沿って配置されるインシュレーション層と
    前記カーカス層の巻き上げ部の外周面を覆って前記カーカス層の巻き上げ端部まで延在するゴム層とを備え、且つ、
    前記インシュレーション層が、単一ゴム材料、ファイバー・レインフォースド・ラバー、または、コートゴムで被覆されたコード材から構成されることを特徴とする空気入りタイヤ。
  18. 一対のビードコアと、
    熱可塑性シートから成ると共に端部をタイヤ幅方向外側に巻き上げて前記ビードコアを包み込むカーカス層と、
    複数のベルトプライを積層して成ると共に前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層と、
    前記カーカス層のタイヤ幅方向外側に配置されるサイドウォールゴムと、
    前記カーカス層の巻き上げ部に沿って配置されるインシュレーション層とを備え
    前記インシュレーション層が、単一ゴム材料、ファイバー・レインフォースド・ラバー、または、コートゴムで被覆されたコード材から構成され、且つ、
    前記カーカス層の巻き上げ端部からタイヤ幅方向外側に5[mm]の位置における前記サイドウォールゴムの厚さと前記インシュレーション層の厚さとの総和tが、0.2[mm]≦t≦3.0[mm]の範囲内にあることを特徴とする空気入りタイヤ。
  19. 一対のビードコアと、
    熱可塑性シートから成ると共に端部をタイヤ幅方向外側に巻き上げて前記ビードコアを包み込むカーカス層と、
    複数のベルトプライを積層して成ると共に前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層と、
    前記カーカス層のタイヤ幅方向外側に配置されるサイドウォールゴムと、
    前記カーカス層の巻き上げ部に沿って配置されるインシュレーション層とを備え
    前記インシュレーション層が、単一ゴム材料、ファイバー・レインフォースド・ラバー、または、コード材をコートゴムで被覆して圧延加工した部材から構成され、且つ、
    前記インシュレーション層のタイヤ幅方向内側の端部が、前記カーカス層の巻き上げ端部とタイヤ赤道面との間にあることを特徴とする空気入りタイヤ。
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