JP6094424B2 - 超音波探触子、超音波画像診断装置及び超音波探触子の製造方法 - Google Patents

超音波探触子、超音波画像診断装置及び超音波探触子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、超音波探触子、超音波画像診断装置及び超音波探触子の製造方法に関する。
医療、非破壊検査などのための装置として、超音波により被検査物の内部を示す画像を得る超音波画像診断装置が知られている。この超音波画像診断装置は、駆動信号の入力に応じて超音波を出力する圧電体が設けられた超音波探触子を有している。ここで、従来の超音波探触子において、圧電体から発せられる超音波をより効率よく被検査物に送出することを目的として、圧電体から背面側に出力された超音波を前方に反射させるための反射層(デマッチング層)を圧電体の背面側に設けるようにしたものがある。そして、反射層による超音波の反射をより効率よく行うため、反射層の音響インピーダンスは圧電体の音響インピーダンスよりも大きくなるように設定されている。
反射層は接着剤により圧電体の背面側に接着される。ここで、接着剤により形成される接着層は、圧電体から反射層側に出力される超音波及び反射層により反射される超音波を減衰させてしまうことから、できるだけ厚みが小さいことが望ましい。これに鑑み、従来の超音波探触子において、接着層を超音波の波長の0.01倍(100分の1)以下とするようにしたものが知られている(例えば、特許文献1)。
特開2000−131298号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、高周波数帯の超音波を利用しようとした場合に、接着層の厚みを十分に小さくすることができないので、良好な音響特性を得ることができない。例えば、10MHzといった高周波数の超音波を送受信する場合、一般的に使用される高分子系の接着剤では、上記特許文献1の記載によれば、この超音波の波長の0.01倍に対応する接着層の厚みは約2.5μmとなるが、上記特許文献1には、当該厚みを実現可能な具体的な手段が開示されていない。また、上記特許文献1に記載の技術では、反射層(背面層)の材料としてチタン酸鉛のセラミックスを想定しているが、セラミックスの粒径から想定される反射層の算術平均粗さを鑑みると、反射層と圧電体との間に形成される接着層の厚みを2.5μm以下にすることは困難である。
仮に、接着層の厚みを約2.5μmとすることが可能であったとしても、約−9dBもの感度低下が生じ、良好な音響特性を得ることができない。良好な音響特性を得るためには、少なくとも感度低下を−3dB以内に抑えたい。ところが、感度低下を−3dB以内とする場合には、接着層の厚みを超音波の波長の1/250以下とすることが要求されるが、上記特許文献1に記載の技術では困難である。
本発明の課題は、圧電層と反射層とを接着する接着層の厚みが十分に薄層化された超音波探触子、超音波画像診断装置及び超音波探触子の製造方法を提供することである。
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、圧電体の超音波の出力面とは反対側の面に該圧電体の音響インピーダンスよりも高い音響インピーダンスを有する反射層が熱硬化性接着剤により接着されてなる超音波探触子において、
前記接着剤により接着される前記圧電体及び前記反射層の各接着面の算術平均粗さ(Ra)の和が0.4μm以下であり、
熱硬化前の前記接着剤の粘度が40℃以下において600cps以下であることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波探触子において、
前記接着剤の硬化温度よりも低い第1の温度で前記圧電体と前記反射層との間に熱硬化前の前記接着剤により接着層を形成した状態で前記圧電体と前記反射層とが互いに対向する方向に所定時間加圧することにより余剰接着剤を逃がす第1の工程と、
前記前記接着剤の硬化温度以上である第2の温度まで加温して所定時間加圧することにより前記接着層を形成する接着剤を熱硬化させる第2の工程と、
を経て前記圧電体と前記反射層とが接着されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の超音波探触子において、
前記接着剤は、熱硬化後のガラス転移温度が50℃以上であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の超音波探触子において、
前記反射層はタングステン系合金からなることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の超音波探触子において、
前記反射層を構成する前記タングステン系合金の粒径を1μm以下としたことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の超音波探触子において、
熱硬化後の前記接着剤により形成される接着層の厚みを0.5μm以下としたことを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の超音波探触子において、
送受信する超音波の中心周波数が7MHz以上であることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れか一項に記載の超音波探触子において、
前記圧電体及び前記反射層を所定の間隔毎に第1の分割溝により分割して互いに分離されることで走査方向に複数の振動子が形成され、
前記複数の振動子は、それぞれ、前記第1の分割溝と平行な第2の分割溝により更に分割されて形成された複数の分割素子を備えることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、超音波画像診断装置において、
請求項1〜8の何れか一項に記載の超音波探触子であって、駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を出力する超音波探触子と、
前記超音波探触子によって出力された前記受信信号に基づいて超音波画像を表示するための超音波画像データを生成する画像生成部と、
を備えたことを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の超音波画像診断装置において、
複数のパルスを有する矩形波の前記駆動信号を出力することにより前記超音波探触子に前記送信超音波を出力させる送信部を備え、
前記複数のパルスのうちの少なくとも1つのパルスのパルス幅を他のパルスのパルス幅と異ならせるようにしたことを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、圧電体の超音波の出力面とは反対側の面に該圧電体の音響インピーダンスよりも高い音響インピーダンスを有する反射層を熱硬化性接着剤により接着して超音波探触子を作製する超音波探触子の製造方法であって、
前記接着剤により接着される前記圧電体及び前記反射層の各接着面の算術平均粗さ(Ra)の和を0.4μm以下とし、
前記接着剤は、熱硬化前の粘度が40℃以下において600cps以下であって、
前記接着剤の硬化温度よりも低い第1の温度で前記圧電体と前記反射層との間に熱硬化前の前記接着剤により接着層を形成した状態で前記圧電体と前記反射層とが互いに対向する方向に所定時間加圧することにより余剰接着剤を逃がす第1の工程と、
前記接着剤の硬化温度以上である第2の温度まで加温して所定時間加圧することにより前記接着層を形成する接着剤を熱硬化させることにより前記圧電体と前記反射層とを接着する第2の工程と、
を含むことを特徴とする。
本発明によれば、圧電層と反射層とを接着する接着層の厚みを十分に薄層化することができる。
超音波画像診断装置の外観構成を示す図である。 超音波画像診断装置の概略構成を示すブロック図である。 送信部の概略構成を示すブロック図である。 パルス信号の駆動波形について説明する図である。 送信するパルス信号の波形について説明する図である。 超音波探触子の構造を模式的に示す断面図である。 超音波探触子の送受信帯域特性を示す図である。 接着層の厚みと、超音波探触子の中心周波数で規格化した周波数における感度の低下量との関係について説明するグラフである。 超音波探触子の製造手順の一例について説明するフローチャートである。 圧電層とデマッチング層の算術平均粗さ(Ra)の合算値と接着層の厚みとの関係について説明する図である。
以下、本発明の実施の形態に係る超音波画像診断装置について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態に係る超音波画像診断装置Sは、図1及び図2に示すように、超音波画像診断装置本体1と超音波探触子2とを備えている。超音波探触子2は、図示しない生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。超音波画像診断装置本体1は、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子2にて受信した被検体内からの反射超音波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する。
超音波探触子2は、圧電素子からなる振動子2aを備えており、この振動子2aは、例えば、方位方向(走査方向)に一次元アレイ状に複数配列されている。本実施の形態では、例えば、192個の振動子2aを備えた超音波探触子2を用いている。なお、振動子2aは、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、振動子2aの個数は、任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子2について、リニア走査方式の電子スキャンプローブを採用したが、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。超音波探触子2における帯域幅は任意に設定することができる。
超音波画像診断装置本体1は、例えば、図2に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、画像生成部14と、メモリー部15と、DSC(Digital Scan Converter)16と、表示部17と、制御部18とを備えて構成されている。
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部18に出力する。
送信部12は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2にケーブル3を介して電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子2に送信超音波を発生させる回路である。より具体的には、送信部12は、図3に示すように、例えば、クロック発生回路121、パルス発生回路122、パルス幅設定部123及び遅延回路124を備えている。
クロック発生回路121は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。
パルス発生回路122は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。パルス発生回路122は、例えば、図4に示すように、3値の電圧を切り替えて出力することにより、矩形波によるパルス信号を発生させることができる。このとき、パルス信号の振幅については、正極性及び負極性で同一となるようにしたが、これに限定されない。なお、2値あるいは4値以上の電圧を切り替えてパルス信号を発生させる構成であってもよい。
パルス幅設定部123は、パルス発生回路122から出力されるパルス信号のパルス幅を設定する。すなわち、パルス発生回路122は、パルス幅設定部123によって設定されたパルス幅に従ったパルス波形によるパルス信号を出力する。パルス幅は、例えば、操作入力部11による入力操作により可変することができる。また、超音波画像診断装置本体1に接続された超音波探触子2を識別することにより、識別した超音波探触子2に対応するパルス幅が設定されるように構成してもよい。
なお、駆動信号の形状に特に制限はなく、サイン波、コサイン波、矩形波等から適宜選択することができる。また、これらの複数の信号を合成した信号を用いるようにしてもよい。簡易かつ小型の回路で構成できるという観点からは、駆動信号を複数のパルスを有する矩形波とするのが好ましい。この際、複数のパルスのうちの少なくとも1つのパルスは、他のパルスとパルス幅(デューティー)が異なるように構成するのが好ましい。これにより、駆動信号の周波数帯域幅が大きくなるので、送信される超音波の周波数帯域幅をより大きくすることができ、時間分解能、すなわち、深さ方向の距離分解能をさらに向上させることができる。このような駆動信号の形状の例を図5に示す。図5に示される駆動信号は、第1のパルス信号と、この第1のパルス信号とは極性の異なる第2のパルス信号と、第1のパルス信号と極性の等しい第3のパルス信号とを備えた矩形波である。第1のパルス信号のパルス幅(T1)、第2のパルス信号のパルス幅(T2)及び第3のパルス信号のパルス幅(T3)は、それぞれ16ns、56ns、104nsに設定されている。なお、各パルス信号のパルス幅は上述したものに限らず、任意に設定することができる。例えば、本実施の形態では、パルス幅が徐々に大きくなるように設定されているが、パルス幅が徐々に小さくなるように設定されていてもよい。このように、第1〜第3のパルスのパルス幅を全て異ならせることによって駆動信号の周波数帯域幅をより大きくすることができる。なお、複数のパルス信号のうちの全てのパルス信号のパルス幅について同一に設定されていてもよい。
遅延回路124は、駆動信号の送信タイミングを振動子毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させて送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行うための回路である。
以上のように構成された送信部12は、制御部18の制御に従って、駆動信号を供給する複数の振動子2aを、超音波の送受信毎に所定数ずらしながら順次切り替え、出力の選択された複数の振動子2aに対して駆動信号を供給することにより走査を行う。
図2に示すように、受信部13は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する回路である。受信部13は、例えば、増幅器、A/D変換回路、整相加算回路を備えている。増幅器は、受信信号を、振動子2a毎に対応した個別経路毎に、予め設定された所定の増幅率で増幅させるための回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号をアナログ−デジタル変換(A/D変換)するための回路である。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データを生成するための回路である。
画像生成部14は、受信部13からの音線データに対して包絡線検波処理や対数増幅などを実施し、ゲインの調整等を行って輝度変換することにより、Bモード画像データを生成する。すなわち、Bモード画像データは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。画像生成部14にて生成されたBモード画像データは、メモリー部15に送信される。
メモリー部15は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーによって構成されており、画像生成部14から送信されたBモード画像データをフレーム単位で記憶する。すなわち、メモリー部15は、フレーム単位により構成された超音波診断画像データとして記憶することができる。メモリー部15に記憶された超音波診断画像データは、制御部18の制御に従って読み出され、DSC16に送信される。
DSC16は、メモリー部15より受信した超音波診断画像データをテレビジョン信号の走査方式による画像信号に変換し、表示部17に出力する。
表示部17は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示装置が適用可能である。表示部17は、DSC16から出力された画像信号に従って表示画面上に超音波診断画像の表示を行う。なお、表示装置に代えてプリンター等の印刷装置等を適用してもよい。
制御部18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成され、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波画像診断装置Sの各部の動作を集中制御する。
ROMは、半導体等の不揮発メモリー等により構成され、超音波画像診断装置Sに対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、各種データ等を記憶する。これらのプログラムは、コンピューターが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
次に、超音波探触子2の構造について説明する。
超音波探触子2は、図6に示すように、例えば、図上正面視下方から、バッキング(背後)層22、デマッチング(反射)層23、圧電層24及び音響整合層25を積層して構成されている。なお、必要に応じて、音響整合層25の上方に音響レンズを積層してもよい。
バッキング層22は、デマッチング層23を支持し、不要な超音波を吸収し得る超音波吸収体である。すなわち、バッキング層22は、圧電層24に対し被検体に超音波を送受信する方向とは反対側に設けられ、圧電層24の被検体の方向の反対側から発生し、バッキング層22に到達した超音波を吸収する。なお、本実施の形態において、バッキング層22を備えない構成としてもよい。
バッキング層22を構成するバッキング材としては、塩化ビニル、ポリビニルブチラール(PVB)、ABS樹脂、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVAL)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、フッ素樹脂(PTFE)、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体などの熱可塑性樹脂、天然ゴム、フェライトゴム、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂に酸化タングステンや酸化チタン、フェライト等の粉末を入れてプレス成形した複合材料、さらには複合材料を粉砕したのち、上述した熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等と混合し、硬化させた材料を用いることができる。音響インピーダンスを調整するために、マコールガラス等の無機材料や空隙を有する多孔質材料を用いることもできる。
好ましいバッキング材としては、ゴム系複合材料、及び/又は、エポキシ樹脂複合材からなるものであり、その形状は圧電層24やこれを含む超音波探触子2の形状に応じて、適宜選択することができる。
デマッチング層23は、音響インピーダンスが圧電層24よりも大きい材料により形成されており、圧電層24に対し被検体の方向とは反対側に出力される超音波を反射する。デマッチング層23に適用される材料としては、タングステンやタンタル等、圧電層24とデマッチング層23との音響インピーダンスの差が大きい材料であれば何れのものも適用可能であるが、タングステンカーバイドが好適である。また、タングステンカーバイドとコバルト等の他の材料とを混合してなるものであってもよい。すなわち、本実施の形態では、タングステン系合金を適用するのが好適であり、より好ましくは、粒径が1μm以下であるのがよい。このようにすると、タングステン系合金の算術平均粗さ(Ra)を0.2μm以下とすることができるようになる。本実施の形態では、デマッチング層23を備えることにより、圧電層24における超音波の送受波に対する感度をさらに向上させることができる。
圧電層24は、複数層あるいは単層の圧電体によって構成されている。圧電体の材料としては、従来から用いられている水晶、圧電セラミックスPZT、PZLTや、圧電単結晶PZN−PT、PMN−PT、LiNbO、LiTaO、KNbO、ZnO、AlNなどの薄膜などの無機圧電材料に加え、ポリフッ化ビニリデンやポリフッ化ビニリデン系共重合体、ポリシアン化ビニリデンやシアン化ビニリデン系共重合体、ナイロン9やナイロン11などの奇数ナイロン、芳香族ナイロン、脂環族ナイロン、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレートなどのポリヒドロキシカルボン酸、セルロース系誘導体、あるいはポリウレアなどの有機圧電材料が挙げられる。さらに無機圧電材料と有機圧電材料、無機圧電材料と有機高分子材料を併用したコンポジット材料も挙げられる。
上述した圧電材料は、無機圧電材料としては、市販のものを使用することができ、例えば、富士セラミック社製のC−6、C−6H、C−62、C−63、C−64、C−601、C−7、C−8、C−82、C−83H、C−9、C−91、C−91H、C−92H、又は、テイカ社製のL−1A、L−6A、L−201F、L−11、L−9、L−155N、L−145N等が挙げられる。また、有機圧電材料としては、東京センサ社製のPVDFフィルムやクレハ社製のポリ(ビニリデンフルオリド-co-トリフルオロエチレン)フィルム、試薬としてアルドリッチ社製のポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)等が挙げられる。
有機圧電材料から成る圧電層の形成方法には、塗布によって膜を形成する方法や、蒸着(蒸着重合)によって膜を形成する方法が好ましい。前記の塗布方法としては、たとえばスピンコート法、ソルベントキャスト法、メルトキャスト法、メルトプレス法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、バーコート法等が挙げられる。また、蒸着(蒸着重合)方法としては、数百Pa以下程度の真空度で、単一、または複数の蒸発源よりモノマーを蒸発させ、基板上に付着、反応させることで膜を得ることができる。必要に応じて、適宜基板の温度調整が行われる。
上述のようにして作成された有機圧電体膜への電極層の形成は、先ずチタン(Ti)やクロム(Cr)などの下地金属をスパッタ法により0.02〜1.0μmの厚さに形成し、続いて金属元素を主体とする金属材料またはそれらの合金から成る金属材料に、必要に応じて一部絶縁材料を併せて、スパッタ法等の適当な方法で1〜10μmの厚さに形成することで行われる。その後、分極処理が行われる。前記の金属材料には、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)などが用いられる。電極形成は、上記のスパッタ法以外に、微粉末の金属粉末と低融点ガラスとを混合した導電ペーストを、スクリーン印刷やディッピング法、溶射法等で、塗布することで行うこともできる。
本実施の形態では、圧電層24は、上述した構成により、送信部12から送信信号が与えられるとnλ/4(nは奇数)共振モードで共振して送信超音波を出力する。
本実施の形態では、特に、出力する中心周波数が7MHz以上である超音波探触子2に適用すると効果的であるが、これに限定されない。
圧電層24とデマッチング層23とは、接着層26を介して積層されている。接着層26を形成するための接着剤としては、エポキシ系等の熱硬化性接着剤を用いることができる。本実施の形態では、接着層26の厚みを0.5μm以下とするために、熱硬化前の粘度が40℃以下において600cps以下である低粘度接着剤を用いている。このとき、熱硬化後のガラス転移温度(Tg)が50℃以上であるのが好ましい。従来のように高粘度エポキシ樹脂のような熱硬化性接着剤を用いると、圧電層24とデマッチング層23との間の接着層26の厚みが大きくなり、圧電層24とデマッチング層23との導通の確保が難しくなるとともに、接着層26における不要な反射を招き、超音波探触子2の音響特性が劣化する。本実施の形態では、上述した低粘度接着剤を用いることで、接着工程において余剰接着剤を逃がしやすくすることができ、接着層26を容易に薄層化することができる。特に高周波数帯での使用においては、従来想定されている接着層の厚みよりも、より一層薄層化する必要があるため、有用である。
ここで、接着層26の厚みを0.5μm以下とするのが好ましい理由について説明する。
従来の超音波探触子において、圧電層は所望の送受信周波数の超音波を効率よく発生させるため、λ/2共振の振動モードが使用されていた。この場合には、バッキング層にも音響パワーが分配されるため、感度の点において効率がよくなかった。これに対し、圧電層よりも音響インピーダンスの大きいデマッチング層を圧電層の背面側に設けることで、λ/4共振の振動モードを使用することができ、圧電層の背面側に回る音響ロスを小さくすることができる。このとき、圧電層とデマッチング層とを接着する接着層の影響が無視できないものとなる。
図7に、接着層の厚みと送受信感度との関係を示す。図7中Aで示す線は、接着層の厚みが0μmであるときの超音波探触子の送受信帯域特性を示し、Bで示す線は、接着層の厚みが0.2μmであるときの超音波探触子の送受信帯域特性を示し、Cで示す線は、接着層の厚みが0.4μmであるときの超音波探触子の送受信帯域特性を示し、Dで示す線は、接着層の厚みが0.6μmであるときの超音波探触子の送受信帯域特性を示し、Eで示す線は、接着層の厚みが0.8μmであるときの超音波探触子の送受信帯域特性を示し、Fで示す線は、接着層の厚みが1μmであるときの超音波探触子の送受信帯域特性を示し、Gで示す線は、接着層の厚みが2μmであるときの超音波探触子の送受信帯域特性を示し、Hで示す線は、接着層の厚みが3μmであるときの超音波探触子の送受信帯域特性を示し、Iで示す線は、接着層の厚みが4μmであるときの超音波探触子の送受信帯域特性を示し、Jで示す線は、接着層の厚みが5μmであるときの超音波探触子の送受信帯域特性を示す。
また、図8に、接着層の厚みと、超音波探触子の中心周波数で規格化した周波数における感度の低下量との関係を示す。ここで、超音波探触子の中心周波数で規格化した周波数とは、例えば、中心周波数が10MHzである超音波探触子の送受信帯域特性において、ある周波数を中心周波数で除して得た値を示す。図8中Aで示す線は、超音波探触子の中心周波数で規格化した周波数値が約0.700である場合を示し、図8中Bで示す線は、超音波探触子の中心周波数で規格化した周波数値が約0.804である場合を示し、図8中Cで示す線は、超音波探触子の中心周波数で規格化した周波数値が約0.895である場合を示し、図8中Dで示す線は、超音波探触子の中心周波数で規格化した周波数値が約0.998である場合を示し、図8中Eで示す線は、超音波探触子の中心周波数で規格化した周波数値が約1.102である場合を示し、図8中Fで示す線は、超音波探触子の中心周波数で規格化した周波数値が約1.206である場合を示し、図8中Gで示す線は、超音波探触子の中心周波数で規格化した周波数値が約1.300である場合を示し、図8中Hで示す線は、超音波探触子の中心周波数で規格化した周波数値が約1.400である場合を示し、図8中Iで示す線は、超音波探触子の中心周波数で規格化した周波数値が約1.465である場合を示す。
図7及び図8に示すように、接着層の厚みが大きくなると、それにつれて、高域側の帯域が欠けてきてしまい、また、送受信感度においても低くなることがわかる。
したがって、接着層の厚みを0にすることは現実には不可能ではあるが、理想の感度状態から−5dB以内に抑えると理想に近い感度が得られる。そのためには、接着層の厚みは0.5μm以下であるのが望ましい。
バッキング層22とデマッチング層23との間にはFPC(Flexible Printed Circuits)27が挟持されており、このFPC27によって送信部12からの送信信号が圧電層24に与えられる。また、圧電層24で生成された受信信号は、FPC27によって受信部13に与えられる。
音響整合層25は、圧電層24と被検体との間の音響インピーダンスを整合させ、境界面での反射を抑制するものである。音響整合層25は、圧電層24の、超音波の送受波が行われる方向である被検体側に配置される。音響整合層25は、圧電層24と被検体との概ね中間の音響インピーダンスを有する。
音響整合層25に用いられる材料としては、アルミ、アルミ合金(例えばAL−Mg合金)、マグネシウム合金、マコールガラス、ガラス、溶融石英、コッパーグラファイト、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)、ABC樹脂、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、ナイロン(PA6、PA6−6)、PPO(ポリフェニレンオキシド)、PPS(ポリフェニレンスルフィド:ガラス繊維入りも可)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PAI(ポリアミドイミド)、PETP(ポリエチレンテレフタレート)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができる。好ましくはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に、充填剤として、亜鉛華、酸化チタン、シリカやアルミナ、ベンガラ、フェライト、酸化タングステン、酸化イットリビウム、硫酸バリウム、タングステン、モリブデン等を入れて成形したものが適用できる。
音響整合層25は、単層でもよいし複数層から構成されてもよいが、好ましくは2層以上、より好ましくは4層以上である。音響整合層25の層厚は、超音波の波長をλとすると、λ/4となるように定めるのが好ましい。このような音響整合層の厚さとしては、中心周波数に依存するが、通常、概ね20〜500μmの範囲のものが用いられる。音響整合層25は、厚み方向に重層塗布によって形成され、各層でそれぞれ材料構成を異ならせて厚み方向に音響インピーダンスの重みづけを行うことにより、音響インピーダンスを整合させている。なお、音響整合層25における音響インピーダンスの重みづけ方向については、厚み方向に限らず、水平方向であってもよい。
次に、本実施の形態に係る超音波探触子2の製造手順の一例について、図9を参照しながら説明する。
まず、ベースブロックにバッキング層22及びFPC27を積層し、接着する(ステップS10)。このようにして作製された積層体を積層体Aとする。
次に、音響整合層25を作製する(ステップS20)。具体的には、上述した材料にて、それぞれ音響インピーダンスが異なる音響整合材を作製する。そして、これらの音響整合材の接合面にそれぞれ低粘度エポキシ接着剤を塗布して積層し、専用の加圧冶具を用いて加圧硬化させて音響整合層25を作製する。なお、単層によって音響整合層25を作製してもよい。
次に、音響整合層25と圧電層24とデマッチング層23とを積層し、接着する(ステップS30)。具体的には、最初に、圧電層24を算術平均粗さ(Ra)が0.25μm以下、好ましくは0.1μm以下となるまで研磨処理を行った後、表面に電極を形成する処理を施す。また、デマッチング層23についても同様に、算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下となるように研磨処理を行った後、表面に電極を形成する処理を施す。なお、デマッチング層23の算術平均粗さ(Ra)を圧電層24の算術平均粗さ(Ra)よりも小さくすると好適である。その後、上述した低粘度エポキシ系接着剤を音響整合層25と圧電層24とデマッチング層23の接合面にそれぞれ塗布する。そして、所定の温度(例えば50℃)に加温された専用の加圧冶具にこれらをセットし重ね合わせる。そして、所定の加重(例えば、30kg重)に達するまで所定の間隔を以って徐々に加重をかけ、所定の加重に到達した時点で冶具の加温をとめて、接着剤の硬化温度よりも低い第1の温度(例えば、常温)に戻しながら所定時間(例えば、10時間)加圧し続け(すなわち、圧電層24とデマッチング層23とが互いに対向する方向に加圧し続け)、余剰接着剤を逃がす(第1の工程)。その後、加圧冶具を接着剤の硬化温度以上である第2の温度(例えば、50℃)まで加温して所定時間(例えば、8時間)かけて加圧硬化して圧電層24とデマッチング層23との間に接着層26を形成する(第2の工程)。これにより、音響整合層25と圧電層24とデマッチング層23とを接着することができる。このような工程を経て接着を行うことにより、圧電層24とデマッチング層23との接合を良好に維持したまま接着層26を薄層化することができる。このようにして作製された積層体を積層体Bとする。
続いて、デマッチング層23のアイソレーションを行う(ステップS40)。具体的には、デマッチング層23の背面側の短軸両端近傍に絶縁溝を長手方向に沿って形成してシグナル電極とグランド電極とを形成する。この絶縁溝は、圧電層24に達する深さまで入れられる。なお、圧電層24にあらかじめ絶縁溝を形成しておき、圧電層24とデマッチング層23とを接着したのちに、この絶縁溝と連通するようにデマッチング層23の背面側から溝入れするようにしてもよい。
次に、上述したようにして作製された積層体Aに積層体Bを接着する(ステップS50)。
次に、このようにして作製された積層体に対し、所定間隔(例えば、0.2mm)で音響整合層25からデマッチング層23まで完全に分割するダイシングを行って素子化することにより振動子2aを作製する(ステップS60)。このとき、分割された振動子2aに対してサブダイシングを行って、1以上の分割溝を形成するようにしてもよい。サブダイシングは、例えば、音響整合層25からデマッチング層23にかけてダイシングすることにより行う。なお、デマッチング層23までダイシングせずに、圧電層24の途中までダイシングする形態であってもよい。
その後、振動子2aの表面に、ポリパラキシリレンによる保護層を形成する(ステップS70)。
そして、最後に、この保護層の被検体への超音波の送受信方向に音響レンズを積層して接着する(ステップS80)。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、勿論本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、音響インピーダンスが100MRaylsのコバルト添加タングステンカーバイドを算術平均粗さ(Ra)が0.075μmとなるようにラッピング研磨を行い、厚さを80μmとし、これを、4.6mm×42.5mmの大きさに切り出し、これを第1の被着体とした。なお、研磨方法は上述したものに限らず、ポリシング鏡面研磨、バフ研磨、テープ研磨、バレル加工、噴射加工、超音波加工、電解複合研磨、ロータリー研削加工、ホーニング加工等、種々の方法で行ってもよく、また、これらを組み合わせて実施するようにしてもよい。続いて、切り出したタングステンカーバイドに対し、厚さ0.05μmのCr層をスパッタ法で下地処理を行い、さらに、厚さ0.1μmのAu層をスパッタ法で施し、電極を形成してこれをデマッチング層とした。
次に、PZT系の圧電体を、算術平均粗さ(Ra)が0.075μmとなるように上述した研磨処理を行い、厚さが80μmの圧電体を作製し、これを、4.6mm×42.5mmのサイズに切り出し、これを第2の被着体とした。続いて、この圧電体に対して、厚さ0.05μmのCr層をスパッタ法で下地処理を行い、さらに、厚さ0.1μmのAu層をスパッタ法で施し、電極を形成した。そして、短軸方向の有効開口が4.0mmになるよう背面側の短軸両端近傍に絶縁溝を長手方向に沿って形成してシグナル電極とグランド電極とを形成し、圧電層を作製した。なお、上述の第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)と第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)の合算値は、0.150μmであった。
次に、6層の音響整合材を積層して音響整合層を作製した。各層の音響整合材については、それぞれ、エポキシ樹脂とフェライト又はシリコーン樹脂微粉末の混錬硬化物により、下記の条件を満たすように作製した。すなわち、音響放射面側最表層である最上層の音響整合材は音響インピーダンスが1.5MRaylsで厚みが20μmとし、第2層目の音響整合材は音響インピーダンスが2.0MRaylsで厚みが30μmとし、第3層目の音響整合材は音響インピーダンスが3.0MRaylsで厚みが30μmとし、第4層目の音響整合材は音響インピーダンスが6.0MRaylsで厚みが40μmとし、第5層目の音響整合材は音響インピーダンスが9.0MRaylsで厚みが50μmとし、最下層の音響整合材は音響インピーダンスが14.0MRaysで厚みが60μmとした。そして、各音響整合材についてプライマー処理を実施した後、粘度が50℃の加温下で600cps以下である低粘度エポキシ系接着剤を各音響整合材の接合面にヘラを用いてそれぞれ塗布し、50℃に加温した状態の専用の加圧冶具にセットし、上述したようにして作成された各層の音響整合材を、上述した順序で積層して貼り合わせた。続いて、積層した音響整合材について、まずは冶具の自重で加圧した後、30kg重に達するまで所定の間隔で以って徐々に加重をかけ、30kg重に到達した時点で冶具の加温を止めて、常温に戻しながら10時間加圧し続け、余剰接着剤を逃がすようにした。その後、冶具を50℃まで再び加温し、8時間かけて加圧硬化させた後、これを4.6mm×42.5mmの大きさに切り出して音響整合層とした。
次に、エポキシ樹脂に平均粒径8μmのタングステン粉末を添加した音響インピーダンスが3MRaylsのエポキシ系バッキング材を用意し、4.6mm×42.5mm×3mmの大きさに切り出してバッキング層とした。そして、このバッキング層にエポキシ系接着剤を塗布し、固定板(ベースブロック)にバッキング層とパターニングされたFPCとを積層し、50℃に加温した専用の加圧冶具にて4時間加圧硬化させることにより、固定板とバッキング層とFPCとの積層体を作製した。
次いで、上述のようにして作製された音響整合層、圧電層及びデマッチング層のそれぞれについてプライマー処理を施し、粘度が50℃の加温下で400cpsである低粘度エポキシ系接着剤を音響整合層、圧電層及びデマッチング層の各接合面にヘラを用いてそれぞれ塗布し、50℃に加温した状態の専用の加圧冶具にこれらを順次セットし重ね合わせた。なお、音響整合層は、音響インピーダンスが高い音響整合材が圧電層に接するようにして重ね合わせた。そして、冶具の自重で加圧して余剰接着剤を逃がした後、30kg重に達するまで所定の間隔を以って徐々に加重をかけ、30kg重に到達した時点で冶具の加温を止めて、常温に戻しながら10時間加圧し続け、余剰接着剤をさらに逃がすようにした。その後、冶具を50℃まで再び加温し、8時間かけて加圧硬化させた。そして、デマッチング層について、圧電層に形成された絶縁溝と連通するようにダイシングにより幅40μm、深さ90μmで背面側から長手方向に沿って溝入れした(アイソレーション)。
その後、固定板、FPC及びバッキング層の積層体に対し、上述のようにして作製された音響整合層、圧電層及びデマッチング層の積層体を積層して接着した。これにより、圧電層のシグナル電極及びグランド電極は、これらの絶縁状態を維持したまま、デマッチング層を配線としてFPC上に形成されたシグナル電極面及びグランド電極面にそれぞれ接続される。そして、このようにして作製された積層体に対し、20μmの厚みを有するブレードで、長手方向(アジマス方向)に0.2mm間隔で音響整合層からデマッチング層まで完全に分割するダイシングを行って第1の分割溝を形成して素子化し、さらに、分割された素子に対し、上述のブレードで第1の分割溝と平行に約67μm間隔で音響整合層及び圧電層を完全に分割するサブダイシングを行って第2の分割溝を形成して複数の分割素子を備えた振動子を作製した。
その後、振動子の表面に、ポリパラキシリレンによる3μm程度の保護層を形成し、この保護層の音響放射面に音響レンズを積層して接着し、振動部を作製した。
次いで、FPCにコネクタを接続した後、上述のようにして作製された振動部をケースに収納して実施例1の超音波探触子を作製した。
(実施例2)
上述した研磨処理により、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)を0.075μmとし、第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)を0.230μmとした以外は実施例1と同様にして実施例2の超音波探触子を作製した。このとき、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)と第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)の合算値は、0.305μmであった。
(実施例3)
上述した研磨処理により、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)を0.130μmとし、第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)を0.230μmとした以外は実施例1と同様にして実施例3の超音波探触子を作製した。このとき、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)と第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)の合算値は、0.360μmであった。
(実施例4)
上述した研磨処理により、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)を0.140μmとし、第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)を0.230μmとした以外は実施例1と同様にして実施例4の超音波探触子を作製した。このとき、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)と第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)の合算値は、0.370μmであった。
(比較例1)
上述した研磨処理により、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)を0.270μmとし、第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)を0.260μmとした以外は実施例1と同様にして比較例1の超音波探触子を作製した。このとき、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)と第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)の合算値は、0.530μmであった。
(比較例2)
上述した研磨処理により、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)を0.233μmとし、第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)を0.630μmとした以外は実施例1と同様にして比較例2の超音波探触子を作製した。このとき、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)と第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)の合算値は、0.863μmであった。
(比較例3)
音響整合層、圧電層及びデマッチング層を接着する際に使用する接着剤として、粘度が50℃の加温下で13000cpsである高粘度エポキシ系接着剤を使用し、50℃に加温した状態の専用の加圧冶具に音響整合層、圧電層及びデマッチング層を順次セットし重ね合わせた。そして、冶具の自重で加圧して余剰接着剤を逃がした後、30kg重に達するまで所定の間隔を以って徐々に加重をかけ、その後、冶具を50℃に維持したまま、4時間かけて加圧硬化させたこと以外は実施例1と同様にして比較例3の超音波探触子を作製した。このとき、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)と第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)の合算値は、0.150μmであった。
(比較例4)
上述した研磨処理により、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)を0.343μmとし、第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)を0.248μmとした以外は比較例3と同様にして比較例4の超音波探触子を作製した。このとき、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)と第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)の合算値は、0.591μmであった。
(比較例5)
上述した研磨処理により、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)を0.459μmとし、第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)を0.515μmとした以外は比較例3と同様にして比較例5の超音波探触子を作製した。このとき、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)と第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)の合算値は、0.974μmであった。
(比較例6)
上述した研磨処理により、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)を0.343μmとし、第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)を0.942μmとした以外は比較例3と同様にして比較例6の超音波探触子を作製した。このとき、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)と第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)の合算値は、1.285μmであった。
(比較例7)
上述した研磨処理により、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)を0.075μmとし、第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)を0.250μmとした以外は比較例3と同様にして比較例7の超音波探触子を作製した。このとき、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)と第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)の合算値は、0.325μmであった。
(評価)
上述のようにして作製された実施例1〜4及び比較例1〜7の超音波探触子の圧電層とデマッチング層間における接着層の厚みを測定した。その結果を表1に示す。また、接着層に低粘度接着剤を用いた実施例1〜4及び比較例1,2における第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)と第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)との合算値と接着層の厚みとの関係について図10(a)に示し、接着層に高粘度接着剤を用いた比較例3〜7における第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)と第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)の合算値と接着層の厚みとの関係について図10(b)に示す。
Figure 0006094424
(結果)
このように、実施例1〜4のように、低粘度接着剤を使用し、適切な加圧加温接着工程を経て、かつ、第1の被着体の算術平均粗さ(Ra)と第2の被着体の算術平均粗さ(Ra)との合算値を0.4μm以下とすることで、接着層の厚みを0.5μm以下に薄層化することができ、その結果、感度の低下を−5dB以内に抑えられ、理想の感度状態に近い超音波探触子とすることができることがわかった。また、高周波数における音響特性が良好な超音波探触子とすることができることがわかった。一方、比較例1〜7によれば、接着層を薄層化することができず、したがって、帯域の高周波部分が狭くなって狭帯域化し、送受信感度に劣る超音波探触子となることがわかった。
以上説明したように、本実施の形態によれば、圧電層24の超音波の出力面とは反対側の面に圧電層24の音響インピーダンスよりも高い音響インピーダンスを有するデマッチング層23が熱硬化性接着剤により接着される。接着剤により接着される圧電層24及びデマッチング層23の各接着面の算術平均粗さ(Ra)の和を0.4μm以下としている。熱硬化前の接着剤の粘度を40℃以下において600cps以下としている。その結果、圧電層とデマッチング層とを接着する接着層の厚みを十分に薄層化することができるので、音響伝搬損失が抑制され、理想に近い感度の超音波の送受信を行うことができ、また、特に高周波数における音響特性を良好にすることができ、広帯域な超音波探触子とすることができるようになる。
また、本実施の形態によれば、第1の工程において、接着剤の硬化温度よりも低い常温で圧電層24とデマッチング層23との間に熱硬化前の接着剤により接着層26を形成した状態で圧電層24とデマッチング層23とが互いに対向する方向に所定時間加圧することにより余剰接着剤を逃がす。第2の工程において、接着剤の硬化温度以上である50℃まで加熱して所定時間加圧することにより接着層26を形成する接着剤を熱硬化させる。圧電層24とデマッチング層23は、第1の工程と第2の工程とを経て接着される。その結果、デマッチング層と圧電層との接合を良好に維持したまま接着層を薄層化することができ、高周波音響特性を良好にすることができるようになる。
また、本実施の形態によれば、接着剤は、熱硬化後のガラス転移温度が50℃以上であるので、圧電層とデマッチング層とが積層された積層体に対してダイシングを行って素子化する際や、電圧を印加した際に、温度が上昇して接着剤の接着力が低下するのを抑制でき、剥離を低減することができる。
また、本実施の形態によれば、デマッチング層23はタングステン系合金からなるので、より高感度の超音波探触子とすることができるようになる。
また、本実施の形態によれば、デマッチング層23を構成するタングステン系合金の粒径を1μm以下としたので、接着層をより薄層化することができるようになる。
また、本実施の形態によれば、熱硬化後の接着剤により形成される接着層26の厚みを0.5μm以下としたので、高周波数側での感度をより向上させることができるようになる。
また、本実施の形態によれば、送受信する超音波の中心周波数を7MHz以上としたので、圧電層を効率的に用いることができるようになる。
また、本実施の形態によれば、圧電層24及びデマッチング層23を所定の間隔毎に第1の分割溝により分割して互いに分離されることで走査方向に複数の振動子を形成する。複数の振動子は、それぞれ、第1の分割溝と平行な第2の分割溝により更に分割されて形成された複数の分割素子を備える。その結果、振動子の振動効率を高めることができるようになる。
また、本実施の形態によれば、送信部12は、複数のパルスを有する矩形波の駆動信号を出力することにより超音波探触子2に送信超音波を出力させ、複数のパルスのうちの少なくとも1つのパルス幅を他のパルスのパルス幅と異ならせるようにしたので、駆動信号によって広帯域の送信超音波を出力できる。したがって、広帯域な音響特性を有する超音波探触子と広帯域の送信超音波により、良好な送信超音波を出力することができるようになる。
なお、本発明の実施の形態における記述は、本発明に係る超音波画像診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。超音波画像診断装置を構成する各機能部の細部構成及び細部動作に関しても適宜変更可能である。
S 超音波画像診断装置
2 超音波探触子
12 送信部
14 画像生成部
23 デマッチング層(反射層)
24 圧電層
26 接着層

Claims (11)

  1. 圧電体の超音波の出力面とは反対側の面に該圧電体の音響インピーダンスよりも高い音響インピーダンスを有する反射層が熱硬化性接着剤により接着されてなる超音波探触子において、
    前記接着剤により接着される前記圧電体及び前記反射層の各接着面の算術平均粗さ(Ra)の和が0.4μm以下であり、
    熱硬化前の前記接着剤の粘度が40℃以下において600cps以下であることを特徴とする超音波探触子。
  2. 前記接着剤の硬化温度よりも低い第1の温度で前記圧電体と前記反射層との間に熱硬化前の前記接着剤により接着層を形成した状態で前記圧電体と前記反射層とが互いに対向する方向に所定時間加圧することにより余剰接着剤を逃がす第1の工程と、
    前記前記接着剤の硬化温度以上である第2の温度まで加温して所定時間加圧することにより前記接着層を形成する接着剤を熱硬化させる第2の工程と、
    を経て前記圧電体と前記反射層とが接着されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子。
  3. 前記接着剤は、熱硬化後のガラス転移温度が50℃以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波探触子。
  4. 前記反射層はタングステン系合金からなることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の超音波探触子。
  5. 前記反射層を構成する前記タングステン系合金の粒径を1μm以下としたことを特徴とする請求項4に記載の超音波探触子。
  6. 熱硬化後の前記接着剤により形成される接着層の厚みを0.5μm以下としたことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の超音波探触子。
  7. 送受信する超音波の中心周波数が7MHz以上であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の超音波探触子。
  8. 前記圧電体及び前記反射層を所定の間隔毎に第1の分割溝により分割して互いに分離されることで走査方向に複数の振動子が形成され、
    前記複数の振動子は、それぞれ、前記第1の分割溝と平行な第2の分割溝により更に分割されて形成された複数の分割素子を備えることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の超音波探触子。
  9. 請求項1〜8の何れか一項に記載の超音波探触子であって、駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を出力する超音波探触子と、
    前記超音波探触子によって出力された前記受信信号に基づいて超音波画像を表示するための超音波画像データを生成する画像生成部と、
    を備えたことを特徴とする超音波画像診断装置。
  10. 複数のパルスを有する矩形波の前記駆動信号を出力することにより前記超音波探触子に前記送信超音波を出力させる送信部を備え、
    前記複数のパルスのうちの少なくとも1つのパルスのパルス幅を他のパルスのパルス幅と異ならせるようにしたことを特徴とする請求項9に記載の超音波画像診断装置。
  11. 圧電体の超音波の出力面とは反対側の面に該圧電体の音響インピーダンスよりも高い音響インピーダンスを有する反射層を熱硬化性接着剤により接着して超音波探触子を作製する超音波探触子の製造方法であって、
    前記接着剤により接着される前記圧電体及び前記反射層の各接着面の算術平均粗さ(Ra)の和を0.4μm以下とし、
    前記接着剤は、熱硬化前の粘度が40℃以下において600cps以下であって、
    前記接着剤の硬化温度よりも低い第1の温度で前記圧電体と前記反射層との間に熱硬化前の前記接着剤により接着層を形成した状態で前記圧電体と前記反射層とが互いに対向する方向に所定時間加圧することにより余剰接着剤を逃がす第1の工程と、
    前記接着剤の硬化温度以上である第2の温度まで加温して所定時間加圧することにより前記接着層を形成する接着剤を熱硬化させることにより前記圧電体と前記反射層とを接着する第2の工程と、
    を含むことを特徴とする超音波探触子の製造方法。
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