JP5672823B2 - 超音波探触子用バッキング材、それを用いた超音波探触子、及び超音波医用画像診断装置 - Google Patents

超音波探触子用バッキング材、それを用いた超音波探触子、及び超音波医用画像診断装置 Download PDF

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Description

本発明は、超音波探触子用バッキング材、それを用いた超音波探触子、及び超音波医用画像診断装置に関する。詳しくは、超音波探触子を構成する超音波振動子から後方へ放射される不要な超音波の減衰率が高い上に、適切な音響インピーダンスを有し、かつダイシングする際の熱変形が少ない超音波探触子用バッキング材等に関する。
超音波医用画像診断装置などに用いられる超音波探触子においては、S/N比の向上による高画質化のために、より高感度のものが求められている。
超音波探触子の高感度化には、超音波の送波能力、受波感度の向上が必要である。その方法の一つとして、超音波振動子(圧電振動子)の背面側に、超音波振動子から後方へ放射される不要な超音波を減衰、吸収するために設けられるバッキング材(背面側負荷部材)の音響インピーダンスを低減する方法がある。
バッキング材の音響インピーダンスを低減することは、バッキング材側に放射される超音波を低減し、探触子前面の超音波送受波面からの超音波の送波を効率的にするばかりでなく、受波系の音響インピーダンス低減による受波感度の向上にもなる。
超音波探触子の構成部材の中で、バッキング材は、ダンピング効果による分解能の向上、超音波振動子の支持およびバッキング材側へ放射される超音波の吸収といった役目を果たしている。
近年、超音波探触子においては、超音波振動子の超音波送受波面側に設けられる音響整合層(マツチング層)を多層化したり、超音波振動子を構成する圧電体に複合圧電材料を用いるなどしてパルスエコー波形の改善が図られているため、バッキング材の音響インピーダンスを低減する方法はより有効となって来ている。
例えば、超音波診断装置の超音波探触子においては、バッキング材の音響インピーダンスを2〜5Mrayls程度にすることで、感度は改善される。しかし、高感度化に必要とされる音響インピーダンス2〜4Mrayls程度のバッキング材を得ようとする場合でも、十分な硬度と吸収減衰があることが必要となるが、このような条件を満たす材料を得ることは従来困難であった。
バッキング材の音響的特性(物性)が良好でない場合、そのバッキング材において十分に超音波の吸収、減衰を行えず、その結果、超音波画像の画質の低下を招く。特に、バッキング材における音響インピーダンスが設計通りの値であり、しかも、それ全体として音響インピーダンスが均一であるのが望ましい。すなわち、バッキング材は、音響インピーダンスと減衰を所望の値に全体として均一に合わせる必要がある。
従来、バッキング材として、ゴム材にフェライト粉末を混入したものが用いられている。しかし、そのようなバッキング材は、超音波の減衰率を高くするのが困難であるという問題がある。また、そのようなバッキング材は、高周波のプローブを作る際に柔らかすぎるため、細かいピッチにダイシングする際に細かくダイスすることができず、特にサブダイスを設けようとする際に均一の深さに切り込むことができず問題となっている。また、ダイシングする際に、熱により変形し易いという問題がある。さらに、ゴム材の場合は、音響インピーダンスと減衰を任意に調整することが難しく、特に2〜5Mraylsの低い音響インピーダンスのものは無かった。
また、従来、エポキシ樹脂に対して、タングステンなどの粉末(粒子)及びガラスマイクロバルーン(粒子)などをフィラーとして混入してなるバッキング材も知られている(例えば特許文献1参照)。このバッキング材によれば、高い剛性と高い減衰特性とを得ることができる。
しかし、この場合は、ゴムを使用したような柔軟さに起因するダイシング時の問題は発生しないものの、タングステンなどのフィラー粒子は単位体積当たりの質量(密度)が極めて大きいために、エポキシ樹脂などにそれを混入した際に、その粒子が下部に沈降し、上下方向において(厚さ方向において)、単位体積当たりにおける粒子個数が不均一となる。つまり、上下方向において、バッキングの音響的物性(特に音響インピーダンス)を均一にできないという問題がある。また、そのため、高い減衰を得ることが難しい。特に、減衰のためのフィラーの分散が難しいため、必要な量のフィラーを入れることがなかなかできなかった。
上記のような問題に対して、フィラーをシリコーンゴム等と複合して混合する技術も開示されている。(例えば特許文献2及び3参照。)しかし、このように複合粒子を作る際に、シリコーンゴムとフィラーとの間の接着が悪く、複合粒子化する際には、フィラーがシリコーンゴムで十分に覆われず、シリコーンゴム部とフィラー部に分離してしまい、複合粒子としての機能を出せないという問題がある。そのため、複合粒子の量を多量に入れないと充分な減衰を得ることができず、その結果バッキング材としての強度やトランスデューサーを組み立てる際の接着性が不足してしまうという問題があった。接着にエポキシ接着剤を用いる場合に、顕著に接着強度の低下があり、その後の工程において、剥離などの問題を発生し、歩留まりを下げる等という問題が大きい。
特開平3−284100号公報 特開昭62−118700号公報 特開2003−190162号公報
本発明は、上記問題・状況にかんがみてなされたものであり、その解決課題は、超音波探触子を構成する超音波振動子から後方へ放射される不要な超音波の減衰率が高い上に、適切な音響インピーダンスを有し、かつダイシングする際の歩留まりにおいて優れている超音波探触子用バッキング材を提供することである。また、それを用いた超音波探触子及び超音波医用画像診断装置を提供することである。
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.超音波探触子を構成する超音波振動子の後方に設けられ、当該超音波振動子から後方に放射された超音波を減衰する超音波探触子用バッキング材であって、当該バッキング材が母材とフィラー混合物を含有し、当該フィラー混合物として、少なくともエラストマーとフィラーとを複合したフィラー複合粒子を含有し、かつ当該フィラー複合粒子の平均粒径が50〜200μmの範囲内にあり、当該フィラー複合粒子のうち、粒径が30μm以下の微粒子の含有量が、前記フィラー複合粒子全体に対して20vol%以下であることを特徴とする超音波探触子用バッキング材。
2.前記フィラー複合粒子が、シランカップリング剤又はその反応物を含有することを特徴とする前記第1項に記載の超音波探触子用バッキング材。
3.前記フィラー複合粒子の密度が、5.0×10〜15×10kg/mの範囲内であることを特徴とする前記第1項又は第2項に記載の超音波探触子用バッキング材。
4.前記フィラー複合粒子に含有されるフィラーが、予め前記カップリング剤で表面処理を施されたことを特徴とする前記第1項から第3項までのいずれか一項に記載の超音波探触子用バッキング材。
5.前記第1項から第4項までのいずれか一項に記載の超音波探触子用バッキング材を用いたことを特徴とする超音波探触子。
6.前記第1項から第4項までのいずれか一項に記載の超音波探触子用バッキング材を用いた超音波探触子を具備していることを特徴とする超音波医用画像診断装置。
本発明の上記手段により、超音波探触子を構成する超音波振動子から後方へ放射される不要な超音波の減衰率が高い上に、適切な音響インピーダンスを有し、かつダイシングする際の歩留まりにおいて優れている超音波探触子用バッキング材を提供することができる。また、それを用いた超音波探触子及び超音波医用画像診断装置を提供することができる。
本発明の効果の発現機構については、明確になっていないが、フィラー複合粒子の平均粒径が50〜200μmの範囲内にあり、当該フィラー複合粒子のうち、粒径が30μm以下の微粒子の含有量が20vol%以下であるという条件を満たさない場合には、フィラー複合粒子中でのフィラーの個数とエラストマーの比率が変わってしまい、バッキング材の強度が充分に出なくなるためと推測される。また、当該フィラー複合粒子が、シランカップリング剤又はその反応物を含有し、フィラーが、予め当該カップリング剤で表面処理を施されると、フィラー複合粒子中のフィラーの数が適度な個数となるためと推測される。
超音波探触子の構成を示す概要図 一定ピッチで各素子にダイシングした超音波探触子の概要図 超音波医用画像診断装置の外観構成を示す概要図 超音波医用画像診断装置の電気的な構成を示すブロック図 フィラー複合粒子−1の粒径と含有量の関係(粒径分布)を示す図 フィラー複合粒子−2の粒径と含有量の関係(粒径分布)を示す図 フィラー複合粒子−3の粒径と含有量の関係(粒径分布)を示す図 フィラー複合粒子−4の粒径と含有量の関係(粒径分布)を示す図 フィラー複合粒子−5の粒径と含有量の関係(粒径分布)を示す図 フィラー複合粒子−6の粒径と含有量の関係(粒径分布)を示す図
本発明の超音波探触子用バッキング材は、超音波探触子を構成する超音波振動子の後方に設けられ、当該超音波振動子から後方に放射された超音波を減衰する超音波探触子用バッキング材であって、当該バッキング材が母材とフィラー混合物を含有し、当該フィラー混合物として、少なくともエラストマーとフィラーとを複合したフィラー複合粒子を含有し、かつ当該フィラー複合粒子の平均粒径が50〜200μmの範囲内にあり、当該フィラー複合粒子のうち、粒径が30μm以下の微粒子の含有量が20vol%以下であることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項6までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
なお、「超音波振動子の後方」とは、超音波振動子の超音波を送受信する側(前面側)とは反対側(背面側)に位置する空間をいう。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記フィラー複合粒子が、シランカップリング剤又はその反応物を含有することが好ましい。また、当該フィラー複合粒子の密度が、5.0×10〜15×10kg/mの範囲内であることが好ましい。さらに、当該フィラー複合粒子に含有されるフィラーが、予め前記カップリング剤で表面処理を施されたものであることが好ましい。
本発明の超音波探触子用バッキング材は、超音波探触子及び超音波医用画像診断装置に好適に用いることができる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
(超音波探触子用バッキング材)
本発明の超音波探触子用バッキング材は、超音波探触子を構成する超音波振動子の後方に設けられ、当該超音波振動子から後方に放射された超音波を減衰する超音波探触子用バッキング材であって、当該バッキング材が母材とフィラー混合物を含有し、当該フィラー混合物として、エラストマーとフィラーとを複合したフィラー複合粒子を含有し、かつ当該フィラー複合粒子の平均粒径が50〜200μmの範囲内にあり、当該フィラー複合粒子のうち、粒径が30μm以下の微粒子の含有量が20vol%以下であることを特徴とする。
当該超音波探触子用バッキング材の音響インピーダンスは、1.8〜6.0MRaylsの範囲内であることが好ましい。
以下、このために必要な構成要素について詳細な説明をする。
〈バッキング材の母材〉
本発明において、バッキング材の母材としては、天然ゴム、フェライトゴム、エポキシ樹脂、塩化ビニル、ポリビニルブチラール(PVB)、ABS樹脂、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVAL)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、フッ素樹脂(PTFE)ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体などの熱可塑性樹脂などを用いることができる。
好ましいバッキング材としては、ゴム系複合材料及び又はエポキシ樹脂複合材からなるものであり、その形状は圧電体や圧電体を含むプローブヘッドの形状に応じて、適宜選択することができる。
ゴム系複合材としては、ゴム成分及び充填剤を含有する物が好ましく、JIS K6253に準拠したスプリング硬さ試験機(デュロメータ硬さ)におけるタイプAデュロメータでA70からタイプDデュロメータでD70までの硬さを有するものであり、さらに、必要に応じて各種の他の配合剤を添加することもできる。ゴム成分としては、たとえば、エチレンプロピレンゴム(EPDM又はEPM)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム、EPDMとHNBRのブレンドゴム、EPDMとニトリルゴム(NBR)のブレンドゴム、NBR及び/又はHNBRと高スチレンゴム(HSR)のブレンドゴム、EPDMとHSRブレンドゴムなどが好ましい。
より好ましくは、エチレンプロピレンゴム(EPDM又はEPM)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、EPDMとHNBRのブレンドゴム、EPDMとニトリルゴム(NBR)のブレンドゴム、NBR及び/又はHNBRと高スチレンゴム(HSR)のブレンドゴム、EPDMとHSRブレンドゴムなどが挙げられる。本発明に係るゴム成分は、加硫ゴム及び熱可塑性エラストマーなどのゴム成分の一種を単独で使用してもよいが、ブレンドゴムのように二種以上のゴム成分をブレンドしたブレンドゴムを用いてもよい。
ゴム系複合材料には、配合剤を必要に応じて添加することができ、このような配合剤としては、加硫剤、架橋剤、硬化剤、それらの助剤類、劣化防止剤、酸化防止剤、着色剤などが挙げられる。たとえば、カーボンブラック、二酸化ケイ素、プロセスオイル、イオウ(加硫剤)、ジクミルパーオキサイド(Dicup、架橋剤)、ステアリン酸などを配合することができる。これらの配合剤は必要に応じて使用されるものであるが、その使用量は、一般にゴム成分100質量部に対しそれぞれ1〜100質量部程度であるが全体的バランスや特性によって適宜変更することもできる。
エポキシ樹脂複合剤としては、エポキシ樹脂成分及び充填剤を含有するのが好ましく、さらに必要に応じて各種の配合剤を添加することもできる。エポキシ樹脂成分としては、たとえばビスフェノールAタイプ、ビスフェノールFタイプ、レゾールノボラックタイプ、フェノール変性ノボラックタイプ等のノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン構造含有タイプ、アントラセン構造含有タイプ、フルオレン構造含有タイプ等の多環芳香族型エポキシ樹脂、水添脂環型エポキシ樹脂、液晶性エポキシ樹脂などが挙げられる。本発明に係るエポキシ樹脂成分は単独で用いても良いが、ブレンド樹脂のように二種類以上のエポキシ樹脂成分を混合して用いても良い。
本発明においては、当該母材として、ナノコンポジット化エポキシ樹脂を用いることもできる。
本発明に係る「ナノコンポジット化エポキシ樹脂」とは、エポキシ樹脂中に硬化剤又は硬化剤と硬化促進剤と共に、平均粒径が10〜1000nmのナノサイズの微粒子をあらかじめ分散させて新たな機能特性を発現させたエポキシ樹脂をいう。
本発明において用いることができるナノコンポジット化エポキシ樹脂としてのエポキシ樹脂は、5℃〜28℃程度の範囲の常温について、さらには100℃程度までの温度範囲に液状のものであれば、特にその種類は限定されることなく各種のものであってよい。
例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はレゾルシンをベースとするジグリシジルエーテル;フェノールノボラック樹脂又はクレゾールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル;水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル;グリシジルアミン型のもの;線状脂肪族エポキシド型のもの;フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸又はテトラヒドロフタル酸のジグリシジルエステル等が挙げられる。
これらの液状エポキシ樹脂のエポキシ等量は、100〜500の範囲内にあることが好ましく、特に150〜250の範囲内にあることが好ましい。
これらの液状エポキシ樹脂は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記液状エポキシ樹脂の中では、粘度の低いビスフェノールA又はビスフェノールFをベースとするジグリシジルエーテルが好ましい。
また、液状エポキシ樹脂組成物を用いて得られる成形体に靱性や粘着性を付与するために、上記液状エポキシ樹脂に、エチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ダイマー酸型エポキシ樹脂、エポキシ変性NBRの等の変性エポキシ樹脂を組み合わせて用いてもよい。
本発明において用いるエポキシ樹脂用硬化剤(B)は、50〜200℃に加熱されることにより、エポキシ樹脂のエポキシ基と架橋反応を起こし、エポキシ樹脂組成物を硬化させる作用を有する。
硬化剤としては、従来、エポキシ樹脂用硬化剤として用いられているものを使用することができる。
その具体例としては、ジシアンジアミド;4,4′−ジアミノヒフェニルスルホン;2−n−ヘプタデシルイミダゾールのようなイミダゾール誘導体;イソフタル酸ジヒドラジド;N,N−ジアルキル尿素誘導体;N,N−ジアルキルチオ尿素誘導体;テトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物;イソホロンジアミン、m−フェニレンジアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン;ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、トリスジメチルアミノメチルフェノール、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等のアミノアルキル環状化合物;メラミン;フッ化ホウ素錯化合物;各種ダイマー酸とジアミンの付加物よりなるポリアミドアミン;等が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂用硬化剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記エポキシ樹脂成分の硬化助剤としては、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン化合物、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン化合物等が挙げられる。
液状エポキシ樹脂組成物の全体量に対しての配合割合については、エポキシ樹脂100質量部に対して、通常、硬化剤は3〜100質量部の範囲内とし、硬化促進剤については、硬化剤に対しての比率が1/5以下程度を考慮することができる。
本発明に係る微粒子としては、無機化合物又は有機化合物が挙げられる。
微粒子の1次平均粒子径としては、ナノコンポジット化し、安定にエポキシ樹脂中の混合し、音響特性を改良するという観点から、1000nm(1μm)以下が好ましく、更に好ましくは500nm以下であり、特に好ましくは200nm以下である。
無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムがある。
本発明に係る二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)、MEK−ST(日産化学(株)製)、OSCAL(触媒化成(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。さらに、スメクタイトとしては、ルーセントタイトSWN、SAN、STN、SEN、SPN(コープケミカル(株))、ベンナイトとしては、エスベン、C、E、W、WX、N−400、NX、NX80、NZ、NZ70、NE、NEZ、NO12S、NO12等や、オルガナイト、D、T(以上(株)ホージュン製)等が挙げることができる。本発明に係る酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)、QUEEN TITANIC(触媒化成(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
有機化合物としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、弗素樹脂及び等のポリマーが好ましい。中でも、アクリル樹脂、ブタジエン樹脂及びシリコーン樹脂が好ましく用いることができる。上記記載のアクリル樹脂及びシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、アクリル樹脂としては、樹脂微粒子、MG−151、MG−152、MG−153、MG−154、MG−251、S−1200、S−0597、S−1500、S−4100、4000(以上日本ペイント(株)製)、リオスフィア(東洋インキ(株)製)等が好ましい。
見掛比重が大きい程、高濃度のナノコンポジット化エポキシ樹脂を作ることが可能になり、凝集物が減少し、目標とする音響特性が良化するため好ましい。
1次粒子の平均径が200nm以下、見掛比重が70g/リットル以上の二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることができる。また、例えば、アエロジル200V、アエロジルR972V(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、それらを使用することができる。
このようなナノコンポジット化エポキシ樹脂には市販の物も好ましく用いることができる。例えば、シリカナノコンポジットとしては、Nanopox F400、F440、F520、F630、F640、ALBIPOX F080、F081等が、NBRナノコンポジットとしては、ALBIPOX 1000、2000、2002、3001等、シリコーンゴムナノコンポジットとしては、ALBIDURE EP2240、EP5340、PU5640、6240UP、VE3320(NANORESIN社製)、アクリセットBPA328、BPF307(日本触媒製)が挙げられる。
〈フィラー混合物:フィラー複合粒子〉
本発明の超音波探触子用バッキング材は、母材とフィラー混合物を含有し、かつ当該フィラー混合物として、エラストマーとフィラーとを複合したフィラー複合粒子を少なくとも二種含有することを特徴とする。
本発明に係るフィラー混合物とは、後述するフィラーとエラストマーとを混合・分散して形成された混合物、及び、フィラー上にエラストマー膜を形成させて、又は、フィラーにエラストマーを含浸させて複合化し形成された複合物質をいう。
本発明においては、粒子状のフィラー複合物質、すなわち、フィラー複合粒子であることが好ましい。
本発明において用いることができるフィラー複合粒子としては、特にエラストマーとフェライトの複合粒子、及びエラストマーとフェライトとガラスバルーンとの複合粒子が好適に用いられる。
本発明においては、当該フィラー複合粒子の密度が、5.0×10〜15×10kg/mであることが好ましい。
当該フィラー複合粒子の密度は、JIS−K7112 02に記載のA法(水中置換法)の密度測定方法に準じて、電子比重計SD−200L(アルファミラージュ製)を用いて測定した。
なお、当該密度を上記範囲内にするための調整は、当該フィラー複合粒子を構成するエラストマーとフィラーの化学種の選択の適正化と使用量、組成、フィラー複合粒子の作製方法における温度、濃度条件等の適正化により行うことができる。
本発明においては、当該フィラー複合粒子の平均粒径は50〜200μmの範囲内にあり、当該フィラー複合粒子のうち、粒径が30μm以下の微粒子の含有量が20vol%以下であることを特徴とする。
本発明においては、当該平均粒径は、レーザー式粒度分布測定機(LMS−30(セイシン企業製))を使用して測定した。
〈エラストマー〉
本発明に係るフィラー複合粒子は、エラストマーとフィラーとを複合して形成された粒子であることを特徴とする。
本願において、「エラストマー」とは、室温でゴム弾性を有する物質をいう。本発明においては、熱硬化性エラストマー又は熱可塑性エラストマーを用いることができるが、例えば、柔軟性エポキシ樹脂、シリコーンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム等の熱硬化性エラストマーを用いることが好ましい。
《柔軟性エポキシ樹脂》
本発明において用いることができる「柔軟性エポキシ樹脂」とは、樹脂を構成する分子の両端にエポキシ基を有し、かつ、一方のエポキシ基と他方のエポキシ基との間に数平均分子量が50〜10000である柔軟な骨格を有するエポキシ樹脂をいう。
このような柔軟性エポキシ化合物を用いることにより、本発明に係るフィラー複合粒子は、音響特性優れ、かつ接着性に優れたものとなる。
なお、本明細書において、「柔軟な骨格」とは、その骨格のみからなる樹脂のガラス転移温度が25℃以下となるような骨格を意味する。上記柔軟な骨格部分は、電子部品用接着剤の硬化物の常温における柔軟性、接着性等の観点から、数平均分子量の下限が50、上限が10000である。数平均分子量の好ましい下限は100、好ましい上限は2000である。
上記柔軟性エポキシ化合物としては、特に限定されず、例えば、1,2−ポリブタジエン変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、1,4−ポリブタジエン変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、ポリプロピレンオキサイド変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、ポリエチレンオキサイド変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、アクリルゴム変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、ウレタン樹脂変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、ポリエステル樹脂変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、1,2−ポリブタジエン変性グリシジルエーテル、1,4−ポリブタジエン変性グリシジルエーテル、ポリプロピレンオキサイド変性グリシジルエーテル、ポリエチレンオキサイド変性グリシジルエーテル、アクリルゴム変性グリシジルエーテル、ウレタン樹脂変性グリシジルエーテル、ポリエステル樹脂変性グリシジルエーテル、及び、これらの水添化物等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物は単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。なかでも、上記柔軟な骨格がブタジエンゴム、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、アクリルゴム、及び、これらの水添加物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物に由来するエポキシ化合物が好適に用いられる。更に好ましくは、ブタジエンゴム又はこれらの水添加物に由来する柔軟な骨格を有するエポキシ化合物が好ましい。
上記柔軟エポキシ化合物としては、反応速度が速いことから、分子内に芳香族骨格を有するものが好適である。このような芳香族骨格を有するエポキシ化合物としては特に限定されず、例えば、1,2−ポリブタジエン変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、1,4−ポリブタジエン変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、ポリプロピレンオキサイド変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、ポリエチレンオキサイド変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、アクリルゴム変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、ウレタン樹脂変性ビスフェノールAグリシジルエーテル、ポリエステル樹脂変性ビスフェノールAグリシジルエーテル等が挙げられる。なかでも、グリシジル基が芳香族骨格に直接結合している構造を有するものは、特に反応速度が速い。
使用できる樹脂としては市販されている物では、例えば、EPICLON EXA−4816、EXA−4822、EXA−4850−150、EXA−4850−1000、TSR−960、TSR−601(DIC製)、アデカレジンEBRシリーズ、EPUシリーズ、C−1116A/B((テスク製)、デュラルコ 4583(コトロニクス社製)、Albiflex 296、348、XP544、712(ナノレジン社製)エポフレンドAT501、CT310(ダイセル化学製)、D.E.R.732(ダウケミカル製)、EPB−13(日本曹達社製)が挙げることができる。
〈フィラー〉
本発明において用いることができるフィラーとしては、樹脂に含有させることができる従来公知の種々のフィラーを用いることができる。本発明においては、比重が5.0以上のフィラーか1以下のフィラーを用いることが好ましい。
比重が5.0以上のフィラーとしては、以下の無機粒子を好ましく用いることができる。下記括弧内の数値は、各物質の比重を表す。
フェライト(5.6)、酸化タングステン(7.2)、酸化イットリビウム(9.2)、酸化ビスマス(8.9)、酸化亜鉛(5.6)、タングステン(19.3)、酸化ジルコニウム(5.9)、酸化スズ(7.0)、酸化ニッケル(6.7)、酸化バリウム(5.7)、酸化マンガン(5.0)、酸化イットリウム(5.0)、酸化インジウム(7.2)、酸化タンタル(8.2)、チタン酸バリウム(6.1)等を上げることができる。
比重が1以下のフィラーとしては、中空の粒子が好ましい。中空粒子には、中空樹脂粒子や中空無機粒子があり何れも好ましく用いることができるが、中空無機粒子の方がより好ましい。中空粒子は、内部に空洞を有する粒子であり、粒子内部に1個の空洞を有していてもよく、粒子内に複数の空洞を有していてもよい。また、中空粒子は、多孔性中空粒子であってもよい。中空粒子としては、アクリル、もしくはアクリルニトリル等のアクリル系樹脂、又はポリスチレン樹脂等の合成樹脂などの中空樹脂粒子、シリカ、アルミナなどの中空無機粒子などが挙げられる。
ガラスバルーン、中空シリカ(0.30)、セノライト(0.76)、フェノール樹脂マイクロバルーン(0.15)ユリア樹脂マイクロバルーン(0.13)、ポリメタクリル酸メチルバルーン(0.40)等を上げることができる。
フィラーの平均粒子径は、100nm〜500μm、特に500nm〜100μm、さらに好ましくは5〜50μmであるのが好ましい。
なお、フィラーの平均粒子径は、バッキング層を薄く切断し、透過型電子顕微鏡により倍率100万倍程度で観測し少なくとも100個の中空粒子の面積円相当径を求めた数平均値を用いる場合や、もっと簡単には、レーザー式粒度分布測定機(例えば、LMS−30(セイシン企業製))を使用して測定できる。
上記フィラーのうち、特に好ましいのは、コスト、比重等の観点から、フェライト、酸化タングステン、酸化亜鉛、タングステン及び、中空シリカ、ガラスバルーンである。
(シランカップリング剤)
本発明に係るフィラー複合粒子は、シランカップリング剤又はその反応物を含有することが好ましい。
本願でいう「シランカップリング剤」とは、分子中に二個以上異なった反応基(メトキシ基、エトキシ基、シラノール基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基など)をもつ有機ケイ素単量体をいう。
本発明において用いられるシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)エチルジメトキシシラン、γ−(アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよく、二種以上混合して用いてもよい。
(表面処理)
本発明においては、フィラー複合粒子に含有されるフィラーが、予め前記シランカップリング剤で表面処理を施していることが好ましい。当該表面処理の方法としては、従来公知の種々の方法を採用することができる。
例えば、シランカップリング剤の所定量を、酢酸、メタノール等と水との混合溶媒に溶解し、表面処理液を調製する。この表面処理液に、フィラーを入れ、十分に撹拌し、表面処理を行う。その後、フィラーと処理液を分離した後で、処理済みのフィラーを乾燥機中にて加熱処理を行うことにより、表面処理済のフィラーを得る。
〈フィラー複合粒子の作製方法〉
本発明に係るフィラー複合粒子の作製方法としては、従来公知の種々の方法を採用することができるが、例えば、特開昭62−118700号公報、特開2003−190162号公報に開示されている方法を採用することができる。
具体的には、例えば、フィラーの粉体を溶媒で希釈した熱硬化性エラストマーの溶液中に浸し、良く攪拌した後、余分な溶液を捨て、常温で乾燥させ溶媒を蒸発させ、その後電気炉内でエラストマーを加熱硬化させ、このエラストマーで被覆されたフィラー粉体をフィラー複合粒子として得ることができる。
また、別の作製方法として、まず、流動体としてのエラストマーを作製するため、あらかじめエラストマーと硬化剤とを混合し十分に攪拌しておく、この流動体としてのエラストマーに対して、フィラー粒子を所定量添加し、その添加後にエラストマーに対して十分な攪拌処理を行う。この場合においては、例えば攪拌と共に超音波振動を印加するようにしてもよい。
本発明に係る「フィラー複合粒子の密度」は、フィラー複合粒子を作製する際に、同じ比率にてフィラーとエラストマーを混合して固めて作ったテストピースの密度を、JIS−K7112 02に記載のA法(水中置換法)の密度測定方法に準じて、電子比重計SD−200L(アルファミラージュ製)を用いて測定した。
(超音波探触子)
本発明に係る超音波探触子は、超音波画像診断装置の主要構成部品であって、超音波を発生するとともに、超音波ビームを送受信する機能を有するものである。当該超音波探触子の内部の構成は、種々の態様を採り得るが、一般的構成としては、先端(被検体である生体に接する面)部分から「音響レンズ」、「音響整合層」、「超音波振動子(圧電素子)」、「バッキング」という順に並置された態様の構成を採り得る(図1参照)。
本発明に係る超音波探触子は、超音波送信用振動子と超音波受信用振動子を具備する超音波医用画像診断装置用探触子(プローブ)であり、受信用振動子として、本発明に係る上記超音波受信用振動子を用いることを特徴とする。
本発明においては、超音波の送受信の両方をひとつの振動子で担ってもよいが、より好ましくは、送信用と受信用で振動子は分けて探触子内に構成される。
送信用振動子を構成する圧電材料としては、従来公知のセラミックス無機圧電材料でも、有機圧電材料でもよい。
本発明に係る超音波探触子においては、送信用振動子の上もしくは並列に本発明に係る超音波受信用振動子を配置することができる。
より好ましい実施形態としては、超音波送信用振動子の上に本発明に係る超音波受信用振動子を積層する構造が良く、その際には、本発明に係る超音波受信用振動子は他の高分子材料(支持体として上記の比誘電率が比較的低い高分子(樹脂)フィルム、例えば、ポリエステルフィルム)の上に添合した形で送信用振動子の上に積層してもよい。その際の受信用振動子と他の高分子材料と合わせた膜厚は、探触子の設計上好ましい受信周波数帯域に合わせることが好ましい。実用的な超音波医用画像診断装置及び生体情報収集に現実的な周波数帯から鑑みると、その膜厚は、5〜200μmであることが好ましい。
なお、当該探触子には、バッキング層、音響整合層、音響レンズなどを設けても良い。また、多数の圧電材料を有する振動子を2次元に並べた探触子とすることもできる。複数の2次元配列した探触子を順次走査して、画像化するスキャナーとして構成させることもできる。
(バッキング層)
バッキング層は、超音波振動子(圧電素子)を支持し、不要な超音波を吸収し得る超音波吸収体である。
本発明においては、バッキング層に用いられるバッキング材としては、前記バッキング材を用いることを特徴とする。
(超音波振動子:圧電素子)
本発明に係る超音波振動子は、電極及び圧電材料を有し、電気信号を機械的な振動に、また機械的な振動を電気信号に変換可能で超音波の送受信が可能な素子である。
圧電材料は、電気信号を機械的な振動に、また機械的な振動を電気信号に変換可能な圧電体を含有する材料である。圧電体としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系セラミックス、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛などの圧電セラミックス、ニオブ酸リチウム、亜鉛ニオブ酸鉛とチタン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛とチタン酸鉛等の固溶系単結晶からなる圧電単結晶、水晶、ロッシェル塩、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、あるいはVDFと、例えば、3フッ化エチレン(TrFE)の共重合体であるポリフッ化ビニリデン−3フッ化エチレン(P(VDF−TrFE))のようなPVDF共重合体、シアン化ビニリデン(VDCN)の重合体であるポリシアン化ビニリデン(PVDCN)、あるいはシアン化ビニリデン系共重合体あるはナイロン9、ナイロン11などの奇数ナイロンや、芳香族ナイロン、脂環族ナイロン、あるいはポリ乳酸や、ポリヒドロキシブチレートなどのポリヒドロキシカルボン酸、セルロース系誘導体、ポリウレアなどの有機高分子圧電材料などを用いることができる。
圧電材料の厚さとしては、概ね100〜500μmの範囲で用いられる。圧電材料は、その両面に電極が付された状態で、超音波振動子として用いられる。
(電極)
圧電材料に付される電極に用いられる材料としては、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)などが挙げられる。
圧電材料に電極を付す方法としては、例えば、チタン(Ti)やクロム(Cr)などの下地金属をスパッタ法により0.02〜1.0μmの厚さに形成した後、上記金属元素を主体とする金属及びそれらの合金からなる金属材料、さらには必要に応じ一部絶縁材料をスパッタ法、その他の適当な方法で1〜10μmの厚さに形成する方法が挙げられる。
電極形成はスパッタ法以外でも、微粉末の金属粉末と低融点ガラスとを混合した導電ペーストをスクリーン印刷やディッピング法、溶射法で形成することもできる。電極は、圧電材料上に、探触子の形状に応じて、圧電体面の全面あるいは圧電体面の一部に、設けられる。
超音波振動子とバッキング材は、接着層を介して積層されていることが好ましい態様である。接着層を形成するための接着剤としては、エポキシ系の接着剤を用いることができる。
超音波振動子の、バッキング材側の表面の一部と、音響整合層側の表面の一部には電極が接触されており、バッキング材と電極が接着層を介して積層されている部分を含む場合もある。
(音響整合層)
本発明に係る音響整合層は、超音波振動子と被検体の間の音響インピーダンスを整合させるもので、超音波振動子と被検体との中間の音響インピーダンスを有する材料で構成される。
音響整合層に用いられる材料としては、アルミ、アルミ合金(例えばAL−Mg合金)、マグネシウム合金、マコールガラス、ガラス、溶融石英、コッパーグラファイト、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ABC樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、ナイロン(PA6、PA6−6)、PPO(ポリフェニレンオキシド)、PPS(ポリフェニレンスルフィド:ガラス繊維入りも可)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PAI(ポリアミドイミド)、PETP(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができる。好ましくはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に充填剤として亜鉛華、酸化チタン、シリカやアルミナ、ベンガラ、フェライト、酸化タングステン、酸化イットリビウム、硫酸バリウム、タングステン、モリブデン等を入れて成形したものを用いることができる。
音響整合層は、単層でもよいし複数層から構成されてもよいが、好ましくは2層以上、より好ましくは4層以上である。音響整合層の層厚は、超音波の波長をλとすると、λ/4となるように定めることがこのましい。これを満たさない場合、本来の共振周波数とは異なる周波数ポイントに複数の不要スプリアスが出現し、基本音響特性が大きく変動してしまうことがある。結果、残響時間の増加、反射エコーの波形歪みによる感度やS/Nの低下を引き起こしてしまい好ましくない。このような音響整合層の厚さとしては、概ね20〜500μmの範囲で用いられる。
本発明の超音波探触子では、超音波の送受信の両方を一つの超音波振動子で担ってもよいが、超音波振動子として、送信用超音波振動子と受信用超音波振動子とを具備するものが、好ましく用いられる。送信用超音波振動子と、受信用超音波振動子の配列としては、各々を上下に配置する配列及び並列に配置する配列のどちらでもよいが、上下に配置して積層する構造が好ましい。
積層する場合の送信用超音波振動子及び受信用超音波振動子の厚さとしては、40〜150μmであることが好ましい。
本発明に係る超音波探触子は、種々の態様の超音波画像検出置に用いることができる。
図2に本発明の超音波探触子を具備する超音波画像検出装置の例の主要部の構成を示す概念図を示す。
超音波画像検出装置は、例えば、生体などの被検体に対して超音波を送信し、被検体で反射した超音波をエコー信号として受信する超音波振動子が配列されている超音波探触子(プローブ)を備えている。また当該超音波探触子に電気信号を供給して超音波を発生させると共に、当該超音波探触子の各超音波振動子が受信したエコー信号を受信する送受信回路と、送受信回路の送受信制御を行う送受信制御回路を備えている。
さらに、送受信回路が受信したエコー信号を被検体の超音波画像データに変換する画像データ変換回路を備えている。また当該画像データ変換回路によって変換された超音波画像データでモニタを制御して表示する表示制御回路と、超音波画像検出装置全体の制御を行う制御回路を備えている。
制御回路には、送受信制御回路、画像データ変換回路、表示制御回路が接続されており、制御回路はこれら各部の動作を制御している。そして、超音波探触子の各圧電材料に電気信号を印加して被検体に対して超音波を送信し、被検体内部で音響インピーダンスの不整合によって生じる反射波を超音波探触子で受信する。
(音響レンズ)
本発明に係る音響レンズは、屈折を利用して超音波ビームを集束し分解能を向上するために配置されている。
本発明において、音響レンズを構成する素材としては、従来公知のシリコーンゴム、フッ素シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のホモポリマー、エチレンとプロピレンとを共重合させてなるエチレン−プロピレン共重合体ゴム等の共重合体ゴム等を用いることができる。これらのうち、シリコーン系ゴムを用いることが好ましい。
本発明に使用されるシリコーン系ゴムとしては、シリコーンゴム、フッ素シリコーンゴム等が挙げられる。就中、レンズ材の特性上、シリコーンゴムを使用することが好ましい。シリコーンゴムとは、Si−O結合からなる分子骨格を有し、そのSi原子に複数の有機基が主結合したオルガノポリシロキサンをいい、通常は、その主成分はメチルポリシロキサンで、全体の有機基のうち90%以上はメチル基である。メチル基に代えて水素原子、フェニル基、ビニル基、アリル基等を導入したものも使用することができる。当該シリコーンゴムは、例えば、高重合度のオルガノポリシロキサンに過酸化ベンゾイルなどの硬化剤(加硫剤)を混練し、加熱加硫し硬化させることにより得ることができる。必要に応じてシリカ、ナイロン粉末等の有機又は無機充填剤、硫黄、酸化亜鉛等の加硫助剤等を添加してもよい。
本発明に使用されるブタジエン系ゴムとしては、ブタジエン単独又はブタジエンを主体としこれに少量のスチロール又はアクリロニトリルが共重合した共重合ゴム等が挙げられる。就中、レンズ材の特性上、ブタジエンゴムを使用することが好ましい。ブタジエンゴムとは、共役二重結合を有するブタジエンの重合により得られる合成ゴムをいう。ブタジエンゴムは、共役二重結合を有するブタジエン単独が1.4又は1.2重合することにより得ることができる。ブタジエンゴムは、硫黄等により加硫させたものが使用できる。
本発明に係る音響レンズにおいては、シリコーン系ゴムとブタジエン系ゴムとを混合し加硫硬化させることにより得ることができる。例えば、シリコーンゴムとブタジエンゴムとを適宜割合で、混練ロールにより、混合し、過酸化ベンゾイルなどの加硫剤を添加し、加熱加硫し架橋(硬化)させることにより得ることができる。その際に、加硫助剤として、酸化亜鉛を添加することが好ましい。酸化亜鉛は、レンズ特性を落とさずに、加硫促進を促し、加硫時間を短縮できる。他に、着色剤や音響レンズの特性を損なわない範囲内で他の添加剤を添加してもよい。シリコーン系ゴムとブタジエン系ゴムとの混合割合は、その音響インピーダンスが人体に近似しているとともに、その音速が人体より小さく、減衰が少ないものを得るには、通常、1:1が好ましいが、当該混合割合は適宜変更可能である。
シリコーンゴムは、市販品として入手することができ、例えば信越化学社製、KE742U、KE752U、KE931U、KE941U、KE951U、KE961U、KE850U、KE555U、KE575U等や、モメンティブパフォーマンスマテリアル社製のTSE221−3U、TE221−4U、TSE2233U、XE20−523−4U、TSE27−4U、TSE260−3U、TSE−260−4Uやダウコーニング東レ社製のSH35U、SH55UA、SH831U、SE6749U、SE1120USE4704Uなどを用いることができる。
なお、本発明においては、上記シリコーン系ゴム等のゴム素材をベース(主成分)として、音速調整、密度調整等の目的に応じ、シリカ、アルミナ、酸化チタンなどの無機充填剤や、ナイロンなどの有機樹脂等を配合することもできる。
(超音波医用画像診断装置)
本発明に係る上記超音波探触子は、種々の態様の超音波医用画像診断装置(「超音波診断装置」ともいう。)に用いることができる。
図3は、実施形態にかかる超音波診断装置の外観構成を示す概要図である。図4は、実施形態にかかる超音波診断装置の電気的な構成を示すブロック図である。
超音波診断装置Sは、図3及び図4に示すように、図略の生体等の被検体Hに対して超音波信号(以下「第1超音波信号」とも称す。)を送信すると共に、被検体Hで反射した超音波信号の反射波(以下「第2超音波信号」とも称す。)を受信する超音波探触子2aと、超音波探触子2aとケーブル3aを介して接続され、超音波探触子2aへケーブル3aを介して電気信号の送信信号を送信することによって超音波探触子2aに被検体Hに対して第1超音波信号を送信させると共に、超音波探触子2aで受信された被検体H内からの第2超音波信号に応じて超音波探触子2aで生成された電気信号の受信信号に基づいて被検体H内の内部状態を超音波画像として医用画像に画像化する超音波診断装置本体1aとを備えて構成される。超音波診断装置本体1aには、超音波探触子2aを使用しない時に、超音波探触子2aを保持させておく超音波探触子フォルダ4aが備えられている。
超音波診断装置本体1aは、例えば、図4に示すように、操作入力部11aと、送信部12aと、受信部13aと、信号処理部14aと、画像処理部15aと、表示部16aと、制御部17aと、記憶部19aと、電圧制御手段18aと、を備えて構成されている。
操作入力部11aは、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体Hの個人情報等のデータを入力するものであり、例えば、複数の入力スイッチを備えた操作パネルやキーボード等である。
送信部12aは、制御部17aの制御に従って、後述する第1圧電部と前記第2圧電部とを駆動する電気信号の送信信号を生成する機能を有する回路である。送信部12aは、超音波探触子2a内の第1圧電部と第2圧電部とへ、電圧制御手段18aとケーブル3aを介して送信信号を供給し、超音波探触子2aに第1超音波信号を発生させる。送信部12aは、例えば、高電圧のパルスを生成する高圧パルス発生器等を備えて構成される。
受信部13aは、制御部17aの制御に従って、超音波探触子2aからケーブル3aを介して電気信号の受信信号を受信する回路であり、この受信信号を信号処理部14aへ出力する。受信部13aは、例えば、受信信号を予め設定された所定の増幅率で増幅する増幅器、及び、この増幅器で増幅された受信信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換するアナログ−デジタル変換器等を備えて構成される。
信号処理部14aは、制御部17aの制御に従って、受信部13aからの電気信号に、所定の信号処理を施す回路であり、その信号処理した反射受信信号を画像処理部15aへ出力する。
画像処理部15aは、制御部17aの制御に従って、信号処理部14aで信号処理された反射受信信号に基づいて、例えばハーモニックイメージング技術等を用いて被検体H内の内部状態の超音波画像を生成する回路である。例えば、反射受信信号に対して包絡線検波処理を施すことにより、第2超音波信号の振幅強度に対応したBモード信号を生成する。
記憶部19aは、RAMやROMで構成され、制御部17aに用いられるプログラムが記録され、また、表示部16aで表示する各種画像のテンプレートが記録されている。
電圧制御手段18aは、制御部17aの制御に従って、送信部12aからの電気信号の送信信号を、第1圧電部と第2圧電部とに対して、どのように印加するか制御する機能を有する。
表示部16aは、制御部17aの制御に従って、画像処理部15aで生成された超音波画像を表示する装置である。表示部16aは、例えば、CRTディスプレイ、LCD、ELディスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
制御部17aは、例えば、マイクロプロセッサ、記憶素子及びその周辺回路等を備えて構成され、これら操作入力部11a、送信部12a、受信部13a、信号処理部14a、画像処理部15a、電圧制御手段18a、及び記憶部19aを当該機能に応じてそれぞれ制御することによって超音波診断装置Sの全体制御を行う回路である。
一方、超音波探触子2aは、振動部30aを備えており、当該振動部30aは、図略の生体等の被検体Hに対して第1超音波信号を送信すると共に、被検体Hからの第2超音波信号を受信する。振動部30aは、例えば、図1に示すように、バッキング層(音響制動部材)4と、圧電層5と、音響整合層6及び7と、音響レンズ8とを備えて構成される。
バッキング層(音響制動部材)4は、超音波を吸収する材料から構成された平板状の部材であり、圧電層5からバッキング層(音響制動部材)4方向へ放射される超音波を吸収するものである。
圧電層5は、圧電材料を備えて成り、圧電現象を利用することによって電気信号と超音波信号との間で相互に信号を変換するものである。圧電層5の両面には電極が形成されている。なお、当該圧電層5は、第1圧電層と第2圧電層の二層が積層配置された構成であってもよい。
圧電層5は、超音波診断装置本体1aの送信部12aからケーブル3aを介して入力された送信の電気信号を第1超音波信号へ変換して第1超音波信号を送信すると共に、受信した第2超音波信号を電気信号へ変換してこの電気信号(受信信号)を、ケーブル3aを介して超音波診断装置本体1aの受信部13aへ出力する。超音波探触子2aが被検体Hに当接されることによって圧電層5で生成された第1超音波信号が被検体H内へ送信され、被検体H内からの第2超音波信号が圧電層5で受信される。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
(フィラー複合粒子−1の作製)
(表面処理)
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(A−187、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製)100質量部を1質量%酢酸水溶液225質量部、メタノール675質量部に溶解し表面処理液を準備する。これに平均粒径8μmのタングステン粉末(日本タングステン(株)製)1000質量部を入れ、25℃にて1hr撹拌を十分に行う。
その後、タングステンと処理液を分離した後で、処理済みのタングステンを80℃の十分乾燥機中にて粉体を1時間加熱処理を行い、表面処理済のタングステンを得た。
拡散反射法にて赤外スペクトルを測定し、3750cm−1付近に観察されるシラノール基特有のピークが消失していることから、酸化ケイ素表面がシランカップリング剤により表面処理されたと判断した。
(複合粒子の作製)
液状シリコーンゴムYE5822(A)(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製)90質量部に、前記表面処理済のタングステン2000質量部を入れ真空混合機ARV−310(シンキー社製)で十分に混合した。
その後、YE5822(B)を10質量部入れよく混合を行った。これを100mm×100mm×30mmの金型に入れ真空電熱プレス機にて4.9MPa(50kg/cm)の圧力で、真空下室温で3時間、50℃で3時間加熱し複合粒子のブロックを作製した。この際のブロックの密度は10.2g/cmであった。これを1cm角に切り、これをまずカッターミルVM−20型(槇野産業社製)により粗粉砕、ピンミルM−4型(奈良機械社製)にてスクリーン0.5mm、回転数2800rpmにて本粉砕を行い、その後円形振動篩機KG−400型(西村機械製作所社製)にて目空き212μmにてふるい、フィラー複合粒子−1を作製した。
フィラー複合粒子−1の粒径分布は、レーザー回折散乱式粒度分布測定器(セイシン企業製 LMS−30)を用い、測定用分散媒をイソプロピルアルコールとし、散乱強度の最適点を調整して、攪拌及び超音波分散下で測定した。粒径を測定した結果、平均粒径は191μmで30μm以下にピーク粒径は無かった(図5参照)。
また、複合粒子の密度は以下の方法にて実施した。
密度既知(1.17×10kg/m)のエポキシ樹脂、JER−828(ジャパンエポキシレジン製)68質量部に、フィラー複合粒子300質量部を真空混合機ARV−310(シンキー社製)で十分に混合し、その後架橋剤として、JERキュアST−12(ジャパンエポキシレジン製)32質量部を同様に真空混合機ARV−310にて混合し、これを100mm×100mm×10mmの金型にいれ真空電熱プレス機にて9.8MPa(100kg/cm)の圧力にて常温で4時間、60℃で3時間加熱し硬化させた。 その後、20×20×10mmに切り出してテストピースを作製した。これを、下記密度測定方法にて、テストピースの密度を測定し、フィラー複合粒子密度を求めた。
(フィラー複合粒子−2の作製)
フィラー複合粒子−1の作製と同様にしてメチルメトキシシラン(A−1630、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製)を用いてタングステンに表面処理を行った。拡散反射法にて赤外スペクトルでの結果は、3750cm−1付近に観察されるシラノール基特有のピークが消失していることから、酸化ケイ素表面がシランカップリング剤により表面処理されたと判断した。
前記表面処理済みタングステンを用いてフィラー複合粒子−1の作製と同様にフィラー複合粒子−2を作製した。平均粒径は60μmで30μm以下のピークは約20vol%であった(図6参照)。
(フィラー複合粒子−3の作製)
表面処理の際に使用するカップリング剤を3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(A−174、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製)2質量部とメチルメトキシシラン(A−1630、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製)98質量部の混合物を用いた以外は、実施例−1と同様に処理を行った。拡散反射法にて赤外スペクトルでの結果は、3750cm−1付近に観察されるシラノール基特有のピークが消失を確認した。
前記表面処理済みタングステンを用いてフィラー複合粒子−1の作製と同様にフィラー複合粒子−3を作製した。平均粒径は185μmで30μm以下のピークは確認できなかった(図7参照)。
(フィラー複合粒子−4の作製)
表面処理無しのタングステン粒子を用いて同様に比較のフィラー複合粒子−4を作製した。回収率は70%、平均粒径は43μmで30μm以下のピークの体積分率は50%であった(図8参照)。なお、回収率は、複合粒子の作製において、作製した複合粒子のブロックの投入しカッターミルでの粗粉砕、ピンミルでの本粉砕、振動篩機にて目空き212μmにてふるった後で得られた複合粒子の質量を投入した複合粒子ブロックの質量で割った値である。
(フィラー複合粒子−5の作製)
フィラー複合粒子−4の作製において、粉砕時の条件をピンミル(M−4)の回転数1000rpm、スクリーン0.5mmにした以外は同様に比較のフィラー複合粒子−5を作製した。回収率は55%、平均粒径は60μm、30μm以下のピークは40vol%であった(図9参照)。
(フィラー複合粒子−6の作製)
比較のフィラー複合粒子−5を目空き50μmにてふるい、本発明のフィラー複合粒子−6を作製した。回収率は52%、平均粒径は155μmで30μm以下のピークは認められなかった(図10参照)。
以上の結果を表1にまとめて示す。
Figure 0005672823
実施例2
(バッキングブロックの作製)
エポキシ樹脂、JER−828(ジャパンエポキシレジン製) 68質量部に、複合粒子−1 150質量部、フェライト 140質量部を真空混合機ARV−310(シンキー社製)で十分に混合した。その後、架橋剤として、jERキュアST−12(ジャパンエポキシレジン製)32質量部を同様に真空混合機ARV−310にて混合しコンパウンドを作製した。このコンパウンドを100mm×100mm×10mmの金型にいれ真空電熱プレス機にて9.8MPa(100kg/cm)の圧力にて常温で4時間、60℃で3時間加熱してバッキングブロック−1を形成した。このブロックよりテストピースとして、20mm×20mm×2mmのサンプルを切り出して以下の評価を行った。
(密度)
密度をJIS−K7112 02に記載のA法(水中置換法)の密度測定方法に準じて、電子比重計SD−200L(アルファミラージュ製)を用いて測定した。
(音響特性)
超音波音速は、JIS Z2353−2003に従い、超音波工業(株)製シングアラウンド式音速測定装置を用いて25℃において測定し、音響インピーダンスを以下の式に従い導いた。
音響インピーダンス(Z:Mrayls)=密度(ρ:×10kg/m)×音速(C:×10m/sec)
また、超音波減衰はJIS Z2354−1992に従い、水槽中に25℃の水を満たし、超音波パルサー・レシーバーJPR−10C(ジャパンプローブ社製)によって水中で1MHzの超音波を発生させ、超音波がシートを透過する前と後の振幅の大きさを測定した。
同様にして表2に示すように、バッキングブロックからテスト用バッキングシート−1〜11を作製し、評価を行った。
実施例3
(超音波探触子の作製と評価)
図1に示すようにバッキング層、フレキシブル基板、圧電層、音響整合層−1、音響整合層−2の順に積層した。なお、圧電材料としては、厚さ0.15mmの、PZT 3203HD(CTS Electro Component Inc.製)を、音響整合層−1としては整合エポキシ樹脂100質量部に対してフェライト1200質量部を混合した厚み0.06mmの物、音響整合層−2としては、エポキシ樹脂単独で厚さ0.05mmのものを用いた。これらを積層して、図2に示すようにダイサーにて0.16mmピッチにて各素子にダイシングを行った。ダイシング後の状況を顕微鏡にて確認を行った。
バッキング層として、バッキングブロックから作製したテスト用バッキングシート−1〜11を用いて超音波探触子を試作して評価した結果を表2に示す。
本発明の複合粒子を用いたバッキングブロックから作製したテスト用バッキングシートはいずれも素子剥離が一つも発生せず、非常に歩留まりに優れていることが分かる。これらを用いて、図3及び4に示す構成の画像表示装置により生体の画像を観測した。その結果、明瞭な画像を得ることができた。
(歩留まり)
192素子にダイシングした際の素子倒れや素子ハガレの発生頻度を顕微鏡にて確認してその下記の式にて算出した。
歩留まり=呼称素子数/192×100
上記評価結果を表2にまとめて示す。
Figure 0005672823
表2に示した結果から明らかなように、本発明のバッキング材を用いた超音波探触子は、比較例に比べて、音響特性、歩留まりに優れていることが分かる。
1 超音波探触子
2 電極
3 フレキシブル基板
4 バッキング層
5 圧電
6 音響整合層−1
7 音響整合層−2
8 音響レンズ
1a 超音波診断装置本体
2a 超音波探触子
3a ケーブル
4a 超音波探触子フォルダ
11a 操作入力部
12a 送信部
13a 受信部
14a 信号処理部
15a 画像処理部
16a 表示部
17a 制御部
18a 電圧制御手段
19a 記憶部
30a 振動部
H 被検体

Claims (6)

  1. 超音波探触子を構成する超音波振動子の後方に設けられ、当該超音波振動子から後方に放射された超音波を減衰する超音波探触子用バッキング材であって、当該バッキング材が母材とフィラー混合物を含有し、当該フィラー混合物として、少なくともエラストマーとフィラーとを複合したフィラー複合粒子を含有し、かつ当該フィラー複合粒子の平均粒径が50〜200μmの範囲内にあり、当該フィラー複合粒子のうち、粒径が30μm以下の微粒子の含有量が、前記フィラー複合粒子全体に対して20vol%以下であることを特徴とする超音波探触子用バッキング材。
  2. 前記フィラー複合粒子が、シランカップリング剤又はその反応物を含有することを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子用バッキング材。
  3. 前記フィラー複合粒子の密度が、5.0×10〜15×10kg/mの範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波探触子用バッキング材。
  4. 前記フィラー複合粒子に含有されるフィラーが、予め前記カップリング剤で表面処理を施されたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の超音波探触子用バッキング材。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の超音波探触子用バッキング材を用いたことを特徴とする超音波探触子。
  6. 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の超音波探触子用バッキング材を用いた超音波探触子を具備していることを特徴とする超音波医用画像診断装置。
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