JP6035101B2 - 板紙及びその製造方法。 - Google Patents
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2層以上の紙層を備え、
表面に位置する第一紙層が、填料として凝集粒子を含有し、
この凝集粒子が、貝殻を焼成してなる酸化カルシウム及び/又はその水和物である水酸化カルシウムを含む板紙である。
表面に位置する第一紙層を含む2層以上の紙層を備える板紙の製造方法であって、
原料パルプスラリーに、貝殻の焼成物と凝集剤とを添加し、第一紙層用原料パルプスラリーを得る工程、並びに
上記第一紙層用原料パルプスラリーを用いて、第一紙層をその他の紙層との抄きあわせにより抄造する工程
を有し、
上記貝殻の焼成物の添加量が原料パルプ1tに対し100kg以上300kg以下であり、
上記貝殻の焼成物及び凝集剤のうちの少なくとも一方の添加を複数回に分けて行うことを特徴とする。
本発明の板紙は、2層以上の紙層を備える。紙層の層数としては、2層以上であれば特に限定されないが、3層以上が好ましく、4層以上6層以下がより好ましく、5層が更に好ましい。このような多層構造とすることで、各層毎のパルプ種や添加剤の種類や量等を調整することができ、板紙の機能性を高めることができると共に、各層毎に課題解決のための特有の構成を付与可能になり、単層と比べ各層毎の特性による相乗効果を得ることができる。なお、層数が6層を超えると、コスト増に繋がる場合などがある。
表面に位置する第1紙層(表層)は、パルプ繊維を主成分とし、填料として凝集粒子が内添されている。
表層の主成分となるパルプ繊維としては特に限定されず、例えば、古紙パルプ(DIP)、化学パルプ(例えば広葉樹クラフトパルプ:LBKP、針葉樹クラフトパルプ:NBKPなど)、機械パルプ(例えばサーモメカニカルパルプ:TMP、プレッシャライズトドクラフトパルプ:PGW、リファイナーグランドパルプ:RGP、グランドパルプ等)やケナフ、バガス、麻、コットンなどの非木材パルプなどから得られるパルプ繊維を挙げることができる。これらの中でも、LBKPが好ましい。LBKPを用いることで表面強度を高めることができる。また、古紙パルプ由来のパルプ繊維も好ましい。古紙パルプ由来の繊維は、繰り返しの使用により径が小さくなっており、複雑な形状の凝集粒子と良好に絡み合うことができるため、凝集粒子の定着性を高めることができる。
第一紙層に内添される凝集粒子は、貝殻を焼成してなる酸化カルシウム及び/又はその水和物である水酸化カルシウムを含む。この酸化カルシウム及び水酸化カルシウムは、アルカリ性を有し、抗菌性、殺菌性、消臭性等の性質を有する。当該板紙においては、このような性質を有する成分が、表面に位置する第一紙層(表層)に凝集粒子として内添されている。従って、当該板紙によれば、表面近傍に上記成分を存在させることができ、優れた抗菌性等を発揮させることができる。また、複雑な形状からなる凝集粒子が内添されていることから、脱離し難くかつパルプ繊維の絡み合いの阻害を低減させることができ、その結果、抗菌性等を維持でき、表面強度も高めることができる。
上記第一紙層には、上記凝集粒子以外の他の添加剤が含有されていてもよい。他の添加剤としては、硫酸バンド、内添サイズ剤、紙力剤、顔料等を挙げることができる。
上記第一紙層の坪量(付け量)としては、25g/m2以上45g/m2以下が好ましく、30g/m2以上40g/m2以下がより好ましい。第一紙層を上記範囲の坪量とすることで、抗菌性をより十分にかつ長期的に発揮させることができる。第一紙層の坪量が上記下限未満の場合は、十分な量の凝集粒子を定着させることができず、抗菌性を十分にかつ長期間維持させることが困難になる場合がある。逆に、第一紙層の坪量が上記上限を超える場合は、凝集粒子を多量に用いないと表面に表出させることが難しくなり、抗菌性が低下する場合がある。なお、凝集粒子を多量に用いると、パルプ繊維間の絡み合いが低下し、表面強度が低下する場合がある。
上記表層以外の他の紙層も、表層と同様にパルプ繊維を主成分として含む。他の紙層の主成分となるパルプ繊維も特に限定されず、上述した各パルプを用いることができる。これらの中でも、古紙パルプが好ましく、地券古紙パルプがより好ましい。このようなパルプは、含まれる灰分が多く、また、フリーネスが比較的低いため、水が染み込みにくく、耐水性等を高めることができる。このように各層の耐水性を高めることで、当該板紙を靴の中敷き等に好適に用いることができる。
当該板紙は、上記第一紙層表面に水溶性高分子を含む塗工液が塗工されていることが好ましい。このように表面に水溶性高分子を含む塗工液を塗工することで、抗菌性を維持しつつ表面強度をより高めることができる。上記水溶性高分子としては、澱粉やポリビニルアルコール等を挙げることができるが、上記機能をより効果的に発揮できる点などからポリビニルアルコールが好ましい。
当該板紙の表面の紙面pHとしては、8.0以上10.0未満が好ましい。表面の紙面PHを上記範囲とすることで、より十分な抗菌性等を発揮することができる。紙面pHが8.0未満の場合は、抗菌性、防カビ性等が不十分となる場合がある。逆に紙面pHが10.0を超える場合は、アルカリ性が強すぎて、このためにパルプ繊維が劣化し、表面紙力が低下するおそれがある。なお、紙面pHは、JAPAN TAPPI No.6−75に準拠して測定した値をいう。
当該板紙は、例えば以下の工程を有する製造方法により得ることができる。
(1)原料パルプスラリーに、貝殻の焼成物と凝集剤とを添加し、第一紙層用原料パルプスラリーを得る工程
(2)上記第一紙層用原料パルプスラリーを用いて、第一紙層をその他の紙層との抄きあわせにより抄造する工程
以下、各工程について説明する。
この工程においては、原料パルプスラリーに、貝殻の焼成物と凝集剤とを添加し、第一紙層用原料パルプスラリーを得る。
この(2)工程においては、上記第一紙層用原料パルプスラリーを用いて、第一紙層をその他の紙層との抄きあわせにより抄造、すなわち、いわゆる多層抄きを行う。
上記(2)工程の後工程としては、例えば、(3)加圧ロールを用いたプレスにより水分を除去し、(4)ドライヤーシリンダーにて乾燥し、必要によりカレンダーにより塗工液を塗工し、(5)リールに巻き取り板紙を得ることができる。
撹拌装置を有するバッチ槽内に、原料パルプ(LBKP)を投入し、
貝殻(ホタテ)の粉体の焼成物(株式会社エイワン・ディー製)200kg/t、及び
硫酸バンド40kg/t
を添加して、第一紙層用原料パルプスラリーを得た。なお、貝殻の焼成物及び硫酸バンドは、それぞれ2回に分けて交互に添加した。上記方法で得たパルプスラリーに内添紙力剤を50kg/t添加した。
一方、地券古紙パルプを離解して、第2〜5紙層用の原料パルプスラリーを得た。
上記第1〜5紙層用の原料パルプスラリーを抄紙機に供給し、5層の紙層からなる板紙原紙を得た。第一紙層の付け量(坪量)は、35g/m2とした。
この板紙原紙の表面にポリビニルアルコール2%及び表面サイズ剤(ハリマ化成社製 KN−275P)1.2%を含む塗工液をwet10g/m2でに塗工し、坪量210g/m2の実施例1の板紙を得た。
第一紙層用原料パルプスラリーの調製において添加する貝殻の焼成物及び硫酸バンドの量、並びに第一紙層用原料パルプスラリーの付け量(坪量)を表1のとおりとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜11及び比較例1の板紙を得た。
得られた各着色板紙について、以下の評価をした。各評価結果を表1に示す。
JAPAN TAPPI No.6−75に準拠して測定した。
JAPAN TAPPI No.1に準拠してオープン状態で測定した。
任意の5箇所(1cm四方の表面領域)において、表面に露出している凝集粒子のうちの表面露出面積が1.5mm2以上の凝集粒子の数を測定し、その平均値を算出した。なお、表面露出面積の測定は画像解析ソフトにより行った。
JIS P 8140に準拠して測定した。
繊維評価技術協の抗かび性定量試験法に準拠して測定した。具体的には以下の通りである。試験菌種として、以下のアオカビ及び白癬菌を用いた。約18mm角の滅菌済み試料(0.2g分)に、1/20サブローデキストロース培地にて約105個/mlに調製した胞子懸濁液を0.2ml接種し、25℃で42時間培養した。培養後、試料上の胞子のATP濃度を発光測定法にて測定し、抗かび活性値を算出した。
試験菌種:
アオカビ Penicillium citrinum NBRC 6352
白癬菌 Trichophyton mentagrophytes NBRC 32409
Claims (7)
- 2層以上の紙層を備え、
表面に位置する第一紙層が、填料として凝集粒子を含有し、
この凝集粒子が、貝殻を焼成してなる酸化カルシウム及び/又はその水和物である水酸化カルシウムを含む板紙。 - 上記凝集粒子の一部が、表面に露出している請求項1に記載の板紙。
- 表面に露出している上記凝集粒子のうちの表面露出面積が1.5mm2以上の凝集粒子の数が、5個/cm2以上50個/cm2以下である請求項2に記載の板紙。
- 上記凝集粒子が硫酸カルシウムをさらに含む請求項1、請求項2又は請求項3に記載の板紙。
- 上記第一紙層の坪量が25g/m2以上45g/m2以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の板紙。
- 表面の紙面pHが8.0以上10.0未満であり、表面強度が12A以上である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の板紙。
- 表面に位置する第一紙層を含む2層以上の紙層を備える板紙の製造方法であって、
原料パルプスラリーに、貝殻の焼成物と凝集剤とを添加し、第一紙層用原料パルプスラリーを得る工程、並びに
上記第一紙層用原料パルプスラリーを用いて、第一紙層をその他の紙層との抄きあわせにより抄造する工程
を有し、
上記貝殻の焼成物の添加量が原料パルプ1tに対し100kg以上300kg以下であり、
上記貝殻の焼成物及び凝集剤のうちの少なくとも一方の添加を複数回に分けて行うことを特徴とする板紙の製造方法。
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