JP2010125891A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Masaaki Miyoshi
雅章 三好
Takumi Hatakeyama
拓未 畠山
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Abstract

【課題】質量の増加を招かずにタイヤ剛性を増大し、更にはカーカス層の耐外傷性を向上することを可能にした空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】一対のビード部間に引き揃えられた複数本のカーカスコードCを含むカーカス層4を装架した空気入りタイヤにおいて、カーカス層4の少なくとも外面側にカーカスコードCと接するように熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物からなる樹脂含有被覆層14aを設ける。
【選択図】図2

Description

本発明は、一対のビード部間にカーカス層を装架した空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、質量の増加を招かずにタイヤ剛性を増大し、更にはカーカス層の耐外傷性を向上することを可能にした空気入りタイヤに関する。
空気入りタイヤは、通常、一対のビード部間にカーカス層を装架し、該カーカス層の外周側にベルト層を配置したケーシング構造を備えている。このような空気入りタイヤにおいて、カーカス層は引き揃えられた複数本のカーカスコードを含み、これらカーカスコードをコートゴムで被覆した構造になっている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、空気入りタイヤの操縦安定性等の走行性能を改善するにはタイヤ剛性を増大させることが必要である。そして、タイヤ剛性を高めるにはカーカス層の枚数を増やしたり、サイドウォール部等に補強層を追加することが有効である。しかしながら、カーカス層の枚数を増やしたり、補強層を追加した場合、タイヤの質量が増加するという欠点がある。
また、空気入りタイヤにおけるカーカス層の耐外傷性を向上するにはサイドウォールゴム層を厚くすることが有効であるが、サイドウォールゴム層を厚くした場合も、タイヤの質量が増加することになる。
特開2007−30636号公報
本発明の目的は、質量の増加を招かずにタイヤ剛性を増大し、更にはカーカス層の耐外傷性を向上することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、一対のビード部間に引き揃えられた複数本のカーカスコードを含むカーカス層を装架した空気入りタイヤにおいて、前記カーカス層の少なくとも外面側に前記カーカスコードと接するように熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物からなる樹脂含有被覆層を設けたことを特徴とするものである。
本発明では、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物からなる樹脂含有被覆層をカーカス層の少なくとも外面側にカーカスコードと接するように設けているので、カーカス層の被覆層をゴム組成物から構成した従来のタイヤに比べて、質量の増加を招かずにタイヤ剛性を増大することができる。しかも、樹脂含有被覆層をカーカス層の少なくとも外面側に配置することにより、カーカス層の耐外傷性を向上することができる。これにより、サイドウォールゴム層の厚さを薄くし、タイヤの軽量化を図ることができる。特に、樹脂含有被覆層の外面側に位置するサイドウォールゴム層の最大厚さは2.0mm以下にすることが好ましい。
本発明において、カーカス層の外面側に樹脂含有被覆層を設ける一方で、カーカス層の内面側にはゴム被覆層を設けることが好ましい。これにより、フラットスポットの発生を抑制することができる。また、カーカス層が過度に剛直になることを回避し、未加硫タイヤを膨径させる際にスプライス部が開いて所謂スプライスオープン故障が生じるのを防止することができる。
樹脂含有被覆層は異方性を有し、該樹脂含有被覆層のカーカスコード延長方向の弾性率がそれと直角方向の弾性率の1.2倍〜5.0倍であることが好ましい。このような異方性を有する樹脂含有被覆層を採用することにより、カーカスコードの打ち込み密度や太さを減ずることが可能となり、その結果として、製造コストの低減やタイヤの軽量化が可能になる。また、カーカス層はシームレスの円筒体から構成することが好ましい。これにより、タイヤの均一性を向上することができる。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示し、図2はその空気入りタイヤの要部を拡大して示すものである。図1において、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間にはタイヤ径方向に延長する複数本のカーカスコードを含むカーカス層4が装架され、そのカーカス層4がビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に巻き上げられている。カーカス層4の補強コードとしては、一般的にナイロンコードやポリエステルコード等の有機繊維コードが使用される。このカーカス層4に沿ってタイヤ内面にはインナーライナー層6が配置されている。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7は補強コードがタイヤ周方向に対して傾斜し、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。
上記空気入りタイヤにおいて、図2に示すように、カーカス層4は引き揃えられた複数本のカーカスコードCを被覆層14a,14bで被覆した構造を有している。より具体的には、カーカス層4の外面側にはカーカスコードCと接するように熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物からなる樹脂含有被覆層14aが配置され、カーカス層4の内面側にはカーカスコードCと接するようにゴム組成物からなるゴム被覆層14bが配置されている。ゴム被覆層14bの構成材料としては、従来からカーカス層に使用されている天然ゴム等を主体とするゴム組成物を使用することができる。
図2において、樹脂含有被覆層14aの外面側にはサイドウォールゴム層8が配置され、ゴム被覆層14bの内面側にはインナーライナー層6が配置されている。インナーライナー層6の構成材料は、ブチルゴム等の低気体透過性ゴムのほか、樹脂含有被覆層14aと同様の熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物を使用することができる。サイドウォールゴム層8の構成材料は、耐外傷性や耐候性に優れたゴム組成物を使用することができる。
このようにカーカス層4の少なくとも外面側にカーカスコードCと接するように熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物からなる樹脂含有被覆層14aを設けているので、質量の増加を招かずにカーカス層4の剛性を増大させ、延いては、タイヤ剛性を増大することができる。しかも、樹脂含有被覆層14aをカーカス層4の少なくとも外面側に配置することにより、カーカス層4の耐外傷性を向上することができる。そのため、サイドウォールゴム層8の厚さを薄くし、タイヤの軽量化を図ることができる。例えば、樹脂含有被覆層14aの外面側に位置するサイドウォールゴム層8の最大厚さtmax を2.0mm以下としても十分な耐外傷性を確保することができる。
タイヤの剛性を増大させるために、樹脂含有被覆層14aの厚さはカーカスコード径の50%以上にすると良い。なお、タイヤの剛性を増大させるには樹脂含有被覆層14aにおける熱可塑性樹脂の体積比率を多くすることが有効であるので、例えば、熱可塑性樹脂の体積比率が40%以上である場合には、樹脂含有被覆層14aの厚さをカーカスコード径の30%程度にしてもタイヤの剛性を増大させる効果が得られる。また、樹脂含有被覆層14aの厚さをカーカスコード径の1.5倍〜3.0倍に設定すれば、耐外傷性の改善効果が顕著になるため、サイドウォールゴム層8を排除することが可能となり、更なる質量の軽減に加え、タイヤ製造工程の簡素化を図ることができる。
カーカス層4の外面側のみならず内面側にも樹脂含有被覆層14aを配置した場合、つまり、カーカス層4の全ての被覆層を熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物から構成した場合、タイヤの剛性を増大させる効果が顕著になる。但し、この場合、タイヤ成形時におけるカーカス層4の剛性が高くなり、未加硫タイヤを膨径させる際にカーカス層4のスプライス部が開いてスプライスオープン故障を生じ易いので、未加硫タイヤを膨径させる前にカーカス層4のスプライス部の突き合わせ端部を熱融着により互いに接合することが好ましい。
一方、カーカス層4の外面側に樹脂含有被覆層14aを配置し、カーカス層4の内面側にゴム被覆層14bを配置した場合、未加硫タイヤを膨径させる際にスプライスオープン故障を生じ難いため、熱融着処理を行わずに、カーカス層4の端部同士をオーバーラップさせたスプライス構造を採用することができる。また必要に応じて、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物からなる厚さ50μm〜200μmのテープを用い、このテープを樹脂含有被覆層14aの突き合わせ端部に跨がるように貼り合わせても良い。カーカス層4の外面側に樹脂含有被覆層14aを配置し、カーカス層4の内面側にゴム被覆層14bを配置した場合、フラットスポットが生じ難いという利点もある。
カーカス層4におけるカーカスコードCは、従来通りのものを使用しても良いが、樹脂含有被覆層14aの構成材料の弾性率を考慮し、従来よりも弾性率が低いものを使用するようにしても良い。樹脂含有被覆層14aの構成材料は、20℃での貯蔵弾性率が150MPa以下、より好ましくは、5MPa〜120MPaであると良い。樹脂含有被覆層14aの構成材料の弾性率が150MPaを超えると材料が剛直過ぎてタイヤの製造が困難になる。なお、上記貯蔵弾性率は、東洋精機製作所製の粘弾性スペクトロメータを使用して、温度20℃、静歪み10%、動歪み±2%、周波数20Hzの条件にて測定されるものである。
樹脂含有被覆層14aは異方性を有し、該樹脂含有被覆層14aのカーカスコード延長方向の弾性率がそれと直角方向の弾性率の1.2倍〜5.0倍、より好ましくは、1.5倍〜2.5倍であると良い。このような異方性を有する樹脂含有被覆層14aを採用することにより、カーカスコードCの打ち込み密度や太さを減ずることが可能となり、その結果として、製造コストの低減やタイヤの軽量化が可能になる。樹脂含有被覆層14aに異方性を与えるには、構成材料に短繊維を配合し、その短繊維をカーカスコード延長方向に配向させれば良い。或いは、樹脂含有被覆層14aの構成材料を延伸加工しても良い。
カーカス層4はシームレスの円筒体から構成すると良い。例えば、カーカス層4として、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物からなる円筒状の樹脂含有被覆層14aを既知の円筒インフレーション成形方法により成形し、その円筒状の樹脂含有被覆層14aに対してカーカスコードCとゴム被覆層14bの複合体を圧着したものを使用することができる。或いは、カーカスコードCと樹脂含有被覆層14aとゴム被覆層14bの複合体をシート状に成形し、このシート状の複合体を円筒状に丸め、スプライス部では端部同士をオーバーラップさせることなく突き合わせた上で、それら突き合わせ端部を互いに熱融着により接合し、実質的なシームレス構造を有するものを使用することができる。このようにシームレスの円筒体からなるカーカス層4を用いることにより、タイヤの均一性を向上することができる。
以下、本発明で使用される樹脂含有被覆層やインナーライナー層の構成材料について説明する。樹脂含有被覆層やインナーライナー層は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物から構成することができる。
本発明で使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えば、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕及びそれらのN−アルコキシアルキル化物、例えば、ナイロン6のメトキシメチル化物、ナイロン6/610共重合体のメトキシメチル化物、ナイロン612のメトキシメチル化物、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体、(メタ)アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリメタクリレート系樹脂〔例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル〕、ポリビニル系樹脂〔例えば、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PDVC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体(ETFE)〕、セルロース系樹脂〔例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体〕、イミド系樹脂〔例えば、芳香族ポリイミド(PI)〕等を好ましく用いることができる。
本発明で使用されるエラストマーとしては、例えば、ジエン系ゴム及びその水添物〔例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR、高シスBR及び低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー〕、含ハロゲンゴム〔例えば、Br−IIR、CI−IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレンゴム(M−CM)〕、シリコンゴム〔例えば、メチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム〕、含イオウゴム〔例えば、ポリスルフィドゴム〕、フッ素ゴム〔例えば、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム〕、熱可塑性エラストマー〔例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ボリアミド系エラストマー〕等を好ましく使用することができる。
前記した特定の熱可塑性樹脂とエラストマーとの相溶性が異なる場合は、第3成分として適当な相溶化剤を用いて両者を相溶化させることができる。ブレンド系に相溶化剤を混合することにより、熱可塑性樹脂とエラストマーとの界面張力が低下し、その結果、分散層を形成しているゴム粒子径が微細になることから両成分の特性はより有効に発現されることになる。そのような相溶化剤としては、一般的に熱可塑性樹脂及びエラストマーの両方又は片方の構造を有する共重合体、或いは熱可塑性樹脂又はエラストマーと反応可能なエポキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、アミノ基、オキサゾリン基、水酸基等を有した共重合体の構造をとるものとすることができる。これらは混合される熱可塑性樹脂とエラストマーの種類によって選定すればよいが、通常使用されるものには、スチレン/エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEBS)及びそのマレイン酸変性物、EPDM、EPM、EPDM/スチレン又はEPDM/アクリロニトリルグラフト共重合体及びそのマレイン酸変性物、スチレン/マレイン酸共重合体、反応性フェノキシン等を挙げることができる。かかる相溶化剤の配合量には特に限定はないが、好ましくは、ポリマー成分(熱可塑性樹脂とエラストマーとの合計)100重量部に対して、0.5〜10重量部がよい。
熱可塑性エラストマー組成物において、特定の熱可塑性樹脂とエラストマーとの組成比は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとるように適宜決めればよいが、好ましい範囲は重量比90/10〜30/70である。
本発明において、樹脂含有被覆層やインナーライナー層を構成する熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマー組成物には、タイヤ部材としての必要特性を損なわない範囲で前記した相溶化剤などの他のポリマーを混合することができる。他のポリマーを混合する目的は、熱可塑性樹脂とエラストマーとの相溶性を改良するため、材料の成型加工性をよくするため、耐熱性向上のため、コストダウンのため等があり、これに用いられる材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ABS、SBS、ポリカーボネート(PC)等を例示することができる。また、一般的にポリマー配合物に配合される充填剤(炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ等)、カーボンブラック、ホワイトカーボン等の補強剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、顔料、染料、老化防止剤等をタイヤ部材としての必要特性を損なわない限り任意に配合することもできる。
また、エラストマーは熱可塑性樹脂との混合の際、動的に加硫することもできる。動的に加硫する場合の加硫剤、加硫助剤、加硫条件(温度、時間)等は、添加するエラストマーの組成に応じて適宜決定すればよく、特に限定されるものではない。
加硫剤としては、一般的なゴム加硫剤(架橋剤)を用いることができる。具体的には、イオウ系加硫剤としては粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等を例示でき、例えば、0.5〜4phr〔本明細書において、「phr」は、エラストマー成分100重量部あたりの重量部をいう。以下、同じ。〕程度用いることができる。
また、有機過酸化物系の加硫剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が例示され、例えば、1〜20phr程度用いることができる。
更に、フェノール樹脂系の加硫剤としては、アルキルフェノール樹脂の臭素化物や、塩化スズ、クロロプレン等のハロゲンドナーとアルキルフェノール樹脂とを含有する混合架橋系等が例示でき、例えば、1〜20phr程度用いることができる。
その他として、亜鉛華(5phr程度)、酸化マグネシウム(4phr程度)、リサージ(10〜20phr程度)、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ポリ−p−ジニトロソベンゼン(2〜10phr程度)、メチレンジアニリン(0.2〜10phr程度)が例示できる。
また、必要に応じて、加硫促進剤を添加してもよい。加硫促進剤としては、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオ酸塩系、チオウレア系等の一般的な加硫促進剤を、例えば、0.5〜2phr程度用いることができる。
具体的には、アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤としては、ヘキサメチレンテトラミン等、グアジニン系加硫促進剤としては、ジフェニルグアジニン等、チアゾール系加硫促進剤としては、ジベンゾチアジルジサルファイド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾール及びそのZn塩、シクロヘキシルアミン塩等、スルフェンアミド系加硫促進剤としては、シクロヘキシルベンゾチアジルスルフェンアマイド(CBS)、N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアマイド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアマイド、2−(チモルポリニルジチオ)ベンゾチアゾール等、チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジサルファイド(TMTD)、テトラエチルチウラムジサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド(TMTM)、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド等、ジチオ酸塩系加硫促進剤としては、Zn−ジメチルジチオカーバメート、Zn−ジエチルジチオカーバメート、Zn−ジ−n−ブチルジチオカーバメート、Zn−エチルフェニルジチオカーバメート、Te−ジエチルジチオカーバメート、Cu−ジメチルジチオカーバメート、Fe−ジメチルジチオカーバメート、ピペコリンピペコリルジチオカーバメート等、チオウレア系加硫促進剤としては、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア等を挙げることができる。
また、加硫促進助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができ、例えば、亜鉛華(5phr程度)、ステアリン酸やオレイン酸及びこれらのZn塩(2〜4phr程度)等が使用できる。
熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、予め熱可塑性樹脂とエラストマー(ゴムの場合は未加硫物)とを2軸混練押出機等で溶融混練し、連続相(マトリックス)を形成する熱可塑性樹脂中に分散相(ドメイン)としてエラストマーを分散させることによる。エラストマーを加硫する場合には、混練下で加硫剤を添加し、エラストマーを動的加硫させてもよい。また、熱可塑性樹脂またはエラストマーへの各種配合剤(加硫剤を除く)は、上記混練中に添加してもよいが、混練の前に予め混合しておくことが好ましい。熱可塑性樹脂とエラストマーの混練に使用する混練機としては、特に限定はなく、スクリュー押出機、ニーダ、バンバリミキサー、2軸混練押出機等が使用できる。中でも熱可塑性樹脂とエラストマーの混練およびエラストマーの動的加硫には、2軸混練押出機を使用するのが好ましい。更に、2種類以上の混練機を使用し、順次混練してもよい。溶融混練の条件として、温度は熱可塑性樹脂が溶融する温度以上であればよい。また、混練時の剪断速度は1000〜7500sec-1であるのが好ましい。混練全体の時間は30秒から10分、また加硫剤を添加した場合には、添加後の加硫時間は15秒から5分であるのが好ましい。上記方法で製作されたポリマー組成物は、射出成形、押出し成形等、通常の熱可塑性樹脂の成形方法によって所望の形状にすればよい。
このようにして得られる熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとる。かかる構造をとることにより、樹脂含有被覆層やインナーライナー層に十分な柔軟性と連続相としての樹脂層の効果により十分な剛性を併せ付与することができると共に、エラストマーの多少によらず、成形に際し、熱可塑性樹脂と同等の成形加工性を得ることができる。
上記熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物はシート又はフィルムに成形して単体で用いることが可能であるが、隣接するゴムとの接着性を高めるために接着層を積層しても良い。この接着層を構成する接着用ポリマーの具体例としては、分子量100万以上、好ましくは300万以上の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレンメチルアクリレート樹脂(EMA)、エチレンアクリル酸共重合体(EAA)等のアクリレート共重合体類及びそれらの無水マレイン酸付加物、ポリプロピレン(PP)及びそのマレイン酸変性物、エチレンプロピレン共重合体及びそのマレイン酸変性物、ポリブタジエン系樹脂及びその無水マレイン酸変性物、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS)、フッ素系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂などを挙げることができる。これらは常法に従って例えば樹脂用押出機によって押し出してシート状又はフィルム状に成形することができる。接着層の厚さは特に限定されないが、タイヤ軽量化のためには厚さが少ない方がよく、5μm〜150μmが好ましい。
タイヤサイズ205/55R16であって、一対のビード部間に引き揃えられた複数本のカーカスコードを含むカーカス層を装架し、該カーカス層の外周側にベルト層を配置した空気入りタイヤにおいて、カーカス層及びサイドウォールゴム層の構造を種々異ならせた従来例及び実施例1〜2のタイヤを製作した。
従来例のタイヤは、カーカス層の被覆層の構成材料として天然ゴムを主体とするゴム組成物を用いると共に、サイドウォールゴム層の最大厚さを2.5mmに設定したものである。実施例1のタイヤは、カーカス層の外面側の被覆層の構成材料として熱可塑性樹脂(ナイロン6,66)とエラストマー(臭素化ブチルゴム)とをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物を用い、カーカス層の内面側の被覆層の構成材料として天然ゴムを主体とするゴム組成物を用いると共に、サイドウォールゴム層の最大厚さを2.5mmに設定したものである。実施例2のタイヤは、サイドウォールゴム層の最大厚さを2.0mmに設定したこと以外は実施例1と同じ構成を有するものである。
上述した従来例及び実施例1〜2のタイヤについて、質量、縦剛性、横剛性を測定し、下記の評価方法により耐外傷性を評価し、その結果を表1に示した。
耐外傷性:
各試験タイヤを標準リムに組み付けて車両に装着し、空気圧220kPaとして、速度10km/hにて高さ15cmの縁石に30°の角度で乗り上げ、これを5回繰り返し、サイドウォール部で損傷を受けたカーカスコードの本数を数えた。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐外傷性が優れていることを意味する。
Figure 2010125891
この表1から明らかなように、実施例1〜2のタイヤは、従来例に比べて質量の増加を招かずにタイヤ剛性を増大することができた。また、実施例1〜2のタイヤは、耐外傷性の点でも優れていた。
本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す子午線半断面図である。 本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの要部を拡大して示す断面図である。
符号の説明
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 インナーライナー層
7 ベルト層
8 サイドウォールゴム層
14a 樹脂含有被覆層
14b ゴム被覆層
C カーカスコード

Claims (5)

  1. 一対のビード部間に引き揃えられた複数本のカーカスコードを含むカーカス層を装架した空気入りタイヤにおいて、前記カーカス層の少なくとも外面側に前記カーカスコードと接するように熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物からなる樹脂含有被覆層を設けたことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記カーカス層の外面側に前記樹脂含有被覆層を設ける一方で、前記カーカス層の内面側にゴム被覆層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記樹脂含有被覆層が異方性を有し、該樹脂含有被覆層のカーカスコード延長方向の弾性率がそれと直角方向の弾性率の1.2倍〜5.0倍であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記樹脂含有被覆層の外面側に位置するサイドウォールゴム層の最大厚さを2.0mm以下にしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記樹脂含有被覆層を備えたカーカス層がシームレスの円筒体からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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