JP2005232250A - ポリエステル組成物、フィルム、粒子およびその製造方法 - Google Patents

ポリエステル組成物、フィルム、粒子およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 簡便な工程で製造できる、粒子が均一に分散した金属粒子含有ポリエステル組成物、フィルム、粒子およびその製造法を提供する。
【解決手段】 金属粒子と、窒素および/または硫黄を構成元素とする化合物とを含むポリエステル組成物であって、金属粒子を構成する金属元素のポリエステル組成物に対する含有量をM(ミリモル/kg)、窒素元素のポリエステル組成物に対する含有量をN(ミリモル/kg)、硫黄元素のポリエステル組成物に対する含有量をS(ミリモル/kg)としたとき、M、NおよびSが次式を満足しているポリエステル組成物とする。
1≦M≦300
0.01≦(N+S)/M≦5
【選択図】なし

Description

本発明はポリエステル組成物およびその製造方法に関するものであり、簡便な工程で得られる金属粒子含有ポリエステルに関するものであり、含有する粒子が微細かつ分散性が良好で、成型品とした場合には高い機械的強度、耐熱性が期待されるポリエステル組成物、フィルム、粒子およびその製造方法に関するものである。
ポリマー組成物においては、異種材料との複合体(コンポジット)は、実際の産業への適用において重要な位置を占める。ポリエステルにおいても例外ではなく、これまでも種々の複合体が発明・提供されており、なかでも、ポリエステルに各種粒子を含有させることは、各種産業用途にポリエステルを展開するにあたって非常に重要な技術である。
ポリエステルフィルムにおける例を挙げれば、粒子の添加は不可欠といってよい。なぜならば、ポリエステルフィルムは何も添加しない場合は表面に凹凸がなく、フィルム同士の摩擦が非常に高く、接触した場合には互いに滑らないため、粒子を含有させて表面に突起を形成することが重要だからである。さらに、磁気記録媒体などの用途、特にデータストレージ等の、近年発達しているデジタル記録方式の磁気記録媒体に用いるためには、粗大な突起の存在や、粒子の凝集などによる分散性不良はデータの欠落(ドロップアウト)を引き起こすため、できるだけ微細な粒子を均一に分散して、微細かつ高さ・分布の揃った突起を形成する必要がある。
また、近年では表面突起などを形成する目的に用いられるような、マイクロメートルオーダーの粒子ではなく、より微細な粒子が注目され始めている。こうした微細な粒子のなかでも、特に100nm未満の粒子は一般にナノ粒子と呼ばれ、バルクとしての性質とは異なる特異性を示す。これは量子サイズ効果といわれており、非線形光学特性、磁気特性、電気特性などにおいて特別な性質を持つようになる。こうした粒子をポリマー中に分散させることができれば、その粒子のもつ機能を樹脂に付与することができる。
しかしながら、粒子の持つ機能を十分ポリマーコンポジットとして発現させるためには、高濃度かつ均一に分散させる必要があるが、ナノ粒子は、その比表面積の圧倒的な大きさから、媒体との相互作用の影響を受けやすく、高濃度かつ均一分散させることが非常に困難である。
粒子をポリエステルに添加して粒子含有ポリエステル組成物を得る方法は大きく分けて2通りある。すなわち、二軸押出機などにより、溶融ポリエステルと混練して粒子含有ポリエステル組成物を得る方法と、ポリエステル製造工程において、ポリエステル原料あるいはポリエステル低分子量体に粒子を混練し、重合度をあげて粒子含有ポリエステル組成物を得る方法である。
いずれの方法も、あらかじめポリエステルの反応系外において得られた粒子を添加するのが一般的な方法である。つまり、(A)粒子の原料を調製する工程、(B)これを用いて粒子を製造する工程、(C)得られた粒子を溶媒などに均一分散してスラリー化する工程、さらに(D)ポリエステルあるいはポリエステル製造中間体に添加・分散する工程、という4つの工程が必要になる。いずれかの工程で変動・トラブルが起これば、最終製品である粒子品質が大きな影響を受ける。工程が多いということは、変動・トラブルの確率が増えるということであり、また、それぞれの工程の条件の組み合わせも複雑になることから制御も難しくなるため、工程は少ないことが好ましい。
また、反応系外において得られた粒子は、当然の事ながら、その粒子が添加されるポリマーマトリックスとは異なる環境の中で安定に合成されたものであるから、そのまま添加したのでは凝集のない、均一な分散は難しい。特に粒子径が小さくなればなるほど、比表面積は急速に増大していくため、粒子−ポリマー界面の相互作用の寄与は大きくなり、均一分散はより難しくなってくる。
そこで、粒子の均一分散を目的として、機械的分散、化学的分散など種々の方法が提案されてきた。こうしたものの代表的な技術は粒子の表面処理によりポリマーと粒子表面の親和性を高めることにより、分散性向上を図るものである。例えば、近年においては、特許文献1に、平均粒径0.1〜3.0μmの無機化合物粒子をポリエステルに対して0.1〜2.0質量%添加する際に、アルキルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩をポリエステルに対して10〜300ppm添加して粒子の分散性を向上させる技術が開示されており、また、特許文献2には、ポリエステルのカルボキシル末端基濃度を36eq/106g以上とすることにより、粒子とポリエステルとの親和性を向上させる技術などが提案されている。しかしながら、表面処理剤の添加を行う場合は、全ての粒子表面に均一に処理を行うことの難しさに加えて、粒子表面に固定化しなかった余剰の処理剤自身が異物となり、ポリマー全体の特性を悪化させるなどの問題があった。また、カルボキシル末端基の増加はポリエステルの熱特性・機械的特性を低下させるものであり、粒子の分散性が向上しても、フィルムとした場合に総合的には十分な特性が得られず好ましくない。また、二軸混練機やミルなどの各種混練機を使用することも考えられるが、粒子が小さくなればなるほど、このような機械的分散には自ずと限界がある。
さらに、表面活性が非常に低い金属粒子の場合には、ポリエステルとの親和性が低いため、そのまま添加したのでは分散性が極めて悪い。こうした観点から、特許文献3には、金属粒子が配合したポリエステルを製造する方法として、あらかじめグリコール類で溶解した金属錯体を配合して重合後、過熱還元して粒子配合ポリエステルを得る方法が開示されている。しかしながら、この方法では金属粒子の凝集が激しく、分散性を向上させるための方法もなんら開示されていない。
特開2002−20590号公報 特開2002−248726号公報 特開平10−298409号公報
本発明の解決すべき課題は、微細な粒子径をもち、かつ粒子の分散性が良好な金属粒子含有ポリエステル組成物を簡便な工程で製造する方法を提供することにある。また、もうひとつの課題は、ポリエステル合成反応場を利用して機能性金属粒子を合成することである。
上記課題を解決するための本発明は、金属粒子と、窒素および/または硫黄を構成元素とする化合物とを含むポリエステル組成物であって、金属粒子を構成する金属元素のポリエステル組成物に対する含有量をM(ミリモル/kg)、窒素元素のポリエステル組成物に対する含有量をN(ミリモル/kg)、硫黄元素のポリエステル組成物に対する含有量をS(ミリモル/kg)としたとき、M、NおよびSが次式を満足しているポリエステル組成物を特徴とする。
1≦M≦300
0.01≦(N+S)/M≦5
本発明により得られるポリエステル組成物は、以下に説明するように、従来のポリマー外部から粒子を添加する粒子含有ポリエステル組成物に比べて、簡便な工程で得られ、粒子の分散性が良好で、樹脂としては高い機械的強度、耐熱性が期待され、ポリエステル成型品一般、繊維、フィルム用途として好適である。また、こうして得られたポリマーを焼成して得られる金属粒子は、表面に炭素皮膜を形成するため、酸化を防ぐことができ、粒子の機能性が損なわれることを防止できる。
本発明のポリエステル組成物は、金属粒子と、窒素および/または硫黄を構成元素とする化合物とを含み、金属粒子を構成する金属元素のポリエステル組成物に対する含有量をM(ミリモル/kg)、窒素元素のポリエステル組成物に対する含有量をN(ミリモル/kg)、硫黄元素のポリエステル組成物に対する含有量をS(ミリモル/kg)としたとき、M、NおよびSが次式を満足している。
1≦M≦300
0.01≦(N+S)/M≦5
本発明のポリエステル組成物は、金属粒子を金属元素としてポリエステル組成物に対し1〜300ミリモル/kg含有しているが、好ましくは5〜200ミリモル、さらに好ましくは10〜100ミリモル/kgである。金属粒子量が金属元素として1ミリモル未満であると、ポリエステル組成物としての効果が十分に発現されない。金属粒子量が金属元素として300ミリモル/kgを超えると、ポリエステル組成物の耐熱性・機械的特性の低下が顕著になる。
(N+S)/Mの値は、0.05≦(N+S)/M≦4を満たしていることが好ましく、さらに0.1≦(N+S)/M≦3を満たしていることがより好ましい。
(N+S)/Mの値が0.01未満であると、十分な粒子の分散性が得られない。(N+S)/Mが5を超えると、ポリエステル組成物を得る際の反応性および物性が低下する。
金属粒子を構成する金属元素は、金、鉄、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウムおよびコバルトからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素であることが好ましい。本発明の金属粒子は、これらの中から選ばれる金属元素単独から構成されていてもよく、2種以上から構成されていても構わない。2種以上から構成される粒子を例示すると、鉄−白金粒子、ニッケル−パラジウム粒子、コバルト−パラジウム粒子などを挙げることができる。また、上記に例示した元素(単独または複数種)が含まれていれば、それ以外の別の任意の元素を含んでいてもよい。
また、窒素元素および/または硫黄元素が、ジカルボン酸化合物、ジオール化合物あるいはこれらの誘導体の構成元素として含まれていることが好ましく、ポリエステル組成物における共重合体として含まれていることも好ましい。窒素元素を含むジカルボン酸化合物としては、例えば、キノリン酸、ルチジン酸、イソシンコメロン酸、ジピコリン酸、シンコメロン酸、ジニコチン酸、2,6−ジメチル−3,5−ピリジンジカルボン酸、4−((アミノカルボチオニル)ヒドラゾノ)−1,4−ジヒドロ−2,6−ピリジンジカルボン酸、5−アミノイソフタル酸、1−ベンジル−1H−ピラロゾール−3,5−ジカルボン酸、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸、2,2’−ビピリジン−5,5’−ジカルボン酸、2,2’−ビキノリン−4,4’−ジカルボン酸、1−ブチル−2,5−ピロリジンジカルボン酸、あるいはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられ、耐熱性などの点からは、イソシンコメロン酸、ジニコチン酸あるいはこれらのエステル形成性誘導体が好ましい。窒素元素を含むジオール化合物としては、例えば、3−ジメチルアミノ−1,2−プロパンジオール、3−ジエチルアミノ−1,2−プロパンジオール、3−ジイソプロピルアミノ−1,2−プロパンジオール、2,2’−ビピリジン−3,3’−ジオール、2,4−ジヒドロキシピリミジン、4,6−ジヒドロキシ−2−メチルピリミジン、あるいはこれらのエステル形成性誘導体を挙げることができる。硫黄元素を含むジカルボン酸化合物としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、5,6−ジヒドロ−(1,4)ジチイン−2,3−ジカルボン酸、あるいはこれらのエステル形成性誘導体を挙げることができる。硫黄元素を含むジオール化合物としては、1,4−ジチアン−2,5−ジオール、3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオール、1,4−ジチオエリスリトール、5−メチル−4−(2−チアゾイルアゾ)レゾルシノールなどを挙げることができる。これらはポリエステル化合物に共重合されるので、一般的な分散剤とは異なって、ポリエステル組成物外にブリードアウトなどを起こしにくく、かつ金属粒子とポリエステル組成物との間に親和性の相互作用ももたらす。さらに、窒素と硫黄の両方の元素が含まれる化合物としては、例えば、4−((アミノカルボチオイル)ヒドラゾ)−1,4−ジヒドロ−2,6−ピリジンジカルボン酸、2,6−ジメチル−4−チオフェン−2−イル−1,4−2H−ピリジン−3,5−ジカルボン酸ジエチルエステルなどを用いることができる。
なお、これら化合物を共重合する場合の共重合量は、0.01≦(N+S)/M≦5を満たすように適宜調整すればよい。
本発明のポリエステル組成物に含有される金属粒子の平均一次粒子径は、0.5〜50nmであることが好ましく、より好ましくは1〜20nm、さらに好ましくは1〜10nmである。平均一次粒子径が0.5nm未満であると、たとえ粒子がいったん分散しても、成型工程などの段階で容易に凝集してしまうため、製品の品質安定性が著しく劣る場合がある。また、平均一次粒子径が50nmを超えると、微粒子特有の性質が発現されにくい。
本発明のポリエステル組成物の製造方法は、特に限定されるものではない。ひとつの方法は、あらかじめ合成された金属粒子を、場合によってはグリコール化合物などの溶媒でスラリー化し、窒素あるいは硫黄元素を含有するポリエステル組成物に、0.01≦(N+S)/M≦5を満たすように添加しても構わないし、あるいは窒素や硫黄元素を含有するポリエステル組成物を合成する任意の段階において添加して本発明のポリエステル組成物を得ることもできるが、金属粒子を、ポリエステル組成物の合成反応の任意の過程で、ポリエステル合成反応場において形成させる方法が好ましい。
金属粒子を、ポリエステル組成物の合成反応の任意の過程で、ポリエステル合成反応場において形成させる方法のなかでも、特に好ましい方法は、ポリエステル組成物を合成する任意の過程で、金属塩化合物を反応場中に添加して金属粒子を形成させる方法である。用いることができる金属塩化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば金化合物としては塩化金酸(III)、ステアリルトリメチルアンムニウム塩化金(III)、鉄化合物としては、鉄(III)アセチルアセトナート、酢酸鉄、シュウ酸鉄、クエン酸鉄(III)、塩化鉄、鉄(III)ベンゾイルアセトナート、乳酸鉄、フェロセン(II)、銀化合物としては酢酸銀、銀アセチルアセトナート、安息香酸銀、シュウ酸銀、ステアリルトリメチルアンモニウムシアン化銀、銅化合物としては銅アセチルアセトナート、酢酸銅、安息香酸銅、オレイン酸銅、クエン酸銅、ステアリン酸銅、シクロヘキサン酪酸銅、白金化合物としては白金アセチルアセトナート、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロ白金(II)、ビス(アセトニトリル)ジクロロ白金(II)、ニッケル化合物としてはニッケル(II)アセチルアセトナート、酢酸ニッケル、安息香酸ニッケル、ジシクロペンタジエンニッケル、ステアリン酸ニッケル、パラジウム化合物としてはパラジウムアセチルアセトナート、酢酸パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、コバルト化合物としてはコバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、酢酸コバルト、ステアリン酸コバルト、コバルトセンなどを挙げることができる。これらの金属塩化合物は、直接反応場に添加してもよく、また、グリコールなどの溶媒にあらかじめ分散・溶解させて添加してもよい。
また、本発明のポリエステル組成物は、金属塩化合物をベント付二軸押出機中でポリエステル組成物と混練し、金属粒子を形成させて得てもよい。用いることができる金属塩化合物はポリエステル合成反応場において粒子を形成させる場合と同様である。添加方法は、これら金属塩化合物を粉体フィーダーなどで二軸押出し機に供給・混練してもよいが、グリコールなどの溶媒にあらかじめ分散・溶解させて二軸押出し機に供給・混練する方法がより好ましい。
ポリエステル組成物を構成するポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどを挙げることができる。また、他の共重合成分を用いてもよい。用いることができる共重合成分としては、ジカルボン酸成分としてはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸など、あるいはこれらのアルキルエステルなどエステル形成性誘導体を挙げることができる。また、ジオール成分としてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの各種脂肪族あるいは脂環族化合物を用いることができる。
以下に本発明のポリエステル組成物の製造方法の例を、ポリエステル樹脂としてポリエチレンテレフタレートを主成分とする場合について述べる。
たとえば、あらかじめ合成された金属粒子を用いる場合は、以下の方法を用いることができる。
通常のポリエステルの製造方法を以下に述べると、上記に挙げたジカルボン酸成分あるいはそのエステル形成性誘導体とジオール成分を、精留塔と攪拌機を備えた反応容器中で混合し、200℃〜250℃で攪拌しながら縮合物を留去してオリゴマーを合成し、これを攪拌しながら、目的とするポリエステル組成物の融点〜300℃の範囲の温度に昇温させて、徐々に減圧して縮合物を留去して、所定の目標重合度に達したら反応物を吐出し、冷却水中で冷却してポリエステル組成物を得る。
本発明のポリエステル組成物を製造する方法においては、さらに上記の製造工程の任意の工程において、さらに0.01≦(N+S)/M≦5を満たすように窒素元素あるいは硫黄元素を含有するジカルボン酸成分あるいはジオール成分を添加する。
本発明のポリエステル組成物を製造する方法は、上記に述べたような製造方法に基づいて得られたポリエステル組成物と、あらかじめ別途合成された金属粒子を、上記したポリエステル製造方法の任意の工程において添加・混練して得てもよいし、ベント付二軸押出機に供給しながら混練して得ても構わないが、ポリエステル組成物の製造工程において、金属粒子を形成する金属塩化合物を何らかの形態で添加し、ポリエステル製造工程において粒子を形成させることが好ましい。
これら金属粒子を形成する金属塩化合物を製造工程に添加する態様としては、これら化合物を直接添加してももちろん構わないが、ポリエステル組成物を形成するジオール成分から選ばれる少なくともひとつの溶媒に分散あるいは溶解してから添加することが好ましい。すなわち、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであればエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレートであればブタンジオール、これらの共重合体であればエチレングリコールかブタンジオールのいずれかあるいはこれらの混合溶媒に金属塩化合物(粒子形成性化合物)が含有されている状態で添加されることが好ましい。金属塩化合物の溶媒に対する濃度は、溶解度の許す限り高いほうが、得られるポリエステル組成物中の粒子濃度を高くすることができるので好ましい。
本発明のポリエステル組成物の他の製造方法の一例を、マトリックスとしてポリエチレンテレフタレートを用いる場合について下記する。
まずジメチルテレフタレートとエチレングリコールを、精留塔を備えた反応容器中に仕込んで溶融させ、ここに触媒化合物を添加する。
用いることのできる触媒化合物としては、種々のものを用いることができ、酢酸カルシウム、酢酸マンガン、酢酸マグネシウム、酢酸コバルトあるいはこれらの水和物、テトラエトキシドチタン、テトラブトキシドチタンなどチタンアルコキシドなどが挙げられる。
また、重合反応を促進するためには、重合活性を持つ触媒化合物を添加することが好ましく、例えば、3酸化2アンチモン、2酸化ゲルマニウム、チタンアルコキシド化合物、その他複合金属化合物などがあげられるが、酸化ゲルマニウムが粗大異物・粒子を形成しない点から好ましい。
これらを添加した後、攪拌しながら220〜250℃まで昇温してメタノールを留去せしめ、低重合体を得る。
本発明では、この低重合体を得る過程において金属塩化合物を添加することが好ましく、より好ましくは、低重合体を得る過程の後半以降において添加する。
この過程の中において、安定剤としてリン化合物を添加することができる。リン化合物としては、リン酸、亜リン酸、リン酸トリメチル、ジメチルフェニルホスフィン酸など各種リン化合物を挙げることができる。この後、反応系内を徐々に減圧しつつ270〜300℃までさらに昇温して、所定の重合度に達した後反応器からポリマー組成物を抜き出す。
また、本発明のポリエステル組成物は、その製造工程あるいは成型時の溶融押し出し過程などにおいて、粒子の分散性を向上させたり、ポリマーの耐熱性その他特性を向上させたりする目的で、表面処理剤、界面活性剤、ヒンダードフェノール化合物等の分解防止剤ほか各種添加物を添加しても構わない。
こうして得られた本発明のポリエステル組成物は、たとえばフィルムに成型して用いる場合は、種々の方法により無延伸あるいは一軸延伸、二軸延伸フィルムに成型することができる。
代表的な二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法について下記する。まず、100〜200℃で乾燥したポリエステル組成物を、T型ダイを備えた一軸あるいは二軸押出機に供給し、回転するキャスティングドラム上でT型ダイから押し出した溶融フィルムを冷却・固化し未延伸シートを得る。この未延伸シートを、一部の加熱ロールを含む、前段部と後段部で回転速度の違う延伸ロールにより加熱しながら縦延伸し、さらにテンターで加熱しながら横延伸を行い、二軸延伸ポリエステルフィルムを得ることができる。もちろん、同時二軸延伸により二軸延伸フィルムを得ることもできる。
本発明のポリエステル組成物を単独で用いてフィルムあるいはその他成型品としても構わないし、他のポリエステルと適宜ブレンド・溶融混練して押し出してももちろん構わない。また、本発明のポリエステル組成物を少なくとも1層に含む積層フィルムとしても良い。
また、こうして得られたポリエステル組成物に含有される粒子が単独で有用であったり、他用途に転用できる場合などは、ポリエステル組成物から粒子を分離して用いることも可能である。これら粒子(機能性粒子)の中には、数百℃〜1000℃以上の温度で焼成・結晶構造を転移させることにより機能が発現するものが多いが、ポリエステルの合成温度の範囲内では転移させることができない。よって、本発明のポリエステル組成物に含有される粒子がそのような粒子である場合には、還元雰囲気下、500℃〜2,000℃の範囲内で焼成することによりポリエステルをカーボン化せしめ、目的の粒子を取り出すことができる。金属粒子の場合、表面が酸化を受けやすく、特に粒径の小さい粒子の場合には比表面積が大きいため、表面の酸化による化学変化が粒子そのものの性質に大きな影響をもたらしうる。しかしながら、上記の方法により得られた金属粒子は、オリゴマーあるいはポリマーマトリックス中で合成されて得られるため、焼成後も粒子表面にカーボンの皮膜が残るため、表面酸化を防止するとともに、再凝集を防止する効果もある。一般には、このような金属粒子は有機溶媒中において液相法で合成されるか、気相法で合成されるが、気相法では表面処理が難しく、液相法でも、表面処理剤の使用は不可欠な上、有機溶媒の場合は、焼成時にカーボン化する前に揮発してしまうため表面被覆効果は小さい。
本発明のポリエステル組成物は、粒子に対して特別な処理を施すことなく、簡便なプロセスで得られる、微細な粒子を含有したポリエステル組成物であり、フィルムとした場合には、機械的強度などに優れ磁気記録媒体などのベースフィルムとして好適である。また、本発明のポリエステル組成物を焼成して得られた粒子は、機能性を持ち、例えば他のフィルムに添加して、磁気記録媒体として非常に有用なフィルムを得ることができるものである。
以下に実施例を示す。なお、各物性は下記の方法で測定した。
(1)ポリエステル中の粒子の平均一次粒子径および均一分散性
超薄切片試料(切片厚み100nm)を作成し、透過型電子顕微鏡 H−7100FA型(日立製作所(株)製)を用いて、加速電圧100kVで観察した像から平均一次粒子径および均一分散性を判断した。
平均一次粒子径については、100万倍の観察写真について、100個の一次粒子の最大径を測定し、有効数字一桁の平均値として求めた。
均一分散性については、1万倍のTEM観察像において、15cm×15cm(実像で15μm×15μm)の視野を観察して、一次粒子20個以上からなる凝集体、あるいは最大径20nm以上の凝集粒子が1個未満のものは○、1個以上のものは×とした。また、最大径200nm以上の粗大凝集が10視野のうち5視野以上に含まれる場合も×とした。
(2)フィルムの機械強度測定
島津製作所(株)製万能試験機AG−ISを用いて、JIS K−7127(ISO 527−3)に基づき、試験片幅10mm、試験長50mm、引っ張り速度300mm/分、標線間距離50mmの条件でヤング率を測定した。
(3)M、N、Sの定量
M、N、Sについては、添加量等が判明しており、それらが組成物やフィルムにおいてそのまま保存される場合は、その添加量に基づきM、N、Sを算出した。また、分析により求める場合は、ICP発光分光分析法や減圧化学発光法を用いて測定することができる。例えば、FeやPt、PdなどはICP発光分光分析法により、窒素や硫黄については酸化分解後、減圧化学発光法により定量することができる。
(実施例1)
白金アセチルアセトナート(PtAc)(和光純薬(株)製)1重量部を300重量部のエチレングリコールに100℃で攪拌しながら溶解して粒子前駆体溶液を調製した。テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール64重量部、分散剤としてイソシンコメロン酸(ICCA)(Acros社製)0.7重量部を、精留塔および全縮器を備えた反応容器中150℃で溶融し、酢酸マグネシウム8水和物を0.08重量部添加した。ここに、先に調整した粒子前駆体溶液を全て加えた後、250℃まで徐々に昇温させながら、メタノールおよび余剰のエチレングリコールを留去してポリエチレンテレフタレートのオリゴマーを得た。ここへリン酸トリメチルを0.03重量部、酸化ゲルマニウムを0.02重量部添加した。この後、反応系内を徐々に50Paまで減圧しながら、さらに290℃まで昇温し、攪拌負荷から設定した所定の重合度に達したところでポリエステルを抜き出した。得られたポリエステルは、1万倍の視野では凝集粒子はまったく見当たらず、100万倍の視野でも数個〜10個程度の凝集が見られるのみであり、分散性は良好であった。また、平均一次粒子径は3nmであった。
該ポリエステルを、130℃で5時間減圧乾燥後、T型ダイを備えた溶融押出機に供給し、280℃で溶融押し出ししてキャスティングドラム上で冷却し、未延伸フィルムを得た。このフィルムを100℃で3.5×4.0倍に逐次二軸延伸して、厚み15μmの二軸延伸フィルムを得た。該フィルムの4.0倍延伸方向の機械強度を表1に示す。
(実施例2〜5)
PtAcおよびICCA添加量を表1中の量に変更する他は、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物およびフィルムを得た。結果を表1に示す。
(実施例6)
PtAcの代わりにパラジウムアセチルアセトナート(PdAc)(関東化学(株)製)を添加する他は、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物およびフィルムを得た。結果を表1に示す。
(実施例7,8)
イソシンコメロン酸の代わりに、ジニコチン酸(DNA)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(SSIA)を用いるほかは、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物およびフィルムを得た。結果を表1に示す。
(実施例9)
PtAcに加えて、鉄(III)アセチルアセトナート(FeAc)を加え、ICCAの量を表に記載の値とするほかは、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物およびフィルムを得た。結果を表1に示す。
(実施例10)
ICCAとSSIAの両方を用いるほかは、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物およびフィルムを得た。結果を表に示す。
(比較実施例1)
PtAcを添加しないほかは、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。結果を表に示す。ヤング率は実施例のいずれと比較しても低い。
(比較実施例2)
ICCAを添加しないほかは、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。結果を表に示す。粒子は凝集が激しく、1万倍の倍率でも明確に確認できるほどの1μm以上の凝集が多数見られた。また、100万倍の倍率では、粗大凝集体の他は分散した一次粒子がほとんど確認できなかった。ほとんどの粒子が凝集してしまったものと考えられる。フィルムのヤング率は、比較実施例1と比較してほとんど変わらなかった。
(比較実施例3〜6)
PtAcおよびICCAの添加量を表中記載の値とする他は、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。比較実施例3においては、分散剤が少なすぎるためと思われるが、粒子は殆ど凝集しており、粒子が一次粒子として分散している領域はなく比較実施例2と殆ど変わらなかった。比較実施例4では粒子の分散性は良好であるが、ヤング率はかえって低下した。比較実施例5においては粒子をほとんど確認することはできなかった。比較実施例6では、熱分解が激しいためか、十分な重合反応が得られず、ポリマーは脆くてフィルム延伸に耐えないものであった。なお、粒子観察はオリゴマーを凍結超薄切片法により切片を作製して観察したが、粒子の分散性については良好であった。
(実施例11)
PtAc10重量部を、エチレングリコール90重量部でスラリー化した。一方、チップ供給装置、スラリー供給装置、減圧ベント口を備えた二軸押出し機に、比較実施例1で得たポリエステル組成物をチップ供給装置から供給し、一方、液体供給装置から、先に調整したPtAcのエチレングリコールスラリーを、ポリエステル組成物の供給速度A(重量部/分)に対して0.1A(重量部/分)の速度で供給し、ベント口から余剰のエチレングリコールを除去しつつ混練して、口金からガット状に押出して水槽で冷却し、ポリエステル組成物を得た。結果を表1に示す。
(実施例12)
管状電気炉に内径5cmの石英管を挿入した。一方、実施例9で得たポリエステル組成物を石英製容器に採取し、石英管の中央部に挿入した。この石英管に、水素/アルゴン混合ガス(30/70(混合体積比))を0.5L/分で流通させながら、1時間かけて600℃まで昇温し、30分保持した後、室温まで降温させて残存物を回収した。この残存物の回折像を、X線回折装置rint−2000((株)理学製)で観察したところ、鉄と白金からなる粒子特有の回折ピークとともに、カーボン由来の回折ピークが観察され、粒子の周囲がカーボンで覆われた状態で得られていることを示した。
Figure 2005232250
Figure 2005232250

Claims (9)

  1. 金属粒子と、窒素および/または硫黄を構成元素とする化合物とを含むポリエステル組成物であって、金属粒子を構成する金属元素のポリエステル組成物に対する含有量をM(ミリモル/kg)、窒素元素のポリエステル組成物に対する含有量をN(ミリモル/kg)、硫黄元素のポリエステル組成物に対する含有量をS(ミリモル/kg)としたとき、M、NおよびSが次式を満足しているポリエステル組成物。
    1≦M≦300
    0.01≦(N+S)/M≦5
  2. 金属粒子を構成する金属元素が、金、鉄、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウムおよびコバルトからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素である、請求項1に記載のポリエステル組成物。
  3. 窒素元素および/または硫黄元素が、ジカルボン酸化合物、ジオール化合物またはこれら化合物の誘導体の構成元素として含まれている、請求項1または2に記載のポリエステル組成物。
  4. 金属粒子の平均一次粒子径が0.5〜50nmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル組成物。
  5. 金属粒子を、ポリエステル組成物の合成反応の任意の過程で、ポリエステル合成反応場において形成する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステル組成物の製造方法。
  6. 金属塩化合物を反応場中に添加して金属粒子を形成する、請求項5に記載のポリエステル組成物の製造方法。
  7. 金属塩化合物をベント付二軸押出機中でポリエステル組成物と混練して金属粒子を形成する、請求項5に記載のポリエステル組成物の製造方法。
  8. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステル組成物を含むフィルム。
  9. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステル組成物を500〜2,000℃の温度の還元雰囲気下で焼成する金属粒子の製造方法。
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