〔放射線遮断材〕
本発明の一態様に係る放射線遮断材は、硫酸バリウムと繊維との複合繊維であり、シート形態である第1の複合繊維シートが複数積層している。
本発明の一態様に係る放射線遮断材は、繊維で構成されている。繊維は、軽量、加工が容易である等の性質を有している。そのため、従来の放射線遮断材と比較して取り扱いが容易である。また、硫酸バリウムは、放射線遮断性を有しており、安価で、環境負荷が低く、人体に対する安全性が高く、さらには難燃性を有している。従って、本発明の一態様に係る放射線遮断材は、軽量であり、安価であり、人体に対する安全性が高く、且つ難燃性を有している。さらには、本発明の一態様に係る放射線遮断材は、廃棄された場合に、環境負荷が低い。また、硫酸バリウムと繊維との複合繊維はインクやインキの付着性がよいため、印刷特性にも優れている。
〔第1の複合繊維シート〕
本発明の一態様に係る放射線遮断材を構成している第1の複合繊維シートは、硫酸バリウムと繊維との複合繊維であり、シート形態のものである。
〔複合繊維〕
硫酸バリウムと繊維との複合繊維シートは、単に繊維と硫酸バリウムとが混在しているのではなく、水素結合等によって繊維と硫酸バリウムとが結着しているので、離解処理によっても硫酸バリウムが線維から脱落することが少ない。複合繊維シートにおける繊維と硫酸バリウムとの結着の強さは、例えば、灰分歩留(%)によって評価できる。例えば、(シートの灰分÷離解前の複合繊維の灰分)×100といった数値によって評価することができる。具体的には、複合繊維シートを水に分散させて固形分濃度0.2%に調整してJIS P 8220−1:2012に規定される標準離解機で5分間離解後、JIS P 8222:1998に従って150メッシュのワイヤーを用いてシート化した際の灰分歩留を評価に用いることができ、好ましい態様において灰分歩留は20質量%以上であり、より好ましい態様において灰分歩留は50質量%以上である。つまり、単に硫酸バリウムを繊維に単に配合した場合と異なり、硫酸バリウムを繊維と複合繊維化しておくと、硫酸バリウムが複合繊維シートに歩留易いだけでなく、凝集せずに均一に分散した複合繊維シートを得ることができる。
繊維と硫酸バリウムとの複合繊維は、一つの好ましい態様において、繊維を含有する溶液中で硫酸バリウムを合成する方法によって得られる。また、複合繊維シートにおける繊維表面の15%以上が硫酸バリウムによって被覆されていることが好ましい。このような面積率で繊維表面が硫酸バリウムに被覆されていると硫酸バリウムに起因する特徴が大きく生じるようになる一方、繊維表面に起因する特徴が小さくなる。また、複合繊維シートにおいて、硫酸バリウムによる繊維の被覆率(面積率)は、25%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましい。また、前記方法によれば、被覆率が60%以上、80%以上の複合繊維を好適に製造できる。被覆率の上限値は用途に応じて適宜設定すればよいが、例えば、100%、90%、80%である。また、前記方法によって得られる複合繊維シートは、好ましい態様において、硫酸バリウムが繊維の外表面及びルーメンの内側に定着するだけでなく、ミクロフィブリルの内側にも生成することが電子顕微鏡観察の結果から明らかとなっている。
第1の複合繊維シート中に含まれている硫酸バリウムと繊維との複合繊維の含有量は、第1の複合繊維シートの全重量に対して、10%〜100%であることが好ましく、25%〜100%であることがより好ましい。第1の複合繊維シートの全重量に対して、5%以上の硫酸バリウムと繊維との複合繊維を含有していることにより、第1の複合繊維シートを作製することができる。
〔硫酸バリウム〕
第1の複合繊維シートを構成する硫酸バリウムは特に制限されないが、公知の方法で合成することができる。硫酸バリウムの合成を水系で行う場合があり、また、硫酸バリウムと繊維との複合繊維を水系で使用することもある。
硫酸バリウムは、BaSO4で表されるバリウムイオンと硫酸イオンとからなるイオン結晶性の化合物であり、板状又は柱状の形態であることが多く、水には難溶性である。純粋な硫酸バリウムは無色の結晶であるが、鉄、マンガン、ストロンチウム、カルシウム等の不純物を含むと黄褐色又は黒灰色を呈し、半透明となる。天然の鉱物としても得られるが、化学反応によって合成することもできる。特に、化学反応による合成品は医薬用(X線造影剤)に用いられるほか、化学的に安定な性質を応用して塗料、プラスチック、蓄電池等に広く使用されている。
セルロース繊維等の繊維と複合化する硫酸バリウムは特に制限されないが、公知の方法で合成することができる。硫酸バリウムの合成を水系で行う場合があり、また、硫酸バリウムと繊維との複合繊維を水系で使用することもある。
一つの好ましい態様として、第1の複合繊維シートにおいて繊維と複合化している硫酸バリウムの平均一次粒子径を、例えば、1.5μm以下とすることができるが、平均一次粒子径が1200nm未満の硫酸バリウム粒子、平均一次粒子径が900nm未満の硫酸バリウム粒子を用いることができる。さらには、平均一次粒子径が200nm以下の硫酸バリウム粒子、平均一次粒子径が150nm以下の硫酸バリウム粒子を用いることができる。また、硫酸バリウム粒子の平均一次粒子径は10nm以上とすることも可能である。なお、平均一次粒子径は電子顕微鏡写真から算出することができる。
また、第1の複合繊維シートにおいて、硫酸バリウムは、微細な一次粒子が凝集した二次粒子の形態を取ることもあり、用途に応じた二次粒子を生成させることができるし、粉砕によって凝集塊を細かくすることもできる。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。
第1の複合繊維シートを構成する硫酸バリウム粒子の平均粒子径、形状等は、電子顕微鏡による観察により確認することができる。さらに、硫酸バリウムの合成条件等を調整することによって、種々の大きさ及び形状を有する硫酸バリウムを繊維と複合化することができる。例えば、板状の硫酸バリウムが繊維に複合化している複合繊維とすることもできる。
〔繊維〕
第1の複合繊維シートを構成する繊維は特に制限されないが、例えば、セルロース繊維、アラミド繊維等が挙げられ、セルロース繊維であることが好ましい。セルロース繊維の原料としては、パルプ繊維(木材パルプ、非木材パルプ)、セルロースナノファイバー、バクテリアセルロース、ホヤ等の動物由来セルロース、藻類等が例示され、木材パルプは、木材原料をパルプ化して製造すればよい。木材原料としては、アカマツ、クロマツ、トドマツ、エゾマツ、ベニマツ、カラマツ、モミ、ツガ、スギ、ヒノキ、カラマツ、シラベ、トウヒ、ヒバ、ダグラスファー、ヘムロック、ホワイトファー、スプルース、バルサムファー、シーダ、パイン、メルクシマツ、ラジアータパイン等の針葉樹、及びこれらの混合材、ブナ、カバ、ハンノキ、ナラ、タブ、シイ、シラカバ、ハコヤナギ、ポプラ、タモ、ドロヤナギ、ユーカリ、マングローブ、ラワン、アカシア等の広葉樹及びこれらの混合材が例示される。
木材原料(木質原料)等の天然材料をパルプ化する方法は、特に限定されず、製紙業界で一般に用いられるパルプ化法が例示される。木材パルプはパルプ化法により分類でき、例えば、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法等の方法により蒸解した化学パルプ;リファイナー、グラインダー等の機械力によってパルプ化して得られる機械パルプ;薬品による前処理の後、機械力によるパルプ化を行って得られるセミケミカルパルプ;古紙パルプ;脱墨パルプ等が挙げられる。木材パルプは、未晒(漂白前)の状態であってもよいし、晒(漂白後)の状態であってもよい。
非木材由来のパルプとしては、綿、ヘンプ、サイザル麻、マニラ麻、亜麻、藁、竹、バガス、ケナフ、サトウキビ、トウモロコシ、稲わら、楮(こうぞ)、みつまた等が例示される。
パルプ繊維は、未叩解及び叩解のいずれでもよく、第1の複合繊維シートの物性に応じて選択すればよいが、叩解を行う方が好ましい。これにより、第1の複合繊維シートのシート強度の向上並びに硫酸バリウムの定着促進が期待できる。
合成繊維とセルロース繊維との複合繊維も第1の複合繊維シートを構成する繊維として使用することができ、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維等とセルロース繊維との複合繊維も使用することができる。
また、これらセルロース原料はさらに処理を施すことで微粉砕セルロース、酸化セルロース等の化学変性セルロース、及びセルロースナノファイバー:CNF(ミクロフィブリル化セルロース:MFC、TEMPO酸化CNF、リン酸エステル化CNF、カルボキシメチル化CNF、機械粉砕CNF等)として使用することもできる。微粉砕セルロースとしては、一般に粉末セルロースと呼ばれるものと、上記機械粉砕CNFのいずれも含む。粉末セルロースとしては、例えば、例えば、精選パルプを未処理のまま機械粉砕したもの、もしくは、酸加水分解した後に得られる未分解残渣を精製・乾燥し、粉砕・篩い分けするといった方法により製造される棒軸状である一定の粒径分布を有する結晶性セルロース粉末を用いてもよいし、KCフロック(日本製紙製)、セオラス(旭化成ケミカルズ製)、アビセル(FMC社製)等の市販品を用いてもよい。粉末セルロースにおけるセルロースの重合度は好ましくは100〜1500程度であり、X線回折法による粉末セルロースの結晶化度は好ましくは70%〜90%であり、レーザー回折式粒度分布測定装置による体積平均粒子径は好ましくは1μm〜100μmである。酸化セルロースは、例えばN−オキシル化合物、及び、臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で酸化剤を用いて水中で酸化することで得ることができる。セルロースナノファイバーとしては、上記セルロース原料を解繊する方法が用いられる。解繊方法としては、例えばセルロースや酸化セルロース等の化学変性セルロースの水懸濁液等を、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸又は多軸混練機、ビーズミル等による機械的な磨砕、ないし叩解することにより解繊する方法を使用することができる。上記方法を1種又は複数種類組み合わせてセルロースナノファイバーを製造してもよい。製造したセルロースナノファイバーの繊維径は電子顕微鏡観察等で確認することができ、例えば5nm〜1000nm、好ましくは5nm〜500nm、より好ましくは5nm〜300nmの範囲にある。このセルロースナノファイバーを製造する際、セルロースを解繊及び/又は微細化する前及び/又は後に、任意の化合物をさらに添加してセルロースナノファイバーと反応させ、水酸基が修飾されたものにすることもできる。修飾する官能基としては、アセチル基、エステル基、エーテル基、ケトン基、ホルミル基、ベンゾイル基、アセタール、ヘミアセタール、オキシム、イソニトリル、アレン、チオール基、ウレア基、シアノ基、ニトロ基、アゾ基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、アミド基、イミド基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、オキシル基、チイラン基、チエタン基等が挙げられる。これらの置換基の中の水素が水酸基、カルボキシ基等の官能基で置換されても構わない。また、アルキル基の一部が不飽和結合になっていても構わない。これらの官能基を導入するために使用する化合物としては特に限定されず、例えば、リン酸由来の基を有する化合物、カルボン酸由来の基を有する化合物、硫酸由来の基を有する化合物、スルホン酸由来の基を有する化合物、アルキル基を有する化合物、アミン由来の基を有する化合物等が挙げられる。リン酸基を有する化合物としては特に限定されないが、リン酸、リン酸のリチウム塩であるリン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、ポリリン酸リチウムが挙げられる。更にリン酸のナトリウム塩であるリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムが挙げられる。更にリン酸のカリウム塩であるリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸カリウムが挙げられる。更にリン酸のアンモニウム塩であるリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムがより好ましいが、特に限定されない。カルボキシル基を有する化合物としては特に限定されないが、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸等トリカルボン酸化合物が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物としては特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の誘導体としては特に限定されないが、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては特に限定されないが、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては特に限定されない。例えば、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。上記カルボン酸由来の基を有する化合物のうち、工業的に適用しやすく、ガス化しやすいことから、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸が好ましいが、特に限定されない。また、化学的に結合させなくても、修飾する化合物がセルロースナノファイバーに物理的に吸着する形でセルロースナノファイバーを修飾してもよい。物理的に吸着する化合物としては界面活性剤等が挙げられ、アニオン性、カチオン性、ノニオン性いずれを用いてもよい。セルロースを解繊及び/又は粉砕する前に上記の修飾を行った場合、解繊及び/又は粉砕後にこれらの官能基を脱離させ、元の水酸基に戻すこともできる。以上のような修飾を施すことで、セルロースナノファイバーの解繊を促進したり、セルロースナノファイバーを使用する際に種々の物質と混合しやすくしたりすることができる。
また、セルロース繊維の他にも様々な、天然繊維、合成繊維、半合成繊維、無機繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、ウール、絹糸、コラーゲン繊維などの蛋白系繊維、キチン・キトサン繊維、アルギン酸繊維などの複合糖鎖系繊維等が挙げられる。合成繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、半合繊維としてはレーヨン、リヨセル、アセテートなどが挙げられる。無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維などが挙げられる。
また、合成繊維とセルロース繊維との複合繊維も使用することができ、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維などとセルロース繊維との複合繊維も使用することができる。
以上に示した例の中でも、木材パルプを含むか、若しくは、木材パルプと非木材パルプ及び/又は合成繊維との組み合わせを含むことが好ましく、木材パルプのみであることがより好ましい。
好ましい態様において、第1の複合繊維シートを構成する繊維はパルプ繊維である。また、例えば、製紙工場の排水から回収された繊維状物質を本発明の硫酸バリウムとの複合化反応に供給してもよい。このような物質を硫酸バリウムとの複合化反応槽に供給することにより、種々の複合粒子を合成することができ、また、形状的にも繊維状粒子等を合成することができる。
また、繊維の他にも、硫酸バリウムの合成反応には直接的に関与しないが、生成物である硫酸バリウム粒子に取り込まれて複合粒子を生成するような物質を用いることができる。例えば、パルプ繊維等の繊維を使用する態様において、それ以外にも無機粒子、有機粒子、ポリマー等を含む溶液中で硫酸バリウムを合成することによって、さらにこれらの物質が取り込まれた複合粒子を製造することが可能である。
以上に例示した繊維については単独でも2種類以上の組み合わせで用いてもよい。
また、複合化する繊維の繊維長は特に制限されないが、例えば、平均繊維長が0.1μm〜15mm程度とすることができ、1μm〜12mm、100μm〜10mm、500μm〜8mm等としてもよい。
複合化する繊維の量は、繊維表面の15%以上が硫酸バリウムで被覆されるような量とすることが好ましい。例えば、繊維と硫酸バリウムとの重量比を、5/95〜95/5とすることができ、10/90〜90/10、20/80〜80/20、30/70〜70/30、40/60〜60/40としてもよい。尚、後述するように、硫酸バリウム以外の難燃剤も繊維に複合化されている場合がある。この場合は、「繊維と硫酸バリウムとの重量比」を、「繊維と硫酸バリウム及び難燃剤との重量比」と読み替えるものとする。
〔難燃剤〕
好ましい態様の一つとして、第1の複合繊維シートは難燃剤を含んでいてもよい。これによって、第1の複合繊維シートに、容易に、より強い難燃性を付与することができる。難燃剤は、炭酸マグネシウム、アルミニウム化合物及びハイドロタルサイト等の難燃性無機粒子、及びテトラブロモビスフェノールA、デカブロモビフェニル、ペンタブロモジフェニルエーテル、塩素系パラフィン、塩素系ポリエチレン、りん酸エステル、ポリりん酸アンモニウム、ポリホウ酸ナトリウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、シリコーン樹脂、りん酸アンモニウム、グアニジン化合物、メラミン化合物等の有機系難燃剤、からなる群より選ばれる少なくとも一つであり得る。第1の複合繊維シートは、難燃剤として、アルミニウム化合物を含んでいることが好ましい。難燃剤の詳細な説明は後述する。アルミニウム化合物としては、例えば、水酸化アルミニウムが挙げられる。
第1の複合繊維シートが難燃剤を含む場合、難燃剤は第1の複合繊維シートを構成している繊維と複合繊維を形成している態様がより好ましい。つまり、この態様では、第1の複合繊維シートにおいて、硫酸バリウム及び難燃剤と繊維とが複合繊維を形成している。難燃剤を繊維と複合化することによって、単に繊維と難燃剤とが混在しているのではなく、水素結合等によって繊維と難燃剤とが結着しているので、離解処理によっても難燃剤が脱落することが少ない。
硫酸バリウムを合成する際の原料として硫酸アルミニウムを用いると、硫酸バリウムだけでなく水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物も合成することが可能である。この方法であれば、硫酸バリウム及びアルミニウム化合物の両方を合成できるので、第1の複合繊維シートの難燃性を容易により向上させることができる。
もちろん、硫酸バリウムと繊維との複合繊維を合成した後に、当該複合繊維の溶液に難燃剤を添加する方法によって、難燃剤を含む第1の複合繊維シートを製造することも可能である。
第1の複合繊維シートが難燃剤を含んでいる場合、合成される硫酸バリウムと難燃剤との重量比は、適宜設定すればよく、例えば、2/1〜6/1が好ましい。第1の複合繊維シートが上記範囲で難燃剤を含有していることにより、第1の複合繊維シートの放射線遮断性を損なうことなく、難燃性を高めることができる。難燃剤については、詳細は後述する。
〔硫酸バリウムと繊維との複合繊維の合成〕
硫酸バリウムと繊維との複合繊維は、一つの好ましい態様において、セルロース繊維等の繊維の存在下で硫酸バリウムを合成することによって得ることができる。繊維表面が、硫酸バリウムの析出における好適な場となるため、硫酸バリウムと繊維との複合繊維を合成しやすいためである。
繊維の存在下で硫酸バリウムを合成する方法としては、例えば、セルロース繊維等の繊維の溶液中で硫酸バリウムを合成する方法が挙げられる。例えば、酸(硫酸等)と塩基とを中和によって反応させたり、無機塩と酸もしくは塩基を反応させたり、無機塩同士を反応させたりする方法によって、硫酸バリウムと繊維との複合繊維を得ることができる。また、例えば、水酸化バリウムと硫酸もしくは硫酸アルミニウムとを反応させることで硫酸バリウムを得たり、硫酸塩の含まれる水溶液中に塩化バリウムを加えて硫酸バリウムを沈殿させたりすることができる。硫酸バリウムを合成する際の原料として硫酸アルミニウムを用いると、硫酸バリウムだけでなく水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物も合成することが可能である。この方法であれば、硫酸バリウム及びアルミニウム化合物と繊維との複合繊維を合成することができる。
また、水酸化バリウムに代表されるアルカリ性の硫酸バリウムの前駆体を原料に用いる場合、あらかじめ繊維を硫酸バリウム前駆体の溶液に分散させておくことで繊維を膨潤させることができるため、効率よく硫酸バリウムと繊維との複合繊維を得ることができる。これらを混合後15分以上撹拌することで繊維の膨潤を促進してから反応を開始することもできるが、混合後すぐに反応を開始してもよい。硫酸バリウムと繊維との複合繊維を得るための反応槽の形態及び撹拌条件に特に制限はなく、例えば、繊維と硫酸バリウム前駆体とを含む溶液を開放型の反応槽中で撹拌、混合して複合繊維を合成してもよいし、繊維と硫酸バリウム前駆体を含む水性懸濁液を反応容器内に噴射することによって合成してもよい。後述するが、硫酸バリウム前駆体の水性懸濁液を反応容器内に噴射する際に、キャビテーション気泡を発生させ、その存在下で硫酸バリウムを合成してもよい。
また、反応容器内にキャビテーション気泡を生じさせるような条件で液体を噴射してもよいし、キャビテーション気泡を生じさせないような条件で噴射してもよい。また、反応容器はいずれの場合においても圧力容器であることが好ましい。なお、本発明における圧力容器とは0.005MPa以上の圧力をかけることのできる容器のことである。キャビテーション気泡を生じさせないような条件の場合、圧力容器内の圧力は、静圧で0.005MPa以上、0.9MPa以下であることが好ましい。
(キャビテーション気泡)
硫酸バリウムと繊維との複合繊維を合成する場合、キャビテーション気泡の存在下で硫酸バリウムを析出させることができる。キャビテーションとは、流体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象であり、空洞現象とも言われる。キャビテーションによって生じる気泡(キャビテーション気泡)は、流体の中で圧力がごく短時間だけ飽和蒸気圧より低くなったとき、液体中に存在する100ミクロン以下のごく微小な「気泡核」を核として生じる。
キャビテーション気泡は、公知の方法によって反応容器内に発生させることができる。例えば、流体を高圧で噴射することによってキャビテーション気泡を発生させること、流体内で高速で攪拌することによってキャビテーションを発生させること、流体内で爆発を生じさせることによってキャビテーションを発生させること、超音波振動子によってキャビテーションを発生させること(バイブトラリー・キャビテーション)等が考えられる。
また、キャビテーション気泡の発生と制御が容易なため、流体を高圧で噴射することによってキャビテーション気泡を発生させることが特に好ましい。この態様では、ポンプ等を用いて噴射液体を圧縮し高速でノズル等を介して噴射することによって、ノズル近傍での極めて高いせん断力と急激な減圧による液体自体の膨張と同時にキャビテーション気泡が発生する。流体噴流による方法は、キャビテーション気泡の発生効率が高く、より強力な崩壊衝撃力を持つキャビテーション気泡を発生させることができる。本発明においては、硫酸バリウムを合成する際に制御されたキャビテーション気泡を存在させるものであって、流体機械に自然発生的に生じる制御不能の害悪をもたらすキャビテーション気泡と明らかに異なる。
原料等の反応溶液をそのまま噴射液体として用いてキャビテーションを発生させることもできるし、反応容器内に何らかの流体を噴射してキャビテーション気泡を発生させることもできる。液体噴流が噴流をなす流体は、流動状態であれば液体、気体、粉体やパルプ等の固体の何れでもよく、またそれらの混合物であってもよい。更に必要であれば上記の流体に、新たな流体として、炭酸ガス等、別の流体を加えることができる。上記流体と新たな流体は、均一に混合して噴射してもよいが、別個に噴射してもよい。
液体噴流とは、液体又は液体の中に固体粒子や気体が分散あるいは混在する流体の噴流であり、パルプや硫酸バリウムの原料スラリーや気泡を含む液体噴流のことをいう。ここで云う気体は、キャビテーションによる気泡を含んでいてもよい。
また、ノズル又はオリフィス管を通じて噴射液を噴射してキャビテーションを発生させる際には、噴射液の圧力(上流側圧力)は0.01MPa〜30MPaであることが望ましく、0.7MPa〜20MPaであることが好ましく、2MPa〜15MPaがより好ましい。上流側圧力が0.01MPa以上であれば、下流側圧力との間で圧力差を得やすく作用効果が大きい。また、30MPa以下であれば、特殊なポンプ及び圧力容器を必要とせずに、消費エネルギーを抑えることができるので、コスト的に有利である。一方、容器内の圧力(下流側圧力)は静圧で0.005MPa〜0.9MPaが好ましい。また、容器内の圧力と噴射液の圧力との比は0.001〜0.5の範囲が好ましい。
また、キャビテーション気泡が発生しないような条件で噴射液を噴射して無機粒子を合成することもできる。具体的には、噴射液の圧力(上流側圧力)を2MPa以下、好ましくは1MPa以下とし、噴射液の圧力(下流側圧力)を開放し、0.05MPa以下とすることがより好ましい。
噴射液の噴流の速度は1m/秒〜200m/秒の範囲であることが望ましく、20m/秒〜100m/秒の範囲であることが好ましい。噴流の速度が1m/秒以上であれば、十分に圧力が低下し、キャビテーションが発生し易い。一方、200m/秒以下であれば、特別な装置を必要とせずに必要な圧力が得られ、コスト的に有利である。
キャビテーションは、硫酸バリウムを析出させる反応容器内に発生させればよい。また、ワンパスで処理することも可能であるが、必要回数だけ循環することもできる。さらに複数の発生手段を用いて並列で、あるいは順列で処理することができる。
キャビテーションを発生させるための液体の噴射は、大気開放の容器の中でなされてもよいが、キャビテーションをコントロールするために圧力容器の中でなされるのが好ましい。
液体噴射によってキャビテーションを発生させる場合、反応溶液の固形分濃度は30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下がより好ましい。このような濃度であると、キャビテーション気泡を反応系に均一に作用させやすくなるためである。また、反応溶液である消石灰の水性懸濁液は、反応効率の点から、固形分濃度が0.1重量%以上であることが好ましい。
硫酸バリウムと繊維との複合繊維を合成する場合、反応液のpHが反応の進行にしたがって変化するようであれば、反応液のpHをモニターすることによって反応を制御することができる。
また、液体の噴射圧力を高めることで、噴射液の流速が増大し、これに伴って圧力が低下し、より強力なキャビテーションが発生させることができる。また、反応容器内の圧力を加圧することで、キャビテーション気泡が崩壊する領域の圧力が高くなり、気泡と周囲の圧力差が大きくなるため気泡は激しく崩壊し衝撃力を大きくすることができる。反応温度は0℃〜90℃であることが好ましく、特に10℃〜60℃であることが好ましい。一般には、融点と沸点の中間点で衝撃力が最大となると考えられることから、水性溶液の場合、50℃前後が好適であるが、それ以下の温度であっても、蒸気圧の影響を受けないため、上記の範囲であれば高い効果が得られる。
界面活性剤を添加することでキャビテーションを発生させるために必要なエネルギーを低減することができる。使用する界面活性剤としては、公知又は新規の界面活性剤、例えば、脂肪酸塩、高級アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸等のアルキレンオキシド付加物等の非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらの単一成分からなるものでも、2種以上の成分の混合物でも良い。添加量は噴射液及び/又は被噴射液の表面張力を低下させるために必要な量であればよい。
繊維を含む溶液中で硫酸バリウムを合成するときに採用する硫酸バリウムの合成方法は、公知の方法によることができる。
また、懸濁液の調製等に水を使用するが、この水としては、通常の水道水、工業用水、地下水、井戸水等を用いることができる他、イオン交換水や蒸留水、超純水、工業廃水、反応液を分離・脱水する際に得られる水を好適に用いることできる。
また、反応槽の反応液を循環させて使用することができる。このように反応液を循環させて、溶液の撹拌を促すことにより、反応効率を上げ、所望の複合繊維を得ることが容易になる。
また、第1の複合繊維シートを製造する際には、硫酸バリウムと繊維との複合繊維に対して、さらに公知の各種助剤を添加することができる。例えば、キレート剤を添加することができ、具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等のポリヒドロキシカルボン酸、シュウ酸等のジカルボン酸、グルコン酸等の糖酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸等のアミノポリカルボン酸及びそれらのアルカリ金属塩、ヘキサメタリン酸、トリポリリン酸等のポリリン酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸及びこれらのアルカリ金属塩、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸アリル等のケトン類、ショ糖等の糖類、ソルビトール等のポリオールが挙げられる。また、表面処理剤としてパルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、アビエチン酸等の樹脂酸、それらの塩、エステル及びエーテル、アルコール系活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル類、アミド系やアミン系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、長鎖アルキルアミノ酸、アミンオキサイド、アルキルアミン、第四級アンモニウム塩、アミノカルボン酸、ホスホン酸、多価カルボン酸、縮合リン酸等を添加することができる。また、必要に応じ分散剤を用いることもできる。この分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アクリル酸−マレイン酸共重合体アンモニウム塩、メタクリル酸−ナフトキシポリエチレングリコールアクリレート共重合体、メタクリル酸−ポリエチレングリコールモノメタクリレート共重合体アンモニウム塩、ポリエチレングリコールモノアクリレート等がある。これらを単独又は複数組み合わせて使用することができる。また、添加のタイミングは合成反応の前でも後でもよい。各種助剤は、合成する硫酸バリウムの量に対して、好ましくは0.001〜20%、より好ましくは0.1〜10%の量で添加することができる。
また、第1の複合繊維シートには、一般に無機填料及び有機填料と呼ばれる粒子、各種繊維(以下、「填料等」という。)を含ませてもよい。例えば、無機填料として、炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム)、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、アルミニウム化合物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クレー(カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン)、タルク、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、二酸化チタン、ケイ酸ナトリウムと鉱酸から製造されるシリカ(ホワイトカーボン、シリカ/炭酸カルシウム複合繊維、シリカ/二酸化チタン複合繊維)、白土、ベントナイト、珪藻土、硫酸カルシウム、ゼオライト、脱墨工程から得られる灰分を再生して利用する無機填料及び再生する過程でシリカや炭酸カルシウムと複合繊維を形成した無機填料等が挙げられる。炭酸カルシウムシリカ複合物としては、炭酸カルシウム及び/又は軽質炭酸カルシウムシリカ複合物以外に、ホワイトカーボンのような非晶質シリカを併用しても良い。有機填料としては、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子、アクリルアミド複合繊維、木材由来の物質(微細繊維、ミクロフィブリル繊維、粉体ケナフ)、変性不溶化デンプン、未糊化デンプン等が挙げられる。繊維としては、セルロース等の天然繊維はもちろん、石油等の原料から人工的に合成される合成繊維、さらには、レーヨン、リヨセル等の再生繊維(半合成繊維)、さらには無機繊維等を制限なく使用することができる。填料等は、合成する硫酸バリウムの量に対して、好ましくは1〜80%、より好ましくは5〜50%の量で添加することができる。
硫酸バリウムと繊維との複合繊維を合成するときの反応条件は特に制限されず、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、合成反応の温度は例えば0℃〜90℃であり、10℃〜70℃とすることが好ましい。反応温度は、反応液の温度を温度調節装置によって制御することができる。0℃以上であれば十分な反応効率が得られコスト面で有利であり、90℃以下であると硫酸バリウム粒子が多くなることを防ぐことができる。
また、硫酸バリウムと繊維との複合繊維を合成するときの反応はバッチ反応とすることもでき、連続反応とすることもできる。一般に、反応後の残存物を排出する便利さから、バッチ反応工程を行うことが好ましい。反応のスケールは特に制限されないが、100L以下のスケールで反応させてもよいし、100L超のスケールで反応させてもよい。反応容器の大きさは、例えば、10L〜100L程度とすることもできるし、100L〜50000L程度としてもよい。
また、反応液の電導度及び/又は反応時間によって反応を制御することができ、具体的には、反応物が反応槽に滞留する時間を調整して制御することができる。その他、反応槽の反応液を攪拌したり、反応を多段反応としたりすることによって反応を制御することもできる。
繊維を含有する溶液中で硫酸バリウムを合成する方法においては、反応生成物である複合繊維が懸濁液として得られるため、必要に応じて、貯蔵タンクに貯蔵したり、濃縮、脱水、粉砕、分級、熟成、分散等の処理をしたりすることができる。これらは公知の工程によることができ、用途やエネルギー効率等を考慮して適宜決定すればよい。例えば濃縮・脱水処理は、遠心脱水機、沈降濃縮機等を用いて行われる。この遠心脱水機の例としては、デカンター、スクリューデカンター等が挙げられる。濾過機又は脱水機を用いる場合についてもその種類に特に制限はなく、一般的なものを使用することができるが、例えば、フィルタープレス、ドラムフィルター、ベルトプレス、チューブプレス等の加圧型脱水機、オリバーフィルター等の真空ドラム脱水機等を好適に用いて硫酸バリウムケーキとすることができる。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。分級の方法としては、メッシュ等の篩、アウトワード型又はインワード型のスリット又は丸穴スクリーン、振動スクリーン、重量異物クリーナー、軽量異物クリーナー、リバースクリーナー、篩分け試験機等が挙げられる。分散の方法としては、高速ディスパーザー、低速ニーダー等が挙げられる。
繊維を含有する溶液中で硫酸バリウムを合成する方法によって得られた複合繊維は、完全に脱水せずに懸濁液の状態で填料や顔料に配合することもできるが、乾燥して粉体とすることもできる。この場合の乾燥機についても特に制限はないが、例えば、気流乾燥機、バンド乾燥機、噴霧乾燥機等を好適に使用することができる。
硫酸バリウムと繊維との複合繊維は、公知の方法によって改質することが可能である。例えば、ある態様においては、その表面を疎水化し、樹脂等との混和性を高めたりすることが可能である。
〔複合繊維シートの製造〕
硫酸バリウムと繊維との複合繊維は、従来公知の方法でシート形状にすればよい。硫酸バリウムと繊維との複合繊維からシートを製造するときに用いる抄紙機(抄造機)としては、例えば、長網抄紙機、丸網抄紙機、ギャップフォーマ、ハイブリッドフォーマ、多層抄紙機、これらの機器の抄紙方式を組合せた公知の抄造機等が挙げられる。抄紙機におけるプレス線圧、後段でカレンダー処理を行う場合のカレンダー線圧は、いずれも操業性や複合繊維シートの性能に支障を来さない範囲内で定めることができる。また、形成されたシートに対して含浸や塗布により、澱粉、各種ポリマー、顔料及びそれらの混合物を付与しても良い。
シート化の際には湿潤及び/又は乾燥紙力剤(紙力増強剤)を添加することができる。これにより、複合繊維シートの強度を向上させることができる。紙力剤としては例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリアミン、エピクロロヒドリン樹脂、植物性ガム、ラテックス、ポリエチレンイミン、グリオキサール、ガム、マンノガラクタンポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアミン、ポリビニルアルコール等の樹脂;上記樹脂から選ばれる2種以上からなる複合ポリマー又は共重合ポリマー;澱粉及び加工澱粉;カルボキシメチルセルロース、グアーガム、尿素樹脂等が挙げられる。紙力剤の添加量は特に限定されない。
また、填料の繊維への定着を促したり、填料及び繊維の歩留を向上させたりするために、高分子ポリマーや無機物を添加することもできる。例えば凝結剤として、ポリエチレンイミン及び第三級及び/又は四級アンモニウム基を含む改質ポリエチレンイミン、ポリアルキレンイミン、ジシアンジアミドポリマー、ポリアミン、ポリアミン/エピクロヒドリン重合体、並びにジアルキルジアリル第四級アンモニウムモノマー、ジアルキルアミノアルキルアクリレート、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミド及びジアルキルアミノアルキルメタクリルアミドとアクリルアミドの重合体、モノアミン類とエピハロヒドリンからなる重合体、ポリビニルアミン及びビニルアミン部を持つ重合体やこれらの混合物等のカチオン性のポリマーに加え、前記ポリマーの分子内にカルボキシル基やスルホン基等のアニオン基を共重合したカチオンリッチな両イオン性ポリマー、カチオン性ポリマーとアニオン性又は両イオン性ポリマーとの混合物等を用いることができる。また歩留剤として、カチオン性又はアニオン性、両性ポリアクリルアミド系物質を用いることができる。また、これらに加えて少なくとも一種以上のカチオンやアニオン性のポリマーを併用する、いわゆるデュアルポリマーと呼ばれる歩留りシステムを適用することもでき、少なくとも一種類以上のアニオン性のベントナイトやコロイダルシリカ、ポリ珪酸、ポリ珪酸もしくはポリ珪酸塩ミクロゲル及びこれらのアルミニウム改質物等の無機微粒子や、アクリルアミドが架橋重合したいわゆるマイクロポリマーといわれる粒径100μm以下の有機系の微粒子を一種以上併用する多成分歩留りシステムであってもよい。特に単独又は組合せで使用するポリアクリルアミド系物質が、極限粘度法による重量平均分子量が200万ダルトン以上である場合、良好な歩留りを得ることができ、好ましくは、500万ダルトン以上であり、更に好ましくは1000万ダルトン以上、3000万ダルトン未満の上記アクリルアミド系物質である場合に非常に高い歩留りを得ることが出来る。このポリアクリルアミド系物質の形態はエマルジョン型でも溶液型であっても構わない。この具体的な組成としては、該物質中にアクリルアミドモノマーユニットを構造単位として含むものであれば特に限定はないが、例えば、アクリル酸エステルの4級アンモニウム塩とアクリルアミドとの共重合物、あるいはアクリルアミドとアクリル酸エステルを共重合させた後、4級化したアンモニウム塩が挙げられる。該カチオン性ポリアクリルアミド系物質のカチオン電荷密度は特には限定されない。
その他、目的に応じて、濾水性向上剤、内添サイズ剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、嵩高剤、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカ等の無機粒子(いわゆる填料)等が挙げられる。各添加材の使用量は特に限定されない。
シートの坪量は、目的に応じて適宜調整できるが、40g/m2〜1200g/m2とすると放射線遮断効果が高く、また、製造時の乾燥負荷が低いため良好である。また、シートの坪量は、60g/m2〜1000g/m2とすることもでき、100g/m2〜600g/m2とすることもできる。
第1の複合繊維シートに、難燃剤を含む材料を、塗布または含侵させることも可能である。また、第1の複合繊維シートを、難燃剤を含む材料によって被覆することも可能である。これにより、第1の複合繊維シートの難燃性をより向上させることができる。
〔放射線遮断材の製造〕
第1の複合繊維シートを複数枚重ね合わせて積層体(多層シート又は多層ボード)とすることによって、放射線遮断材を製造できる。第1の複合繊維シートを積層して用いる場合は、例えば、2枚〜50枚のシートを用いることができ、3枚〜30枚のシートを用いることが好ましく、4枚〜20枚のシートを用いることがさらに好ましい。このように第1の複合繊維シートを重ねた積層体とすることによって、放射線遮断性が大きく向上する。シートを積層する際は、適宜、バインダー等を使用すればよい。バインダーの種類は特に限定されない。例えば、酢酸ビニル系バインダー等のシートの貼り合せに通常使用されるバインダーが挙げられる。
ここで、本明細書において、上記「放射線遮断性」とは、X線及びγ線の透過を防ぐ又はX線及びγ線の透過量を低減させる性質をいう。具体的には、後述する実施例に記載した方法によって測定した放射線遮断材のX線の線量減少率(%)が、好ましくは25%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上、最も好ましくは60%以上もしくは、γ線の線量減少率(%)が、好ましくは2%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上、最も好ましくは15%以上である場合に、その放射線遮断材は放射線遮断性を有しているという。尚、本明細書では、上記「放射線遮断性」を「放射線遮蔽性」と言う場合がある。
さらに、第1の複合繊維シートの積層体に、難燃剤を含む材料を、塗布または含侵させる、第1の複合繊維シートの積層体を、難燃剤を含む材料によって被覆する、または、後述する難燃性シートを第1の複合繊維シートの積層体の片面又は両面に貼り合わせて、難燃性を備えた複合ボードとすることもできる。貼り合わせる難燃性シートは1枚であっても複数であってもよいが、複数の難燃性シートを貼り合わせる場合は、例えば、2〜20枚のシートを用いることができ、2〜15枚のシートを用いることが好ましく、2〜10枚のシートを用いることがさらに好ましい。
また、複合繊維の成形物に後からポリマー等の各種有機物、顔料等の各種無機物を付与してもよい。例えば、シート化したもの(積層したものやボード状のものも含む)に塗工(塗布)することによって所望の物質を表面に積層することが可能である。例えば、澱粉、PVA等のバインダー、サイズ剤等の疎水化剤、有機又は無機の難燃剤等を塗工することができる。さらに、種々の物質をシート(積層したもの及びボード状のものも含む)に含浸することで、より機能を高めることも可能である。
これらのシート、積層物及びボードはさらに加工してハニカム構造等の立体構造にすることも可能である。
〔難燃性シート〕
本発明の一態様に係る放射線遮断材には、難燃性シートをさらに積層させることもできる。難燃性シートは、難燃剤を含み、シート形態のシートである。難燃性シートがさらに積層していることにより、放射線遮断材の難燃性をより向上させることができる。難燃性シートとしては、従来公知の難燃材料を含むシート形状のものであればよいが、難燃剤と繊維との複合繊維シート(第2の複合繊維シート)であることが好ましい。
〔複合繊維〕
難燃剤と繊維との複合繊維についての説明は、上記「第1の複合繊維シート」の項における「複合繊維」の説明において、「硫酸バリウム」を「難燃剤」に読み替えて援用することができる。
第2の複合繊維シート中に含まれている難燃剤と繊維との複合繊維の含有量は、第2の複合繊維シートの全重量に対して、10%以上、100%以下であることが好ましく、25%以上、100%以下であることがより好ましい。第2の複合繊維シートの全重量に対して、5%以上の難燃剤と繊維との複合繊維を含有していることにより、優れた難燃性が得られる。
〔難燃剤〕
難燃剤としては、硫酸バリウム以外の難燃剤を用いればよく、例えば、炭酸マグネシウム、アルミニウム化合物、ハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカが挙げられるが、特に好ましくは、炭酸マグネシウム、アルミニウム化合物、硫酸バリウム、ハイドロタルサイト等の難燃性無機粒子、及びテトラブロモビスフェノールA、デカブロモビフェニル、ペンタブロモジフェニルエーテル、塩素系パラフィン、塩素系ポリエチレン、りん酸エステル、ポリりん酸アンモニウム、ポリホウ酸ナトリウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、シリコーン樹脂、りん酸アンモニウム、グアニジン化合物、メラミン化合物等の有機系難燃剤、からなる群より選ばれる少なくとも一つであり得る。中でも、炭酸マグネシウム、アルミニウム化合物、ハイドロタルサイトがより好ましく、炭酸マグネシウムがさらに好ましい。
また、第1の複合繊維がアルミニウム化合物を含み、前記難燃性シートが炭酸マグネシウムおよび/もしくはアルミニウム化合物および/もしくはハイドロタルサイトを含むことが好ましい。硫酸バリウムを製造する際、アルミニウム化合物も生成する合成方法を採用すると、第1の複合繊維にも、容易に、より強い難燃性を付与できる。第2の複合繊維にも炭酸マグネシウムおよび/もしくはアルミニウム化合物および/もしくはハイドロタルサイトによる強い難燃性が付与されることで、放射線遮断材の難燃性をより向上させることができる。
〔炭酸マグネシウム〕
第2の複合繊維シートの好ましい態様の一つは、炭酸マグネシウムと繊維との複合繊維のシートである。炭酸マグネシウム微粒子の平均一次粒径は好適には50μm未満であるが、平均一次粒径が30μm以下の炭酸マグネシウムとすることもできる。また、好ましい態様において、炭酸マグネシウム微粒子の平均一次粒子径は10nm〜3μm程度とすることも可能である。
また、炭酸マグネシウムは、微細な一次粒子が凝集した二次粒子の形態を取ることもあり、用途に応じた二次粒子を生成させることができるし、粉砕によって凝集塊を細かくすることもできる。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。
炭酸マグネシウムは、例えば、酸化マグネシウム、マグネサイト、ドロマイト、ハンタイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ブルサイト及びこれらの混合物からなる群より選択される原料から合成することができる。中でも水酸化マグネシウムから合成されることがより好ましい。
炭酸マグネシウムと繊維との複合繊維シートの製造方法としては、例えば、繊維を含む溶液において炭酸マグネシウムを合成する方法が挙げられる。酸化マグネシウム等に代表される水酸化マグネシム前駆体から水酸化マグネシムを得る時点で反応溶液中に繊維を分散させておくことができる。また、水酸化マグネシウムから炭酸マグネシウムを得る工程で繊維を分散させておくこともできる。いずれの場合においても、反応溶液がアルカリ性であるため、反応液に浸漬することで繊維を膨潤させ、効率よく炭酸マグネシウムと繊維の複合繊維を得ることができる。繊維を分散させた後、すぐに炭酸化反応を開始することもできるし、15分以上撹拌することでより繊維の膨潤を促してから炭酸化反応を開始することもできる。例えば、水酸化マグネシウムを含む水性懸濁液を反応容器内に噴射することによって炭酸マグネシウムを合成してもよい。後述するが、水酸化マグネシウムの水性懸濁液を反応容器内に噴射する際に、キャビテーション気泡を発生させ、その存在下で炭酸マグネシウムを合成することが好ましい態様である。
繊維を含む溶液中で炭酸マグネシウム微粒子を合成する方法において、炭酸マグネシウムの合成方法は、公知の方法によることができる。例えば、水酸化マグネシウムと炭酸ガスから重炭酸マグネシウムを合成し、重炭酸マグネシウムから正炭酸マグネシウムを経て塩基性炭酸マグネシウムを合成することができる。炭酸マグネシウムの合成方法によって重炭酸マグネシウム、正炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム等を得ることができるが、塩基性炭酸マグネシムにすることが特に好ましい。塩基性炭酸マグネシムは他の炭酸マグネシウムに比べて安定性が比較的高く、また、柱状(針状)結晶である正炭酸マグネシウムよりも繊維に定着しやすいからである。一方、繊維の存在下で塩基性炭酸マグネシウムにまで化学反応させることで、繊維表面をうろこ状等に被覆した炭酸マグネシウムと繊維の複合繊維を得ることができる。
第2の複合繊維シートの好ましい態様として、複合繊維シートにおける繊維表面の15%以上が炭酸マグネシウムによって被覆されている態様がある。また、複合繊維シートにおいて、炭酸マグネシウムによる繊維の被覆率(面積率)は、25%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましい。また、繊維を含有する溶液中で炭酸マグネシウムを合成する方法によれば、被覆率が60%以上、80%以上の複合繊維を好適に製造できる。被覆率の上限値は用途に応じて適宜設定すればよいが、例えば、100%、90%、80%である。
炭酸マグネシウムと繊維とを複合繊維化しておくと、単に炭酸マグネシウムを繊維と混合した場合と比較して、炭酸マグネシウムが製品に歩留り易いだけでなく、凝集せずに均一に分散した製品を得ることができる。すなわち、炭酸マグネシウムと繊維との複合繊維の製品への歩留り(投入した炭酸マグネシウムが製品中に残る重量割合)を60%以上とすることが可能であり、70%以上や90%以上とすることもできる。
また、炭酸マグネシウムを合成する際に、キャビテーション気泡を存在させることが好ましい。この場合、炭酸マグネシウムの合成ルートの全てにおいてキャビテーション気泡を存在させる必要はなく、少なくとも1つの段階でキャビテーション気泡を存在させればよい。
例えば、塩基性炭酸マグネシウムを製造する場合、マグネシウム源として酸化マグネシウムMgOを使用し、酸化マグネシウムから得られた水酸化マグネシウムMg(OH)2に炭酸ガスCO2を吹き込んで重炭酸マグネシウムMg(HCO3)2を得て、重炭酸マグネシウムから正炭酸マグネシウムMgCO3・3H2Oを経て塩基性炭酸マグネシウムが得られる。炭酸マグネシウムを合成する際、繊維を存在させておくことによって、繊維上に塩基性炭酸マグネシウムを合成することができる。炭酸マグネシウムのいずれかの合成段階でキャビテーション気泡を存在させておくことが好ましく、炭酸マグネシウムを合成する際にキャビテーション気泡を存在させることがより好ましい。好ましい態様においては、水酸化マグネシウムから重炭酸マグネシウムを合成する段階においてキャビテーション気泡を存在させることができる。また別の態様においては、重炭酸マグネシウム又は正炭酸マグネシウムから塩基性炭酸マグネシウムを合成する段階においてキャビテーション気泡を存在させることができる。さらに別の態様においては、塩基性炭酸マグネシムを合成後、熟成させるときに存在させることができる。
一般に、炭酸ガス法によって炭酸マグネシウム製造する際の反応容器(炭酸化反応機:カーボネーター)として、ガス吹き込み型カーボネーター及び機械攪拌型カーボネーターが知られている。これらの中では、機械攪拌型カーボネーターがより好ましい。機械攪拌型カーボネーターは、カーボネーター内部に攪拌機を設け、その攪拌機の近くに炭酸ガスを導入することによって、炭酸ガスを細かな気泡とする。この仕組みにより、気泡の大きさを均一かつ微細に制御することが容易である。これにより、炭酸ガスを用いた合成における反応効率を向上させている(『セメント・セッコウ・石灰ハンドブック』技報堂出版、1995年、495頁)。ガス吹き込み型カーボネーターでは、消石灰懸濁液(石灰乳)を入れた炭酸化反応槽に炭酸ガスを吹き込み、消石灰と炭酸ガスとを反応させる。
また、キャビテーション気泡の存在下で炭酸マグネシウムを合成することがより好ましい。反応液の濃度が高かったり炭酸化反応が進んだりして反応液の抵抗が大きくなっても、十分に撹拌して、炭酸ガスを微細化できるからである。そのため、炭酸化反応を的確に制御でき、エネルギーロスを防ぐことができる。また、溶解性が低い水酸化マグネシウム残渣は沈降が速いために、常に底部に滞留しやすいが、キャビテーション気泡の存在下で合成すれば、ガス吹込口が塞がれることを防ぐことができる。
従って、効率的に炭酸化反応を進行させ、均一な炭酸マグネシウム微粒子を製造することが可能になる。特に噴流キャビテーションを用いることで、羽根などの機械的な攪拌機なしに、十分な攪拌を行うことができる。また、従来公知の反応容器を用いることができ、もちろん、上述したようなガス吹き込み型カーボネーターや機械攪拌型カーボネーターを問題なく使用することができ、これらの容器にノズルなどを用いた噴流キャビテーションを組合せてもよい。
炭酸マグネシウムを合成するとき、水酸化マグネシウムの水性懸濁液の固形分濃度は、より良好な反応効率を達成でき、かつ、製造コストを抑制する観点から、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上である。また、当該固形分濃度は、流動性が良好な状態で反応させて、より良好な反応効率を達成する観点から、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下程度である。キャビテーション気泡の存在下で炭酸マグネシウムを合成する態様においては、固形分濃度の高い懸濁液(スラリー)を用いても、反応液と炭酸ガスをより好適に混合することができる。
水酸化マグネシウムを含む水性懸濁液としては、一般に用いられるものを使用でき、例えば、水酸化マグネシウムを水に混合して調製したり、酸化マグネシウムを水に添加して調製したりすることができる。酸化マグネシウムから水酸化マグネシウムのスラリーを調製する際の条件は特に制限されないが、例えば、MgOの濃度は0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、温度は20〜100℃、好ましくは30〜100℃とすることができる。また、反応時間は、例えば、5分〜5時間(好ましくは2時間以内)とすることが好ましい。装置はバッチ式であっても連続式であってもよい。なお、水酸化マグネシウムスラリーの調製と炭酸化反応は、別々の装置を用いてもよく、また、1つの反応槽で行ってもよい。
〔アルミニウム化合物〕
第2の複合繊維シートは、アルミニウム化合物と繊維との複合繊維シートであることも好ましい。アルミニウム化合物の合成法は種々あり、アルミニウム塩が含まれる物質にアルカリ溶液を添加することで合成できる。例えば、硫酸アルミニウムに水酸化ナトリウムを添加することで得ることができる。また、硫酸バリウムを合成する際の原料として硫酸アルミニウムを用いると、硫酸バリウムだけでなく水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物も同時に合成することが可能である。この方法であれば、硫酸バリウム及びアルミニウム化合物の両方を同時に合成できるので、複合繊維シートの難燃性を容易により向上させることができる。なお、本発明の一態様として、第1の複合繊維シートを硫酸バリウム及びアルミニウム化合物の両方を同時に合成する方法で製造し、同様の方法によって得るシートをさらに積層させた形態は、硫酸バリウム及びアルミニウム化合物の複合繊維シートが積層したものとなるので、第1の複合繊維シートを積層させたものに該当するといえる。
〔ハイドロタルサイト〕
一般に、ハイドロタルサイトは、[M2+ 1−xM3+ x(OH)2][An− x/n・mH2O](式中、M2+は2価の金属イオンを、M3+は3価の金属イオンを表し、An− x/nは層間陰イオンを表す。また0<x<1であり、nはAの価数、0≦m<1である)という一般式で示される。ここで、2価の金属イオンであるM2+は、例えば、Mg2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Fe2+、Ca2+、Ba2+、Cu2+、Mn2+等、3価の金属イオンであるM3+は、例えば、Al3+、Fe3+、Cr3+、Ga3+等、層間陰イオンであるAn−は、例えば、OH−、Cl−、CO3 −、SO4 −等のn価の陰イオンを挙げることができ、xは一般に0.2〜0.33の範囲である。結晶構造は、正の電荷をもつ正八面体のbrucite単位が並んだ二次元基本層と負の電荷を持つ中間層からなる積層構造をとっている。
ハイドロタルサイトは、その陰イオン交換機能を生かした様々な用途への展開、例えば、イオン交換材、吸着剤、脱臭剤等の用途に使用されてきた。また、その他、構成する金属イオンの組み合わせを生かし、各構成金属イオンが良好な混合状態にあるハイドロタルサイトを加熱脱水し、又は、さらに加熱焼成することにより、均一な組成の複合酸化物を容易に得られ、触媒用途等に使用する例等も見られる。
第2の複合繊維シートにおけるハイドロタルサイトの比率は、10重量%以上とすることが可能であり、20重量%以上とすることもでき、好ましくは40重量%以上とすることもできる。ハイドロタルサイトと繊維との複合繊維の灰分は、JIS P 8251:2003に従って測定することができる。ハイドロタルサイトと繊維との複合繊維シートの灰分は10重量%以上とすることが可能であり、20重量%以上とすることもでき、好ましくは40重量%以上とすることができる。又はイドロタルサイトと繊維との複合繊維シートは、灰分中、マグネシウム又は亜鉛を10重量%以上含むことが好ましく、40%以上含むことがより好ましい。灰分中のマグネシウム又は亜鉛の含有量は、蛍光X線分析により定量することができる。
第2の複合繊維シートの好ましい態様として、複合繊維シートにおける繊維表面の15%以上がハイドロタルサイトによって被覆されている態様がある。また、複合繊維シートにおいて、ハイドロタルサイトによる繊維の被覆率(面積率)は、25%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましい。また、繊維を含有する溶液中でハイドロタルサイトを合成する方法によれば、被覆率が60%以上、80%以上の複合繊維を好適に製造できる。被覆率の上限値は用途に応じて適宜設定すればよいが、例えば、100%、90%、80%である。また、本発明の一態様に係る放射線遮断材が備えるハイドロタルサイトと繊維の複合繊維シートは、好ましい態様において、ハイドロタルサイトが繊維の外表面やルーメンの内側に定着するだけでなく、ミクロフィブリルの内側にも生成することが電子顕微鏡観察の結果から明らかとなっている。
ハイドロタルサイトと繊維とを複合繊維化しておくと、単にハイドロタルサイトを繊維と混合した場合と比較して、ハイドロタルサイトが製品に歩留り易いだけでなく、凝集せずに均一に分散した製品を得ることができる。すなわち、第2の複合繊維シートによれば、ハイドロタルサイトと繊維の複合繊維の製品への歩留り(投入したハイドロタルサイトが製品中に残る重量割合)を65%以上とすることが可能であり、70%以上や85%以上とすることもできる。
ハイドロタルサイトと繊維とを複合繊維化する方法としては、例えば、繊維の存在下で溶液中においてハイドロタルサイトを合成することによって、ハイドロタルサイトと繊維の複合繊維を製造する方法が挙げられる。
ハイドロタルサイトの合成方法は公知の方法によることができる。例えば、反応容器内に中間層を構成する炭酸イオンを含む炭酸塩水溶液とアルカリ溶液(水酸化ナトリウム等)に繊維を浸漬し、次いで、酸溶液(基本層を構成する二価金属イオン及び三価金属イオンとを含む金属塩水溶液)を添加し、温度、pH等を制御して共沈反応により、ハイドロタルサイトを合成する。また、反応容器内において、酸溶液(基本層を構成する二価金属イオン及び三価金属イオンを含む金属塩水溶液)に繊維を浸漬し、次いで、中間層を構成する炭酸イオンを含む炭酸塩水溶液とアルカリ溶液(水酸化ナトリウム等)を滴下し、温度、pH等を制御して共沈反応により、ハイドロタルサイトを合成することもできる。常圧での反応が一般的ではるが、それ以外にも、オートクレーブ等を使用しての水熱反応により得る方法もある(特開昭60−6619号公報)。
基本層を構成する二価金属イオンの供給源として、マグネシウム、亜鉛、バリウム、カルシウム、鉄、銅、コバルト、ニッケル、マンガンの各種塩化物、硫化物、硝酸化物、硫酸化物を用いることができる。また、基本層を構成する三価金属イオンの供給源として、アルミニウム、鉄、クロム、ガリウムの各種塩化物、硫化物、硝酸化物、硫酸化物を用いることができる。
また、懸濁液の調製等に水を使用するが、この水としては、通常の水道水、工業用水、地下水、井戸水等を用いることができる他、イオン交換水や蒸留水、超純水、工業廃水、製造工程中に得られる水を好適に用いることできる。
層間陰イオンとして陰イオンとして炭酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等を用いることができる。炭酸イオンを層間陰イオンとする場合、炭酸ナトリウムが供給源として使用される。ただし炭酸ナトリウムは、二酸化炭素(炭酸ガス)を含む気体で代替可能で、実質的に純粋な二酸化炭素ガスや、他のガスとの混合物であってもよい。例えば、製紙工場の焼却炉、石炭ボイラー、重油ボイラー等から排出される排ガスを二酸化炭素含有気体として好適に用いることができる。その他にも、石灰焼成工程から発生する二酸化炭素を用いて炭酸化反応を行うこともできる。
〔難燃剤と繊維との複合繊維の合成〕
難燃剤として無機物を用いる場合、難燃剤と繊維との複合繊維は、一つの好ましい態様において、セルロース繊維等の繊維の存在下で難燃剤を合成することによって得ることができる。繊維表面が、難燃剤の析出における好適な場となるため、繊維と難燃剤との複合繊維を合成しやすいためである。
一つの好ましい態様として、第2の複合繊維シートにおいて繊維と複合化している難燃剤が粒子状である場合、その難燃性粒子の平均一次粒子径を、例えば、1.5μm以下とすることができるが、平均一次粒子径を1200nm以下又は900nm以下にすることもでき、さらには平均一次粒子径が200nm以下や150nm以下にすることもできる。また、難燃剤の平均一次粒子径は10nm以上とすることも可能である。なお、平均一次粒子径は電子顕微鏡写真で測定することができる。
また、第2の複合繊維シートにおける難燃剤は、微細な一次粒子が凝集した二次粒子の形態を取ることもあり、熟成工程によって用途に応じた二次粒子を生成させることができるし、粉砕によって凝集塊を細かくすることもできる。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。
第2の複合繊維シートを構成する難燃剤が粒子状である場合、その難燃性粒子の平均粒子径、形状等は、電子顕微鏡による観察により確認することができる。さらに、難燃剤の合成条件等を調整することによって、種々の大きさ及び形状を有する難燃剤を繊維と複合化することができる。
また、繊維と難燃剤との複合繊維は、従来公知の方法でシート形状にすればよい。
また、第2の複合繊維シートには、第1の複合繊維シートと同様に、上述した添加剤及び填料を添加することができる。
第2の複合繊維シートの製造方法としては、例えば、繊維を含む溶液において難燃剤を合成する方法が挙げられる。例えば、アルカリ性の難燃剤の前駆体を原料に用いる場合、あらかじめ繊維を前駆体の溶液に分散させておくことで繊維を膨潤させることができるため、効率よく難燃剤と繊維との複合繊維を得ることができる。これらを混合後15分以上撹拌することで繊維の膨潤を促進してから反応を開始することもできるが、混合後すぐに反応を開始してもよい。複合繊維を得るための反応槽の形態及び撹拌条件に特に制限はなく、例えば、繊維と前駆体とを含む溶液を開放型の反応槽中で撹拌、混合して複合繊維を合成しても良いし、繊維と前駆体を含む水性懸濁液を反応容器内に噴射することによって合成してもよい。後述するが、前駆体の水性懸濁液を反応容器内に噴射する際に、キャビテーション気泡を発生させ、その存在下で難燃剤を合成してもよい。
また、反応容器内にキャビテーション気泡を生じさせるような条件で液体を噴射してもよいし、キャビテーション気泡を生じさせないような条件で噴射してもよい。また、反応容器はいずれの場合においても圧力容器であることが好ましい。なお、本発明における圧力容器とは0.005MPa以上の圧力をかけることのできる容器のことである。キャビテーション気泡を生じさせないような条件の場合、圧力容器内の圧力は、静圧で0.005MPa以上、0.9MPa以下であることが好ましい。尚、「キャビテーション気泡」については、上記「第1の複合繊維シート」の項で説明したとおりであるので、記載を省略する。
〔第2の複合繊維シートの製造〕
繊維と難燃剤との複合繊維から第2の複合繊維シートを製造する方法については、上記「第1の複合繊維シート」の項で説明したとおりである。
シートの坪量は、目的に応じて適宜調整できるが、40g/m2〜1200g/m2とすると難燃効果が高く、また、製造時の乾燥負荷が低いため良好である。また、シートの坪量は、60g/m2〜1000g/m2とすることもでき、100g/m2〜600g/m2とすることもできる。
また、以上に示した配合・乾燥・成形において、1種類の複合繊維のみを用いることもできるし、2種類以上の複合繊維を混合して用いることもできる。2種類以上の複合繊維を用いる場合は、予めそれらを混合したものを用いることもできるし、それぞれを配合・乾燥・成形したものを後から混合することもできる。
本発明によって得られた積層体は、その放射線遮蔽性を活かして種々の用途に用いることができ、例えば、紙、繊維、セルロース系複合材料、フィルター材料、塗料、プラスチックやその他の樹脂、ゴム、エラストマー、セラミック、ガラス、タイヤ、建築材料(アスファルト、アスベスト、セメント、ボード、コンクリート、れんが、タイル、合板、繊維板、壁材、天井材、パーティションボード、壁紙など)、各種担体(触媒担体、医薬担体、農薬担体、微生物担体など)、吸着剤(不純物除去、消臭、除湿など)、しわ防止剤、粘土、研磨材、改質剤、補修材、断熱材、耐熱材、放熱材、防湿材、撥水材、耐水材、遮光材、シーラント、シールド材、防虫剤、接着剤、インキ、化粧料、医用材料、ペースト材料、変色防止剤、食品添加剤、錠剤賦形剤、分散剤、保形剤、保水剤、濾過助材、精油材、油処理剤、油改質剤、電波吸収材、絶縁材、遮音材、防振材、半導体封止材、放射線遮断材、化粧品、肥料、飼料、香料、塗料・接着剤用添加剤、衛生用品(使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁者用パッド、母乳パッドなど)などに広く使用することができる。また、前記用途における各種充填剤、コーティング剤などに用いることができる。これらの中でも、難燃性能と物質の吸脱着性能に優れるという点から、特に建築材料(壁材、天井材、パーティションボード、壁紙など)に好適に用いることができる。
〔まとめ〕
本発明は、これに制限されるものでないが、以下の発明を包含する。
(1)硫酸バリウムと繊維との複合繊維であり、シート形態である第1の複合繊維シートが複数積層している、放射線遮断材。
(2)前記繊維の表面の15%以上が硫酸バリウムによって被覆されている、(1)に記載の放射線遮断材。
(3)前記硫酸バリウムの平均一次粒子径が1.5μm以下である、(1)又は(2)に記載の放射線遮断材。
(4)前記第1の複合繊維シートの前記繊維がセルロース繊維である、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の放射線遮断材。
(5)前記第1の複合繊維シートの前記繊維と前記硫酸バリウムとの重量比が5/95〜95/5である、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の放射線遮断材。
(6)前記第1の複合繊維シートが難燃剤を含む、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の放射線遮断材。
(7)前記難燃剤を含む材料を、塗布または含侵させた、(6)に記載の放射線遮断材。
(8)前記難燃剤を含む材料によって被覆されている、(6)に記載の放射線遮断材。
(9)難燃剤を含み、シート形態である、難燃性シートがさらに積層している、(1)〜(8)の何れか1項に記載の放射線遮断材。
(10)前記難燃性シートが、最も外側の層のうち少なくとも一つの層として積層している、(9)に記載の放射線遮断材。
(11)前記難燃剤が、炭酸マグネシウム、アルミニウム化合物及びハイドロタルサイトからなる群より選ばれる少なくとも一つである、(6)〜(10)のいずれか1つに記載の放射線遮断材。
(12)前記難燃剤は粒子状であり、当該粒子の平均一次粒子径が1.5μm以下である、(6)〜(11)のいずれか1つに記載の放射線遮断材。
(13)前記難燃性シートが、前記難燃剤と繊維との第2の複合繊維シートである、(9)に記載の放射線遮断材。
(14)前記第2の複合繊維シートが、前記繊維の表面の15%以上が前記難燃剤によって被覆されている、(13)に記載の放射線遮断材。
(15)前記第2の複合繊維シートの前記繊維は、セルロース繊維である、(13)又は(14)に記載の放射線遮断材。
(16)前記第2の複合繊維シートの前記繊維と前記難燃剤との重量比が5/95〜95/5である、(13)〜(15)のいずれか1つに記載の放射線遮断材。
(17)前記第1の複合繊維シートがアルミニウム化合物を含み、前記第2の複合繊維シートが炭酸マグネシウムを含む、(13)〜(16)のいずれか1つに記載の放射線遮断材。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
具体的な実験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の具体例に限定されるものではない。また、本明細書において特に記載しない限り、濃度や部等は重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
〔実験1:硫酸バリウムと繊維との複合繊維の合成と評価〕
(1)サンプル1−1:硫酸バリウムとパルプ繊維との複合繊維
1%のパルプスラリー(広葉樹晒クラフトパルプ/針葉樹晒クラフトパルプ=8/2、カナダ標準濾水度CSF=約80mL、平均繊維長:約1.2mm、スラリー重量500g)と水酸化バリウム八水和物(和光純薬、5.82g)とをスリーワンモーター(1000rpm)で撹拌しながら混合後、硫酸(和光純薬、2%水溶液を88g)をペリスターポンプで8g/minで滴下した。滴下終了後、そのまま30分間撹拌を継続してサンプル1−1を得た。た。本実施例において、以下、上記「広葉樹晒クラフトパルプ」を、「LBKP」と省略して記載する。また、上記「針葉樹晒クラフトパルプ」を、「NBKP」と省略して記載する。LBKP及びNBKPは、共に日本製紙製のものを使用した。上記「カナダ標準濾水度」は、シングルディスクリファイナー(SDR)を用いて調製した。また、用いたパルプスラリー中のパルプの平均繊維長はファイバーテスター(Lorentzen&Wettre社)で測定した。
(2)サンプル1−2:硫酸バリウムとアラミド繊維との複合繊維
繊維分として0.8%のアラミド繊維(トワロンRD−1094、帝人、平均繊維長:約1.3mm、スラリー重量625g)のスラリーを用いた他は、サンプル1−1と同様に合成してサンプル1−2を得た。
(3)サンプル1−3:硫酸バリウム及び水酸化アルミニウムと繊維との複合繊維
1%のパルプスラリー(LBKP、CSF=500mL、平均繊維長:約0.7mm、スラリー重量1300g)と水酸化バリウム八水和物(和光純薬、57g)とをスリーワンモーター(800rpm)で撹拌しながら混合後、硫酸アルミニウム(硫酸バンド、77g)をペリスターポンプで2g/minで滴下した。滴下終了後、そのまま30分間撹拌を継続してサンプル1−3を得た。
(4)サンプル1−4:硫酸バリウム及び水酸化アルミニウムと繊維との複合繊維
容器(マシンチェスト、容積:4m3)に2%のパルプスラリー(LBKP/NBKP=8/2、CSF=390mL、平均繊維長:約1.3mm、固形分25kg)と水酸化バリウム八水和物(日本化学工業、75kg)とを投入して混合後、ペリスターポンプを用いて硫酸アルミニウム(硫酸バンド、98kg)を約500g/minで滴下した。滴下終了後、そのまま30分間撹拌を継続してサンプル1−4を得た。
(5)サンプル1−5:硫酸バリウム及び水酸化アルミニウムと繊維との複合繊維
容器(マシンチェスト、容積:30m3)に1.5%のパルプスラリー(LBKP/NBKP=8/2、CSF=416mL、平均繊維長:約1.3mm、固形分300kg)と水酸化バリウム八水和物(日本化学工業、1250kg)とを投入して混合後、モーノポンプを用いて硫酸アルミニウム(硫酸バンド8%アルミナ、1752kg)を約34kg/minで滴下した。滴下終了後、そのまま30分間撹拌を継続してサンプル1−5を得た。
(6)サンプル1−6:硫酸バリウムと繊維の複合繊維
1%のパルプスラリー(LBKP、CSF=490mL、平均繊維長:約0.7mm、固形分140g)と水酸化バリウム八水和物(和光純薬、140g)とを含む水性懸濁液を準備した。この水性懸濁液14Lを、45L容のキャビテーション装置に入れ、反応溶液を循環させながら、反応容器中に硫酸(和光純薬、2%水溶液を1280g)をペリスターポンプで50g/minで滴下した。
複合繊維の合成においては、図1に示すように反応溶液を循環させて反応容器内に噴射することよって、反応容器内にキャビテーション気泡を発生させた。具体的には、ノズル(ノズル径:1.5mm)を介して高圧で反応溶液を噴射してキャビテーション気泡を発生させたが、噴流速度は約70m/sであり、入口圧力(上流圧)は7MPa、出口圧力(下流圧)は0.3MPaだった。
硫酸滴下終了後、反応容器内の圧力を開放してキャビテーションの発生を停止させ、そのまま30分間、装置内で反応液を循環させてサンプル1−6を得た。
(7)サンプル1−7:炭酸マグネシウムと繊維との複合繊維
水酸化マグネシウム5250g(宇部マテリアルズ、UD653)とクラフトパルプ3500g(LBKP(CSF=500mL、平均繊維長=0.76mm))とを水中に添加して水性懸濁液(170L)を準備した。
図18に示すように、この水性懸濁液をキャビテーション装置(500L容)に入れ、反応溶液を循環させながら、反応容器中に炭酸ガスを吹き込んで炭酸ガス法によって炭酸マグネシウム微粒子と繊維との複合繊維を合成した。反応開始温度は約40℃、炭酸ガスは市販の液化ガスを供給源とし、炭酸ガスの吹き込み量は20L/minとした。反応液のpHが約7.8になった段階でCO2の導入を停止し(反応前のpHは10.3)、その後30分間、キャビテーションの発生と装置内でのスラリーの循環を続け、炭酸マグネシウム微粒子とパルプ繊維との複合繊維を得た(サンプル1−7)。
複合繊維の合成においては、図18に示すように反応溶液を循環させて反応容器内に噴射することよって、反応容器内にキャビテーション気泡を発生させた。具体的には、ノズル(ノズル径:1.5mm)を介して高圧で反応溶液を噴射してキャビテーション気泡を発生させたが、噴流速度は約70m/sであり、入口圧力(上流圧)は7MPa、出口圧力(下流圧)は0.3MPaだった。
<複合繊維の評価>
得られた複合繊維の繊維:無機粒子の重量比(灰分)は、ろ紙を用いて複合繊維スラリー(固形分換算で3g)を吸引濾過した後、残渣をオーブンで乾燥し(105℃、2時間)、さらに525℃で有機分を燃焼させ、燃焼前後の重量から算出した。
尚、複合繊維が複数種類の無機粒子を含んでいるサンプル1−3、1−4及び1−5については、繊維:複数種類の無機粒子の合計の重量比を表している。
また、各複合繊維サンプルをそれぞれエタノールで洗浄後、電子顕微鏡によって観察をした(図2〜8)。その結果、いずれのサンプルにおいても繊維表面を無機物質が覆い、自己定着している様子が観察された。繊維に定着している無機粒子の多くは板状であり、サイズが小さいものは不定形の粒子として観察された。観察の結果見積もられた各複合繊維サンプルの無機粒子の一次粒子径は、下表(表1)のとおりだった。
〔実験2:複合繊維シートの製造と評価〕
(1)シート2−1及びシート2−2:第1の複合繊維のシート(第1の複合繊維)
実験1(1)及び実験1(2)で得られた複合繊維(サンプル1−1及びサンプル1−2)をろ紙で吸引濾過した残渣を、水道水を用いて濃度約0.2%のスラリーに調製した。このスラリーをJIS P 8220−1:2012に規定される標準離解機で5分間離解後、JIS P 8222:1998に準じて150メッシュのワイヤーを用いて坪量60g/m2の手抄きシートを作製した。
得られた手抄きシートについて、電子顕微鏡観察と灰分測定を行った。図9(サンプル2−1)及び図10(サンプル2−2)に結果を示すが、手抄きシートの表面を電子顕微鏡にて観察したところ、繊維表面に無機物質がしっかりと自己定着している様子が観察された。
(2)シート2−3:クラフトパルプ(KP)のみのシート(2−4の比較例)
KPのみを分散させた濃度約1%のスラリー(LBKP/NBKP=8/2、CSF=390mL、平均繊維長:1.3mm)にカチオン性歩留剤(ND300、ハイモ)とアニオン性歩留剤(FA230、ハイモ)を対固形分で100ppmずつ添加して、長網抄紙機を用いてシートを製造した。
(3)シート2−4:硫酸バリウム及び水酸化アルミニウムと繊維との複合繊維のシート
実験1(4)で得られた複合繊維(サンプル1−4、濃度:1%)に、カチオン性の歩留剤(ND300、ハイモ)とアニオン性の歩留剤(FA230、ハイモ)を対固形分で100ppmずつ添加して紙料スラリーを調製した。次いで、長網抄紙機を用いて、抄速10m/minの条件でこの紙料スラリーからシートを製造した。
得られた複合繊維シートについて、電子顕微鏡を用いて観察した。サンプル2−4の複合シートにおいては、紙の表面や内部を硫酸バリウム及び水酸化アルミニウムが密に被覆・充填していることを確認できた(図11)。
複合繊維シートの特性を測定した結果を下表(表2)に示す。複合繊維を原料に用いることで、灰分約67%のシートを抄紙マシンで製造し、得られたシートを連続的に巻取り、ロール化することができた。このときの歩留は、紙料歩留・灰分歩留ともに96%以上と非常に高かった。また、得られた複合繊維シート(サンプル2−4)は、パルプのみのシート(サンプル2−3)に比べて不透明度や密度、透気抵抗度が高かった。
<測定方法>
・坪量:JIS P 8124:1998
・厚さ:JIS P 8118:1998
・密度:厚さ、坪量の測定値より算出
・灰分:JIS P 8251:2003
・白色度:JIS P 8212:1998
・不透明度:JIS P 8149:2000
・比散乱係数:TAPPI T425(ISO 9416)に規定される式により算出した。
・透気抵抗度:JIS P 8117:2009
・平滑度:JIS P 8155:2010
・L&W曲げこわさ:ISO 2493に準じて、L&W Bending Tester(Lorentzen&Wet
tre社製)で、曲げ角度が15度の曲げこわさを測定した。
・裂断長:JIS P 8113:2006
(4)シート2−5−1:硫酸バリウム及び水酸化アルミニウムと繊維との複合繊維のシート
実験1(5)で得られた複合繊維(サンプル1−5、濃度:1%)に、カチオン性の歩留剤(RX5202、ハイモ)を対固形分で50ppm添加して紙料スラリーを調製した。次いで、5層円網抄紙機を用いて、抄速20m/min、抄幅980mmの条件でこの紙料スラリーからシートを製造した。丸網1層で107g/m2のシートを作り、それらを5層重ねあわせることで534g/m2、灰分45%のシートを得た。
(5)シート2−5−2:硫酸バリウム及び水酸化アルミニウムと繊維との複合繊維のシート
添加した歩留剤の量を対固形分で150ppmとし、円網1層につき64g/m2のシートを作り、それらを5層重ねあわせることで320g/m2のシートとした以外はシート2−5−1と同様にしてシート2−5−2を得た(シート灰分55%)。
得られた複合繊維シート(シート2−5−1、シート2−5−2)について、電子顕微鏡を用いて観察したところ、紙の表面や内部を硫酸バリウム及び水酸化アルミニウムが密に被覆・充填していることを確認できた(図12、13)。
複合繊維シートの特性を実験2(3)と同様の方法で測定した結果を下表(表3)に示す。複合繊維を原料に用いることで、灰分45〜55%のシートを抄紙マシンで製造し、得られたシートを連続的に巻取り、ロール化することができた。また、得られた複合繊維シートは、不透明度や密度、透気抵抗度が高かった。
(6)シート2−7:炭酸マグネシウムと繊維との複合繊維のシート
実験1(7)で得られた複合繊維(サンプル1−7、濃度:1%)に、カチオン性の歩留剤(ND300、ハイモ)とアニオン性の歩留剤(FA230、ハイモ)とを対固形分で100ppmずつ添加して紙料スラリーを調製した。次いで、長網抄紙機を用いて、抄速10m/minの条件でこの紙料スラリーからシートを製造した(坪量:約190g/m2、灰分:約46%)。得られた複合繊維シートについて、電子顕微鏡を用いて観察したところ、紙の表面や内部を炭酸マグンネシウムが密に被覆・充填していることを確認できた(図14)。
〔実験3:複合繊維ボードの作製〕
(1)複合ボードA:硫酸バリウム及び水酸化アルミニウム複合繊維の複合ボード
実験2(3)で得られたシート2−4(坪量:180g/m2)を10枚、20枚、又は40枚、酢酸ビニル系バインダーで貼り合せて、各複合ボードを作製した(複合ボードA−1、A−2、A−3)。
(2)複合ボードB:硫酸バリウム及び水酸化アルミニウム複合繊維と炭酸マグネシウム複合繊維との複合ボード
ボードA−1の表と裏にそれぞれ、実験2(6)で得られたシート2−7(坪量:190g/m2)を2枚ずつ貼り合せて、複合ボードを作製した(坪量:約2560g/m2)。
(3)複合ボードC:硫酸バリウム及び水酸化アルミニウム複合繊維の複合ボード
実験2(4)で得られたシート2−5−1を酢酸ビニル系バインダーを用いてシート貼合機にて貼り合せて、シート2−5−1が3枚、6枚、又は12枚積層された各複合ボードを得た(複合ボードC−1、C−2、C−3)。
(4)複合ボードD:硫酸バリウム及び水酸化アルミニウム複合繊維の複合ボード
実験2(5)で得られたシート2−5−2を酢酸ビニル系バインダーを用いてシート貼合機にて貼り合せ、5枚、11枚、又は22枚積層された各複合ボードを得た(複合ボードD−1、D−2、D−3)。
(5)ボードE:ろ紙(比較例)
ろ紙(アドバンテック社製、厚さ1.7mm品)を、酢酸ビニル系バインダーを用いて貼り合せ、2枚、5枚、又は10枚積層された各ボードを得た(ボードE−1、E−2、E−3)。
(6)ボードF:ベニヤ板(比較例)
ベニヤ板(市販品)を、酢酸ビニル系バインダーを用いて貼り合せ、1枚、2枚、又は4枚積層されたボードを得た(ボードF−1、F−2、F−3)。
〔実験4:ボードの難燃性評価〕
実験3で作製したボードの燃焼性を、JIS A 1322(JIS Z 2150)を基にして、以下の手順により評価した。
一定の大きさ(20cm×30cm)に切り揃えたボードを50℃で48時間乾燥した後、乾燥用シリカゲルを入れたデシケータ中に24時間放置し、燃焼試験(加熱試験)のサンプルとした。
サンプルを支持枠(枠の内寸16cm×25cm)に取り付けて、加熱試験装置に装着し、ガスバーナーに点火後、2分間、サンプルを加熱し、炭化面積、残炎時間、残じん時間を測定した(図15)。
なお、燃焼試験には、45°燃焼性試験器(スガ試験機社製、FL-45M)を用いた。加熱には、メッケルバーナー(高さ160mm、内径20mm)を用い、1次空気を混入しないでガスだけを送入して燃焼させた。燃料は液化石油ガス5号(ブタン及びブチレンを主体とするもの、JIS K 2240)を用い、サンプルを取り付けない状態で、炎の長さが65mmになるように調整した。
・炭化長面積:試験体の加熱面の炭化部分(炭化して明らかに強度が変化)している部分について最大長と最大幅を測定し、それらを掛け合わせて算出した。
・残炎時間:加熱終了時から試験体が炎をあげて燃え続ける時間を測定した。
・残じん:加熱終了時から無炎燃焼している状態をいう。
加熱試験の結果を表4に示す。また、加熱試験後のサンプルの外観写真を図16、17に示す。
複合ボードA−1は、残炎時間が20秒であったものの、残じん及び炭化面積が小さかった。一方で、炭酸マグネシウムと繊維との複合繊維シートを表裏に貼り合せた複合ボードBは、残炎時間が10秒以下、残じん時間が30秒以下、炭化面積が50cm2以下であり、防炎物品(合板)に求められる基準を満たしていた(参考:消防庁「防炎の知識と実際」)。
〔実験5:複合繊維シートの放射線遮蔽能力の評価〕
実験4で製造した複合繊維ボードA〜Dについて、放射線(X線)遮蔽能力を評価した。具体的には、JIS Z 4501「X線防護用品の鉛当量試験法」に準じて、透過X線量率及び鉛当量を測定した。
(透過X線量率) JIS Z 4501の試験方法に準じた線質及び配置でX線を照射し、透過X線量率を測定した。各依頼品及び各測定位置につき5回測定を行い、平均値及び標準偏差を求めた。得られた透過線量率から、以下の式で線量減少率を算出した。
線量減少率(%)=(各サンプルの透過線量率/ブランク(サンプルなし)の透過線量率)×100
(鉛当量) JIS Z 4501「X線防護用品の鉛当量試験方法」に準じて、透過X線量を測定して鉛当量を求めた。各サンプルの鉛当量は、標準鉛版から減弱率曲線を作成して求めた。減弱率曲線は、厚みの異なる4枚の標準鉛板の減弱率から二次補間で作成した。標準鉛版には、各試験品の減弱率よりも減弱率の大きな2枚、減弱率の小さな2枚を選んだ。
(測定条件)
・X線装置:エクスロン・インターナショナル社 MG−452型(平滑回路、焦点寸法5.5mm、Be窓)
・X線管電圧及び管電流:MG−452型 100kV 12.5mA 付加ろ過版0.25mmCu
・X線管焦点―試料間距離:1500mm
・試料―測定器間距離:50mm
・測定器:電離箱照射線量率計 東洋メディック社 RAMTEC―1000D型 A−4プローブ使用
・X線量測定単位:空気衝突カーマ
・X線ビーム:狭いビーム
表5に示すように、硫酸バリウム及び水酸化アルミニウムと繊維との複合繊維シートを積層したボードA、B、C、Dは、X線の線量減少率が36.5〜85.2%となり、X線遮蔽効果が確認できた。また、同様に鉛当量は、0.05〜0.31mmであった。一方、比較例である厚ろ紙を積層したボードEやベニヤ板を積層したボードFはX線の減少率が8%以下と低く、鉛当量も0.05mm以下であり、X線の遮蔽効果はほとんどないことを確認できた。