以下、本発明の実施の形態を説明する。
本実施の形態に係る超音波振動子は、圧電素子とそれに接合する音響整合層とを有する。当該圧電素子には、公知の圧電素子を用いることができる。上記圧電素子は、例えば、圧電体と、当該圧電体を素子単位に区画する溝と、当該溝内に充満する目地材と、を有する。
上記圧電体は、その表面に応力を加えるとその表面に正負の電荷を生じる現象(圧電性)を呈する物体であり、例えば、圧電性を呈することが公知の物質、混合物、化合物、複合化合物、固溶体および組成物である。圧電体は、一種でもそれ以上でもよく、また、無機物でも有機物でもよい。また、圧電体の形状は、通常、板状であるが、超音波振動子として使用可能な範囲において、いかなる形状であってもよい。たとえば、圧電体は、一枚の板状の圧電体のみから構成されていてもよいし、あるいは、インピーダンスの異なる複数の圧電板の積層体であってもよい。また、上記圧電体の厚みは、一定でもよいし、分布を持っていてもよい。
無機圧電体の材料の例には、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、PbZrO3/PbTiO3固溶体(PZT)、PZTのLaドープ体(PZLT)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3/PbTiO3固溶体(PMN−PT)およびPb(Zn1/3Nb2/3)O3/PbTiO3固溶体(PZN−PT)が含まれる。
また、無機圧電体の材料の例には、鉛フリーの圧電材料が含まれる。当該圧電材料の例には、チタン酸バリウム(BaTiO3、BT)とビスマス系ペロブスカイト酸化物との固溶体が含まれ、より具体的には、BTとスカンジウム酸ビスマス(BiScO3、BS)との固溶体(BT−BS)、BTと亜鉛酸チタン酸ビスマス(Bi(Zn1/2Ti1/2)O3、BZT)との固溶体(BT−BZT)、BTとマグネシウム酸チタン酸ビスマス(Bi(Mg1/2Ti1/2)O3、BMT)との固溶体(BT−BMT)、および、BTとニッケル酸チタン酸ビスマス(Bi(Ni1/2Ti1/2)O3、BNT)との固溶体(BT−BNT)、が含まれる。
上記無機圧電体の材料には市販品を用いることができ、このような市販品の例には、株式会社富士セラミック製のC−6、C−6H、C−62、C−63、C−64、C−601、C−7、C−8、C−82、C−83H、C−84、C−9、C−91、C−91H、C−92H、C−93、C−94、および、テイカ株式会社製のL−1A、L−6A、L−201F、L−11、L−9、L−155N、L−155NF、L−145N、L−13、が含まれる。
有機圧電体の材料の例には、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン系共重合体、ポリシアン化ビニリデン、シアン化ビニリデン系共重合体、ナイロン9やナイロン11などの奇数ナイロン、芳香族ナイロン、脂環族ナイロン、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレートなどのポリヒドロキシカルボン酸、セルロース系誘導体、ポリウレア、およびこれらの複合体、が含まれ、より具体的には、ポリフッ化ビニリデン−三フッ化エチレン共重合体(P(VDF−3FE))、P(VDF−3FE)とポリウレタンとの混練物、P(VDF−3FE)とシリコーンとの混練物、ポリフッ化ビニリデンとナイロンとの混練物、フッ化ビニリデンとクロロトリフロロエチレンとの共重合によるPVDF系共重合体、ポリブタジエン−N,N−メチレンビスアクリルアミド−スチレン共重合体、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)、メタンジイソシアネートとジアミノフルオレンとの蒸着重付加によるポリ尿素、キシリレンジイソシアネートとp−ジアミノベンゼンとの蒸着重付加によるポリ尿素、および、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体のエレクトレット、が含まれる。
上記圧電体の材料のグレインサイズ(結晶粒サイズ)は、3μm以下であることが好ましい。グレインサイズが3μm以下であると、圧電体の加工時においてグレインが離脱することにより生じる表面粗さを小さくすることができる。また、圧電体における欠損する部分の体積の増加を抑えることができるので、圧電体における圧電性の消失を抑制でき、圧電体における有効面積および静電容量の損失が抑制され、圧電体の高い圧電性を維持することができる。
上記溝は、上記圧電体に形成されており、上記圧電体を平面視したときに圧電体を素子単位に応じて区画する。上記素子単位には、電極まで区画される主素子と、電極を共有する副素子とが含まれ、上記溝は、そのいずれの素子単位を形成する溝であってもよい。上記溝は、通常、圧電体に複数形成され、一方向に並列していてもよいし、交差する二方向(例えば互いに直交する二方向)のそれぞれに並列していてもよい。
上記溝の深さは、超音波振動子の構造に応じて適宜に決めることが可能である。たとえば、上記溝の深さは、上記圧電体の厚さ未満であってもよいし、厚さ以上であってもよい。
上記目地材は、上記溝に充満している。上記目地材は、超音波振動子の目地材として知られている通常の材料によって構成され得る。上記目地材の例には、硬化性エポキシ樹脂の硬化物および硬化性シリコーンの硬化物が含まれる。
上記目地材の材料の例には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂、および、ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどの熱可塑性樹脂、が含まれる。
上記目地材は、本実施の形態の効果が得られる範囲において、さらなる構成要素を含んでいてもよい。たとえば、上記目地材は、その音響特性を調整する目的で、気泡を含んでいてもよいし、粒子を含んでいてもよいし、その両方を含んでいてもよい。当該気泡は、上記目地材中に直接形成されていてもよいし、上記目地材中に分散された中空のマイクロカプセルの内部空間であってもよい。上記目地材に上記気泡を含めることによって、当該目地材の音響インピーダンスをより小さくすることができる。
上記粒子は、上記溝に充填可能な大きさを有していればよく、その材料は、所望の音響特性に応じて適宜に決めることができる。上記粒子の材料の例には、フェライト、酸化亜鉛、シリカ、ガラス、カーボンなどの無機材料、ポリマーなどの有機材料、および、二種以上の材料の複合体、が含まれる。また、上記粒子の形状の例には、球状、扁平形状、異方性を有する形状、および中空粒子形状が含まれる。
上記粒子の材料は、上記硬化剤の材料と同じであることが、音響インピーダンスの調整の観点から好ましい。これらの観点から、上記粒子の材料は、シリコーンまたはエポキシであることが好ましい。なお、音響インピーダンスをより高めたい場合にはエポキシが好ましく、より抑えたい場合にはシリコーンが好ましい。
上記圧電素子は、無機圧電体の材料と有機圧電体の材料、または、無機圧電体の材料と有機高分子材料、を併用したコンポジットであってもよい。その例には、PZT−シロキサン−ポリ(メタ)アクリレートコンポジット、および、ポリ乳酸とリン酸カルシウムもしくはモンモリロナイトとのコンポジット、が含まれる。
上記圧電素子は、公知の製造方法により製造される。すなわち、上記圧電セラミックや単結晶などからなる圧電体に所定間隔で溝を形成して当該圧電体をアレイ状に切削する。なお、圧電体を所定の大きさに切削して、得られた圧電体片を所定の間隔で配置してもよい。当該圧電体片は、モールドにより成形されてもよい。そして、上記の溝または間隙に上記目地材の材料を充填、硬化させて、目地材を形成する。
そして、上記圧電体および上記目地材の一体化物の上下面を研削して当該一体化物の厚みを調整する。具体的には、例えば、円盤状の平坦なラップ盤に上記一体化物を配置し、このラップ盤に、砥粒と液体とが混合された液体研磨剤を流し込みつつ、上下から上記一体化物に圧力を加えながら上記一体化物を上記ラップ盤に対して摺動させることにより研磨する。このようにして複合圧電体(コンポジット)が形成される。研削済みの複合圧電体の上下面には電極が配置され、この電極から所定の分極電圧が印加されて上記複合圧電体の分極処理がなされる。
上記音響整合層は、複数の層の積層体である。そして、当該複数の層は、それぞれ異なる音響インピーダンスを有し、かつ音響インピーダンスが上記圧電素子側から順に小さくなるように重ねられている。上記複数の層におけるそれぞれは、その表面状態が後述するように調整されている以外は、積層型の音響整合層における各層と同様に構成することができる。
上記層は、例えば、層状の基材、または、当該基材および当該基材中に分散されているフィラー、によって構成される。上記基材は、それが接合すべき部材との接着性や、上記層に求められる音響特性などの観点から適宜に選ばれる。当該基材は、一種でもそれ以上でもよく、その例には、エポキシ樹脂およびシリコーンゴムが含まれる。
上記エポキシ樹脂は、一種でもそれ以上でもよい。また、上記エポキシ樹脂は、硬化剤によって硬化されていてもよい。
上記エポキシ樹脂の例には、ビスフェノールAやビスフェノールFを骨格とするエポキシ樹脂、および、シリコーン変性、アクリル変性など各種変性エポキシ樹脂、が含まれる。上記エポキシ樹脂は、後述する発色剤と化学結合可能な官能基を有していてもよい。
上記エポキシ樹脂の例には、株式会社テスク製のC−1163、C−1054およびC−1001、セメダイン株式会社製のEP007、コニシ株式会社製のEセットL、三井化学株式会社製のストラクトボンドEH−455NF、KUKDO CHEMICAL、CO.,LTD.社製のYDB−400、DIC社製のEPICLON EXA−850CRP、EPICLON 860、EPICLON 4050、EPICLON EXA−830CRP、EPICLON EXA−835LV、EPICLON 153、EPICLON N−770、EPICLON 5500、EPICLON HP−4032D、EPICLON HP−7200L、EPICLON HP−7200H、EPICLON HP−4770、EPICLON EXA−4850−150およびEPICLON HP−820、および、三菱化学株式会社製の604、871、827、191P、YX8034、YL983U、YX4000HおよびYL6677、が含まれる。
上記硬化剤の例には、新日本理化株式会社製のリカシッドMH−700、DIC社製のラッカマイド WH−614およびラッカマイド TD−982、三菱化学株式会社製のST12、LV11、DC11、3019、113、EMI24およびYH307、および、HUNTSMAN社製のJEFFAMINE D−400、が含まれる。
上記層を構成する上記シリコーンゴムは、一種でもそれ以上でもよく、その材料の例には、シリコーン複合パウダーKMP−600、KMP−601、KMP−602、KMP−605およびX−52−7030、シリコーンゴムパウダー KMP−597、KMP−598およびKMP−594、および、シリコーンレジンパウダーKMP−590、KMP−701、X−52−854およびX−52−1621(いずれも信越化学工業株式会社製)、が含まれる。
上記フィラーは、一種でもそれ以上でもよい。当該フィラーの種類および上記層中の含有量は、当該層の所期の音響特性(音響インピーダンス)に基づいて適宜に決めることが可能である。上記フィラーの粒径および粒子形状も、所期の上記音響特性を発現可能な範囲において、適宜に決めることができる。上記フィラーの粒径は、上記層に分散可能な大きさであればよく、その最大径は、例えば0.01〜30μmであることが好ましく、2〜10μmであることがより好ましく、例えば当該層の厚さの0.5〜2.0倍である。また、上記フィラーの粒子形状の例には、球状、粒状、棒状、針状、板状および燐片状が含まれる。さらに、上記フィラーは、その表面が被覆材によって被覆されていてもよい。当該被覆材の例には、アクリル樹脂、上記基材で例示したエポキシ樹脂、シランカップリング剤の反応生成物およびシリコーンオイルが含まれる。
上記フィラーの例には、フェライト粒子、酸化亜鉛粒子、酸化錫粒子(例えば、関東化学株式会社製)および酸化ビスマス粒子(例えば、関東化学株式会社製)が含まれる。上記フェライト粒子の例には、戸田工業株式会社製のソフトフェライト粒子、および、日本高純度化学株式会社製のソフトフェライト粒子、が含まれる。また、上記酸化亜鉛粒子の例には、ハクスイテック株式会社製 Zincox Super F−1、F−2およびF−3が含まれる。上記基材における上記フィラーの含有量は、例えば、上記基材100質量部に対して0〜1250質量部である。
上記層は、本実施の形態の効果を奏する範囲において、他の成分をさらに含有していてもよい。当該他の成分の例には、発色剤が含まれる。当該発色剤は、一種でもそれ以上でもよく、その含有量は、上記層を色によって識別可能にする範囲で適宜に決めることができる。上記発色剤の例には、上記層を着色する着色剤、および、蛍光を発することで発色する蛍光物質、が含まれる。
上記着色剤の例には、燐光色素、シアン、マゼンダまたはイエローの顔料、および、染料、が含まれる。上記燐光色素の例には、硫化亜鉛およびアルミン酸ストロンチウムが含まれる。上記シアンの顔料の例には、アルミン酸コバルト、錫酸コバルト、フェロシアン化鉄カリ、銅フタロシアニン系、シリカ・アルミナ・ソーダ・硫黄錯塩(群青)、酸化コバルトアルミニウムチタニウムおよびインダンスレン系顔料が含まれる。上記マゼンタの顔料の例には、アントラキノン系顔料、セレン化カドミウム、硫化セレン化カドミウム、モノアゾ系顔料、硫化水銀、ジケトピロロピロール系顔料およびキナクリドン系顔料が含まれる。上記イエローの顔料の例には、水和酸化鉄、ジスアゾ系顔料、ピラゾロン系顔料、亜硝酸コバルトカリウム、硫化カドミウム、硫化セレン化カドミウム、酸化バリウムニッケルチタン、ベンズイミダゾロン系顔料、ニッケル錯塩およびバナジン酸ビスマスが含まれる。上記染料の例には、ダイレクトブルー、アシッドオレンジ、ディスパースバイオレットおよびベーシックグリーンが含まれる。
上記蛍光物質の例には、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、ピレンおよびシアニンが含まれる。
上記音響整合層では、上記複数の層の積層方向において隣接する上記層の間の境界面が形成される。上記境界面は、上記圧電素子から出力された超音波を散乱させる凹凸面であり、その凹凸の大きさは、算術平均粗さRaで1.5μm以上である。
上記圧電素子から出力された超音波は、上記音響整合層を通って被検体に出力されるが、音響整合層を通過する際に、音響インピーダンスが変化する上記層間の境界面でその一部が反射する。上記音響整合層は、上記の層間の境界面に上記の凹凸を有することから、上記境界面の付近の部分における音響インピーダンスの変化が上記積層方向において連続的となり、音響インピーダンスが変化する明確な境界がなり、その結果、当該境界面における超音波の反射による音響整合層の音響特性の損失が抑制される。よって、上記境界面に上記凹凸を有さない音響整合層に比べて、超音波がより効率的に出力される。
上記境界面の凹凸は、当該境界面において積層方向での音響インピーダンスの変化を実質的に連続的に変化させる形状であればよく、例えば、当該境界面で超音波を散乱、あるいは乱反射させる形状である。上記境界面の算術平均粗さRaが1.5μm未満であると、積層方向における音響インピーダンスが連続的に変化する部分の長さが短くなり、当該境界面における超音波の反射による音響整合層の音響特性の損失の抑制が不十分となることがある。上記表面粗さは、大きすぎると、上記層の層厚に実質的な影響を及ぼし、上記層における音響特性の整合効果が不十分となることがある。上記境界面の凹凸の上限は、超音波の散乱が生じるとともに、各層における音響特性の整合効果が得られる範囲において決めることが可能となる。
たとえば、上記境界面の凹凸は、Raであれば、上記の音響特性の整合効果の観点から、10以下であることが好ましい。また、上記凹凸は、超音波の散乱と音響特性の整合効果とを両立させる観点から、Raで1.5〜7.0μmであることがより好ましい。
上記Raは、音響整合層の厚み方向における断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で当該境界面(境界線)を観察することによって求めることができ、あるいは推定することが可能である。
また、上記境界面の凹凸は、表面のうねりであってもよい。ここで、「うねり」とは、上記音響整合層の厚み方向の断面における上記境界面(境界線)を含む画像(例えばSEM画像)において、当該境界線を、上記画像において5μmの幅に相当する太さの線でなぞって描かれる曲線である。上記境界面の凹凸は、例えば、上記うねりであれば、その高低差は0〜40μmであり、好ましくは10〜30μmである。また、上記うねりのピッチは、例えば、30〜400μmである。当該うねりのピッチは、上記うねりの隣り合う頂点間距離の平均値である。当該うねりの各指標(最大高さ、最小高さ、極大値のピッチなど)は、例えばサンプル数3(N=3)以上の解析結果より算出することができる。
上記うねりを有する上記境界面においても、超音波の反射が抑制され、当該境界面を超音波がより通過しやすくなる。上記うねりの高低差およびピッチが上記範囲よりも小さいと、当該境界面のより微視的な表面状態を表すRaで、当該境界面の凹凸が実質的に表現され得る。
したがって、上記境界面の凹凸は、例えば、上記Raで1.5μm以上、上記うねりでその高低差が40μm以下かつそのピッチが400μm以下、とすることが可能である。
上記音響整合層における上記の各層は、上記断面において上記境界面(境界線)をより明確にする観点から、隣り合う層の構成を変えることが好ましい。
たとえば、隣り合う層は、互いにその基材樹脂の種類が異なっていてもよい。上記SEM画像において上記境界線をより明確に表示することができることがある。また、隣り合う層は、含有する上記フィラーの種類、大きさまたは形状が互いに異なっていてもよい。この場合も、上記SEM画像において上記境界線(特にうねりの境界線)をより明確に表示することができることがある。さらに、隣り合う層は、含有する発色剤が互いに異なり、異なる発色を呈してもよい。この場合も、発色剤を発色させた状態での上記SEM画像において上記境界線をより明確に表示することが可能である。
なお、上記SEMの画像は、境界線における凹凸をより明確にするために上記厚さ方向にのみ拡大されていてもよいし、あるいは少なくとも一方の層の基材の色や明るさを変化させる画像処理がなされていてもよい。
上記超音波振動子は、本実施の形態の効果が得られる範囲において、上記圧電素子および上記音響整合層以外の他の構成をさらに有していてもよい。たとえば、上記超音波振動子は、上記音響整合層に接着に接着された音響レンズをさらに有していてもよい。当該音響レンズは、被検体に向かって照射される超音波に所期の指向性を与える部材であり、当該音響レンズには、公知の音響レンズを利用することができる。
また、上記超音波振動子は、上記以外の構成を、例えば、超音波を吸収するためのバッキング部材や、バッキング部材に担持され、上記圧電体を担持する電極などをさらに有していてもよい。これらのさらなる構成は、公知の超音波振動子におけるそれらと同様に構成することができる。
さらに、上記超音波振動子は、水中もしくは含水環境にて用いることができるように、パリレンコーティングなどの防水加工を、例えば音響レンズを接着する前の超音波振動子の前面に、施してもよい。なお、「パリレン」は、日本パリレン合同会社の登録商標である。
このように、上記超音波振動子は、上記音響整合層を有する以外は、公知の超音波探触子と同様に構成することが可能である。
上記超音波振動子は、以下の特徴を有する以外は、積層型の上記音響整合層を含む超音波振動子を製造する公知の方法を利用して製造することができる。当該特徴とは、すなわち、上記超音波振動子は、上記複数の層の積層方向における一方の層とそれに重なる他方の層における上記一方の層の表面を、その算術平均粗さRaが1.5μm以上の大きさの凹凸を有するように形成することである。
上記一方の層の表面の凹凸は、上記境界面となる層の少なくとも一方の層の表面に、前述の表面状態をもたらす工程によって形成される。当該一方の層の表面は、上記境界面を形成する二つの層のうちの、圧電素子側に配置されるべき層の表面であってもよいし、その反対側に配置されるべき層の表面であってもよい。
上記層は、上記基材樹脂またはその前駆体と上記フィラーとを含有するインクまたは塗料の塗膜の乾燥によって作製することができる。当該インクまたは塗料は、例えば適用される印刷方法に応じて、その粘度を調整するために、溶剤をさらに含有していてもよい。
上記一方の層の表面の凹凸の形成は、例えば、スクリーン印刷法でスクリーン(メッシュ)を通して印刷し、それを乾燥、固化することによって行うことができる。上記メッシュは、例えば上記インクの物性および上記表面状態に応じて適宜に決めることができ、そのメッシュ数は、例えば#100〜700(線幅15〜90μm)程度であることが好ましい。スクリーン印刷法を利用する上記表面粗面化処理は、前述のRaを調整するのにより効果的である。
あるいは、上記一方の層の表面の凹凸の形成は、マランゴニ対流が発生する塗膜を形成し、それを乾燥、固化することによって行うことができる。マランゴニ対流とは、液体表面の表面張力が不均質になることが原因で生じる対流である。当該マランゴニ対流によって、上記塗膜の表面に上記の凹凸を形成することが可能である。マランゴニ対流を生じさせる上記表面粗面化処理は、前述のうねりを調整するのにより効果的である。
上記マランゴニ対流は、上記インクまたは塗料の溶剤に、表面張力または沸点の異なる二種の溶剤を用いることによって発生させることが可能である。マランゴニ対流を発生させる観点から、当該二種の溶剤における表面張力の差は、3〜12mN/mであることが好ましく、当該二種の溶剤における沸点の差は、60〜200℃であることが好ましい。
たとえば、上記二種の溶剤のうちの低沸点溶剤の例には、アセトン(56℃、23.3mN/m)、MEK(80℃、24.5mN/m)、クロロホルム(61℃、27.2mN/m)、ジクロロメタン(40℃、27.8mN/m)およびジクロロエタン(84℃)が含まれる。上記二種の溶剤のうちの高沸点溶剤の例には、アセトフェノン(202℃、38.8mN/m)、シクロヘキシルベンゼン(236℃、24.5mN/m)、メシチレン(165℃、28.3mN/m)、アニソール(154℃、34.6mN/m)、キシレン(144℃、28.1mN/m)およびシクロヘキサノン(156℃、35.2mN/m)が含まれる。当該二種の溶剤の混合比率は、例えば20〜80体積%である。括弧内の温度の数値はその溶剤の沸点を表し、力の数値はその表面張力を表している。
なお、上記マランゴニ対流は、一種の溶剤と上記基材の材料(例えば上記基材樹脂の前駆体や硬化剤など)とによって生じさせることも可能である。
上記の隣接する層を形成する工程は、上記の表面状態を調整した層の、表面状態を調整した側の表面に、他の層を重ねて形成する。そして、形成された他の層の表面に前述した凹凸による表面状態を形成する。これらの繰り返しによって、上記層間に位置する境界面に、上記の調整された表面状態による凹凸を形成する。
製造過程における上記層の表面状態は、前述した方法によって測定することが可能であるが、上記層の表面状態を直接測定することにより確認することも可能である。たとえば、上記層の表面粗さRaであれば、その測定方法は、接触式であっても非接触式であってもよい。当該Raの測定は、例えば、オリンパス株式会社製レーザー顕微鏡「OLS−3000」を用いて、上記表面の表面粗さを複数個所で測定して求められる粗さ曲線から求めることができる。
より詳しくは、上記粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(l)だけを抜き取り、この抜き取った部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸をそれぞれ取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したとき、下記式(14)から求められる。当該式(14)で求められた数値をマイクロメートル(μm)で表すことで表面粗さRaとなる。なお、当該Raは、上記のように一次元の直線における求められる値であってもよいし、上記の測定方法を二次元の平面に展開して求められる値であってもよい。
上記音響整合層における上記境界面以外の上記層の表面は、凹凸を有していてもよいし、平滑(例えばRaが0.3未満)であってもよい。上記境界面以外の表面が平滑であると、上記音響整合層と上記圧電素子との接着層の厚みを薄くでき、あるいは、上記音響整合層と上記音響レンズとの接着層の厚みを薄くでき、当該接着層での超音波の減衰を抑えることができる。上記の平滑な表面は、例えば、上記塗膜の乾燥時に、当該塗膜が完全に固化する前に当該表面を加圧することによって作製することが可能であり、あるいは、平滑で離型性に富む基板上に上記音響整合層を作製し、その後に基板から剥がすことによって作製することが可能である。
上記音響整合層は、上記のように、作製用基板上に上記の層を順次作製して上記積層体を製造し、それを当該作製用基板から剥がし、接着剤によって圧電素子に接着することによって、圧電素子に接合させることができる。あるいは、上記音響整合層は、上記作製用基板に代えて上記圧電素子または圧電体(上記溝を形成する前の圧電素子)の表面に直接上記層を順次作製することによって、接着剤を用いずに上記圧電素子に接合させることができる。さらに、上記圧電体上に音響整合層を接合させた場合には、音響整合層とともに圧電体に上記溝を作製し、その溝に上記目地材を充填してもよい。このような方法により、圧電素子とともに素子単位に区画された音響整合層を作製することも可能である。
上記超音波振動子は、超音波探触子に好適に用いられる。当該超音波探触子は、上記超音波振動子を含む以外は、公知の超音波探触子と同様に構成することが可能であり、また、公知の超音波撮像装置に適用することが可能である。当該超音波探触子は、例えば、医療用超音波診断装置や非破壊超音波検査装置などに好適に用いられる。
図1Aは、上記超音波撮像装置の一例の構成を模式的に示す図であり、図1Bは、当該超音波撮像装置の電気的な構成を示すブロック図である。
超音波撮像装置200は、図1Aに示されるように、装置本体201と、装置本体201にケーブル203を介して接続されている超音波探触子202と、装置本体201上に配置されている入力部204および表示部209と、を有する。
装置本体201は、図1Bに示されるように、入力部204に接続されている制御部205と、制御部205およびケーブル203に接続されている送信部206および受信部207と、受信部207および制御部205のそれぞれと接続されている画像処理部208と、を有する。なお、制御部205および画像処理部208は、それぞれ表示部209と接続されている。
入力部204は、例えば、診断開始などを指示するコマンドや被検体の個人情報などのデータを入力するための装置であり、例えば、複数の入力スイッチを備えた操作パネルやキーボードなどである。
制御部205は、例えば、マイクロプロセッサや記憶素子、その周辺回路などを備えて構成され、超音波探触子202、入力部204、送信部206、受信部207、画像処理部208および表示部209を、それぞれの機能に応じて制御することによって超音波診断装置200の全体の制御を行う回路である。
送信部206は、例えば、制御部205からの信号を超音波探触子202に送信する。受信部207は、例えば、超音波探触子202からの信号を受信して制御部205または画像処理部208へ出力する。
画像処理部208は、例えば、制御部205の制御に従い、受信部207で受信した信号に基づいて被検体内の内部状態を表す画像(超音波画像)を形成する回路である。たとえば、画像処理部208は、被検体の超音波画像を生成するDigital Signal Processor(DSP)、および、当該DSPで処理された信号をデジタル信号からアナログ信号へ変換するデジタル−アナログ変換回路(DAC回路)などを有している。
表示部209は、例えば、制御部205の制御に従って、画像処理部208で生成された被検体の超音波画像を表示するための装置である。表示部209は、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイなどの表示装置や、プリンタなどの印刷装置などである。
図2は、超音波探触子202の構成を模式的に示す図である。超音波探触子202は、図2に示されるように、超音波トランスデューサー(超音波振動子)100と、超音波トランスデューサー100を収容するホルダ210とを有する。ホルダ210は、超音波探触子202の表面に音響レンズ170が露出するように、超音波トランスデューサー100を保持している。超音波トランスデューサー100のFPC120は、ケーブル203の先端に配置されたコネクタ211に接続されている。なお、図2中、超音波トランスデューサー100の構成の一部は、省略されている。
図3は、超音波トランスデューサー100の構成を模式的に示すための図である。超音波トランスデューサー100は、バッキング層110、フレキシブルプリント基板(FPC)120、圧電体130、溝140、141、目地材150、音響整合層160および音響レンズ170を有する。
バッキング層110は、バッキング材によって構成されており、圧電体130を支持し、不要な超音波を吸収し得る超音波吸収体である。すなわち、バッキング層110は、圧電体130における被検体、例えば生体、に超音波を送受信する方向と反対の面(裏面)に装着され、被検体の方向の反対側に発生する超音波を吸収する。
バッキング層110の材料の例には、天然ゴム、エポキシ樹脂、熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、および、これらの材料の少なくともいずれかと酸化タングステンや酸化チタン、フェライトなどの粉末との混合物をプレス成形した樹脂系複合材、が含まれる。上記熱可塑性樹脂の例には、塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ABS樹脂、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂、ポリエチレングリコール、および、ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体、が含まれる。中でも樹脂系複合材、その中でも特にゴム系複合材料またはエポキシ樹脂系複合材が好ましい。バッキング層110の形状は、圧電体130の平面形状や超音波トランスデューサー100、これを含む超音波探触子202などの形状に応じて、適宜に決めることができる。
FPC120は、例えば、圧電体130のための一対の電極と接続される、後述の超音波振動子に対応したパターンの配線を有する。各超音波振動子には、FPC120にて電極が取り付けられ、コンピューターでプログラムした超音波の送受信駆動により、任意のビームフォーミングが可能となる。たとえば、FPC120は、一方の電極となる信号引き出し配線と、図示しない他方の電極に接続されるグランド引き出し配線とを有する。FPC120は、上記の適当なパターンを有していれば、市販品であってもよい。
上記電極の材料の例には、金、白金、銀、パラジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、スズ、および、これらの金属元素を含む合金、が含まれる。たとえば、上記電極は、まず、チタンやクロムなどの下地金属をスパッタ法により0.002〜1.0μmの厚さに形成し、次いで、上記材料を、さらには必要に応じて絶縁材料を部分的に、スパッタ法、蒸着法その他の適当な方法で0.02〜10μmの厚さに形成することによって作製される。上記電極は、微粉末の金属粉末と低融点ガラスを混合した導電ペーストをスクリーン印刷やディッピング法、溶射法によって当該導電ペーストの層を形成することによって作製することも可能である。
なお、バッキング層110とFPC120は、例えば、当該技術分野で通常使用される接着剤(例えば、エポキシ系接着剤)で接着され得る。
圧電体130は、前述した本実施の形態に係る圧電体であり、当該圧電体を素子単位に区画する溝140、141には、気泡が分散されている目地材150を有する。たとえば、圧電体130は、前述した積層体で構成され、圧電体130の厚さは、例えば0.05〜0.4mmである。圧電体130は、FPC120に、例えば導電性接着剤によって接着されている。当該導電性接着剤は、例えば、銀粉や銅粉、カーボンファイバーなどの導電性材料を含有する接着剤である。
溝140は、圧電体130の表面からバッキング層110に至る深さを有し、溝141は、圧電体130の表面から圧電体130内に至る深さを有している。溝140は、超音波振動子の主素子を区画しており、溝141は、1主素子中に並列する三つの副素子を区画している。溝140、141は、いずれも、例えばダイシングソーによる溝切り加工によって形成されており、その幅は、例えば15〜30μmmmである。副素子は、なくてもよいし、上記の溝は、二つの副素子を区画していてもよい。
なお、上記主素子におけるピッチ(溝140の中心間距離)は、例えば0.15〜0.30mmであり、上記副素子におけるピッチ(隣り合う溝(溝141または溝140)の中心間距離)は、例えば0.04〜0.15mmである。
目地材150は、溝140および141に充満している。目地材150の材料の例には、前述したように、エポキシ樹脂シリコーンおよびこれらの混合物、の硬化物が含まれる。また、目地材150には、フィラーが添加されていてもよい。フィラーは、例えば、シリカやアルミナの無機酸化物の粒子であってもよいし、シリコーンゴムのような有機材料の粒子であってもよい。
上記エポキシ樹脂は、例えば、エポキシ樹脂のプレポリマーと、当該プレポリマー間に架橋ネットワークを形成するための硬化剤とを含有するプレポリマー組成物の硬化物として構成される。
上記プレポリマーの例には、フェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル(フェニレン、ビフェニレン骨格を含む)樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂などのフェノール樹脂が含まれる。
上記硬化剤の例には、アミン系硬化剤が含まれ、当該アミン系硬化剤の例には、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジンなどのトリアジン化合物、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、および、トリエタノールアミンが含まれる。
音響整合層160は、圧電体130と後述の音響レンズ170との音響特性を整合させるための層である。音響整合層160は、例えば接着剤によって圧電体130および音響レンズのそれぞれを接着している。音響整合層160は、圧電体130と音響レンズ170との概ね中間の音響インピーダンスZa(Mrayl(=×106kg/(m2秒)))を有する。なお、圧電体130の上記被検体側(表面側)には、例えば、前述の他方の電極を介して配置される。
音響整合層160は、音響インピーダンスが異なる複数の層の積層体であり、例えば2層以上、より好ましくは4層以上の積層体である。音響整合層160の厚さは、一般にはλ/4であることが好ましいが、本発明ではλ/4以下でもよい。λは、超音波の波長である。音響整合層160は、例えば、種々の材料で構成することが可能である。音響整合層160のZaは、音響レンズに向けて音響レンズのZaに、段階的または連続的により近づくように設定されていることが好ましく、例えば、当該材料に添加する添加剤の種類および含有量によって調整することが可能である。
上記材料の例には、アルミニウム、アルミニウム合金(例えばAl−Mg合金)、マグネシウム合金、マコールガラス、ガラス、溶融石英、コッパーグラファイトおよび樹脂が含まれる。当該樹脂の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、ナイロン6やナイロン66などのナイロン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ樹脂およびウレタン樹脂が含まれる。上記添加剤の例には、亜鉛華、酸化チタン、シリカやアルミナ、ベンガラ、フェライト、酸化タングステン、酸化イットリビウム、硫酸バリウム、タングステン、モリブデン、ガラス繊維およびシリコーン粒子が含まれる。
音響整合層160の各層間の境界面は、いずれも、圧電体130から出力された超音波を散乱させる凹凸面に形成されている。当該境界面の凹凸は、算術平均粗さRaであれば1.5μm以上であり、上記うねりであれば、例えば、その高低差は0〜40μmであり、当該うねりのピッチは30〜400μmである。これらの表面状態は、音響整合層160における上記境界面のいずれで同一であってもよいし異なっていてもよい。
音響整合層160のZaを調整する観点から、例えば、音響整合層160の表面部は、エポキシ樹脂で構成されているとともにシリコーン粒子を含有していることが好ましい。後述するように、音響レンズ170の材料であるシリコーンを音響整合層160の基材中に分散して存在させると、音響整合層160のZaを音響レンズ170のそれに近づけることが可能である。
音響レンズ170は、例えば、被検体と音響整合層160との中間のZaを有する軟質の高分子材料により構成される。音響レンズ170のZaは、例えば、被検体のZaから音響整合層160のZaまでの範囲内である。当該高分子材料の例には、シリコーン系ゴム、ブタジエン系ゴム、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、および、エチレンとプロピレンとを共重合させてなるエチレン−プロピレン共重合体ゴム、が含まれる。中でも、上記高分子材料は、シリコーン系ゴムおよびブタジエン系ゴムからなることが好ましい。
上記シリコーン系ゴムの例には、シリコーンゴムおよびフッ素シリコーンゴムが含まれる。特に、音響レンズの特性の観点からは、シリコーンゴムが好ましい。当該シリコーンゴムとは、Si−O結合からなる分子骨格を有し、そのSi原子に複数の有機基が主結合したオルガノポリシロキサンをいい、通常は、その主成分はメチルポリシロキサンで、その全体の有機基のうち90%以上がメチル基である。上記シリコーンゴムは、上記メチルポリシロキサンのメチル基の少なくとも一部が、水素原子、フェニル基、ビニル基またはアリル基も置き換わっていてもよい。
上記シリコーンゴムは、例えば、高重合度のオルガノポリシロキサンに過酸化ベンゾイルなどの硬化剤(加硫剤)を混練し、加熱加硫し硬化させることにより得ることができる。音響レンズ170における音速の調整や密度の調整などの目的に応じ、シリカやナイロン粉末などの有機または無機の充填剤や、硫黄や酸化亜鉛などの加硫助剤などがさらに添加されてもよい。好ましい無機充填材の例には、硫酸バリウムおよび二酸化チタンが含まれる。
上記ブタジエン系ゴムの例には、ブタジエンのホモポリマーであるブタジエンゴム、および、ブタジエンを主体としこれに少量のスチロールまたはアクリロニトリルが共重合した共重合ゴム、が含まれる。特に、音響レンズの特性の観点から、ブタジエンゴムであることが好ましい。ブタジエンゴムとは、共役二重結合を有するブタジエンの重合により得られる合成ゴムをいう。ブタジエンゴムは、共役二重結合を有するブタジエンが1,4位で、または1,2位で、単独で重合することにより得ることができる。ブタジエンゴムは、さらに、硫黄などにより加硫させてもよい。
シリコーン系ゴムおよびブタジエン系ゴムからなる音響レンズ170は、例えば、シリコーン系ゴムとブタジエン系ゴムとを混合し、加硫硬化させることにより生成することが可能である。たとえば、音響レンズ170は、シリコーンゴムとブタジエンゴムとを適宜割合で混練ロールにより混合し、過酸化ベンゾイルなどの加硫剤を添加して加熱加硫して架橋(硬化)させることにより、得ることができる。
上記の場合、加硫助剤として、酸化亜鉛をさらに添加してもよい。酸化亜鉛は、音響レンズ170のレンズ特性を実質的に損なわずに加硫を促進し、加硫時間を短縮することできる。他に、発色剤や音響レンズの特性を損なわない範囲内で他の添加剤を添加してもよい。シリコーン系ゴムとブタジエン系ゴムとの混合割合は、適宜設定することができる。たとえば、音響レンズ170のZaは、被検体のそれに近似するとともに、音響レンズ170内における音速が被検体のそれよりも小さく、音響レンズ170のZaの減衰がより少なくなるように設定されていることが好ましい。このような観点から、シリコーン系ゴムとブタジエン系ゴムとの混合割合は、1:1が好ましい。
なお、超音波トランスデューサー100は、保護層を含んでいてもよい。当該保護層は、音響レンズ170を封止していてもよいし、音響レンズ170以外の部分を封止していてもよい。当該保護層は、例えば、超音波トランスデューサー100における音響整合層160およびそれよりも圧電体130側の構成を一体的に覆う層であり、これらの構成への物理的または化学的な刺激から上記の構成を保護するための層である。上記保護層は、物理的および化学的な安定性を有する材料で構成されていることが好ましく、例えば、エポキシ樹脂やポリパラキシリレンなどの、物理的および化学的に比較的安定な樹脂で構成され得る。当該保護層は、例えば、前述したパリレンコーティングにより作製される。
上記保護層の厚さは、その所期の機能を発現するとともに、超音波トランスデューサー100における所期の音響特性を発現可能な範囲で、適宜に決めることができる。当該保護層の厚さは、例えば、2〜4μmである。当該厚さであれば、保護層の音響インピーダンスが、音響整合層160および音響レンズ170のそれよりも高かったとしても、超音波トランスデューサー100の所期の音響特性を十分に発現させることが可能である。
超音波トランスデューサー100が上記保護層を有する場合では、音響レンズ170は、上記保護層に接着されていてもよい。この場合、上記保護層の厚さが可能な限りで十分に薄いことが、超音波トランスデューサー100の所期の音響特性を実現する観点から好ましい。
超音波撮像装置200では、制御部205が入力部204からの信号を受信し、生体などの被検体に対して超音波(第1超音波信号)を送信させる信号を送信部206に出力するとともに、当該第1超音波信号に基づく被検体内から来た超音波(第2超音波信号)に応じた電気信号を受信部207に受信させる。
超音波探触子202の超音波トランスデューサーには、超音波トランスデューサー100が使用されている。圧電体130から超音波が送信されると、当該超音波は、音響整合層160および音響レンズ170を伝わり、人体などの被検体に送られる。そして、当該被検体内で反射し、音響レンズ170および音響整合層160を伝わり、圧電体130に受信される。たとえば、受信された超音波は、その振幅および周波数帯域に応じた電気信号に、圧電体130によって変換される。
音響整合層160は、複数の層の積層体で構成されており、当該層のうちの二層が形成する境界面は、圧電体130から出力される超音波が散乱する凹凸面になっている。よって、境界面の付近における音響インピーダンスの変化が連続的となって、音響インピーダンスの明確な境界がなくなることから、音響整合層160を進む超音波は、上記境界面をより通過しやすい。よって、上記境界面における超音波の反射による損失を抑制することができる。このように、音響整合層160では、平滑な境界面に比べて上記境界面を超音波がより通過しやすい。よって、音響整合層160を通過する超音波の出力をより高めることができる。また、音響整合層160が積層タイプであることから、広帯域特性に優れる。よって、音響整合層160は、超音波をより強く、またより広く出力することができる。
受信部207で受信した電気信号は、画像処理部208に送られて当該電気信号に応じた画像信号に処理される。当該画像信号は、表示部209に送られて、当該画像信号に応じた画像が表示部209に表示される。表示部209は、また、入力部204から入力された、制御部205を介して送られる情報に基づき、当該情報に応じた画像および操作(文字の表示、表示された画像の移動や拡大など)も表示する。
超音波撮像装置200は、超音波測定において、より強い超音波をより広く出力する。このため、超音波撮像装置200は、平滑な上記境界面を有する音響整合層を有する従来の超音波撮像装置に比べて、より高い空間分解能を得ることができ、よって、より精密かつ信頼性がより高い測定結果を得ることができる。
超音波撮像装置200は、医療用の超音波診断装置に適用される。超音波撮像装置200は、この他にも、魚群探知機(ソナー)や非破壊検査用の探傷機などの、超音波による探査結果を画像や数値などで表示する装置に適用され得る。
以上の説明から明らかなように、上記超音波振動子は、圧電素子と、それに接合する音響整合層とを有し、上記音響整合層は、複数の層の積層体であり、上記複数の層は、それぞれ異なる音響インピーダンスを有し、かつ音響インピーダンスが上記圧電素子側から順に小さくなるように重ねられている。そして、上記複数の層の積層方向における境界面は、その算術平均粗さRaが1.5μm以上の大きさの凹凸を有する。よって、本実施の形態によれば、音響整合層内での超音波の反射をより抑制可能な超音波振動子を提供することができる。
上記層が基材樹脂およびそれに分散されたフィラーを含み、上記積層方向において隣り合う上記層の上記基材樹脂の種類が異なるか、あるいは、上記積層方向において隣り合う上記層の上記フィラーの種類、大きさまたは形状が異なることは、各層の音響特性を適切に制御する観点からより一層効果的である。
また、上記層が基材樹脂、それに分散されたフィラー、およびそれに分散された発色剤を含み、上記積層方向において隣り合う上記層の発色が異なることは、各層の音響特性を容易に識別可能になるので、超音波振動子の製造における組み立てるべき音響整合層の判別が容易となり、超音波振動子の生産性を高める観点からより一層効果的である。
また、上記超音波振動子が上記音響整合層に接着に接着された音響レンズをさらに有することは、より高い指向性の超音波を出力する観点からより一層効果的である。そして、上記超音波撮像装置は、上記の音響レンズを有する上記超音波振動子を有する。よって、本実施の形態によれば、優れた感度を有する超音波探触子を提供することができる。
また、上記超音波振動子の製造方法は、上記複数の層の積層方向における一方の層とそれに重なる他方の層における上記一方の層の表面を、その算術平均粗さRaが1.5μm以上の大きさの凹凸を有するように形成することを特徴とする。よって、当該製造方法によれば、音響整合層内での超音波の反射をより抑制可能な超音波振動子を提供することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。
[実施例1]
パターニングされたフレキシブルプリント基板(FPC)、バッキング層および固定板を上からこの順に接着剤で接着して積層し、FPCの表面に、両面に電極が形成された4.6mm×42.5mmの、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で構成された圧電材料層を接着した。そして、圧電材料層からバッキング層に至る溝を形成し、圧電素子の主素子を作製した。また、当該主素子において、積層方向における一部を残して圧電材料層を切断する平行な二本の溝を形成し、一つの主素子に、三つの並列する副素子を作製した。そして、エポキシ接着剤(株式会社テスク製「C1054」)を溝に充填し硬化させて圧電素子1を作製した。
次いで、音響整合層1を用意した。音響整合層1では、音響整合層1を構成する各層を、適当なスクリーンを用いるスクリーン印刷で作製することによって硬化物の表面を十分に粗し、こうして作製された層の上に次の層を同様に作製していくことにより、当該層の境界に凸凹の境界面を形成した。
まず、剥離フィルムをガラス基板に固定し、60℃に10分間加熱してガラス基板に密着させた。次いで、当該ガラス基板をスクリーン(株式会社ソノコム製)と合わせて、スクリーン印刷機DP−320(ニューロング精密工業株式会社製)にセットした。次いで、印圧0.2MPa、コート速度200mm/s、プリント速度50mm/s、スキージ角度70°に設定し、第1のインクのベタ画像を、上記スクリーンを介して上記剥離フィルム上に印刷した。スクリーンのメッシュ数は#150〜200であり、その線径は40〜60μmであり、乳剤層の厚さは10μmである。
上記第1のインクは、戸田工業製ソフトフェライト粉末(平均粒子径5μm)、株式会社テスク製エポキシ接着剤C−1001、および、関東化学株式会社製イソホロンを含有する。上記第1のインクにおける上記ソフトフェライト粉末の含有量は、作製されるべき第1の層の音響インピーダンスによって決まり、当該音響インピーダンスが14Mraylとなる量である。また、第1のインクの粘度は、イソホロンまたはエポキシ接着剤の粘度によって調整され、3,000〜50,000cP(3〜50Pa秒)の範囲内である。
次いで、真空乾燥機にて−0.1MPa、50℃、5時間の条件で第1のインクを乾燥させて、第1の層を作製した。上記第1の層の音響インピーダンスは14MRaylである。また、上記第1の層の表面粗さを、オリンパス株式会社製走査型共焦点レーザ顕微鏡「OLS−3000」により測定した。その結果、第1の層の表面の凹凸は、算術平均粗さRaで3.5μmであった。
次いで、第1の層と同様にして、音響インピーダンスが13Mraylから2Mraylまでの、第2の層から第10の層を順次重ねて作製していき、音響インピーダンスが14Mraylから2Mraylまで暫時変化する音響整合層1を作製した。音響整合層1における各層の厚さは、15〜20μmであった。また、各層の表面粗さRaは、1.9〜3.5μmであった。
次いで、音響整合層1を上記剥離シートから剥がし4.6mm×42.5mmの大きさに切り取り、音響インピーダンスの大きい側(第1の層側)の面を、エポキシ系接着剤を介して圧電素子1に当接させ、2.94MPaの加圧条件下で、当該エポキシ系接着剤の加熱硬化により、音響整合層1を圧電素子1に接着した。
次いで、音響整合層1の表面に3μm程度の厚さのパリレン膜を作製し、次いで、音響整合層1の音響放射部となる部分に対応する当該パリレン膜の部分にプライマーYP9341(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)を塗布し、次いで、シリコーン接着剤Ke−471Wで上記部分に音響レンズを接着した。こうして、超音波振動子1を作製した。
なお、音響整合層1の断面における第1の層と第2の層との境界面を撮影し、画像処理によって当該境界面の表面粗さを測定したところ、Raで3.4μmであった。また、音響整合層1の断面における第2層と第3層との境界面を撮影し、画像処理によって当該境界面の表面粗さを測定したところ、Raで2.0μmであった。この結果から明らかなように、当該境界面では、その下側の層の表面粗さが実質的に保存されていることが確認された。
[実施例2]
音響整合層1に代えて音響整合層2を用いる以外は超音波振動子1と同様にして、超音波振動子2を作製した。音響整合層2では、音響整合層1を構成する各層を、アプリケーターによる塗膜の乾燥条件の制御によるマランゴニ効果によって、その表面に凹凸を形成し、こうして作製された層の上に次の層を同様に作製していくことにより、当該層の境界に凸凹の境界面を形成した。
音響整合層2の作製方法を説明する。まず、上記ガラス基板に密着した剥離フィルムに、30μmのギャップを有するアプリケーターを使用して手刷りで第1の塗料のベタ画像の塗膜を形成した。上記第1の塗料は、イソホロンに代えて関東化学株式会社製シクロヘキサノンおよびアセトンを用い、かつその粘度を2,000〜5,000cP(2〜5Pa秒)の範囲内に調整されている以外は、上記第1のインクと同様に調製されている。
次いで、40℃の恒温槽にて3時間乾燥後、真空乾燥機にて−0.1MPa、50℃5時間の条件で上記塗膜を乾燥させ、第1の層を作製した。当該第1の層の音響インピーダンスは14MRaylである。また、上記第1の層の表面粗さを、オリンパス株式会社製走査型共焦点レーザ顕微鏡「OLS−3000」により測定した。その結果、上記第1の層の表面の凹凸は、Raで1.9μmであった。
次いで、第1の層と同様にして、音響インピーダンスが13Mraylから2Mraylまでの、第2の層から第10の層を順次重ねて作製していき、音響インピーダンスが14Mraylから2Mraylまで暫時変化する音響整合層2を作製した。音響整合層2における各層の厚さは、10〜20μmであった。また、各層のうねりは、7〜12μmであり、Raで1.5〜2.5μmであった。
なお、上記うねりは、SEM断面写真を取得し、層間を5μm相当太さの線でなぞり、その後、上記の線に沿って片方の層を切り抜き、紙の面積と重さとの関係から、切り取られた層の平均厚みを算出する。そして、SEM写真のコピーに対し、上記平均厚みとうねり曲線(5μmの線)に囲まれる部分を切り抜き、上記と同様にして当該他の層の平均厚みを算出する。
[比較例1]
音響整合層1に代えて音響整合層C1を用いる以外は超音波振動子1と同様にして、超音波振動子C1を作製した。音響整合層C1では、スクリーンを用いずにスクリーン印刷によって各層を作製し、その表面を研磨することで厚さを調整するとともに平滑な表面を形成した。
音響整合層C1の作製方法を説明する。上記第1のインクを、圧電材の表面に塗り硬化させる。次いで、研磨機(ムサシノ電子株式会社製「MA−200e」)で塗膜の厚さが10〜20μmとなるよう研磨し、こうして第1の層を作製した。また、上記第1の層の表面粗さを、オリンパス株式会社製走査型共焦点レーザ顕微鏡「OLS−3000」により測定した。その結果、上記第1の層の表面粗さRaは、1.0μmであった。
次いで、当該第1の層と同様にして、音響インピーダンスが13Mraylから2Mraylまでの第2の層から第10の層を順次重ねて作製していき、音響インピーダンスが14Mraylから2Mraylまで暫時変化する音響整合層C1を作製した。音響整合層C1における各層の厚さは、10〜20μmであった。また、各層の表面粗さRaは、0.7〜1.2μmであった。
超音波振動子1、2およびC1における第1、3、5、8および10の各層の音響インピーダンスZa、層厚TL、表面粗さ(Sr)または表面うねり(Sw)、基材の種類およびフィラーの種類を、表1に示す。
[評価]
(1)送受信感度(Si)および−6dB比帯域(BW)の測定
超音波振動子(UT)1、2、C1のそれぞれを用いて、図4に示されるような測定装置を構成した。この測定装置は、図4に示されるように、SUS製の反射板(RE)がその底に配置されている水槽と、当該水槽の水面近傍に配置された超音波振動子(UT)と、当該超音波振動子に電気的に接続されたパルサーレシーバー(PR)と、当該パルサーレシーバーに電気的に接続されたオシロスコープ(OS)とからなる。当該パルサーレシーバーは、例えば、オリンパス株式会社製超音波パルサーレシーバー「MODEL5900PR」であり、当該オシロスコープは、例えば、株式会社TFF製オシロスコープ「TDS5032」である。
まず、構成で接続し、超音波振動子(UT)1、2、C1のそれぞれの、水中に浸漬させたプローブヘッド部からSUS製の反射板(RE)に向かって超音波を送信し、反射波を受信して、超音波振動子1、2、C1のそれぞれの送受信感度Si(dB)をと−6dB比帯域(BW6(%))とを求めた。
(2)加工性
超音波振動子1、2、C1のそれぞれの加工性を下記評価基準により評価した。
○:1層の作製時間が1時間以内
×:1層の作製時間が1時間超
(3)コスト
超音波振動子1、2、C1のそれぞれのコストパフォーマンスを下記評価基準により評価した。
○:歩留まりが90%以上であり、全体の製造作業時間が16時間以内
×:歩留まりが90%未満であり、全体の製造作業時間が16時間超
(4)判定
超音波振動子1、2、C1のそれぞれを下記評価基準により総合的に評価した。
○:加工性およびコストの評価がいずれも「○」である
×:加工性およびコストの評価の少なくともいずれかに「×」がある
上記評価結果を表2に示す。
表2から明らかなように、超音波振動子1、2は、いずれも、超音波振動子C1に比べて高い相対感度を有している。これは、超音波振動子1、2では音響整合層1、2における各層での境界面において実質的に音響特性が連続的に変化し、当該境界面での超音波の反射が抑制され、その結果、音響整合層1、2を超音波がより通過しやすくなったため、と考えられる。
また、表2から明らかなように、超音波振動子1、2は、いずれも、超音波振動子C1に比べて、1割程度広い−6dB比帯域を有している。これは、音響整合層の積層構造による効果に加えて、上記のような理由で音響整合層からの超音波の出力が増したため、と考えられる。
[実施例3]
各層のインクに色の異なる発色剤を添加し、各層を色で識別可能に着色した以外は、音響整合層2と同様にして音響整合層3を作製し、音響整合層2に代えて音響整合層3を用いる以外は超音波振動子2と同様にして、超音波振動子3を作製した。そして、音響整合層3の断面観察から各層の境界面の表面粗さを求めた。超音波振動子3における各層の作製時の表面状態と、作製後の断面観察による各層の表面粗さとを表3に示す。
表3から明らかなように、音響整合層3における各層の表面粗さは、各層の積層後にも実質的に保存されていることがわかる。