JP7034864B2 - 機能性材料及びその利用 - Google Patents
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Description
(1)繊維にカチオン性物質である銅塩が吸着してなる、機能性材料。
本発明の一態様に係る機能性材料は、カチオン性物質がその表面に吸着した繊維を含んでいる。
本発明の一態様に係る機能性材料において、カチオン性物質とは、金属カチオンを形成し得る塩化合物であって、このような塩化合物から生成されるカチオン自身のことをカチオン性物質と称することもある。
本発明の一態様に係る機能性材料に含まれる繊維について説明する。
本態様に係る機能性材料の製造方法では、繊維を含むスラリー中において、無機粒子を合成しないようにして、当該繊維の表面にカチオン性物質を吸着させる。
本態様に係る製造方法では、繊維を含むスラリーにカチオン性物質の水溶液を添加する。なお、水溶媒におけるカチオン性物質の濃度は、スラリーに含まれる繊維の含有量に応じて適宜すればよい。
スラリー中には、上述のカチオン性物質が吸着していない繊維が含まれていてもよい。当該繊維は、長さ加重平均繊維長が1.0mm以上、2.0mm以下であるものが好ましい。スラリーにおける、長さ加重平均繊維長が1.0mm以上、2.0mm以下である繊維を更に含むことによって、機能性材料の紙力を向上させることができる。
スラリーには、填料の繊維への定着を促したり、填料及び繊維の歩留を向上させたりするために、歩留剤を添加することもできる。例えば、歩留剤として、カチオン性又はアニオン性、両性ポリアクリルアミド系物質を用いることができる。また、これらに加えて少なくとも一種以上のカチオンやアニオン性のポリマーを併用する、いわゆるデュアルポリマーと呼ばれる歩留りシステムを適用することもでき、少なくとも一種類以上のアニオン性のベントナイトやコロイダルシリカ、ポリ珪酸、ポリ珪酸もしくはポリ珪酸塩ミクロゲル及びこれらのアルミニウム改質物等の無機微粒子や、アクリルアミドが架橋重合したいわゆるマイクロポリマーといわれる粒径100μm以下の有機系の微粒子を一種以上併用する多成分歩留りシステムであってもよい。特に単独又は組合せで使用するポリアクリルアミド系物質が、極限粘度法による重量平均分子量が200万ダルトン以上である場合、良好な歩留りを得ることができ、好ましくは、500万ダルトン以上であり、更に好ましくは1000万ダルトン以上、3000万ダルトン未満の前記アクリルアミド系物質である場合に非常に高い歩留りを得ることが出来る。このポリアクリルアミド系物質の形態はエマルジョン型でも溶液型であっても構わない。この具体的な組成としては、該物質中にアクリルアミドモノマーユニットを構造単位として含むものであれば特に限定はないが、例えば、アクリル酸エステルの4級アンモニウム塩とアクリルアミドとの共重合物、あるいはアクリルアミドとアクリル酸エステルを共重合させた後、4級化したアンモニウム塩が挙げられる。該カチオン性ポリアクリルアミド系物質のカチオン電荷密度は特には限定されない。
繊維のスラリーには、当該繊維と複合化していない無機粒子を更に添加することができる。このような無機粒子は、複合繊維を構成している無機粒子のように水素結合等によってセルロース繊維と結着せず、繊維と混在している点で区別される。繊維と複合化していない無機粒子(以下、「非複合化無機粒子」という。)の種類は、目的に応じて適宜選択すればよく、一般に無機填料と呼ばれる粒子を選択することができる。無機填料としては上述した無機粒子の他に、金属単体、白土、ベントナイト、珪藻土、クレー(カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン)、タルク、脱墨工程から得られる灰分を再生して利用する無機填料及び再生する過程でシリカ又は炭酸カルシウムと複合物を形成した無機填料等が挙げられる。これらは単独でも2種類以上の組み合わせで用いてもよい。
スラリーには、その他の添加剤として、湿潤及び/又は乾燥紙力剤(紙力増強剤)を添加することができる。これにより、機能性材料の強度を向上させることができる。紙力剤としては例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリアミン、エピクロロヒドリン樹脂、植物性ガム、ラテックス、ポリエチレンイミン、グリオキサール、ガム、マンノガラクタンポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアミン、ポリビニルアルコール等の樹脂;前記樹脂から選ばれる2種以上からなる複合ポリマー又は共重合ポリマー;澱粉及び加工澱粉;カルボキシメチルセルロース、グアーガム、尿素樹脂等が挙げられる。紙力剤の添加量は特に限定されない。
本態様に係る機能性材料は、適宜、成形物(体)を製造することも可能である。シート製造に用いる抄紙機(抄造機)としては、例えば長網抄紙機、丸網抄紙機、ギャップフォーマ、ハイブリッドフォーマ、多層抄紙機、又はこれらの機器の抄紙方式を組合せた公知の抄造機などが挙げられる。抄紙機におけるプレス線圧、後段でカレンダー処理を行う場合のカレンダー線圧は、いずれも操業性及び/又はシートの性能に支障を来さない範囲内で定めることができる。また、形成されたシートに対して含浸又は塗布により、澱粉、各種ポリマー、顔料及びそれらの混合物を付与しても良い。
本発明の一態様に係る機能性材料は、カチオン性物質が吸着する繊維が、無機粒子を含む複合繊維である。言い換えれば、本態様に係る機能性材料は、銅塩等のカチオン性物質が機能性材料における最表層に存在し、銅塩等のカチオン性物質とは異なる種類の金属塩等から構成される無機粒子の層が、繊維とカチオン性物質との間に介在する機能性材料である。ここで、無機粒子は、ハイドロタルサイトであることが好ましい。
一般に、ハイドロタルサイトは、[M2+ 1-xM3+ x(OH)2][An- x/n・mH2O](式中、M2+は2価の金属イオンを、M3+は3価の金属イオンを表し、An- x/nは層間陰イオンを表す。また0<x<1であり、nはAの価数、0≦m<1である)という一般式で示される。ここで、2価の金属イオンであるM2+は、例えば、Mg2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Fe2+、Ca2+、Ba2+、Cu2+、Mn2+など、3価の金属イオンであるM3+は、例えば、Al3+、Fe3+、Cr3+、Ga3+など、層間陰イオンであるAn-は、例えば、OH-、Cl-、CO3 -、SO4 -などのn価の陰イオンを挙げることができ、xは一般に0.2~0.33の範囲である。このうち、2価の金属イオンとしては、Mg2+、Zn2+、Fe2+、Mn2+が好ましく、抗菌性を機能性材料に付与することができるという観点から特にZn2+が好ましい。結晶構造は、正の電荷をもつ正八面体のbrucite単位が並んだ二次元基本層と負の電荷を持つ中間層からなる積層構造をとっている。
また、一態様に係る機能性材料は、カチオン性物質が吸着する繊維は、ハイドロタルサイトとは別の無機粒子を含む複合繊維であってもよい。
本発明の一態様(第2の態様)に係る機能性材料の製造方法を以下に示す。
無機粒子として複合繊維に含まれるハイドロタルサイトの合成方法は公知の方法によることができる。例えば、反応容器内に中間層を構成する炭酸イオンを含む炭酸塩水溶液とアルカリ溶液(水酸化ナトリウムなど)に繊維を浸漬し、次いで、酸溶液(基本層を構成する二価金属イオン及び三価金属イオンとを含む金属塩水溶液)を添加し、温度、pHなどを制御して共沈反応により、ハイドロタルサイトを合成する。また、反応容器内において、酸溶液(基本層を構成する二価金属イオン及び三価金属イオンを含む金属塩水溶液)に繊維を浸漬し、次いで、中間層を構成する炭酸イオンを含む炭酸塩水溶液とアルカリ溶液(水酸化ナトリウム等)を滴下し、温度、pH等を制御して共沈反応により、ハイドロタルサイトを合成することもできる。常圧での反応が一般的ではるが、それ以外にも、オートクレーブなどを使用しての水熱反応により得る方法もある(特開昭60-6619号公報)。
本発明の一態様において、無機粒子を合成する際の反応温度は、例えば、30~100℃とすることができるが、40~80℃が好ましく、50~70℃がより好ましく、60℃程度とすると特に好ましい。温度が高すぎたり低すぎたりすると、反応効率が低下しコストが高くなる傾向がある。
なお、ハイドロタルサイトに代えて他の無機粒子を含む複合繊維については、繊維を含むスラリー中で無機粒子を合成することによって、所望の無機粒子が繊維に複合化している複合繊維を合成することができる。繊維を含むスラリー中で無機粒子を合成する方法としては、気液法と液液法のいずれでもよい。気液法の一例としては炭酸ガス法があり、例えば水酸化マグネシウムと炭酸ガスを反応させることで、炭酸マグネシウムを合成することができる。反応は、キャビテーション発生装置を用いてもよく、開放系又は加圧反応容器内でウルトラファインバブルを発生させて行ってもよい。液液法の例としては、塩酸若しくは硫酸などの酸と水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウムなどの塩基とを中和によって反応させたり、無機塩と酸とを、若しくは塩基とを反応させたり、無機塩同士を反応させたりする方法が挙げられる。例えば、水酸化バリウムと硫酸とを反応させることで硫酸バリウムを得たり、硫酸アルミニウムと水酸化ナトリウムとを反応させることで水酸化アルミニウムを得たり、炭酸カルシウムと硫酸アルミニウムとを反応させることでカルシウムとアルミニウムが複合化した無機粒子を得ることができる。また、このようにして無機粒子を合成する際、反応液中に任意の金属及び/又は金属化合物を共存させることもでき、この場合はそれらの金属若しくは金属化合物が無機粒子中に効率よく取り込まれ、複合化できる。例えば、炭酸カルシウムにリン酸を添加してリン酸カルシウムを合成する際に、二酸化チタンを反応液中に共存させることで、リン酸カルシウムとチタンの複合粒子を得ることができる。
本発明によって得られた機能性材料は、様々な、衛生用品に使用することができる。衛生用品としては、限定されるものではないが、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁者用パッド、及び母乳パッド等の衛生用品、並びに不純物除去、消臭、除湿等の吸着剤として好適に使用することができる。また、脂取り紙などの化粧紙、並びに、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ワイパー(対人用、工業用)、タオル、ハンドタオル、ペーパータオル、キッチンペーパー、クッキングペーパー、ナプキン、ボディシート、洗顔シート、掃除用シート、おむつ、生理用品、シーツ、マクラカバー、携帯トイレ、マスク、ウェットティッシュ、綿棒、介護用品、リハビリ用品、ペット用品(トイレシート、トイレ砂)及び医療用品の包装紙等の衛生紙等に抗ウイルス性を付与した各種抗ウイルス用衛生用品として、特に好ましく使用することができる。なお、上記衛生用品は、紙製であっても、不織布製であっても良く、また、シニア・ミドル用、子供用、ペット用のいずれにも用いることができる。
また、機能性材料は、種々の用途に用いることができ、例えば、紙、繊維、不織布、セルロース系複合材料、フィルター材料、塗料、プラスチック及びその他の樹脂、ゴム、エラストマー、セラミック、ガラス、金属、タイヤ、建築材料(アスファルト、アスベスト、セメント、ボード、コンクリート、れんが、タイル、合板、繊維板など)、各種担体(触媒担体、医薬担体、農薬担体、微生物担体など)、しわ防止剤、粘土、研磨材、改質剤、補修材、断熱材、防湿材、撥水材、耐水材、遮光材、シーラント、シールド材、防虫剤、接着剤、インキ、化粧料、医用材料、ペースト材料、食品添加剤、錠剤賦形剤、分散剤、保形剤、保水剤、濾過助材、精油材、油処理剤、油改質剤、電波吸収材、絶縁材、遮音材、防振材、半導体封止材、放射線遮断材、化粧品、肥料、飼料、香料、塗料・接着剤・樹脂用添加剤、変色防止剤、導電材、伝熱材等のあらゆる用途に広く使用することができる。また、前記用途における各種充填剤、コーティング剤などに用いることができる。
本発明は、これに制限されるものではないが、以下の発明を包含する。
(1)繊維にカチオン性物質である銅塩が吸着してなる、機能性材料。
(2)前記銅塩が塩化銅、又は硫酸銅である、(1)に記載の機能性材料。
(3)前記繊維は、無機粒子を含む複合繊維である、(1)又は(2)に記載の機能性材料。
(4)前記無機粒子は、ハイドロタルサイトを含む、(3)に記載の機能性材料。
(5)前記ハイドロタルサイトを構成する2価の金属イオンがマグネシウムイオン、又は亜鉛イオンである、(4)に記載の機能性材料。
(6)前記繊維が、化学繊維、再生繊維、又は天然繊維である、(1)~(5)の何れか1項に記載の機能性材料。
(7)前記繊維が、セルロース繊維である、(6)に記載の機能性材料。
(8)(1)~(7)の何れかに記載の機能性材料を含む、衛生用品。
(9)(1)~(8)の何れかに記載の機能性材料を含む、抗ウイルス用衛生用品。
(10)繊維を含むスラリーに、銅塩の溶液を添加する、機能性材料の製造方法。
(11)前記銅塩が塩化銅である、(10)に記載の製造方法。
(12)前記スラリー中にて無機粒子を合成し、その後、前記溶液を添加する、(11)に記載の機能性材料の製造方法。
(13)前記無機粒子は、ハイドロタルサイトを含む、(12)に記載の機能性材料の製造方法。
(1)アルカリ溶液と酸溶液の調製
ハイドロタルサイト(HT)を合成するための溶液を準備した。アルカリ溶液(A溶液)として、炭酸ナトリウム(和光純薬)及び水酸化ナトリウム(和光純薬)の混合水溶液を調製した。また、酸溶液(B溶液)として、塩化亜鉛(和光純薬)及び塩化アルミニウム(和光純薬)の混合水溶液を調製した。A溶液中の炭酸ナトリウム濃度は0.05mol/L、水酸化ナトリウム濃度は0.8mol/Lであり、B溶液中の塩化亜鉛の濃度は0.3mol/L、塩化アルミニウムの濃度は0.1mol/Lであった。
(サンプル1:Zn6Al2(OH)16CO3・4H2Oとパルプ繊維との複合繊維)
複合体化する繊維として、セルロース繊維を使用した。具体的には、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、日本製紙製)と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、日本製紙製)を8:2の重量比で含み、シングルディスクリファイナー(SDR)を用いてカナダ標準濾水度を390mLに調整したパルプ繊維を用いた。
サンプル1を塩化銅溶液で処理し、塩化銅溶液を吸着したZn系HT複合繊維(Zn6Al2(OH)16CO3・4H2Oとパルプ繊維との複合繊維)を得た(サンプル2)。
サンプル1で使用したLBKPとNBKPのスラリー(L:N=8:2)に対して、サンプル2と同様に塩化銅溶液で処理した(サンプル3)
続いて、JIS P 8222に基づいて、製造したサンプル(サンプル1~3)からマットを製造した(坪量:約100g/m2、灰分:46%)。具体的には、複合体の水性スラリー(濃度:約0.5重量%)をろ紙(JIS P3801、定量分析用、5種B)を用いてろ過し、得られたサンプルを1MPaで5分間圧力をかけて脱水した後、50℃で2時間緊張乾燥させて、マットを製造した。
製造したマットについて、抗ウイルス特性を評価した。抗ウイルス性試験は、JIS L 1922:2016 繊維製品の抗ウイルス性試験方法にて実施した。試験に供したマットの重さは0.4g、対照試料には標準綿布を用いた。試験ウイルス種としてネコカリシウイルス(Feline calicivirus;Strain:F-9 ATCC VR-782)を使用した。試験手順を以下に示す。
1.試験片0.4gをバイアル瓶に入れ、試験ウイルス液0.2mlを滴下後、バイアル瓶のふたをした。
2.バイアル瓶を25℃で2時間静置した。
3.洗い出し液20mlを加えて試験片からウイルスを洗い出し、プラーク測定法により感染価を算出した。
4.次の式によって抗ウイルス活性値(Mv)を計算した。なお、JISでは抗ウイルス効果を、Mv≧2.0で効果が有り、Mv≧3.0で十分に効果があると定められている。
抗ウイルス活性値(Mv) = Log(Vb)-Log(Vc)
Mv:抗ウイルス活性値
Log(Vb):対照試料の2時間作用後の3検体の感染価常用対数(3検体の平均値)Log(Vc):抗ウイルス試料の2時間作用後の3検体の感染価常用対数(3検体の平均値)
結果を表1に示す。
Claims (11)
- 無機粒子と繊維との複合繊維にカチオン性物質である銅塩が吸着してなる、機能性材料であって、
前記カチオン性物質が前記機能性材料における最表層に存在し、
前記カチオン性物質とは異なる種類の金属塩から構成される前記無機粒子の層が、前記繊維と前記カチオン性物質との間に介在する、機能性材料。 - 前記銅塩が塩化銅、又は硫酸銅である、請求項1に記載の機能性材料。
- 前記無機粒子は、ハイドロタルサイトを含む、請求項1又は2に記載の機能性材料。
- 前記ハイドロタルサイトを構成する2価の金属イオンがマグネシウムイオン、又は亜鉛イオンである、請求項3に記載の機能性材料。
- 前記繊維が、化学繊維、再生繊維、又は天然繊維である、請求項1~4の何れか1項に記載の機能性材料。
- 前記繊維が、セルロース繊維である、請求項5に記載の機能性材料。
- 請求項1~6の何れか1項に記載の機能性材料を含む、衛生用品。
- 請求項1~6の何れか1項に記載の機能性材料を含む、抗ウイルス用衛生用品。
- 繊維を含むスラリー中にて無機粒子を合成し、その後、銅塩の溶液を添加する、機能性材料の製造方法。
- 前記銅塩が塩化銅である、請求項9に記載の機能性材料の製造方法。
- 前記無機粒子は、ハイドロタルサイトを含む、請求項9に記載の機能性材料の製造方法。
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