JP3277704B2 - 耐摩耗性の良好なポリエステル繊維とその製造方法 - Google Patents

耐摩耗性の良好なポリエステル繊維とその製造方法

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JP3277704B2 JP16936394A JP16936394A JP3277704B2 JP 3277704 B2 JP3277704 B2 JP 3277704B2 JP 16936394 A JP16936394 A JP 16936394A JP 16936394 A JP16936394 A JP 16936394A JP 3277704 B2 JP3277704 B2 JP 3277704B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐摩耗性の良好なポリ
エステル繊維に関する。さらに詳しくは、織物とした時
の風合いが良好で、かつ高次工程での摩耗による白粉な
どの糸削れを起こさない耐摩耗性の良好なポリエステル
繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、紡糸速度5500m/分以上の高
速紡糸プロセスが、ポリエステルなどの溶融紡糸の生産
プロセスとして広まりつつある。これはプロセスそのも
のが大きなコストダウン効果をもつだけでなく、この繊
維からなる織物が従来の紡糸/延伸の二工程法により得
られる繊維からなる織物と比較して、ソフト風合い、染
色性などで優れた特性を示すからである。このソフトで
良好な風合いは、特殊な繊維構造形成の過程を経るため
に、繊維内の非晶部分子鎖の配向が低くなり基質自体が
柔らかくなることに起因する。しかし一方では、紡糸速
度5500m/分以上の高速紡糸で得られる繊維は、整
経、製織、編立てなどの高次工程において、従来の紡糸
/延伸の二工程法により得られる繊維に比して削れ物が
発生しやすい。これらの問題を解決するためには、紡糸
油剤の付与量を増加する手段が採られているが、削れ物
の量は減少するものの、油剤に起因するスカム汚れが激
しくなり必ずしも有効な手段ではない。
【0003】この削れ物が発生する理由としては、紡糸
速度5500m/分以上の高速紡糸で得られる繊維は極
めて高温の状態で構造が形成されるため、分子鎖の緩和
と結晶化の促進が同時に起こり、その構造の特徴として
非晶部の配向度が低くミクロボイドを有するため、基質
が柔らかく、擦過に対してポリマ基質自体が削れやす
く、フィブリル状の削れ物を生じやすいものと考えてい
る。
【0004】この削れ物を減少させるため、原料ポリエ
ステル中に酸化チタンや酸化ケイ素などの粒子を添加し
ているが、この場合にも削れ物は発生し、添加された粒
子が削れ物の大部分を占めている。この削れ物が発生す
る理由としては、以下に示すA、Bの二つの要因が考え
られている。 A.従来の酸化チタン、およびジメチルジクロロシラン
で表面処理した酸化ケイ素(特公平3−35403号公
報)などの粒子を含むポリエステル高速紡糸繊維は、そ
の繊維の表面を観察したところ、二工程法で得られた繊
維に比較して高い突起が数多く見られた。これは、高速
紡糸プロセスは構造形成の過程が極めて短く、半流動状
態から一気に結晶化を起こし、密度が急増するので、こ
の時にポリエステル中の粒子が繊維表面に押し出され、
高次工程のガイドなどとの擦過に対して粒子が脱落しや
すくなるものと考えられる。 B.構造形成時の極めて高い応力の影響で、添加粒子と
ポリマ基質が剥離し、粒子周囲に比較的大きなボイドを
生成するため、粒子が脱落しやすいものと考えられる。 以上のことから、ポリエステルとの親和性が高く、分散
性が良好な粒子を含有すれば、得られた繊維の高次工程
での削れ物は激減すると考えた。
【0005】そこで、我々は特殊なアルミナを使用する
ことを提案した(特開平1−285283号公報)。と
ころが、この粒子を含有したポリエステルは、上記課題
である高次工程における削れ物の減少は解決できたもの
の、ポリエステル中での分散性が不十分であるため、紡
糸パック内のフィルター濾過における濾圧上昇が大き
く、安定して生産できないことがわかった。
【0006】また、ジメチルジクロロシランで表面処理
した酸化ケイ素を使用することを提案した(特公平3−
35403号公報)。該公報の糸は白粉が発生しやすい
問題があることがわかった。これは酸化ケイ素は特公昭
43−23960号公報に記載されているようにポリエ
ステル中での粒子分散性は不良であり、この表面処理酸
化ケイ素はその分散性を改良したものではあるが、それ
でもポリエステル中での粒子の凝集が避けられず、粒子
分散性が不十分であったが、紡糸パック内のフィルター
濾過を強化すれば、濾圧上昇の大きい問題があるもの
の、上記課題である高次工程における削れ物の発生の問
題は解決できることがわかった。
【0007】そこで、5500m/分以上の高速紡糸に
おいて、ポリエステルとの親和性が高く、ポリエステル
への分散性が良好な酸化ケイ素粒子の探索にポイントを
絞り、鋭意に検討した結果、本発明に至ったのである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前記
欠点のないポリエステル繊維、すなわち高速紡糸特有の
ソフトな風合いの織物となり、かつ高次工程での白粉な
どの糸削れを起こさない耐摩耗性の良好なポリエステル
繊維とその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、本目的を
達成するため鋭意検討を重ねた結果、ある特有の酸化ケ
イ素粒子を使用することにより、上記課題を解決できる
ことを見出し、本発明を完成するに至ったのである。す
なわち、本発明は乾式法で合成した、又は湿式法で合成
し更に焼成した酸化ケイ素粒子を直鎖状のシリコーンオ
イル0.1〜10重量%被覆した、平均一次粒子径5
〜45mμの実質的に乾式法で合成した酸化ケイ素粒子
を0.02〜2.0重量%含有し、tanδのピーク温
度Tmaxが125℃以下、密度が1.370g/cm
3 以上、複屈折率が0.085以上である耐摩耗性の良
好なポリエステル繊維を提供することである。
【0010】本発明における酸化ケイ素粒子は、直鎖状
のシリコーンオイルを被覆し、該シリコーンオイルを
0.1〜10重量%含有していることが必要である。好
ましくは0.2〜8重量%である。ここで被覆とは酸化
ケイ素粒子の表面に該シリコーンオイルが物理的に吸着
及び/又は化学結合していることである。なお、粒子の
シリコーンオイル含有量は、元素分析法、灰分測定法か
らの演算、赤外吸収スペクトルの強度比などの種々の方
法で定量できる。このシリコーンオイル含有量が粒子の
0.1重量%未満であると、ポリエステル中で粒子が凝
集し、紡糸パック内のフィルター濾過における濾圧上昇
が大きく、また高次工程において粒子が脱落しやすいと
いう問題を生じる。10重量%をこえるとシリコーンオ
イルの酸化ケイ素粒子表面への被覆が頭打ちとなる。ま
た、過剰のシリコーンオイルがポリエステル中に混合し
糸強度が低下したりブリードアウトしてくる。
【0011】本発明の直鎖状のシリコーンオイルは、一
般に下記式で表されたものが好ましい。
【化1】 すなわち、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポ
リシロキサンなどジ置換ポリシロキサンを基本とする構
造であり、Aは例えばハイドロキシ基、アミン基、エポ
キシ基、水酸基、カルボキシル基、メルカプタン基、ア
ルコキシシリル基などの粒子表面のシラノール基と反応
が可能な官能基が含まれていても良い。シリコーンオイ
ルは酸化ケイ素粒子表面のシラノール基と反応する官能
基を有すれば化学結合して安定するが官能基を有しなく
ても粒子表面のシラノール基が活性なため吸着力が強く
粒子表面に安定して存在するので官能基の有無にかかわ
らず好ましく使用できる。
【0012】具体的には以下のような官能基が例示され
る。
【化2】 また、このシリコーンオイルは実質的に直鎖状であるこ
とが必要である。特開平2−173157号公報で示す
ように、球状の架橋したシリコーンオイルは、ポリエス
テルへの分散性は良好ではあるが、粒子とポリエステル
との親和性が低くボイドが発生しやすい、また紡糸速度
5500m/分以上で糸切れが激しく安定して紡糸でき
ない。なお、本発明の目的を逸脱しない範囲ならば三官
能であるSi−O3 結合あるいは四官能であるSi−O
4 結合で三次元架橋しても良い。
【0013】なお、本発明におけるシリコーンオイルを
被覆した酸化ケイ素粒子は、後述する合成法で得られた
酸化ケイ素粒子をそのまま使用しても、あるいは一旦ジ
メチルジクロロシラン、トリクロロメチルシラン、トリ
クロロオクチルシラン、または反応基を複数有するシラ
ンカップリング剤などで表面処理してあっても良い。す
なわち、酸化ケイ素の最表面をシリコーンオイルで被覆
していれば、ポリエステルとの親和性が高く粒子分散性
が良好となるのである。
【0014】また、本発明における酸化ケイ素粒子は、
式法で合成されているか、又は湿式法で合成し更に焼
成して、乾式法と同様な表面状態に変性されていること
が必要である。乾式法の場合には、四塩化ケイ素と水素
混合物を空気中で加熱して加水分解する燃焼法、珪砂と
コークスをアーク炉で加熱還元し空気中の酸素で酸化す
る加熱法などがある。この乾式法で合成された酸化ケイ
素粒子は、内部表面を持たないため、表面シラノール基
濃度が通常3個/nm2 以下と少ないが、さらに本発明
におけるシリコーンオイルを被覆していることにより、
表面シラノール基濃度はさらに低濃度となり、粒子同士
の親和性が低下するため、ポリエステルへの分散性が向
上すると考えられる。
【0015】一方、珪酸曹達と酸などを原料とする湿式
法で合成した酸化ケイ素粒子は、乾式法で合成したもの
と異なり内部表面を持つため、表面シラノール基濃度が
通常6〜30個/nm2 以下と非常に高濃度であり、本
発明におけるシリコーンオイルを被覆しても、吸着/化
学結合できないシラノール基が数多く残って粒子同士の
親和性が高いため凝集をしてポリエステルへの分散性が
不十分となる。なお、湿式法で合成した酸化ケイ素粒子
でも、それを焼成して内部表面をなくし、表面シラノー
ル基濃度を低くして、乾式法と同様な粒子表面状態に変
性すれば、表面シラノール基濃度が通常3個/nm2
下となって乾式法で合成した酸化ケイ素粒子と同様に使
用できる。
【0016】酸化ケイ素粒子にシリコーンオイルを被覆
する方法は乾式法が好ましく挙げられる。乾式法とは、
酸化ケイ素とシリコーンオイルを所定量混合し、ヘンシ
ェルミキサー、V型ミキサー、ボールミル、振動ミル、
ジェントルミルなどに添加して被覆し、場合によっては
乾燥する方法である。また他の方法で行なっても構わな
い。
【0017】本発明における酸化ケイ素粒子は、その平
均一次粒子径は5〜45mμ、好ましくは7〜40mμ
であることが必要である。この平均一次粒子径は5mμ
より小さいと粒子の比表面積が大きくなるため、ポリエ
ステル中で粒子が凝集しやすく、一方、45mμより大
きいと凝結した粗大粒子が多く、その粒子はポリエステ
ル中で分散しないため、いずれも粒子分散性が低下して
繊維表面突起が高くなり擦過時に表面突起が脱落し易く
なる。
【0018】本発明におけるシリコーンオイルを被覆し
た酸化ケイ素粒子は、ポリエステル繊維中に0.02〜
2.0重量%含有する必要がある。0.02重量%未満
では糸削れを防止する効果が不十分であり、2.0重量
%を越えると高次工程における削れ物が多くなる。
【0019】本発明におけるポリエステルは、ポリエチ
レンテレフタレート、あるいはそれを主成分とした線状
なものであり、ジカルボン酸またはそのエステル形成性
誘導体と、グリコールまたはそのエステル形成性誘導体
とを主たる出発原料としてエステル化またはエステル交
換などの反応により低重合体を合成した後、さらにその
低重合体を高温・減圧下で重縮合反応させることにより
製造できる。 本発明におけるポリエステルには、共重
合成分として、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカ
ルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピ
ン酸、セバシン酸、テトラデカン二酸、エイコサン二
酸、ダイマー酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸
などのジカルボン酸成分、1,4−ブタンジオール、
1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールAまたはそ
のエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールSまたは
そのエチレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサ
ンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリエチレン
グリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレン
グリコールなどのジオール成分、パラオキシ安息香酸、
ε−カプロラクトンなどのオキシカルボン酸成分などの
2官能性成分を15モル%以下共重合していても良く、
トリメリット酸、ペンタエリスリトールなどの多官能性
成分なども得られるポリエステルが実質的に線状である
量ならば共重合していても良い。更に、制電剤、紫外線
吸収剤、赤外線吸収剤、難燃剤、蛍光増白剤、抗菌剤な
どの添加剤を共重合、混合などの方法により、本発明の
目的を逸脱しない範囲で含有しても良い。
【0020】次に、この粒子を含有したポリエステル繊
維の特性について述べる。本発明におけるポリエステル
繊維は、tanδのピーク温度Tmaxが125℃以
下、密度が1.370g/cm3 以上、複屈折率が0.
085以上である必要がある。
【0021】tanδのピーク温度Tmaxは、繊維の
非晶部分子鎖の動き易さを示す値であり、これは125
℃以下を越えると、非晶部分子鎖は動きにくく、繊維の
基質自体が堅く織物としたときの風合いは粗硬である。
また、密度は1.370g/cm3 未満であると、熱に
対する寸法安定性が劣り、精錬、中間セット、染色など
での織編物の風合いが硬くなりソフト風合いとならな
い。
【0022】複屈折率は0.085以上とする必要があ
る。複屈折率が0.085未満であると、分子鎖の配向
が低く機械的性質が低くなるため高次加工の各工程で糸
の削れや糸切れなどのトラブルが発生し、本発明の酸化
ケイ素粒子を含有していたとしても、これらを防止する
ことは極めて困難である。
【0023】次に、本発明の耐摩耗性の良好なポリエス
テル繊維の製造方法を示す。本発明者らの検討によれ
ば、特定の極限粘度のポリエステルに特殊な酸化ケイ素
粒子を直接粉末のまま添加、混合することで、ポリエス
テルへの分散性が著しく向上することを見出したのであ
る。
【0024】本発明において酸化ケイ素粒子を添加する
ポリエステルの極限粘度は0.50dl/g以上、好ま
しくは0.55dl/g以上とする必要がある。極限粘
度が0.50dl/g未満のポリエステルを用いると、
粒子分散性が劣るばかりか、得られた糸の機械特性が損
なわれ、強度、伸度が劣るものとなってしまう。
【0025】また、本発明における特殊な酸化ケイ素粒
子粉末を直接添加、混合することが必要である。酸化ケ
イ素粒子は、水に分散しないため水スラリーとしての添
加が難しく、また分散が可能な有機溶媒のスラリーで添
加しても、ポリエステルへの粒子分散性が劣り、紡糸パ
ック内のフィルター濾過における濾圧上昇が大きいばか
りでなく、紡糸速度5500m/分以上で糸切れが激し
く、安定して溶融紡糸できないのである。
【0026】本発明における粒子粉末の直接添加、混合
は、一旦チップ化した後再溶融したポリエステルに添
加、混合させることも、連続重合したポリエステルに直
接定量的に供給することもできる。また、ベースポリエ
ステルから枝分岐して粒子を混合して得たマスタ−のポ
リエステルを再度ベースポリエステルと最適量混合して
紡糸しても良く、マスタ−のポリエステルのままチップ
状、または溶融計量後にベースポリエステルと混合して
紡糸する方法も採用することもできる。
【0027】粒子粉末のポリエステルへの混合は剪断力
が大きい混合機にて実施することが好ましい。剪断力が
大きい混合機としては、単軸押出機、二軸押出機、多段
押出機、混練機などが好ましく使用でき、二軸以上の押
出機は同方向回転、異方向回転でも、非かみ合い型、か
み合い型いずれでも構わない。重合槽の攪拌など剪断力
が小さい混合機では酸化ケイ素粒子は十分には分散しな
いため好ましくない。
【0028】本発明の耐摩耗性の良好なポリエステル繊
維を得るには、紡糸速度5500m/分以上で溶融紡糸
する際、製糸性を高めるためには、紡糸温度を300℃
以上とし、口金下保温ゾーンの長さを20cm以上と
し、冷却ゾーン直後に油剤を付与して紡糸することが好
ましい。
【0029】本発明の繊維およびその製造方法によれ
ば、酸化ケイ素粒子がポリエステル繊維、特に表層部に
均一に分散するので周囲のポリマを硬くすることがで
き、これに起因する繊維表面の突起を脱落しにくくして
いるものと考える。また本発明の特殊な酸化ケイ素粒子
はポリエステルとの親和性が高いことから、他の粒子に
見られるような粒子周辺のボイドの生成が見られず、粒
子の脱落が抑制されるものと考える。
【0030】
【実施例】以下の実施例によって本発明をさらに具体的
に説明する。本発明における粒子の特性および分散性、
糸物性などの測定法を以下、述べる。
【0031】A.粒子の平均一次粒子径 粒子を10万倍に拡大した電子顕微鏡写真から、各一次
粒子の最長径を測定し、1000個の平均として求め
た。なお、この平均一次粒子径は糸中に粒子が分散して
も変わらない。
【0032】B.ポリエステルの極限粘度 o−クロロフェノールに溶解し、25℃で測定した。
【0033】C.紡糸パック内圧上昇 実施例で示す紡糸時の紡糸パック内圧を1時間あたりの
上昇量に換算して示した。内圧上昇が低いものほど、ポ
リエステルへの粒子分散性が良好であることを示す。
【0034】D.tanδのピーク温度Tmax 東洋ボールドウィン社製バイブロンDDV−II型を用
い、振動数110Hz、昇温速度3℃/分でtanδ−
温度曲線を求め、tanδのピークに対応する温度を読
み取った。
【0035】E.密度 25℃に設定された恒温水槽中にn−ヘプタンと四塩化
炭素よりなる密度勾配管を作成して、常法により測定し
た。
【0036】F.複屈折率 ベレックコンペンセータを装着した偏光顕微鏡を用い、
常法により求めた。
【0037】G.白粉状態 ウォータージェットルームにタテ糸として供給し、筬に
おける白粉発生の状況を洗浄した筬を用い、製織スター
トして24時間後に観察した。
【0038】H.織物の風合い 縦糸に30デニール12フィラメントのポリエステル繊
維を用い、サンプルを横糸として、36.5本/cmの
密度で製織し、常法により精練、染色して染色布帛を得
た。得られた布帛を官能評価により、ソフト風合いのも
のを○、硬いものを×、硬目のものを△とした。
【0039】実施例1 四塩化ケイ素と水素混合物を空気中で加熱し加水分解し
て得られた平均一次粒子径12mμの酸化ケイ素92部
を、粘度が約3000センチポイズのジメチルポリシロ
キサン8部とヘンシェルミキサーで混合することによ
り、該シリコーンを被覆した酸化ケイ素粒子を得た。な
お、該粒子のシリコーンオイル含有量(灰分測定法)は
8.0重量%であった。
【0040】260℃に設定した東芝機械社製二軸混練
機において、常法により得た極限粘度が0.68dl/
gのポリエチレンテレフタレートのチップを溶融した状
態で、上記酸化ケイ素を含有量3%となるように添加、
混合し脱気しながら押出して極限粘度が0.66dl/
gのチップを得た。
【0041】これを、上記0.68dl/gのポリエチ
レンテレフタレートとブレンドして酸化ケイ素粒子の含
有量が0.25重量%となるように仕込み、孔径0.1
7mmの18ホール口金、100メッシュサンドおよび
絶対濾過径が10μmのステンレス製不織布フィルター
を使用して、紡糸温度302℃、35cmの保温ゾー
ン、50cmの冷却ゾーンを通過させ、冷却ゾーン直後
に油剤を付与して、50デニール18フィラメントの糸
条を交絡を付与しつつ、紡糸速度7000m/分で引取
り、紙管に巻取った。なお、パック内圧上昇量は0.0
4kg/cm2 /hrと少なく、ポリエステルへの粒子
分散性は良好であった。
【0042】得られた繊維のtanδのピーク温度Tm
ax、密度、複屈折率、および製織時の白粉観察結果
を、表1に示す。いずれも本発明の範囲であった。
【0043】実施例2、3、4、比較例1、2 それぞれ表1に示すようなシリコーンオイル含有量の酸
化ケイ素粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、ポ
リエステルチップ、糸を得た。結果を表1に示すが、シ
リコーンオイル含有量が少なくなるに従いポリエステル
への粒子分散性が低下してパック内圧上昇量が大きくな
るともに安定して紡糸できなくなり、シリコーン含有量
が0.1重量%未満では製織時に白粉が発生した。
【0044】
【表1】 実施例5〜8、比較例3、4 それぞれ表2および表3に示すようなシリコーンオイル
を用い、実施例2と同じ被覆率となるような粒子を用い
た以外は、実施例2と同様にして、ポリエステルチッ
プ、糸を得た。なお、実施例8では、比較例4で使用し
た表面処理酸化ケイ素粒子をさらにジメチルポリシロキ
サンで表面処理して用いた。球状の架橋したシリコーン
オイルを被覆した酸化ケイ素を用いると、ポリエステル
への粒子分散性は良好であったが、紡糸速度7000m
/分では糸切れが多発した。また、ジメチルジクロロシ
ランで表面処理した酸化ケイ素はポリエステルへの粒子
分散性が悪く、紡糸速度7000m/分では糸切れが多
発して巻き取れなかった。
【0045】比較例5〜7 それぞれ表3に示すような粒子のエチレングリコールス
ラリーを、実施例1で示したベースポリエステルと同様
にして重合時に粒子濃度が0.25重量%となるように
添加して重合を完結した以外は、実施例1と同様にし
て、ポリエステルチップ、糸を得た。いずれもパック内
圧上昇量がやや大きくポリエステルへの粒子分散性が劣
り、糸切れが発生して安定して巻き取れなかったり、製
織時に白粉が発生した。
【0046】比較例8 実施例1で示した極限粘度が0.68dl/gのポリエ
チレンテレフタレートのチップをそのまま用いて糸を得
た。結果を表3に示すが、製織時に白粉が発生した。
【0047】
【表2】
【表3】 実施例9〜11、比較例9、10 それぞれ表4に示すような平均一次粒子径の酸化ケイ素
粒子を用いてシリコーンオイルを被覆した以外は実施例
7と同様にして、ポリエステルチップ、糸を得た。平均
一次粒子径が5〜45mμを外れるとポリエステルへの
粒子分散性が低下してパック内圧上昇量が大きくなると
ともに、製織時に白粉が発生した。
【0048】
【表4】 実施例12、13、比較例11、12 それぞれ表5に示すようにチップブレンド比を変えて紡
糸した以外は実施例10と同様にして糸を得た。粒子含
有量が0.02〜2.0重量%を外れると、製織時に白
粉が発生した。
【0049】
【表5】 実施例14、15、比較例13 それぞれ表6に示すような紡糸速度で紡糸した以外は実
施例10と同様にして糸を得た。紡糸速度が5500m
/分未満であると、糸の密度、複屈折率が低く、製織時
に白粉が発生した。
【0050】比較例14 紡糸速度3000m/分で一旦巻き取った後、延伸倍率
1.7倍で延伸した以外は実施例10と同様にして糸を
得た。結果を表6に示すが、Tmaxが高く、糸の密度
が低く、製織布帛の風合いが硬かった。
【0051】
【表6】 比較例15 湿式法、すなわち珪酸曹達と硫酸を反応させて濾過・水
洗・乾燥して得た平均一次粒子径28mμの酸化ケイ素
を使用してシリコーンオイルを被覆した以外は実施例5
と同様にして、ポリエステルチップ、糸を得た。結果を
表7に示すが、ポリエステルへの粒子分散性が劣り、製
織時に白粉が発生した。
【0052】実施例16 シリコーンオイルを被覆する前に焼成して乾式法酸化ケ
イ素に匹敵する表面物性を付与させた以外は比較例15
と同様にして、ポリエステルチップ、糸を得た。結果を
表7に示すが、本発明の範囲であり、製織時に白粉のな
い良好な糸が得られた。
【0053】
【表7】 実施例17 連続重合し、最終の重合装置から吐出された溶融ポリエ
チレンテレフタレート(極限粘度0.67dl/g)を
連続的に二軸混練機へ直接フィ−ドした以外は、実施例
6と同様にして混練チップ、糸を得た。結果を表8に示
すが、実施例6と同じく製織時に白粉のない良好な糸が
得られた。
【0054】実施例18 二軸混練機へ粒子含有量0.5重量%となるように添
加、混合し脱気しながら押出したチップをそのまま紡糸
した以外は、実施例6と同様にして混練チップ、糸を得
た。結果を表8に示すが、実施例6と同じく製織時に白
粉のない良好な糸が得られた。
【0055】比較例16 最終の重合装置の前(溶融ポリエチレンテレフタレート
の極限粘度0.43dl/g)に、シリコーンオイルを
被覆した酸化ケイ素粒子を添加して重合装置から吐出さ
せた以外は、実施例17と同様にして混練チップを得
た。結果を表8に示すが、ポリエステルへの粒子分散性
が悪く、紡糸速度7000m/分では糸切れが多発して
巻き取れなかった。
【0056】
【表8】
【0057】
【発明の効果】本発明のポリエステル繊維は、酸化ケイ
素粒子のポリエステルとの親和性が高く、表層部に均一
に分散するので周囲のポリマを硬くするため、高次工程
での白粉やスカム汚れを防止しつつ、良好な風合いの布
帛の得られる繊維を供給することができるようになっ
た。また、高次工程以外にも、例えば製糸工程での糸道
ガイドでの擦過による白粉や、白粉に起因する最終製品
の点状の染色欠点を防止することができる。粒子分散性
が極めて良好であるので、パック内圧上昇が小さく、ま
た糸切れも少ないなど安定して操業することが可能であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭58−149321(JP,A) 特開 昭58−149323(JP,A) 特開 昭60−151374(JP,A) 特開 平4−65519(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 6/92 301 - 309 D01F 6/62 301 - 308

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】乾式法で合成した酸化ケイ素粒子を直鎖状
    のシリコーンオイル0.1〜10重量%被覆した、平
    均一次粒子径5〜45mμの酸化ケイ素粒子を0.0
    2〜2.0重量%含有し、tanδのピーク温度Tma
    xが125℃以下、密度が1.370g/cm3 以上、
    複屈折率が0.085以上である耐摩耗性の良好なポリ
    エステル繊維。
  2. 【請求項2】湿式法で合成し、更に焼成した酸化ケイ素
    粒子を直鎖状のシリコーンオイルで0.1〜10重量%
    被覆した、平均一次粒子径が5〜45mμの酸化ケイ素
    粒子を0.02〜2.0重量%含有し、tanδのピー
    ク温度Tmaxが125℃以下、密度が1.370g/
    cm 3 以上、複屈折率が0.085以上である耐摩耗性
    の良好なポリエステル繊維。
  3. 【請求項3】紡糸速度5500m/分以上でポリエステ
    ルを溶融紡糸する際に乾式法で合成した酸化ケイ素粒子
    直鎖状のシリコーンオイル0.1〜10重量%被覆
    した、平均一次粒子径5〜45mμの酸化ケイ素粒子
    粉末を、極限粘度が0.50dl/g以上のポリエステ
    ルに直接添加、混合し、ポリエステル繊維中に0.02
    〜2.0重量%含有することを特徴とする耐摩耗性の良
    好なポリエステル繊維の製造方法。
  4. 【請求項4】紡糸速度5500m/分以上でポリエステ
    ルを溶融紡糸する際に湿式法で合成し、更に焼成した酸
    化ケイ素粒子を直鎖状のシリコーンオイルで0.1〜1
    0重量%被覆した、平均一次粒子径が5〜45mμの酸
    化ケイ素粒子粉末を、極限粘度が0.50dl/g以上
    のポリエステルに直接添加、混合し、ポリエステル繊維
    中に0.02〜2.0重量%含有することを特徴とする
    耐摩耗性の良好なポリエステル繊維の製造方法。
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