JP4773887B2 - 防刃衣料用布帛 - Google Patents

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Description

本発明は、ベーマイトアルミナを含有する全芳香族ポリアミド系フィラメントから構成される、軽量かつ柔軟で着用感に優れると共に、特に刃物などの突刺しに対する防護性能が良好な、防刃衣料用布帛に関するものである。
従来、先端の鋭利なナイフ、アイスピックなどの刃物から身体を保護するための防刃材料としては、様々な素材・形態のものが知られているが、一般的には、チタン板、ステンレス板、セラミック板などが多用されている。しかし、チタン板、ステンレス板は比重が大きい上に、十分な防刃性能を得るためにはある程度の厚みが必要であるため、非常に重くなる。また、衣服としての着用を考えた場合、全く柔軟性がないため、着用者にとってはかなりの負担となる。一方、セラミック板の場合には、金属板と比べれば軽量であるものの、それでもまだかなり重いだけでなく、柔軟性もないために着心地に劣るという問題を有する。
このような問題を改善するために、金属に比べて比重が小さいポリカーボネート樹脂やナイロン樹脂などの樹脂板を用いることが試みられ、特開平9−229598号公報(特許文献1)には、金属板及びプラスチック板を布帛で被覆することにより着用性を改善することが提案されている。しかしながら、これらは、たとえ比重が小さい樹脂であっても、十分な防刃性能を得るためには、やはり厚みを大きくせざるを得ないため、重量的な問題を解決することが出来ない。また、布帛で金属及び樹脂を被覆したとしても、着用性は若干改善されるものの、柔軟性の点で、満足できるものとはなり得ない。
かかる柔軟性の問題を改善するために、小さな樹脂ピースを緻密に組み合わせる方法が提案され、また、特開昭63−267898号公報(特許文献2)には、柔軟性に優れ、かつ着心地の良好な防刃材料として、高強力繊維からなる繊維配列シートなどの不織布に、上記のような各種硬質部材を多数独立して存在せしめた防刃材料が提案されている。しかしながら、これらの材料は、繊維織布や不織布のように自由自在に体にフィットするものではない。しかも、ピースとピースの間に刃やアイスピックなどの先端が入ったときの防刃性能が極端に弱いという重大な欠点を有している。
このような柔軟性の問題が低減された高強力繊維不織布の防刃性能を改善する別の手段として、特開昭61−215703号公報(特許文献3)、実開平3−104692号公報(特許文献4)、特公平5−58449号公報(特許文献5)などに、該不織布にエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱可塑性もしくは熱硬化性の樹脂を含浸もしくは被覆したものが提案されている。しかし、これらの防刃材料は、十分な防刃性能を発現させるまで含浸又は被覆すると上記樹脂板と同などの硬さになり、やはり着心地の点で未だ満足できるレベルには到達していない。
一方、特開2002−201566号公報(特許文献6)では、布帛状物の少なくとも片側面に粒子の大きさが10〜1700μmの範囲の硬質無機物粒子を固着させることによって防刃性能を高め、樹脂層の厚みを薄くすることにより軽量化する方法が提案されている。しかし、この防刃材料においても、着心地性を満足させることのできる硬さには至っていない。
さらに、特開平10−8363号公報(特許文献7)では、高強力繊維不織布にロジンを含浸する方法が提案されている。しかし、この防刃材料は、用いられる高強力繊維の強度から期待されるほどの防刃性能が得られないという欠点を有している。
特開平9−229598号公報 特開昭63−267898号公報 特開昭61−215703号公報 実開平3−104692号公報 特公平5−58449号公報 特開2002−201566号公報 特開平10−8363号公報
本発明の主たる目的は、上述のような従来の防刃衣料用布帛の問題を解消し、高い機械的物性と柔軟性とを兼ね備えた、新規な防刃衣料用布帛を提供することにある。本発明の他の目的は、製糸工程における工程安定性が良く、かつ品質が向上した全芳香族ポリアミド系フィラメントから構成される新規な防刃衣料用布帛を提供することにある。
本発明者らは、前述の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ベーマイトアルミナを含む全芳香族ポリアミド系フィラメントから布帛を構成すること、そして、特に該全芳香族ポリアミド系フィラメントにおけるベーマイトアルミナの含有比率を特定範囲に制御することによって、柔軟でかつ優れた防刃特性を持つ防刃衣料用布帛が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の防刃衣料用布帛に係るものである。
(1)ベーマイトアルミナを含む全芳香族ポリアミド系フィラメントから構成されることを特徴とする防刃衣料用布帛。
(2)全芳香族ポリアミド系フィラメントにおけるベーマイトアルミナの含有率が、該全芳香族ポリアミド系フィラメントの重量を基準にして1〜10重量%(好ましくは1〜8重量%)であることを特徴とする上記(1)記載の防刃衣料用布帛。
(3)全芳香族ポリアミド系フィラメント中のベーマイトアルミナのアスペクト比が、3〜100(好ましくは3〜50)であることを特徴とする上記(1)〜(2)のいずれかに記載の防刃衣料用布帛。
(4)全芳香族ポリアミドフィラメントが、パラ型全芳香族ポリアミド系フィラメントであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の防刃衣料用布帛。
(5)ベーマイトアルミナの全芳香族ポリアミド系フィラメントの繊維軸に対する配向角度の平均が、20°以下(好ましくは0°〜10°)であり、かつ標準偏差が10°以下(好ましくは0°〜10°)であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載請求項1記載の防刃衣料用布帛。
[ここで、配向角度とは、ベーマイトアルミナを含有する芳香族ポリアミド繊維の繊維軸に平行な方向の断面を透過電子顕微鏡(以下、TEMと略記)により倍率70000倍にて観察した際の、ベーマイトアルミナの繊維軸に対する傾きの角度のことである。このときの観察条件は、無作為に選んだ任意の箇所2μm×2μmで200サンプルについて測定し、それらの平均値をもって配向角度とする。]
(6)下記式で表される布帛のカバーファクター(CF)が、2500〜3500(好ましくは2800〜3200)であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の防刃衣料用布帛。
Figure 0004773887
上記式において、NWは経糸密度(本/2.54cm)、DWは経糸繊度(dtex)、NFは緯糸密度(本/2.54cm)、DFは緯糸繊度(dtex)を表わす。
本発明の防刃衣料用布帛を構成する全芳香族ポリアミド系フィラメントは引張特性、すなわち引張強度、弾性率などが非常に優れており、これを布帛にした場合、柔軟かつ極めて良好な防刃性能を示す。軽量かつ柔軟で着用感に優れると共に、特に刃物などの突刺しに対する防護性能が良好な、防刃衣料用布帛となる。
本発明の防刃衣料用布帛は、上述のとおり、ベーマイトアルミナを含む全芳香族ポリアミド系フィラメントから構成されていることを最大の特徴とするが、ここでは、まず、上記全芳香族ポリアミド系フィラメントについて説明する。
本発明における全芳香族ポリアミド系フィラメントを構成するポリマー(全芳香族ポリアミド)は、溶液中でのジカルボン酸ジクロライド成分とジアミン成分との低温溶液重合又は界面重合によって製造することができる。
重合に使用されるジアミン成分の具体例としては、p-フェニレンジアミン、2-クロルp-フェニレンジアミン、2,5-ジクロルp-フェニレンジアミン、2,6-ジクロルp-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフォンなど、並びに、これらの芳香環の水素の一部又は全部がハロゲン又はメチル基で置換されたものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用される。これらの中でも、ジアミン成分として、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン及び3,4’-ジアミノジフェニルエーテルを単独あるいは2種以上使用することが好ましい。
また、カルボン酸クロライド成分の具体例としては、イソフタル酸クロライド、テレフタル酸クロライド、2-クロルテレフタル酸クロライド、2,5-ジクロルテレフタル酸クロライド、2,6-ジクロルテレフタル酸クロライド、2,6-ナフタレンジカルボン酸クロライドなど、並びに、これらの芳香環の水素の一部又は全部がハロゲン又はメチル基で置換されたものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、ジカルボン酸クロライド成分として、テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライドが好ましい。
本発明において特に好適な全芳香族ポリアミドの具体例としては、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド、ポリパラフェニレンテレフタルアミド及びポリメタフェニレンテレフタルアミドなどを挙げることができる。
全芳香族ポリアミドを重合する際の溶媒は特に制限されないが、適当な重合溶媒の具体例にとしては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタムなどの有機極性アミド系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの水溶性エーテル化合物、メタノール、エタノール、エチレングリコールなどの水溶性アルコール系化合物、アセトン、メチルエチルケトンなどの水溶性ケトン系化合物、アセトニトリル、プロピオニトリルなどの水溶性ニトリル化合物などが挙げられる。これらの溶媒は2種以上の混合溶媒として使用することも可能である。該溶媒は脱水されていることが望ましい。
この場合、ポリマーの溶解性を上げるために、重合前、重合途中、重合終了時に一般に公知の無機塩を溶媒あるいは重合系に適当量添加しても差し支えない。このような無機塩としては、例えば、塩化リチウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
また、全芳香族ポリアミドを製造する際、これらのジアミン成分と酸クロライド成分は、ジアミン成分対酸クロライド成分のモル比として0.90〜1.10、より好ましくは0.95〜1.05、の範囲で用いることが好ましい。
この全芳香族ポリアミドの末端は封止されていてもよい。末端封止剤を用いて封止する場合、その末端封止剤としては、例えば、フタル酸クロライド及びその置換体、アミン成分としてアニリン及びその置換体が挙げられる。
重合反応条件は特に制限されない。酸クロライドとジアミンとの反応は、一般に急速であり、反応温度は、例えば−25℃〜100℃、好ましくは−10℃〜80℃である。一般に用いられる酸クロライドとジアミンの反応においては、生成する塩化水素のごとき酸を捕捉するために脂肪族や芳香族のアミン、第4級アンモニウム塩を併用することもできる。
溶液重合の場合、反応の終了後に、重合で副生したHClなどの酸を、必要に応じて、塩基性の無機化合物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウムなどを添加し、中和する。
このようにして得られる全芳香族ポリアミド溶液を、アルコール、水などの非溶媒中に投入して、ポリマーを沈殿せしめ、粒子状、パルプ状などにして取り出すことができ、これを再度溶媒に溶解して紡糸に供することもできるが、重合反応によって得たポリマー溶液をそのまま紡糸用の溶液(紡糸用ドープ)として用いることもできる。後者の方法は工程を簡略化できるため工業的に好ましい。重合して得られたポリマーを再度溶解させる際に用いる溶媒としては、全芳香族ポリアミドを溶解するものであれば特に限定されないが、上記全芳香族ポリアミドの重合に使用される溶媒が好ましく用いられる。
本発明の布帛を構成するフィラメントの製造に用いられる全芳香族ポリアミド溶液のポリマー濃度は、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜25重量%である。ポリマー濃度が0.5重量%未満では、ポリマーの絡み合いが少なく紡糸に必要な粘度が得られない。一方で、ポリマー濃度が30重量%を超える場合、紡糸ノズルから吐出する際に不安定流動が起こりやすくなり、安定的に紡糸することが困難となる。
一方、本発明で全芳香族ポリアミド系フィラメント中に含有するベーマイトアルミナは、実質的にアルファアルミナモノハイドライドからなる針状のナノ化合物である。該ベーマイトアルミナのアスペクト比は3〜100であるものが好ましい。すなわち、好適なベーマイトアルミナは、外径は1次粒径で0.5nm以上20nm以下、長さは60nm以上1.2μm以下である。ただし、ベーマイトアルミナの外径が20nmを超えるか又は長さが10μmを超え、アスペクト比が3〜100の範囲外になると、ポリマー内での分散不良による凝集が発生することにより、後述するように繊維中に均一に分散せしめることが難しくなるため、完成糸の強度低下を招き好ましくない。
本発明の防刃衣料用布帛を構成するフィラメントにあっては、該全芳香族ポリアミド系フィラメント全重量に対し、上記ベーマイトアルミナが1〜10重量%の範囲で含まれることが望ましい。この含有量が1重量%未満であると防刃性の向上が見られず、一方、含有量が10重量%を超えるとベーマイトアルミナを紡糸溶液中に均一に分散させることが困難となる。
なお、本発明において、上記全芳香族ポリアミド系フィラメントの物性を損なわない範囲で、ベーマイトアルミナ以外のフィラーを併用することができる。かかるフィラーとしては、繊維状もしくは、板状、鱗片状、粒状、不定形状、破砕品など非繊維状の充填剤が挙げられ、具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、全芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物、カーボンナノチューブ、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボンなどが挙げられる。また、上記のベーマイトアルミナ以外のフィラーは2種以上併用することもできる。なお、本発明において使用する上記のフィラーはその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
本発明で防刃衣料用布帛に使用する全芳香族ポリアミド系フィラメントは、ベーマイトアルミナを含有していないものに比較して、引張強度(T)を10%以上向上させることが可能である。
本発明で使用する全芳香族ポリアミド系フィラメントが、高い機械的特性(引張強度、弾性率、伸度など)を有し、これを布帛にした場合に優れた防刃性能を示す。その理由としては未だ定かではないが、製糸工程において延伸配向させることにより、ベーマイトアルミナが繊維軸方向に高度に配向しかつ水素結合を介したポリマーとの相互作用によるものと考えられる。
すなわち、本発明では、全芳香族ポリアミド系フィラメント中のベーマイトアルミナを、TEMを用いて、倍率70000倍として、視野2μm×2μmで観察したとき、200サンプルの平均配向角度20°以下(好適には0°以上10°以下)となるように配向している。このように繊維軸方向に高度に配向させることにより、フィラメントの機械的物性の向上が達成されると考えられる。
したがって、本発明の防刃衣料用布帛にあっては、全芳香族ポリアミド系フィラメントは、ベーマイトアルミナの全芳香族ポリアミド系フィラメントに対する配向角度の平均が20°以下(特に0°以上10°以下)であり、かつ標準偏差が10°以下(特に0°以上10°以下)であることが好ましい。上記配向角度が20°を越えると繊維軸方向の強度が発現しにくくなり、また、標準偏差が10°を越えると同様に強度が発現しにくくなるので、いずれも好ましくない。
ここで、配向角度とは、前述のようにベーマイトアルミナを含有する全芳香族ポリアミド系フィラメントの繊維軸に平行な方向の断面をTEMにて観察し、測定される繊維軸に対するベーマイトアルミナの傾きの角度をいう。このときの観察条件は、TEM倍率70000倍で200サンプルについて無作為に選んだ任意の箇所2μm×2μmを測定し、それらの平均値を算出して配向角度とする。
本発明において、全芳香族ポリアミド系フィラメントの製造方法は特に限定はされないが、全芳香族ポリアミド、ベーマイトアルミナ及び溶媒からなる紡糸用溶液(ドープ)を調製し、得られた紡糸用ドープをノズルより吐出し、貧溶媒からなる凝固浴中で凝固し、乾燥させることにより製造することができる。
また、紡糸用ドープに使用される溶媒としては、上記の全芳香族ポリアミドの重合溶媒のうち、全芳香族ポリアミド及びベーマイトアルミナをそれぞれ溶解及び分散させることができる溶媒を使用することができる。これらの溶媒は2種以上の混合溶媒として使用することも可能であり、その種類は特に制限されない。工業的に実施する場合、溶媒回収の便宜などから、紡糸用ドープに使用の溶媒は重合溶媒と同一種のもの(例えばN−メチルピロリドンのようなアミド系溶媒)の使用が好ましいが、重合溶媒と異なる溶媒を使用しても差し支えない。紡糸用ドープのポリマー濃度、すなわち全芳香族ポリアミドの濃度は0.05〜30重量%が好ましく、1〜25重量%がより好ましい。
全芳香族ポリアミド、ベーマイトアルミナ及び溶媒からなる紡糸用ドープの調製方法としては、例えば、
(A)全芳香族ポリアミドの溶液にベーマイトアルミナを加える方法、
(B)全芳香族ポリアミドの溶液とベーマイトアルミナの溶液とを混合する方法、
(C)ベーマイトアルミナの溶液に全芳香族ポリアミドを添加し溶解する方法、
(D)全芳香族ポリアミドの重合時にベーマイトアルミナを添加する方法、
などが挙げられる。
さらに、本発明において上記紡糸用ドープには、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候剤、染料、帯電防止剤、難燃剤などの添加剤や、導電性ポリマー、その他の重合体を添加することができる。
上記方法によって得られた紡糸用ドープを用いて、湿式法、半乾半湿式法などにより紡糸して繊維状に成形し、該繊維状物中の溶媒を除去した後、乾燥し、得られた繊維を延伸する。このような工程によって、フィラメントにおけるポリマーマトリックススである全芳香族ポリアミド及びフィラーとして用いているベーマイトアルミナがともに高度に配向し、得られる全芳香族ポリアミド系フィラメントの高物性が発現すると考えられる。延伸の方法としては、凝固糸状態での水洗延伸、沸水延伸又は乾燥糸状態での加熱延伸などを採用することができる。
延伸倍率について、特に制限はないが、1.05倍以上であることが好ましく、さらには1.1倍以上であることが好ましい。延伸倍率が1.05倍よりも小さい場合、ポリマーマトリクス中におけるベーマイトアルミナの配向が不十分となるので、好ましくない。延伸工程で延伸倍率を適宜コントロールすることで全芳香族ポリアミド系フィラメントの伸度及び強度を制御することができる。延伸倍率の上限は延伸温度でフィラメントが破断又は融解する温度である。延伸は1段で行ってもよく、2段以上に分けて行ってもよい。
本発明の防刃衣料用布帛となる上記全芳香族ポリアミド系フィラメントからなる布帛は、編物、織物、不織布などのいずれの形態でもよいが、織物の場合は、それぞれの繊維が経緯一方向に配列するため、繊維の性能が発揮されやすく、本発明の目的である高防刃性能が達成されやすい。さらに、織物は織組織の形態を維持しやすく、織り目が開き難くなる。したがって、刃物などの突き刺しによって繊維がずれず、繊維性能のロスが少なくなり高い防刃性能を示すため織物とするのが好ましい。
本発明において防刃衣料用布帛として好ましい布帛は、下記式で表されるカバーファクター(CF)が2500〜3500の織物である。
Figure 0004773887
ただし、上記式において、NWは経糸密度(本/2.54cm)、DWは経糸繊度(dtex)、NFは緯糸密度(本/2.54cm)、DFは緯糸繊度(dtex)を表わす。
上記カバーファクター(CF)が2500未満のものは防刃性能を発揮しにくい傾向があり、一方、3500を超えるものは身に着けた時の着心地が悪いため、いずれも好適な防刃衣料用布帛とはなり難い。
かくして、本発明によれば、軽量かつ柔軟で着用感に優れると共に、特に刃物などの突刺しに対する防護性能が良好な、防刃衣料用布帛が提供される。
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく具体的に説明する。ただし、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。なお、実施例中の物性は下記の方法により測定した。
(1)配向角度
ベーマイトアルミナを含有する全芳香族ポリアミド系フィラメントの繊維軸に平行な方向の断面をTEMにて倍率は70000倍で観察し、無作為に選んだ箇所2μm×2μmで200サンプル測定した繊維軸に対するベーマイトアルミナの傾きの角度の平均値を配向角度とする。
(2)防刃性能
十分な量の粘土層(縦×横×高さ=20×20×10cm)、上面が平坦な工作用油粘土)の上面に、複数層積層した布帛サンプルを置く。一方、引張圧縮試験機(株式会社インテスコ製、タイプ2005)のロードセルの下部にアイスピックを下向きに固定する。アイスピックの先端が布帛サンプルの上部約5mmとなるようにクロスヘッドの高さを調整し、次いで、2mm/分のクロスヘッド速度で圧縮を開始する。防刃性能は、アイスピックがサンプルを全層貫通した時、すなわち、アイスピックの先端がサンプルの最後層布帛を貫通した時の応力で表示した。したがって、この値が大きいほど防刃性能が良好であることを示す。
[実施例1]
(全芳香族ポリアミド系フィラメントの製造)
全芳香族ポリアミド系フィラメントに添加するベーマイトアルミナとして、巴工業(株)製の短径15nm、アスペクト比11のものを使用した。このベーマイトアルミナの分散は、浅田鉄工株式会社製ビーズミル(Nano Grain Mill)を用いて行い、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略す)中にベーマイトアルミナ含量が6重量%となるように、NMP分散体を調製した。この時、メディアとして、0.3mmのジルコニアビーズを使用した。
このベーマイトアルミナ分散体及びNMPを、固有粘度(硫酸中30℃で測定)3.3のコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド(ジアミン成分の共重合モル比が1:1の全芳香族ポリアミド)の濃度6重量%のNMP溶液中に、得られるドープ中のベーマイトアルミナの含有量が上記全芳香族ポリアミドの全重量を基準として1重量%となる割合で添加し、温度80℃下で4時間撹拌混合した。
得られたドープを用い、孔数667ホールの紡糸口金から吐出し、半乾半湿式紡糸法によりエアーギャップ約10mmを介してNMP濃度30重量%の水溶液中に紡出し凝固させた後、水洗、乾燥し、次いで、最高延伸温度500℃の温度下で全延伸倍率10倍に延伸した後、巻き取ることによりベーマイトアルミナが良好に分散した状態で添加されたパラ型全芳香族ポリアミド系フィラメントを得た。
その結果、得られたパラ型全芳香族ポリアミド系フィラメントは、総繊度1100dtex、フィラメント数667フィラメント、単糸繊度1.65detx/フィラメントであり、強度は26.4cN/dtexであった。また、得られたパラ型全芳香族ポリアミド系フィラメント中におけるベーマイトアルミナのアスペクト比は11、配向角度の平均は、10°、配向角度の標準偏差は2.0°であった。
(布帛の製造及び評価)
このパラ型全芳香族ポリアミド系フィラメントを用い、経・緯の織密度を45本/inchとして、目付け288g/m2の平織物を作成した。この織物を、10枚重ね、防刃試験を行なった。その結果、防刃性能は50.2kgであった。これらの結果を表1の実施例1欄に示す。
[実施例2、3]
添加するベーマイトアルミナの含有量が全芳香族ポリアミドフィラメントの全重量を基準として3重量%又は7重量%となる割合で添加する以外は実施例1と同様にして、ベーマイトアルミナ添加原糸を製造し、その織物の防刃性能評価を実施した。また、得られたパラ型芳香族ポリアミド繊維中ベーマイトアルミナの配向角度の平均は、それぞれ11°及び14°であり、配向角度の標準偏差は、それぞれ3.2°及び3.8°であった。両者の結果を表1の実施例2、実施例3の欄に示す。
[実施例4]
アスペクト比が11のベーマイトアルミナを使用するかわりに、アスペクト比が6のベーマイトアルミナを使用する以外は、実施例1と同様にしてベーマイトアルミナを含む芳香族ポリアミドフィラメントを製造し、その織物の防刃性能評価を実施した。また、得られたパラ型芳香族ポリアミド繊維中ベーマイトアルミナの配向角度の平均は14°であり、配向角度の標準偏差は7.6°であった。その結果を表1の実施例4欄に示す。
[比較例1]
比較例として、ベーマイトアルミナを添加しないこと以外は、実施例1と同様にして原糸を作成し、その織物の防刃性能評価を実施した。その結果を表1の比較例1欄に示す。
Figure 0004773887
表1より明らかなように、ベーマイトアルミナを添加した全芳香族ポリアミド繊維は、未添加の全芳香族ポリアミド繊維に比べ、強度、モジュラスが向上するだけでなく、防刃性能が大きく向上し、本発明による各実施例の布帛では防刃性能が45kg以上に達することが認められる。また、ベーマイトアルミナの添加量については、アスペクト比が11のベーマイトアルミナでは、フィラメント重量に対して7重量%までは、添加量の多い方が防刃性能に優れ、アスペクト比が6のベーマイトアルミナでは、その効果がアスペクト比11のベーマイトアルミナに比べて幾分劣るものの、無添加のフィラメント(比較例1)に比べて各段に向上している。
本発明に係る防刃衣料用布帛は、その優れた特性により、警備、救護、防災用の各種の防護衣料、作業服、作業エプロン、作業手袋などの作業用衣料をはじめ、軽量性、柔軟性が求められかつ特に刃物などの突刺しに対する防護性能が必要な分野の衣料素材として好適に利用することができる。

Claims (6)

  1. ベーマイトアルミナを含む全芳香族ポリアミド系フィラメントから構成されていることを特徴とする防刃衣料用布帛。
  2. 全芳香族ポリアミド系フィラメントにおけるベーマイトアルミナの含有率が該全芳香族ポリアミド系フィラメントの重量を基準にして1〜10重量%であることを特徴とする請求項1記載の防刃衣料用布帛。
  3. 全芳香族ポリアミド系フィラメント中のベーマイトアルミナのアスペクト比が3〜100であることを特徴とする請求項1又は請求項に記載の防刃衣料用布帛。
  4. 全芳香族ポリアミドフィラメントがパラ型全芳香族ポリアミド系フィラメントであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の防刃衣料用布帛。
  5. ベーマイトアルミナの全芳香族ポリアミド系フィラメントの繊維軸に対する配向角度の平均が20°以下であり、かつ配向角度の標準偏差が10°以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の防刃衣料用布帛。
  6. 下記式で表される布帛のカバーファクター(CF)が2500〜3500であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の防刃衣料用布帛。
    Figure 0004773887
    上記式において、NWは経糸密度(本/2.54cm)、DWは経糸繊度(dtex)、NFは緯糸密度(本/2.54cm)、DFは緯糸繊度(dtex)を表わす。
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