JP7166263B2 - 多層シート及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の一態様に係る多層シートは、繊維を含むシートが2層以上積層しており、少なくとも1層のシートは、繊維と無機粒子との複合繊維を含み、別の層のシートとは異なる性質を有する。例えば、少なくとも1層のシートは繊維と無機粒子との複合繊維を含み、別の層のシートは繊維と無機粒子との複合繊維を含まないこと、または、繊維と無機粒子との複合繊維を含むシートを2層以上含み、1層の含有する無機粒子の種類と、少なくとも他の1層の含有する無機粒子の種類とが異なることにより、本発明の一態様に係る多層シートを得ることができる。この構成により、或る層のシートは、多層シートを構成するシートの一つとして予め決定されていても、他のシートに当該決定されているシートとは異なる性質を持たせることで、当該或る層のシートの性質に、異なる性質も併せ持つ多層シートを製造することができる。また、表層に設けるとより効果が発揮される性質を持つシートを表層に配することでより機能を発揮することができる。さらに、後述の通り連続抄紙で好適に製造できるため容易に製造できる。
複合繊維を構成する無機粒子は、多層シートの用途に応じて適宜選択すればよく、水に不溶性又は難溶性の無機粒子であることが好ましい。無機粒子の合成を水系で行う場合があり、また、複合繊維を水系で使用することもあるため、無機粒子が水に不溶性又は難溶性であると好ましい。
複合繊維を構成する繊維は、例えば、セルロース繊維が好ましい。セルロース繊維の原料としては、パルプ繊維(木材パルプ、非木材パルプ)、バクテリアセルロース、ホヤ等の動物由来セルロース、藻類が例示され、木材パルプは、木材原料をパルプ化して製造すればよい。木材原料としては、アカマツ、クロマツ、トドマツ、エゾマツ、ベニマツ、カラマツ、モミ、ツガ、スギ、ヒノキ、カラマツ、シラベ、トウヒ、ヒバ、ダグラスファー、ヘムロック、ホワイトファー、スプルース、バルサムファー、シーダ、パイン、メルクシマツ、ラジアータパイン等の針葉樹、及びこれらの混合材、ブナ、カバ、ハンノキ、ナラ、タブ、シイ、シラカバ、ハコヤナギ、ポプラ、タモ、ドロヤナギ、ユーカリ、マングローブ、ラワン、アカシア等の広葉樹及びこれらの混合材が例示される。
複合繊維含有スラリー中には、複合体を形成していない繊維が含まれていてもよい。複合体を形成していない繊維も含むことでシートの強度を向上させることができる。ここでいう「複合体を形成していない繊維」とは、無機粒子が複合化されていない繊維が意図される。複合体を形成していない繊維としては特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。複合体を形成していない繊維としては、例えば、上記に例示した繊維の他にも様々な、天然繊維、合成繊維、半合繊維、無機繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、ウール、絹糸、コラーゲン繊維等の蛋白系繊維、キチン・キトサン繊維、アルギン酸繊維等の複合糖鎖系繊維等が挙げられる。合成繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、半合繊維としてはレーヨン、リヨセル、アセテート等が挙げられる。無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維等が挙げられる。
本発明の一態様に係る多層シートの製造方法は、繊維を含むシートが2層以上積層しており、少なくとも1層のシートは、繊維と無機粒子との複合繊維を含み、別の層のシートとは異なる性質を有する、多層シートの製造方法であって、繊維を含むスラリー中で無機粒子を合成して、前記複合繊維を生成する複合繊維生成工程と、前記複合繊維を含む複合繊維含有スラリーと、当該別の層のシートとを形成するためのスラリーとを連続抄紙機に供して連続的に抄紙してシートを生成するシート生成工程と、を含む。
複合繊維生成工程は、繊維と無機粒子との複合繊維を生成する工程である。複合繊維生成工程では、繊維を含むスラリー中で無機粒子を合成することによって、複合繊維を生成する。
繊維を含むスラリー中で無機粒子を合成することによって、所望の無機粒子が繊維に複合化している複合繊維を生成することができる。繊維を含むスラリー中で無機粒子を合成する方法としては、気液法と液液法のいずれでもよい。気液法の一例としては炭酸ガス法があり、例えば水酸化マグネシウムと炭酸ガスを反応させることで、炭酸マグネシウムを合成することができる。反応は、キャビテーション発生装置を用いてもよく(図2参照)、開放系又は加圧反応容器内でウルトラファインバブルを発生させて行ってもよい。開放系及び加圧反応容器内でウルトラファインバブルを発生させる装置の模式図をそれぞれ図3及び図4に示す。液液法の例としては、酸(塩酸、硫酸等)と塩基(水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等)を中和によって反応させたり、無機塩と酸もしくは塩基を反応させたり、無機塩同士を反応させたりする方法が挙げられる。例えば、水酸化バリウムと硫酸とを反応させることで硫酸バリウムを得たり、硫酸アルミニウムと水酸化ナトリウムとを反応させることで水酸化アルミニウムを得たり、炭酸カルシウムと硫酸アルミニウムとを反応させることでカルシウムとアルミニウムが複合化した無機粒子を得ることができる。また、このようにして無機粒子を合成する際、反応液中に任意の金属や金属化合物を共存させることもでき、この場合はそれらの金属もしくは金属化合物が無機粒子中に効率よく取り込まれ、複合化できる。例えば、炭酸カルシウムにリン酸を添加してリン酸カルシウムを合成する際に、二酸化チタンを反応液中に共存させることで、リン酸カルシウムとチタンの複合粒子を得ることができる。
シート生成工程は、前記複合繊維を含む複合繊維含有スラリーと、当該別の層のシートとを形成するためのスラリーとを抄紙してシートを生成する工程である。
シート生成工程では、複合繊維含有スラリーと、別の層のシートとを形成するためのスラリーとを連続抄紙機に供して、各スラリー由来のシートが積層するように連続的に抄紙する。連続抄紙機によって多層シートを製造するため、従来のように、機能を有する材料又はシートを、ベースとなるシートに塗布したり貼り合わせ加工したりする必要がなく、より容易に機能性を有する多層シートを製造できる。
シート生成工程において使用する複合繊維含有スラリー(後述する実施例では「紙料スラリー」と称する。)中に含まれている複合繊維としては、1種類のみであってもよく、2種類以上を混合したものであってもよい。
複合繊維含有スラリー中には、上述した複合繊維を形成していない繊維が含まれていてもよい。複合化されていない繊維は、長さ加重平均繊維長が1.0mm以上、2.0mm以下であるものが好ましい。複合繊維含有スラリーが、長さ加重平均繊維長が前記範囲である複合化されていない繊維を更に含むことによって、複合繊維シートの紙力を向上させることができる。
複合繊維含有スラリーには、填料の繊維への定着を促したり、填料及び繊維の歩留を向上させたりするために、歩留剤を添加することもできる。例えば、歩留剤として、カチオン性又はアニオン性、両性ポリアクリルアミド系物質を用いることができる。また、これらに加えて少なくとも一種以上のカチオンやアニオン性のポリマーを併用する、いわゆるデュアルポリマーと呼ばれる歩留りシステムを適用することもでき、少なくとも一種類以上のアニオン性のベントナイトやコロイダルシリカ、ポリ珪酸、ポリ珪酸もしくはポリ珪酸塩ミクロゲル及びこれらのアルミニウム改質物等の無機微粒子や、アクリルアミドが架橋重合したいわゆるマイクロポリマーといわれる粒径100μm以下の有機系の微粒子を一種以上併用する多成分歩留りシステムであってもよい。特に単独又は組合せで使用するポリアクリルアミド系物質が、極限粘度法による重量平均分子量が200万ダルトン以上である場合、良好な歩留りを得ることができ、好ましくは、500万ダルトン以上であり、更に好ましくは1000万ダルトン以上、3000万ダルトン未満の前記アクリルアミド系物質である場合に非常に高い歩留りを得ることが出来る。このポリアクリルアミド系物質の形態はエマルジョン型でも溶液型であっても構わない。この具体的な組成としては、該物質中にアクリルアミドモノマーユニットを構造単位として含むものであれば特に限定はないが、例えば、アクリル酸エステルの4級アンモニウム塩とアクリルアミドとの共重合物、あるいはアクリルアミドとアクリル酸エステルを共重合させた後、4級化したアンモニウム塩が挙げられる。該カチオン性ポリアクリルアミド系物質のカチオン電荷密度は特には限定されない。
複合繊維含有スラリーには、繊維と複合化していない無機粒子を更に添加することができる。このような無機粒子は、複合繊維を構成している無機粒子のように水素結合等によってセルロース繊維と結着せず、繊維と混在している点で区別される。繊維と複合化していない無機粒子(以下、「非複合化無機粒子」という。)の種類は、複合繊維を構成する無機粒子と異なっていても同一であってもよい。また、複合繊維を構成する無機粒子と種類が異なる場合は、非複合化無機粒子は、複合繊維を構成する無機粒子と機能が同一又は類似していてもよく、機能が異なっていてもよい。複合繊維を構成する無機粒子とは異なる種類であり且つ異なる機能を有する非複合化無機粒子を添加することによって、双方の機能を併せ持つ複合繊維シートを製造することができる。また、複合繊維を構成する無機粒子と同一の種類の外添無機粒子又は種類は異なるが機能が同一若しくは類似している非複合化無機粒子を添加することによって、当該機能をより向上させることができる。
シート化の際には、有機粒子を添加してもよい。有機粒子とは有機化合物を粒子状にしたものである。有機粒子としては、例えば、難燃性を高めるための有機系の難燃材料(リン酸系、ホウ素系等)、尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子、アクリルアミド複合繊維、木材由来の物質(微細繊維、ミクロフィブリル繊維、粉体ケナフ)、印刷適性を向上させるための変性不溶化デンプン、未糊化デンプン、ラテックス等が挙げられる。これらは単独でも2種類以上の組み合わせで用いてもよい。
複合繊維含有スラリーには、湿潤及び/又は乾燥紙力剤(紙力増強剤)を添加することができる。これにより、複合繊維シートの強度を向上させることができる。紙力剤としては例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリアミン、エピクロロヒドリン樹脂、植物性ガム、ラテックス、ポリエチレンイミン、グリオキサール、ガム、マンノガラクタンポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアミン、ポリビニルアルコール等の樹脂;前記樹脂から選ばれる2種以上からなる複合ポリマー又は共重合ポリマー;澱粉及び加工澱粉;カルボキシメチルセルロース、グアーガム、尿素樹脂等が挙げられる。紙力剤の添加量は特に限定されない。
別の層のシートを形成するためのスラリーは、多層シートの用途等に応じて適宜準備すればよい。例えば、別の層のシートを形成するためのスラリーは、或る層のシートとは異なる性質となるように無機粒子の種類及び/又は含有量を調整した上で、上述の複合繊維生成工程を行なって得た複合繊維含有スラリーを用いてもよい。また、別の層のシートを形成するためのスラリーは、繊維を含むスラリーに予め合成された無機粒子等の従来公知の填料を添加したものであってもよい。
シート生成工程では、複合繊維シート同士が2層以上積層した多層シートからなる無機粒子複合繊維シートを製造する。この場合、複合繊維シートを複数枚重ね合わせて積層体とすればよい。多層シートの製造方法は特に限定されない。例えば、公知の長網・傾斜コンビネーション抄紙機を用いて、複合繊維シートに、複合繊維を含まないシートを抄き合わせて、多層シートを製造することができる。これにより、複合繊維シートの紙力を向上させることができるので、連続抄紙機によって断紙することなく複合繊維シートを製造することができる。
本発明の一態様に係る多層シートの製造方法によれば、多層シート(複数の複合繊維シートのみからなる場合)の比引裂き強度が3.0mN/(g/m2)以上、15.0mN/(g/m2)以下の多層シートを、連続抄紙機によって断紙することなく製造することができる。また、多層シートが、複合繊維シートと非複合繊維シートからなる場合の比引裂き強度はさらに高くなる。
本発明は、これに制限されるものでないが、以下の発明を包含する。
(1)硫酸バリウムとセルロース繊維との複合繊維の合成
複合化するセルロース繊維として、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)とを0:100の重量比で含み、シングルディスクリファイナー(SDR)を用いてカナダ標準濾水度(CSF)を290mLに調製したパルプ繊維を用いた。実施例1で複合化に使用したセルロース繊維の長さ加重1.2mm以上、2.0mm以下の繊維長分布は22%、長さ加重1.2mm以上、3.2mm以下の繊維長分布は39%であり、全体の長さ加重平均繊維長は1.4mmである。尚、本実施例において、以下、前記「広葉樹晒クラフトパルプ」を、「LBKP」と省略して記載する。また、前記「針葉樹晒クラフトパルプ」を、「NBKP」と省略して記載する。LBKP及びNBKPは、共に日本製紙製のものを使用した。また、前記「カナダ標準濾水度」を「CSF」と省略して記載する。
・カナダ標準濾水度(CSF):JIS P 8121-2:2012
・長さ加重平均繊維長(Ll):Metso Fractionater(Metso社製)を用いて測定した。
・長さ加重繊維長分布(%):Metso Fractionater(Metso社製)を用いて測定した。
1の複合繊維のスラリーを得た。尚、実施例1では、硫酸バリウムを合成する際の原料として硫酸バンドを用いているので、硫酸バリウムだけでなく水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物も合成されている。従って、実施例1では、硫酸バリウム及び水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物とセルロース繊維との複合繊維が合成されている。
得られた複合繊維のスラリー(濃度:1.2重量%)に、カチオン性の歩留剤(ND300、ハイモ)とアニオン性の歩留剤(FA230、ハイモ)とを対固形分で100ppmずつ添加して、複合繊維を含有する紙料スラリー(1層目(表)用の紙料スラリー)を調製した。
硫酸バリウムを合成しないこと以外は(1)と同じ操作を行ない、2層目用の紙料スラリーを調製した。
長網抄紙機(鈴木製機所製)を用いて、抄速10m/minの条件で2種類のスラリーから実施例1の2層のシート(坪量180g/m2)を製造した。厚さは169μm、灰分は60%であった。なお、坪量はJIS P 8124:1998に従って測定した。また、灰分はJIS P 8251:2003に基づき、無機物単体の灰分にて換算した。
(5-1)放射線(X線)遮蔽能力評価
サンプルを20枚重ねたときの放射線(X線)遮蔽能力を評価した。具体的には、JIS Z 4501「X線防護用品の鉛当量試験法」に準じて、透過X線量率及び鉛当量を測定した。
線量減少率(%)=(各サンプルの透過線量率/ブランク(サンプルなし)の透過線量率)×100
(鉛当量) JIS Z 4501「X線防護用品の鉛当量試験方法」に準じて、透過X線量を測定して鉛当量を求めた。各サンプルの鉛当量は、標準鉛版から減弱率曲線を作成して求めた。減弱率曲線は、厚みの異なる4枚の標準鉛板の減弱率から二次補間で作成した。標準鉛版には、各試験品の減弱率よりも減弱率の大きな2枚、減弱率の小さな2枚を選んだ。
・X線装置:エクスロン・インターナショナル社 MG-452型(平滑回路、焦点寸法5.5mm、Be窓)
・X線管電圧及び管電流:MG-452型 100kV 12.5mA 付加ろ過版0.25mmCu
・X線管焦点―試料間距離:1500mm
・試料―測定器間距離:50mm
・測定器:電離箱照射線量率計 東洋メディック社 RAMTEC―1000D型 A-4プローブ使用
・X線量測定単位:空気衝突カーマ
・X線ビーム:狭いビーム
(5-2)結果
X線の線量減少率が50%以上であれば「A」と評価した。結果を表1に示す。表1に示す通り、実施例1の多層シートは優れた放射線遮蔽効果を示した。
灰分歩留りを以下の方法で算出した。
・灰分歩留(質量%):抄紙中に原料(インレット)と白水を採取し、灰分から以下の式で算出した。
灰分歩留(質量%)=(原料濃度×原料灰分-白水濃度×白水灰分)/原料濃度×原料灰分×100
(5-4)結果
灰分歩留が70%以上である場合を「A」と評価し、70%未満である場合を「B」と評価した。結果を表1に示す。表1に示す通り、実施例1の多層シートは優れた灰分歩留を示した。
(1)ハイドロタルサイトとセルロース繊維との複合繊維の合成
(1-1)アルカリ溶液及び酸溶液の調製
ハイドロタルサイト(HT)を合成するための溶液を準備した。アルカリ溶液(A溶液)として、Na2CO3(和光純薬)及びNaOH(和光純薬)の混合水溶液を調製した。また、酸溶液(B溶液)として、ZnCl2(和光純薬)及びAlCl3(和光純薬)の混合水溶液を調製した。
・アルカリ溶液(A溶液、Na2CO3濃度:0.05M、NaOH濃度:0.8M)
・酸溶液(B溶液、Zn系、ZnCl2濃度:0.3M、AlCl3濃度:0.1M)
(1-2)複合繊維の合成
複合化するセルロース繊維として、パルプ繊維(LBKP/NBKP=20:80、CSF=390mL)を用いた。実施例2で複合化に使用したセルロース繊維の長さ加重1.2mm以上、2.0mm以下の繊維長分布は19%、長さ加重1.2mm以上、3.2mm以下の繊維長分布は35%であり、全体の長さ加重平均繊維長は1.3mmである。
ハイドロタルサイトとセルロース繊維との複合繊維のスラリー(濃度:1.2重量%)を用いた以外は、実施例1(2)と同じ操作を行い、複合繊維を含有する紙料スラリーを調製した。
ハイドロタルサイトを合成しないこと以外は(1)と同じ操作を行い、2層目用及び3層目用の紙料スラリーを調製した。
本実施例で調製したスラリーを用いた以外は実施例1(4)と同じ操作を行なって3層のシート(坪量300g/m2)を製造した。厚さは488μm、灰分は17%であった。
(5-1)消臭特性評価
実施例2で製造した多層シートの消臭特性を評価した。消臭試験は、SEKマーク繊維製品認証基準(JEC301、繊維評価技術協議会)の方法に基づいて実施し、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、ノネナールに対する消臭特性を評価した。アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミンは検知管、ノネナールはガスクロマトグラフィーを用いて定量した。
減少率(%)={(A-B)/A}×100
A:2時間後の空試験濃度
B:2時間後の試料試験濃度
(5-2)結果
臭気成分の減少率が90%以上であれば「A」と評価した。結果を表1に示す。表1に示す通り、本実施例の多層シートは優れた消臭効果を示した。
実験2で製造した多層シートの抗菌特性を評価した。抗菌性試験は、JIS L 1902に定める菌液吸収法(試験接種菌液を直接試験片上に接種する定量試験方法)にて実施した。試験菌種として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 12732)と大腸菌(Escherichia coil NBRC 3301)の2種類を使用し、18時間培養後の生菌数を混釈平版培養法にて測定した。基準として、標準綿布を用いた。試験手順を以下に示す。
1.試験片0.4gをバイアル瓶に入れ、試験菌液0.2mL(0.05%の界面活性剤(Tween80)を含む)を滴下後、バイアル瓶のふたをする。
2.バイアル瓶を37℃で18時間培養する。
3.洗い出し液20mLを加えて試験片から試験菌を洗い出し、洗い出し液中の生菌数を混釈平板培養法又は発光測定法により測定する。
4.下記の式に従い抗菌活性値を算出する。抗菌活性値が2.0以上とは、菌の死滅率が99%以上であることを意味する。
(5-4)結果
抗菌活性値が2.0以上であれば〇と評価した。結果を表1に示す。表1に示す通り、本実施例の多層シートは、対象とした菌種に対し、極めて高い抗菌特性を示した。
多層シートの灰分歩留を実施例1と同様の方法で算出し評価した。結果を表1に示す。表1に示す通り、実施例2の多層シートは優れた灰分歩留を示した。
(1)ハイドロタルサイトとセルロース繊維との複合繊維の合成
実施例2と同じ操作を行ない合成した。
複合化するセルロース繊維として、パルプ繊維(LBKP/NBKP=20:80、CSF=390mL)を用いた。複合化に使用したセルロース繊維の長さ加重1.2mm以上、2.0mm以下の繊維長分布は19%、長さ加重1.2mm以上、3.2mm以下の繊維長分布は35%であり、全体の長さ加重平均繊維長は1.3mmであった。
ハイドロタルサイトとセルロース繊維との複合繊維のスラリー(濃度:1.2重量%)を用いた以外は、実施例1(2)と同じ操作を行い、複合繊維を含有する1層目用の紙料スラリーを調製した。
炭酸マグネシウムとセルロース繊維との複合繊維のスラリー(濃度:1.2重量%)を用いた以外は、実施例1(2)と同じ操作を行い、複合繊維を含有する2層目及び3層目用の紙料スラリーを調製した。
本実施例で調製したスラリーを用いた以外は実施例1(4)と同じ操作を行なって3層のシート(坪量300g/m2)を製造した。厚さは460μm、灰分は50%であった。
(6-1)消臭特性及び抗菌特性評価
実施例2と同じ方法で、本実施例で製造した多層シートの消臭特性及び抗菌を評価した。結果を表1に示す。表1に示す通り、本実施例の多層シートは優れた消臭効果を示した。
実施例3で製造した多層シートの難燃特性を評価した。JIS A 1322(JIS Z 2150)を基にして、以下の手順により評価した。
・残炎時間:加熱終了時から試験体が炎をあげて燃え続ける時間を測定した。
・残じん:加熱終了時から無炎燃焼している状態をいう。
・炭化長面積:試験体の加熱面の炭化部分(炭化して明らかに強度が変化)している部分について最大長と最大幅を測定し、それらを掛け合わせて算出した。
残炎時間が10秒以下、残じん時間が30秒以下、炭化面積が50cm2以下であれば、防炎物品(合板)に求められる基準を満たしており(参考:消防庁「防炎の知識と実際」)、「A」と評価した。結果を表1に示す。表1に示す通り、本実施例の多層シートは優れた難燃特性を示した。
多層シートの灰分歩留を実施例1と同様の方法で算出し評価した。その結果を表1に示す。表1に示す通り、実施例3の多層シートは優れた灰分歩留を示した。
硫酸バリウムを合成しないこと以外は実施例1と同じ操作を行なって紙料スラリーを調製した。当該紙料スラリーを1層目用及び2層目用のスラリーとして、実施例1と同じ操作を行なって2層のシート(坪量180g/m2)を製造した。厚さは281μm、灰分は全く含まない。放射線遮蔽特性、消臭特性、抗菌特性及び難燃特性は全てそれぞれの機能を持たせた実施例より劣っていた。
(1)ハイドロタルサイト混合繊維を含有する紙料スラリーの調整
硫酸バリウムの合成を行なわず、予め用意されたハイドロタルサイトをパルプ固形分重量に対して50%添加した以外は実施例1と同じ操作を行なって1層目用の紙料スラリーを調製した。
ハイドロタルサイトを添加しないこと以外は(1)と同じ操作を行い、2層目用の紙料スラリーを調整した。
本比較例で調製したスラリーを用いた以外は実施例1と同じ操作を行なって2層のシート(坪量180g/m2)を製造した。厚さは298μm、灰分は25%であった。
Claims (13)
- 繊維を含むシートが2層以上積層しており、
少なくとも1層のシートは、繊維と無機粒子との複合繊維を含み、
別の層のシートとは異なる性質を有し、
前記別の層のシートは、繊維と複合化した無機粒子、および繊維と複合化していない無機粒子の何れか1つ以上の無機粒子を含み、繊維と複合化した無機粒子は複合繊維として含まれ、
前記少なくとも1層のシートに含まれる複合繊維の無機粒子の種類と、前記別の層のシートに含まれる無機粒子の種類とが異なり、
前記複合繊維は、灰分歩留が、70%以上であり、
前記複合繊維に含まれるセルロース繊維のJIS P 8121-2:2012に規定されるカナダ標準濾水度が600mL以下である、
多層シート。 - 前記別の層のシートは、繊維と無機粒子との複合繊維を含まない、
請求項1に記載の多層シート。 - 前記繊維と無機粒子との複合繊維を含むシートを2層以上含み、
1層の含有する無機粒子の種類と、少なくとも他の1層の含有する無機粒子の種類とが異なり、
前記複合繊維を含むシートは表層に配される、
請求項1又は2に記載の多層シート。 - 前記無機粒子が炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム及びハイドロタルサイトからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含む、請求項1~3のいずれかに記載の多層シート。
- 前記繊維がセルロース繊維である、請求項1~4のいずれかに記載の多層シート。
- 前記繊維と無機粒子との複合繊維が、繊維表面の15%以上が無機粒子によって被覆されている、請求項1~5のいずれかに記載の多層シート。
- 前記複合繊維に含まれるセルロース繊維が、LBKP:NBKP=50:50~LBKP:NBKP=0:100である、請求項1~6のいずれかに記載の多層シート。
- 前記無機粒子がハイドロタルサイトを含む、請求項1~7のいずれかに記載の多層シート。
- 繊維を含むシートが2層以上積層しており、少なくとも1層のシートは、繊維と無機粒子との複合繊維を含み、別の層のシートとは異なる性質を有し、
前記別の層のシートは、繊維と複合化した無機粒子、および繊維と複合化していない無機粒子の何れか1つ以上の無機粒子を含み、繊維と複合化した無機粒子は複合繊維として含まれ、
前記少なくとも1層のシートに含まれる複合繊維の無機粒子の種類と、前記別の層のシートに含まれる無機粒子の種類とが異なる、多層シートの製造方法であって、
繊維を含むスラリー中で無機粒子を合成して、前記複合繊維を生成する複合繊維生成工程と、
前記少なくとも1層のシートを形成するための複合繊維を含む複合繊維含有スラリーと、当該別の層のシートを形成するための繊維と複合化した無機粒子、および繊維と複合化していない無機粒子の何れか1つ以上の無機粒子を含むスラリーとを連続抄紙機に供して連続的に抄紙してシートを生成するシート生成工程と、を含み、
前記複合繊維生成工程では、含まれるセルロース繊維のJIS P 8121-2:2012に規定されるカナダ標準濾水度が600mL以下である、多層シートの製造方法。 - 前記複合繊維生成工程では、含まれるセルロース繊維が、LBKP:NBKP=50:50~LBKP:NBKP=0:100である、
請求項9に記載の多層シートの製造方法。 - 前記連続抄紙機が長網式又は円網式である、請求項9又は10に記載の多層シートの製造方法。
- 前記多層シートは、前記繊維と無機粒子との複合繊維を含むシートを2層以上含み、
1層の含有する無機粒子の種類と、少なくとも他の1層の含有する無機粒子の種類とが異なり、
前記複合繊維を含むシートは表層に配され、
前記無機粒子が炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム及びハイドロタルサイトからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含む、多層シートを製造する、請求項9~11のいずれかに記載の多層シートの製造方法。 - 前記無機粒子がハイドロタルサイトを含む、請求項9~12のいずれかに記載の多層シートの製造方法。
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