JP2006214057A - ポリエステル系繊維およびその製造法 - Google Patents

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【課題】 ポリエステル系樹脂とフラーレン類とからなり、繊維中にフラーレン類をナノメートルオーダーで分散させた繊維を提供する。
【解決手段】 ポリエステル系樹脂100重量部とフラーレン類0.01〜20重量部とからなる繊維であって、繊維中にフラーレン類が平均粒径100nm以下で分散していることを特徴とするポリエステル系繊維。
【選択図】 なし

Description

ポリエステル系樹脂とフラーレン類とからなり、繊維中にフラーレン類がナノメートルオーダーで分散していることを特徴とする繊維、およびその製造方法に関する。
1990年にC60の大量合成法が確立されて以来、フラーレン類(本発明においてフラーレン類とは、フラーレン、フラーレン誘導体、フラーレン誘導体、およびフラーレンならびにフラーレン誘導体の混合物をいう。)に関する研究が精力的に展開されるとともに、フラーレン類の用途開発が望まれている。これら用途のうちでも、電気電子機器、自動車、建築資材、工業機械の部品など様々な製品へ応用される樹脂組成物への適用は、フラーレン類の用途として大きく期待される分野の一つである。
さらに近年、分散相の大きさがナノメートルオーダーであるナノコンポジットの研究が活発となっている。ナノコンポジットは、分散相がミクロンオーダーである場合と比較して、分散相が微細なため、分散相の占める体積が同じ場合、分散相の間の距離が極度に小さくなる。その結果、界面エネルギーが著しく上昇し、分散相間の相互作用が大きくなる(凝集し易くなる)ため、分散相を熱可塑性樹脂中にナノメートルオーダーで分散させたナノコンポジットを製造することは極めて困難であると考えられている。
熱可塑性樹脂との複合化の例として、フラーレンに代表される炭素クラスターを配合した結晶性熱可塑性樹脂組成物が開示されている(特許文献1参照)。記載によると、フラーレンを溶解したベンゼン溶液をポリブチレンテレフタレート樹脂に配合し、溶剤を除去後、押出機で溶融混練している。また、ポリエステル類とフラーレン類とを含む組成物および繊維が開示されている(特許文献2参照)。記載によると、フラーレンとモノマー成分とを溶媒を用いることなく混合し、混合物の粗い成分を濾過により除去した後、エステル交換反応、重縮合を行うことで樹脂組成物を作成し、溶融紡糸により繊維を得ている。しかしこれらの方法では、フラーレンを熱可塑性樹脂と溶融混練する、あるいはフラーレンをモノマー成分中に添加してフラーレンが溶解していない状態で重合反応を行うため、フラーレンを均一に分散させることは困難であると考えられる。そこで、フラーレンを凝集させることなく、ナノメートルオーダーで均一に分散させた樹脂組成物および繊維が求められている。
フラーレンを良好に分散させた樹脂組成物として、芳香族ポリアミド類とフラーレン類を含む組成物が開示されており、フラーレンとモノマー成分を有機溶媒に溶解させ、未溶解のフラーレンを濾過後、重合反応を行うことにより、フラーレンが良好に分散した芳香族ポリアミド樹脂組成物が得られることが記載されている(特許文献3参照)。また、水酸基やスルホン酸エステル基などの置換基を有するフラーレン誘導体を使用する事により、置換基を有するフラーレン粒子がナノレベルで分散した熱可塑性樹脂が開示されている(特許文献4参照)。
特開平10−310709号公報 特開平8−49116号公報 特開平7−278431号公報 特開2004−75933号公報
本発明の目的は、ポリエステル系樹脂とフラーレン類とからなり、繊維中にフラーレン類をナノメートルオーダーで分散させた繊維を提供することである。また本発明の目的は、修飾などの煩雑な操作無しにフラーレン類をナノメートルオーダーで分散させたポリエステル系繊維の製造方法を提供することである。
本発明者らは、フラーレン類溶液を用いてポリエステル系樹脂組成物を製造することにより、フラーレン類をナノメートルオーダーで分散させたポリエステル系樹脂組成物を作成し、さらに前記組成物を溶融紡糸することにより繊維が得られることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、
(1)ポリエステル系樹脂100重量部とフラーレン類0.01〜20重量部とからなる繊維であって、繊維中にフラーレン類が平均粒径100nm以下で分散していることを特徴とするポリエステル系繊維。
(2)フラーレン類がフラーレンである事を特徴とする上記に記載のポリエステル系繊維。
(3)ポリエステル系樹脂がポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、およびポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる群から選択される少なくとも1種類の樹脂である事を特徴とする上記に記載のポリエステル系繊維。
(4)A)フラーレン類を溶媒に0.1wt%〜15wt%溶解させフラーレン類溶液を作成する工程、B)該フラーレン類溶液とポリエステル系樹脂とを混合して1〜80%濃度のポリマードープ溶液を作成する工程、C)該ポリマードープ溶液から溶媒を除去して樹脂組成物を製造する工程、D)該樹脂組成物を溶融紡糸して繊維を作成する工程からなる上記に記載のポリエステル系繊維の製造法。
(5)A’)フラーレン類を溶媒に0.1wt%〜15wt%溶解させフラーレン類溶液を作成する工程、B’)該フラーレン類溶液とポリエステルの原料またはそのオリゴマーとを混合し、C’)重合反応を行い樹脂組成物を製造する工程、D’)該樹脂組成物を溶融紡糸して繊維を作成する工程からなる上記に記載のポリエステル系繊維の製造法。
(6)該溶媒は、フラーレン類の溶解度が5.0mg/ml以上であることを特徴とする上記に記載のポリエステル系繊維の製造法。
(7)溶媒はナフタレン誘導体である事を特徴とする上記に記載のポリエステル系繊維の製造法、
により構成される。
本発明により、フラーレン類を平均粒径100nm以下で分散させた、力学特性や耐熱性に優れたポリエステル系繊維を提供することができる。特にフラーレンを添加することの効果として、引張強度と弾性率の向上が見られる。さらに本発明で得られる繊維は、高次加工、各種充填剤の添加が可能であり、多くの産業資材および衣料用の繊維として好適に使用することができる。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるフラーレン類としては、フラーレン、フラーレン誘導体、およびフラーレンならびにフラーレン誘導体の混合物を挙げることができる。フラーレンとは球殻状または楕円状の炭素分子であり、本発明の目的を満たす限り限定されないが、C60、C70、C74、C76、C78、C80、C82、C84、C86、C88、C90、C92、C94、C96、C98、C100等又はこれら化合物の2量体、3量体等を挙げることができる。
本発明において、これらフラーレンの中でも好ましいのは、C60、C70、又はこれらの2量体、3量体である。C60、C70は工業的に得やすく、また樹脂に対する分散性にすぐれているので特に好ましい。また、これらフラーレンの複数を併用してもよく、このように複数を併用する場合は、C60およびC70を併用することがさらに好ましい。
また、本発明に用いられるフラーレン誘導体とは、フラーレンを構成する少なくとも1つの炭素に有機化合物の一部分を形成する原子団や無機元素からなる原子団が結合した化合物をいう。フラーレン誘導体を得るために用いるフラーレンとしては、本発明の目的を満たす限り限定されず、上記に具体的に示したフラーレンのいずれを用いてもよい。フラーレン誘導体としては、例えば、水素化フラーレン、酸化フラーレン、水酸化フラーレン、ハロゲン(F、Cl、Br、I)化フラーレン等を用いることができる。さらにはカルボキシル基、アルキル基、アミノ基などを含んでいても良い。
なお、本発明においては、これらフラーレン誘導体の複数種類を併用しても構わない。
フラーレンは、例えば、抵抗加熱法、レーザー加熱法、アーク放電法、燃焼法などにより得られたフラーレン含有スートから抽出分離することによって得られる。この際、必ずしも完全に分離する必要はなく、性能を損なわない範囲でフラーレンの含有率を調整することができる。また、フラーレン誘導体は、フラーレンに対して従来公知の方法を用いて合成することができる。例えば、求核剤との反応(求核付加反応)、環化付加反応、光付加(環化)反応、酸化反応等を利用して、所望のフラーレン誘導体を得ることができる。
フラーレン類がフラーレンである事が、フラーレンにとくに修飾などの煩雑な処理を行わなくてもフラーレン粒子がナノレベルで分散したポリエステル系繊維が得られるという本発明の特徴を生かす上で好ましい。
本発明における繊維としては、ポリエステル系樹脂100重量部に対して、フラーレン類が、0.01〜20重量部の範囲内で含有されるものである。特に、0.1重量部以上が好ましく、より好ましくは0.5重量部以上であることが好ましい。一方、ポリエステル系樹脂100重量部に対するフラーレン類の含有量の上限は、上述したように20重量部以下であり、15重量部以下であることが好ましく、10重量部以下であることがより好ましい。上記範囲内とすることにより、フラーレン類をポリエステル系繊維中に均一に分散させることが可能となる。また、フラーレン類が過度に多い場合は、フラーレン類の凝集が起こり易くなり得られる繊維の機械的物性が著しく減少するなどの恐れがあり好ましくない。
本発明におけるポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸(あるいはそのエステル形成性誘導体)とジオール(あるいはそのエステル形成性誘導体)および/またはヒドロキシカルボン酸(あるいはそのエステル形成性誘導体)とを主原料として、縮合反応することにより得られるものが挙げられる。
上記ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。また、ジオール成分としては炭素数2〜20の脂肪族グリコール、すなわち、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなど、分子量400〜6000の長鎖グリコール、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。これらの重合体ないしは共重合体の例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ビスフェノールA(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレンナフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリプロピレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレン(テレフタレート/イソフタレート)ポリ(シクロヘキサンジメチレン/エチレン)テレフタレート、ポリ(シクロヘキサンジメチレン/エチレン)(テレフタレート/イソフタレート)などが挙げられる。
その他、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、エチレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなるサーモトロピック液晶性を示す熱可塑性ポリエステル樹脂を使用することもできる。
ここでいう芳香族オキシカルボニル単位としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4´−ヒドロキシジフェニル−4−カルボン酸から生成した構造単位を、芳香族ジオキシ単位としては、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノンから生成した構造単位を、芳香族ジカルボニル単位としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位を、芳香族イミノオキシ単位としては、例えば、4−アミノフェノールから生成した構造単位を例示することができる。具体例としては、p−オキシ安息香酸/ポリエチレンテレフタレート、p−オキシ安息香酸/6−オキシ−2−ナフトエ酸などのサーモトロピック液晶性ポリエステルが挙げられる。
この中で溶融紡糸して繊維を作成するには、固有粘度(フェノール/1,1’,2,2’−テトラクロロエタン=60/40(重量比)溶媒中、濃度1.2g/dL、温度35℃で測定)0.5以上のポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが特に好ましい。なかでもポリエチレン−2,6−ナフタレートは、本発明により、より優れた力学特性を発揮できる。
本発明に用いられるポリエステル系樹脂組成物の製造方法としては以下に示す方法で作成可能である。
1)、A)フラーレン類を溶媒に0.1wt%〜15wt%溶解させフラーレン類溶液を作成する工程、B)該フラーレン類溶液とポリエステル系樹脂とを混合して1%〜80%濃度のポリマードープ溶液を作成する工程、C)該ポリマードープ溶液から溶媒を除去して樹脂組成物を製造する工程からなるポリエステル系樹脂組成物を製造する方法。
2)、A’)フラーレン類を溶媒に0.1wt%〜15wt%溶解させフラーレン類溶液を作成する工程、B’)該フラーレン類溶液とポリエステルの原料またはそのオリゴマーとを混合し、C’)重合反応を行い樹脂組成物を製造する工程からなるポリエステル系樹脂組成物を製造する方法。
ここでポリエステルの原料とは、主としてジカルボン酸(あるいはそのエステル形成性誘導体)とジオール(あるいはそのエステル形成性誘導体)および/またはヒドロキシカルボン酸(あるいはそのエステル形成性誘導体)であり、オリゴマーとはジカルボン酸またはその誘導体と、ジオールをエステル交換させて得られるものである。好ましい化合物は前記のとおりである。
フラーレン類溶液の濃度は0.1wt%〜15wt%が好ましい。0.1wt%以下であると大量に溶媒を使用し効率的でない。逆に15wt%以上であるとフラーレン類が凝集して好ましくない。より好ましくは0.3wt%〜7wt%、もっとも好ましくは0.5wt%〜3wt%の範囲である。
またポリマードープ溶液の濃度は1〜80%が好ましい。1%以下であると多量に溶媒を使用し好ましくない。80%以上の高濃度ドープではフラーレン類が凝集して好ましくない。好ましくは20%〜60%、より好ましくは30%〜50%の範囲である。
また該溶媒の、フラーレン類の溶解度は5.0mg/ml以上である事が好ましい。例えばフラーレン類の代表的なC60の溶解度は「フラーレンの化学と物理」(名古屋大学出版会)に記載されており、デカリン、テトラクロロエタン、キシレン類、トリメチルベンゼン類、テトラメチルベンゼン類、テトラリン、ジブロモベンゼン類、アニソール、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン類、トリクロロベンゼン類、ナフタレン類、ピリジン、2−メチルチオフェン、二硫化炭素などが5.0mg/mlの溶解度を有する。この中でもナフタレン類は最も溶解度が高く好ましい。ナフタレン類の例としては例えば、ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、ジメチルナフタレンなどのアルキルナフタレン類、1−フェニルナフタレン、1−クロロナフタレン、1−ブロモ−2−メチルナフタレンなどのハロゲン化ナフタレン類、ジアミノナフタレン、2,6−ジメチルナフタレンジカルボン酸エステルなどのエステル類が挙げられる。実際は樹脂の熱分解温度などを勘案して決めるが、沸点が350℃以上を超えるような溶媒の場合には樹脂の熱分解の進行と同時に、溶媒が樹脂中に残留する可能性がある。溶媒が樹脂中に残留する場合には可塑効果により、樹脂を溶融紡糸して得られた繊維の機械的特性、熱的特性などが低下して好ましくない。好ましくは沸点が320℃未満、より好ましくは300℃未満である。最も好ましくはナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、ジメチルナフタレンである。
また高次のフラーレン類(C60またはC70以外の)を含有する場合には溶解性が低下し、このままで使用すると樹脂および繊維中で凝集する可能性がある。この様な場合には予め溶媒で溶解性の乏しいフラーレン類を予め除去して使用する事が好ましい。
さらにこのようにして作成されたポリエステル系樹脂組成物にはさらに分散性を高める目的で、溶融混練処理を行ってもよい。混練方法は特に特定はしないが、一軸ルーダー、ニ軸のルーダーおよびニーダーを使用して行う事ができる。溶融混練処理温度は、樹脂成分が溶融する温度より5℃〜100℃高い温度であり、特に好ましくは樹脂の融点より10℃〜60℃高い温度である。高温過ぎると樹脂の分解や異常反応を生じ好ましくない。また、混練処理時間は少なくとも30秒以上15分以内、好ましくは1〜10分である。
また本発明に用いられるポリエステル系樹脂組成物は、その成形物、物性を損なわない範囲で各種充填剤の添加は可能であり、機械的強度、耐熱性、電気的性質の性能に優れた繊維を得るためには配合することが好ましい。これは、目的に応じて繊維状、粒子状、板状または中空状の充填剤が用いられる。繊維状充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維状物などの無機質繊維状物が挙げられる。特に代表的な繊維状充填剤はガラス繊維、またはカーボン繊維である。なお、ポリアミド、フッ素樹脂、アクリル樹脂などの高融点有機質繊維状物質も使用することができる。粒子状充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、硅藻土、ウォラストナイトの如き硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫酸塩、その他炭化硅素、窒化硅素、各種金属粉末等が挙げられる。粒子状充填剤としては、マイカ、ガラスフレーク、各種金属箔等が挙げられる。また、中空状充填剤としては、シラスバルーン、金属バルーン、ガラスバルーン等が挙げられる。これらの充填剤は、有機シラン、有機ボラン、有機チタネート等を使用して表面処理を施すことが好ましい。これらの無機充填剤は1種または2種以上併用することができる。繊維状充填剤、特にガラス繊維またはカーボン繊維と粒子状または板状充填剤は特に機械的強度と寸法精度、電気的性質等を兼備する上で好ましい組み合わせである。尚、本発明の目的を逸脱しない範囲で、他の熱可塑性樹脂、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等の熱可塑性樹脂、或いは難燃剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、滑剤、離型剤、発泡剤、架橋剤、着色剤等の添加剤を加えても差し支えない。
本発明のポリエステル系樹脂組成物から得られる繊維の製造に際して、紡糸―延伸の工程については特に制限はなく、通常のポリエステル繊維を製造する従来公知の工程で製造することができ、例えば紡糸後、未延伸糸を巻き取り別途延伸する方法、未延伸糸をいったん巻き取ることなく連続して延伸を行う方法などが採用される。ここで、紡糸した未延伸糸を延伸する際に、トータル延伸倍率が5〜15倍の範囲内となるように設定すれば、最終的に得られる繊維の繊維強度と引張強度とをさらに高い水準にて両立させることができるとともに、延伸工程における断糸が少なくなり、生産性がさらに向上する。また延伸工程は一段延伸のみでも、二段以上の延伸段階を経てもよい。
また、紡糸時に使用する口金の形状については制限はなく、円形、異形、中実、中空等のいずれも採用することができる。
本発明のフラーレン含有ポリエステル系繊維の単繊維繊度は特に制限はないが、高い引張強度を発現させるために0.5〜20Detexであることが好ましく、さらに好ましくは5De〜20Detexである。
本発明のポリエステル系繊維においては、フラーレン類の平均粒径が100nm以下であることを特徴とする。好ましくは80nm以下、より好ましくは10nm以下、さらに好ましくは3nm以下でポリエステル系繊維中に分散していることを特徴とする。また本発明におけるポリエステル系繊維中のフラーレン類の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定可能で、本発明では30点測定してその平均を計算する方法により求めることができる。本発明のポリエステル系繊維は、フラーレン類がナノメートルオーダーで分散しており、多数のフラーレン類の粒子が凝集の少ない状態でポリエステル系繊維中に均一に存在している。
本発明のフラーレン類が平均粒径100nm以下で分散しているポリエステル系繊維は、優れた力学特性、耐熱性を備えており、特にフラーレンを添加する効果として、引張強度と弾性率の向上が見られる。さらに本発明で得られる繊維は、高次加工、各種充填剤の添加が可能であり、多くの産業資材および衣料用の繊維として好適に使用することができる。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。なおフラーレンはC60をアルドリッチ社製のものを使用した。
1)電子顕微鏡による平均粒径の算出
透過型電子顕微鏡(TEM)観察により30点測定してその平均を計算することにより求めた。
2)固有粘度
ポリエステル材料をフェノール/1,1’,2,2’−テトラクロロエタン=60/40(重量比)溶媒に溶解し、濃度1.2g/dL、温度35℃で測定を行った。
3)熱特性
TAs Instrument製DSC2920を用いて窒素雰囲気下20℃/minで350℃まで加熱し測定を行った。また10wt%減量温度に関しては、理学電機製TG−DTA8120を用いて、昇温速度を10℃/分、ガス流量を空気100mL/分のもと30℃から800℃まで加熱して測定を行った。
4)テンシロン測定
オリエンテック製RTC1225Aを用いて初期試料長25mm、試験速度10mm/minで引張試験を15回行い、その平均値を用いた。
[実施例1]
2−メチルナフタレン:100重量部(C60濃度は0.3wt%)とC60:0.31重量部(ポリマー重量に対して0.5wt%)をよく攪拌した。温度は約200℃とした。次に固有粘度0.78dL/gのポリエチレン−2,6−ナフタレート(70℃で6時間乾燥)63重量部を少量ずつ加えた。約1時間〜2時間攪拌後、温度を徐々に上昇させて行き最終的に温度290℃に上昇させた所で、減圧を開始し2−メチルナフタレンを除去した。得られた樹脂組成物は美しいバイオレットであった。このようにして作成した樹脂組成物のDSC測定を行ったところ、α結晶の融点262℃が観察された。120℃で5時間乾燥した上記樹脂組成物を、通常のエクストルーダー型モノホール紡糸機で300℃にて溶融した。1時間脱泡した後、口径0.3mmの口金から紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を140℃で10倍に一段延伸し、フラーレン含有ポリエチレンナフタレート繊維を製造した。図1にTEM結果を示す。100nmより大きいフラーレンの凝集物は観察できず、フラーレンがナノ分散していることがわかる。得られた繊維の物性の測定結果を表1に示す。
[実施例2]
2−メチルナフタレン:100重量部(C60濃度は0.3wt%)とC60:0.31重量部(ポリマー重量に対して0.5wt%)をよく攪拌した。温度は約200℃とした。次に固有粘度0.80dL/gのポリエチレンテレフタレート(70℃で6時間乾燥)63重量部を少量ずつ加えた。約1時間〜2時間攪拌後、温度を徐々に上昇させて行き最終的に温度290℃に上昇させた所で、減圧を開始し2−メチルナフタレンを除去し、ポリエステル樹脂組成物を得た。120℃で5時間乾燥した上記樹脂組成物を、通常のエクストルーダー型モノホール紡糸機で280℃にて溶融した。1時間脱泡した後、口径0.3mmの口金から紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を100℃で7.5倍に一段延伸し、フラーレン含有ポリエチレンテレフタレート繊維を製造した。得られた繊維の物性の測定結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、フラーレン含有ポリエチレンナフタレート樹脂に代えて、フラーレン含有しないポリエチレンナフタレート樹脂を用いて溶融紡糸し、延伸糸を得た。得られた繊維の物性の測定結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例2において、フラーレン含有ポリエチレンテレフタレート樹脂に代えて、フラーレン含有しないポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて溶融紡糸し、延伸糸を得た。得られた繊維の物性の測定結果を表1に示す。
[比較例3]
2,6−ジメチルナフタレンカルボキシレート100重量部、エチレングリコール52.4重量部、触媒として酢酸マンガン四水和物0.0301重量部を仕込み、窒素雰囲気下、170℃から230℃で、エステル交換反応を行い、ビスヒドロキシエチルテレフタレートを得た。この生成物とフラーレン(アルドリッチ製)0.500重量部、三酸化アンチモン0.0239重量部、および燐酸トリメチル0.0229重量部を混合し、減圧下(<0.5torr)で250℃から290℃まで昇温して、重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂組成物を得た。樹脂組成物は暗茶色であった。この組成物のTEM写真を図2に示す。溶媒を用いることなく作成したこの樹脂組成物には、図2のように大きな凝集物が見られ、樹脂中に分散しているフラーレンの平均粒径は3×10nmであった。
以下表1に実施例1〜2、および比較例1〜2の結果をまとめた。
Figure 2006214057
実施例1で得られた樹脂組成物のTEM写真図である。 比較例3で得られた樹脂組成物のTEM写真図である。

Claims (7)

  1. ポリエステル系樹脂100重量部とフラーレン類0.01〜20重量部とからなる繊維であって、繊維中にフラーレン類が平均粒径100nm以下で分散していることを特徴とするポリエステル系繊維。
  2. フラーレン類がフラーレンである事を特徴とする請求項1に記載のポリエステル系繊維。
  3. ポリエステル系樹脂がポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる群から選択される少なくとも1種類の樹脂である事を特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のポリエステル系繊維。
  4. A)フラーレン類を溶媒に0.1wt%〜15wt%溶解させフラーレン類溶液を作成する工程、B)該フラーレン類溶液とポリエステル系樹脂とを混合して1〜80%濃度のポリマードープ溶液を作成する工程、C)該ポリマードープ溶液から溶媒を除去して樹脂組成物を製造する工程、D)該樹脂組成物を溶融紡糸して繊維を作成する工程からなる請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル系繊維の製造法。
  5. A’)フラーレン類を溶媒に0.1wt%〜15wt%溶解させフラーレン類溶液を作成する工程、B’)該フラーレン類溶液とポリエステルの原料またはそのオリゴマーとを混合し、C’)重合反応を行い樹脂組成物を製造する工程、D’)該樹脂組成物を溶融紡糸して繊維を作成する工程からなる請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル系繊維の製造法。
  6. 該溶媒は、フラーレン類の溶解度が5.0mg/ml以上であることを特徴とする請求項4〜5のいずれかに記載のポリエステル系繊維の製造法。
  7. 溶媒はナフタレン誘導体である事を特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のポリエステル系繊維の製造法。
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