JP2005029638A - ポリエステル樹脂組成物並びにそれを用いた成形品、フィルム及びコート剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリエステル樹脂と層状無機粒子との複合系において、機械的特性、剛性、ガスバリア性、溶融特性等が改善されたポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリエステル樹脂100質量部に対し面径が0.01〜10μmの葉状シリカ0.1〜50質量部を含むポリエステル樹脂組成物において、葉状シリカをポリエステル樹脂の重縮合が完了するまでの任意の段階で配合した後、重縮合を完了せしめることにより製造されるポリエステル樹脂組成物並びにそれを用いた成形品、フィルム及びコート剤に関する。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリエステル樹脂100質量部に対し面径が0.01〜10μmの葉状シリカ0.1〜50質量部を含むポリエステル樹脂組成物において、葉状シリカをポリエステル樹脂の重縮合が完了するまでの任意の段階で配合した後、重縮合を完了せしめることにより製造されるポリエステル樹脂組成物並びにそれを用いた成形品、フィルム及びコート剤に関する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は機械的特性、剛性、ガスバリア性、溶融特性等が改善されたポリエステル樹脂組成物と、このポリエステル樹脂組成物を用いた成形品、フィルム、コート剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
代表的なポリエステルであるポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートは優れた機械的強度、耐熱性、衛生性等から繊維、フィルム、ボトル、成型材料等の分野で使われている。それらポリエステルを高度化する要求に対して、フィラーと樹脂を組み合わせて種々の機能を付与することが行われている。たとえば、耐候性、難燃性、帯電防止性、着色性、摺動性、表面特性、抗菌性、結晶性、透明性、耐衝撃性、耐ブロッキング性、導電性、ガスバリア性等の機能の向上を図ってフィラーとの配合がなされている。
【0003】
近年、インターカレーションを利用したナイロン/クレー(モンモリロナイト等)ハイブリッドが盛んに検討され、ナノコンポジットとして自動車部品等に実用化されている。このナノコンポジットにより、フィラーがわずか数%の充填率であっても、高い弾性率、耐熱性の向上あるいはガスバリア性の向上等の効果が得られている。このナノコンポジットにおいて用いられるフィラーはモンモリロナイト、スメクタイト、ヘクトライト等の膨潤性層状粒子が挙げられる。
【0004】
このような層状無機粒子として鱗片状シリカが知られている。このシリカの製造は、▲1▼シリカヒドロゲル、活性ケイ酸または含水ケイ酸のいずれかをアルカリ金属塩の存在下に水熱処理し、薄片状シリカの薄片1次粒子が互いに面間を平行的に配向ししかも複数枚重なった葉状シリカ2次粒子と、当該2次粒子が3次元的に不規則に重なって形成される間隙を有する3次粒子からなる鱗片状シリカ3次凝集体粒子を形成する工程、及び▲2▼上記シリカ3次凝集体粒子を解砕・分散化し、3次粒子が実質的に存在しない実質的に2次粒子からなる葉状シリカとする工程からなる(例えば特許文献1参照)。また、特許文献1には葉状シリカの水スラリーから水を揮発させると硬化した塗膜を形成する事、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、スチレン樹脂系、シリコン樹脂系、フッソ樹脂系およびこれらの共重合樹脂系などの非水溶剤系塗料・コーティング剤や水エマルジョン系の塗料・コーティング剤とともに葉状シリカを配合使用する事も提示されている。
【0005】
特許文献2では葉状シリカ2次粒子及び透明な有機高分子物質を含有する不透明な塗膜上に透明な有機高分子からなる上塗り層を形成する事が述べられている。
【0006】
また、特許文献3には有機高分子物質、葉状シリカ2次粒子、及びカチオン性界面活性剤、および/又はアミン系アルカリ物質を混合してなる塗料用硬化性組成物が記載されている。
【0007】
樹脂を溶融させて加工する場合、溶融特性が生産性や製品の品質に影響する。Tダイ法でフィルムやシートを得る場合、Tダイ直後に発生するネックイン現象も改善が求められている。樹脂の溶融粘度のせん断速度依存性を大きくすれば、ネックインを小さくする事ができ、ポリエステル樹脂では3官能以上の成分を共重合することにより、ネックインを小さくする事ができる事が知られている(例えば特許文献4)。
【0008】
異形押し出し成形においても、高せん断速度において低い溶融粘度を示すとともに、低せん断速度において高い溶融粘度を示す事で、良好な押し出し性が得られることが、記載されている(例えば特許文献5)。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−163613号公報(4〜12ページ)
【特許文献2】
特開2002−30251号公報(2〜3ページ)
【特許文献3】
特開2002−348538号公報(3〜8ページ)
【特許文献4】
特開平4−77522号公報(3ページ)
【特許文献5】
特開平9−290451号公報(3〜4ページ)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ポリエステル樹脂でも層状無機粒子との複合系が検討されているが、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂では満足できる特性を有するものは得られていない。二塩基酸とグリコールから得られるポリエステルでは反応開始時や反応初期は水酸基やカルボン酸基が豊富にあるため、モンモリロナイトやハイドロタルサイトのように層が帯電した層状無機粒子とは、原料の段階では相溶性が良好な場合がある。しかし、反応初期に均一に分散していても、重縮合反応の進行とともに無機粒子は凝集する事が一般的である。
【0011】
また樹脂の溶融特性として溶融粘度のせん断速度依存性がある。この依存性が大きいほど押し出し加工は容易となる。ポリエステル樹脂は溶融粘度のせん断速度依存性が小さい。そのために、フィルム押し出し時のダイ直下でネックインを生じ、薄層フィルムが押し出しでできない。また、異形押し出しでも、溶融直後のタレにより形状付与ができない等の問題がある。溶融粘度のせん断速度依存性を大きくするため、樹脂に分岐構造を導入する事が有効である事が知られているが、ポリエステル樹脂製造時のゲルの発生と溶融挙動の改善を両立することが難しい。
【0012】
本発明の課題は、ポリエステル樹脂と層状無機粒子との複合系において、機械的特性、剛性、ガスバリア性、溶融特性等が改善されたポリエステル樹脂組成物を提供することおよび、このポリエステル樹脂組成物を用いた成形品、フィルム、コート剤も提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等はポリエステル樹脂と無機微粒子の組み合わせを鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は以下のポリエステル樹脂組成物と、このポリエステル樹脂組成物を用いた成形品、フィルム、コート剤である。
【0014】
▲1▼ポリエステル樹脂100質量部に対し面径が0.01〜10μmの葉状シリカ0.1〜50質量部を含むポリエステル樹脂組成物において、葉状シリカをポリエステル樹脂の重縮合が完了するまでの任意の段階で配合した後、重縮合を完了せしめることにより製造されるポリエステル樹脂組成物。
【0015】
▲2▼上記▲1▼に記載のポリエステル樹脂組成物を用いて成型加工された成形品。
【0016】
▲3▼上記▲1▼に記載のポリエステル樹脂組成物よりなるフィルム。
【0017】
▲4▼上記▲1▼に記載のポリエステル樹脂組成物を含有するコート剤。
【0018】
▲5▼面径が0.01〜10μmの葉状シリカをポリエステル樹脂の重縮合が完了するまでの任意の段階で配合した後、重縮合を完了せしめるポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる葉状シリカとはアスペクト比(面径/面厚みの比)が5以上、好ましくは20以上の扁平な形状のものをいう。上限は特に限定されないが5000以下が現実的である。層は単層でも複数の層が重なった物でも良い。面径は0.01〜10μm、好ましくは0.05〜1μmの範囲のものを用いる。面径が10μmを超えると補強効果が乏しく、透明性も悪くなることがある。なお、葉状シリカのアスペクト比は、走査型電子顕微鏡により撮影された一次粒子像にスケールをあてて、厚さ、最長長さ、最小長さを測定する事により求めることが出来る。
【0020】
葉状シリカの配合比率はポリエステル樹脂100質量部に対し0.1〜50質量部の範囲で用いると良い。0.1質量部未満では添加した効果が見られないことがあり、50質量部を超えると脆さが顕著になるおそれがある。葉状シリカは二酸化ケイ素を主成分とし、他の金属化合物を表面や層間に有しても良い。他の金属化合物としては二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。シリカ表面のシラノール基はシリカの活性を左右する。シラノール基は10〜200μmol/m2、好ましくは30〜100μmol/m2の範囲のものが適している。シラノール基はポリエステル重合時、ポリエステルあるいはグリコールの水酸基と一部反応し葉状シリカの分散に寄与する。
【0021】
葉状シリカの具体的な例としては、洞海化学工業株式会社製の「サンラブリーLFS」等が挙げられる。
【0022】
本発明の樹脂組成物は葉状シリカを重縮合が完了するまでの任意の段階で配合した後、重縮合を完了せしめる。通常ポリエステル樹脂はエステル交換反応(またはエステル化反応)を行い、次いで重縮合反応を行なうことにより製造される。本明細書で言う「任意の段階」とはエステル交換反応前、エステル交換反応の途中、エステル交換反応の終了後、重縮合反応前、重縮合反応途中のいずれかの段階を指し、二度以上に分けて添加しても良い。葉状シリカの分散を充分に行うためには、葉状シリカをエステル交換反応あるいはエステル化反応前に投入することが望ましい。
【0023】
葉状シリカは事前に重縮合の原料として用いるグリコールに分散させておいてもよい。分散に使用するグリコールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコールが望ましい。
【0024】
ポリエステル樹脂中に葉状シリカを効率よく分散する事により透明性が良好で分子補強ができた組成物が得られると考えられる。
【0025】
本発明で使用するポリエステル樹脂の二塩基酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニールジカルボン酸、ジフェニールエーテルジカルボン酸等の芳香族二塩基酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族二塩基酸を挙げることができる。グリコール成分としてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物あるいはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルグリコールを挙げることができる。さらに、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類やp−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のオキシカルボン酸もポリエステル樹脂の原料として挙げられる。また、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、無水トリメリット酸等の三官能以上の成分も併用してもかまわない。
【0026】
葉状シリカの分散性改善のために、スルホン酸金属塩基をポリエステル樹脂の分子鎖中に導入することが好ましい。ポリエステル樹脂にスルホン酸金属塩を導入するための原料としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、ナトリウムスルホテレフタル酸、2−ナトリウムスルホ−1,4−ブタンジオール、2,5−ジメチル−3−ナトリウムスルホ−2,5−ヘキサンジオール等のジカルボン酸あるいはグリコールが挙げられ、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸が特に好ましい。
【0027】
ポリエステル樹脂の製造には通常の高分子量ポリエステルの重合処方を用いることができる。すなわち、グリコールが過剰の条件下で、二塩基酸とグリコールをエステル化反応させるか、二塩基酸のメチルエステル化合物とグリコールをエステル交換反応させた後、アンチモンや、チタン、ゲルマニウム等の金属触媒の存在下、高温高真空下で脱グリコールする溶融重合法や樹脂の融点以下の高真空で重合する固相重合法が挙げられる。
【0028】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂中に葉状シリカが分散した構造を有する。そのため、ポリマー系ナノコンポジットで見られる現象、すなわち弾性率の向上、耐熱性の向上、ガスバリア性の向上が見られる。さらに、溶融粘度のせん断速度依存性の増大、表面硬度の向上等も見られる。それらの効果以外に結晶性高分子では、結晶化速度の増加も見られる。これら特徴は製形品やフィルム、シートに活かすことができる。
【0029】
本発明のポリエステル樹脂を溶融加工する方法としては、一般射出成形、圧縮成形等の射出成形、フラットダイ成形、インフレーション成形、カレンダー成形、異形成形、電線被覆成形等の押し出し成形、ダイレクトブロー成形、射出中空成形、延伸中空成形、シートブロー成形等の中空成形が挙げられる。
【0030】
本発明のポリエステル樹脂は、ポリエステル組成の選択により、溶剤に溶解や分散させた形態で、各種基材にコートすることができる。溶解や分散させても葉状シリカは保存中の沈降や凝集を生じることはない。コート剤として用いる場合には、各種添加剤や架橋剤を併用してもかまわない。添加剤は添加する目的に応じて選択される。硬化剤としてはポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、酸無水物等があり、これらの中でポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0031】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に例示する。実施例中に単に部とあるのは質量部を示す。
【0032】
還元粘度はフェノール/テトラクロロエタン(6/4質量比)を溶媒とし、0.4g/dlの濃度で、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定した。
融点、ガラス転移温度は示差走査熱量計により昇温速度20℃/分で測定した。結晶化温度は融点より約20℃高い温度に5分間放置後、降温速度20℃/分の条件での結晶化開始温度を測定した。
【0033】
実施例1
温度計、攪拌機、留出用冷却管を具備した反応容器に洞海化学工業株式会社製葉状シリカ含有水スラリー「サンラブリーLFS,HN−050」12.8部(固形分濃度15%)とエチレングリコール186部を仕込み、160℃まで昇温した。系内の水の溜出が終わった後、ジメチルテレフタレート194部、反応触媒としてテトラブトキシチタネート0.07部を投入し210℃まで昇温する間にエステル交換反応を終了した。その後、系内を徐々に減圧し、最終的に0.1mmHgに達した。その時の温度は270℃であり、この温度を1時間、保持させた。このようにして、葉状シリカを1質量%含有するポリエステル樹脂組成物(A−1)を得た。得られた組成物をフェノール/テトラクロロエタン(6/4質量比)に溶解し、還元粘度を測定した。得られた組成物の270℃での溶融粘度のせん断速度依存性(溶融粘度比)を東洋精機社製「キャピログラフ1B」により測定した。
得られたポリエステル樹脂組成物を日本精工所製40mmφ押出し機により、ダイス幅200mmで、フィルム厚み30μmとなる条件で製膜した。ダイス下50mmでのフィルム幅を測定したところ180mmであった。ネッキングにより20mm(片側10mm)だけ縮小した。また、得られたフィルムのヘイズ値を日本電色工業社製「濁度計NDH−300A」を用いて、酸素バリア性をJIS K 7126に従って測定した。結果を表1に示す。
【0034】
実施例2、3
実施例1と同様に、ただし、葉状シリカを変更したポリエステル組成物(A−2)、(A−3)を得た。但し、実施例3では反応容器から還元粘度0.24dl/gの比較的低分子量で取り出した後、200℃で0.3mmHgで9時間固相重合を行った。評価は実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0035】
比較例1、2
比較例1は葉状シリカを用いることなく実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。比較例2では葉状シリカの代わりに富士シリシア化学社製無定形シリカ「サイリシア310P」を用いた。実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
【0036】
実施例4、5、6
実施例1と同様に、表2に記載したポリエステル組成物(A−4)、(A−5)および(A−6)を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表2に記載した。また、実施例1と同様に製膜した。製膜時、チルロールは30℃に維持した。結果を表2に示す。実施例4、5、6では柔軟かつ透明なフィルムが得られた。
【0037】
比較例3、4
比較例3では実施例4と同様に、但し、葉状シリカを用いることなしにポリエステル樹脂を合成した。比較例3の樹脂の結晶化温度を測定したが、20℃/分の降温速度では明瞭な結晶化ピークが現れなかった。比較例4では葉状シリカの代わりに林化成社製タルク「ミクロンホワイト5000A」を用いた。実施例4と同様に評価した。比較例3ではチルロールに樹脂が巻き付き製膜できないので、離形紙上にキャストした。
【0038】
実施例7、8、9
実施例1と同様に、表3に記載したポリエステル組成物(A−7)、(A−8)、(A−9)を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表3に示す。得られた組成物をメチルエチルケトン/シクロヘキサノン(=1/1質量比)に溶解し、硬化剤として日本ポリウレタン社製ポリイソシアネート化合物「コロネートL」をポリエステル樹脂の5wt%配合した後、二軸延伸ポリプロピレンフィルム上に乾燥後の厚みで25μmになるように塗布および乾燥した。ポリプロピレンフィルムより剥がし取り、樹脂組成物自身の塗膜を得た。塗膜の強伸度、ヘイズ、酸素バリア性を測定した。また、葉状シリカの分散度を調べるために得られたポリエステル樹脂組成物をメチルエチルケトン/シクロヘキサノン(=1/1質量比)に固形分濃度10%で溶解し室温保存1週間後の溶液安定性を観察し、シリカの沈降がないものを○、沈降するものを×として評価した。結果を表3に示す。
【0039】
比較例5、6
葉状シリカを用いることなく実施例7と同様の組成を有するポリエステル樹脂を得た。実施例7と同様に評価した。評価結果を表3に示す。
比較例6では実施例7で用いた葉状シリカの代わりに、日産化学社製コロイダルシリカ「スノーテックス40」を用いた。コロイダルシリカは重合中に凝集が起こり、樹脂中に異物として認められた。
【0040】
比較例7
比較例5のポリエステル樹脂溶液(溶媒:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1質量比)に葉状シリカをポリエステル樹脂固形分100質量部に対して3質量部の割合で混合し、ガラスビーズを添加しペイントシェーカーで6時間振盪分散を行った。この分散液から実施例7と同様に乾燥塗膜を得た。実施例7と同様に評価した。評価結果を表3に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【発明の効果】
本発明により葉状シリカが高度に分散されたポリエステル樹脂組成物を得ることが出来る。この組成物を用いることにより機械的強度やガスバリア性等が改善された成形物やフィルム、コーティング剤が得られる。さらに結晶性ポリエステルの場合には結晶化速度が向上するため室温以下のTgのポリエステルでもブロッキングしないフィルムが得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は機械的特性、剛性、ガスバリア性、溶融特性等が改善されたポリエステル樹脂組成物と、このポリエステル樹脂組成物を用いた成形品、フィルム、コート剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
代表的なポリエステルであるポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートは優れた機械的強度、耐熱性、衛生性等から繊維、フィルム、ボトル、成型材料等の分野で使われている。それらポリエステルを高度化する要求に対して、フィラーと樹脂を組み合わせて種々の機能を付与することが行われている。たとえば、耐候性、難燃性、帯電防止性、着色性、摺動性、表面特性、抗菌性、結晶性、透明性、耐衝撃性、耐ブロッキング性、導電性、ガスバリア性等の機能の向上を図ってフィラーとの配合がなされている。
【0003】
近年、インターカレーションを利用したナイロン/クレー(モンモリロナイト等)ハイブリッドが盛んに検討され、ナノコンポジットとして自動車部品等に実用化されている。このナノコンポジットにより、フィラーがわずか数%の充填率であっても、高い弾性率、耐熱性の向上あるいはガスバリア性の向上等の効果が得られている。このナノコンポジットにおいて用いられるフィラーはモンモリロナイト、スメクタイト、ヘクトライト等の膨潤性層状粒子が挙げられる。
【0004】
このような層状無機粒子として鱗片状シリカが知られている。このシリカの製造は、▲1▼シリカヒドロゲル、活性ケイ酸または含水ケイ酸のいずれかをアルカリ金属塩の存在下に水熱処理し、薄片状シリカの薄片1次粒子が互いに面間を平行的に配向ししかも複数枚重なった葉状シリカ2次粒子と、当該2次粒子が3次元的に不規則に重なって形成される間隙を有する3次粒子からなる鱗片状シリカ3次凝集体粒子を形成する工程、及び▲2▼上記シリカ3次凝集体粒子を解砕・分散化し、3次粒子が実質的に存在しない実質的に2次粒子からなる葉状シリカとする工程からなる(例えば特許文献1参照)。また、特許文献1には葉状シリカの水スラリーから水を揮発させると硬化した塗膜を形成する事、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、スチレン樹脂系、シリコン樹脂系、フッソ樹脂系およびこれらの共重合樹脂系などの非水溶剤系塗料・コーティング剤や水エマルジョン系の塗料・コーティング剤とともに葉状シリカを配合使用する事も提示されている。
【0005】
特許文献2では葉状シリカ2次粒子及び透明な有機高分子物質を含有する不透明な塗膜上に透明な有機高分子からなる上塗り層を形成する事が述べられている。
【0006】
また、特許文献3には有機高分子物質、葉状シリカ2次粒子、及びカチオン性界面活性剤、および/又はアミン系アルカリ物質を混合してなる塗料用硬化性組成物が記載されている。
【0007】
樹脂を溶融させて加工する場合、溶融特性が生産性や製品の品質に影響する。Tダイ法でフィルムやシートを得る場合、Tダイ直後に発生するネックイン現象も改善が求められている。樹脂の溶融粘度のせん断速度依存性を大きくすれば、ネックインを小さくする事ができ、ポリエステル樹脂では3官能以上の成分を共重合することにより、ネックインを小さくする事ができる事が知られている(例えば特許文献4)。
【0008】
異形押し出し成形においても、高せん断速度において低い溶融粘度を示すとともに、低せん断速度において高い溶融粘度を示す事で、良好な押し出し性が得られることが、記載されている(例えば特許文献5)。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−163613号公報(4〜12ページ)
【特許文献2】
特開2002−30251号公報(2〜3ページ)
【特許文献3】
特開2002−348538号公報(3〜8ページ)
【特許文献4】
特開平4−77522号公報(3ページ)
【特許文献5】
特開平9−290451号公報(3〜4ページ)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ポリエステル樹脂でも層状無機粒子との複合系が検討されているが、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂では満足できる特性を有するものは得られていない。二塩基酸とグリコールから得られるポリエステルでは反応開始時や反応初期は水酸基やカルボン酸基が豊富にあるため、モンモリロナイトやハイドロタルサイトのように層が帯電した層状無機粒子とは、原料の段階では相溶性が良好な場合がある。しかし、反応初期に均一に分散していても、重縮合反応の進行とともに無機粒子は凝集する事が一般的である。
【0011】
また樹脂の溶融特性として溶融粘度のせん断速度依存性がある。この依存性が大きいほど押し出し加工は容易となる。ポリエステル樹脂は溶融粘度のせん断速度依存性が小さい。そのために、フィルム押し出し時のダイ直下でネックインを生じ、薄層フィルムが押し出しでできない。また、異形押し出しでも、溶融直後のタレにより形状付与ができない等の問題がある。溶融粘度のせん断速度依存性を大きくするため、樹脂に分岐構造を導入する事が有効である事が知られているが、ポリエステル樹脂製造時のゲルの発生と溶融挙動の改善を両立することが難しい。
【0012】
本発明の課題は、ポリエステル樹脂と層状無機粒子との複合系において、機械的特性、剛性、ガスバリア性、溶融特性等が改善されたポリエステル樹脂組成物を提供することおよび、このポリエステル樹脂組成物を用いた成形品、フィルム、コート剤も提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等はポリエステル樹脂と無機微粒子の組み合わせを鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は以下のポリエステル樹脂組成物と、このポリエステル樹脂組成物を用いた成形品、フィルム、コート剤である。
【0014】
▲1▼ポリエステル樹脂100質量部に対し面径が0.01〜10μmの葉状シリカ0.1〜50質量部を含むポリエステル樹脂組成物において、葉状シリカをポリエステル樹脂の重縮合が完了するまでの任意の段階で配合した後、重縮合を完了せしめることにより製造されるポリエステル樹脂組成物。
【0015】
▲2▼上記▲1▼に記載のポリエステル樹脂組成物を用いて成型加工された成形品。
【0016】
▲3▼上記▲1▼に記載のポリエステル樹脂組成物よりなるフィルム。
【0017】
▲4▼上記▲1▼に記載のポリエステル樹脂組成物を含有するコート剤。
【0018】
▲5▼面径が0.01〜10μmの葉状シリカをポリエステル樹脂の重縮合が完了するまでの任意の段階で配合した後、重縮合を完了せしめるポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる葉状シリカとはアスペクト比(面径/面厚みの比)が5以上、好ましくは20以上の扁平な形状のものをいう。上限は特に限定されないが5000以下が現実的である。層は単層でも複数の層が重なった物でも良い。面径は0.01〜10μm、好ましくは0.05〜1μmの範囲のものを用いる。面径が10μmを超えると補強効果が乏しく、透明性も悪くなることがある。なお、葉状シリカのアスペクト比は、走査型電子顕微鏡により撮影された一次粒子像にスケールをあてて、厚さ、最長長さ、最小長さを測定する事により求めることが出来る。
【0020】
葉状シリカの配合比率はポリエステル樹脂100質量部に対し0.1〜50質量部の範囲で用いると良い。0.1質量部未満では添加した効果が見られないことがあり、50質量部を超えると脆さが顕著になるおそれがある。葉状シリカは二酸化ケイ素を主成分とし、他の金属化合物を表面や層間に有しても良い。他の金属化合物としては二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。シリカ表面のシラノール基はシリカの活性を左右する。シラノール基は10〜200μmol/m2、好ましくは30〜100μmol/m2の範囲のものが適している。シラノール基はポリエステル重合時、ポリエステルあるいはグリコールの水酸基と一部反応し葉状シリカの分散に寄与する。
【0021】
葉状シリカの具体的な例としては、洞海化学工業株式会社製の「サンラブリーLFS」等が挙げられる。
【0022】
本発明の樹脂組成物は葉状シリカを重縮合が完了するまでの任意の段階で配合した後、重縮合を完了せしめる。通常ポリエステル樹脂はエステル交換反応(またはエステル化反応)を行い、次いで重縮合反応を行なうことにより製造される。本明細書で言う「任意の段階」とはエステル交換反応前、エステル交換反応の途中、エステル交換反応の終了後、重縮合反応前、重縮合反応途中のいずれかの段階を指し、二度以上に分けて添加しても良い。葉状シリカの分散を充分に行うためには、葉状シリカをエステル交換反応あるいはエステル化反応前に投入することが望ましい。
【0023】
葉状シリカは事前に重縮合の原料として用いるグリコールに分散させておいてもよい。分散に使用するグリコールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコールが望ましい。
【0024】
ポリエステル樹脂中に葉状シリカを効率よく分散する事により透明性が良好で分子補強ができた組成物が得られると考えられる。
【0025】
本発明で使用するポリエステル樹脂の二塩基酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニールジカルボン酸、ジフェニールエーテルジカルボン酸等の芳香族二塩基酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族二塩基酸を挙げることができる。グリコール成分としてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物あるいはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルグリコールを挙げることができる。さらに、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類やp−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のオキシカルボン酸もポリエステル樹脂の原料として挙げられる。また、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、無水トリメリット酸等の三官能以上の成分も併用してもかまわない。
【0026】
葉状シリカの分散性改善のために、スルホン酸金属塩基をポリエステル樹脂の分子鎖中に導入することが好ましい。ポリエステル樹脂にスルホン酸金属塩を導入するための原料としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、ナトリウムスルホテレフタル酸、2−ナトリウムスルホ−1,4−ブタンジオール、2,5−ジメチル−3−ナトリウムスルホ−2,5−ヘキサンジオール等のジカルボン酸あるいはグリコールが挙げられ、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸が特に好ましい。
【0027】
ポリエステル樹脂の製造には通常の高分子量ポリエステルの重合処方を用いることができる。すなわち、グリコールが過剰の条件下で、二塩基酸とグリコールをエステル化反応させるか、二塩基酸のメチルエステル化合物とグリコールをエステル交換反応させた後、アンチモンや、チタン、ゲルマニウム等の金属触媒の存在下、高温高真空下で脱グリコールする溶融重合法や樹脂の融点以下の高真空で重合する固相重合法が挙げられる。
【0028】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂中に葉状シリカが分散した構造を有する。そのため、ポリマー系ナノコンポジットで見られる現象、すなわち弾性率の向上、耐熱性の向上、ガスバリア性の向上が見られる。さらに、溶融粘度のせん断速度依存性の増大、表面硬度の向上等も見られる。それらの効果以外に結晶性高分子では、結晶化速度の増加も見られる。これら特徴は製形品やフィルム、シートに活かすことができる。
【0029】
本発明のポリエステル樹脂を溶融加工する方法としては、一般射出成形、圧縮成形等の射出成形、フラットダイ成形、インフレーション成形、カレンダー成形、異形成形、電線被覆成形等の押し出し成形、ダイレクトブロー成形、射出中空成形、延伸中空成形、シートブロー成形等の中空成形が挙げられる。
【0030】
本発明のポリエステル樹脂は、ポリエステル組成の選択により、溶剤に溶解や分散させた形態で、各種基材にコートすることができる。溶解や分散させても葉状シリカは保存中の沈降や凝集を生じることはない。コート剤として用いる場合には、各種添加剤や架橋剤を併用してもかまわない。添加剤は添加する目的に応じて選択される。硬化剤としてはポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、酸無水物等があり、これらの中でポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0031】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に例示する。実施例中に単に部とあるのは質量部を示す。
【0032】
還元粘度はフェノール/テトラクロロエタン(6/4質量比)を溶媒とし、0.4g/dlの濃度で、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定した。
融点、ガラス転移温度は示差走査熱量計により昇温速度20℃/分で測定した。結晶化温度は融点より約20℃高い温度に5分間放置後、降温速度20℃/分の条件での結晶化開始温度を測定した。
【0033】
実施例1
温度計、攪拌機、留出用冷却管を具備した反応容器に洞海化学工業株式会社製葉状シリカ含有水スラリー「サンラブリーLFS,HN−050」12.8部(固形分濃度15%)とエチレングリコール186部を仕込み、160℃まで昇温した。系内の水の溜出が終わった後、ジメチルテレフタレート194部、反応触媒としてテトラブトキシチタネート0.07部を投入し210℃まで昇温する間にエステル交換反応を終了した。その後、系内を徐々に減圧し、最終的に0.1mmHgに達した。その時の温度は270℃であり、この温度を1時間、保持させた。このようにして、葉状シリカを1質量%含有するポリエステル樹脂組成物(A−1)を得た。得られた組成物をフェノール/テトラクロロエタン(6/4質量比)に溶解し、還元粘度を測定した。得られた組成物の270℃での溶融粘度のせん断速度依存性(溶融粘度比)を東洋精機社製「キャピログラフ1B」により測定した。
得られたポリエステル樹脂組成物を日本精工所製40mmφ押出し機により、ダイス幅200mmで、フィルム厚み30μmとなる条件で製膜した。ダイス下50mmでのフィルム幅を測定したところ180mmであった。ネッキングにより20mm(片側10mm)だけ縮小した。また、得られたフィルムのヘイズ値を日本電色工業社製「濁度計NDH−300A」を用いて、酸素バリア性をJIS K 7126に従って測定した。結果を表1に示す。
【0034】
実施例2、3
実施例1と同様に、ただし、葉状シリカを変更したポリエステル組成物(A−2)、(A−3)を得た。但し、実施例3では反応容器から還元粘度0.24dl/gの比較的低分子量で取り出した後、200℃で0.3mmHgで9時間固相重合を行った。評価は実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0035】
比較例1、2
比較例1は葉状シリカを用いることなく実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。比較例2では葉状シリカの代わりに富士シリシア化学社製無定形シリカ「サイリシア310P」を用いた。実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
【0036】
実施例4、5、6
実施例1と同様に、表2に記載したポリエステル組成物(A−4)、(A−5)および(A−6)を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表2に記載した。また、実施例1と同様に製膜した。製膜時、チルロールは30℃に維持した。結果を表2に示す。実施例4、5、6では柔軟かつ透明なフィルムが得られた。
【0037】
比較例3、4
比較例3では実施例4と同様に、但し、葉状シリカを用いることなしにポリエステル樹脂を合成した。比較例3の樹脂の結晶化温度を測定したが、20℃/分の降温速度では明瞭な結晶化ピークが現れなかった。比較例4では葉状シリカの代わりに林化成社製タルク「ミクロンホワイト5000A」を用いた。実施例4と同様に評価した。比較例3ではチルロールに樹脂が巻き付き製膜できないので、離形紙上にキャストした。
【0038】
実施例7、8、9
実施例1と同様に、表3に記載したポリエステル組成物(A−7)、(A−8)、(A−9)を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表3に示す。得られた組成物をメチルエチルケトン/シクロヘキサノン(=1/1質量比)に溶解し、硬化剤として日本ポリウレタン社製ポリイソシアネート化合物「コロネートL」をポリエステル樹脂の5wt%配合した後、二軸延伸ポリプロピレンフィルム上に乾燥後の厚みで25μmになるように塗布および乾燥した。ポリプロピレンフィルムより剥がし取り、樹脂組成物自身の塗膜を得た。塗膜の強伸度、ヘイズ、酸素バリア性を測定した。また、葉状シリカの分散度を調べるために得られたポリエステル樹脂組成物をメチルエチルケトン/シクロヘキサノン(=1/1質量比)に固形分濃度10%で溶解し室温保存1週間後の溶液安定性を観察し、シリカの沈降がないものを○、沈降するものを×として評価した。結果を表3に示す。
【0039】
比較例5、6
葉状シリカを用いることなく実施例7と同様の組成を有するポリエステル樹脂を得た。実施例7と同様に評価した。評価結果を表3に示す。
比較例6では実施例7で用いた葉状シリカの代わりに、日産化学社製コロイダルシリカ「スノーテックス40」を用いた。コロイダルシリカは重合中に凝集が起こり、樹脂中に異物として認められた。
【0040】
比較例7
比較例5のポリエステル樹脂溶液(溶媒:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1質量比)に葉状シリカをポリエステル樹脂固形分100質量部に対して3質量部の割合で混合し、ガラスビーズを添加しペイントシェーカーで6時間振盪分散を行った。この分散液から実施例7と同様に乾燥塗膜を得た。実施例7と同様に評価した。評価結果を表3に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【発明の効果】
本発明により葉状シリカが高度に分散されたポリエステル樹脂組成物を得ることが出来る。この組成物を用いることにより機械的強度やガスバリア性等が改善された成形物やフィルム、コーティング剤が得られる。さらに結晶性ポリエステルの場合には結晶化速度が向上するため室温以下のTgのポリエステルでもブロッキングしないフィルムが得られる。
Claims (5)
- ポリエステル樹脂100質量部に対し面径が0.01〜10μmの葉状シリカ0.1〜50質量部を含むポリエステル樹脂組成物において、葉状シリカをポリエステル樹脂の重縮合が完了するまでの任意の段階で配合した後、重縮合を完了せしめることにより製造されるポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物を用いて成型加工された成形品。
- 請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物よりなるフィルム。
- 請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物を含有するコート剤。
- 面径が0.01〜10μmの葉状シリカをポリエステル樹脂の重縮合が完了するまでの任意の段階で配合した後、重縮合を完了せしめるポリエステル樹脂組成物の製造方法。
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