JP2021116346A - 重合開始剤、硬化性組成物調製用キット、硬化性組成物、硬化物及び歯科材料 - Google Patents

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一生 ▲高▼橋
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Abstract

【課題】重合性を良好に向上させることができる重合開始剤、上記重合開始剤を含む硬化性組成物調製用キット、硬化性組成物、上記硬化性組成物の硬化物及び歯科材料を提供する。【解決手段】メルカプト基と、単環式複素環と、を含む複素環化合物を含む重合開始剤、上記重合開始剤を含む硬化性組成物調製用キット、硬化性組成物、上記硬化性組成物の硬化物及び歯科材料。【選択図】なし

Description

本開示は、重合開始剤、硬化性組成物調製用キット、硬化性組成物、硬化物及び歯科材料に関する。
歯科分野において、歯の欠損を修復するために、合成樹脂成型物などが用いられている。例えば、歯の大きな欠損の修復の為に、歯代替物として所謂セメントと呼ばれる硬化性組成物が用いられている。近年、セメントの使用範囲が拡大してきている。
セメントなどの歯科用硬化性組成物の重合には、光重合開始剤及び化学重合開始剤が使用され得る。
例えば、特許文献1には、セメントに使用される化学重合開始剤の一例として、ベンゾトリアゾールが開示されている。
特許第5986496号公報
しかしながら、特許文献1に記載されるようなベンゾトリアゾールはモノマーの重合性を向上させることができない場合があり、重合性の点で改善の余地がある。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、モノマーの重合性を良好に向上させることができる重合開始剤、上記重合開始剤を含む硬化性組成物調製用キット、硬化性組成物、上記硬化性組成物の硬化物及び歯科材料を提供することである。
上記課題を解決するための具体的手段は以下の態様を含む。
<1> メルカプト基と単環式複素環とを含む複素環化合物を含む重合開始剤。
<2> 前記単環式複素環が、窒素原子を含む<1>に記載の重合開始剤。
<3> 前記単環式複素環が、5員環又は6員環であり、炭化水素基及びオキソ基の少なくとも1つを含む<1>又は<2>に記載の重合開始剤。
<4> 前記単環式複素環が、複素芳香環である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の重合開始剤。
<5> 前記単環式複素環が、2以上の窒素原子を含む<1>〜<4>のいずれか1つに記載の重合開始剤。
<6> 前記単環式複素環が、イミダゾール環、1,2,4−トリアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1、3−チアゾール環、1,3−オキサゾール環又は1,2,3,4−テトラゾール環である<1>〜<5>のいずれか1つに記載の重合開始剤。
<7> 前記単環式複素環が、5員環である<1>〜<6>のいずれか1つに記載の重合開始剤。
<8> モノマー(A)を含む第1剤と、モノマー(B)を含む第2剤と、を備え、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の重合開始剤、遷移金属化合物及び過酸化物が、それぞれ独立に、前記第1剤及び前記第2剤の少なくとも一方に含有されている硬化性組成物調製用キット。
<9> 前記重合開始剤及び前記遷移金属化合物が前記第1剤に含有され、前記過酸化物が前記第2剤に含有されている<8>に記載の硬化性組成物調製用キット。
<10> 前記モノマー(A)が、酸性基を含まないモノマーである<8>又は<9>に記載の硬化性組成物調製用キット。
<11> 前記モノマー(B)が、酸性基含有モノマーを含む<8>〜<10>のいずれか1つに記載の硬化性組成物調製用キット。
<12> 前記遷移金属化合物が、銅化合物及びバナジウム化合物の少なくとも一方を含む<8>〜<11>のいずれか1つに記載の硬化性組成物調製用キット。
<13> 前記過酸化物が、有機過酸化物を含む<8>〜<12>のいずれか1つに記載の硬化性組成物調製用キット。
<14> 前記第1剤及び前記第2剤の合計質量に対する前記複素環化合物の含有量が、0.01質量%〜5.0質量%である<8>〜<13>のいずれか1つに記載の硬化性組成物調製用キット。
<15> 歯科材料用である<8>〜<14>のいずれか1つに記載の硬化性組成物調製用キット。
<16> <1>〜<7>のいずれか1つに記載の重合開始剤と、モノマーと、遷移金属化合物と、過酸化物と、を含む硬化性組成物。
<17> <16>に記載の硬化性組成物の硬化物。
<18> <17>に記載の硬化物を含む歯科材料。
本開示の一実施形態によれば、モノマーの重合性を良好に向上させることができる重合開始剤、上記重合開始剤を含む硬化性組成物調製用キット、硬化性組成物、上記硬化性組成物の硬化物及び歯科材料を提供することができる。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及びメタクリロイルを意味する。
≪重合開始剤≫
本開示の重合開始剤は、メルカプト基と単環式複素環とを含む複素環化合物を含む。
本開示の重合開始剤は、メルカプト基と単環式複素環とを含む複素環化合物を含むことで重合性を良好に向上させることができる。
本開示の重合開始剤は、酸化還元反応を利用してモノマー同士を重合させる化学重合開始剤であり、後述する光重合開始剤とは異なる。
<複素環化合物>
本開示の重合開始剤に含まれる複素環化合物は、メルカプト基と、単環式複素環と、を含む。
本開示における複素環化合物中、メルカプト基は、単環式複素環におけるヘテロ原子以外の原子(即ち、炭素原子)と結合していることが好ましい。
単環式複素環に含まれるヘテロ原子の種類としては、窒素原子、硫黄原子、酸素原子等が挙げられる。
上記の中でも、窒素原子及び硫黄原子が好ましく、窒素原子がより好ましい。
単環式複素環に含まれるヘテロ原子の数としては、2以上が好ましい。また、単環式複素環に含まれるヘテロ原子の数としては、4以下が好ましい。
本開示における複素環化合物は、単環式複素環が2以上の窒素原子を含むことが好ましい。
単環式複素環としては、5員環又は6員環であることが好ましく、5員環であることがより好ましい。
単環式複素環は、複素芳香環であることが好ましい。
単環式複素環は、置換基を含んでいてもよい。
上記置換基としては、1価の有機基、オキソ基(=O)、チオオキソ基(=S)、ハロゲン原子等が挙げられる。
上記の中でも、置換基としては、1価の有機基及びオキソ基が好ましく、1価の有機基がより好ましい。
1価の有機基としては、1価の炭化水素基、ヘテロ原子及び炭素原子を含む1価の基等が挙げられる。
1価の有機基の炭素数としては、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましい。
1価の炭化水素基は、直鎖又は分岐の鎖状炭化水素基であってもよく、環状炭化水素基であってもよい。上記の中でも上記炭化水素基は、環状炭化水素基であることが好ましい。
1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロプル基、フェニル基等が挙げられる。
ヘテロ原子及び炭素原子を含む1価の基におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
ヘテロ原子及び炭素原子を含む1価の基としては、ベンジル基、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
単環式複素環が、5員環又は6員環であり、炭化水素基及びオキソ基の少なくとも1つを含むことが好ましい。
単環式複素環の具体例としては、イミダゾール環、1,2,4−トリアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1、3−チアゾール環、1,3−オキサゾール環又は1,2,3,4−テトラゾール環等が挙げられる。
上記の中でも、単環式複素環が、イミダゾール環、1,2,4−トリアゾール環又は1,3,4−チアジアゾール環であることが好ましい。
複素環化合物としては、例えば、以下の化学式で表される化合物が挙げられる。
Figure 2021116346

≪硬化性組成物調製用キット≫
本開示の硬化性組成物調製用キットは、モノマー(A)を含む第1剤と、モノマー(B)を含む第2剤と、を備え、本開示の重合開始剤、遷移金属化合物及び過酸化物が、それぞれ独立に、第1剤及び第2剤の少なくとも一方に含有されている。
<モノマー>
本開示の硬化性組成物調製用キットにおいて、第1剤はモノマー(A)を含み、第2剤はモノマー(B)を含む。
モノマー(A)とモノマー(B)とは、同一のモノマーであってもよく、異なるモノマーであってもよい。
モノマー(A)及びモノマー(B)としては、公知のモノマーを用いることができる。 モノマー(A)及びモノマー(B)は、酸性基を含まないモノマーであってもよく、酸性基を含むモノマーであってもよい。
モノマー(A)及びモノマー(B)は、酸性基を含まないモノマーを含むことが好ましい。
モノマーは、本開示の重合開始剤によりラジカル重合反応が進行して高分子化するモノマーである。
本開示におけるモノマーを構成するモノマーは1種に限定されず2種以上でもよい。酸性基を含まないモノマーとして、酸性基を含まない(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。酸性基を含まない(メタ)アクリレートモノマーとしては、単管能モノマー、二官能モノマー、三官能以上のモノマーが挙げられる。
本開示において、モノマーの含有量(すなわち、調製される硬化性組成物中のモノマー(A)とモノマー(B)との総量)は、調製される硬化性組成物の全質量に対して、10質量%〜90質量%であることが好ましく、20質量%〜75質量%であることがより好ましく、30質量%〜60質量であることがさらに好ましい。
単管能モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが例示される。これらの中でも、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)が好ましい。
芳香族化合物系の二官能モノマーの例としては、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプルポキシフェニル)プロパン、等が挙げられる。
これらの中でも、2,2−ビス〔4−(3−(メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパン(通称「Bis−GMA」)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパンが好ましい。
脂肪族化合物系の二官能モノマーの例としては、エリスリトールジ(メタ)アクリレート、ソルビトールジ(メタ)アクリレート、マンニトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(UDMA)、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)エタン等が挙げられる。
これらの中でも、グリセロールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート(TEGDMA)、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(HexDMA)、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(NPG)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(UDMA)及び1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)エタンが好ましい。
三官能以上のモノマーの例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタン等が挙げられる。
上記のモノマーは、いずれも1種単独を配合してもよく、複数種類を組み合わせて配合してもよい。
上述の酸性基を含まないモノマーの配合量としては、本開示の硬化性組成物調製用キットにおけるモノマー成分の総量100質量部に対して、10質量部〜100質量部の範囲が好ましく、20質量部〜100質量部の範囲がより好ましく、5質量部〜100質量部の範囲がさらに好ましい。
また、本開示の硬化性組成物調製用キットにおけるモノマー成分が酸性基含有モノマーを含む場合、酸性基を含まないモノマーの配合量は、本開示の硬化性組成物調製用キットにおけるモノマー成分の総量100質量部に対して、10質量部〜99質量部であることが好ましく、30質量部〜97質量部であることがより好ましく、50質量部〜95質量部であることがさらに好ましい。
<酸性基含有モノマー>
本開示の硬化性組成物調製用キットは、酸性基含有モノマーが、第1剤及び第2剤の少なくとも一方に含有されていてもよい。
第1剤及び第2剤の少なくとも一方に酸性基含有モノマーが含有されていることで、例えば本開示の硬化性組成物調製用キットが歯科用途に用いられる場合に、良好な歯質、及び歯科用補綴材料に対する高い接着性を付与することが出来る。
酸性基含有モノマーとしては、リン酸基、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等の酸性基を少なくとも1個有し、且つアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、スチレン基等の重合性基を少なくとも1個有するモノマーが挙げられる。
酸性基含有モノマーは、被着体との親和性を有するとともに、歯質に対しては脱灰作用を有する。
リン酸基含有モノマーとしては、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート(MDP)等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシ−(1−ヒドロキシメチル)エチル〕ハイドロジェンホスフェート及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が例示される。
ピロリン酸基含有モノマーとしては、ピロリン酸ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ピロリン酸ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が例示される。
チオリン酸基含有モノマーとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンチオホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンチオホスフェート及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が例示される。
ホスホン酸基含有モノマーとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−3−ホスホノプロピオネート及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が例示される。
スルホン酸基含有モノマーとしては、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレートが例示される。
カルボン酸基含有モノマーとしては、分子内に1つのカルボキシ基を有するモノマーと、分子内に複数のカルボキシ基を有するモノマーとが挙げられる。
分子内に1つのカルボキシ基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、N−(メタ)アクリロイルグリシン、N−(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、O−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルフェニルアラニン、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、p−ビニル安息香酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレート及びこれらの酸ハロゲン化物が例示される。
分子内に複数のカルボキシ基を有するモノマーとしては、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキサン−1,1−ジカルボン酸、9−(メタ)アクリロイルオキシノナン−1,1−ジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシデカン−1,1−ジカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデカン−1,1−ジカルボン酸、12−(メタ)アクリロイルオキシドデカン−1,1−ジカルボン酸、13−(メタ)アクリロイルオキシトリデカン−1,1−ジカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテートアンハイドライド、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリテート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3’−(メタ)アクリロイルオキシ−2’−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピルサクシネート及びこれらの酸無水物又は酸ハロゲン化物が例示される。
上記の酸性基含有モノマーの中でも、被着体に対する接着強度が大きい点で、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート(MDP)、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテートアンハイドライド、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデカン−1,1−ジカルボン酸が好ましい。
上記の酸性基含有モノマーは、1種類単独を用いてもよく、複数種類を併用してもよい。
酸性基含有モノマーの配合量は、本開示の硬化性組成物調製用キットにおけるモノマー成分の総量100質量部に対して、1質量部〜50質量部であることが好ましく、3質量部〜40質量部であることがより好ましく、5質量部〜30質量部であることがさらに好ましい。
酸性基含有モノマーの配合量が1質量部以上であると、各種被着体に対する高い接着性を得ることが容易である。
また、酸性基含有モノマーの配合量が50質量部以下であると、重合性と接着性のバランスを保ちやすい。なお、モノマー成分の総量とは、酸性基含有モノマーと、上述の酸性基を含まないモノマーの合計量を意味する。
本開示におけるモノマーについては、例えば、国際公開2012/157566号、国際公開第2015/015220号、国際公開第2015/015221号、特開2016−094482号等の公知の文献に記載のモノマーを使用することができる。
<遷移金属化合物>
本開示の硬化性組成物調製用キットは、遷移金属化合物が、第1剤及び第2剤の少なくとも一方に含有されている。
遷移金属化合物としては、モノマー成分に可溶な化合物が好ましい。
遷移金属化合物としては、銅化合物、バナジウム化合物、モリブデン化合物、スカンジウム化合物、チタン化合物、クロム化合物、マンガン化合物、鉄化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物等が挙げられる。
上記の中でも、遷移金属化合物が、銅化合物及びバナジウム化合物の少なくとも一方を含むことが好ましい。
銅化合物としては、カルボン酸銅として、酢酸銅、イソ酪酸銅、グルコン酸銅、クエン酸銅、フタル酸銅、酒石酸銅、オレイン酸銅、オクチル酸銅、オクテン酸銅、ナフテン酸銅、メタクリル酸銅、4−シクロヘキシル酪酸銅;β−ジケトン銅として、アセチルアセトン銅、トリフルオロアセチルアセトン銅、ヘキサフルオロアセチルアセトン銅、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト銅、ベンゾイルアセトン銅;β−ケトエステル銅として、アセト酢酸エチル銅;銅アルコキシドとして、銅メトキシド、銅エトキシド、銅イソプロポキシド、銅2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシド、銅2−(2−メトキシエトキシ)エトキシド;ジチオカルバミン酸銅として、ジメチルジチオカルバミン酸銅;銅と無機酸の塩として、硝酸銅;及び塩化銅が挙げられる。
これらは単独で又は2種以上を適宜組合せて用いることができる。
これらの内でも、モノマーに対する溶解性と反応性の観点から、カルボン酸銅、β−ジケトン銅、β−ケトエステル銅が好ましく、酢酸銅、アセチルアセトン銅が特に好ましい。
バナジウム化合物としては、バナジルアセチルアセトナート、ナフテン酸バナジウム(III)、バナジルステアレート、バナジウムベンゾイルアセトネート、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)等が挙げられる。
遷移金属化合物の配合量は、硬化性の観点から、本開示の硬化性組成物調製用キットにおけるモノマー成分の総量100質量部に対して、0.000005質量部〜0.01質量部であることが好ましく、0.00001質量部〜0.005質量部であることがより好ましく、0.00005質量部〜0.001質量部であることが最も好ましい。
<過酸化物>
本開示の硬化性組成物調製用キットは、過酸化物が、第1剤及び第2剤の少なくとも一方に含有されている。
過酸化物としては、有機過酸化物及び無機過酸化物が挙げられ、本開示における過酸化物は有機過酸化物を含むことが好ましい。
有機過酸化物は、特に制限されることなく公知のものが使用できる。代表的な有機過酸化物として、ハイドロパーオキサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、硬化性組成物を分包型として提供して長期保存しても操作可能時間の変動が小さいことから、ハイドロパーオキサイドが最も好ましい。有機過酸化物は、一種類単独を用いてもよく、複数種類を併用してもよい。
より具体的には、ハイドロパーオキサイドとしては、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
パーオキシエステルとしては、パーオキシ基(−OO−基)の一方にアシル基、もう一方に炭化水素基(又はそれに類する基)を有するものであれば公知のものを何ら制限なく使用することができる。具体例としては、α,α−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート等が例示される。これらは単独で又は2種以上を適宜組合せて用いることができる。
ケトンパーオキサイドとしては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等が挙げられる。
パーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
ジアルキルパーオキサイドとしては、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3等が挙げられる。
ジアシルパーオキサイドとしては、イソブチリルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、スクシニックアシッドパーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド類が挙げられる。
パーオキシジカーボネートとしては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
有機過酸化物の配合量は、硬化性の観点から、本開示の硬化性組成物におけるモノマー成分の総量100質量部に対して、0.01質量部〜1質量部であることが好ましく、0.05質量部〜0.5質量部であることがより好ましい。
無機過酸化物としては、ペルオキソ二硫酸塩及びペルオキソ二リン酸塩などが挙げられ、これらの中でも、硬化性の点で、ペルオキソ二硫酸塩が好ましい。ペルオキソ二硫酸塩の具体例としては、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アルミニウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウムが挙げられる。
上記のペルオキソ二硫酸塩は、一種類単独を用いてもよく、複数種類を併用してもよい。上記のペルオキソ二硫酸塩の中でも、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、及びペルオキソ二硫酸アンモニウムが好ましい。
<フィラー>
本開示の硬化性組成物調製用キットは、フィラーが、第1剤及び第2剤の少なくとも一方に含有されていてもよい。
フィラーは、1種単独を配合してもよく、複数種類を組み合わせて配合してもよい。フィラーとしては、無機系フィラー、有機系フィラー、及び無機系フィラーと有機系フィラーとの複合体フィラーが挙げられる。
無機系フィラーとしては、シリカ;カオリン、クレー、雲母、マイカ等のシリカを基材とする鉱物;シリカを基材とし、Al、B、TiO、ZrO、BaO、La、SrO、ZnO、CaO、P、LiO、NaOなどを含有する、セラミックス及びガラス類が例示される。ガラス類としては、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ソーダガラス、リチウムボロシリケートガラス、亜鉛ガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、バイオガラスが好適に用いられる。結晶石英、ヒドロキシアパタイト、アルミナ、酸化チタン、酸化イットリウム、ジルコニア、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化イッテルビウムも好適に用いられる。具体的には、接着力、取り扱い性の点で、一次粒子径が0.001μm〜0.1μmの微粒子シリカが好ましく使用される。市販品としては、「アエロジルOX50」、「アエロジル50」、「アエロジル200」、「アエロジル380」、「アエロジルR972」、「アエロジル130」(以上、いずれも日本アエロジル社製)が挙げられる。
有機系フィラーとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、多官能メタクリレートの重合体、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴムが例示される。
無機系フィラーと有機系フィラーとの複合体フィラーとしては、有機系フィラーに無機系フィラーを分散させたもの、無機系フィラーを種々の重合体にてコーティングした無機/有機複合フィラーが例示される。
硬化性、機械的強度、取り扱い性を向上させるために、フィラーをシランカップリング剤等の公知の表面処理剤で予め表面処理してから用いてもよい。表面処理剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランが例示される。
フィラーの配合量は、本開示の硬化性組成物の全質量に基づいて、10質量%〜80質量%の範囲が好ましく、30質量%〜80質量%の範囲がより好ましく、50質量%〜75質量%の範囲が最も好ましい。
<還元剤>
本開示の硬化性組成物調製用キットは、還元剤が、第1剤及び第2剤の少なくとも一方に含有されていてもよい。
還元剤としては公知の還元剤を用いることができ、例えば、スルフィン酸化合物又はその塩、アミン化合物又はその塩、ヒドラジン化合物又はその塩、アスコルビン酸化合物又はその塩等が挙げられる。
スルフィン酸化合物又はその塩としては、例えば、アルカンスルフィン酸又はその塩、脂環族スルフィン酸又はその塩、芳香族スルフィン酸又はその塩が挙げられる。
スルフィン酸化合物の塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、鉄塩、亜鉛塩、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩が例示される。
アルカンスルフィン酸としては、メタンスルフィン酸などが例示される。
脂環族スルフィン酸としては、シクロヘキサンスルフィン酸、シクロオクタンスルフィン酸などが例示される。
芳香族スルフィン酸としては、ベンゼンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸、o−トルエンスルフィン酸、エチルベンゼンスルフィン酸、デシルベンゼンスルフィン酸、ドデシルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、クロルベンゼンスルフィン酸、ナフタリンスルフィン酸などが例示される。
ヒドラジン化合物又はその塩としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、アセトヒドラジド、ベンゾイルヒドラジン、2−メチルカルバジン酸tert−ブチル、カルボヒドラジド、N,N’−ジベンゾイルヒドラジン、マロン酸ヒドラジド、フタル酸ヒドラジド、アセチルフェニルヒドラジン、又は、これらのヒドラジン化合物の塩等が挙げられる。
アミン化合物又はその塩としては、例えば、芳香族置換グリシン化合物又はその塩、および、芳香族第三級アミンが挙げられる。
芳香族置換グリシン化合物の塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、アンモニウム塩が挙げられる。
芳香族第三級アミンとしては、N,N−ジメチルアニリン(DMA)、N,N−ジメチル p−トルイジン(DMPT)、N,N−ジエチル p−トルイジン、N,N−ジエタノール p−トルイジン(DEPT)、N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル(DMABAE)、N,N−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチル(DMABABE)、N,N−ジエチルアミノ安息香酸(DEABA)及びそのアルキルエステル、N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド(DMABAd)、N,N−ジメチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
<他の成分>
本開示の硬化性組成物に、光重合開始剤、安定剤(重合禁止剤)、着色剤、蛍光剤、紫外線吸収剤等の添加剤、水などを配合してもよい。光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を用いることができ、例えば、カンファーキノン(CQ)、ジメチルアミノ安息香酸エチル(EDB)等が挙げられる。
また、セチルピリジニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロライド、トリクロサン等の抗菌性物質を配合してもよい。
本開示の硬化性組成物に、公知の染料、顔料を配合してもよい。
本開示の硬化性組成物調製用キットにおいて、本開示の重合開始剤及び遷移金属化合物が第1剤に含有され、過酸化物が第2剤に含有されていることが好ましい。
重合開始剤及び遷移金属化合物と、過酸化物と、を第1剤と第2剤とに分けて保存することで、意図せずにモノマーの重合が開始されることを抑制することができる。そのため、硬化性組成物調製用キットの保存性を向上させることができる。
この場合、重合開始剤及び遷移金属化合物と、過酸化物と、が混合される際にモノマーの重合が開始される。
モノマー(A)が、酸性基を含まないモノマーであることが好ましい。
特に、本開示の重合開始剤及び遷移金属化合物が第1剤に含有される場合において、モノマー(A)が酸性基を含まないモノマーであることで、酸性基と重合開始剤及び遷移金属化合物とが反応することにより、意図せずに重合が開始されることを抑制することができる。
硬化性組成物に接着性の機能を付与したい場合、モノマー(B)が、酸性基含有モノマーを含むことが好ましい。
特に、過酸化物が第2剤に含有されている場合において、モノマー(B)が酸性基含有モノマーを含んでいても、重合の開始を抑制することができる。つまり、モノマーの重合が開始される時期を調整することができる。
第1剤及び第2剤のいずれにおいても、フィラー、還元剤、光重合開始剤などを含んでもよい。
還元剤は、反応性の観点から、第1剤に含むことが好ましい。
本開示の硬化性組成物調製用キットにおいて、第1剤及び第2剤の合計質量に対する、重合開始剤に含まれる複素環化合物の含有量が、0.01質量%〜5.0質量%であることが好ましく、0.01質量%〜1.0質量%であることがより好ましく、0.01質量%〜0.1質量%であることがさらに好ましい。
本開示の硬化性組成物調製用キットは、歯科材料用であることが好ましい。
<硬化性組成物>
本開示の硬化性組成物は、本開示の重合開始剤と、モノマーと、遷移金属化合物と、過酸化物と、を含む。本開示の硬化性組成物が上記の構成を含むことで、重合性を良好に向上させることができる。
<硬化物>
本開示の硬化物は、本開示の硬化性組成物の硬化物、又は、本開示の硬化性組成物調製用キットを用いて得られる硬化物である。
本開示の硬化物は、歯科材料として好適に用いることができる。即ち、本開示の歯科材料は、本開示の硬化物を含むことが好ましい。
以下、実施例等により本開示をさらに詳細に説明するが、本開示の発明がこれら実施例のみに限定されるものではない。
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例によって制限されるものではない。
以下に、本開示の実施例において使用される重合開始剤及び硬化性組成物について説明する。
<モノマー>
モノマーとして、以下のものを準備した。
UDMA:ジメタクリロキシエチルトリメチルヘキシルジカルバメート
NPG:ネオペンチルグリコールジメタクリレート
MDP:メタクリロキシデシルリン酸
<重合禁止剤>
重合禁止剤として、以下のものを準備した。
BHT: ジブチルヒドロキシトルエン
MEHQ:メトキノン
<遷移金属化合物>
遷移金属化合物として、以下のものを準備した。
Cu(acac):銅アセチルアセトナート
VO(acac):バナジルアセチルアセトナート
<有機過酸化物>
有機過酸化物として、以下のものを準備した。
CHP:クメンハイドロパーオキサイド
<光重合開始剤>
光重合開始剤として、以下のものを準備した。
CQ:カンファーキノン
EDB:ジメチルアミノ安息香酸エチル
<フィラー>
フィラーとして、以下のものを準備した。
GM27884:バリウムアルミニウムシリケート、1.5μm、シランカップリング剤処理量2.3%
<メルカプト基を有する単環式複素環化合物>
メルカプト基を有する単環式複素環化合物として、以下のものを準備した。
MT:メルカプトトリアゾール
MTT:メチルチアジアゾールチオール
MMI:メルカプトメチルイミダゾール
PhMT:フェニルメルカプトトリアゾール
<メルカプト基を有さない複素環化合物>
メルカプト基を有さない複素環化合物として、以下のものを準備した。
BTA:ベンゾトリアゾール
TA:トリアゾール
AMTTA:アミノメチルチオトリアゾール
上記メルカプト基を有する単環式複素環化合物及びメルカプト基を有さない複素環化合物の構造式は以下の通りである。
Figure 2021116346

<還元剤>
還元剤として、以下のものを準備した。
pTSS:パラトルエンスルフィンナトリウム
〔実施例1〜実施例5、及び比較例1〜比較例3〕
<硬化性組成物の調製>
遮光瓶に下記表1に示す各成分を秤量し、第1剤及び第2剤を調製した。次いで、第1剤及び第2剤を混合し、THINKY社製自転公転ミキサーを用い、20kPa、2000rpm(revolutions per minute)の条件で10分間撹拌し、実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例3の硬化性組成物を得た。
表1に示す各成分欄の数字は、各成分の量(質量部)を意味する。
表1中の空欄は、その成分を用いなかったことを意味する。
<モノマーの重合性の評価>
実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例3の硬化性組成物について、それぞれ、以下のようにしてモノマーの重合性の評価を行った。
RETSCH社製DSCを用い、混合直後の硬化性組成物をアルミパンに充填し、速やかにアルミパン内部の温度を37.0℃条件とし、硬化性組成物の温度を経時的に測定した。
この際、硬化性組成物の最高温度(ピークの最大値)と最高温度に達した時間の測定を行った。結果を表1に示す。
表1に示す「重合性」の温度(℃)は、硬化性組成物の温度ピークの最大値を意味する。上記温度ピークの最大値が高い程、硬化性組成物中のモノマーの重合性に優れる。
表1に示す「重合性」の時間(分)は、上記温度ピークの最大値が得られた時間を意味する。上記温度ピークの最大値が得られた時間が短い程、硬化性組成物中のモノマーの重合性に優れる。
表1に示す「重合性しない」とは、5分間の重合時間を経過した際に硬化性組成物の温度が37.1℃未満であることを意味する。
Figure 2021116346

表1に示す通り、メルカプト基と、単環式複素環と、を含む複素環化合物を含む重合開始剤を用いて実施例は、硬化性における時間が短くかつ温度が高かったため、モノマーの重合性に優れていた。
中でも、単環式複素環が、1,2,4−トリアゾールである実施例1及び実施例5は、重合性により優れていた。
一方、メルカプト基を含まない重合開始剤を用いた、比較例1〜比較例3は、重合しなかった。

Claims (18)

  1. メルカプト基と単環式複素環とを含む複素環化合物を含む重合開始剤。
  2. 前記単環式複素環が、窒素原子を含む請求項1に記載の重合開始剤。
  3. 前記単環式複素環が、5員環又は6員環であり、炭化水素基及びオキソ基の少なくとも1つを含む請求項1又は請求項2に記載の重合開始剤。
  4. 前記単環式複素環が、複素芳香環である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の重合開始剤。
  5. 前記単環式複素環が、2以上の窒素原子を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の重合開始剤。
  6. 前記単環式複素環が、イミダゾール環、1,2,4−トリアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1、3−チアゾール環、1,3−オキサゾール環又は1,2,3,4−テトラゾール環である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の重合開始剤。
  7. 前記単環式複素環が、5員環である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の重合開始剤。
  8. モノマー(A)を含む第1剤と、
    モノマー(B)を含む第2剤と、を備え、
    請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の重合開始剤、遷移金属化合物及び過酸化物が、それぞれ独立に、前記第1剤及び前記第2剤の少なくとも一方に含有されている硬化性組成物調製用キット。
  9. 前記重合開始剤及び前記遷移金属化合物が前記第1剤に含有され、前記過酸化物が前記第2剤に含有されている請求項8に記載の硬化性組成物調製用キット。
  10. 前記モノマー(A)が、酸性基を含まないモノマーである請求項8又は請求項9に記載の硬化性組成物調製用キット。
  11. 前記モノマー(B)が、酸性基含有モノマーを含む請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の硬化性組成物調製用キット。
  12. 前記遷移金属化合物が、銅化合物及びバナジウム化合物の少なくとも一方を含む請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載の硬化性組成物調製用キット。
  13. 前記過酸化物が、有機過酸化物を含む請求項8〜請求項12のいずれか1項に記載の硬化性組成物調製用キット。
  14. 前記第1剤及び前記第2剤の合計質量に対する前記複素環化合物の含有量が、0.01質量%〜5.0質量%である請求項8〜請求項13のいずれか1項に記載の硬化性組成物調製用キット。
  15. 歯科材料用である請求項8〜請求項14のいずれか1項に記載の硬化性組成物調製用キット。
  16. 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の重合開始剤と、モノマーと、遷移金属化合物と、過酸化物と、を含む硬化性組成物。
  17. 請求項16に記載の硬化性組成物の硬化物。
  18. 請求項17に記載の硬化物を含む歯科材料。
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