JP6087533B2 - 耐熱性有機繊維 - Google Patents

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Description

本発明は、耐熱性有機繊維内に無機粒子を分散させた、放射線遮蔽能を有する耐熱性有機繊維に関する。
放射線の産業利用とその重要性は拡大しており、それに伴い、放射線を被爆する可能性のある作業は増加している。例えば、放射線同位元素を扱う実験や、X線発生装置の操作、放射性廃棄物の処理作業など、作業環境や扱う物質の放射能は多岐に及んでいる。それらの作業においては、放射線から身体を保護するため、あるいは放射線の漏洩を防止する目的で、防護衣またはシートなどの放射線防護製品が用いられている。
前記のような、放射線取扱作業の多様化により、放射線防護製品にはさらなる高機能化が求められている。例えば、患者や放射性物質取扱作業者の負荷を軽減させるために、軽量かつ快適性に優れた放射線防護製品が求められている。放射性廃棄物の焼却処理、原子力施設の事故・トラブル時においては、作業者の安全を確保するために、難燃性や耐切創性などの安全性に優れた放射線防護製品が求められ、さらに、一般に放射線遮蔽能は元素の原子番号が大きいほど優れるが、そのような重金属は高価かつ貴重であることから、経済性の観点からは、放射線防護製品には優れた耐久性が求められる。また、地球環境汚染の観点からは、廃棄容易性、再利用容易性に優れた放射線防護製品が求められている。
従来の放射線防護製品には鉛板や、鉛を含有させたゴム材料が多く用いられてきた。しかし、これらを使用した放射線遮蔽防護製品は、厚み・形状や柔軟性に制限があるため、作業性・快適性に劣るといった問題があった。また、鉛やゴム材料は、焼却時や廃棄時に、鉛害や有害ガスを発生するなどの問題があり、それらの製品の使用を制限する原因の1つとなっていた。
ここで、繊維材料は、衣服、手袋、帽子、マスクなど防護衣や、カーテン、シート、クロスなどのインテリア、産業資材など様々な形状に加工することが容易である。すなわち、放射線遮蔽防護製品の素材として、鉛板やゴム組成物ではなく、繊維材料を選択することは、前記の鉛板やゴム素材に比べ格段に適用範囲が拡大すると期待される。
放射線遮蔽性能を有する繊維材料として、まず放射線遮蔽性金属を繊維状としたものが挙げられる。しかし放射線遮蔽性金属を繊維状に加工するには、高度な加工技術が必要であり、さらにそのような繊維材料の特性は金属の特性に大きく依存すると考えられる。他の放射線遮蔽性能を有する繊維材料としては、合成繊維に放射線遮蔽剤を組み合わせた繊維材料が挙げられ、このような繊維材料は、合繊繊維と放射線遮蔽剤のそれぞれの特性を持ち合わせると期待される。そのような繊維材料を製造する方法としては、放射線遮蔽性を有する粒子や剤を繊維表面に塗布する方法あるいは繊維内に前記の剤を混練する方法が考えられる。ここで、前者のような繊維は、表面の放射線遮蔽金属の剥離による放射線遮蔽能力の低下の可能性があることから、放射線遮蔽能の耐久性向上には繊維内部に遮蔽性粒子を混練した繊維材料が有効と考えられる。また、繊維内に遮蔽剤を混練することは、表面に塗布するよりも多量の剤を繊維に担持させることができ、より遮蔽能の高い繊維材料を得ることができると期待される。一方で、繊維表面に遮蔽剤(一般に金属化合物が多く用いられる)が露出していることは、切創や摩擦などの物理的損傷から繊維を保護する効果があると考えられ、繊維および製品の長期使用を可能にする点で有効と考えられる。つまり、繊維内に放射線遮蔽剤を有し、さらに繊維表面に放射線遮蔽剤が露出している繊維材料は、放射線遮蔽能、耐久性の点で優れていると期待される。
これまでに提案されている放射線遮蔽性として、特許文献1ではアクリル繊維の表面に放射線遮蔽性金属を被膜する手法が提案されている。繊維内部に遮蔽性粒子を混練した繊維材料として、特許文献2では、ポリエステルあるいはポリアミドの熱可塑性樹脂を基材とし、繊維芯部に放射線遮蔽性無機粒子を含有させた芯鞘構造繊維が提案されている。しかし、繊維内に放射線遮蔽剤を有し、さらに繊維表面に放射線遮蔽剤が露出している放射線遮蔽性繊維材料はこれまでに達成されていなかった。
さらに、前記のように、安全性を高めた放射線遮蔽繊維が強く望まれている一方で、特許文献1あるいは2にて提案される繊維は、その要求を十分に満たすものではなかった。つまり、特許文献2に記載された繊維は、熱可塑性樹脂を基材として用いているため、耐炎性、難燃性には限界があり、火災現場や高温の物体を取り扱う作業においては使用範囲に限界が生じていた。また、放射線遮蔽繊維を防護服や産業資材に利用することを考えたとき、同時に切創性も満足できるものは未だ提案されていない。
特開昭63−198898号公報 特開平11−337681号公報
本発明はこのような従来技術を背景になされたものであり、その目的は、放射性遮蔽性と、耐久性、特に耐切創性とに同時に優れた耐熱性有機繊維を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、例えばタングステン等の無機粒子を適度な凝集した状態として繊維に配合して、該無機粒子を繊維表面の露出させた耐熱性有機繊維は、放射性遮蔽性を有するとともに、布帛とした際の耐切創性等に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、耐熱性有機繊維において、該繊維は原子番号が40以上の元素からなる単体または化合物からなる無機粒子を少なくとも一種含有し、該無機粒子の一部が凝集し、該無機粒子の一部が繊維表面に露出しており、該繊維表面に占める露出している無機粒子の面積割合が25〜60%であり、該耐熱性有機繊維が全芳香族ポリアミド繊維であることを特徴とする耐熱性有機繊維からなる放射線防護製品が提供される。
本発明の耐熱性有機繊維は、耐久性、特に耐切創性に優れ、かつ放射性遮蔽性を有する繊維となる。このため、本発明の繊維によれば、耐久性が要求される放射線遮蔽製品を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の耐熱性有機繊維(以下、単に「繊維」と称することがある)は、原子番号が40以上の元素からなる単体または化合物からなる無機粒子を少なくとも1種含有してなる繊維である。
本発明における耐熱性有機繊維とは、限界酸素指数25以上の繊維であり、全芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリエーテルアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリベンズイミダゾール繊維、ポリイミド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリエーテルイミド繊維、難燃剤含有芳香族ポリエステル繊維などが例示できる。このうち、全芳香族ポリアミド繊維は、機械的物性、難燃性、耐光性などのバランスから放射線遮蔽製品とする上で好ましい。ここで全芳香族ポリアミド繊維とは、芳香族ジカルボン酸成分と芳香ジアミン成分、もしくは芳香族アミノカルボン酸成分から構成される全芳香族ポリアミド、またはこれらの全芳香族共重合ポリアミドなどのポリマーからなる繊維であり、例えば、該ポリマーとしては、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミドなどが例示できる。特にコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドおよびポリメタフェニレンイソフタルアミドからなる繊維が、強度や弾性率といった機械的特性や、耐切創性、後述する製造方法による製造容易性の点から好ましい。
次に、本発明に用いられる原子番号が40以上の元素からなる単体または化合物からなる無機粒子の例としては、バリウム、ジルコニウム、ニオブ、銀、インジウム、スズ、ランタン、セリウム、ネオジウム、タンタル、タングステン等の単体元素や、その酸化物、水酸化物、塩化物、ハロゲン化物等が挙げられる。特に、バリウム、タングステンが安全性の点から好ましい。
本発明においては、前記耐熱性有機繊維が、かかる無機粒子を少なくとも1種含有し、該無機粒子の一部が繊維表面に露出しており、該繊維表面に占める露出している無機粒子の面積割合が25〜60%、好ましくは25〜50%、より好ましくは25〜40%であることが肝要である。これにより、耐熱性有機繊維を、防護衣、インテリア・内装、産業資材など放射線遮蔽防護製品として高い放射線遮蔽性能だけでなく、同時に優れた耐久性、特に耐切創性を発揮することができる。
したがって、繊維表面に占める露出している無機粒子の面積割合が、25%未満では、放射線遮蔽防護製品としたとき、本発明の目的とする優れた放射線遮蔽性や耐切創性が得られず、一方、60%を超えても上記性能はあまり上がらず、無機粒子が脱落し易くなり好ましくない。
また、本発明においては、上記のような無機粒子が繊維表面に特定量露出した耐熱性有機繊維とする上では、例えば、無機粒子において、一次粒子径、分散粒子平均相当径、含有量などを次のようにすることで容易に実現することが可能である。
無機粒子の含有量は、繊維の全重量を基準として、好ましくは50〜80重量%、より好ましく60〜75重量%である。無機粒子の含有量が多いほど高い放射線遮蔽性能が得られ、また繊維表面における無機粒子の露出面積も増大するが、一方で、無機粒子の含有量を増加しすぎると、機械物性の低下を招く。このため、上記含有量とすることで、繊維表面に占める割合を上記範囲とすることができ、かつ繊維の機械物性を維持することができる。
本発明では、無機粒子を繊維中に含有させる、すなわち繊維を構成する全芳香族ポリアミドポリマー中に無機粒子を分散させる。この際、後述するように無機粒子を適度に凝集させることで耐切創性を向上させることが好ましく無機粒子には表面処理をしない方が望ましいが、繊維を作成する各段階および最終的に本発明の繊維を得た段階での無機粒子の該ポリマー中での分散状態を制御する目的などで任意に表面処理をすることが可能である。例えば、前記の無機粒子は、カップリング剤、または界面活性剤などの表面処理剤によって、処理することも可能である。このように、無機粒子と、後述のような凝固液との親和性を制御することで、無機粒子の繊維表面へ露出を促進でき、繊維表面に無機粒子が占める割合を前記範囲とし易くなる。
また、前記の無機粒子の一次粒子径は、好ましくは0.1〜3μm、より好ましくは0.5〜2μmである。本発明に用いられる無機粒子の具体例としては、日本新金属社製のW−1kD,W−3kD(1次粒子径:0.6〜0.9μm、1.5〜2.0μm)などである。
本発明において、繊維表面に占める無機粒子の面積割合を上記範囲とし、放射線遮蔽製品としたときの耐切創性を高めるためには、繊維に含有した無機粒子が一部凝集していることが望ましい。一般的は、無機粒子を均一分させることが望ましいが、本発明においては、無機粒子を適度に凝集させ、繊維表面に露出させることで、耐放射線性能と耐切創性の両方を同時に実現できることを見出したものである。
具体的には、前記の1次粒子径を有する無機粒子を、後述の方法により繊維内に混練することで、粒子間のファンデルワールス力により無機粒子の分散粒子平均相当径が1.0〜3.0μmに凝集することが好ましい。分散粒子平均相当径が1.0μmより小さい粒子のみである場合は、耐切創性が低下し好ましくなく、分散粒子平均相当径が3.0μmより大きい粒子のみである場合は、繊維の機械物性が低下し好ましくない。
本発明の繊維を製造するには、全芳香族ポリアミド溶液(全芳香族ポリアミド製造時の生成ポリマードープであってもよい)と、無機粒子分散液とを混合し、湿式紡糸したのち、溶媒を除去することによって、繊維が得られる。なお、ここでいう無機系粒子の分散粒子平均相当径とは、繊維を繊維長に対して直角方向に切断し、その繊維断面を電子顕微鏡により倍率5000倍で観察した際の625μmの観察断面積当りの平均粒子分散面積s(μm)としたとき、下記式により求められる値(Y)である。
Y(μm)=2×√(s/π)
なお、本発明においては、物性を損なわない範囲で、繊維に無機粒子以外のフィラーを含有させることができる。該フィラーとしては、繊維状、もしくは板状、鱗片状、粒状、不定形状、破砕品など非繊維状の充填剤が挙げられ、具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、耐熱性有機繊維以外の有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、二酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、マイカ、層状粘土鉱物、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、二酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物、本発明の無機粒子以外の、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボンなどが挙げられる。また、上記のフィラーは、2種以上を併用して使用することもできる。
また、本発明の繊維には、そのほか、種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤などの劣化防止剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、可塑剤、顔料などの着色剤などを併用してもよい。上記添加剤の使用量は、得られる繊維本来の物性を損なわない範囲で、添加剤の種類に応じて適当に選択できる。
以上に説明した本発明の耐熱性有機繊維を製造方法として、全芳香族ポリアミド繊維を例示するが、次の方法を採用するのが好ましい。
まず全芳香族ポリアミドと無機粒子との混合液(ドープ)を調製する。ドープを調整する方法は特に限定されるものではなく、例えば、全芳香族ポリアミドの溶液に無機微粒子を加える方法、全芳香族ポリアミドの溶液と無機粒子の分散液とを混合する方法、無機粒子の分散液に全芳香族ポリアミドを添加して溶解する方法、重合時に無機粒子が添加された全芳香族ポリアミドを溶媒に溶解する方法などを挙げることができる。全芳香族ポリアミド溶液と無機粒子の分散液に用いられる溶媒としては、該全芳香族ポリアミドの上記溶媒を使用することができ、これらの溶媒を、1種単独で、あるいは2種以上を併用してもよい。
紡糸上、全芳香族ポリアミド溶液と無機粒子の分散に用いられる溶媒は、同一であることが好ましい。
本発明においては、繊維表面に凝集した無機粒子の一部を露出させるが、ドープ中のポリマー濃度を低下させ粘度を低下させることで、凝集した無機粒子の一部が外部へブリードアウトしやすくなり、繊維表面に無機粒子を露出させることが可能となる。そのため、全芳香族ポリアミド繊維の製造において用いられるドープのポリマー濃度は紡糸可能な範囲で低いことが好ましい。例えば、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの場合は、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%であり、また、ポリメタフェニレンイソフタルアミドの場合は、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%である。それぞれのポリマーにおいて、ポリマー濃度が上記範囲より低い場合は、ポリマーの絡み合いが少なく紡糸に必要な粘度が得られ難くなる傾向にある。一方、ポリマー濃度が上記範囲より大きいと、ノズルから吐出する際に流動が不安定になりやすく、安定的に紡糸するのが難しくなる傾向にある。なお、ドープには、塩化カルシウム、塩化リチウム等の無機塩を少量(例えば10質量%以下)含んでいても差しつかえない。
次に、上記のようにして得られたドープを湿式紡糸する。この場合、上記ドープを凝固浴の中に直接吐出しても良いし、あるいはエアギャップを設けてもよい。凝固液は、全芳香族ポリアミドの貧溶媒が用いられるが、全芳香族ポリアミドドープの溶媒が急速に抜け出して耐熱性有機繊維に欠陥ができないように、通常は良溶媒を添加して凝固速度を調節する。一般には、貧溶媒としては水、良溶媒としては全芳香族ポリアミドドープ用の溶媒を用いるのが好ましい。良溶媒/貧溶媒の重量比は、全芳香族ポリアミドの溶解性や凝固性にも依るが、15/85〜40/60が一般的に好ましい。
湿式紡糸により得られた繊維は、この段階では充分に配向していないので、配向および結晶化させることが好ましい。これより、結晶配向度、結晶化度のどちらか一方または両方が低い場合には、熱(延伸)処理を施しても、得られる繊維の機械的物性が不充分となりやすい。熱延伸の温度は、全芳香族ポリアミドのポリマー骨格にもよるが、好ましくは300〜600℃、より好ましくは350〜550℃、また、延伸倍率は好ましくは0.7倍以上、より好ましくは2〜15倍である。
本発明において、繊維の単繊維繊度は、好ましくは0.5〜50dtex、さらに好ましくは1.0〜10dtexである。0.5dtex未満の場合は添加された無機粒子が糸欠陥として作用し製糸性が不安定となる場合がある。また、繊維の比表面積が大きくなるので耐光劣化を受け易い。一方、50dtexを超える場合は、繊維の比表面積は小さくなり、耐光劣化を受けにくい。反面、製糸工程で比表面積が小さいので凝固が不完全になりやすく、その結果、紡糸や延伸工程で工程調子が乱れやすく、物性も低下しやすい。
本発明においては、繊維の強度は高い程良く、好ましく2.5cN/dtex以上、より好ましくは5〜30cN/dtexである。繊維中の無機粒子の含有量を上げるにつれて強度は低下の傾向があり、2.5cN/dtex未満では、繊維を放射線遮蔽製品としての機械的物性が低下する傾向にあり好ましくない。また、繊維の伸度は、好ましくは2.5%以上、より好ましくは3.0〜60%である。2.5%未満の場合は製織あるいは製編の際に糸切れが増加し好ましくない。
かくして得られる本発明の耐熱性有機繊維は、織物、編物、不織布などの布帛のほか、組紐、ロープ、撚糸コード、ヤーン、綿などの繊維構造物、シートなどの面状体を構成する。
また、放射線の透過を防ぐため、製品中に存在する繊維間の空隙は少ないことが望ましく、あるいはその空隙が放射線遮蔽性を有する他の材で充填されていることが望ましい。例えば布帛とする場合は、目付(単位面積あたりの質量)は100g/m以上であることが望ましく、高密度の織物であることが望ましい。
本発明の繊維は、優れた放射線遮蔽性と耐切創性を同時に有し、衣服、手袋、帽子、マスクなど防護衣や、カーテン、シート、クロスなどのインテリア、産業資材など様々な放射線防護製品とすることができ、特に防護衣料としてその性能を発揮する。
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳しく具体的に説明する。ただし、これらの実施例および比較例は本発明の理解を助けるためのものであって、これらの記載によって本発明の範囲が限定されるものではない。
実施例および比較例においては、以下の項目について、以下の方法で測定・評価を実施
した。
(1)無機粒子の露出面積割合
繊維表面に占める露出している無機粒子の面積割合(無機粒子の露出面積割合)は、次の方法により測定した。繊維側面を電子顕微鏡により倍率10万倍で観察した際の、任意に選んだ25μm(5μm×5μm)の観察面積当りの無機粒子面積をS(μm)としたとき、下記式により計算される(Z)を無機粒子の露出面積割合(%)とした。
Z(%)=S/25×100
(2)繊度
JIS−L−1015に準じ、測定した。
(3)繊維の強度、伸度
引張試験機(オリエンテック社製、商品名:テンシロン万能試験機、型式:RTC−1210A)を用いて、ASTM D885の手順に基づき、測定試料長500mm、チャック引張速度250mm/min、初荷重0.2cN/dtexの条件にて測定を実施した。
(4)布帛の鉛当量(耐放射線性)
JIS−Z−4501に準じ、測定した。
(5)布帛の厚さ、目付(単位面積あたりの質量)、見掛比重
JIS−L−1096に準じ、測定した。なお、見掛比重は単位をg/cmに換算し表した。また、目付はJIS−L−1096の単位面積あたりの質量に基づき測定した。
(6)布帛の耐切創性
ISO−13997に準じ、測定した。
[実施例1]
無機粒子として、1次粒子径が0.6〜0.9μmであるタングステン粒子(W−1kD 日本新金属社製)を使用した。該タングステン粒子を、表面処理実施することなく、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に28.3重量%となるように分散させた。この分散液を、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド(98%濃度の濃硫酸中、ポリマー濃度0.5g/dlの溶液について30℃で測定した固有粘度(IV)は3.4)の濃度6重量%のNMP溶液中に添加し、60℃で撹拌することにより、ドープを得た。このとき、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドに対するタングステン粒子の配合量は、61重量%となるようにした。このときのドープ中ポリマー濃度は5.3%であった。さらにポリマー濃度を低下させるためにNMPを添加し、ドープ中のポリマー濃度を5.0%とした。得られたドープを用い、孔数100ホールの紡糸口金から吐出し、エアギャップと呼ばれる空隙部分を介して、NMP濃度30重量%の水溶液中に紡出し凝固した後(半乾半湿式紡糸法)、水洗、乾燥し、次いで、温度500℃下で10倍に延伸した後、巻き取ることによりタングステン粒子が分散された状態で添加された耐熱性有機繊維を得た。得られた耐熱性有機繊維の繊維断面および側面を観察したところ、繊維内部のタングステン粒子の一部は凝集し、さらにその一部が繊維表面に露出していた。次に、この耐熱性有機繊維を無撚で経糸および緯糸に使用し、布帛の密度経緯ともに11.4本/cmである平織物を作成した。結果を表1に示す。
[実施例2]
コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドに対するタングステン粒子の配合量を72.6重量%とした以外は、実施例1と同様の方法で、タングステン粒子を含有した耐熱性有機繊維および平織物を得た。結果を表1に示す。
[実施例3]
無機粒子として、1次粒子径が1.5〜2.0μmであるタングステン粒子(W−3kD 日本新金属社製)を使用し、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドに対するタングステン粒子の配合量を72.6重量%とした以外は、実施例1と同様の方法で、タングステン粒子を含有した耐熱性有機繊維および平織物を得た。結果を表1に示す。
[実施例4]
無機粒子として、1次粒子径が1.0〜2.0μmであるモリブデン粒子(商品名;Mo−3kD 日本新金属社製)を使用し、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドに対するモリブデン粒子の配合量を72.6重量%とした以外は、実施例1と同様の方法で、モリブデン粒子を含有した耐熱性有機繊維および平織物を得た。結果を表1に示す。
[実施例5]
ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(商品名:KBE846、信越化学工業社製)を酢酸でpH調整した3%水溶液を作成し、タングステン粒子(商品名:W−1kD、日本新金属社製)を1時間浸漬・撹拌させ、その後、濾過、乾燥させた。粒子重量に対して付着量は0.45重量%であった。前記のタングステン粒子を使用した以外は、実施例1と同様の方法で、タングステン粒子が分散した耐熱性有機繊維を得た。該タングステン粒子は親水性官能基を有するスルフィドにて表面処理されたことで、繊維を構成するポリマーとの親和性が低下(ただし、ドープ中への分散状態は十分な紡糸性が得られる範囲)、さらに凝固液との親和性が向上し、繊維表面へのタングステン粒子の露出割合が向上した。さらに実施例1と同様にして平織物を得た。結果を表1に示す。
[実施例6]
無機粒子として、1次粒子径が0.6〜0.9μmであるタングステン粒子(W−1kD 日本新金属社製)を使用した。該タングステン粒子を、表面処理を実施することなく、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に28.3重量%となるように分散させた。また、特公昭47−10863号公報記載の方法に準じた界面重合法により製造したIV=1.9のポリメタフェニレンイソフタルアミド粉末を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)の濃度21.5重量%のNMP溶液中に添加し、60℃で撹拌することにより、ドープを得た。このとき、ポリメタフェニレンイソフタルアミドに対するタングステン粒子の配合量は61重量%含有となるようにした。このときのドープ中のポリマー濃度は14.7%であった。さらにポリマー濃度を低下させるためにNMPを添加し、ドープ中のポリマー濃度を14%とした。得られたドープを使い、孔数1500ホールの紡糸口金より浴温度85℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴は、塩化カルシウムが40重量%、NMPが5重量%、水が55重量の組成の水溶液を用いた。次いで該引き出し糸条を水洗し、95℃の温水で2.4倍に延伸して200℃のロールで乾燥した後、300℃の熱板上で1.75倍延伸してタングステン粒子を含有した耐熱性有機繊維を得た。さらに実施例1と同様にして平織物を得た。結果を表1に示す。
[比較例1]
タングステン粒子を添加せず実施例1と同様の方法でのコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維および平織物を得た。結果を表1に示す。
[比較例2]
無機粒子として、1次粒子径が1.5〜2.0μmであるタングステン粒子(W−3kD 日本新金属社製)を使用し、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドに対するタングステン粒子の配合量を40重量%とした以外は、実施例1と同様の方法で、タングステン粒子を含有した耐熱性有機繊維および平織物を得た。結果を表1に示す。
[比較例3]
N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−573 信越シリコーン社製)を酢酸でpH調整した3%水溶液を作成し、タングステン粒子(W−1kD 日本新金属社製)を1時間浸漬・撹拌させ、その後、濾過、乾燥させた。粒子重量に対して付着量は0.5重量%であった。前記のタングステン粒子を使用した以外は、実施例1と同様の方法で、タングステン粒子が分散した耐熱性有機繊維を得た。該タングステン粒子は、芳香環を有するシランにて表面処理されたことで、繊維を構成するポリマーとの親和性が向上、さらに凝固液との親和性が低下し、繊維表面へのタングステン粒子の露出割合が低減した。さらに実施例1と同様にして平織物を得た。結果を表1に示す。
Figure 0006087533
本発明の耐熱性有機繊維は、優れた放射線遮蔽性と耐切創性を同時に有し、衣服、手袋、帽子、マスクなど防護衣や、カーテン、シート、クロスなどのインテリア、産業資材など様々な放射線防護製品とすることができ、特に防護衣料用途の素材として極めて有用である。

Claims (4)

  1. 耐熱性有機繊維において、該繊維は原子番号が40以上の元素からなる単体または化合物からなる無機粒子を少なくとも一種含有し、該無機粒子の一部が凝集し、該無機粒子の一部が繊維表面に露出しており、該繊維表面に占める露出している無機粒子の面積割合が25〜60%であり、該耐熱性有機繊維が全芳香族ポリアミド繊維であることを特徴とする耐熱性有機繊維からなる放射線防護製品。
  2. 全芳香族ポリアミド繊維が、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドまたはポリメタフェニレンイソフタルアミドからなる請求項に記載の耐熱性有機繊維からなる放射線防護製品。
  3. 無機粒子の分散粒子平均相当径が、1.0〜3.0μmである請求項1または2に記載の耐熱性有機繊維からなる放射線防護製品。
  4. 無機粒子の分散粒子平均相当径が、1.28〜3.0μmである請求項1または2に記載の耐熱性有機繊維からなる放射線防護製品。
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