JP2017119658A - ウイルス不活化剤およびその製造方法ならびにウイルス不活化剤を含有する樹脂、繊維、衣服、フィルタおよびマスク - Google Patents
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Abstract
【課題】 ウイルスを簡便かつ効果的に不活化できるウイルス不活化剤およびその製造方法ならびに当該ウイルス不活化剤を含有する樹脂、繊維、衣服、フィルタおよびマスクを提供すること【解決手段】 比表面積が20m2/g以上、更に好ましくは70m2/g以上である層状複水酸化物を有効成分とし、生体関連物質を吸着するウイルス不活化剤である。当該層状複水酸化物は、抗ウイルス性金属成分を担持させたものであっても良い。また、当該層状複水酸化物は、(1)2価の金属イオンと、3価の金属イオンと、を含む酸性溶液と、(2)アルカリ性溶液と、(3)抗ウイルス性金属成分を含む水溶液と、を混合して合成されるものである方が良い。【選択図】 なし
Description
この発明は、層状複水酸化物を用いたウイルス不活化剤およびその製造方法ならびに層状複水酸化物を用いたウイルス不活化剤を含有する樹脂、繊維、衣服、フィルタおよびマスクに関するものである。
インフルエンザウイルスやノロウイルス等のウイルスは、毎年猛威をふるい、多くの人々がその感染症に苦しんでいる。これらのウイルスの感染経路は主に経口感染であるため、感染症の発生の予防や発生後の拡大防止のためには、環境に存在するウイルスを不活化することが重要となる。したがって、ウイルスの不活化効果を有する製品の開発が望まれている。
従来、ウイルスを不活化する技術としては、水酸化カルシウムを用いて、インフルエンザウイルスおよびノロウイルスを不活化する方法(例えば、特許文献1参照)や、リゾチームを用いてノロウイルスを不活化する方法等が知られている(例えば、特許文献2参照)
しかしながら、従来のウイルス不活化剤は、十分にウイルスを不活化できるものではなかった。
そこで本発明は、ウイルスを簡便かつ効果的に不活化できるウイルス不活化剤およびその製造方法ならびに当該ウイルス不活化剤を含有する樹脂、繊維、衣服、フィルタおよびマスクを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明におけるウイルス不活化剤は、比表面積が20m2/g以上である層状複水酸化物を有効成分とするものであることを特徴とする。
また、前記層状複水酸化物は、抗ウイルス性金属成分を担持させたものである方が好ましい。
さらに、前記層状複水酸化物は、
(1)2価の金属イオンと、3価の金属イオンと、を含む酸性溶液と、
(2)アルカリ性溶液と、
(3)抗ウイルス性金属成分を含む水溶液と、
を混合して合成されるものである方が好ましい。
(1)2価の金属イオンと、3価の金属イオンと、を含む酸性溶液と、
(2)アルカリ性溶液と、
(3)抗ウイルス性金属成分を含む水溶液と、
を混合して合成されるものである方が好ましい。
また、前記層状複水酸化物は、比表面積が70m2/g以上である方が好ましく、結晶子サイズが20nm以下である方が好ましい。また、前記層状複水酸化物は、活性炭又はゼオライトに担持させたものである方が好ましい。また、前記層状複水酸化物は、樹脂又は繊維に担持させたものとすることもできる。
また、本発明のウイルス不活化剤の製造方法は、比表面積が20m2/g以上である層状複水酸化物を有効成分とするウイルス不活化剤を製造する製造方法であって、
(1)2価の金属イオンと、3価の金属イオンと、を含む酸性溶液と、
(2)アルカリ性溶液と、
(3)抗ウイルス性金属成分を含む水溶液と、
を混合して前記層状複水酸化物を合成する層状複水酸化物合成工程を有することを特徴とする。
(1)2価の金属イオンと、3価の金属イオンと、を含む酸性溶液と、
(2)アルカリ性溶液と、
(3)抗ウイルス性金属成分を含む水溶液と、
を混合して前記層状複水酸化物を合成する層状複水酸化物合成工程を有することを特徴とする。
この場合、前記層状複水酸化物合成工程は、前記酸性溶液とアルカリ性溶液の混合が完了した後、2時間以内に水分を除去又は中和するものである方が好ましい。
また、本発明の樹脂は、上述した本発明のウイルス不活化剤を含有することを特徴とする。
また、本発明の繊維は、上述した本発明のウイルス不活化剤を含有することを特徴とする。
また、本発明の衣服は、上述した本発明のウイルス不活化剤を含有することを特徴とする。
また、本発明のフィルタは、上述した本発明のウイルス不活化剤を含有することを特徴とする。
また、本発明のマスクは、上述した本発明のウイルス不活化剤を含有することを特徴とする。
本発明によれば、比表面積の大きい層状複水酸化物を用いることで、ウイルスを簡便かつ効果的に不活化できる。
[ウイルス不活化剤]
以下に、本発明のウイルス不活化剤について説明する。
以下に、本発明のウイルス不活化剤について説明する。
本発明のウイルス不活化剤は、比表面積が20m2/g以上である層状複水酸化物を有効成分とするものである。
まず、本発明のウイルス不活化剤の不活化対象となるウイルスについて説明する。
ウイルスは、タンパク質からなる殻(カプシド)と、その中に詰め込まれている核酸から構成され、中性域ではマイナスに帯電していることが多い。ウイルスは、核酸の種類とエンベロープ(核酸とカプシドを包む外皮)の有無から構造的に4つの種類に分類されるが、本発明のウイルス不活化剤の対象となるウイルスは、核酸の種類およびエンベロープの有無を問わず、すべての種類のウイルスが含まれる。核酸としてRNAを有し、エンベロープを有するウイルスとしては、例えば、インフルエンザウイルス、SARSコロナウイルス、RSウイルス、ムンプスウイルス、ラッサウイルス、デングウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス等が挙げられる。核酸としてRNAを有し、エンベロープを有さないウイルスとしては、例えば、ノロウイルス、ポリオウイルス、エコーウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ライノウイルス、アストロウイルス、ロタウイルス、コクサッキーウイルス、エンテロウイルス、サポウイルス等が挙げられる。核酸としてDNAを有し、エンベロープを有するウイルスとしては、例えば、ヒトヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、B型肝炎ウイルス等が挙げられる。核酸としてDNAを有し、エンベロープを有さないウイルスとしては、例えば、アデノウイルス、B19ウイルス、パポバウイルス、ヒトパピローマウイルス等が挙げられる。
本発明のウイルス不活化剤がウイルスに対して不活化作用を示す理由は明らかではないが、上述したように、ウイルスがマイナスに帯電していることから、層状複水酸化物のイオン交換作用によって吸着されることや、層状複水酸化物の微細孔に物理的に吸着されることが推測される。そして、この吸着により、ウイルスの変性・分解等の構造的な破壊や、ウイルス表面の突起の活性の阻害を引き起こして、ウイルス不活化作用が示されると考えられる。
次に、本発明のウイルス不活化剤の有効成分である層状複水酸化物について説明する。
層状複水酸化物は、一般式がM2+ 1-xM3+ x(OH)2(An-)x/n・mH2O(ここで、M2+は2価の金属イオン、M3+は3価の金属イオン、An-はn価の陰イオン、0<x<1、m>0)で表される不定比化合物であり、ハイドロタルサイト様化合物と呼ばれることもある。2価の金属イオン(M2+)としては、例えば、Mg2+、Fe2+、Zn2+、Ca2+、Li2+、Ni2+、Co2+、Cu2+等が挙げられる。また、3価の金属イオン(M3+)としては、例えば、Al3+、Fe3+、Cr3+、Mn3+等が挙げられる。また、陰イオン(An-)としては、例えば、ClO4 -、CO3 2-、HCO3 -、PO4 3-、SO4 2-、SiO4 4-、OH-、Cl-、NO2 -、NO3 -等が挙げられる。本発明のウイルス不活化剤に用いる層状複水酸化物は、2価の金属イオン(M2+)、3価の金属イオン(M3+)、陰イオン(An-)として、どのようなものを用いたものでもよい。
また、層状複水酸化物は、正電荷をもつ水酸化物層がシート状に積み重なり、その層間に負電荷をもつ陰イオンと水が保持された構造であり、水酸化物層のシートの積み重なり方により、菱面体晶構造のものと六方晶構造のものがある。本発明のウイルス不活化剤に用いる層状複水酸化物は、いずれの構造であってもよい。
また、本発明のウイルス不活化剤に用いる層状複水酸化物の形状は、スラリー状で用いるほか、スラリーをろ過・洗浄・乾燥・粉砕して粉末状にしたものや、粒状にしたもの等を用いることができる。なお、粒状で用いる場合、その粒径は特に限定されるものではないが、本発明のウイルス不活化剤に用いる層状複水酸化物の比表面積が20m2/g以上のものであることから、従来の層状複水酸化物(比表面積の小さい層状複水酸化物)よりも大きい粒径を用いても高い効果を得ることができる。
また、本発明のウイルス不活化剤に用いる層状複水酸化物の結晶子サイズは、20nm以下とすることができ、10nm以下であることが好ましい。また、平均結晶子サイズが10nm以下であることが好ましい。
また、本発明のウイルス不活化剤に用いる層状複水酸化物は、層状複水酸化物の焼成物であってもよい。当該焼成物は、例えば、層状複水酸化物を約500℃以上で焼成することにより得ることができる。
本発明のウイルス不活化剤に用いる層状複水酸化物は、BET法による比表面積が20m2/g以上であり、好ましくは30m2/g以上であり、更に好ましくは50m2/g以上であり、更に好ましくは70m2/g以上である。比表面積の上限は特に限定されない。
BET法による比表面積は、例えば、窒素吸脱着等温線を比表面積・細孔分布測定装置を用いて測定し、当該測定結果からBET−plotを作成して求めることができる。
また、本発明のウイルス不活化剤に用いる層状複水酸化物は、抗ウイルス性金属成分を担持させたものとすることもできる。抗菌ウイルス性金属成分としては、銅、銀、金、鉛、白金、ニッケル、アルミニウム、錫、亜鉛、コバルト、ニッケル、マンガン、チタン等の金属の原子、イオン、または化合物を用いることができる。ここで、化合物とは、無機酸塩、有機酸塩、酸化物又または錯体を含むものである。例えば、銅の化合物としては、硫酸銅、硝酸銅、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、炭酸銅、オレイン酸銅、ナフテン酸銅、酸化第一銅、酸化第二銅、銅クロロフィル、フタロシアニン銅、等が挙げられる。
また、本発明のウイルス不活化剤に用いる層状複水酸化物は、活性炭又はゼオライトに担持させたものであることが好ましい。これにより、層状複水酸化物に由来する吸着作用および陰イオン交換作用に加えて、活性炭に由来する吸着作用やゼオライトに由来する吸着作用および陽イオン交換作用を有するものとなる。また、活性炭は、微小な黒鉛様結晶子とそれらをつなぐ炭化水素部分からなり、多孔性構造を有するものである。活性炭が多機能である理由はこの多孔性構造にあると考えられており、孔径に応じて異なる機能が発揮される。これに対し、本発明の層状複水酸化物の結晶子サイズが20nm以下の場合には、活性炭の細孔に比較して小さいことから、活性炭本来の吸着作用効果を阻害することがない。したがって、層状複水酸化物と活性炭の両方の効果を発揮できるという利点を有する。
本発明のウイルス不活化剤に用いる活性炭は、その原料が、石炭系(泥炭、亜炭、かつ炭、瀝青炭等)、木質系(ヤシ殻、木材、おが屑)、その他(石油ピッチ、合成樹脂(高分子)、各種有機灰等)のいずれを用いたものでもよい。また、活性炭の形状は、粉末状活性炭、破砕、顆粒、成型等の粒状活性炭、繊維状活性炭等、どのような形状であってもよい。
ゼオライトは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む含水アルミノケイ酸塩であり、一般式が(MI , MII 1/2)m(AlmSinO2(m+n))・xH2O(ここで、MIは1価の金属イオン、MIIは2価の金属イオン、n≧m)で表されるものである。1価の金属イオン(MI)としては、例えば、Li+、Na+、K+等が挙げられる。また、2価の金属イオン(MII)としては、例えば、Ca2+、Mg2+、Ba2+等が挙げられる。本発明のウイルス不活化剤に用いるゼオライトは、1価の金属イオン(MI)、2価の金属イオン(MII)として、どのようなものを用いたものでもよい。また、天然ゼオライト、人工ゼオライト、合成ゼオライトのいずれを用いてもよい。ゼオライトの構造としては、例えば、A型(構造コード:LTA)、フェリエライト(構造コード:FER)、MCM−22(構造コード:MWW)、ZSM−5(構造コード:MFI)、モルデナイト(構造コード:MOR)、L型(構造コード:LTL)、Y型・X型(構造コード:FAU)、ベータ型(構造コード:BEA)等が挙げられるが、どのような構造のものを用いてもよい。また、ゼオライトの形状は、粉末状、粒状等どのようなものであってもよい。
本発明のウイルス不活化剤に用いる層状複水酸化物、活性炭およびゼオライトの種類や配合割合は、適宜選択すればよい。
層状複水酸化物を活性炭又はゼオライトに担持させる方法は、互いに接触させて一体化せしめる方法であれば特に限定されるものではない。活性炭への担持方法としては、例えば、層状複水酸化物を溶媒に溶解して活性炭と均一に混合した後、撹拌し、所定条件の処理をして層状複水酸化物を活性炭に吸着させる方法が挙げられる。また、ゼオライトへの担持方法としては、ゼオライトおよびアルカリ溶液を含有する原料と、2価の金属イオンを含む可溶性塩および3価の金属イオンを含む可溶性塩を溶媒に溶解した層状複水酸化物の前駆体を含有する原料とを接触させる方法が挙げられる。また、バインダーを用いて、層状複水酸化物を活性炭又はゼオライトの表面に結合させてもよい。
また、本発明のウイルス不活化剤に用いる層状複水酸化物は、樹脂又は繊維に担持させたものとすることができる。
ここで、本発明に用いる樹脂としては、天然樹脂、合成樹脂のいずれであってもよい。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。例えば、熱可塑性プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル等の汎用プラスチック、超高分子量ポリエチレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブチレン・テレフタラレート、ポリエチレン・テレフタレート、ポリフェニレンオキシド等のエンジニアリングプラスチック、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミド・イミド、ポリエーテル・スルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリフェニレン・スルフィド、ポリテトラ・フルオロ・エチレン、液晶ポリマー等のスーパーエンジニアリングプラスチックを用いることができる。また、熱硬化性プラスチックとしては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。また、熱可塑性エラストマー、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の熱硬化性樹脂系エラストマー、天然ゴム等を用いることができる。
また、本発明に用いる繊維としては、天然繊維、化学繊維のいずれであってもよい。天然繊維としては、例えば、絹、羽毛、獣毛等の動物性繊維、綿、麻等の植物繊維、石綿等の鉱物繊維を用いることができる。化学繊維としては、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維、ナイロン、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、レクセ・サクセス、ポリウレタン等の合成繊維、金属繊維、炭素繊維、ケイ酸塩繊維、精製繊維等の無機繊維を用いることができる。
層状複水酸化物を樹脂又は繊維に担持させる方法は、互いに接触させて一体化せしめる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、バインダーを用いて層状複水酸化物を樹脂又は繊維の表面に結合させる方法や、層状複水酸化物を溶媒に溶解して樹脂又は繊維と均一に混合した後、撹拌し、所定条件の処理をして添着させる方法が挙げられる。また、層状複水酸化物を担持させた樹脂を繊維に含浸・コーティングする方法を用いることもできる。
本発明のウイルス不活化剤に用いる層状複水酸化物、樹脂および繊維の種類や配合割合は、適宜選択すればよい。
[ウイルス不活化剤の製造方法]
本発明のウイルス不活化剤に用いる層状複水酸化物は、(1)2価の金属イオンと、3価の金属イオンと、を含む酸性溶液と、(2)アルカリ性溶液と、(3)抗ウイルス性金属成分を含む水溶液と、を混合する層状複水酸化物合成工程において合成することができる。
本発明のウイルス不活化剤に用いる層状複水酸化物は、(1)2価の金属イオンと、3価の金属イオンと、を含む酸性溶液と、(2)アルカリ性溶液と、(3)抗ウイルス性金属成分を含む水溶液と、を混合する層状複水酸化物合成工程において合成することができる。
ここで酸性溶液に含まれる2価の金属イオンとしては、例えば、Mg2+、Fe2+、Zn2+、Ca2+、Li2+、Ni2+、Co2+、Cu2+等を用いることができる。また、3価の金属イオンとしては、例えば、Al3+、Fe3+、Cr3+、Mn3+等を用いることができる。
また、層状複水酸化物は、生成後の熟成時間を短くする程、比表面積の大きいものを製造することができる。したがって、熟成時間は、比表面積が20m2/g以上、好ましくは30m2/g以上、更に好ましくは50m2/g以上、更に好ましくは70m2/g以上となるように熟成時間をコントロールする必要がある。具体的な熟成時間は、2時間以内にするのが良く、好ましくは1時間以内にするのが良く、更に好ましくは、熟成を行わないのが良い。熟成を止めるには、酸性溶液とアルカリ性溶液の混合が完了した後、当該混合液のpHを層状複水酸化物の結晶成長が止まる値まで下げれば良い。例えば、一般式がMg2+ 1-xAl3+ x(OH)2(An-)x/n・mH2Oで表される層状複水酸化物は、pHを9以下にすると熟成を止めることができる。また、一般式Zn2+ 1-xAl3+ x(OH)2(An-)x/n・mH2Oで表される層状複水酸化物は、pHを5以下にすると熟成を止めることができる。また、水分を除去することによっても、熟成を止めることができる。水分を除去するためには、吸引濾過、遠心分離など水分と層状複水酸化物とを分離するための適当な分離方法を用いれば良い。
また、本発明のウイルス不活化剤に用いる層状複水酸化物は、既に合成された層状複水酸化物に対して抗ウイルス性金属成分を接触させて調製しても良く、また、層状複水酸化物の合成時に同時に合成しても良い。
合成の方法としては、(1)2価の金属イオンと、3価の金属イオンと、を含む酸性溶液と、(2)アルカリ性溶液と、を混合して合成する際に、(3)抗ウイルス性金属成分を含む水溶液を更に混合して同時に合成すれば良い。
抗ウイルス性金属成分を担持させた層状複水酸化物を合成したい場合には、水溶液の抗ウイルス性金属成分源として、例えば、硫酸銅、硝酸銅、塩化第一銅、塩化第二銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅等の水溶性金属塩を用いることができる。
(1)2価の金属イオン及び3価の金属イオンを含む酸性溶液と、(2)アルカリ性溶液と、(3)抗ウイルス性金属成分を含む水溶液と、を混合する方法は、各溶液を十分に撹拌できるものであれば特に限定されないが、例えば、酸性溶液とアルカリ性溶液を混合した後、金属イオンを同時に又は速やかに混合すれば良い。また、抗ウイルス性金属成分を含む水溶液の存在下で、酸性溶液とアルカリ性溶液を適量ずつ混合させてもよい。
以下に、本発明のウイルス不活化剤に用いる層状複水酸化物の具体的な合成方法を説明する。
例えば、一般式が、Mg2+ 1-xAl3+ x(OH)2(An-)x/n・mH2O(An-はn価の陰イオン、m>0)である層状複水酸化物を製造する場合には、まず、アルミニウムイオンとマグネシウムイオンを含む酸性溶液を調製する。
アルミニウムイオンのアルミニウム源としては、水中でアルミニウムイオンを生成するものであれば良く、特定の物質に限定されるものではない。例えば、アルミナ、アルミン酸ソーダ、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、ボーキサイト、ボーキサイトからのアルミナ製造残渣、アルミスラッジ等を用いることができる。また、これらアルミニウム源は、いずれかを単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
また、マグネシウムイオンのマグネシウム源としては、水中でマグネシウムイオンを生成する物であれば良く、特定の物質に限定されるものではない。例えば、ブルーサイト、水酸化マグネシウム、マグネサイト、マグネサイトの焼成物等を用いることができる。これらマグネシウム源は、いずれかを単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
なお、前記アルミニウム源としてのアルミニウム化合物、マグネシウム源としてのマグネシウム化合物は、前記酸性溶液にアルミニウムイオン、マグネシウムイオンが存在していれば完全に溶解している必要はない。したがって、酸性溶液中に溶解していないアルミニウム化合物やマグネシウム化合物を含んでいても問題なく層状複水酸化物を製造することができる。
また、Mg2+ 1-xAl3+ x(OH)2(An-)x/n・mH2Oで表わされる高結晶質の層状複水酸化物は、アルミニウムイオンとマグネシウムイオンのモル比が1:3(x=0.25)となっていることが知られている。したがって、酸性溶液中のアルミニウムイオンとマグネシウムイオンのモル比は、1:5〜1:2の範囲とするのが好ましい。この範囲とすることによって、アルミニウム源とマグネシウム源を無駄にすることなく、物質収支的に有利に層状複水酸化物を製造することができる。
酸性溶液に含まれる酸としては、水溶液を酸性にするものであれば特に限定されないが、例えば、硝酸や塩酸を用いることができる。
アルカリ性溶液に含まれるアルカリとしては、水溶液をアルカリ性にするものであれば特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等を用いることができる。また、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、アンモニア水、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウムなどを用いることもできる。これらはいずれかを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アルカリ性溶液は、pHを8〜14に調製したものを用いることができ、pHを8〜11に調製したものを用いるのが好ましい。
この酸性溶液とアルカリ性溶液を所定の割合で混合することにより、層状複水酸化物が生成する。この際、上述したように、層状複水酸化物は、生成後の熟成時間を短くする程、比表面積の大きいものを製造することができる。したがって、当該層状複水酸化物合成工程は、当該酸性溶液とアルカリ性溶液の混合が完了した後、2時間以内、好ましくは1時間以内に熟成を止めるのが良く、更に好ましくは、熟成を行わないのが良い。
熟成を止めるには、酸性溶液とアルカリ性溶液の混合が完了した後、当該混合液のpHを層状複水酸化物の結晶成長が止まる値まで下げる方法と、水分を除去する方法がある。
pHを層状複水酸化物の結晶成長が止まる値まで下げる方法としては、例えば、酸性溶液とアルカリ性溶液を混合した後に直ちに水で希釈する方法により行うことができる。例えば、一般式がMg2+ 1-xAl3+ x(OH)2(An-)x/n・mH2Oで表される層状複水酸化物は、pHが9以下となるように水で希釈すれば良い。
水分の除去は、吸引濾過、遠心分離など水分と層状複水酸化物とを分離するための適当な分離方法を用いることができる。
また、本発明のウイルス不活化剤に用いる層状複水酸化物は、上述したように、既に合成された層状複水酸化物に対して抗ウイルス性金属成分を接触させて調製しても良く、また、層状複水酸化物の合成時に同時に合成しても良い。
[樹脂]
次に、本発明の樹脂について説明する。
次に、本発明の樹脂について説明する。
本発明の樹脂は、上述した本発明のウイルス不活化剤を含有することを特徴とする。樹脂にウイルス不活化剤を含有させる方法は特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、粉末樹脂や液状樹脂に直接混合・分散する方法や、一旦ペレットを作製し、当該ペレットを用いて混合・分散させる方法を用いることができる。
本発明に用いることのできる樹脂の種類は、上述の通りである。また、本発明の樹脂に用いる層状複水酸化物および樹脂の種類や配合割合は、適宜選択すればよい。
本発明の樹脂を用いて、公知の方法で成形することにより、抗ウイルス性の成形体を得ることができる。本発明の樹脂を用いた成形体の例としては、冷蔵庫、食器乾燥機、炊飯器、携帯電話機等の家電・電化製品や、食品包装用フィルム、食器、まな板等の食品衛生用品のほか、住宅用建材等が挙げられ、抗ウイルス機能を要する種々の分野の製品に応用が可能である。
[繊維]
次に、本発明の繊維について説明する。
次に、本発明の繊維について説明する。
本発明の繊維は、上述した本発明のウイルス不活化剤を含有することを特徴とする。繊維にウイルス不活化剤を含有させる方法は特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、化学繊維の場合、ウイルス不活化剤を配合した繊維加工用樹脂を液体にして紡糸口金から押出して繊維状にすればよい。また、ウイルス不活化剤を配合した繊維加工用バインダーを用いて繊維に結合させてもよい。
本発明に用いることのできる繊維の種類は、上述の通りである。また、本発明の繊維に用いる層状複水酸化物および繊維の種類や配合割合は、適宜選択すればよい。
本発明の繊維を用いて、公知の方法により、抗ウイルス性の繊維品を得ることができる。本発明の繊維を用いたものの例としては、カーテン、絨毯、布団、衣服、靴、鞄などが挙げられ、本発明の繊維は、抗ウイルス機能を要する種々の分野の製品に応用が可能である。
[衣服]
次に、本発明の衣服について説明する。
次に、本発明の衣服について説明する。
本発明の衣服は、上述した本発明のウイルス不活化剤を含有することを特徴とする。衣服にウイルス不活化剤を含有させる方法は特に限定されないが、例えば、上述した繊維を用いることができる。衣服の例としては、肌着、下着、靴下、ストッキング、シャツ、ズボン、スカート、セーター、コート、帽子、手袋、マフラーなどが挙げられる。
[フィルタ]
次に、本発明のフィルタについて説明する。
次に、本発明のフィルタについて説明する。
本発明のフィルタは、上述した本発明のウイルス不活化剤を含有することを特徴とする。フィルタにウイルス不活化剤を含有させる方法は特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、フィルタの基材にバインダー等を用いて本発明のウイルス不活化剤を塗布する方法が挙げられる。また、上述した繊維を用いてフィルタの基材を作製してもよい。
本発明に用いられるフィルタに用いられる基材の素材、形状加工等は特に限定されないが、例えば素材としては、不織布、紙、セラミックス、金属などが挙げられ、形状加工としては、シート加工、プリーツ加工、ハニカム加工、コルゲート加工などが挙げられる。
[マスク]
次に、本発明のマスクについて説明する。
次に、本発明のマスクについて説明する。
本発明のマスクは、上述した本発明のウイルス不活化剤を含有することを特徴とする。本発明のマスクは、ウイルスを吸着してこれらの体内への侵入を防ぐことができるとともに、ウイルスを不活化する(抗ウイルス作用を示す)ことができる。したがって、本発明のマスクを装着することにより、ウイルスの空気感染や飛沫感染等のリスクを低減させることができる。
マスクにウイルス不活化剤を含有させる方法は特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、マスクを構成する不織布の表面に本発明のウイルス不活化剤を塗布してもよいし、上述した繊維から構成された不織布を用いてマスクを作製してもよい。
本発明に用いられるマスクの素材、形状加工等は特に限定されないが、例えば素材としては、ガーゼ、ナイロン、不織布などが挙げられ、形状加工としては、平型、プリーツ型、立体型などが挙げられる。
以下に、本発明のウイルス不活化剤に用いる層状複水酸化物および本発明のウイルス不活化剤の吸着効果を示す実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1(比表面積)
製造方法等が異なる4種類の層状複水酸化物1〜4を準備し、それぞれの比表面積を測定した。比表面積の測定は、各層状複水酸化物の粉体粒子表面に窒素ガスを液体窒素の温度(−196℃)で吸着させ、その量からBET法によって計算した。その結果を表1に示す。
製造方法等が異なる4種類の層状複水酸化物1〜4を準備し、それぞれの比表面積を測定した。比表面積の測定は、各層状複水酸化物の粉体粒子表面に窒素ガスを液体窒素の温度(−196℃)で吸着させ、その量からBET法によって計算した。その結果を表1に示す。
なお、各層状複水酸化物1〜4の詳細は以下の通りである。
(1)層状複水酸化物1
和光純薬株式会社製の層状複水酸化物(販売元コード:324−87435)を層状複水酸化物1とした。
(2)層状複水酸化物2
まず、塩化マグネシウム六水和物(和光純薬工業株式会社製)16.92gと塩化アルミニウム六水和物(和光純薬工業株式会社製)10.06gを26.98gの蒸留水に溶解させ、酸性溶液を調製する。また、水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)10gを30gの蒸留水に溶解させ、アルカリ性溶液を調製する。次いで、当該酸性溶液とアルカリ溶液を混合し、当該混合溶液に281.85gの蒸留水を、時間をおかず速やかに添加して、pH7.5−8.5に調整した。そして、24時間後に当該溶液をろ過し、得られたろ過物を120℃で10時間乾燥したものを層状複水酸化物2とした。
(3)層状複水酸化物3
まず、塩化マグネシウム六水和物(和光純薬工業株式会社製)16.92gと塩化アルミニウム六水和物(和光純薬工業株式会社製)10.06gを26.98gの蒸留水に溶解させ、酸性溶液を調製する。また、水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)10gを30gの蒸留水に溶解させ、アルカリ性溶液を調製する。次いで、当該酸性溶液とアルカリ溶液を混合し、当該混合溶液に281.85gの蒸留水を、時間をおかず速やかに添加した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH10.0に調整した。そして、24時間後に当該溶液をろ過し、得られたろ過物を120℃で10時間乾燥したものを層状複水酸化物3とした。
(4)層状複水酸化物4
まず、塩化マグネシウム六水和物(和光純薬工業株式会社製)16.92gと塩化アルミニウム六水和物(和光純薬工業株式会社製)10.06gを26.98gの蒸留水に溶解させ、酸性溶液を調製する。また、水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)10gを30gの蒸留水に溶解させ、アルカリ性溶液を調製する。次いで、当該酸性溶液とアルカリ溶液を混合し、当該混合溶液に281.85gの蒸留水を、時間をおかず速やかに添加した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH12.0に調整した。そして、24時間後に当該溶液をろ過し、得られたろ過物を120℃で10時間乾燥したものを層状複水酸化物4とした。
(1)層状複水酸化物1
和光純薬株式会社製の層状複水酸化物(販売元コード:324−87435)を層状複水酸化物1とした。
(2)層状複水酸化物2
まず、塩化マグネシウム六水和物(和光純薬工業株式会社製)16.92gと塩化アルミニウム六水和物(和光純薬工業株式会社製)10.06gを26.98gの蒸留水に溶解させ、酸性溶液を調製する。また、水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)10gを30gの蒸留水に溶解させ、アルカリ性溶液を調製する。次いで、当該酸性溶液とアルカリ溶液を混合し、当該混合溶液に281.85gの蒸留水を、時間をおかず速やかに添加して、pH7.5−8.5に調整した。そして、24時間後に当該溶液をろ過し、得られたろ過物を120℃で10時間乾燥したものを層状複水酸化物2とした。
(3)層状複水酸化物3
まず、塩化マグネシウム六水和物(和光純薬工業株式会社製)16.92gと塩化アルミニウム六水和物(和光純薬工業株式会社製)10.06gを26.98gの蒸留水に溶解させ、酸性溶液を調製する。また、水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)10gを30gの蒸留水に溶解させ、アルカリ性溶液を調製する。次いで、当該酸性溶液とアルカリ溶液を混合し、当該混合溶液に281.85gの蒸留水を、時間をおかず速やかに添加した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH10.0に調整した。そして、24時間後に当該溶液をろ過し、得られたろ過物を120℃で10時間乾燥したものを層状複水酸化物3とした。
(4)層状複水酸化物4
まず、塩化マグネシウム六水和物(和光純薬工業株式会社製)16.92gと塩化アルミニウム六水和物(和光純薬工業株式会社製)10.06gを26.98gの蒸留水に溶解させ、酸性溶液を調製する。また、水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)10gを30gの蒸留水に溶解させ、アルカリ性溶液を調製する。次いで、当該酸性溶液とアルカリ溶液を混合し、当該混合溶液に281.85gの蒸留水を、時間をおかず速やかに添加した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH12.0に調整した。そして、24時間後に当該溶液をろ過し、得られたろ過物を120℃で10時間乾燥したものを層状複水酸化物4とした。
実施例2(ウイルスに対する不活化効果)
本発明ウイルス不活化剤のウイルスに対する不活化効果を調べる試験を行った。試験は、本発明ウイルス不活化剤(検体)をインフルエンザウイルスのウイルス浮遊液に添加、混合したもの(試料)を室温で振とう保存して、1時間後に試料のウイルス感染価を測定することにより行った。
本発明ウイルス不活化剤のウイルスに対する不活化効果を調べる試験を行った。試験は、本発明ウイルス不活化剤(検体)をインフルエンザウイルスのウイルス浮遊液に添加、混合したもの(試料)を室温で振とう保存して、1時間後に試料のウイルス感染価を測定することにより行った。
本発明ウイルス不活化剤(検体)としては、前記層状複水酸化物2をゼオライトに担持させたものを用いた。なお、前記層状複水酸化物2のゼオライトへの担持は、層状複水酸化物2を合成する際のアルカリ性溶液にゼオライト(和光純薬工業株式会社製、コードNo.268−01522)10gを添加することにより行った。
まず、ウイルス浮遊液の調製を以下の手法により行った。細胞増殖培地(イーグルMEM培地「ニッスイ」(1)(日本製薬株式会社製)に牛胎仔血清を10%加えたもの)を用いて使用細胞(MDCK(NBL−2)細胞,ATCC,CCL−34株)を組織培養用フラスコ内に単層培養した。その後、フラスコ内から細胞増殖培地を除いて試験ウイルス(InfluenzaA virus(H1N1)A/PR/8/34,ATCC,VR−1469)を接種した。次いで、細胞維持培地(イーグルMEM培地「ニッスイ」(1)1000mL,10%NaHCO3 14mL,L−グルタミン(30g/L)9.8mL,100×MEM用ビタミン液30mL,10%アルブミン20mL,0.25%トリプシン20mL)を加えて炭酸ガスインキュベーター(CO2濃度:5%,37±1℃)内で1〜5日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態を観察し、細胞に形態変化(細胞変性効果)が起こっていることを確認した。培養液を遠心分離(3000r/min,10分間)して得られた上澄み液を精製水で1000倍に希釈し、これをウイルス浮遊液とした。
次に、検体0.1gをウイルス浮遊液10mLに添加、混合したものを試料とし、室温で1時間、振とう保存した。当該試料を、細胞維持培地を用いて10倍に希釈し、ウイルス感染価を測定した。なお、対照として精製水を用いて同様に試験を行った。また、開始時についても測定を行った。
ウイルス感染価の測定は以下の手法により行った。まず、細胞増殖培地を用い、使用細胞を組織培養用マイクロプレート(96穴)内で単層培養した後、細胞増殖培地を除いて細胞維持培地を0.1mLずつ加えた。次いで、10倍希釈後の試料および対照を、細胞維持培地を用いて10倍段階希釈した。希釈液0.1mLを4穴ずつに接種し、炭酸ガスインキュベーター(CO2濃度:5%,37±1℃)内で4〜7日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を観察し、Reed−Muench法により50%組織培養感染量(TCID50)を算出して試料1mL当たりのウイルス感染価に換算した。
ウイルス感染価の測定結果を以下の表に示す(表中に「検出せず」とあるのは、試料1mL当たりのTCID50の対数値(LogTCID50/mL)が1.5未満であることを表す)。
検体において、インフルエンザウイルスの感染価が顕著に減少しており、本発明のウイルス不活化剤には、ウイルス不活化(抗ウイルス)作用があることがわかった。
Claims (14)
- 比表面積が20m2/g以上である層状複水酸化物を有効成分とするものであることを特徴とするウイルス不活化剤。
- 前記層状複水酸化物は、抗ウイルス性金属成分を担持させたものであることを特徴とする請求項1記載のウイルス不活化剤。
- 前記層状複水酸化物は、
(1)2価の金属イオンと、3価の金属イオンと、を含む酸性溶液と、
(2)アルカリ性溶液と、
(3)抗ウイルス性金属成分を含む水溶液と、
を混合して合成されるものであることを特徴とする請求項1ないし3記載のウイルス不活化剤。 - 比表面積が70m2/g以上である層状複水酸化物を有効成分とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のウイルス不活化剤。
- 前記層状複水酸化物は、結晶子サイズが20nm以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のウイルス不活化剤。
- 前記層状複水酸化物は、活性炭又はゼオライトに担持させたものであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のウイルス不活化剤。
- 前記層状複水酸化物は、樹脂又は繊維に担持させたものであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のウイルス不活化剤。
- 比表面積が20m2/g以上である層状複水酸化物を有効成分とする吸着剤を製造する製造方法であって、
(1)2価の金属イオンと、3価の金属イオンと、を含む酸性溶液と、
(2)アルカリ性溶液と、
(3)抗ウイルス性金属成分を含む水溶液と、
を混合して前記層状複水酸化物を合成する層状複水酸化物合成工程を有することを特徴とするウイルス不活化剤の製造方法。 - 前記層状複水酸化物合成工程は、前記酸性溶液とアルカリ性溶液の混合が完了した後、2時間以内に水分を除去又は中和することで合成することを特徴とする請求項8記載のウイルス不活化剤の製造方法。
- 請求項1ないし7のいずれかに記載のウイルス不活化剤を含有する樹脂。
- 請求項1ないし7のいずれかに記載のウイルス不活化剤を含有する繊維。
- 請求項1ないし7のいずれかに記載のウイルス不活化剤を含有する衣服。
- 請求項1ないし7のいずれかに記載のウイルス不活化剤を含有するフィルタ。
- 請求項1ないし7のいずれかに記載のウイルス不活化剤を含有するマスク。
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