JP6042864B2 - 歯科用粉液型硬化性材料キット - Google Patents
歯科用粉液型硬化性材料キット Download PDFInfo
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Description
このような硬化性材料キットでは、上記の(メタ)アクリル系のラジカル重合性単量体を重合するために、複数の構成成分からなる化学重合型ラジカル重合開始剤が使用されている。即ち、この化学重合型重合開始剤の複数の構成成分は、液材(liquid)と粉材(powder)とに分けて配合されており、液材と粉材とを混合したときに、ラジカルが発生し、上記(メタ)アクリレート系単量体のラジカル重合が始まるようになっている。
これらの用途の多くは、液材と粉材との混合物の硬化を患者の口腔内で行うことが多いが、この場合、患者に苦痛を与えないため、硬化時の発熱が小さいことが要求される。更に、該混合物が硬化するまでの時間(硬化時間)を臨床の状況に応じてコントロールすることも重要である。
また、ラジカル連鎖移動剤を用いることで、硬化体の物性を低下させることなく硬化時間を任意にコントロールし、且つ、硬化時の発熱を低減させる技術が報告されている(特許文献4参照)。
尚、上記のような液吸収材3は、日本では「筆」と呼ばれている。
ところが、ラジカル連鎖移動剤の添加により、練和法に適当な硬化時間に調整しても、筆積み法で硬化すると、その硬化時間は、筆積みに適した硬化時間よりも大幅に長くなってしまう。また、筆積み法に適当な硬化時間に調整すると、この逆で、練和法では硬化が早すぎるものになってしまう。
前記液材(A)は、(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(a1)、前記有機ハロゲン化合物(a2)及びラジカル連鎖移動剤(a3)を含み、
前記粉材(B)は、非架橋樹脂粒子(b1)、前記ピリミジントリオン化合物(b2)及び前記有機金属化合物(b3)を含み、
前記液材(A)および粉材(B)の少なくとも一方に過酸化物(Z)が配合されていることを特徴とする歯科用粉液型硬化性材料キットが提供される。
(1)前記液材(A)は、ラジカル重合性単量体(a1)100質量部当り、有機ハロゲン化合物(a2)を0.001〜5質量部、ラジカル連鎖移動剤(a3)を0.01〜10質量部の量で含み、前記粉材(B)は、前記樹脂粒子(b1)100質量部当り、前記ピリミジントリオン化合物(b2)を0.03〜5質量部、前記有機金属化合物(b3)を0.0003〜0.02質量部の量で含んでいること、
(2)前記過酸化物(Z)は、前記樹脂粒子(b1)100質量部当り0.03〜5質量部の量で、前記粉材(B)に配合されていること、
(3)前記有機ハロゲン化合物(a2)が第4級ハロゲン化アンモニウムであること、
(4)前記ラジカル連鎖移動剤(a3)が、メルカプタン、ハロゲン化炭化水素或いはフェニル基含有モノオレフィンであること、
(5)前記非架橋樹脂粒子(b1)が、(メタ)アクリレート樹脂粒子であること、
(6)前記ピリミジントリオン化合物が、下記一般式(1):
、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基或いはフェニル基
、を示す、
で表される化合物であること、
(7)前記有機金属化合物(b3)が銅または鉄化合物であること、
(8)前記有機金属化合物(b3)がアセチルアセトン銅(II)、酢酸銅(II)、オレイン酸銅(II)及びアセチルアセトン鉄(II)からなる群より選択された少なくとも1種であること、
が好ましい。
既に述べたように、筆積み法においての硬化速度が遅く、硬化時間が長くなるのは、この手法では、液材と粉材の混合が、前述した図1の吸収材3から滲み出る液材が粉材へ浸透することによりなされるため、強制的に攪拌する練和法に比べて、硬化時に重合反応に必要な酸素が不足するためと考えられる。
しかるに、本発明によれば、過酸化物が酸素供給源となり、筆積み法における硬化時の酸素不足が解消しており、この結果、硬化時間の過度な長期化が抑制されるわけである。
液材(A)は、(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(a1)、ラジカル重合開始剤成分である有機ハロゲン化合物(a2)及びラジカル連鎖移動剤(a3)を必須成分として含み、さらに、好ましくは過酸化物(Z)が配合される。
本発明において、液材(A)には、主成分として(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体が配合されるが、かかるラジカル重合性単量体は、重合性の良さや人体に対する適合性などから、歯科分野で通常使用されているものである。
メチル(メタ)アクリレート;
エチル(メタ)アクリレート;
イソプロピル(メタ)アクリレート;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート;
2−(メタ)アクリロキシエチルプロピオネート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート;
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;
ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート;
ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;
1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート;
1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート;
1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート;
2,2−ビス((メタ)アクリロキシフェニル)プロパン;
2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシフェ
ニル)]プロパン;
2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン
;
2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパ
ン;
2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパ
ン;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート;
トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート;
ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物;
液材(A)に配合される有機ハロゲン化合物は、後述するピリミジントリオン化合物(b2)及び有機金属化合物(b3)との組み合わせで重合開始剤(以下、ピリミジントリオン系開始剤と呼ぶことがある)として機能する成分であり、具体的には、液材(A)中でハロゲン化物イオンを形成させる化合物が使用される。
ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド;
ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;
ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド;
ジイソブチルアミンハイドロクロライド;
テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド;
トリエチルアミンハイドロクロライド;
トリメチルアミンハイドロクロライド;
ジメチルアミンハイドロクロライド;
ジエチルアミンハイドロクロライド;
メチルアミンハイドロクロライド;
エチルアミンハイドロクロライド;
イソブチルアミンハイドロクロライド;
トリエタノールアミンハイドロクロライド;
β−フェニルエチルアミンハイドロクロライド;
アセチルコリンクロライド;
2−クロロトリメチルアミンハイドロクロライド;
(2−クロロエチル)トリエチルアンモニウムクロライド;
テトラ−デシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;
テトラエチルアンモニウムクロライド;
テトラメチルアンモニウムクロライド;
トリオクチルメチルアンモニウムクロライド;
ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド;
ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド;
ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイド;
テトラブチルアンモニウムブロマイド;
ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド;
本発明においては、特に高い重合活性を得ることができるという観点から、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライドを使用することが特に好ましい。
ラジカル連鎖移動剤(a3)は、成長ポリマー鎖からラジカルを受け取り連鎖移動反応を引き起こすために使用されるものであり、先行技術でも提案されているように、ラジカル連鎖移動剤の使用により、重合速度を遅延化させ、臨床での作業時間を確保することができる。
メルカプタン:
オクチルメルカプタン;
ラウリルメルカプタン;
t−ドデシルメルカプタン;
n−ヘキサデシルメルカプタン;
n−テトラデシルメルカプタン;
m−チオクレゾール;
チオフェノール;
チオグリコール(2−メルカプトエタノール);
チオグリコール酸2−エチルヘキシル;
β−ナフタレンチオール;
ハロゲン化炭化水素:
四塩化炭素;
臭化エチレン;
フェニル基含有モノオレフィン;
2−フェニル−1−プロペン(α−メチルスチレン);
2−フェニル−1−ブテン;
2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(α−メチルスチレ
ンダイマー);
3,5−ジフェニル−5−メチル−2−へプテン;
2,4,6−トリフェニル−4,6−ジメチル−1−へプテン;
3,5,7−トリフェニル−5−エチル−7−メチル−2−ノネン;
1,3−ジフェニル−1−ブテン;
2,4−ジフェニル−4−メチル−2−ペンテン;
3,5−ジフェニル−5−メチル−3−へプテン;
1,1−ジフェニルエチレン;
2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン;
2−フェニル−1−プロペン;
1,3−ジフェニル−1−ブテン;
本発明においては、上記のラジカル連鎖移動剤(a3)の中では、フェニルキ含有モノオレフィンが好ましく、特に入手の容易さから、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(α−メチルスチレンダイマー)が最も好適である。
本発明においては、液材(A)中に、上述した(a1)〜(a3)の成分以外の他の配合剤を適宜添加しておくことができる。特に、後述する過酸化物(Z)は、この液材(A)中に配合しておくこともできる。
粉材(B)は、前述した液材(A)と混合されて使用されるものであるが、このような粉材(B)は、非架橋樹脂粒子(b1)、ピリミジントリオン化合物(b2)および有機金属化合物(b3)を必須成分として含む。
非架橋樹脂粒子(b1)は、実質的に架橋構造を有していない樹脂(単官能単量体から得られる樹脂)の粒状物であり、この分野では周知の材料である。即ち、架橋構造を実施的に有していないことから、前述した(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(a1)に溶解するか、或いは該単量体中に浸漬したときに膨潤して体積が増大する性質を有している。
このような好適な樹脂の具体例は以下のとおりである。
(メタ)アクリレート樹脂、例えば、ポリメチルメタクリレート、ア
ルキル鎖の炭素数が4以下のアルキル(メタ)アクリレート系単量体の
重合体(例えばポリエチルメタクリレート)、メチルメタクリレートと
エチルメタクリレートの共重合体。
オレフィン樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン。
ポリアミド類。
ポリエステル類。
ポリスチレン類。
本発明においては、得られる硬化体が高靭性となるという観点から、(メタ)アクリレート樹脂が特に好ましい。
尚、粒子形状も特に限定されず、球状、異形状若しくは不定形でもよい。
粉材(B)中に配合されるピリミジントリオン化合物(b2)は、液材(A)中の有機ハロゲン化合物(a2)及び後述する有機金属化合物(b3)との組み合わせでラジカル重合開始剤として機能する成分である。即ち、後述する有機金属化合物(b3)により、ピリミジントリオン化合物(b2)の水素原子が引き抜かれてラジカル種が発生する。さらに、このラジカル種は、有機ハロゲン化合物(a2)の触媒作用により、大気中の酸素と反応し、この結果、ピリミジントリオン化合物(b2)の5位炭素に酸素が結合したラジカル種が発生する。このようなピリミジントリオン化合物から発生する二つのラジカル種が開始点となって(メタ)アクリレート系ラジカル重合性単量体のラジカル重合が進行していくものである。
れ、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロア
ルキル基或いはフェニル基、を示す、
で表される化合物である。
上記の炭素数1〜8のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。また、炭素数3〜8のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、3−又は4−メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
即ち、上記一般式(1)において、カルボニル基によって活性化されている5位の水素原子が引き抜かれてラジカル開始点となる。
5−メチルピリミジントリオン;
5−エチルピリミジントリオン;
5−プロピルピリミジントリオン;
5−ブチルピリミジントリオン;
5−イソブチルピリミジントリオン;
1,5−ジメチルピリミジントリオン;
1,5−ジエチルピリミジントリオン;
1−メチル−5−エチルピリミジントリオン;
1−エチル−5−メチルピリミジントリオン;
1−メチル−5−ブチルピリミジントリオン;
1−エチル−5−ブチルピリミジントリオン;
1−メチル−5−イソブチルピリミジントリオン;
1−エチル−5−イソブチルピリミジントリオン;
1−メチル−5−シクロヘキシルピリミジントリオン;
1−エチル−5−シクロヘキシルピリミジントリオン;
1−ベンジル−5−フェニルピリミジントリオン;
1,3,5−トリメチルピリミジントリオン;
1,3−ジメチル−5−エチルピリミジントリオン;
1,3−ジメチル−5−ブチルピリミジントリオン;
1,3−ジメチル−5−イソブチルピリミジントリオン;
1,3,5−トリエチルピリミジントリオン;
1,3−ジエチル−5−メチルピリミジントリオン;
1,3−ジエチル−5−ブチルピリミジントリオン;
1,3−ジエチル−5−イソブチルピリミジントリオン;
1.3−ジメチル−5−フェニルピリミジントリオン;
1.3−ジエチル−5−フェニルピリミジントリオン;
1−エチル−3−メチル−5−ブチルピリミジントリオン;
1−エチル−3−メチル−5−イソブチルピリミジントリオン;
1−メチル−3−プロピル−5−エチルピリミジントリオン;
1−エチル−3−プロピル−5−メチルピリミジントリオン;
1−シクロヘキシル−5−メチルピリミジントリオン;
1−シクロヘキシル−5−エチルピリミジントリオン;
5−ブチル−1−シクロヘキシルピリミジントリオン;
5−sec−ブチル−1−シクロヘキシルピリミジントリオン;
1−シクロヘキシル−5−ヘキシルピリミジントリオン;
1−シクロヘキシル−5−オクチルピリミジントリオン;
1,5−ジシクロヘキシルピリミジントリオン;
1−シクロヘキシル−5−メチルピリミジントリオン;
1−シクロヘキシル−5−エチルピリミジントリオン;
5−ブチル−1−シクロヘキシルピリミジントリオン;
5−sec−ブチル−1−シクロヘキシルピリミジントリオン;
1−シクロヘキシル−5−ヘキシルピリミジントリオン;
1−シクロヘキシル−5−オクチルピリミジントリオン;
1,5−ジシクロヘキシルピリミジントリオン;
従って、このような観点から、この粉材(B)中のピリミジントリオン化合物(b2)の量は、非架橋樹脂粒子(b1)100質量部当り、0.03〜5質量部、特に0.05〜3質量部の範囲とすることが好ましい。即ち、このような範囲に粉材(B)中のピリミジントリオン化合物(b2)の量を設定しておけば、(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(a1)に対する非架橋樹脂粒子(b1)の量が先に述べた所定の範囲となるように液材(A)と粉材(B)とを混合したとき、混合物中でのピリミジントリオン化合物(b2)の量を上記範囲内とすることができるからである。
粉材(B)中の有機金属化合物(b3)は、繰り返し述べたように、有機ハロゲン化合物(a2)及びピリミジントリオン化合物(b2)との組み合わせで重合開始剤として機能する成分である。即ち、この有機金属化合物により、ピリミジントリオン化合物(b2)の水素原子が引き抜かれてラジカル種が発生し、さらに、このラジカル種が前述した有機ハロゲン化合物(a2)の触媒作用により、大気中の酸素と反応し、ピリミジントリオン化合物(b2)の5位炭素に酸素が結合したラジカル種が生成する。これらのラジカルが開始点となって、(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(a1)のラジカル重合が進行するというものである。
アセチルアセトン銅(II);4−シクロヘキシル酪酸銅(II);
酢酸銅(II);オレイン酸銅(II);
マンガン化合物:
アセチルアセトンマンガン;ナフテン酸マンガン;
オクチル酸マンガン;
コバルト化合物:
アセチルアセトンコバルト;ナフテン酸コバルト;
リチウム化合物:
アセチルアセトンリチウム;酢酸リチウム;
亜鉛化合物:
アセチルアセトン亜鉛;ナフテン酸亜鉛;
ニッケル化合物:
アセチルアセトンニッケル;酢酸ニッケル;
アルミニウム化合物:
アセチルアセトンアルミニウム;
カルシウム化合物:
アセチルアセトンカルシウム;
鉄化合物:
アセチルアセトン鉄(II);
その他:
アセチルアセトンクロム;ナフテン酸ナトリウム;
レアアースオクトエートなど;
従って、このような観点から、この粉材(B)中の有機金属化合物(b3)の量は、非架橋樹脂粒子(b1)100質量部当り、0.0003〜0.02質量部、特に0.0005〜0.007質量部の範囲とすることが好ましい。即ち、このような範囲に粉材(B)中の有機金属化合物(b3)の量を設定しておけば、(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(a1)に対する非架橋樹脂粒子(b1)の量が先に述べた所定の範囲となるように液材(A)と粉材(B)とを混合したとき、混合物中での有機金属化合物(b3)の量を上記範囲内とすることができるからである。
本発明において、粉材(B)中には、上述した(a1)〜(a3)の成分以外の他の配合剤を適宜添加しておくことができる。特に、後述する過酸化物(Z)は、この粉材(A)中に配合しておくことが、保存安定性の点で好ましい。この過酸化物(Z)については、後で詳述する。
このような無機充填剤としては、石英粉末、アルミナ粉末、ガラス粉末、炭酸カルシウム、酸化チタン、乾式シリカ、湿式シリカ等を、1種又は2種以上の混合物として用いることができる。
さらに、色素、顔料、および香料等も配合することができ、上記の無機充填剤も含め、適宜配合されるこれらの剤は、硬化性や硬化物の物性に悪影響を与えない範囲の量で目的に応じて配合することができる。
本発明の最大の特徴は、過酸化物(Z)を、上述した液材(A)および粉材(B)のいずれか一方またはその両方に配合させた点にある。即ち、このような過酸化物の使用により、例えば筆積み法により液材(A)と粉材(B)とを混合して硬化させた場合の酸素不足による硬化速度の著しい遅延、即ち硬化時間の過度の長期化を有効に回避することができ、前述したラジカル連鎖移動剤(a3)の使用による硬化時間の調整(硬化時間の長期化)は、筆積み法の場合も練和法とさほど変わらない。この結果、本発明の粉液型硬化性材料キットは、練和法及び筆積み法の何れにも好適に適用できることとなる。
即ち、本発明においては、過酸化物(Z)はラジカル重合開始剤として機能するものではなく、特に筆積み法に際しての酸素供給源として機能することから、上記のように筆積み法に際しての硬化時間の著しい長期化を回避することが可能になると信じられる。
メチルエチルケトンパーオキサイド;
シクロヘキサノンパーオキサイド;
メチルシクロヘキサノンパーオキサイド;
メチルアセトアセテートパーオキサイド;
アセチルアセトンパーオキサイド;
1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシ
クロヘキサン;
1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン;
1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシク
ロヘキサン;
1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;
1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン;
2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン;
n−ブチル 4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート;
2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)
プロパン;
P−メンタンハイドロパーオキサイド;
ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド;
1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド;
クメンハイドロパーオキサイド;
t−ヘキシルハイドロパーオキサイド;
t−ブチルハイドロパーオキサイド;
α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン;
ジクミルパーオキサイド;
2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン
;
t−ブチルクミルパーオキサイド;
ジ−t−ブチルパーオキサイド;
2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン
−3;
イソブチリルパーオキサイド;
2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド;
3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド;
オクタノイルパーオキサイド;
ラウロイルパーオキサイド;
ステアリルパーオキサイド;
スクシニックアシッドパーオキサイド;
m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド;
ベンゾイルパーオキサイド;
ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート;
ジイソプロピルパーオキシジカーボネート;
ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート;
ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート;
ジー2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート;
ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネート;
ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート;
α,α−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン
;
クミルパーオキシネオデカノエート;
1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート;
1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート
;
t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート;
t−ブチルパーオキシネオデカノエート;
t−ヘキシルパーオキシピバレート;
t−ブチルパーオキシピバレート;
1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサ
ノエート;
2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキ
シ)ヘキサン;
1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキ
サノエート;
t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート;
t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート;
t−ブチルパーオキシイソブチレート;
t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート;
t−ブチルパーオキシマレイックアシッド;
t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート;
t−ブチルパーオキシラウレート;
2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキ
サン;
t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート;
t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート;
t−ヘキシルパーオキシベンゾエート;
2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン
;
t−ブチルパーオキシアセテート;
t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート;
t−ブチルパーオキシベンゾエート;
ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート;
また、上記でも述べたように、このような過酸化物(Z)は、液材(A)及び粉材(B)の何れにも配合することができるが、通常、液状の過酸化物(Z)は液材(A)に配合し、固体状の過酸化物(Z)は粉材(B)に配合される。特に、本発明では、保存安定性の観点からジアシルパーオキサイド類が好適であり、中でもベンゾイルパーオキサイド等の固体状のものを粉材(B)に配合することが最も好適である。
従って、過酸化物(Z)は、液材(A)に配合するにしろ或いは粉材(B)に配合するにしろ、粉材(B)を液材(A)と混合したときの重合性単量体(a1)当りの量が上記範囲内となるように設定される。
また、粉材(B)に過酸化物(Z)を配合するときは、液材(A)と粉材(B)との混合比を考慮して設定する必要があり、例えば、粉材(B)中の過酸化物(Z)の量は、非架橋樹脂粒子(b1)100質量部当り、0.03〜5質量部、特に0.05〜3質量部の範囲とすることが好適である。即ち、このような範囲に粉材(B)中の過酸化物(Z)の量を設定しておけば、(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(a1)に対する非架橋樹脂粒子(b1)の量が先に述べた所定の範囲となるように液材(A)と粉材(B)とを混合したとき、混合物中での過酸化物(Z)の量を上記範囲内とすることができる。
勿論、過酸化物(Z)を液材(A)と粉材(B)とに分配するような場合にも、液材(A)と粉材(B)との混合比を考慮して、液材(A)中及び粉材(B)中への過酸化物(Z)の配合量を定めればよい。
具体的に説明すると、本発明で用いる過酸化物と有機金属化合物との組み合わせは、両者の反応性が極めて小さい。また、本発明において、過酸化物と反応性の高い成分が存在する場合には、過酸化物量は、酸素補給源としては十分な量であるが、重合を生じさせ得るラジカル供給源には至らない程度の少量に設定される。即ち、本発明で採用しているようなピリミジントリオン系重合開始剤の系においては、硬化時の発熱が小さいことが利点であり、過酸化物がラジカル供給源となり、結果重合が生じ得るような量で使用されると、硬化時の発熱が大きくなってしまい、この結果、口腔内に粉液の混合物を施すことが困難となってしまう。従って、本発明では、臨床で採用される液材(A)と粉材(B)との混合比を考慮して、過酸化物がラジカル重合開始剤として機能しない程度の少量に設定されることとなる。
上述した液材(A)及び粉材(B)は、従来公知のものと同様、それぞれ各成分の所定量を均一に混合することにより調製され、互いに接触しないように、別々の容器に収容され、粉液型硬化性材料キットとして歯科用に使用される。
即ち、この粉液型硬化性材料キットは、練和法及び筆積み法の何れにも適用できる共用型として使用することができ、何れの手法によっても液材(A)と粉材(B)とを混合し、この混合物(硬化性材料)を所定の部位に施して重合硬化が行われ、硬化体が形成されることとなる。
通常、具体的な混合比は、粉材(g)/液材(ml)=0.3/1〜4/1の範囲であり、臨床では、多くの場合、粉材(g)/液材(ml)=2/1の割合で混合される。
尚、実施例および比較例で使用した化合物の略称、各種の測定方法は以下の通りである。
MMA:メチルメタクリレート
TMPT:トリメチロールプロパントリメタクリレート
有機ハロゲン化合物(a2);
DLDMACl:ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド
DLDMABr:ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイド
ラジカル連鎖移動剤(a3);
α−MSD:
2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン
[0076]
非架橋性樹脂粒子(b1);
PEMA:ポリメタクリル酸エチル
P(MMA−EMA):
メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体
ピリミジントリオン化合物(b2);
cHexEt−PTO:
1−シクロヘキシル−5−エチルピリミジントリオン
cHexMe−PTO:
1−シクロヘキシル−5−メチルピリミジントリオン
有機金属化合物(b3);
CuAcAc:アセチルアセトン銅
CuAc:酢酸第二銅
BPO:ベンゾイルパーオキサイド
パーオクタH:
1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド
BHT:ブチルヒドロキシトルエン
粉材(B)と液材(A)とを別々の容器に取り出し、液材を吸収材(writing brush)に含ませた。この吸収材を粉材(B)に付け、吸収材から滲み出る液材(A)を粉材(B)に馴染ませてレジン泥(硬化性材料)を調製した。
レジン泥を手で触り、爪跡が付くかどうか調べた。液材(A)を含んだ吸収材を粉材(B)に付けてから爪跡が付かなくなるまでの時間を測定し、筆積み法での硬化時間とした。測定は23℃の恒温室で行った。
なお、レジン泥は、粉材(g)/液材(ml)=2/1の割合で混合している。
筆積み法による硬化時間は操作性の観点から、3分〜4分が最適である。硬化時間が4分を超えると、例えば、TEK内面の調整時に口腔内での硬化が求められるような症例での使用が困難になる。
粉材(B)と液材(A)とを、粉材(g)/液材(ml)=2/1の割合でラバーカップ内に入れ、20秒間練和した。ラバーカップから練和物を取り出し、手で触り、爪跡が付くかどうか調べた。練和開始から爪跡が付かなくなるまでの時間を測定し、練和法での硬化時間とした。測定は23℃の恒温室で行った。
練和法による硬化時間は、形態調整後に素早い硬化が求められるため、1分30秒〜3分が最適である。
硬化発熱の評価は、サーミスタ温度計による発熱法によって行った。
粉材(B)と液材(A)とを、B/A=2/1(g/ml)の割合で混合し、20秒間練和した。次いで、中心に9mmφの孔の空いたテフロン製モールド(30mm×30mm×12mm)に流し込んだ後、サーミスタ温度計を差し込み、記録計により最高温度を測定した。なお、測定は23℃の恒温室で行った。
歯科用常温重合レジンは患者の口腔内で硬化させることが多い為、硬化発熱の最高温度は60℃未満であることが好ましく、60℃を超えると患者に苦痛を与えてしまう。
硬化体の曲げ強さの測定は、以下の方法で行った。
粉材(B)と液材(A)とを、B/A=2/1(g/ml)の割合で混合し、20秒間練和した。次いで、25mm×2mm×2mmのモールドに流し込み、37℃で24時間硬化させた。このようにして得られた硬化体を支点間距離20mmで曲げ破壊試験を行った。クロスヘッドスピードは1mm/minである。なお、測定は23℃の恒温室で行った。
硬化体の色調試験は、以下の方法で行った。まず、粉材(g)/液材(ml)=2/1の割合で各成分を混合し、20秒間練和した。次いで、10mm×10mm×1mmのモールドに流し込み、37℃で24時間硬化させた。このようにして得られた硬化体の色調を目視で評価した。
下記処方により、各成分を3時間攪拌混合し、液材(A)を得た。
重合性単量体(a1);
メチルメタクリレート 90g
トリメチロールプロパントリメタクリレート 10g
有機ハロゲン化合物(a2);
ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド 0.2g
ラジカル連鎖移動剤(a3);
2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン 0.2g
重合禁止剤(その他);
ブチルヒドロキシトルエン 0.1g
非架橋樹脂粒子(b1);
ポリメタクリル酸エチル(平均粒径35μm) 10g
メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体
(平均粒径60μm) 90g
ピリミジントリオン化合物(b2);
1−シクロヘキシル−5−エチルピリミジントリオン 1.5g
有機金属化合物(b3);
アセチルアセトン銅 0.002g
過酸化物(Z);
ベンゾイルパーオキサイド 0.15g
硬化性材料キットにおける液材(A)及び粉材(B)の組成を表1に、試験結果を表3に示した。
液材(A)及び粉材(B)の処方(組成)を表1或いは表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様に、粉液硬化性材料キットを作製し、硬化時間、硬化発熱、曲げ強さ、および硬化体の色調を評価した。試験結果を表3に示した。
液材(A)及び粉材(B)の処方(組成)を表4に示すように変更した以外は、実施例1と同様に、粉液硬化性材料キットを作製し、硬化時間、硬化発熱、曲げ強さ、および硬化体の色調を評価した。試験結果を表5に示した。
一方、過酸化物(Z)が使用されていない比較例1〜比較例13では、練和法での硬化時間は最適範囲であるが、筆積み法での硬化時間が大幅に長期化した。
また、ピリミジントリオン化合物(b2)、有機金属化合物(b3)または有機ハロゲン化合物(b3)が使用されていない比較例14〜16では、いずれも硬化せず、硬化性材料(常温重合レジン)を調製できなかった。
ラジカル連鎖移動剤(a3)が使用されていない比較例17では、筆積み法および練和法の両方で、硬化時間が実施例に比して大幅に短縮され、十分な操作時間が取れず使用が困難であった。また、硬化発熱が高く、患者に苦痛を与えるものであった。
Claims (11)
- 液材(A)と粉材(B)とからなり、ラジカル重合開始剤として、有機ハロゲン化合物とピリミジントリオン化合物と有機金属化合物との組み合わせが使用されている歯科用粉液型硬化性材料キットにおいて、
前記液材(A)は、(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(a1)、前記有機ハロゲン化合物(a2)及びラジカル連鎖移動剤(a3)を含み、
前記粉材(B)は、非架橋樹脂粒子(b1)、前記ピリミジントリオン化合物(b2)及び前記有機金属化合物(b3)を含み、
前記液材(A)および粉材(B)の少なくとも一方に過酸化物(Z)が配合されていることを特徴とする歯科用粉液型硬化性材料キット。 - 前記液材(A)は、ラジカル重合性単量体(a1)100質量部当り、有機ハロゲン化合物(a2)を0.001〜5質量部、ラジカル連鎖移動剤(a3)を0.01〜10質量部の量で含み、前記粉材(B)は、前記樹脂粒子(b1)100質量部当り、前記ピリミジントリオン化合物(b2)を0.03〜5質量部、前記有機金属化合物(b3)を0.0003〜0.02質量部の量で含んでいる請求項1に記載の歯科用粉液型硬化性材料キット。
- 前記過酸化物(Z)は、前記樹脂粒子(b1)100質量部当り0.03〜5質量部の量で、前記粉材(B)に配合されている請求項2に記載の歯科用粉液型硬化性材料キット。
- 前記有機ハロゲン化合物(a2)が第4級ハロゲン化アンモニウムである請求項1に記載の歯科用粉液型硬化性材料キット。
- 前記ラジカル連鎖移動剤(a3)が、メルカプタン、ハロゲン化炭化水素或いはフェニル基含有モノオレフィンである請求項1に記載の歯科用粉液型硬化性材料キット。
- 前記非架橋樹脂粒子(b1)が、(メタ)アクリレート樹脂粒子である請求項1に記載の歯科用粉液型硬化性材料キット。
- 前記有機金属化合物(b3)が銅または鉄化合物である請求項1に記載の歯科用粉液型硬化性材料キット。
- 前記有機金属化合物(b3)がアセチルアセトン銅(II)、酢酸銅(II)、オレイン酸銅(II)及びアセチルアセトン鉄(II)からなる群より選択された少なくとも1種である請求項8に記載の歯科用粉液型硬化性材料キット。
- 筆積み法により前記液材(A)と粉材(B)とを口腔外で混合して該混合物を口腔外で硬化せしめる請求項1に記載の歯科用粉液型硬化性材料キットの使用方法。
- 筆積み法及び練和法の共用型として使用される請求項1に記載の歯科用粉液型硬化性材料キットの口腔外における使用方法。
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