JP4237290B2 - 歯科用常温重合レジン用組成物 - Google Patents

歯科用常温重合レジン用組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬化物の物性が良好で硬化時間を適度にコントロールでき、かつ、硬化時の発熱が低減された歯科用常温重合レジン用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
(メタ)アクリレート系重合性単量体を化学重合触媒を用いて硬化させる方法は、歯科の分野で広く利用されており、このような方法を使用したものとして、歯科用常温重合レジンがある歯科用常温重合レジンでは、組成物が硬化するまでの時間(硬化時間)を臨床の種類に応じてコントロールすることが重要であり、例えば化学重合触媒として一般的に用いられる過酸化ベンゾイル及びアミンを用いた材料では、触媒の添加量や重合禁止剤の添加量を変えることによって、硬化時間をコントロールしている。しかしながら、このような方法で硬化時間をコントロールした場合には、硬化体の物性低下等の問題が生じることが多い。また、歯科用常温重合レジンは、一般に患者の口腔内で硬化させることが多いため、硬化時の発熱が小さいことが要求される。
【0003】
すなわち、歯科用常温重合レジンは、口腔内で充填、成形等の操作を行い硬化させて使用することがあるため、操作性の観点から適度な硬化時間(通常、3分30秒〜7分程度)を有するのが望ましいが、色や強度等の硬化後の物性と操作性の両方を同時に満足させることは困難であった。また、歯科用常温重合レジンは、治療に際して比較的大量に使用することが多いため硬化時の発熱により、患者に苦痛を与えるという問題があった。
【0004】
なお、特開平9−67222号公報には、硬化性組成物において、重合禁止剤を添加して硬化時間を遅延させる技術が開示されている。しかしながら、この場合には、重合禁止剤が重合時間遅延のために使い尽くされて消失した場合には重合反応は一気に進行するため硬化時の発熱の低減については効果がない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題に鑑み、硬化体の物性を低下させることなく硬化時間を適度にコントロールすることができ、かつ、硬化時の発熱の小さい歯科用常温重合レジンを開発することを課題とした。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、(メタ)アクリレート系重合性単量体、およびa)ピリミジントリオン誘導体、(b)ハロゲンイオン形成化合物、及び(c)第二銅イオン形成化合物からなる化学重合触媒からなる系に2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを特定量添加することにより、物性の低下を招くことなく硬化時の発熱を低減でき、さらに硬化時間を任意にコントロールすることができることを見いだした。そして、さらに、検討を進めた結果、この組成に、樹脂系充填材を加えた組成物を歯科用常温重合レジンとして利用する際には、粉末成分ユニットとメチルメタクリレートを主成分とする重合性単量体からなる液状成分ユニットからなる特定の2包装形態に調製する必要があり、該2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンは、後者のユニットに配合する必要がある知見を得、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、(A)メチルメタクリレートを主成分とする(メタ)アクリレート系重合性単量体100重量部、
(B)樹脂系充填剤50〜400重量部、
(C)(a)ピリミジントリオン誘導体、(b)ハロゲンイオン形成化合物、及び(c)第二銅イオン形成化合物からなる化学重合触媒0.05〜15重量部、並びに
(D)2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン0.01〜10重量部を含有してなる歯科用常温重合レジン用組成物であって、
包装形態が、
イ)(B)樹脂系充填剤、(C)a)ピリミジントリオン誘導体、及び(C)c)第二銅イオン形成化合物を配合した粉末ユニット、並びに
ロ)(A)メチルメタクリレートを主成分とする(メタ)アクリレート系重合性単量体、(C)b)ハロゲンイオン形成化合物、及び(D)2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを配合した液状ユニット
からなる2包装であることを特徴とする歯科用常温重合レジン用組成物である。
【0008】
【発明の実施形態】
本発明に使用される(メタ)アクリート系重合性単量体としては、公知の(メタ)アクリレート系重合性単量体が特に制限なく用いられる。具体的な例を示せば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロキシエチルプロピオネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1.6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス((メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシフェニル)]プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等があり、これらは1種又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0009】
更に上記(メタ)アクリレート系重合性単量体以外に、他の重合性単量体を混合して重合することも可能である。これらの他の重合性単量体を例示すると、フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物を挙げることができる。これらの他の重合性単量体は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0010】
これらの他の重合性単量体の配合量は目的に応じて選択すればよいが、前記した(メタ)アクリレート系重合性単量体100重量部に対して0〜200重量部の範囲で用いることが好ましい。
【0011】
本発明に使用される化学重合触媒としては、a)ピリミジントリオン誘導体、(b)ハロゲンイオン形成化合物、及び(c)第二銅イオン形成化合物からなる触媒系を使用することができる。
【0012】
の化学重合触媒系は、硬化後の変色が起こりにくく、本発明の歯科用常温重合レジン用組成物に使用する触媒系として好ましく使用される。
【0013】
(a)成分であるピリミジントリオン誘導体としては、5−メチルピリミジントリオン、5−エチルピリミジントリオン、5−プロピルピリミジントリオン、5−ブチルピリミジントリオン、5−イソブチルピリミジントリオン、1,5−ジメチルピリミジントリオン、1,5−ジエチルピリミジントリオン、1−メチル−5−エチルピリミジントリオン、1−エチル−5−メチルピリミジントリオン、1−メチル−5−ブチルピリミジントリオン、1−エチル−5−ブチルピリミジントリオン、1−メチル−5−イソブチルピリミジントリオン、1−エチル−5−イソブチルピリミジントリオン、1−メチル−5−シクロヘキシルピリミジントリオン、1−エチル−5−シクロヘキシルピリミジントリオン、1−ベンジル−5−フェニルピリミジントリオン、1,3,5−トリメチルピリミジントリオン、1,3−ジメチル−5−エチルピリミジントリオン、1,3−ジメチル−5−ブチルピリミジントリオン、1,3−ジメチル−5−イソブチルピリミジントリオン、1,3,5−トリエチルピリミジントリオン、1,3−ジエチル−5−メチルピリミジントリオン、1,3−ジエチル−5−ブチルピリミジントリオン、1,3−ジエチル−5−イソブチルピリミジントリオン、1.3−ジメチル−5−フェニルピリミジントリオン、1.3−ジエチル−5−フェニルピリミジントリオン、1−エチル−3−メチル−5−ブチルピリミジントリオン、1−エチル−3−メチル−5−イソブチルピリミジントリオン、1−メチル−3−プロピル−5−エチルピリミジントリオン、1−エチル−3−プロピル−5−メチルピリミジントリオン、1−シクロヘキシル−5−メチルピリミジントリオン、1−シクロヘキシル−5−エチルピリミジントリオン、5−ブチル−1−シクロヘキシルピリミジントリオン、5−sec−ブチル−1−シクロヘキシルピリミジントリオン、1−シクロヘキシル−5−ヘキシルピリミジントリオン、1−シクロヘキシル−5−オクチルピリミジントリオン、1,5−ジシクロヘキシルピリミジントリオン等が挙げられる。これらの中でも、重合性単量体への溶解性及びラジカル重合の活性の点から、窒素原子に結合した水素をアルキル基又はシクロアルキル基で置換したピリミジントリオン誘導体が特に好ましい。
【0014】
(b)成分であるハロゲンイオン形成化合物としては、溶液中でハロゲン化物イオンを形成させる化合物であれば特に限定されず公知の化合物が使用できる。好適なハロゲンイオン形成化合物としては、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジイソブチルアミンハイドロクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド、トリエチルアミンハイドロクロライド、トリメチルアミンハイドロクロライド、ジメチルアミンハイドロクロライド、ジエチルアミンハイドロクロライド、メチルアミンハイドロクロライド、エチルアミンハイドロクロライド、イソブチルアミンハイドロクロライド、トリエタノールアミンハイドロクロライド、β−フェニルエチルアミンハイドロクロライド、アセチルコリンクロライド、2−クロロトリメチルアミンハイドロクロライド、(2−クロロエチル)トリエチルアンモニウムクロライド、テトラ−デシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0015】
また、(c)成分である第二銅形成化合物としては、溶液中で2価の銅イオンを形成する化合物であれば特に限定されない。好適な第二銅イオン形成化合物としては、アセチルアセトン銅、酢酸第二銅、オレイン酸銅等があり、これらは1種又は2種以上混合して使用してもよい。
【0016】
また、ハロゲンイオン形成化合物と第2銅イオン形成化合物とは必ずしも別の化合物である必要はなく、ハロゲン化物イオンと2価の銅イオンの両方を同時に形成する化合物であってもよい。このような化合物として、例えば、ハロゲン化第2銅を使用することも可能であり、具体的な例としては、塩化第二銅、臭化第二銅等のハロゲン化第二銅を挙げることができる。
【0017】
化学重合触媒として前記(a)成分、(b)成分及び(c)成分からなるものを使用するとき、各成分の配合比は、(a)成分であるピリミジントリオン誘導体1モルに対する(b)成分であるハロゲンイオン形成化合物及び(c)成分である第二銅イオン形成化合物のモル数で表して、それぞれ0.001〜0.2モル及び0.00001〜0.002モルの範囲が好適である。
【0018】
上記した化学重合触媒の添加量は、(メタ)アクリレート系重合性単量体100重量部に対して0.05〜15重量部の範囲で用いればよく、好ましくは0.1〜10重量部の範囲で用いるのが好適である。添加量が0.05重量部よりも少ない場合には、重合反応が十分に進行せず硬化体の物性が著しく低下する。また、添加量が15重量部を超える場合には、硬化体の着色や変色の原因となるため不適である。
【0019】
本発明においては、前記の(メタ)アクリレート系重合性単量体及び化学重合触媒にさらに2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを特定量添加することにより所期の目的を達成することができる。
【0020】
本発明で使用する2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンとしては、その純度等は特に限定されず、試薬グレード及び工業グレードとして市販されているもの(例えば、日本油脂株式会社製のノフマーMSDなど)をそのまま若しくは精製して使用することができる。
【0021】
本発明の歯科用常温重合レジン用組成物における2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの添加量は、(メタ)アクリレート系重合性単量体100重量部に対して0.01〜10重量部であり、さらに好ましくは0.05〜5重量部の範囲が好適である。添加量が0.01重量部未満の場合には、硬化発熱が低減されず、硬化時間をコントロールする効果も見られない。また、添加量が10重量部を超える場合には、硬化が著しく遅延し、硬化体の物性も低下する。
【0022】
本発明の歯科用常温重合レジン用組成物は、(メタ)アクリレート系重合性単量体、化学重合触媒、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンに加えて、さらに充填剤を添加する。それにより、歯科用常温重合レジンとして、義歯の補修や暫間的なクラウン、ブリッジの作製等の目的に好適に用いることができる。この場合、硬化体強度の観点から(メタ)アクリレート系重合性単量体としては少なくともメチルメタクリレートを50重量%以上、好ましくは70重量%以上含むものを使用するのが好適である。また、充填剤としては、樹脂系充填剤、無機充填剤、複合充填剤(無機酸化物とポリマーの複合体を粉砕したもの)等の何れでもよいが、樹脂系充填剤を用いた場合には、充填剤の膨潤によって組成物が餅状になるため扱い易く、操作性の点で特に好ましい。
【0023】
充填剤の代表的な例を挙げれば、無機充填剤としては、石英粉末、アルミナ粉末、ガラス粉末、炭酸カルシウム、酸化チタン、乾式シリカ、湿式シリカ等があり、樹脂系充填剤としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等があり、これらは1種又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0024】
なお、上記充填剤が樹脂系充填剤である場合には、その分子量はとくに限定されないが、一般的には5000〜1000000の分子量の物が好ましい。また、該樹脂系充填剤が共重合体樹脂系充填剤である場合には、その共重合比は特に制限されない。
【0025】
前記充填剤の形状は特に限定されなく、通常の粉砕により得られる様な不定形粒子であってもよく、又、球状若しくは略球状の粒子であってもよい。該充填剤の粒子径は特に限定されないが、一般的には粒径0.01〜200ミクロンの物が好ましい。
【0026】
これらの充填剤の添加量は、操作性及び硬化体強度の観点から、(メタ)アクリレート系重合性単量体100重量部に対して50〜400重量部の範囲が好適である。
【0027】
本発明の歯科用常温重合レジンには、必要に応じて他の成分を添加することができる。具体例を挙げれば、エタノール等の有機溶媒、ブチルヒドロキシトルエン、メトキシハイドロキノン等の重合禁止剤、4−メトキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−(2−ベンゾトリアゾール)−p−クレゾール等の紫外線吸収剤、色素、顔料、及び香料等のその他の成分を添加することができる。
【0028】
本発明の歯科用常温重合レジンは、従来の歯科用硬化性組成物と比べ、硬化時の発熱を大きく低減させることができ、また、硬化時間を適度にコントロールすることができ有用である。
【0029】
本発明の歯科用常温重合レジンは、粉末成分ユニットとメチルメタクリレートを主成分とする重合性単量体からなる液状成分ユニットからなる2包装形態に調製する必要がある。具体的には、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂系充填剤にピリミジントリオン誘導体、アセチルアセトン銅等の第二銅イオン形成化合物を配合したユニットとメタクリル酸メチル等の重合性単量体にジラウリルジメチルアンモニウムクロライド等のハロゲンイオン形成化合物及び2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを配合したユニットとに調製される。
【0030】
このように、樹脂系充填剤にピリミジントリオン誘導体と第二銅イオン形成化合物を配合したユニットと重合性単量体にハロゲンイオン形成化合物と2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを配合したユニットとの組み合わせは、従来の常温重合レジンと比べて硬化体の変色を大きく低減させることができ、特に好適である。
【0031】
【実施例】
以下に本発明に関する実施例と比較例を示すが、本発明は該実施例に限定されるものではない。尚、評価は以下の方法で行った。
【0032】
(1)硬化発熱及び硬化時間の測定
最高温度及び硬化時間の評価は、サーミスタ温度計による発熱法によって行った。まず各成分を所定の比率で混合し、20秒間練和した。次いで、2cm×2cm×1cmの中心に6mmφの孔の空いたテフロン製モールドに流し込んだ後、サーミスタ温度計を差し込み、記録計により最高温度を測定した。また、練和開始から最高温度を記録するまでの時間を同時に計測し、この時間を硬化時間とした。なお、測定は23℃の恒温室で行った。
【0033】
(2)曲げ強度及び硬度の測定
硬化体の曲げ強度の測定は、以下の方法で行った。まず、各成分を所定の比率で混合し、20秒間練和した。次いで25mm×4mm×2mmのモールドに流し込み、37℃で24時間硬化させた。このようにして得られた硬化体を支点間距離20mm、クロスヘッドスピードは1mm/minで曲げ破壊試験を行った。また、硬度の測定には上記硬化体の表面をバフ研磨したものを用い、松沢精機製微小硬度計で10g、20秒荷重でヌープ硬度を測定した。なお、測定は23℃の恒温室で行った。
【0034】
(3)残留モノマー量の測定
硬化体中の残留モノマー量の測定は、以下の方法で行った。即ち、まず、各成分を所定の比率で混合し、20秒間練和した。次いで20mm×20mm×1mmのモールドに流し込み、37℃で24時間硬化させた。このようにして得られた硬化体を20mlのアセトニトリルに23℃で24時間浸漬し、溶液中のモノマー量を高速液体クロマトグラフィーを用いて定量した。
【0035】
(4)硬化体の耐変色性試験
硬化体の耐変色性試験は、以下の方法で行った。即ち、まず、各成分を所定の比率で混合し、20秒間練和した。次いで10mm×10mm×2mmのモールドに流し込み、37℃で24時間硬化させた。このようにして得られた硬化体を80℃水中に60日間保存し、硬化体の変色の度合いを表1に示す評価基準に従って目視で評価した。
【0036】
【表1】
Figure 0004237290
【0037】
本発明の実施例、参考例、および比較例に使用した化合物の略号を表2に示す。
【0038】
【表2】
Figure 0004237290
【0039】
参考例1〜4及び比較例1〜7
表3及び表4に示す組成のA液及びB液を調製し、両液を1:1の重量比で混合して、硬化時間及び硬化時の発熱を測定した。その結果を表3及び表4に示した。
【0040】
【表3】
Figure 0004237290
【0041】
【表4】
Figure 0004237290
【0042】
参考例1及び2の結果から2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの添加量により硬化時間が制御できることが判る。また、比較例1、2及び3はそれぞれ参考例1(又は2)、3及び4において2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを除いた例であるが、各参考例と比較例との対比から、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを添加することにより硬化時の発熱が低減されることが判る。
【0043】
比較例4〜6に示されるように、化学重合触媒の量が少なすぎる場合(比較例4)や、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの量が多すぎる場合(比較例6)には、良好な硬化体を得ることができず、また、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの量が少なすぎる場合(比較例5)には、硬化時の発熱を充分に低減することができない。
【0044】
また、参考例2と比較例7の対比から、硬化時間は同程度であるが、重合禁止剤を使用した場合と比べて2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを添加した場合には、硬化時の発熱が低減されることが判る。
【0045】
実施例1〜14及び比較例28
実施例1〜14及び比較例28は、各硬化性組成物の構成成分を粉と液に分割した形態で用いたものであり、歯科用常温重合レジンとして利用する際の標準的な実施態様である。
【0046】
表5、表6、表8及び表9に示す組成の粉及び液を調製し、表中に示した重量比で混合後練和し、硬化時間、硬化時の発熱、硬化体の曲げ強度、ヌープ硬さ、残留モノマー量を測定した。その結果を表7及び表10に示した。
【0047】
【表5】
Figure 0004237290
【0048】
【表6】
Figure 0004237290
【0049】
【表7】
Figure 0004237290
【0050】
【表8】
Figure 0004237290
【0051】
【表9】
Figure 0004237290
【0052】
【表10】
Figure 0004237290
【0053】
実施例1、2の結果から、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの添加量により、硬化時間が制御できることが判る。また、比較例1118,22,23は、実施例1〜11において2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを除いた例であるが、実施例との対比から、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを添加することにより、硬化体の曲げ強度,ヌープ硬さを低下させることなく、また、残留モノマー量も増大させることなく、硬化時の発熱が低減されることが判る。
【0054】
また、比較例24に示されるように、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの添加量が少なすぎる場合には、硬化時の発熱を充分に低減させることができず、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの添加量が多すぎる場合(比較例25)や、化重合触媒の量が少なすぎる場合(比較例26)には良好な硬化体を得ることができなかった。
【0055】
また、比較例27に示されるように、化学重合触媒の量が多すぎる場合には、硬化時間がかなり遅延し、硬化体の変色も大きくなるため不適であった。
【0056】
【発明の効果】
本発明の歯科用常温重合レジン用組成物は、硬化体物性の低下を招くことなく、硬化時の発熱を低減させ、硬化時間をコントロールすることができる。
【0057】
特に、変色を起こさない化学重合触媒として知られている前記したピリミジントリオン誘導体を用いた場合には、これまで物性の低下を招くことなく硬化時間を遅延させることが困難であるとされてきたが、本発明によれば、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの添加量を増減することにより、硬化体の物性を低下させることなく、硬化時間を適度にコントロールでき、かつ硬化発熱が低減される。

Claims (1)

  1. (A)メチルメタクリレートを主成分とする(メタ)アクリレート系重合性単量体100重量部、
    (B)樹脂系充填剤50〜400重量部、
    (C)(a)ピリミジントリオン誘導体、(b)ハロゲンイオン形成化合物、及び(c)第二銅イオン形成化合物からなる化学重合触媒0.05〜15重量部、並びに
    (D)2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン0.01〜10重量部を含有してなる歯科用常温重合レジン用組成物であって、
    包装形態が、
    イ)(B)樹脂系充填剤、(C)a)ピリミジントリオン誘導体、及び(C)c)第二銅イオン形成化合物を配合した粉末ユニット、並びに
    ロ)(A)メチルメタクリレートを主成分とする(メタ)アクリレート系重合性単量体、(C)b)ハロゲンイオン形成化合物、及び(D)2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを配合した液状ユニット
    からなる2包装であることを特徴とする歯科用常温重合レジン用組成物。
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