JP7356308B2 - 複合繊維およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、スメクタイトなどの粘土鉱物を含む複合繊維およびその製造方法に関する。本発明はまた、スメクタイトなどの粘土鉱物を含む複合繊維を含むシートおよびその製造方法に関する。
繊維は、その表面に無機粒子を付着させることによって、様々な特性を発揮させることができる。これについて、繊維の存在下で無機物を合成することにより、無機粒子と繊維との複合体を製造する方法が開発されてきている。
例えば、特許文献1には、繊維表面に炭酸カルシウムを固着させた複合繊維が記載されている。
特開2015-199655号公報
ベントナイトを始めとするスメクタイト(粘土鉱物)は吸油性が高く、吸湿性や陽イオン交換性などに優れていることが知られている。しかし、個々の繊維に、無機物である粘土鉱物をしっかりと固着(定着)させる技術は知られていない。
そこで、本発明は、スメクタイトなどの粘土鉱物が繊維上によく定着した複合繊維およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題について鋭意検討した結果、スメクタイトなどの粘土鉱物と繊維とを特定の無機バインダを介して固着させることによって前記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、これに限定されるものではないが、下記の態様を包含する。
[1] スメクタイトを含む粘土鉱物、繊維および無機バインダを含んでなり、無機バインダによって粘土鉱物が繊維に定着している複合繊維であって、前記無機バインダが、ケイ酸、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、銅、鉄および亜鉛から選択される少なくとも1つを含む無機化合物を含んでなる、上記複合繊維。
[2] 前記無機バインダが、マグネシウム、亜鉛およびバリウムから選択される少なくとも1つの金属とアルミニウムを含む無機塩を含む、[1]に記載の複合繊維。
[3] 前記無機バインダが、ハイドロタルサイトを含む、[1]または[2]に記載の複合繊維。
[4] 前記繊維が、セルロース繊維である、[1]~[3]のいずれかに記載の複合繊維。
[5] スメクタイトを含む粘土鉱物が、モンモリロナイトを含む粘土鉱物である、[1]~[4]のいずれかに記載の複合繊維。
[6] 前記粘土鉱物が、ベントナイトを含んでなる、[1]~[5]のいずれかに記載の複合繊維。
[7] 前記繊維の表面の15%以上が前記粘土鉱物および前記無機バインダによって被覆されている、[1]~[6]のいずれかに記載の複合繊維。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の複合繊維を含んでなるシート。
[9] [1]~[7]のいずれかに記載の複合繊維を製造する方法であって、
前記繊維および前記粘土鉱物を含むスラリーを調製する工程と、
前記スラリー中で無機バインダを合成して、無機バインダによって前記粘土鉱物が繊維に定着している複合繊維を得る工程と、
を含む、上記方法。
[10] 繊維および前記粘土鉱物を含むスラリーのpHが11~14である、[9]に記載の方法。
本発明の一態様によれば、繊維中にスメクタイトなどの粘土鉱物がよく定着した複合繊維を提供できる。また、本発明によって得られる複合繊維は、粘土鉱物の特性に基づいて、吸油性、吸湿性などの吸着力に優れたものとすることができる。
実施例において複合繊維の合成に用いた反応装置の概略の構成を示す模式図である(A:パルプ繊維およびベントナイトを含む水性懸濁液、B:酸溶液、P:ポンプ)。 実験1において作製したベントナイト複合繊維の走査型電子顕微鏡による観察結果を示す図である(左:倍率3000倍、右:倍率10000倍)。 実験2において作製したベントナイト複合繊維の走査型電子顕微鏡による観察結果を示す図である(左:倍率3000倍、右:倍率10000倍)。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。ただし、本発明は下記の形態に限定されるものではなく、種々の変形を加えた態様で実施できるものである。
〔複合繊維〕
本発明の一態様に係る複合繊維は、繊維、スメクタイトを含む粘土鉱物および無機バインダを含み、前記繊維に無機バインダが固着し、無機バインダを介して粘土鉱物が繊維に固着している。
本発明の複合繊維では、粘土鉱物および無機バインダを単に繊維と混合しただけのものと比べて、繊維と粘土鉱物とが無機バインダを介してしっかりと固着し、複合化している。これにより、本発明に係る複合繊維は、スメクタイトを含む粘土鉱物が繊維から脱落し難い。本発明によれば、粘土鉱物の歩留まりが高く、高い吸油性を有する複合繊維を製造することができる。
複合繊維における繊維と無機バインダと粘土鉱物との結着の強さは、例えば、シートなどの形状に成形した場合の灰分歩留(%)によって評価できる。例えば、複合繊維をシート状に成形した場合、灰分歩留は「(シートの灰分÷原料の複合繊維の灰分)×100」という式に基づいて算出することができる。具体的には、原料である複合繊維を水に分散させて固形分濃度0.2%の水性スラリーを調整して、JIS P 8220-1:2012に規定される標準離解機で5分間離解後、JIS P 8222:1998に従って150メッシュのワイヤーを用いてシート化した際の灰分歩留を評価に用いることができる。
好ましい態様において、灰分歩留は80質量%以上であり、より好ましい態様において灰分歩留は90質量%以上である。単に粘土鉱物を繊維に内添させた場合や、単に粘土鉱物と無機バインダとを繊維に配合した場合と比較して、本発明に基づいて無機バインダと粘土鉱物を繊維と複合化してから、複合繊維を成形すると、無機バインダと粘土鉱物が成形体に歩留まりやすく、また、粘土鉱物を凝集せずに均一に成形体分散させることができる。
本発明の一態様において、複合繊維の繊維表面の15%以上が無機バインダおよび/または粘土鉱物によって被覆されていることが好ましい。このような面積率で繊維表面が被覆されていると、粘土鉱物を高い比率で繊維中に留め、効率よく結着させることができる。繊維表面の15%以上を被覆することによって、吸油力や吸湿力など、粘土鉱物に起因する特徴をより顕著に発揮させることができる。また、本発明に係る複合繊維において、繊維の被覆率(面積率)は、50%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。また、繊維と粘土鉱物を含有する溶液中で無機バインダを合成する方法によれば、被覆率が90%以上、さらには95%以上の複合繊維も好適に製造できる。被覆率の上限値は用途に応じて適宜設定すればよいが、例えば、100%、90%、80%である。また、本発明の一態様における複合繊維では、無機バインダが繊維の外表面に生成することが電子顕微鏡観察の結果から明らかとなっている。
本発明の一態様において、複合繊維の全灰分(%)は、20%以上80%以下であることが好ましく、30%以上60%以下であることがより好ましい。複合繊維の全灰分(%)は、ろ紙を用いて複合繊維のスラリー(固形分換算で3g)を吸引濾過した後、残渣をオーブンで乾燥し(105℃、2時間)、さらに525℃で有機分を燃焼させ、燃焼前後の質量から算出することができる。このような複合繊維をシート化することによって、高灰分の複合繊維シートを製造することができる。
〔スメクタイトを含む粘土鉱物〕
本発明では、スメクタイトを含む粘土鉱物を用いる。スメクタイトは、水を吸収すると膨潤する性質(膨潤性)を有する粘土鉱物であり、イオン交換性が高い。
スメクタイトの主成分はモンモリロナイトであり、副成分として、珪酸鉱物(石英、クリストバライト、オパール)、珪酸塩鉱物(長石、ゼオライト)、粘土鉱物(マイカ、イライト)、炭酸塩鉱物(カルサイト、ドロマイト)、硫酸塩鉱物(セッコウ)、硫化鉱物(パイライト)を含んでいてよい。
スメクタイトの主成分であるモンモリロナイトは、層状ケイ酸塩鉱物の一種であり、一つの態様において、ケイ酸四面体層-アルミナ八面体層-ケイ酸四面体層の3層が積み重なった結晶構造を有する。モンモリロナイトは極めて薄い平板状であり、一つの態様において、その単位層は厚さ約10Å、幅100~1000nmである。モンモリロナイトは、アルミナ八面体層の中心原子であるAlの一部がマグネシウム(Mg)に置換されることで負電荷を帯びており、この負電荷の対イオンとして、Na、K、Ca2+、Mg2+、Hなどの陽イオン(交換性陽イオン)が層間に入り込んで、電荷的に安定な状態となる。本発明においてスメクタイトは、モンモリロナイトの含有量が50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上がより好ましい。
スメクタイトを含む粘土鉱物としては、ベントナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、ソーコナイト、ノントロナイト、活性白土、酸性白土等が挙げられる。
本発明においては、粘土鉱物としてベントナイトを用いることが好ましい。ベントナイトとは、モンモリロナイトを主成分、珪酸鉱物、珪酸塩鉱物などを副成分とする粘土鉱物である。ベントナイトは、モンモリロナイト含有量が50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上がより好ましい。ベントナイトの特性は、モンモリロナイトの性質および含有量によって決定される。モンモリロナイトの層間イオンは容易に交換される性質があるが、交換性陽イオンとしてNaが支配的なモンモリロナイトを含むものをNa型ベントナイト、Caが支配的なものをCa型ベントナイトと呼ぶ。ベントナイトは、吸油性、吸湿性、吸水性、陽イオン交換性、膨潤性、増粘性、吸着性に優れる。したがって、繊維中にベントナイトが効率よく定着した複合繊維は、吸油性、吸湿性、吸水性、陽イオン交換性、膨潤性、増粘性、吸着性などに優れる。
本発明において、複合繊維中に占めるベントナイトなどの粘土鉱物の比率は、5~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、15~45質量%や20~40質量%としてもよい。複合繊維中の粘土鉱物の比率が高いほど、粘土鉱物の特性を複合繊維に付与することが可能であり、粘土鉱物がベントナイトである場合、高い吸油性や吸湿性を複合繊維に付与することができる。
本発明においてベントナイトを粘土鉱物として用いる場合、ベントナイトとしては、工業用や実験用として一般に市販される任意の純度の製品を用いることができるが、吸油性や吸湿性を付与する観点から、ベントナイトを50質量%以上含有する粘土鉱物を用いることが好ましく、80質量%以上含有する粘土鉱物を用いることがより好ましい。
複合繊維に定着した粘土鉱物の粒子径は、200~8000nmであることが好ましく、300~5000nmであることがより好ましく、500~2000nmであることがさらに好ましい。粒子径をこの範囲とすることにより、より歩留りの高い成形シートを与える複合繊維を得ることができる。
スメクタイトを含む粘土鉱物は、表面処理を施したものを使用してもよい。表面処理剤としては、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛等の金属酸化物等が挙げられるがこれに限定されない。
〔無機バインダ〕
本発明の複合繊維を構成する無機バインダとしては、繊維と粘土鉱物に固着するものであれば好ましい。無機バインダの合成を水系で行う場合があり、また、複合繊維を水系で使用することもあるため、無機バインダが水に不溶性または難溶性であると好ましい。
無機バインダは、固形状の無機化合物であり、例えば金属化合物が挙げられる。金属化合物とは、金属の陽イオン(例えば、Na、Ca2+、Mg2+、Al3+、Ba2+等)と陰イオン(例えば、O2-、OH、CO 2-、PO 3-、SO 2-、NO 、Si 2-、SiO 2-、Cl、F、S2-等)とがイオン結合によって結合してできた、一般に無機塩と呼ばれるものをいう。無機バインダの具体例としては、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、亜鉛、および、アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属を含む化合物が挙げられる。また、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、リン酸カルシウム、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ケイ酸ナトリウムと鉱酸から製造されるシリカ(ホワイトカーボン、シリカ/炭酸カルシウム複合物、シリカ/二酸化チタン複合物)、硫酸カルシウム、ゼオライト、ハイドロタルサイトが挙げられる。以上に例示した無機バインダについては、繊維を含む溶液中で、互いに合成する反応を阻害しない限り、単独でも2種類以上の組み合わせで用いてもよい。
本発明の一実施形態において、無機バインダは、少なくとも一部が、ケイ酸、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、銅、鉄および亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つを含む金属塩あるいは金属粒子を含む。ベントナイトとの結合性の高さから、硫酸バリウムやハイドロタルサイトがより好ましく、ハイドロタルサイトが特に好ましい。
一般に、ハイドロタルサイトは、[M2+ 1-x3+ (OH)][An- x/n・mHO](式中、M2+は2価の金属イオンを、M3+は3価の金属イオンを表し、An- x/nは層間陰イオンを表す。また0<x<1であり、nはAの価数、0≦m<1である)という一般式で示される。ここで、2価の金属イオンであるM2+は、例えば、Mg2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Fe2+、Ca2+、Ba2+、Cu2+、Mn2+等、3価の金属イオンであるM3+は、例えば、Al3+、Fe3+、Cr3+、Ga3+等、層間陰イオンであるAn-は、例えば、OH、Cl、CO 、SO 等のn価の陰イオンを挙げることができ、xは一般に0.2~0.33の範囲である。このうち、2価の金属イオンとしては、Mg2+、Zn2+、Fe2+、Mn2+が好ましく、Mg2+が特に好ましい。
結晶構造は、正の電荷をもつ正八面体のbrucite単位が並んだ二次元基本層と負の電荷を持つ中間層からなる積層構造をとっている。
ハイドロタルサイトは、複合繊維中で陰イオン交換機能を発揮して、優れた吸着性を示すことができる。特にマグネシウム系ハイドロタルサイトは、他の無機バインダに比べ、廃水処理が容易であると共に、熱に対して安定であり、また、白色度が高いことから紙としての利用に好適等の理由から好ましい。
本発明の一態様において、複合繊維中に占める無機バインダの比率は、灰分として、10質量%以上とすることが可能であり、20質量%以上とすることもでき、好ましくは40質量%以上とすることもできる。複合繊維の灰分は、JIS P 8251:2003に従って測定することができる。
無機バインダがハイドロタルサイトである場合、本発明に係る複合繊維は、灰分に対して、マグネシウム、鉄、マンガンまたは亜鉛が10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。灰分中のマグネシウムまたは亜鉛の含有量は、蛍光X線分析により定量することができる。
一つの好ましい態様として、無機バインダの平均一次粒子径を、例えば、1μm以下とすることができるが、無機バインダの平均一次粒子径は、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、150nm以下がさらに好ましい。また、無機バインダの平均一次粒子径は、例えば、10nm以上とすることができ、50nm以上とすることも可能である。
なお、本願明細書において、平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡写真に基づいて算出される値である。具体的には、電子顕微鏡写真の粒子画像の面積を計測し、それと同じ面積の円の直径として、粒子の一次粒子径を求める。粒子の平均一次粒子径は、無作為に選択される100個以上の粒子について求められる一次粒子径の平均値として算出される、体積基準の積算分率における50%粒子径であり、市販の画像解析装置を用いて算出することができる。
また、無機バインダを合成する際の条件を調整することによって、種々の大きさや形状を有する無機バインダを繊維と複合化することができる。例えば、鱗片状の無機バインダが繊維に複合化している複合繊維とすることもできる。複合繊維を構成する無機バインダの形状は、電子顕微鏡による観察により確認することができる。
また、無機バインダは、微細な一次粒子が凝集した二次粒子の形態を取ることもあり、熟成工程によって用途に応じた二次粒子を生成させてもよく、また、粉砕によって凝集塊を細かくしてもよい。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。
〔繊維〕
本発明の複合繊維を構成する繊維は、例えば、セルロース繊維が好ましい。セルロース繊維の原料としては、パルプ繊維(木材パルプ、非木材パルプ)、バクテリアセルロース、ホヤ等の動物由来セルロース、藻類が例示される。木材パルプは、木材原料をパルプ化して製造すればよい。木材原料としては、針葉樹および/または広葉樹を用いることができ、針葉樹としては、例えば、アカマツ、クロマツ、トドマツ、エゾマツ、ベニマツ、カラマツ、モミ、ツガ、スギ、ヒノキ、カラマツ、シラベ、トウヒ、ヒバ、ダグラスファー、ヘムロック、ホワイトファー、スプルース、バルサムファー、シーダ、パイン、メルクシマツ、ラジアータパインなどが挙げられ、広葉樹としては、例えば、ブナ、カバ、ハンノキ、ナラ、タブ、シイ、シラカバ、ハコヤナギ、ポプラ、タモ、ドロヤナギ、ユーカリ、マングローブ、ラワン、アカシアなどが挙げられる。
木材原料(木質原料)等の天然材料をパルプ化する方法は、特に限定されず、製紙業界で一般に用いられるパルプ化法が例示される。木材パルプはパルプ化法により分類でき、例えば、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法等の方法により蒸解した化学パルプ;リファイナー、グラインダー等の機械力によってパルプ化して得られる機械パルプ;薬品による前処理の後、機械力によるパルプ化を行って得られるセミケミカルパルプ;古紙パルプ;脱墨パルプ等が挙げられる。木材パルプは、未晒(漂白前)の状態であってもよいし、晒(漂白後)の状態であってもよい。
非木材由来のパルプとしては、綿、ヘンプ、サイザル麻、マニラ麻、亜麻、藁、竹、バガス、ケナフ、サトウキビ、トウモロコシ、稲わら、楮(こうぞ)、みつまた等が例示される。
パルプ繊維は、未叩解であっても叩解済であってもよく、複合繊維の物性に応じて選択すればよいが、叩解を行う方が好ましい。パルプ繊維の叩解によって、複合繊維の強度の向上だけでなく、パルプ繊維に対する粘土鉱物や無機バインダの定着促進が期待できる。また、パルプ繊維を叩解することにより、シート状の複合繊維とする態様において、複合繊維シートのBET比表面積の向上効果が期待できる。なお、パルプ繊維の叩解の程度は、JIS P 8121-2:2012に規定されるカナダ標準濾水度(Canadian Standard freeness:CSF)によって表わすことができる。叩解が進むにつれてパルプ繊維の水切れ状態が低下し、濾水度は低くなる。
また、セルロース原料はさらに処理を施すことで、微粉砕セルロース、酸化セルロース等の化学変性セルロースとして使用することもできる。
また、セルロース繊維の他にも様々な、天然繊維、合成繊維、半合繊維、無機繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、ウール、絹糸、コラーゲン繊維等の蛋白系繊維、キチン・キトサン繊維、アルギン酸繊維等の複合糖鎖系繊維等が挙げられる。合成繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、半合繊維としてはレーヨン、リヨセル、アセテート等が挙げられる。無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維等が挙げられる。
また、合成繊維とセルロース繊維との複合繊維も本発明の一態様において使用することができ、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維等とセルロース繊維との複合繊維も使用することができる。
複合繊維を構成する繊維は、上記した繊維を単独で用いてもよいし、2以上の繊維を組み合わせて用いてもよい。複合繊維を構成する繊維は、以上に示した例の中でも、木材パルプを含むか、木材パルプのみからなることが好ましい。また、複合繊維を構成する繊維として、非木材パルプや合成繊維を木材パルプと併用することが好ましい。好ましい態様において、複合繊維を構成する繊維はパルプ繊維である。
複合化する繊維の繊維長は特に制限されないが、例えば、平均繊維長が0.1μm~15mm程度とすることができ、10μm~12mm、50μm~10mm、200μm~8mmなどとしてもよい。このうち、本発明においては、平均繊維長が50μmより長いことが脱水やシート化が容易なため好ましい。平均繊維長が200μmより長いことが通常の抄紙工程で使用する脱水およびもしくは抄紙用のワイヤー(フィルター)のメッシュを使用して脱水やシート化が可能なためさらに好ましい。
複合化する繊維の繊維径は特に制限されないが、例えば、平均繊維径が1nm~100μm程度とすることができ、10nm~100μm、150nm~100μm、1μm~90μm、3~50μm、5~30μmなどとしてもよい。このうち、本発明においては、平均繊維径が500nmより高いことが水やシート化が容易なため好ましい。平均繊維径が1μmより高いことが通常の抄紙工程で使用する脱水およびもしくは抄紙用のワイヤー(フィルター)のメッシュを使用して脱水やシート化が可能なためさらに好ましい。
複合化する繊維の量は、繊維表面の15%以上が無機バインダで被覆されるような量とすることが好ましい。例えば、繊維と無機バインダとの質量比を、25/75~95/5とすることが好ましく、30/70~90/10とすることがより好ましく、40/60~85/15とすることがさらに好ましい。
〔複合体を形成していない繊維〕
複合繊維含有スラリー中には、複合体を形成していない繊維が含まれていてもよい。複合体を形成していない繊維も含むことで、得られるシートの強度を向上させることができる。ここでいう「複合体を形成していない繊維」とは、無機バインダが複合化されていない繊維が意図される。複合体を形成していない繊維としては特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。複合体を形成していない繊維としては、例えば、上記に例示した繊維の他にも様々な、天然繊維、合成繊維、半合繊維、無機繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、ウール、絹糸、コラーゲン繊維等の蛋白系繊維、キチン・キトサン繊維、アルギン酸繊維等の複合糖鎖系繊維等が挙げられる。合成繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、半合繊維としてはレーヨン、リヨセル、アセテート等が挙げられる。無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維等が挙げられる。
また、合成繊維とセルロース繊維との複合繊維は、複合体を形成していない繊維として使用することができ、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維等とセルロース繊維との複合繊維も複合体を形成していない繊維として使用することができる。
以上に示した例の中でも、複合体を形成していない繊維は、木材パルプを含むことが好ましく、木材パルプのみからなることがより好ましい。また、複合体を形成していない繊維として、非木材パルプや合成繊維を木材パルプと併用することが好ましい。さらに、繊維長が長く強度の向上に有利なことから、複合体を形成していない繊維として、針葉樹クラフトパルプを用いることが好ましい。
複合繊維と他の繊維との質量比は、10/90~100/0とすることが好ましく、20/80~90/10、30/70~80/20としてもよい。複合繊維の配合量が多い程、得られるシートにおいて、粘土鉱物に起因する特徴、例えば、白色度や隠蔽力が発現しやすくなる。
〔複合繊維の製造〕
本発明に係る複合繊維は、繊維と粘土鉱物を含むスラリー中で、無機バインダを合成することによって製造することができる。
繊維と粘土鉱物を含むスラリー中で無機バインダを合成することによって、繊維に固形状の無機バインダが固着すると共に、粘土鉱物が無機バインダに固着する結果、三者が複合化した複合繊維が生成する。このような方法によれば、繊維中に粘土鉱物がしっかりと定着した複合繊維を得ることができる。
例えば、無機バインダがハイドロタルサイトである場合、繊維と粘土鉱物を含む溶液中でハイドロタルサイトを合成することによって、ハイドロタルサイトと粘土鉱物と繊維との複合繊維を製造することができる。
ハイドロタルサイトの合成方法は公知の方法によることができる。例えば、まず、反応容器内に中間層を構成する炭酸イオンを含む炭酸塩水溶液とアルカリ性水溶液(水酸化ナトリウム等)に繊維を添加してスラリーを形成する。次いで、得られたアルカリ性スラリー中に粘土鉱物を添加し、分散させる。次いで、粘土鉱物が添加されたアルカリ性スラリーに、酸溶液(基本層を構成する二価金属イオン/三価金属イオンを含む金属塩水溶液)を添加し、温度、pH等を制御して共沈反応により、ハイドロタルサイトを合成する。これにより、繊維表面上にハイドロタルサイトが形成されるときに、スラリー中に分散する粘土鉱物がハイドロタルサイトに取り込まれたり、密着したりする。その結果、スラリー中に存在する粘土鉱物を、高い比率で効率よく、かつ、均一に、繊維に固着させることができる。
繊維を添加して得られるスラリーは、pHが11~14の範囲に調整することが好ましく、pHが12~13の範囲に調整することがより好ましい。スラリーのpHがこの範囲であることにより、次いで添加される粘土鉱物が、スラリー中に均一に分散しやすくなる。
また、基本層を構成する二価金属イオンの供給源として、マグネシウム、亜鉛、バリウム、カルシウム、鉄、銅、銀、コバルト、ニッケル、マンガンの各種塩化物、硫化物、硝酸化物、硫酸化物を用いることができる。また、基本層を構成する三価金属イオンの供給源として、アルミニウム、鉄、クロム、ガリウムの各種塩化物、硫化物、硝酸化物、硫酸化物を用いることができる。
また、例えば、無機バインダが他の金属化合物である場合、同様に、繊維と粘土鉱物を含む溶液中で金属化合物を合成することによって、金属化合物と粘土鉱物と繊維との複合繊維を製造することができる。
金属化合物の合成法は特に限定されず、公知の方法により合成することができ、気液法で合成しても液液法で合成してもよい。気液法の一例としては炭酸ガス法があり、例えば水酸化マグネシウムと炭酸ガスとを反応させることで、炭酸マグネシウムを合成することができる。また、水酸化カルシウムと炭酸ガスとを反応させる炭酸ガス法により、炭酸カルシウムを合成することができる。例えば、炭酸カルシウムは、可溶性塩反応法、石灰・ソーダ法、ソーダ法により合成してもよい。液液法の例としては、酸(塩酸、硫酸等)と塩基(水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等)を中和によって反応させたり、無機塩と酸もしくは塩基を反応させたり、無機塩同士を反応させたりする方法が挙げられる。例えば、水酸化バリウムと硫酸とを反応させることで硫酸バリウムを得ることができる。塩化アルミニウムまたは硫酸アルミニウムと水酸化ナトリウムとを反応させることで、水酸化アルミニウムを得ることができる。炭酸カルシウムと硫酸アルミニウムとを反応させることでカルシウムとアルミニウムとが複合化した無機バインダを得ることができる。
また、このようにして無機バインダを合成する際に、反応液中に、粘土鉱物とは異なるさらなる任意の金属や金属化合物を共存させることもでき、この場合はそれらの金属もしくは金属化合物も、無機バインダ中に効率よく取り込まれ、複合化できる。
また、2種類以上の無機バインダを繊維に複合化させる場合には、繊維と粘土鉱物の存在下で1種類の無機バインダの合成反応を行なった後、当該合成反応を止めて別の種類の無機バインダの合成反応を行なってもよく、互いに反応を邪魔しなかったり、一つの反応で目的の無機バインダが複数種類合成されたりする場合には2種類以上の無機バインダを同時に合成してもよい。
複合繊維を製造する際には、さらに公知の各種助剤を添加することができる。このような添加剤は、無機バインダに対して、好ましくは0.001~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%の量で添加することができる。
本発明において合成反応の温度は、例えば、30~100℃とすることができるが、40~80℃が好ましく、50~70℃がより好ましく、60℃程度とすると特に好ましい。温度が高すぎたり低すぎたりすると、反応効率が低下しコストが高くなる傾向がある。
さらにまた、合成反応は、反応時間によって制御することができ、具体的には、反応物が反応槽に滞留する時間を調整して制御することができる。その他、本発明においては、反応槽の反応液を攪拌する事や、中和反応を多段反応とすることによって反応を制御することもできる。
本発明の複合繊維は、種々の用途に用いることができ、例えば、紙、繊維、不織布、セルロース系複合材料、フィルター材料、塗料、プラスチックおよびその他の樹脂、ゴム、エラストマー、セラミック、ガラス、金属、タイヤ、建築材料(アスファルト、アスベスト、セメント、ボード、コンクリート、れんが、タイル、合板、繊維板など)、各種担体(触媒担体、医薬担体、農薬担体、微生物担体など)、しわ防止剤、粘土、研磨材、改質剤、補修材、断熱材、防湿材、撥水材、耐水材、遮光材、シーラント、シールド材、防虫剤、接着剤、インキ、化粧料、医用材料、ペースト材料、食品添加剤、錠剤賦形剤、分散剤、保形剤、保水剤、濾過助材、精油材、油処理剤、油改質剤、電波吸収材、絶縁材、遮音材、防振材、半導体封止材、放射線遮断材、衛生用品、化粧品、肥料、飼料、香料、塗料・接着剤・樹脂用添加剤、変色防止剤、導電材、伝熱材等のあらゆる用途に広く使用することができる。また、前記用途における各種充填剤、コーティング剤などに用いることができる。
本発明の複合繊維は、製紙用途に適用してもよい。本発明の複合繊維を含む紙も本発明の一態様である。紙としては、例えば、印刷用紙、新聞紙、インクジェット用紙、PPC用紙、クラフト紙、上質紙、コート紙、微塗工紙、包装紙、薄葉紙、色上質紙、キャストコート紙、ノンカーボン紙、ラベル用紙、感熱紙、各種ファンシーペーパー、水溶紙、剥離紙、工程紙、壁紙用原紙、メラミン化粧紙用原紙、不燃紙、難燃紙、積層板原紙、プリンテッドエレクトロニクス用紙、バッテリー用セパレータ、クッション紙、トレーシングペーパー、含浸紙、ODP用紙、建材用紙、化粧材用紙、封筒用紙、テープ用紙、熱交換用紙、化繊紙、減菌紙、耐水紙、耐油紙、吸油紙、吸湿紙、耐熱紙、光触媒紙、たばこ用紙、板紙(ライナー、中芯原紙、白板紙など)、紙皿原紙、カップ原紙、ベーキング用紙、研磨紙、合成紙などが挙げられる。
本発明の複合繊維を含むシートは、高い吸油性や吸湿性を期待する各種用途に好適に用いることができる。特に、吸油性を有するシートとして特に好適に使用することができる。
〔複合繊維を含むシート〕
本発明の複合繊維は、複合繊維を含む水性スラリーを抄紙して、シートを成形することができる。本発明の複合繊維を用いてシートを成形すると、シート化の際に粘土鉱物が繊維から脱落しにくく、粘土鉱物のシートへの歩留りが良好である。また、本発明によれば粘土鉱物を均一にシートに配合することができるので、表裏差が少ないシートを得ることができる。
複合繊維シートの坪量は、目的に応じて適宜調整できる。複合繊維シートの坪量は、例えば、10~600g/mであり、好ましくは20~500g/m、より好ましくは30~400g/mであり、50~200g/mとしてもよい。
本発明の複合繊維を含むシートは、用途等に応じて、単層構造であっても、複数層を積層した多層構造であってもよく、多層構造においては各層の組成は同じであっても異なっていてもよい。
シート製造に用いる抄紙機(抄造機)としては、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、ギャップフォーマ、ハイブリッドフォーマ、多層抄紙機、これらの機器の抄紙方式を組合せた公知の抄紙機などが挙げられる。
シート成形において使用する複合繊維含有スラリー中に含まれている複合繊維としては、1種類のみであってもよく、2種類以上を混合したものであってもよい。
シート成形に際し、複合繊維含有スラリーには、抄紙を妨げない限りにおいて、複合繊維以外の物質をさらに添加してもよい。このような添加剤としては、紙力剤(紙力増強剤)が挙げられ、湿潤紙力剤と乾燥紙力剤のいずれも使用することができる。これにより、複合繊維シートの強度を向上させることができる。紙力剤としては例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリアミン、エピクロロヒドリン樹脂、植物性ガム、ラテックス、ポリエチレンイミン、グリオキサール、ガム、マンノガラクタンポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアミン、ポリビニルアルコール等の樹脂;前記樹脂から選ばれる2種以上からなる複合ポリマーまたは共重合ポリマー;加工澱粉を含む澱粉類;カルボキシメチルセルロース、グアーガム、尿素樹脂等が挙げられる。紙力剤の添加量は特に限定されない。
その他、目的に応じて、濾水性向上剤、内添サイズ剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、嵩高剤、炭酸カルシウム、カオリン、タルク等の填料等が挙げられる。各添加剤の使用量は特に限定されない。
本発明の複合繊維を含むシートは、高い灰分歩留で均一に粘土鉱物が繊維中に定着しているため、吸油性を有するシートとして用いたときに、優れた吸油性を示すことができる。
本発明の複合繊維から吸油性を有するシートを製造するには、従来公知の製造方法を用いることができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。また、本明細書において特に記載しない限り、濃度や部などは質量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
実験1
(1)アルカリ溶液と酸溶液の調製
ハイドロタルサイト(HT)を合成するための溶液を準備した。アルカリ溶液(A溶液)として、NaCO(富士フイルム和光純薬製)およびNaOH(富士フイルム和光純薬製)の混合水溶液を調製した。また、酸溶液(B溶液)として、MgSO(富士フイルム和光純薬製)およびAl(SO(富士フイルム和光純薬製)の混合水溶液を調製した。
・アルカリ溶液(A溶液、NaCO濃度:0.02M、NaOH濃度:0.33M)
・酸溶液(B溶液、MgSO濃度:0.6M、Al(SO濃度:0.1M)
(2)複合繊維の合成
複合体化する繊維として、セルロース繊維を使用した。具体的には、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、日本製紙製)と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、日本製紙製)とを8:2の質量比で混合し、シングルディスクリファイナー(SDR)を用いてカナダ標準濾水度を400mlに調整したパルプ繊維を用いた(平均繊維長:1.2mm、平均繊維径:25μm)。
アルカリ溶液にパルプ繊維を添加し、パルプ繊維を含む水性懸濁液(スラリー)を準備した(パルプ繊維濃度:1.9%、pH:約13.5)。この水性懸濁液(パルプ固形分10.0g)を、1L容の反応容器に入れ、さらに、ベントナイト(富士フイルム和光純薬製)5.0gを添加し、十分に撹拌した。
この水性懸濁液を撹拌しながら、図1に示すような装置を用いて、酸溶液を滴下した。なお、図中の「A」は、パルプ繊維およびベントナイトを含む水性懸濁液であり、「B」は酸溶液であり、「P」はポンプである。反応温度は50℃、滴下速度は1ml/minであり、反応液のpHが約7.5になった段階で滴下を停止した。滴下終了後、30分間、反応液を撹拌し、10倍量の水を用いて水洗して塩を除去し、ベントナイト微粒子と固形状のハイドロタルサイト(MgAl(OH)16CO・4HO)とパルプ繊維との複合繊維を合成した(パルプ繊維:約50質量%、ハイドロタルサイト:約25質量%、ベントナイト:約25質量%)。
走査型電子顕微鏡を用いて、得られたスラリー中の複合繊維の表面を観察した(図2)。得られた複合繊維は、繊維表面の90%以上が固形状のハイドロタルサイトで覆われていた。また、固形状のハイドロタルサイトの平均一次粒子径は、100nm程度であった。さらに、粒子径が1μm程度のベントナイトが、ハイドロタルサイトに覆われるように繊維に担持されていた。
(3)手抄きシートの作製
得られた複合繊維のスラリーを希釈し、水性懸濁液を準備した(水性懸濁液の濃度:0.73%、pH:7.5)。JIS P 8222:1998に準じて150メッシュのワイヤーを用いて、坪量100g/mの手抄きシート(シート1-1)および坪量300g/mの手抄きシート(シート1-2)を作製した。
実験2
パルプ繊維に対するベントナイトとハイドロタルサイト(HT)の比率を変更した以外は、実験1と同様にして、坪量100g/mの手抄きシートを作製した(シート2)。具体的には、パルプ繊維を含む水性懸濁液(パルプ固形分10.0g)を、1L容の反応容器に入れ、さらに、ベントナイト(富士フイルム和光純薬製)11.7gを添加した以外は、実施例1と同様にしてベントナイト微粒子と固形状のハイドロタルサイト(MgAl(OH)16CO・4HO)とパルプ繊維との複合繊維を合成した(パルプ繊維:約30質量%、ハイドロタルサイト:約35質量%、ベントナイト:約35質量%)。得られた複合繊維のスラリーから、実施例1と同様にして、坪量100g/mの手抄きシートを作製した(シート2)。
走査型電子顕微鏡を用いて、得られたスラリー中の複合繊維の表面を観察したところ、繊維表面の15%以上が固形状のハイドロタルサイトで覆われていた(図3)。また、固形状のハイドロタルサイトの平均一次粒子径は、100nm程度であった。さらに、粒子径が1μm程度のベントナイトが、ハイドロタルサイトに覆われるように繊維に担持されていた。
実験3
パルプ繊維に対するベントナイトとハイドロタルサイト(HT)の比率を変更した以外は、実験1と同様にして、坪量100g/mの手抄きシートを作製した(シート3)。具体的には、パルプ繊維を含む水性懸濁液(パルプ固形分10.0g)を、1L容の反応容器に入れ、さらに、ベントナイト(富士フイルム和光純薬製)13.4gを添加した以外は、実施例1と同様にしてベントナイト微粒子と固形状のハイドロタルサイト(MgAl(OH)16CO・4HO)とパルプ繊維との複合繊維を合成した(パルプ繊維:約40質量%、ハイドロタルサイト:約20質量%、ベントナイト:約40質量%)。得られた複合繊維のスラリーから、実施例1と同様にして、坪量100g/mの手抄きシートを作製した(シート3)。
実験4(比較例)
実験1と同様にして、アルカリ溶液にパルプ繊維を添加して、パルプ繊維を含む水性懸濁液を準備した。調製した水性懸濁液(パルプ固形分10.0g)に、ベントナイト3.3g(パルプ固形分75質量%、ベントナイト25質量%)を添加し、十分に懸濁して、水性懸濁液を準備した(水性懸濁液の濃度:0.74%、pH:約7.3)。次いで、得られたスラリーから、JIS P 8222:1998に基づいて150メッシュのワイヤーを用いて、坪量100g/mの手抄きシートを作製した(シート4)。
実験5(比較例)
実験1で使用したパルプ繊維(LBKP:NBKP=8:2の質量比、カナダ標準濾水度を300ml)から水性懸濁液(スラリー)を準備し、このスラリーから、JIS P 8222:1998に基づいて150メッシュのワイヤーを用いて、坪量100g/mの手抄きシートを作製した(シート5)。
複合繊維の評価
上記実験で得られた手抄きシートについて、ベントナイト含量、坪量、紙厚、密度、吸油性、吸湿性を、以下の方法により測定した。
<ベントナイト含量>
JIS P 8251:2003に基づき、サンプルを525℃で2時間燃焼させた後の質量(無機分)を測定した。無機分の測定値とハイドロタルサイト含量(処方値)から、下式に基づいて、ベントナイト含量を算出した。なお、「0.6」は、ハイドロタルサイトを525℃で2時間燃焼させたときの質量減少率である。
「無機分-(ハイドロタルサイト含量×0.6)」
<坪量、紙厚、密度>
坪量および紙厚は、JIS P 8124:1998に基づき測定した。密度は、紙厚および坪量の測定値より算出した。
<吸油度>
あまに油に100cmのシートを5分間浸漬した後、5分間風乾し重量を測定した。浸漬後重量/浸漬前重量×100として、吸油度を計算した。吸油度が200以下であれば「×」、200~299であれば「△」、300~399であれば「〇」、400以上であれば「◎」とした。
<吸湿度>
温度23℃、相対湿度50%の空間で3時間以上静置した100cmのシートを、温度23℃、相対湿度80%の空間に2時間静置して吸湿させた。吸湿前重量/吸湿後重量×100として、吸湿度を計算した。吸湿度が105以下であれば「×」、105~107であれば「△」、107~109であれば「〇」、110以上であれば「◎」とした。
Figure 0007356308000001
本発明の複合繊維を含むシートは、ハイドロタルサイトによってベントナイトがしっかりと繊維に定着しているため、手抄きシートとした場合でもベントナイトが脱落しにくく、高い歩留でベントナイトがシートに定着していた。また、本発明の複合繊維を含むシートは、吸油性や吸湿性の機能が付与されており、ベントナイト含量が少ない場合でも優れた性能を有することが確認された。
これに対し、実験4(比較例)のシートは、ベントナイトの定着率が低く、吸油性や吸湿性も低下した。ベントナイトを全く含まない実験5(比較例)のシートは、吸油性や吸湿性が著しく低かった。

Claims (8)

  1. (a)スメクタイトを含む粘土鉱物、
    (b)セルロース繊維、および、
    (c)ハイドロタルサイトを含む無機バインダ、
    を含んでなり、無機バインダによって粘土鉱物がセルロース繊維に定着している複合繊維。
  2. 前記セルロース繊維が、木材を原料とするセルロース繊維である、請求項に記載の複合繊維。
  3. スメクタイトを含む粘土鉱物が、モンモリロナイトを含む粘土鉱物である、請求項1または2に記載の複合繊維。
  4. 前記粘土鉱物が、ベントナイトを含んでなる、請求項1~のいずれかに記載の複合繊維。
  5. 前記セルロース繊維の表面の15%以上が前記粘土鉱物および前記無機バインダによって被覆されている、請求項1~のいずれかに記載の複合繊維。
  6. 請求項1~のいずれかに記載の複合繊維を含んでなるシート。
  7. 請求項1~のいずれかに記載の複合繊維を製造する方法であって、
    前記セルロース繊維および前記粘土鉱物を含むスラリーを調製する工程と、
    前記スラリー中で無機バインダを合成して、無機バインダによって前記粘土鉱物がセルロース繊維に定着している複合繊維を得る工程と、
    を含む、上記方法。
  8. セルロース繊維および前記粘土鉱物を含むスラリーのpHが11~14である、請求項に記載の方法。
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