JP2005213689A - ポリエステル繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は繊維状無機充填物をポリエステル繊維中で分散・配向させることによって得られる、弾性率が向上したポリエステル繊維を提供する。
【解決手段】(A)ポリエステル100重量部と、(B)一次粒子の平均繊維径が0.5〜7nmであり、平均繊維長が30〜300nmであり、アスペクト比が600〜5である繊維状無機充填物0.1〜4.5重量部とからなり、該繊維状無機充填物が下記式(1)から求められる平均散乱体長として、30〜300nmの平均繊維長を有し、かつ、下記式(1)から求められる未配向因子Bφが下記式(2)を満たすポリエステル繊維。
Bobs = 1/(L・s)+ Bφ (1)
Bφ < 15° (2)
ここで、Lは散乱体の長さ、sは散乱ベクトル、Bobsは、各散乱ベクトルsにおける小角X線散乱強度の方位角分布の半価幅である。
【選択図】なし

Description

本発明は繊維状無機充填物をポリエステル繊維中で分散・配向させることによって得られる、弾性率が向上したポリエステル繊維に関する。
ポリエステルは、物理化学的特性に優れることから、繊維、フィルム、樹脂等に幅広くもちいられている。今後もその用途の拡大が期待され、それに伴う物性向上が求められている。繊維では、弾性率や耐熱温度の向上などによる使用温度範囲や信頼性の向上させることによるタイヤコードなどの各種産業用途への利用である。
一方、無機充填剤を添加することによる弾性率・耐熱性向上・寸法安定性向上などについては、射出成形用樹脂等で盛んに研究がなされ、ガラス繊維を使用した樹脂の補強が行われてきた。さらに近年では、繊維径0.4μm、繊維長15〜28μm、アスペクト比7〜10の繊維状チタン酸カリウムや繊維状珪酸カルシウムを利用した樹脂組成物なども開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、繊維用途として利用するためには、これらの粒子は大きすぎ、良好なポリエステル繊維を得ることが困難である。
球状の酸化アルミニウムの場合には、弾性率、強度などの物理的特性向上させるというより、フィルムの表面性の改質するための球状粒子を使用するものがほとんどである。
特開2001−131409号公報 実施例
本発明の主な目的は、産業用途に好適に利用可能な繊維状無機充填物で補強され、強度、弾性率が向上したポリエステル繊維を提供することにある。
本発明は(A)ポリエステル100重量部と、(B)一次粒子の平均繊維径が0.5〜7nmであり、アスペクト比が600〜5である繊維状無機充填物0.1〜4.5重量部とからなり、該繊維状無機充填物が下記式(1)から求められる平均散乱体長として30〜300nmの平均繊維長を有し、かつ、下記式(1)から求められる未配向因子Bφが下記式(2)を満たすポリエステル繊維である。
Bobs = 1/(L・s)+ Bφ (1)
Bφ < 15° (2)
ここで、Lは散乱体の長さ、sは散乱ベクトル、Bobsは、各散乱ベクトルsにおける小角X線散乱強度の方位角分布の半価幅である。
本発明により配向した繊維状無機充填物により補強され、高弾性率、高強度のポリエステル繊維を提供することができる。
本発明で使用するポリエステルは、従来公知の方法でカルボン酸及び/またはその誘導体とジオールを重縮合したもの、あるいは、ヒドロキシカルボン酸からなるもの、あるいは、さらにこれらの共重合体を指す。ポリエステルを構成するカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、2,2′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−エタン、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、オクタデカンジカルボン酸、ダイマー酸、マレイン酸及びフマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの環状脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの脂肪族ジオールや、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA及び2,2−ビス(2′−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等のジフェノール類が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、7−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4′−ヒドロキシ−ビフェニル−4−カルボン酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。
かかるポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(1,3−トリメチレンテレフタレート)、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート-テレフタレート共重合体、ポリブチレンイソフタレート-テレフタレート共重合体、ポリシクロヘキシレンジメチレンイソフタレート-テレフタレート共重合体などが挙げられる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(1,3−トリメチレンテレフタレート)、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート)、ポリブチレンテレフタレートが、結晶性の良好な繊維が得られるため,弾性率や強度の点で好ましい。
本発明におけるポリエステルは、体積比フェノール:テトラクロロエタン=6:4中、ポリマ−濃度1.2g/100mlで、35℃で測定した還元粘度において、0.40dl/g以上、2.00dl/g以下であることが、溶融成形性とその後に得られる繊維状無機充填物の配向を実現し、好適な強度と弾性率を実現する上で好ましい。還元粘度において、0.40dl/g以上であることが、充分な強度を得る上で好ましい。還元粘度の上限については、ポリエステルが結晶性であるか、液晶を形成するかにより異なる場合もあるが,2.00dl/g以下であることが、溶融成形性、延伸性を確保する上で好ましい。こうした点から、還元粘度は、0.42dl/g以上、1.50dl/g以下であることがより好ましく、0.44dl/g以上、1.20dl/g以下であることがさらに好ましく、0.45dl/g以上、0.90dl/g以下であることが特に好ましい。
本発明で使用する繊維状無機充填物は、一次粒子の平均繊維径が0.5〜7nmであり、アスペクト比が600〜5である。一次粒子の平均繊維径が0.5nm以上であることが曲げ応力に抗して繊維中で直線性を維持する上で好ましく、7nm以下であることが、滑らかな表面性を維持したり,後述のアスペクト比を高いものとするために好ましい。平均繊維径としては好ましくは1〜5nm、より好ましくは2〜4nmである。
また、これらポリエステル 中には艶消剤、安定剤、着色剤、難燃剤、表面改質剤等の添加剤を含んでいても良い。
本発明で使用する繊維状無機充填物の一次粒子の平均繊維長は、30〜300nmである。平均繊維長は30nm以上であることが、後述のアスペクト比を高いものとするために好ましい。また、300nm以下であることが、滑らかな表面性を維持したり、繊維状無機充填物を良好にポリエステル中に分散させる上で好ましい。平均繊維長としては、好ましくは35〜250nmであり、より好ましくは40〜200nmである。
本発明で使用する繊維状無機充填物の一次粒子のアスペクト比は600〜5である。本発明の繊維状無機充填物は繊維状の形態であり、アスペクト比は、その平均長さを平均径で除したものとする。アスペクト比は高いほど物理的な補強効果が大きく好ましいものとなるが、大きすぎる場合には粒子の分散が困難となるために溶融成形や延伸が困難となる可能性がある。そのため、本発明で使用するの繊維状無機充填物では、アスペクト比は、5〜600のものが使用される。上述の理由により、アスペクト比としては好ましくは10〜400、より好ましくは20〜100である。
本発明のポリエステル繊維は、ポリエステル100重量部に対して、繊維状無機充填物0.1〜4.5重量部とからなる。繊維状無機充填物がポリエステル100重量部に対して、0.1重量部以上であることが、物理的強度の向上の点で好ましい。また、4.5重量部以下であることが、繊維状無機充填物の良好な分散を行い、高い繊維性能を発現させる上で好ましい。繊維状無機充填物としては、0.5〜4重量部であることがより好ましく、0.7〜3.5重量部であることがさらに好ましく、1〜3重量部であることが特に好ましい。
本発明のポリエステル繊維は、無機充填物が下記式(1)から求められる平均散乱体長として、30〜300nmの平均繊維長を有し、かつ、下記式(1)から求められる未配向因子Bφが下記式(2)を満たすことが好ましい。このような、線状の微細構造の配向評価は、Polymer 42(2001)1601−1612、Elsevier Science Ltdに記載のように小角X線散乱法を使用することにより可能である。
Bobs = 1/(L・s)+ Bφ (1)
Bφ < 15° (2)
ここで、Lは散乱体の長さ、sは散乱ベクトル、Bobsは、各散乱ベクトルsにおける小角X線散乱強度の方位角分布の半価幅である。
上記式(1)の各パラメータは、小角X線散乱により求めることができる。Lは散乱体の長さ、sは散乱ベクトル(s=2sinθ/λ,ここで2θは散乱角,λはX線波長である)、Bobsは、方位角に対して散乱ベクトルの逆数1/sの範囲15〜40nmにおいて測定した半価幅、Bφは、未配向因子を表すが、このうち、sおよびBobsが、小角X線散乱により直接得られる値であり,L、およびBφは、式(1)より算出される値である。このような測定において、方位角に対する半価幅が求まらないような場合には、無機充填物の分散が充分でないか、配向性が低いと考えられ、繊維の高弾性化には寄与しないと考えられる。sに対してBobsをプロットすると、繊維状無機充填物が良好に配向している場合には、sとして15〜70nmの範囲で、通常、良好な直線性が得られる。この直線の傾きから、Lを求めることができる。また、この直線を、s=0に外挿することによりBφを求めることができる。
このような直線を得る範囲としては、散乱ベクトルsの逆数1/sの範囲として、15〜70nmの範囲である。広い範囲で直線を求める方が好ましいが、測定可能な範囲は測定装置に依存するところが大きい。本発明のポリエステル繊維は、散乱ベクトルsの逆数1/sの範囲としての上記範囲のうち、少なくとも20nmの範囲での直線が得られるものにおいてフィッティングを行い、直線を求めてL,Bφが、後述の範囲となるようなポリエステル繊維である。
Lの値は、繊維中での有効に配向した繊維状無機充填物の平均的な長さと考えられ、これができるだけ長い方が、弾性率の向上の効果が高いと考えられる。このようにして求められる平均繊維長としては、30nm以上であることが、強度や弾性率の補強の点で好ましい。また、300nm以下であることが、滑らかな表面性を維持したり、溶融紡糸を行う上で好ましい。平均繊維長としては、好ましくは35〜250nmであり、より好ましくは40〜200nmである。
また、Bφが15°以下であることが、物理強度や弾性率の点で良好な繊維を得る上で好ましい。Bφが15°を超える場合には、繊維状無機充填物が配向していても、配向が不十分であり、平均繊維長の高い無機充填物が得られたとしても、物理強度や弾性率の点で良好な繊維を得ることが困難となる。Bφとしては、小さい方が好ましいが、実際上は、0.1°以上であれば補強効果としては、充分なものを得ることが可能である。Bφとしては、0.1〜12°であることがより好ましく、0.1〜10°であることがさらに好ましく,0.1〜9°であることがさらに好ましい。
本発明で用いられる繊維状無機充填物としては、αアルミナ、γアルミナ、θアルミナ、ベーマイト等の繊維状の酸化アルミニウム、繊維状の酸化鉄、繊維状の酸化ニッケル、シリカのナノチューブ等を例示することができる。これらの内で,弾性率の補強効果の点で、αアルミナ、γアルミナ、θアルミナ、およびベーマイトからなる群より選択される少なくとも1種の繊維状の酸化アルミニウムが好ましい。
さらに、こうした繊維状無機充填物は、さらに分散性を向上させるために表面被覆を行っても良い。
表面被覆方法として表面反応が可能であれば、特に限定するものではないが、シランカップリング剤で処理する方法を例示することができる。
この目的に使用されるシランカップリング剤としては、以下の式(3)
(X)4−nSi(R (3)
(nは1〜3であり、Xはハロゲン基もしくは炭素数1〜6のアルコキシ基、Rは炭素数1〜60の脂肪族、もしくは炭素数1〜60の芳香族炭化水素である。)
で示される化合物を好ましく挙げることができる。
また、Rは炭素数1〜60の脂肪族、もしくは炭素数1〜60の芳香族炭化水素であるが、アミノ基、カルボキシル基、ニトロ基、ハロゲン基、エポキシ基等、スルフィド基、シアノ基等の窒素・酸素・硫黄・ハロゲン含有基等を含んでも良い。
具体的な化合物としては、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン,n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン,n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン,n−ペンチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルルトリメトキシシラン,n−ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、トルイルトリメトキシシラン、トルイルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、P―アミノフェニルトリエトキシシラン、3−シアノエチルメチルジメトキシシラン、3−シアノエチルトリメトキシシラン、3−シアノメチルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、3−(トリエトキシシリル)プロピルスクシン酸無水物、2―(3,4,―エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2,3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、5、6―エポキシヘキシルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3−ニトロプロピルジメトキシメチルシラン、3−クロロプロピルジメトキシメチルシラン、等のシランカップリング剤を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
繊維状無機充填物のポリエステルへの混合・分散方法としては、(A)繊維状無機充填物をポリエステルの原料のジオール中で分散させた後、ポリエステル樹脂製造時のエステル交換反応時、重合時のいずれかの段階で重合反応混合物に添加するか、(B)ポリマーの溶融状態で、直接2軸押し出し機などの溶融混合装置を使用して添加するか、あるいは(C)ポリマーと実質的に反応しない溶媒に、繊維状無機充填物を分散させた後、ポリマーの溶融状態で直接2軸押し出し機などの溶融混合装置を使用して添加する、といった方法を例示することができる。
(A)繊維状無機充填物をポリエステルの原料のジオール中で分散させた後、ポリエステル樹脂製造時のエステル交換反応時、重合時のいずれかの段階で重合反応混合物に添加する場合、以下のような方法を好ましく利用できる。
まず、繊維状無機充填物を、例えばボールミル、媒体攪拌型ミル、ホモジナイザー、超音波処理などにより、ポリエステルの原料となるジオール中に分散させたものを用いてポリエステルの重合を行う。繊維状無機充填物のジオール分散液は、ポリエステルのエステル交換反応時、エステル化反応時あるいはそれらの終了後に、ポリマーの原料と混合する。分散液の濃度としては、0.05〜90重量%であることが好ましい。0.05以下の場合には、ジオールの量が多くその後の除去が困難であったり、大きな反応機が必要となるため好ましくない。90重量部以上の場合、最終的なポリエステル組成物中に繊維状無機充填物を充分分散させることが困難となるため好ましくない。より好ましくは0.1〜70重量%さらに好ましくは1〜50重量%である。以後の反応は通常のポリエステルの重合反応と同様に実施することが可能である。
また繊維状無機充填物のジオール分散液は、繊維状無機充填物の分散を安定化させる目的で、炭素数1から20のカルボン酸を含んでいても良い。好ましい配合量としてはジオール100重量部に対して、繊維状無機充填物0.01〜50重量部、および炭素数1から20のカルボン酸0.001〜100重量部である。このカルボン酸は下記式(4)
−COOH (4)
(Rは炭素数1から19のアルキル基、炭素数5から19の脂環式アルキル基、または炭素数6から19の芳香族基)
で示される。具体的には、酢酸、プロピオン酸などの脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸などの脂環族のカルボン酸、安息香酸、ナフタレンカルボン酸などの芳香族カルボン酸を好ましく挙げることができる。こうしたカルボン酸は、ポリマーの重合反応時に除去されやすいものが好ましい。そのため,より低沸点の酢酸を使用することがより好ましい。
(B)ポリマーの溶融状態で、直接2軸押し出し機などの溶融混合装置を使用して添加する場合、従来公知の混合方法が利用可能であるが、高いせん断力をかけることが繊維状無機充填物の分散の点で好ましい。そのため、溶融混合する温度としては、結晶性ポリマーを使用する場合には、ポリマーの融点〜(融点+50)℃、好ましくは、融点〜(融点+30)℃程度で溶融混合する。また、非晶性ポリマーの場合、ポリマーのガラス転移温度〜(ガラス転移温度+200)℃、好ましくは、ポリマーのガラス転移温度〜(ガラス転移温度+150)℃程度で溶融混合する。
(C)ポリマーと実質的に反応しない溶媒に、繊維状無機充填物を分散させた後、ポリマーの溶融状態で直接2軸押し出し機などの溶融混合装置を使用して添加する場合、水、芳香族炭化水素系溶剤、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤等の溶媒に、繊維状無機充填物を分散させ、溶融状態のポリマーに対して直接添加し、溶剤を揮発除去する。この際、水などのようにポリエステルを分解するものであっても、短時間で揮発除去可能であり、ポリマーの重合度を著しく下げるものでなければ、好適に使用可能である。芳香族炭化水素系溶剤としては、トルエン、キシレン等を例示できる。また、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤としては、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどを例示することができる。繊維状無機充填物の分散液の調整方法としては、例えばボールミル、媒体攪拌型ミル、ホモジナイザー、超音波処理などにより分散させることが好ましい。分散液の濃度としては、0.05〜90重量%であることが好ましい。0.05重量%未満の場合には、溶媒の量が多くその後の除去に時間を要するため好ましくない。90重量%を超える場合、最終的なポリエステル組成物中に繊維状無機充填物を充分分散させることが困難となるため好ましくない。分散液濃度としては、より好ましくは0.1〜70重量%、さらに好ましくは1〜50重量%である。2軸押出し機を使用して本方法を適用する場合、分散液を加圧下で溶融ポリマー中に導入し、その後ベント口などから分散に使用した溶媒を揮発除去することにより繊維状無機充填物をポリマー中に良好に分散させることが可能である。
また、上述の手法で得られた1〜20重量%の比較的高い濃度の繊維状無機充填物を含有するポリエステルをマスターバッチとして、繊維状無機充填物を含まないポリエステル中に混練させることでも、良好なポリエステル組成物を得ることが可能である。
また使用する繊維状無機充填物の分散液には、繊維状無機充填物の分散を安定化させる目的で、炭素数1から20のカルボン酸を含んでいても良い。好ましい配合量としては水または有機溶剤100重量部に対して、繊維状無機充填物0.01〜50重量部、および炭素数1から20のカルボン酸0.001〜100重量部である。このカルボン酸は下記式(4)
−COOH (4)
(Rは炭素数1から19のアルキル基、炭素数5から19の脂環式アルキル基、または炭素数6から19の芳香族基)
で示される。具体的には酢酸、プロピオン酸などの脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸などの脂環族のカルボン酸、安息香酸、ナフタレンカルボン酸などの芳香族カルボン酸を好ましく挙げることができる。こうしたカルボン酸は、溶媒除去時に使用する水又は溶剤と共に除去されやすいものが好ましい。そのため,より低沸点の酢酸を使用することがより好ましい。
このようにして得られた繊維状無機充填物とポリエステルの組成物は、常法にしたがいポリマーの流動温度で溶融して紡糸口金から吐出し、引き取って単糸繊度が3〜30デニールの繊維とする。その際の引取速度(紡糸 速度)としては、10〜10000m/分の引取速度(紡糸速度)で溶融紡糸する。得られたフィラメントは、適宜延伸操作を行う。引取速度が低い場合には、延伸操作を行うことが好ましい。延伸倍率としては、2〜20倍程度であり、好ましくは4倍〜15倍程度であり、ポリマーのガラス転移温度〜ポリマーの結晶化温度で実施する。
なお、本発明の繊維を製造する際において、紡糸時に使用する口金の形状についてとくに制限は無く、円形、異形、中実、中空等のいずれも採用することができる。
以下、実施例により本発明方法をさらに詳しく具体的に説明する。ただしこれらの実施例により本発明の範囲が限定されるものではない。
ポリエステルの還元粘度は、体積比フェノール:テトラクロロエタン=6:4中ポリマ−濃度1.2g/100mlで35℃で測定した。
繊維状アルミナフィラーはアルゴナイド社製の酸化アルミニウム(主成分、ベーマイト、平均繊維長40〜200nm、平均径2〜3nm、平均アスペクト比20〜100)を用いた。
[参考例1]
アルゴナイド社製の酸化アルミニウム2.8部、エチレングリコール200部、酢酸10部からなる混合液に対して30分間超音波処理を行い、酸化アルミニウム分散液を調整した。
[参考例2]
ジメチルテレフタレート149部とエチレングリコール47部とをエステル交換反応触媒として酢酸カルシウム0.054gを用い、150℃から240℃に徐々に昇温させながら反応させ、その後トリメチルホスフェートを0.043部添加することで、エステル交換反応を行った。
こうして得られた反応物、参考例1の酸化アルミニウム分散液、3酸化アンチモン0.066部を真空下での攪拌系と流出系を備えた反応容器に仕込み、常圧下で200℃から270℃まで90分かけて徐々に昇温した。その後270℃で30分反応し、90分かけて0.4mmHgまで、徐々に減圧し、さらに減圧下で150分間重合反応を行った。得られた重合体の還元粘度は、0.71dL/gであった。
X線小角散乱測定は、X線発生装置(理学電機社製)を用い、回転対陰極式Cuターゲット、電圧45kV、電流70mA、X線波長0.1542nmの条件で、入射X線は多層膜ミラー(オスミック社製)により集光および単色化した。試料繊維は直径1mmとなるように束ねて、試料繊維軸と垂直にX線を入射し,カメラ長720mmで測定した。散乱X線の検出にはイメージングプレート(富士写真フィルム製)を使用した。
[実施例1]
参考例2で得られた繊維状酸化アルミニウムとポリエチレンテレフタレートの組成物を使用して、温度270℃で溶融後、0.3mmの孔径の吐出孔を有する紡糸口金より吐出した。この吐出糸条を22m/分の引取速度で引取った。さらに得られた糸条を、100℃で6倍に延伸して、13デニールのモノフィラメントを得た。得られたフィラメントの小角X線散乱像を図1に示す。さらにこの測定結果を元に、式(1)をプロットした結果を図2に示す。この図2より、繊維状酸化アルミニウムの平均長L=152nm、未配向因子 Bφ=8.6°と算出された。また、得られたモノフィラメントの強度は5.7g/デニール、弾性率は124g/デニールであった。
[比較例]
ηsp/c=0.75dL/gのポリエチレンテレフタレートを使用する以外は、実施例1と同様にして、溶融紡糸により得られた糸条を、100℃で5倍に延伸して、10デニールのモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの強度は4.1g/デニール、弾性率は111g/デニールであった。
図1は実施例1で得られたモノフィラメントの小角X線像である。 図2は実施例1で得られたモノフィラメントの小角X線像から得られる散乱ベクトルs及び方位角方向の半価幅Bobsを式(1)を利用してプロットした結果である。

Claims (3)

  1. (A)ポリエステル100重量部と、(B)一次粒子の平均繊維径が0.5〜7nmであり、アスペクト比が600〜5である繊維状無機充填物0.1〜4.5重量部とからなり、該繊維状無機充填物が下記式(1)から求められる平均散乱体長として、30〜300nmの平均繊維長を有し、かつ、下記式(1)から求められる未配向因子Bφが下記式(2)を満たすポリエステル繊維。
    Bobs = 1/(L・s)+ Bφ (1)
    Bφ < 15° (2)
    ここで、Lは散乱体の長さ、sは散乱ベクトル、Bobsは、各散乱ベクトルsにおける小角X線散乱強度の方位角分布の半価幅である。
  2. 繊維状無機充填物が、αアルミナ、γアルミナ、θアルミナ、およびベーマイトからなる群より選択される少なくとも1種の酸化アルミニウムである請求項1に記載のポリエステル繊維。
  3. ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(1,3−トリメチレンテレフタレート)、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート)、およびポリブチレンテレフタレートからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜2のいずれかに記載のポリエステル繊維。
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