JP4644463B2 - 歯科用硬化性組成物およびその保存方法 - Google Patents

歯科用硬化性組成物およびその保存方法 Download PDF

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Description

本発明は、歯科用の硬化性組成物に関する。より詳しくは、硬化体の経時的変色が少なく、また混練時の粉末等の飛散がなく気泡の混入もないため操作性に優れ、かつ熱安定性に優れ、長期に亘って安定な2ペースト型の義歯床裏装用材料として好適に用いることのできる硬化性組成物に関する。
(メタ)アクリル酸エステル等のラジカル存在下で重合が可能な単量体を重合硬化させる重合開始剤は種々知られている。歯科分野においては、このような重合開始剤は、光照射により重合を開始する光重合開始剤と、2種以上の化合物を接触させることにより室温近辺で重合を開始させる化学重合開始剤に大別され、歯科用硬化性組成物の用途に併せて使い分けられている。
過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物と、芳香族第3級アミンとからなる重合開始剤は歯科分野における代表的な化学重合開始剤であり、室温ないし口腔内の温度で速やかに重合して硬化体が生じる性質を利用して、歯科用接着材、歯科用複合充填修復材料、義歯床材料、義歯床裏装用材料等に広く用いられている。
上記義歯床裏装用材料とは、長期間の使用により患者の口蓋に適合しなくなった義歯を改床し、再度使用できる状態に修正するための材料であり、室温から口腔内の温度で重合硬化するペーストを義歯床に盛付け、直接患者の口腔に挿入、口腔粘膜面との適合を図った後、口腔内で保持したまま重合硬化させて修正を行う材料である。該裏装法において、室温付近で硬化させるための材料として上記のようなラジカル重合性の単量体と過酸化ベンゾイル−芳香族第3級アミン化合物からなる化学重合開始剤の組み合わせが広く使われている。従来、そのような裏装材としては、一般にポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、メチルメタクリレートとエチルメタクリレートの共重合体等の粉末状合成樹脂と過酸化ベンゾイルを混合した粉末状成分、及びメチルメタクリレート等のラジカル重合性化合物等の単量体と芳香族第3級アミン化合物を混合した液体状成分よりなる二成分系材料が用いられている。
このような二成分系材料は、両成分を混合した際に粉末状合成樹脂がラジカル重合性単量体へ溶解、増粘してペースト化し、義歯への盛り付けおよび口腔内での賦形を可能とすると同時に、過酸化ベンゾイルと芳香族第3級アミン化合物とが混合・接触されることにより室温から口腔内における温度においても容易にラジカルが発生し、混合から所定の時間が経過した後、重合硬化が進行する機能を有する。
しかしながら、上記義歯床裏装用材料は使用時に粉末状成分および液体状成分を各々計量し混和して使用する必要があり、粉末成分が飛散する、気泡を混入させずに混和するのに熟練が要求される等の欠点があった。そのような欠点を克服させるために義歯床用裏装材料のペースト化が求められている。
義歯床裏装材のペースト化のためにはラジカル重合性単量体とフィラーからなる2つのペーストに、各々化学重合開始剤の成分を溶解あるいは分散しておく必要がある。例えば上述した過酸化ベンゾイルと芳香族第3級アミン化合物からなる化学重合開始剤系においては、過酸化ベンゾイルを溶解したペースト、および芳香族第3級アミン化合物を溶解したペーストの状態で分けて保存しておき、使用直前に2種のペーストを混練して使用する形態が考えられる。しかしながら、過酸化ベンゾイルは熱により単独で分解してラジカルを発生する化合物であり、一般的な義歯床裏装材の保存温度である室温付近でも除々に分解するため、過酸化ベンゾイルとラジカル重合性単量体が共存した状態ではラジカル重合性単量体が保存中に硬化してしまうという欠点があった。さらに、歯科用材料においては、歯科医院等への輸送の際に、自動車等で輸送される場合が多いが、夏季には、このような車内の温度が50℃を超えることも珍しくはない。このような高温下では過酸化ベンゾイルの安定性は更に低下してしまう。
また、過酸化ベンゾイル−芳香族第3級アミン化合物系の重合開始剤は、両者が反応した際に生成する副生成物に由来する義歯床裏装材硬化体の硬化時の変色、さらに硬化体を長期使用した場合、芳香族第三級アミン化合物の酸化に由来する硬化体の経時的変色等の欠点があった。
他方、過酸化ベンゾイル−第3級アミン化合物系以外の化学重合開始剤として、酸性基含有重合性単量体を含む液成分と、アリールボレート塩を含む粉成分とに分割して調製し、両者の接触によって重合を開始させる歯科用接着性組成物が知られている(特許文献1)。
また粉末の飛散のない2ペースト型の歯科用硬化性組成物としては、歯科用の接着材(セメント)用途として、アリールボレート塩を溶解させたペーストと、酸を含むペーストとに分割して調製、保存し、使用時に混合する形態の歯科用組成物も既に知られている(例えば、特許文献2、3参照)。
このようなアリールボレート塩を用いる化学重合開始剤系は、ラジカル重合性単量体が重合する際の変色が少なく、また硬化後の経時的変色も少ないことが知られている。
特開平9−309811号公報 特開2003−96122号公報 特開2002−187907号公報
しかしながら、本発明者らが検討したところによれば、上記のような2ペースト型の歯科用硬化性組成物のように、アリールボレート塩をラジカル重合性単量体に完全に溶解した状態での保存形態においては、未だ熱安定性の点で改良の余地があることが明らかとなった。即ち、このような系では、冷蔵〜室温程度で保存すれば長期に渡って安定した性能を発現するものの、一方で、数日間50℃程度の温度下に曝された後、2つのペーストを混合して使用する際に、著しい硬化遅延が起こったり、硬化性が失われたりするという問題がある。
従って本発明は、使用時の混練において粉末の飛散や気泡の混入がない2ペースト型の歯科用硬化性組成物において、硬化時の変色がなく、かつ、熱安定性等の保存性にも優れた歯科用硬化性組成物の提供を目的とする。
本発明者等は、上記のような組成物において熱安定性があまり良好ではない理由につき鋭意検討を進め、この原因は、アリールボレート塩をラジカル重合性単量体に溶解させた状態では、該アリールボレート塩の安定性が著しく低下する(分解しやすくなる)ためではないかと推測した。
そこでさらにアリールボレート塩とラジカル重合性単量体を共存させても安定性に優れたものとするべく検討を進めた結果、アリールボレート塩を添加する側のペーストに該アリールボレート塩の溶解性が低い非酸性ラジカル重合性単量体を使用してアリールボレート塩の大半が微分散したペーストを用い、また、酸を添加するペーストに該アリールボレート塩の溶解性が高いラジカル重合性単量体を用いるか、酸性のラジカル重合性単量体を用いて、かつ両ペーストが混合された際にアリールボレート塩が完全溶解又は分解するような組成の設計を行なうことにより上記問題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記成分(1)及び成分(2)
(1):アリールボレート塩
(2):ヘキサメチレンジオールジメタアクリレート、又は0〜10質量%のアセトアセトキシエチルメタアクリレートを含有するノナメチレンジオールジメタアクリレート
を含んでなるペーストAと、下記成分(3’)及び成分(4)
(3’):固体酸としてスルホン酸基を有する架橋型高分子、または該架橋型高分子で被覆あるいは吸着させた無機粒子
(4): 0〜70質量%のヘキサメチレンジオールジメタアクリレート又は0〜70質量%のノナメチレンジオールジメタアクリレートを含有するアセトアセトキシエチルメタアクリレート、
を含んでなるペーストBとに分割して包装されており、使用時に両ペーストを混合して用いる歯科用硬化性組成物であり、かつ上記ペーストAにおける(1)アリールボレート塩の配合量が、歯科用硬化性組成物に配合される全ラジカル重合性単量体の合計100質量部に対して1質量部以上、飽和溶解量以下の範囲にあることを特徴とする歯科用硬化性組成物である。
他の発明は、下記成分(1)及び成分(2)
(1):アリールボレート塩
(2):ヘキサメチレンジオールジメタアクリレート、又は0〜10質量%のアセトアセトキシエチルメタアクリレートを含有するノナメチレンジオールジメタアクリレート
を含んでなるペーストAと、下記成分(3”)
(3”):酸性基含有ラジカル重合性単量体
を含んでなるペーストBとに分割して包装されており、使用時に両ペーストを混合して用いる歯科用硬化性組成物であり、かつ上記ペーストAにおける(1)アリールボレート塩の配合量が、歯科用硬化性組成物に配合される全ラジカル重合性単量体の合計100質量部に対して1質量部以上、20質量部以下の範囲で配合されていることを特徴とする歯科用硬化性組成物である。
さらに本発明では、上記の歯科用硬化性組成物からなる義歯床裏装材及び歯科用レジンセメントも提供される。
本発明によれば、混練時に粉末の飛散や気泡の混入のない2ペースト型の歯科用硬化性組成物でありながら、両ペーストを混合練和することにより室温近辺で迅速に硬化し、また保存時の熱的安定性にも優れ、さらには硬化時の変色も少ない歯科用硬化性組成物が得られる。
本発明の歯科用硬化性組成物は、(1)アリールボレート塩、(2)非酸性ラジカル重合性単量体及び(3)固体酸としてスルホン酸基を有する架橋型高分子、もしくは該架橋型高分子で被覆あるいは吸着させた無機粒子、又は酸性基含有ラジカル重合性単量体を必須とし、アリールボレート塩と非酸性ラジカル重合性単量体とを含有するペーストAと、酸を含有するペーストBに分割して保存される。
アリールボレート塩は、酸と接触することにより分解して活性種を生じ、ラジカル重合性単量体の重合を開始する。従って、ペーストAに配合するラジカル重合性単量体は、酸性基を有さないラジカル重合性単量体(非酸性ラジカル重合性単量体)でなくてはならない。同様にペーストAには、ラジカル重合性単量体以外の酸性化合物も配合されていてはならない。このアリールボレート塩は、本発明の歯科用硬化性組成物に配合される全ラジカル重合性単量体の合計量を100質量部とした場合、1質量部以上配合される。これよりも少ないと、歯科用として実用性のある良好な重合性を得ることができない。
一方、ペーストBには固体酸としてスルホン酸基を有する架橋型高分子、もしくは該架橋型高分子で被覆あるいは吸着させた無機粒子、又は酸性基含有ラジカル重合性単量体を用いる。上記固体酸を用いた場合には、得られる硬化体に酸味がほとんどなく、義歯床裏装材として特に好適である。一方、酸性基含有ラジカル重合性単量体を用いた場合には、歯質、金属、セラミックスなどの歯科分野における各種被着体に対して良好な接着性を発現するため、歯科用レジンセメントとして特に好適である。また上記固体酸や酸性基含有ラジカル重合性単量体は硬化後に溶出することが少なく、他の酸(例えば、硫酸、トルエンスルホン酸)に比べ、歯科用として特に有用である
本発明における最大の特徴は、さらに良好な保存安定性を得るために、上記アリールボレート塩と非酸性ラジカル重合性単量体とが配合されるペーストAにおいて、この非酸性ラジカル重合性単量体として、アリールボレート塩の溶解度が0.5wt%未満のものを用いる点にある。前記のように、アリールボレート塩は少なくとも1wt%(ラジカル重合性単量体100質量部に対して1質量部)以上配合されるため、このような非酸性ラジカル重合性単量体を採用することにより、ペーストA中に配合されるアリールボレート塩の少なくとも半分以上は、ラジカル重合性単量体に溶解することなく存在する。本発明者の検討によれば、ラジカル重合性単量体に溶解したアリールボレート塩は安定性が低下して分解しやすくなる。そこで逆に、アリールボレート塩を非溶解の状態で存在させることにより安定性の向上が図れる。
以下、これら配合成分とその効果につき更に詳しく説明する。
(I)ペーストA
本発明におけるペーストAには、(1)アリールボレート塩と(2)非酸性ラジカル重合性単量体とが配合される。
該アリールボレート塩は4つのホウ素−有機基結合を有する4配位のホウ素塩であり、かつ歯科用として必要な保存安定性を得るために、ホウ素−有機基結合のうちの少なくとも1つがホウ素−アリール結合である化合物でなくてはならない。
本発明で使用されるアリールボレート塩としては、保存安定性及び重合活性の点から、下記一般式(1)
Figure 0004644463
(上式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアルケニル基であり、これらの基はいずれも置換基を有していてもよく;R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有してもよいアルキル基又はアルコキシ基、または置換基を有してもよいフェニル基であり;Lは金属陽イオン、第3級又は第4級アンモニウムイオン、第4級ピリジニウムイオン、第4級キノリニウムイオンまたは第4級ホスホニウムイオンを示す。)で示されるアリールボレート塩が好ましい。
上記一般式(a)中、R、R及びRは各々独立に、アルキル基、アリール基又はアルケニル基を示し、またこれらの基は置換基を有していてもよい。
当該アルキル基は特に限定されるものではなく、直鎖状でも分枝状でもよいが、好ましくは炭素数3〜30のアルキル基、より好ましくは炭素数4〜20の直鎖アルキル基であり、具体的にはn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基等である。また、当該アルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、あるいはフェニル基、ニトロフェニル基、クロロフェニル基等の炭素数6〜10のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、プロピル基等の炭素数1〜5のアルコキシ基、アセチル基等の炭素数2〜5のアシル基等が例示される。また当該置換基の数及び位置も特に限定されない。
アリール基もまた特に限定されるものではなく、公知のアリール基でよいが、好ましくは単環ないし2又は3つの環が縮合した、置換又は非置換のアリール基であり、当該置換基としては上記アルキル基の置換基として例示された基、ならびにメチル基、エチル基、ブチル基等の炭素数1〜5のアルキル基が例示される。
当該置換または非置換のアリール基は具体的には、フェニル基、1−又は2−ナフチル基、1−、2−又は9−アンスリル基、1−、2−、3−、4−又は9−フェナンスリル基、p−フルオロフェニル基、p−クロロフェニル基、(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニル基、3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル基、p−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、p−ブチルフェニル基、m−ブチルフェニル基、p−ブチルオキシフェニル基、m−ブチルオキシフェニル基、p−オクチルオキシフェニル基、m−オクチルオキシフェニル基等が例示される。
アルケニル基も特に限定されるものではないが、好ましくは炭素数4〜20のアルケニル基であり、またその置換基としては前記アルキル基の置換基として例示されたものが挙げられる。
上記一般式(a)中、R及びRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有していても良いアルキル基又はアルコキシ基、または置換基を有していても良いフェニル基である。
当該置換基を有していても良いアルキル基又はアルコキシ基は特に限定されるものではなく、また直鎖状でも分枝状でも良いが、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基又はアルコキシ基であり、また置換基としては前記R〜Rで示されるアルキル基の置換基として例示したものが挙げられる。当該置換基を有していてもよいアルキル基を具体的に例示すると、メチル基、エチル基、n−又はi−プロピル基、n−,i−又はt−ブチル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル基等が例示され、置換基を有していてもよいアルコキシ基を具体的に例示すると、メトキシ基、エトキシ基、1−又は2−プロポキシ基、1−又は2−ブトキシ基、1−、2−又は3−オクチルオキシ基、クロロメトキシ基等が例示される。
また置換基を有していても良いフェニル基の有する置換基も特に限定されず、具体的には前記R〜Rで示されるアリール基の置換基として例示したものが挙げられる。
上記一般式(a)中、Lは金属陽イオン、第3級又は第4級アンモニウムイオン、第4級ピリジニウムイオン、第4級キノリニウムイオン、または第4級ホスホニウムイオンである。
当該金属陽イオンとしては、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属陽イオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属陽イオン等が好ましい金属陽イオンとして例示され、第3級又は第4級アンモニウムイオンとしては、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等が、第4級ピリジニウムイオンとしては、メチルキノリニウムイオン、エチルキノリニウムイオン、ブチルキノリウムイオン等が、第4級ホスホニウムイオンとしては、テトラブチルホスホニウムイオン、メチルトリフェニルホスホニウムイオン等が例示される。
上記式(a)で示されるアリールボレート塩のなかでも、安定性の観点から、3つ又は4つのホウ素−アリール結合を有するアリールボレート塩が好ましく、さらに取り扱いや合成・入手の容易さから4つのホウ素−アリール結合を有するアリールボレート塩(テトラアリールボレート塩)が特に好ましい。
1分子中に3個のホウ素−アリール結合を有するアリールボレート塩を具体的に例示すると、モノアルキルトリフェニルホウ素、モノアルキルトリス(p−クロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−フルオロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、モノアルキルトリス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、モノアルキルトリス(p−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(ただし、いずれの化合物においてもアルキルはn−ブチル、n−オクチル又はn−ドデシルのいずれかを示す)の、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、トリブチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩又はブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
また、1分子中に4個のホウ素−アリール結合を有するアリールボレート塩としては、テトラフェニルホウ素、テトラキス(p−クロロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−フルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、テトラキス(p−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素〔ただし、いずれの化合物においてもアルキルはn−ブチル、n−オクチル又はn−ドデシルのいずれかを示す〕の、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、トリブチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩又はブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
これらの中でも、特に好ましくは前記式において、R、R、R及び、
Figure 0004644463
で示される基がすべて同じ、即ち、ホウ素原子が4つの同一のアリール基で置換されたアリールボレート塩である。
また、Lとしては第3級又は第4級アンモニウムイオンが好ましく、第3級アンモニウムイオンがより好ましい。
これらアリールボレート塩は1種または2種以上を混合して用いることも可能である。
上記アリールボレート塩は酸と接触させることにより分解する。従って、アリールボレート塩及びラジカル重合性単量体を含むペーストとするためには、該ラジカル重合性単量体は酸性基を有さない単量体(非酸性ラジカル重合性単量体)でなくてはならない。そして本発明においては、この非酸性ラジカル重合性単量体として、用いるアリールボレート塩の溶解度が0.5wt%未満のものを用いる点に最大の特徴を有する。なおここでいう溶解度とは、25℃における非酸性ラジカル重合性単量体100質量部に溶解しうるアリールボレート塩の最大質量の比率をいう。また本発明では、ペーストAに配合する非酸性ラジカル重合性単量体として複数種のものを混合して用いる場合には、該混合物を非酸性ラジカル重合性単量体と称する。この場合において、アリールボレート塩の溶解度は、このような非酸性ラジカル重合性単量体の混合物に対する値である。
前記のように本発明の歯科用組成物には、配合される全ラジカル重合性単量体の合計100質量部に対して1質量部(即ち、1wt%)以上のアリールボレート塩が配合される。従って、上記のようなアリールボレート塩の溶解性の低い非酸性ラジカル重合性単量体を用いることにより、ペーストAに配合されたアリールボレート塩の少なくとも半分は未溶解、即ち固体の状態で存在することになる。
ラジカル重合性単量体に溶解しているアリールボレート塩は熱分解を起こしやすいため、ペーストAに用いる非酸性ラジカル重合性単量体としては、アリールボレート塩の溶解度が低いほど好ましく、溶解度が0.3wt%以下のものが好ましく、0.2wt%以下のものが特に好ましい。
一方、アリールボレート塩の溶解度が0.5wt%以上の非酸性ラジカル重合性単量体を用いても、その溶解度の2倍以上の量のアリールボレート塩を配合すれば、配合したうちの少なくとも半分は未溶解の状態で存在することになる。しかしながらこのような系では、溶解しているアリールボレート塩の量も多くなるため、短期間で多量の熱分解生成物が生じたりするなどの問題がおきやすい。
アリールボレート塩のラジカル重合性単量体に対する溶解度は、後述する実施例に示した方法で容易に判別できるが、一般的には、ラジカル重合性単量体の親水性が高いほどアリールボレート塩の溶解度も高くなる。より具体的には、非酸性ラジカル重合性単量体が水酸基、ポリオキシアルキレン基、β−ケトカルボニル基等の親水性基を分子量あたり多く有する化合物であるほどアリールボレート塩の溶解度が高くなり、逆に少ないほど溶解度は低くなる傾向が強い。
また本発明に用いられるこのようなラジカル重合性単量体は、一般のラジカル重合に用いられて重合するものであれば良いが、重合性の良さ等の点から(メタ)アクリル系のラジカル重合性単量体が好適に用いられる。
単独の状態でのアリールボレート塩の溶解度の低い非酸性ラジカル重合性単量体(以下、アリールボレート塩難溶性ラジカル重合性単量体)を具体的に例示すると、
(a)アリールボレート塩難溶性単官能ラジカル重合性単量体
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,6H−デカフルオロヘキシルメタクリレート及び1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート等の含フッ素(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(b)アリールボレート塩難溶性二官能ラジカル重合性単量体
エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス{メタクロイルオキシ(ポリエチレンオキシ)フェニル}プロパン(エチレンオキシユニットの合計数が2〜6)及びこれらのアクリレート等が挙げられる。
(c)アリールボレート塩難溶性三官能ラジカル重合性単量体
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(d)アリールボレート塩難溶性四官能ラジカル重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
所望の硬化パターンや硬化体物性等を得る目的で、上記アリールボレート塩難溶性ラジカル重合性単量体は、単独で用いても良いし、また2種以上混合して用いても良い。さらに、混合物におけるアリールボレート塩の溶解度が0.5wt%以上にならない限り、後述するアリールボレート塩の溶解度がより高い非酸性ラジカル重合性単量体を混合して用いても良い。以下では、このようなアリールボレート塩の溶解度が0.5wt%以上の非酸性ラジカル重合性単量体を含む混合物であっても、混合物としてのアリールボレート塩の溶解度が0.5wt%未満であれば、アリールボレート塩難溶性ラジカル重合性単量体と称す場合がある。
本発明の歯科用硬化性組成物におけるペーストAに配合されたアリールボレート塩のうち、溶解していない分は固体として存在することになるが、この場合、未溶解のアリールボレート塩がペースト中に微分散している状態が好ましい。ここで微分散とは、ペーストに分散されたアリールボレート塩のうち、その粒子径が50μmを超える粒子の割合が1質量%以下であることをいう。50μmを超える粒子の割合が1質量%を超えると、AおよびBペーストを混合した際、アリールボレート塩の溶け残りが生じ、硬化時間が変動したり、硬化むらが生じたりする可能性がある。アリールボレート塩難溶性ラジカル重合性単量体中のアリールボレート塩粒子の粒子径分布は粒度分布計によって評価される。レーザー回折法を応用した粒度分布計を用いることにより、分散媒中に分散された粒子の粒径分布を計測することにより評価できる。
本発明のアリールボレート塩のアリールボレート塩難溶性ラジカル重合性単量体への微分散は公知の方法であれば何等制限なく使用される。具体的に例示すると、塊状あるは粉末状のアリールボレート塩をアリールボレート塩難溶性ラジカル重合性単量体に加え、これを乳鉢、らいかい機、ホモジナイザー、超音波洗浄機等を用いて湿式解砕する方法により容易に得ることができる。
本発明の歯科用硬化性組成物におけるペーストAには、上記(1)アリールボレート塩及び(2)アリールボレート塩難溶性ラジカル重合性単量体に加えて、フィラー(充填材)が配合されていることが好ましい。該フィラーの配合により、ペーストの粘度、流動性などの性状を制御したり、未溶解のアリールボレート塩の沈降を抑制したり、ラジカル重合性単量体濃度を低減することによる硬化発熱低減および硬化時の重合収縮を低減させたり、あるいは硬化後の機械的強度などの物性を向上させたりすることができる。
当該フィラーとしては、歯科用硬化性組成物のフィラーとして公知のフィラーが特に制限無く採用でき、有機フィラー、無機フィラー、有機−無機複合フィラーなどが使用でき、本発明の硬化性組成物のより具体的な用途などにより適宜採用すればよい。
具体的に例示すると、架橋ポリメチルメタクリレート、架橋ポリエチルメタクリレート等の架橋ポリメタクリル酸エステル、架橋ポリスチレン等に代表される有機フィラー;ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、アルミノシリケート、フルオロアルミノシリケート、ガラスセラミックス、シリカやシリカ・チタニア、シリカ・ジルコニア、シリカアルミナ等の複合無機酸化物粒子に代表される無機フィラー等が好適である。上記、有機フィラーに関しては、添加したフィラーが本発明の歯科用硬化性組成物に用いられるラジカル重合性単量体へ実質的に溶解しない構造である必要があり、フィラー合成時にジビニルベンゼンやエチレングリコールジメタアクリレート等の多官能重合性単量体を用いて架橋されたものが用いられる。フィラーの粒子径は0.01〜50μmの範囲、好ましくは0.1〜30μmの範囲のものが好適に使用される。フィラー粒子径が50μmを超えると作製したペーストがざらつくようになり、また、0.01μm未満のフィラーは入手困難であり現実的でない。フィラーの形状は球状、異形状、あるいは不定形いずれでもよく、特に制限されない。
(II)ペーストB
本発明の歯科用組成物におけるペーストBには固体酸としてスルホン酸基を有する架橋型高分子、もしくは該架橋型高分子で被覆あるいは吸着させた無機粒子、又は酸性基含有ラジカル重合性単量体が配合される。このような固体酸を用いることにより、硬化後の硬化体から酸成分が溶出することが少なく、歯科用として好適に使用することができる。
酸性基含有重合性単量体としては、カルボキシル基、リン酸残基、ホスホン酸基、スルホン酸基等のpKaが5以下の酸性基を有するラジカル重合性単量体であれば特に制限されることなく用いることができるが、重合性の良さ等の点から(メタ)アクリル系のラジカル重合性単量体が好適に用いられる。このような酸性基を有する(メタ)アクリル系のラジカル重合性単量体は、歯質や金属、セラミックス等の歯科分野における多くの被着体に対する接着性を向上させることが知られており、本発明の歯科用硬化性組成物を歯科用レジンセメント等の接着材料とする場合に好適である。
当該酸性基含有ラジカル重合性単量体をより具体的に例示すると、2−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンマレエート、2−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、11−(メタ)アクロイルオキシエチル−1,1−ウンデカンジカルボン酸、2−(メタ)アクロイルオキシエチル−3‘−メタクロイルオキシ−2’−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピルサクシネート、4−(2−(メタ)アクロイルオキシエチル)トリメリテートアンハイドライド、N−(メタ)アクロイルグリシン、N−(メタ)アクロイルアスパラギン酸等のカルボン酸酸性ラジカル重合性単量体類、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、ビス((メタ)アクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート等のリン酸酸性基含有ラジカル重合性単量体類、ビニルホスホン酸等のホスホン酸酸性基含有ラジカル重合性単量体類、およびスチレンスルホン酸、3−スルホプロパン(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸酸性基含有ラジカル重合性単量体類などが挙げられる。
これら酸性基含有ラジカル重合性単量体は必要に応じて2種以上のものを併用しても良い。
本発明における固体酸とは、スルホン酸基を有する架橋型高分子、または該架橋型高分子で被覆あるいは吸着させた無機粒子である。一方、常温で固体であっても、水などに溶解してしまう化合物、例えば、トルエンスルホン酸、非架橋の低分子量ポリスチレンスルホン酸などは、本発明における固体酸には相当しない。
このような固体酸は、該固体酸を含有する歯科用硬化性組成物を口腔内へ挿入した際に酸味を感じにくいため、口腔内組織との接触面積が大きく、また長期に渡って口腔内に維持される義歯関連材料、特に義歯床裏装材用の硬化性組成物に配合する酸として特に好適である。なおこの原因は必ずしも明らかではないが、水に溶解する酸を選択した場合には、歯科用硬化性組成物を口腔へ挿入した際、該酸が唾液へ溶け出し、口中に酸味が広がるためと推定される。また、酸がラジカル重合性単量体に溶解する場合には、該酸が粒子状に歯科用硬化性組成物中に存在する場合と比べ、該硬化性組成物と舌の味覚受容器官と接触する割合が増大し、味を感じ易くなるものと推定される。
固体酸の有する酸性基はスルホン酸基である。これは前記酸性基含有ラジカル重合性単量体などの、歯科用硬化性組成物に配合される他の成分(非酸性ラジカル重合性単量体など)に可溶な酸化合物を用いた場合には、酸とアリールボレート塩との接触性が高いのに対して、固体酸を用いた場合には接触性が悪くなるため、より強い酸(pKaの低い酸)を用いた方が、より良好な硬化性を得られるためである。むろん、pKaが2以下の酸性基であるスルホン酸基と、2よりも大きい酸性基の双方を有する固体酸を用いてもなんら問題はない。
なお固体酸(の有する酸性基)のpKa値はハメット指示薬(色素)により測定でき、本発明においても、固体酸が有する酸性基のpKaは色素の呈色反応を利用して判定する。具体的には、2−アミノ−5−アゾトルエンのトルエン溶液に評価したい固体酸を浸漬すると、pKaが2以下であれば固体酸が赤色に呈色し、逆にpKaが2より大きい場合には黄色に呈色することから、該固体酸の有する酸性基のpKaが2以下であるか、あるいは2よりも大きいかが判定できる。
本発明の歯科用硬化性組成物に配合される固体酸は、pKaが2以下の酸性基であるスルホン酸基を有する架橋型高分子(の粉末)や、このような架橋型高分子で被覆したり、あるいは吸着させたりした無機粒子などが挙げられる。なお、酸性基を有する非架橋型の高分子の多くは水に溶解してしまうため、本発明における固体酸に相当しないのが一般的である。
pKaが2以下の酸性基であるスルホン酸基を有する架橋型高分子としては、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−(メタ)アクリル酸アミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のpKaが2以下の酸性基を有する重合性単量体と、ジビニルベンゼン、ジビニルスルホン、N,N−メチレンビスアクリルアミド等の多官能性の重合性単量体とを共重合させた架橋型高分子が好適である。


本発明においては、固体酸は粉末状のものを用いることが好ましい。より好ましくは粒径が0.01〜100μmの粉末であり、さらに好ましくは0.01〜50μmの粉末である。粒径が小さいほどペーストのざらつきが少なく、また硬化性に優れたものとなる。なおむろん、粉末であるとは当該固体酸単体の状態での性状であり、本発明においては、ラジカル重合性単量体などと混合してペーストの状態として用いる。
上記のような固体酸を得る方法は特に限定されるものではないが、好適には以下の方法で製造できる。即ち、酸性高分子粉末の場合には、一般的な架橋型の強酸性イオン交換樹脂を必要な大きさになるまで粉砕すればよい。入手したイオン交換樹脂が塩型である場合には、粉砕前に、あるいは粉砕後に塩酸等により酸型に変換すればよい。このような強酸性イオン交換樹脂としては、代表的にはスチレンスルホン酸/ジビニルベンゼン共重合体があり、工業用材料として直径300μmから2mm程度の粒子状あるいは厚さ0.1mm〜1mm程度の膜状で入手が可能である。むろん、公知の方法で合成しても何等問題はなく、またスチレンスルホン酸/ジビニルベンゼン共重合体以外のものでもよい。粉砕方法としては、一般的に使用される粉砕方法であれば特に制限されないが、らい塊機、ボールミル、振動ボールミル、パルペライザ、ACMパルペライザ、ローラミル、ビクトリミル、フェザーミルジェットミル等による機械的粉砕方法が好適に用いられる。また、粉砕は水や有機溶媒を用いた湿式粉砕法と、それらを用いない乾式粉砕法に大別されるが、いずれの方法も好適に使用できる。湿式粉砕を行なった場合には適宜分散媒を乾燥除去した後で本発明の歯科用硬化性組成物に用いれば良い。
またシリカ等の無機粒子粉末をナフィオン(登録商標)のような酸性高分子で被覆した粉末も市販されている。
本発明における固体酸としては、その酸量が0.005〜10meq/g−固体酸のものを用いることが好ましく、より好ましくは0.1〜5meq/g−固体酸である。
また、本発明の硬化性組成物におけるペーストBには、上記固体酸と酸性基含有ラジカル重合性単量体との双方が酸として配合されていてもよい。
前記のように、上記酸はペーストBに配合される。従って、固体酸や、固体の酸性基含有ラジカル重合性単量体を採用した場合には、ペーストとするために液状成分を配合する必要がある。
硬化体の機械的物性等を考慮すると、このような液状成分としては非酸性ラジカル重合性単量体であることが好ましい。特に、固体酸を採用した場合には、ペーストAとペーストBとを混合した際に迅速に硬化させ、また硬化時間が変動したり、硬化むらが生じたりするのを防止するために、ペーストAに配合したアリールボレート塩の溶解度が高い非酸性ラジカル重合性単量体(又はそのような混合物)をペーストBに配合する液状成分とすることが好ましい。即ち、ペーストA中の未溶解のアリールボレート塩が、ペーストBに配合されている溶解性の高い非酸性ラジカル重合性単量体に溶解し、これによりアリールボレート塩と酸の接触性が高まり迅速かつ均一に硬化することとなる。
このような非酸性ラジカル重合性単量体としては、アリールボレート塩の溶解度が1wt%よりも大きいものが好ましく、5wt%以上のものがより好ましく、10wt%以上のものが特に好ましい。また前述したのと同じ理由により(メタ)アクリル系のラジカル重合性単量体であることが好ましい。
単独の状態でアリールボレート塩の溶解度が高いラジカル重合性単量体(以下、アリールボレート塩易溶性ラジカル重合性単量体)を具体的に例示すると、以下のような重合性単量体が挙げられる。
(e)アリールボレート塩易溶性単官能ラジカル重合性単量体
アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2、3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(f)アリールボレート塩易溶性二官能ラジカル重合性単量体
ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタアクリレート、2,2−ビス{メタクロイルオキシ(ポリエチレンオキシ)フェニル}プロパン(エチレンオキシユニットの合計数が8〜20)、1,4−ビス{メタクロイルオキシ(ポリエチレンオキシ)メチレン}シクロヘキサン(エチレンオキシユニットの合計数が4〜20)等が挙げられる。
このようなアリールボレート塩易溶性ラジカル重合性単量体は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。さらに、前記したようなアリールボレート塩難溶性ラジカル重合性単量体や、その他のラジカル重合性単量体との混合物としても良い。この場合には、該アリールボレート塩易溶性ラジカル重合性単量体とアリールボレート塩難溶性ラジカル重合性単量体との混合物に対するアリールボレート塩の溶解度が1wt%より大きくなるような組成比のものを用いることが好ましく、5wt%以のものがより好ましく、10wt%以上のものが特に好ましい。以下では、このようなアリールボレート塩の溶解度が0.5wt%未満の非酸性ラジカル重合性単量体を含む混合物であっても、混合物としてのアリールボレート塩の溶解度が1wt%よりも大きければ、アリールボレート塩易溶性ラジカル重合性単量体と称す場合がある。
一方、酸性基含有ラジカル重合性単量体は、それ自体の極性が高いためアリールボレート塩を溶解しやすく、また同時にアリールボレート塩を分解していく。そのため、酸性基含有ラジカル重合性単量体を配合した場合には、特にアリールボレート塩の溶解度が高い非酸性ラジカル重合性単量体を配合しなくても良いが、より良好な硬化性や硬化後の各種物性を調製するために、上記アリールボレート塩易溶性ラジカル重合性単量体やアリールボレート塩難溶性ラジカル重合性単量体等の非酸性ラジカル重合性単量体と混合して用いることが好ましい。
また本発明の歯科用硬化性組成物におけるペーストBにも、ペーストAと同様にフィラーを配合することが好ましい。その好ましい種類等も同様である。
本発明の歯科用硬化性組成物における上記ペーストAおよびペーストBに配合される各成分の割合は、アリールボレート塩の量が配合される全ラジカル重合性単量体の合計100質量部に対して1質量部以上であれば特に制限されるものではないが、好ましくは以下のようである。
即ちペーストBに配合される全ラジカル重合性単量体の合計を100質量部とした場合、ペーストAに配合される非酸性ラジカル重合性単量体の量は、10〜1000質量部であることが好ましく、33〜300質量部であることがより好ましく、50〜200質量部であることが特に好ましい。
ペーストBに配合される酸が固体酸である場合には、該固体酸はペーストBに配合されるラジカル重合性単量体100質量部に対して、0.1〜100質量部、好ましくは0.2〜50質量部の範囲で配合しうる。
ペーストBに配合される酸が、酸性基含有ラジカル重合性単量体である場合には、上記ペーストBに配合されるラジカル重合性単量体のうちの1〜100質量%とすることが好ましく、2〜80質量%とすることがより好ましく、2〜50質量%とすることが特に好ましい。
これら酸は、その配合量が多いほど、またその有する酸性基のpKaが小さいほど、少量の配合でも良好な硬化性を得ることができる。また同様に、質量当たりの酸性基の数、特にpKaが2以下の酸性基の量が多いほど、良好な硬化性を得ることができる。
フィラーを配合する場合のその量は、ペーストA、ペーストBともに、各々のペーストに配合されているラジカル重合性単量体の合計100質量部に対して、10〜1000質量部とすることが好ましく、30〜300質量部とすることがより好ましく、50〜200質量部とすることが特に好ましい。但し、ペーストBに固体酸を配合する場合には、該固体酸とフィラーとが合わせて上記範囲内にあることが好ましい。
アリールボレート塩の配合量は、前記した通り本発明の歯科用硬化性組成物に配合される全ラジカル重合性単量体の合計(ペーストA分とペーストB分との合計)を100質量部とした場合、1質量部以上配合されている必要があり、好ましくは2質量部以上配合されていることである。上限は特に定められることはないが、硬化後に未溶解(固体)状態のアリールボレート塩が残存することは、硬化体物性の点で好ましくない。従って、固体酸を用い、酸性基含有ラジカル重合性単量体を用いなかった場合には、配合される全ラジカル重合性単量体の混合物に対する飽和溶解量以下とすることが特に好ましい。さらに、溶解状態でも反応に関与しないアリールボレート塩が残存することを考慮すると、アリールボレート塩の配合量は、本発明の歯科用硬化性組成物に配合される全ラジカル重合性単量体の合計100質量部に対して20質量部以下、好ましくは10質量部以下とすることが好ましい。
一方、酸性基含有ラジカル重合性単量体が配合される場合には、前記のようにアリールボレート塩を分解してしまうため溶解度を求めることができないが、一般的には、本発明の歯科用硬化性組成物に配合される全ラジカル重合性単量体の合計100質量部に対して20質量部以下、好ましくは10質量部以下とすることにより硬化後にアリールボレート塩が残存することがない。
さらに一層良好な保存安定性を得るためには、上記ペーストAに配合されるアリールボレート塩の80質量%以上、好ましくは85質量%以上が未溶解の状態で存在するように、ペーストAとペーストBに配合するラジカル重合性単量体の量及びアリールボレート塩の量などの組成を調整するとよい。
本発明の歯科用硬化性組成物には、さらに、未溶解のアリールボレート塩や固体酸、フィラー等が経時的に沈降するのを抑える目的で、粘度調整剤として用いたラジカル重合性単量体に可溶の樹脂化合物を添加してもよい。該樹脂化合物としてはラジカル重合体に溶解して、溶液の粘度が変えられるものであれば特に制限されないが、具体的にはポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリスチレンあるいはそれらの共重合体等が好適に使用できる。
さらに、本発明における歯科用硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、歯科用硬化性組成物の配合成分として公知の成分が配合されていても良い。このような成分としては、ブチルヒドロキシトルエン、メトキシハイドロキノン等の重合禁止剤、紫外線吸収剤、光重合開始剤、色素、顔料、香料等が挙げられる。これらの成分はペーストA、ペーストBのいずれか一方、又は両方に配合することができる。
また本発明の歯科用硬化性組成物を歯科用レジンセメントとして用いる場合などには、水を少量配合するとより接着性が良好になる場合がある。このような水を配合する場合にはペーストBに配合すればよく、またその配合量としては、本発明の歯科用硬化性組成物に配合される全ラジカル重合性単量体の合計100質量部に対して30質量部以下、好ましくは20質量部以下とすることが好ましい。
また本発明の歯科用硬化性組成物は、ペーストAとペーストBとを、ほぼ等体積で混合するように各組成を調製しておくことが、使用時に採取しやすく、また混合もしやすい点で好ましい。さらに練和性を考慮すると、ペーストAとペーストBとの粘度比も1:10〜10:1程度に収めておくことが好ましい。
本発明の歯科用硬化性組成物は、義歯床材、義歯床裏装材、歯科用レジンセメント、歯科用コンポジットレジン、歯科用レジンボンディング材等に用いることができる。特に酸として固体酸を採用し、酸性基含有ラジカル重合性単量体等の他の酸を実質的に含まない組成とすることより、口腔内に挿入した際の酸味を著しく低減でき、義歯床裏装材として好適に使用できる。また歯科用セメント、歯科用レジンボンディング材などの歯質接着性を要求されるが、ペーストの味が大きな問題とならないタイプの歯科用硬化性組成物とする場合には、酸性基含有ラジカル重合性単量体を酸として用いる方が好ましい。特に、化学硬化性を要求される材料である歯科用レジンセメントとして有用である。
本発明の歯科用硬化性組成物は、公知の歯科用のペースト材料の製造方法と同様にして製造すればよく、具体的には、ペーストA、ペーストBともに所定量の各配合成分を秤取り、乳鉢、擂潰機、ニーダー等の混練械で均一になるまで混合すればよい。
使用時には、ペーストAおよびペーストBを各々所定量採取し、練和へらを用いたり、歯科用練和器を用いたりして均一に混合し使用すればよい。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例で使用した化合物とその略称を(I)に、ラジカル重合性単量体へのアリールボレート塩の溶解性の評価方法を(II)に、組成物あるいは組成物硬化体の評価方法を(III)〜(V)に、固体酸の酸性度(pKa値)の評価方法を(VI)に、固体酸粉末の製造例を(VII)に示した。
(I)略称
[非酸性ラジカル重合性単量体]
AE−1;アセトアセトキシエチルメタアクリレート(新日本化学製)
HD;ヘキサメチレンジオールジメタアクリレート(共栄社化学製)
ND;ノナメチレンジオールジメタアクリレート(共栄社化学製)
[酸性モノマー]
PM;2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェートとビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェートの混合物(モル比1:4)(共栄社化学製)
[アリールボレート塩]
PhB;テトラフェニルホウ素トリエタノールアミン塩(同人化学社製)
[有機過酸化物]
BPO:過酸化ベンゾイル(川口薬品製)
[アミン化合物]
N,N−ジエチル−p−トルイジン(東京化成製)
[フィラー]
MMA−1;架橋ポリメチルメタクリレート(積水化成品工業社製:MB30X−5)
[粘度調整用樹脂化合物]
EMA−1;非架橋ポリエチルメタクリレート(積水化成品工業社製:EMA35)
なお上記各成分はいずれも、市販品を精製することなく、そのまま用いた。
(II)ラジカル重合性単量体へのボレート溶解性評価
200ml容量のねじ口瓶に0.5gのPhBおよびラジカル重合性単量体あるいは所定比率で混合したラジカル重合性単量体混合液100gを入れ、マグネチックスタラーを用いて1時間攪拌した後に25℃の恒温槽中にて恒温とした。溶解性の確認は恒温槽で1時間保った後、PhBの沈殿がねじ口瓶の底面にあるかどうかを目視で判断した。沈殿が確認された場合、溶解度を0.5未満とした。溶解した場合には、さらにPhBを添加して上記と同じ条件で攪拌、保温、目視観察を行なった。このように、0.5g刻みでPhBを加えていき、完全溶解が確認された最大値を溶解度とした。さらに、PhB添加量が25gを超えた場合は、その溶解度を25以上とした。各ラジカル重合性単量体およびその混合液へのPhB溶解性のデータを表1に示した。
Figure 0004644463
Aペースト中のPhB溶解率は、Aペーストに配合したラジカル重合性単量体に対するPhBの溶解度(H)から下式から推定した。
(H;質量%)=M×S/B
:Aペーストに配合したラジカル重合性単量体の配合量;質量部
:Bペーストに配合したラジカル重合性単量体の配合量;質量部
:(=M+M)混合ペースト中の全ラジカル重合性単量体量;質量部
:Aペーストに配合したラジカル重合性単量体に対するPhBの溶解度
:Aペーストに配合したラジカル重合性単量体に対するPhBの配合量
AおよびB混合ペースト中におけるPhB溶解率(Y;質量%)は以下のように推定した。まず、次式よりMに対するPhB易溶性ラジカル重合性単量体の割合(Q)を求めた。
(Q;質量%)=100×M/M
Qの値を表1の組成に照らし合わせてMに対するPhBの溶解度(P)を求め、次式により、Mに対するPhBの最高溶解量(F)を求めた。
(F;質量部)=P×M/100
Fの値が、Bより大きい場合には、混合ペースト中でアリールボレート塩が完全に溶解しており、Yは100とした。Qの値がYより小さい場合には、Y=100×F/Bとなる。Qの値が表1にない場合には、Q値の前後の値からそれぞれPを求め、算出された溶解率を範囲で示した。
(III)硬化性の評価
組成物の硬化性評価は硬化体硬度の評価により行なった。2ペーストを混合した後のペーストを20×20×2mmのモールドへ流し込み、37℃で1時間硬化させ、得られた硬化体をモールドから取り出し、37℃の蒸留水中で24時間吸水させたものを評価サンプルとした。得られた硬化体のうち、硬度が計測できるほどの硬さに硬化したサンプルに関しては、松沢精機製微小硬度計で100gf、20秒荷重印加の条件でヌープ硬度を測定した。硬度が測定できるほど硬化しなかったサンプルあるいは全く硬化しなかったものに関しては×印で表記した。
(IV)変色試験
得られた硬化体を80℃水中に30日間保存し、保存前後の硬化体の変色度合いを以下に示す評価基準に従って評価した。
スコア4 褐色に変色
スコア3 黄色に変色
スコア2 わずかに黄色に変色
スコア1 白濁するのみ
スコア0 変化なし
(V)ペーストの熱安定性試験
評価するペースト20gを30ml容量のスクリュー管瓶に入れ、蓋をして50±2℃に温度制御されたインキュベータ中で2週間保存した。保存後に全く硬化性を失ったサンプルについては×と表記し、それ以外は上記(III)の方法で調製したサンプルの硬化体硬度を測定した。
(VI)固体酸のpKa評価法
固体酸のpKa評価はハメット試薬の呈色により行なった。ハメット試薬は有機色素群であり、各々の試薬溶液へ固体酸を入れると該固体酸のpKa値に応じた発色をする。各ハメット試薬の変色するpKa値は既にわかっているので、各試薬溶液へ固体酸を入れて発色を観察することにより、その固体酸のpKa値の範囲を知ることができる。
ここでは、pKa0.8〜4.8で変色する8種類のハメット試薬のトルエン溶液(0.2wt%)を用いて評価した。予め、評価を行なう固体酸0.1gを5mlのトルエンに分散した分散液を8種類用意した。そこへ上述の各ハメット試薬をスポイトで各々一滴ずつ垂らし、固体酸が沈降するのを待って固体部分の色調を調べた。用いたハメット試薬は、メチルレッド(MR、pKa4.8;和光純薬)、ブロモフェノールブルー(BPB、pKa4.1;和光純薬)、ベンゼン−1−ナフチルアミン(BNA、pKa4.0;和光純薬)、p−ジメチルアミノアゾベンゼン(MMAB、pKa3.3;和光純薬)、2−アミノ−5−アゾトルエン(AAT、pKa2.0;和光純薬)、チモールブルー(TB、pKa1.7;和光純薬)、ベンゼンアゾジフェニルアミン(BAP、pKa1.5;和光純薬)、クリスタルバイオレット(CV、pKa0.8;和光純薬)である。
(VII)固体酸粉末の製造法
製造例1(SA−1)
強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学社製:ダイヤイオンPK228)をカラムに詰め、1モル/リッターの塩酸水溶液で洗浄して該樹脂中に含まれる金属イオンを除去した。続いて蒸留水により洗浄して余剰の塩酸を除去した。洗浄された樹脂は、減圧下、60℃で恒量となるまで乾燥して粉砕に用いた。樹脂の粉砕は、まず磁性乳鉢にて1次粉砕した後、粉砕によって得られる粉末の平均粒径が10μmになるまでメノウ乳鉢を用いてさらに粉砕した(以下、この粉末をSA−1)。この粉末のpKaを評価したところ、pKaは0.8よりも小さかった。また各ハメット試薬による呈色色調を表1に示す。またこの固体酸SA−1の酸当量は4.3meq/gであった。
実施例1
ボレート難溶性ラジカル重合性単量体として200gのHDに対し、PhB12.0gの割合で混合し、磁性乳鉢中にてPhBを湿式にて解砕した。得られたスラリーの一部をとり、粒度分布計(ベックマン・コールター社製、LS−230)を用いてPhB粒子の粒度分布を測定した結果、50μmを超える粒子は検出されなかった。前記PhB分散スラリー106gに対し、75gのMMA−1を練りこみ、脱泡してAペーストとした。
表1より本ペーストにおいては、HDに対するPhBの溶解度が0.5未満であることから、添加したPhB総質量に対して91.6質量%以上がHDに溶解せずに分散していることがわかった。
ボレート易溶性ラジカル重合性単量体として100gのAE−1に対し、8.0gのSA−1ならびに67gのMMA−1を混合して、磁性乳鉢中にて練和、脱泡してBペーストとした。
AおよびBペースト混合直後のペーストを味見した結果、味、刺激共に極めて微弱であることがわかった。
混合ペーストの硬化性評価は、各ペーストの比率が質量比で1:1となるよう混合して硬化させた硬化体のヌープ硬度で行なった。得られた硬度は10.1であった。また、各ペーストを50℃のインキュベータ中で2週間保存した後、同様の方法で硬化体を作製して硬度測定を行なった結果、ヌープ硬度は10.2であり、保存試験前後における硬度変化は認められず良好な保存安定性を有していることが確認された。硬化体の色調変化は硬化体がわずかに白濁した以外の変色は認められず良好な結果であった。
実施例2〜8
実施例1の組成の代わりに、表2に示した組成でペースト作製を行い、同様の評価を行なった。その結果を表3に示した。
比較例1〜4
ラジカル重合性単量体組成を変えたこと以外は、実施例1と同様にペースト作製、評価を行った。その結果、得られたペーストを50℃で2週間保存した後で硬化体を作製した結果、硬化体は得られず、ペースト状のままであった。
比較例5
ボレート−固体酸重合開始剤の代わりに、BPO−PEAT重合開始剤を用いた以外は、実施例1と同様に評価を行なった。その結果、硬化途中で硬化体が黄変し、さらに、温水浸漬試験後には褐色に変化した。
以上のように、アリールボレート塩を完全に溶解、あるいは未溶解アリールボレート塩濃度が50質量%を下回ったペーストを作製、加熱条件下で保存した場合には、50℃保存試験後に硬化性が著しく低下したのに対し、未溶解アリールボレート塩量が多いペーストでは硬化性が維持されており、明らかな差異が認められた。なおかつ、得られた硬化体の経時的変色は軽微であり、義歯床裏装材用の硬化物として有用であることがわかった。
Figure 0004644463
Figure 0004644463

Claims (4)

  1. 下記成分(1)及び成分(2)
    (1):アリールボレート塩
    (2):ヘキサメチレンジオールジメタアクリレート、又は0〜10質量%のアセトアセトキシエチルメタアクリレートを含有するノナメチレンジオールジメタアクリレート
    を含んでなるペーストAと、下記成分(3’)及び成分(4)
    (3’):固体酸としてスルホン酸基を有する架橋型高分子、または該架橋型高分子で被覆あるいは吸着させた無機粒子
    (4): 0〜70質量%のヘキサメチレンジオールジメタアクリレート又は0〜70質量%のノナメチレンジオールジメタアクリレートを含有するアセトアセトキシエチルメタアクリレート、
    を含んでなるペーストBとに分割して包装されており、使用時に両ペーストを混合して用いる歯科用硬化性組成物であり、かつ上記ペーストAにおける(1)アリールボレート塩の配合量が、歯科用硬化性組成物に配合される全ラジカル重合性単量体の合計100質量部に対して1質量部以上、飽和溶解量以下の範囲にあることを特徴とする歯科用硬化性組成物。
  2. 下記成分(1)及び成分(2)
    (1):アリールボレート塩
    (2):ヘキサメチレンジオールジメタアクリレート、又は0〜10質量%のアセトアセトキシエチルメタアクリレートを含有するノナメチレンジオールジメタアクリレート
    を含んでなるペーストAと、下記成分(3”)
    (3”):酸性基含有ラジカル重合性単量体
    を含んでなるペーストBとに分割して包装されており、使用時に両ペーストを混合して用いる歯科用硬化性組成物であり、かつ上記ペーストAにおける(1)アリールボレート塩の配合量が、歯科用硬化性組成物に配合される全ラジカル重合性単量体の合計100質量部に対して1質量部以上、20質量部以下の範囲で配合されていることを特徴とする歯科用硬化性組成物。
  3. 義歯床裏装材である請求項1又は2に記載の歯科用硬化性組成物。
  4. 歯科用レジンセメントである請求項1又は2に記載の歯科用硬化性組成物。
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