JP5580057B2 - 難燃性樹脂組成物、難燃性繊維、難燃性布帛および耐熱性防護服 - Google Patents
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Description
しかしながら、金属水酸化物を添加して難燃性を向上させるためには、大量に添加しなければならない。その結果、強度、弾性率などの機械的物性が低下すると共に、成型工程において生産安定性が著しく低下することがあり、必ずしも難燃性の向上と機械的物性の両立が可能であるとは限らない。
次に、本発明は、上記難燃性樹脂組成物を繊維化してなる難燃性繊維であって、繊維中に、二酸化チタンと二酸化ケイ素とを主成分とし、二酸化チタンの含有量が10〜30重量%、および二酸化ケイ素の含有量が70〜90重量%である複合粒子を1〜30重量%含有することを特徴とする難燃性繊維に関する。
次に、本発明は、上記難燃性繊維を用いた耐熱性布帛、およびこれを用いた耐熱性防護服に関する。
なお、本発明に用いられる複合粒子において、「二酸化チタンと二酸化ケイ素を主成分とする」とは、二酸化チタンおよび二酸化ケイ素の含有量の合計が80重量%以上であることを指称し、後記するようなその他の金属酸化物が含まれていてもよい。
ここで、上記組成物や繊維に用いられる樹脂としては、芳香族ポリアミドが好ましい。
また、本発明の難燃性樹脂組成物、難燃性繊維や耐熱性布帛の限界酸素指数は、好ましくは30以上である。
さらに、上記複合粒子は、好ましくは二酸化チタンからなる核と、その外面に形成された二酸化ケイ素の被覆層とを有するものが好ましい。
さらに、上記複合粒子は、さらに表面処理層を有するものが好ましい。
さらに、上記表面処理層は、シラン系カップリング剤からなるものが好ましい。
さらに、本発明の難燃性樹脂組成物や難燃性繊維中における上記複合粒子の分散粒子平均相当径は、好ましくは10〜200nmの範囲内である。
また、本発明の難燃性繊維や耐熱性布帛は、二酸化チタン10〜30重量%、二酸化ケイ素70〜90重量%の組成からなる複合粒子を少量添加した場合においても、難燃性の尺度である限界酸素指数、すなわちLOI値が30以上の非常に優れた難燃性を示し、繊維の機械的特性を損なうことなく飛躍的に難燃性を向上させることができるため、難燃性に優れた各種繊維製品を提供することができる。特に、防護衣料用途への素材展開について極めて有用である。
3: 核
5: 被覆層
7: 表面処理層
11:複合粒子製造装置
27:ノズルユニット
HK:反応空間
GR:反応気体流
ET:原料気体流
まず、本発明に用いられる材料(樹脂、繊維形成性ポリマー、複合粒子など)について説明し、さらに本発明の難燃性樹脂組成物、難燃性繊維、耐熱性布帛、耐熱性防護服について説明する。
<樹脂または繊維形成性ポリマー>
本発明の樹脂組成物に用いられる樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも適用することができる。樹脂の具体例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルフィド、ポリウレタン、ポリエチレン,ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、酢酸ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、環状オレフィン系樹脂、ナイロン6,ナイロン66などの脂肪族ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート,ポリトリメチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、エチレン−プロピレン−(非共役ジエン)ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ポリメタフェニレンイソフタルアミド,ポリパラフェニレンテレフタルアミドなどの芳香族ポリアミドなどが挙げられるが、本発明の難燃性樹脂組成物を防護衣料用途などに展開するためには、好ましくは芳香族ポリアミドが望ましい。
具体的に本発明において使用されるジアミンとしては、p-フェニレンジアミン、2-クロルp-フェニレンジアミン、2,5-ジクロルp-フェニレンジアミン、2,6-ジクロルp-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフォンなどを単独あるいは2種以上挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
中でも、ジアミンとして、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミンおよび3,4’-ジアミノジフェニルエーテルを単独あるいは2種以上使用することができる。
この場合、溶解性を上げるために重合前、途中、終了時に一般に公知の無機塩を適当量添加しても差し支えない。このような無機塩として、例えば塩化リチウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
この芳香族ポリアミドの末端は、封止されることもできる。末端封止剤を用いて封止する場合、その末端封止剤としては、例えばフタル酸クロライドおよびその置換体、アミン成分としてはアニリンおよびその置換体が挙げられる。
一般に用いられる酸クロライドとジアミンの反応においては、生成する塩化水素のごとき酸を捕捉するために、脂肪族や芳香族のアミン、第4級アンモニウム塩を併用できる。
反応の終了後、必要に応じて塩基性の無機化合物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウムなどを添加し中和反応する。
このようにして得られる芳香族ポリアミドは、アルコール、水といった非溶媒に投入してて沈澱させ、パルプ状にして取り出すことができる。これを、再度、他の溶媒に溶解して成形に供することもできるが、重合反応によって得た溶液をそのまま成形用溶液として用いることができる。再度溶解させる際に用いる溶媒としては、芳香族ポリアミドを溶解するものであれば特に限定はされないが、上記芳香族ポリアミドの重合に使用される溶媒が好ましい。
次に、本発明に用いられる複合粒子は、二酸化チタンと二酸化ケイ素とを主成分とし、二酸化チタンが10〜30重量%、および二酸化ケイ素が70〜90重量%である。
この表面処理剤は、被覆層の表面に存在し、表面処理層を形成する。かくて、表面処理剤の種類を適切に選択することにより、複合粒子の表面処理層の表面状態が調整され、樹脂(繊維形成性ポリマー)との親和性を向上させ、樹脂(繊維形成性ポリマー)中への複合粒子の分散性が良くなって、少量の配合量で高い難燃性を付与することができる。
(R1:C数1〜300からなる有機基でありN、O、S、ハロゲンといったヘテロ原子を含んでも良い。X:OR2といったアルコキシル基もしくは、ハロゲン原子であって、R2はC数1〜18の有機基である。)
R1として、具体的には、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基など脂肪族アルキル基、シクロヘキシル基などの脂環族基、またフェニル基、トルイル基、ナフチル基といった芳香族基が挙げられる。また、これらにN,O,S、ハロゲンといったヘテロ原子を含んでよく、その場合、アミノ基、クロロ基、ブロモ基、シアノ基、酸無水物、エポキシ基、メルカプト基などが挙げられる。Xに含まれるOR2のR2としてはメチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
これらのシラン系カップリング剤のうち、エポキシシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、アルコキシシランが好ましい。
これらのシラン系カップリング剤は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
複合粒子の平均粒径を上記範囲内にすると、複合粒子自体が非常に細かいので、複合粒子の重量あたりの個数や表面積を大幅に増加させることができ、少ない配合量でも、得られる樹脂組成物や繊維に高い難燃性を付与することができる。
図1は、本発明に用いられる複合粒子1の一実施例を概念的に示した模式図である。
この図に示すように、複合粒子1は、二酸化チタンからなる核3と、その外面に形成された二酸化ケイ素の被覆層5とを有する。
本発明に用いられる複合粒子1は、液相法、気相法のいずれの方法でも製造することができる。液相法としては、共沈法、加水分解法、アルコキシド法、ゾル−ゲル法、水熱合成法、重合法などの公知の方法を利用することができる。また、気相法としては、電気炉加熱法、燃焼法、プラズマ法、レーザー法などの公知の方法を利用することができる。
本発明では、その一例として、ホソカワミクロン(株)製の気相法装置であるナノクリエータを用いて製造する例について説明する。
なお、複合粒子1の被覆層5を構成する成分が二酸化ケイ素であることから、シランカップリング剤を用いれば、被覆層5と表面処理層7との間の親和性を良好なものとすることができるので好ましい。
なお、本発明において、物性を損なわない範囲で、本発明の複合粒子以外のフィラーを併用することができる。用いるフィラーとしては、繊維状、もしくは板状、鱗片状、粒状、不定形状、破砕品など非繊維状の充填剤が挙げられ、具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、二酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、マイカ、層状粘土鉱物、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、二酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボンなどが挙げられる。また、上記のフィラーは2種以上を併用して使用することもできる。
なお、これらのフィラーは、その表面を、例えばカップリングや界面活性剤などの公知の表面処理剤で処理して用いることもできる。
また、本発明の難燃性樹脂組成物中には、二酸化チタン微粒子、二酸化ケイ素微粒子などの単独の金属酸化物の単独微粒子が含まれていてもよい。
また、本発明の樹脂組成物や繊維には、そのほか、種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤などの劣化防止剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、可塑剤、顔料などの着色剤などを併用してもよい。上記添加剤の使用量は、樹脂や繊維本来の物性を損なわない範囲で、添加剤の種類に応じて適当に選択できる。
本発明の難燃性樹脂組成物において、以上、説明した本発明の複合粒子の樹脂への配合量は、芳香族ポリアミドなどの樹脂に対し、1重量%以上、好ましくは1〜98重量%である。1重量%未満では、所定の難燃性向上効果が発現しない。一方、98重量%を超えても、樹脂成型が困難となり、樹脂成型体の成形性が乏しくなるので好ましくない。
なお、複合粒子の樹脂への配合量を40重量%以上とすると、樹脂の機械的強度が多少犠牲にはなるが、難燃性を大きく向上させることができる。
この限界酸素指数は、本発明に用いられる複合粒子を樹脂中に1重量%以上配合することにより、達成することができる。
複合粒子の分散粒子平均相当径を上記の範囲内にするには、本発明に用いられる複合粒子の平均粒径を上記範囲内(10〜500nm)とし、さらにこの複合粒子をビーズミルなどで微粉砕または分散し、樹脂に配合することにより調整される。
なお、ここでいう複合粒子の分散粒子平均相当径とは、組成物を切断し、断面を電子顕微鏡により倍率10万倍で観察した際の25μm2の観察断面積当りの平均粒子分散面積をS(μm2)としたとき、下記式により求められる値(Y)である。
Y(nm)=2×√(S/π)
ここで、芳香族ポリアミドと複合粒子の混合液は、均一な混合液として得られる。ここで、芳香族ポリアミド溶液と複合粒子の分散液に用いられる溶媒としては、該芳香族ポリアミドの上記溶媒を使用することができ、これらの溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
成形上、芳香族ポリアミド溶液と複合粒子の分散に用いられる溶媒は、同一であることが好ましい。
混合後の固形分濃度(芳香族ポリアミドおよび複合粒子の合計の濃度)は、通常、1〜20重量%、好ましくは3〜15重量%程度である。
例えばポリエーテル、ポリイミド(閉環前の前駆体)、ポリフェニレンスルフィドの場合には、重合後の熱可塑性樹脂の溶融状態での添加が可能である。さらに、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ナイロン66などのポリアミドのように溶融重合可能な熱可塑性樹脂の場合には、ジオールとのスラリー状態で重合前、もしくは重合途中に添加することも可能である。
さらに、上記の手法で得られた比較的高い濃度で複合粒子を含有する熱可塑性樹脂をマスターバッチとして、さらに複合粒子未添加の熱可塑性樹脂中に混練させることでも、目的とする樹脂組成物を得ることができる。
本発明の複合粒子の繊維への配合量は、芳香族ポリアミド繊維などの繊維に対し、1〜30重量%であり、このような少量の配合量で繊維に対して難燃性を付与することができる。1重量%未満では、所定の難燃性向上効果が発現しない。一方、30重量%を超えると、繊維の成形性が乏しくなり好ましくない。
なお、複合粒子の繊維への配合量を30〜50重量%とすることもできる。この場合は、繊維の機械的強度が多少犠牲になるが、難燃性を大幅に向上させることができる。
ここで、限界酸素指数(LOI)は、その材料が燃焼し続けるために必要な酸素の割合を示す指標であり、この数値が大きいほど難燃性が高いことを表すものである。
この限界酸素指数は、本発明に用いられる複合粒子を繊維中に1重量%以上配合することにより、達成することができる。
複合粒子の分散粒子平均相当径を上記の範囲内(10〜200nm)にするには、本発明に用いられる複合粒子の平均粒径を上記範囲内(10〜500nm)とし、さらにこの複合粒子をビーズミル、などで微粉砕または分散し、ポリマーに配合することにより調整される。
なお、ここでいう複合粒子の分散粒子平均相当径とは、繊維を繊維長に対して直角方向に切断し、その繊維断面を電子顕微鏡により倍率10万倍で観察した際の25μm2の観察断面積当りの平均粒子分散面積S(μm2)としたとき、下記式により求められる値(Y)である。
Y(nm)=2×√(S/π)
ここで、芳香族ポリアミドと複合粒子の混合液は、均一な混合液として得られる。ここで、芳香族ポリアミド溶液と複合粒子の分散液に用いられる溶媒としては、該芳香族ポリアミドの上記溶媒を使用することができ、これらの溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
紡糸上、芳香族ポリアミド溶液と複合粒子の分散に用いられる溶媒は、同一であることが好ましい。
混合後の固形分濃度(芳香族ポリアミドおよび複合粒子の合計の濃度)は、通常、1〜20重量%、好ましくは3〜15重量%程度である。
すなわち、以上の本発明の複合粒子を含有する芳香族ポリアミド繊維を製造するには、上記芳香族ポリアミドを有機溶媒に溶解させて等方性のドープとなし、同じ有機溶媒に高濃度に分散させた複合粒子を添加して湿式紡糸する。ここで、ドープは、芳香族ポリアミドが溶解している限り、溶液重合を行った後の有機溶媒ドープそのままでも、別途得られた芳香族ポリアミドを有機溶媒に溶解させたものでもよい。特に、溶液重合反応を行った後のそのままのものが好ましい。
例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ナイロン66などのポリアミドのように溶融重合可能なポリマーの場合には、ジオールとのスラリー状態で重合前、もしくは重合途中に添加することも可能である。
また、上記の手法で得られた比較的高い濃度で複合粒子を含有するポリマーをマスターバッチとして、さらに複合粒子未添加のポリマー中に混練させることでも、目的とするポリマー組成物を得ることができる。
次いで、このポリマー組成物を、常法に従い、溶融紡糸、延伸することにより、本発明の難燃性繊維を得ることもできる。
本発明の耐熱性布帛は、本発明の上記難燃性繊維を用いて、編物や織物として形成されるが、消防服などの耐熱性防護服には、適当な強度を必要とするために織物が好ましく使用され、織物の場合にはその目付けが150〜350g/m2の範囲にあるものを使用することが実用的である。上記目付けが、150g/m2未満の場合には、充分な耐熱性能が得られない恐れがあり、一方、該目付けが、350g/m2を超える場合には、防護服にした場合の着用感が阻害されるので好ましくない。
本発明の難燃性繊維と他の難燃性繊維との混率は、前者が100〜50重量%、後者が0〜50重量%が適当で他の難燃性繊維が50重量%を超えると、本来の目的である耐熱性、耐炎性が低下するため好ましくない。
本発明の耐熱性布帛は、そのままで耐熱性防護服として縫製することができるが、該布帛の耐熱性の性能をアップするために、表地面(耐熱性防護服の表側面)に対して予め撥水性加工を施して耐水性の高い布帛とすることができる。上記撥水加工は、フッ素系の撥水性樹脂を用いて公知の方法に従って、コーティング法、スプレー法、あるいは、浸漬法などの加工方法により行うことができる。このように撥水性加工を施した耐熱性布帛を用いて作成した防護服では、消火作業の際に空洞部に水が浸入してくるのを防止することができるので、防護服の着用性能を向上させることができる。
本発明の耐熱性防護服は、好ましくは表地層、中間層および裏地層(遮熱層)からなる複合構造を有する防護服であって、該表地層、中間層、および遮熱層が下記(a)〜(c)の要件を同時に満足するものが、特に好ましい
(a)表地層が、本発明の難燃性繊維からなる耐熱性布帛で構成される。
(b)中間層が、透湿防水性を有する。
(c)遮熱層が、芳香族ポリアミド繊維からなる不織物または織編物から構成される。
また、(b)中間層は、透湿防水性を有するものであることが重要であり、芳香族ポリアミド繊維からなる布帛に透湿防水性の薄膜フィルムを積層したものが好ましく用いられる。
上記薄膜フィルム層と積層する布帛は、織物や編物、または、不織物が使用可能であるが、強度の点で織物が使用され、該織物に透湿防水性のある薄膜フィルムをラミネート加工したものが最適に例示される。(b)中間層に用いられる布帛の目付は、通常、50〜150g/m2である。
また、中間層を構成する薄膜フィルムとしては、透湿防水性を有するものであれば公知のものを使用することができるが、耐薬品性を兼ね備えたポリテトラフルオロエチレンからなる薄膜フィルムを使用するものが特に好ましく例示される。このような中間層の挿入により、透湿防水性や耐薬品性が向上し、着用者の汗の蒸散を促進するので、着用者のヒートストレスを減少することができる。上記薄膜フィルムの厚さは、通常、10〜50μm、その目付けは、通常、20〜50g/m2である。
以上の(b)中間層の総目付は、通常、70〜200g/m2である。
以上の3層構造よりなる本発明の耐熱性防護服の総目付は、通常、250〜750g/m2である。
なお、実施例中の各特性値は以下の方法で測定した。
<複合粒子の平均粒径>
複合粒子を、5重量%のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に分散した状態で、NMP分散径として求めた。NMP分散径は、濃厚系粒径アナライザー「FPIR−1000」(大塚電子(株)製)を用いて、動的光散乱法により求めた。
<分散性(フィルム中における複合粒子の分散粒子平均相当径)>
組成物を切断し、断面を電子顕微鏡により倍率10万倍で観察した際の25μm2の観察断面積当りの平均粒子分散面積S(μm2)としたとき、下記式により計算される(Y)を分散平均相当径とした。
Y(nm)=2×√(S/π)
<限界酸素指数(樹脂組成物)>
限界酸素指数の測定は、JIS L 1091 E法に準拠した測定法にて測定を実施した。
繊維を切断し、断面を電子顕微鏡により倍率10万倍で観察した際の25μm2の観察断面積当りの平均粒子分散面積S(μm2)としたとき、下記式により計算される(Y)を分散平均相当径とした。
Y(nm)=2×√(S/π)
JIS−L−1013に準じ、測定した。
<繊維の強伸度>
引張試験機(オリエンテック社製、商品名:テンシロン万能試験機、型式:RTC−1210A)を用いて、ASTM D885の手順に基づき、測定試料長500mm、チャック引張速度250mm/min、初荷重0.2cN/dtexの条件にて測定を実施した。
T/Toは、繊維の引張り強さ(T)の、複合粒子を含有していないことを除き、その他は上記繊維と同じ繊維からなる比較繊維の引張り強度(To)に対する比として求めた。
限界酸素指数の測定は、JIS L 1091 E法に準拠した測定法にて測定を実施した。
(測定条件)
試験片の区分 :E−2号
布帛の作成方法 :丸編生地(23ウェール/インチ、18コース/インチ)
点火器の熱源の種類:JIS K2240 1種1号(LPガス)
なお、以下の(a)もしくは(b)の早いほうで限界酸素指数を決定
(a)限界酸素指数を決定する際の燃焼長さ:50mm
(b)限界酸素指数を決定する際の燃焼時間:180秒
JIS L 1091引張強さA法に準拠した測定法にて測定を実施した。複合粒子を含有している耐熱性布帛の引張り強さを(T)、複合粒子を含有していない引張り強度を(To)とし、強度保持率を以下のように求めた。
強度保持率=T/To
<耐湿熱強度保持率>
温度80℃、湿度95%恒温恒湿層(ナガノ科研)中で100時間処理を行い、JIS L 1091引張強さA法に準拠した測定法にて測定を実施した。複合粒子を含有している耐熱性布帛の引張り強さを(D)、複合粒子を含有していない引張り強度を(Do)とし、強度保持率を以下のように求めた。
耐湿熱強度保持率=(D/Do)×100
<耐輻射熱性>
ISO 6942に準じ、熱流束が10kW/m2となるようにサンプルをセットし、二度火傷に達する時間を測定した。複合粒子を含有している耐熱性布帛の二度火傷に達する時間を(S)、複合粒子を含有していない耐熱性布帛の二度火傷に達する時間を(S0)として、(S/So)を耐輻射熱効果の指標とした。
チタンを含有する原料液として、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート溶液、ケイ素を含有する原料液として、オクタメチルシクロテトラシロキサン溶液を準備し、これらを複合粒子形成後の二酸化チタンおよび二酸化ケイ素の含有量が10重量%および90重量%となるように混合した。この混合された原料液を用い、上記で説明したナノクリエータのプラズマ入力電力を7kW、捕集機温度を120℃に設定し、複合粒子を製造した。なお、この複合粒子の平均粒径は、137nmであった。
次に、複合粒子10gを純水500gで1時間、分散・撹拌し、その後、フェニルエトキシシランを4g添加して、さらに24時間、分散・撹拌を行った。次に、ろ過後の沈殿物を110℃で24時間乾燥し、乾燥後の凝集体を解砕して、その外表面に表面処理層を有する複合粒子を得た。
このようにして得られたフィルムの限界酸素指数(LOI)を測定した。結果を表1に示す。
複合粒子形成後の二酸化チタンおよび二酸化ケイ素の含有量が、それぞれ、15重量%および85重量%となるように、原料液を調製した以外は実施例1と同じ条件で、複合粒子が添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのフィルムを得た。得られたフィルムに対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。なお、この複合粒子の平均粒径は、132nmであった。
複合粒子形成後の二酸化チタンおよび二酸化ケイ素の含有量が、それぞれ、20重量%および80重量%となるように、原料液を調製した以外は実施例1と同じ条件で、複合粒子が添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのフィルムを得た。得られたフィルムに対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。なお、この複合粒子の平均粒径は、112nmであった。
複合粒子形成後の二酸化チタンおよび二酸化ケイ素の含有量が、それぞれ、25重量%および75重量%となるように、原料液を調製した以外は実施例1と同じ条件で、複合粒子が添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのフィルムを得た。得られたフィルムに対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。なお、この複合粒子の平均粒径は、140nmであった。
複合粒子形成後の二酸化チタンおよび二酸化ケイ素の含有量が、それぞれ、30重量%および70重量%となるように、原料液を調製した以外は実施例1と同じ条件で、複合粒子が添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのフィルムを得た。得られたフィルムに対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。なお、この複合粒子の平均粒径は、133nmであった。
コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのフィルムに対する割合が1重量%になるようにした以外は実施例3と同じ条件で、複合粒子が添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのフィルムを得た。得られたフィルムに対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのフィルムに対する割合が40重量%になるようにした以外は実施例3と同じ条件で、複合粒子が添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのフィルムを得た。得られたフィルムに対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
複合粒子形成後の二酸化チタンおよび二酸化ケイ素の含有量が、それぞれ、40重量%および60重量%となるように、原料液を調製した以外は実施例1と同じ条件で、複合粒子が添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのフィルムを得た。得られたフィルムに対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。なお、この複合粒子の平均粒径は、143nmであった。
複合粒子形成後の二酸化チタンおよび二酸化ケイ素の含有量が、それぞれ、60重量%および40重量%となるように、原料液を調製した以外は実施例1と同じ条件で、複合粒子が添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのフィルムを得た。得られたフィルムに対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。なお、この複合粒子の平均粒径は、150nmであった。
複合粒子を添加しない以外は実施例1と同様にして、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのみからなるフィルムを得た。得られたフィルムに対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
複合粒子のコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドに対する配合量を0.5重量%とする以外は、実施例3と同様にして、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのフィルムを得た。得られたフィルムに対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート溶液のみからなる原料液を用いて、実施例1と同様にして、二酸化チタンの微粒子を得て、実施例1と同様にして、この二酸化チタン微粒子のみが添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのフィルムを得た。得られたフィルムに対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。なお、この粒子の平均粒径は、106nmであった。
オクタメチルシクロテトラシロキサン溶液のみからなる原料液を用いて、実施例1と同様にして、二酸化ケイ素の微粒子を得て、実施例1と同様にして、この二酸化ケイ素微粒子のみが添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのフィルムを得た。得られたフィルムに対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。なお、この粒子の平均粒径は、111nmであった。
水酸化マグネシウムの微粒子(共立マテリアル株式会社製
MG−23D)を用いて、実施例1と同様にして、この水酸化マグネシウム微粒子のみが添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのフィルムを得た。得られたフィルムに対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
炭酸カルシウムの微粒子(宇部マテリアルズ株式会社製
CS・3N−A)を用いて、実施例1と同様にして、この炭酸カルシウム微粒子のみが添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのフィルムを得た。得られたフィルムに対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
比較例5で得られた二酸化チタン微粒子、および比較例6で得られた二酸化ケイ素微粒子を用いて、複合粒子の形態ではなく、単に混合粒子として、実施例1と同様にして、二酸化チタン微粒子および二酸化ケイ素微粒子の混合粒子が添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのフィルムを得た。なお、二酸化チタンおよび二酸化ケイ素の割合は、それぞれ、20重量%、および80重量%であった。得られたフィルムに対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
このとき、樹脂であるコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドに対する複合粒子の配合量は10重量%と、従来から用いられていたような難燃剤の配合量と比較してかなり少量となっている。なお、水酸化マグネシウムや炭酸カルシウムを添加した比較例7や比較例8のフィルムでは、比較例3のフィルムと比較した場合には、限界酸素指数(LOI)の多少の上昇が見られたものの、その上昇率は約10%にとどまり、樹脂に対する配合量が10重量%では、充分に効果が発揮できない。
以上より、本発明の樹脂組成物では、樹脂に対する本発明の複合粒子の配合量が少量でも、高い難燃性を付与することができることが確認された。
なお、実施例7のフィルムの限界酸素指数(LOI)からも分かるように、複合粒子の配合量が多ければ多いほど難燃性が向上することはいうまでもない。しかしながら、一方で、複合粒子の配合量を増加させるほど、樹脂の機械的強度が低下してしまうという問題もある。本発明の難燃性樹脂組成物は、複合粒子の配合量が少量であっても難燃性を付与することができるので、樹脂に求められる性能を総合的に考慮して、難燃性と機械的強度のどちらをも満足させることができるような配合量を決定することができる。従って、使用目的に応じて、得られる樹脂組成物の設計の自由度を高めることができる。
チタンを含有する原料液として、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート溶液、ケイ素を含有する原料液として、オクタメチルシクロテトラシロキサン溶液を準備し、これらを複合粒子形成後の二酸化チタンおよび二酸化ケイ素の含有量が10重量%および90重量%となるように混合した。この混合された原料液を用い、上記で説明したナノクリエータのプラズマ入力電力を7kW、捕集機温度を120℃に設定し、複合粒子を製造した。なお、この複合粒子の平均粒径は、137nmであった。
次に、複合粒子10gを純水500gで1時間、分散・撹拌し、その後、フェニルエトキシシランを4g添加して、さらに24時間、分散・撹拌を行った。次に、ろ過後の沈殿物を110℃で24時間乾燥し、乾燥後の凝集体を解砕して、その外表面に表面処理層を有する複合粒子を得た。
次に、上記繊維を紡績糸(20/2)とし、2/1綾織に織成した織物(目付け150g/m2)を作成し、公知の方法で精練処理し、織物表面にある糊剤、油剤を除去した。これらの繊維、織物物性を表2〜3に示す。
複合粒子形成後の二酸化チタンおよび二酸化ケイ素の含有量が、それぞれ、15重量%および85重量%となるように、原料液を調製した以外は実施例8と同じ条件で、複合粒子が添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの繊維、織物を得た。得られた繊維、織物に対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2〜3に示す。なお、この複合粒子の平均粒径は、132nmであった。
複合粒子形成後の二酸化チタンおよび二酸化ケイ素の含有量が、それぞれ、20重量%および80重量%となるように、原料液を調製した以外は実施例8と同じ条件で、複合粒子が添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの繊維、織物を得た。得られた繊維、織物に対し、実施例8と同様の評価を行った。結果を表2〜3に示す。なお、この複合粒子の平均粒径は、112nmであった。
複合粒子形成後の二酸化チタンおよび二酸化ケイ素の含有量が、それぞれ、25重量%および75重量%となるように、原料液を調製した以外は実施例8と同じ条件で、複合粒子が添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの繊維、織物を得た。得られた繊維、織物に対し、実施例8と同様の評価を行った。結果を表2〜3に示す。なお、この複合粒子の平均粒径は、140nmであった。
複合粒子形成後の二酸化チタンおよび二酸化ケイ素の含有量が、それぞれ、30重量%および70重量%となるように、原料液を調製した以外は実施例8と同じ条件で、複合粒子が添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの繊維、織物を得た。得られた繊維、織物に対し、実施例8と同様の評価を行った。結果を表2〜3に示す。なお、この複合粒子の平均粒径は、133nmであった。
コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの繊維に対する割合が1重量%になるようにした以外は実施例10と同じ条件で、複合粒子が添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの繊維、織物を得た。得られた繊維、織物に対し、実施例8と同様の評価を行った。結果を表2〜3に示す。
コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの繊維に対する割合が30重量%になるようにした以外は実施例10と同じ条件で、複合粒子が添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの繊維、織物を得た。得られた繊維、織物に対し、実施例8と同様の評価を行った。結果を表2〜3に示す。
複合粒子形成後の二酸化チタンおよび二酸化ケイ素の含有量が、それぞれ、40重量%および60重量%となるように、原料液を調製した以外は実施例8と同じ条件で、複合粒子が添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの繊維、織物を得た。得られた繊維、織物に対し、実施例8と同様の評価を行った。結果を表2〜3に示す。なお、この複合粒子の平均粒径は、143nmであった。
複合粒子形成後の二酸化チタンおよび二酸化ケイ素の含有量が、それぞれ、60重量%および40重量%となるように、原料液を調製した以外は実施例8と同じ条件で、複合粒子が添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの繊維、織物を得た。得られた繊維、織物に対し、実施例8と同様の評価を行った。結果を表2〜3に示す。なお、この複合粒子の平均粒径は、150nmであった。
複合粒子を添加しない以外、実施例8と同様にして、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのみからなる繊維、織物を得た。得られた繊維、織物に対し、実施例8と同様の評価を行った。結果を表2〜3に示す。
複合粒子のコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドに対する配合量を0.5重量%とする以外は実施例10と同様にして、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの繊維、織物を得た。得られた繊維、織物に対し、実施例8と同様の評価を行った。結果を表2〜3に示す。
テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート溶液のみからなる原料液を用いて実施例8と同様にして、二酸化チタンの微粒子を得て、実施例8と同様にして、この二酸化チタン微粒子のみが添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの繊維、織物を得た。得られた繊維、織物に対し、実施例8と同様の評価を行った。結果を表2〜3に示す。なお、この粒子の平均粒径は、106nmであった。
オクタメチルシクロテトラシロキサン溶液のみからなる原料液を用いて実施例8と同様にして、二酸化ケイ素の微粒子を得て、実施例8と同様にして、この二酸化ケイ素微粒子のみが添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの繊維、織物を得た。得られた繊維、織物に対し、実施例8と同様の評価を行った。結果を表2〜3に示す。なお、この粒子の平均粒径は、111nmであった。
水酸化マグネシウムの微粒子(共立マテリアル株式会社製
MG−23D)を用いて実施例8と同様にして、この水酸化マグネシウム微粒子のみが添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの繊維、織物を得た。得られた繊維に対し、実施例8と同様の評価を行った。結果を表2〜3に示す。
炭酸カルシウムの微粒子(宇部マテリアルズ株式会社製
CS・3N−A)を用いて実施例8と同様にして、この炭酸カルシウム微粒子のみが添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの繊維、織物を得た。得られた繊維、織物に対し、実施例8と同様の評価を行った。結果を表2〜3に示す。
比較例14で得られた二酸化チタン微粒子、および比較例15で得られた二酸化ケイ素微粒子を用いて、複合粒子の形態ではなく、単に混合粒子として、実施例8と同様にして、二酸化チタン微粒子および二酸化ケイ素微粒子の混合粒子が添加されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの繊維、織物を得た。なお、二酸化チタンおよび二酸化ケイ素の割合は、それぞれ、20重量%、および80重量%であった。得られた繊維、織物に対し、実施例8と同様の評価を行った。結果を表2〜3に示す。
このとき、ポリマーであるコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドに対する複合粒子の配合量は10重量%と、従来から用いられていたような難燃剤の配合量と比較してかなり少量となっている。なお、水酸化マグネシウムや炭酸カルシウムを添加した比較例16や比較例17の繊維や布帛では、比較例12の繊維や布帛と比較した場合には、限界酸素指数(LOI)の多少の上昇が見られたものの、その上昇率は約10%にとどまり、ポリマーに対する配合量が10重量%では、充分に効果が発揮できない。
以上より、本発明の難燃性繊維や耐熱性布帛では、ポリマーに対する本発明の複合粒子の配合量が少量でも、高い難燃性を付与することができることが確認された。
なお、実施例14の繊維や布帛の限界酸素指数(LOI)からも分かるように、複合粒子の配合量が多ければ多いほど難燃性が向上することはいうまでもない。しかしながら、一方で、複合粒子の配合量を増加させるほど、繊維および布帛の機械的強度が低下してしまうという問題もある。本発明の難燃性繊維や布帛は、複合粒子の配合量が少量であっても難燃性を付与することができるので、繊維や布帛に求められる性能を総合的に考慮して、難燃性と機械的強度のどちらをも満足させることができるような配合量を決定することができる。従って、使用目的に応じて、得られる繊維や布帛の設計の自由度を高めることができる。
また、本発明の難燃性繊維や耐熱性布帛は、難燃性に優れ、溶接防護衣、炉前服、工場やガソリンスタンドなどの耐熱性防護服の用途に有用である。
Claims (21)
- 芳香族ポリアミドからなる樹脂に対し、二酸化チタンと二酸化ケイ素とを主成分とし、二酸化チタンの含有量が10〜30重量%、および二酸化ケイ素の含有量が70〜90重量%である複合粒子を1重量%以上含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物。
- 樹脂組成物の限界酸素指数(LOI)が30以上である請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
- 複合粒子が、二酸化チタンからなる核と、二酸化ケイ素の被覆層とを有する請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
- 複合粒子が、さらに表面処理層を有する請求項3に記載の難燃性樹脂組成物。
- 表面処理層がシラン系カップリング剤からなる請求項4に記載の難燃性樹脂組成物。
- 難燃性樹脂組成物中における複合粒子の分散粒子平均相当径が10〜200nmの範囲内にある、請求項4に記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1〜6いずれかに記載の難燃性樹脂組成物を繊維化してなる難燃性繊維であって、繊維中に、二酸化チタンと二酸化ケイ素とを主成分とし、二酸化チタンの含有量が10〜30重量%、および二酸化ケイ素の含有量が70〜90重量%である複合粒子を1〜30重量%含有することを特徴とする難燃性繊維。
- 限界酸素指数(LOI)が30以上である請求項7に記載の難燃性繊維。
- 繊維の引張り強さを(T)とし、上記複合粒子を含有していないことを除き、その他は上記繊維と同一の繊維からなる比較繊維の引張り強度を(To)として、この比(T/To)が0.7以上である、請求項7に記載の難燃性繊維。
- 延伸配向されてなる、請求項7に記載の難燃性繊維。
- 上記難燃性繊維中における上記複合粒子の分散粒子平均相当径が10〜200nmの範囲内にある、請求項7に記載の難燃性繊維。
- 単糸繊度が0.5〜50dtexである請求項7に記載の難燃性繊維。
- 請求項7に記載の難燃性繊維を用いたことを特徴とする耐熱性布帛。
- 限界酸素指数(LOI)が30以上である請求項13に記載の耐熱性布帛。
- 繊維が、請求項7に記載した繊維と他の繊維とを含む耐熱性布帛であって、その限界酸素指数(LOI)が28以上である請求項13に記載の耐熱性布帛。
- 温度80℃、湿度95%環境下において、100時間後の耐湿熱強度保持率(D/D0)が90%以上である請求項13に記載の耐熱性布帛。
- 上記複合粒子を含有している耐熱性布帛の引張り強さを(T)とし、複合粒子を含有していないことを除き、その他は上記繊維と同一の繊維からなる比較布帛の引張り強度を(To)として、この比(T/To)で表される強度保持率が0.7以上である、請求項13に記載の耐熱性布帛。
- 少なくとも表地層を有する防護服であって、この表地層に請求項13に記載の耐熱性布帛を用いた耐熱性防護服。
- 表地層と裏地層からなる複合構造を有する防護服であって、表地層と裏地層の少なくとも1層に請求項13に記載の耐熱性布帛を用いた耐熱性防護服。
- 表地層、中間層、および裏地層からなる複合構造を有する防護服であって、表地層および裏地層の少なくとも1層に、請求項13に記載の耐熱性布帛を用いた耐熱性防護服。
- 表地層に耐熱性布帛を使用してなり、上記複合粒子を含有している耐熱性布帛の二度火傷に達する時間を(S)、上記複合粒子を含有していない耐熱性布帛の二度火傷に達する時間を(S0)とし、比(S/So)で表される耐輻射熱性が1.04以上である、請求項18に記載の耐熱性防護服。
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