JP2021025178A - 炭化ケイ素複合繊維及びその製造方法 - Google Patents

炭化ケイ素複合繊維及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、個々の繊維に炭化ケイ素がよく定着した炭化ケイ素複合繊維及びその製造方法を提供することである。【解決手段】本発明の複合繊維は、繊維、炭化ケイ素及び無機バインダを含み、無機バインダによって炭化ケイ素が繊維に定着しており、前記無機バインダが、ケイ酸、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、銅、鉄、及び亜鉛から選択される少なくとも1つを含む無機化合物を含んでなる。【選択図】図2

Description

本発明は、炭化ケイ素複合繊維及びその製造方法、並びに、炭化ケイ素複合繊維を含むシート及びその製造方法に関する。
繊維は、その表面に無機バインダを付着させることによって、様々な特性を発揮させることができる。これについて、繊維の存在下で無機物を合成することにより、無機バインダと繊維との複合体を製造する方法が開発されてきている。例えば、特許文献1には、炭酸カルシウムと、リヨセル繊維又はポリオレフィン繊維との無機バインダ複合繊維が記載されている。
特開2015−199655号公報
炭化ケイ素は熱伝導率と硬度が高く、耐熱性や耐食性、耐摩耗性などに優れており、半導体の性質を有していることが知られている。しかし、個々の繊維に、無機物である炭化ケイ素をしっかりと固着(定着)させる技術は知られていない。
そこで、本発明は、繊維中に炭化ケイ素がよく定着した炭化ケイ素複合繊維及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題について鋭意検討した結果、炭化ケイ素と繊維とを特定の無機バインダを介して固着させることによって前記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の態様を包含する。
(1) 繊維、炭化ケイ素及び無機バインダを含み、無機バインダによって炭化ケイ素が繊維に定着している複合繊維であって、前記無機バインダが、ケイ酸、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、銅、鉄、及び亜鉛から選択される少なくとも1つを含む無機化合物を含んでなる、上記複合繊維。
(2) 前記無機バインダの少なくとも一部が、マグネシウム、亜鉛及びバリウムから選択される少なくとも1つの金属とアルミニウムとを含む無機塩を含む、(1)に記載の複合繊維。
(3) 前記無機バインダが、ハイドロタルサイトを含む、(1)又は(2)に記載の複合繊維。
(4) 前記繊維が、セルロース繊維である、(1)〜(3)のいずれかに記載の複合繊維。
(5) 前記繊維の表面の15%以上が炭化ケイ素および無機バインダによって被覆されている、(1)〜(4)のいずれかに記載の複合繊維。
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載の複合繊維を含んでなるシート。
(7) (1)〜(5)のいずれかに記載の複合繊維の製造方法であって、
繊維および炭化ケイ素を含むスラリーを調製する工程と、前記スラリー中で無機バインダを合成して、無機バインダによって炭化ケイ素が繊維に定着している複合繊維を得る工程と、を含む、上記方法。
(8) 繊維および炭化ケイ素を含むスラリーのpHが11〜14である、(7)に記載の方法。
本発明の一態様によれば、繊維中に炭化ケイ素がよく定着した炭化ケイ素複合繊維を提供できる。
実施例における炭化ケイ素及びハイドロタルサイトとセルロース繊維との複合繊維の合成に用いた反応装置の概略の構成を示す模式図である。 実施例1において作製した炭化ケイ素複合繊維の走査型電子顕微鏡による観察結果を示す図である(左:倍率3000倍、右:倍率10000倍)。 実施例2において作製した炭化ケイ素複合繊維の走査型電子顕微鏡による観察結果を示す図である(左:倍率3000倍、右:倍率10000倍)。 耐熱性試験の様子を示す写真である
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。
〔炭化ケイ素複合繊維〕
本発明の一態様に係る炭化ケイ素複合繊維は、繊維、炭化ケイ素及び無機バインダを含み、前記繊維に無機バインダが固着し、前記炭化ケイ素が前記無機バインダに固着することで、前記無機バインダを介して炭化ケイ素が繊維に固着している。
本発明の一態様に係る炭化ケイ素複合繊維では、単に繊維と炭化ケイ素及び無機バインダとが混在しただけのものと比べて、繊維と炭化ケイ素とが無機バインダを介してしっかりと固着し、複合化している。これにより、炭化ケイ素が繊維から脱落し難い。従って、炭化ケイ素の歩留まりが高く、高い熱伝導率を有する複合繊維を製造することができる。
複合繊維における繊維と無機バインダ及び炭化ケイ素との結着の強さは、例えば、灰分歩留(%)によって評価できる。例えば、複合繊維がシート状である場合、(シートの灰分÷離解前の複合繊維の灰分)×100といった数値によって評価することができる。具体的には、複合繊維を水に分散させて固形分濃度0.2%に調整してJIS P 8220−1:2012に規定される標準離解機で5分間離解後、JIS P 8222:1998に従って150メッシュのワイヤーを用いてシート化した際の灰分歩留を評価に用いることができる。
好ましい態様において、灰分歩留は80質量%以上であり、より好ましい態様において灰分歩留は90質量%以上である。つまり、単に炭化ケイ素を繊維に内添させた場合、又は、単に炭化ケイ素と無機バインダとを繊維に配合した場合と異なり、無機バインダ及び炭化ケイ素を繊維と複合化しておくと、例えば、シート状の複合繊維とする態様において、無機バインダ及び炭化ケイ素が複合繊維に歩留易いだけでなく、凝集せずに均一に分散した複合繊維を得ることができる。
本発明の一態様において、炭化ケイ素複合繊維における繊維表面の15%以上が無機バインダによって被覆されていることが好ましい。このような面積率で繊維表面が無機バインダに被覆されていると、炭化ケイ素を高い比率で繊維中に留め、効率よく結着させることができる。したがって、炭化ケイ素の白色度及び隠蔽力をより顕著に発揮させることができる。また、複合繊維において、無機バインダによる繊維の被覆率(面積率)は、50%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。また、本発明にしたがって繊維及び炭化ケイ素を含有する溶液中で無機バインダを合成する方法によれば、被覆率が90%以上、さらには95%以上の複合繊維も好適に製造できる。被覆率の上限値は用途に応じて適宜設定すればよいが、例えば、100%、90%、80%である。また、本発明の一態様における複合繊維では、無機バインダが繊維の外表面に生成することが電子顕微鏡観察の結果から明らかとなっている。
本発明の一態様において、炭化ケイ素複合繊維の全灰分(%)は20%以上、80%以下であることが好ましく、30%以上、60%以下であることがより好ましい。複合繊維の全灰分(%)は、ろ紙を用いて複合繊維のスラリー(固形分換算で3g)を吸引濾過した後、残渣をオーブンで乾燥し(105℃、2時間)、さらに525℃で有機分を燃焼させ、燃焼前後の質量から算出することができる。このような複合繊維をシート化することによって、高灰分の複合繊維シートを製造することができる。
〔無機バインダ〕
本発明の一態様に係る炭化ケイ素複合繊維を構成する無機バインダとしては、繊維及び炭化ケイ素に固着するものであればよく、水に不溶性又は難溶性の無機バインダであることが好ましい。無機バインダの合成を水系で行う場合があり、また、複合繊維を水系で使用することもあるため、無機バインダが水に不溶性又は難溶性であると好ましい。
無機バインダは、固形状の無機化合物であり、例えば金属化合物が挙げられる。金属化合物とは、金属の陽イオン(例えば、Na、Ca2+、Mg2+、Al3+、Ba2+等)と陰イオン(例えば、O2−、OH、CO 2−、PO 3−、SO 2−、NO−、Si 2−、SiO 2−、Cl、F、S2−等)とがイオン結合によって結合してできた、一般に無機塩と呼ばれるものをいう。無機バインダの具体例としては、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、亜鉛、及び、アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属を含む化合物が挙げられる。また、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、リン酸カルシウム、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ケイ酸ナトリウムと鉱酸から製造されるシリカ(ホワイトカーボン、シリカ/炭酸カルシウム複合物、シリカ/二酸化チタン複合物)、硫酸カルシウム、ゼオライト、ハイドロタルサイトが挙げられる。以上に例示した無機バインダについては、繊維を含む溶液中で、互いに合成する反応を阻害しない限り、単独でも2種類以上の組み合わせで用いてもよい。
本発明の一実施形態において、無機バインダは、少なくとも一部が、ケイ酸、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、銅、鉄、及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つを含む金属塩あるいは金属粒子を含む。炭化ケイ素との結合性の高さから、硫酸バリウム及びハイドロタルサイトがより好ましく、ハイドロタルサイトが特に好ましい。
一般に、ハイドロタルサイトは、[M2+ 1−x3+ (OH)][An− x/n・mHO](式中、M2+は2価の金属イオンを、M3+は3価の金属イオンを表し、An− x/nは層間陰イオンを表す。また0<x<1であり、nはAの価数、0≦m<1である)という一般式で示される。ここで、2価の金属イオンであるM2+は、例えば、Mg2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Fe2+、Ca2+、Ba2+、Cu2+、Mn2+等、3価の金属イオンであるM3+は、例えば、Al3+、Fe3+、Cr3+、Ga3+等、層間陰イオンであるAn−は、例えば、OH、Cl、CO 、SO 等のn価の陰イオンを挙げることができ、xは一般に0.2〜0.33の範囲である。このうち、2価の金属イオンとしては、Mg2+、Zn2+、Fe2+、Mn2+が好ましく、Mg2+が特に好ましい。
結晶構造は、正の電荷をもつ正八面体のbrucite単位が並んだ二次元基本層と負の電荷を持つ中間層からなる積層構造をとっている。
ハイドロタルサイトは、複合繊維中で陰イオン交換機能を発揮して、優れた吸着性を示すことができる。特にマグネシウム系ハイドロタルサイトは、他の無機バインダに比べ、廃水処理が容易であると共に、熱に対して安定であり、また、白色度が高いことから紙としての利用に好適等の理由から好ましい。
本発明の一態様において、複合繊維中に占める無機バインダの比率は、灰分として、10質量%以上とすることが可能であり、20質量%以上とすることもでき、好ましくは40質量%以上とすることもできる。複合繊維の灰分は、JIS P 8251:2003に従って測定することができる。
無機バインダがハイドロタルサイトである場合、ハイドロタルサイトと炭化ケイ素と繊維との複合繊維は、灰分中、マグネシウム、鉄、マンガンまたは亜鉛を10質量%以上含むことが好ましく、20質量%以上含むことがより好ましい。灰分中のマグネシウムまたは亜鉛の含有量は、蛍光X線分析により定量することができる。
一つの好ましい態様として、無機バインダの平均一次粒子径を、例えば、1μm以下とすることができるが、平均一次粒子径が500nm以下の無機バインダ、平均一次粒子径が200nm以下の無機バインダ、平均一次粒子径が100nm以下の無機バインダ、平均一次粒子径が50nm以下の無機バインダを用いることができる。また、無機バインダの平均一次粒子径は10nm以上とすることも可能である。
なお、本願明細書において、平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡写真に基づいて算出される値である。具体的には、電子顕微鏡写真の粒子画像の面積を計測し、それと同じ面積の円の直径として、粒子の一次粒子径を求める。粒子の平均一次粒子径は、無作為に選択される100個以上の粒子について求められる一次粒子径の平均値として算出される、体積基準の積算分率における50%粒子径であり、市販の画像解析装置を用いて算出することができる。
また、無機バインダを合成する際の条件を調整することによって、種々の大きさ及び形状を有する無機バインダを繊維と複合化することができる。例えば、鱗片状の無機バインダが繊維に複合化している複合繊維とすることもできる。複合繊維を構成する無機バインダの形状は、電子顕微鏡による観察により確認することができる。
また、無機バインダは、微細な一次粒子が凝集した二次粒子の形態を取ることもあり、熟成工程によって用途に応じた二次粒子を生成させてもよく、また、粉砕によって凝集塊を細かくしてもよい。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。
〔繊維〕
本発明の一態様に係る炭化ケイ素複合繊維を構成する繊維は、例えば、セルロース繊維が好ましい。セルロース繊維の原料としては、パルプ繊維(木材パルプ、非木材パルプ)、バクテリアセルロース、ホヤ等の動物由来セルロース、藻類が例示され、木材パルプは、木材原料をパルプ化して製造すればよい。木材原料としては、アカマツ、クロマツ、トドマツ、エゾマツ、ベニマツ、カラマツ、モミ、ツガ、スギ、ヒノキ、カラマツ、シラベ、トウヒ、ヒバ、ダグラスファー、ヘムロック、ホワイトファー、スプルース、バルサムファー、シーダ、パイン、メルクシマツ、ラジアータパイン等の針葉樹、及びこれらの混合材、ブナ、カバ、ハンノキ、ナラ、タブ、シイ、シラカバ、ハコヤナギ、ポプラ、タモ、ドロヤナギ、ユーカリ、マングローブ、ラワン、アカシア等の広葉樹及びこれらの混合材が例示される。
木材原料(木質原料)等の天然材料をパルプ化する方法は、特に限定されず、製紙業界で一般に用いられるパルプ化法が例示される。木材パルプはパルプ化法により分類でき、例えば、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法等の方法により蒸解した化学パルプ;リファイナー、グラインダー等の機械力によってパルプ化して得られる機械パルプ;薬品による前処理の後、機械力によるパルプ化を行って得られるセミケミカルパルプ;古紙パルプ;脱墨パルプ等が挙げられる。木材パルプは、未晒(漂白前)の状態であってもよいし、晒(漂白後)の状態であってもよい。
非木材由来のパルプとしては、綿、ヘンプ、サイザル麻、マニラ麻、亜麻、藁、竹、バガス、ケナフ、サトウキビ、トウモロコシ、稲わら、楮(こうぞ)、みつまた等が例示される。
パルプ繊維は、未叩解及び叩解のいずれでもよく、複合繊維の物性に応じて選択すればよいが、叩解を行う方が好ましい。これにより、パルプ繊維の強度の向上、並びに、炭化ケイ素及び無機バインダの定着促進が期待できる。また、パルプ繊維を叩解することにより、シート状の複合繊維とする態様において、複合繊維シートのBET比表面積の向上効果が期待できる。尚、パルプ繊維の叩解の程度はJIS P 8121−2:2012に規定されるカナダ標準濾水度(Canadian Standard freeness:CSF)によって表わすことができる。叩解が進むにつれてパルプ繊維の水切れ状態が低下し、濾水度は低くなる。
また、セルロース原料はさらに処理を施すことで、微粉砕セルロース、酸化セルロース等の化学変性セルロースとして使用することもできる。
また、セルロース繊維の他にも様々な、天然繊維、合成繊維、半合繊維、無機繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、ウール、絹糸、コラーゲン繊維等の蛋白系繊維、キチン・キトサン繊維、アルギン酸繊維等の複合糖鎖系繊維等が挙げられる。合成繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、半合繊維としてはレーヨン、リヨセル、アセテート等が挙げられる。無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維等が挙げられる。
また、合成繊維とセルロース繊維との複合繊維も本発明の一態様において使用することができ、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維等とセルロース繊維との複合繊維も使用することができる。
以上に示した例の中でも、木材パルプを含むか、若しくは、木材パルプと非木材パルプ及び/又は合成繊維との組み合わせを含むことが好ましく、木材パルプのみであることがより好ましい。好ましい態様において、複合繊維を構成する繊維はパルプ繊維である。
以上に例示した繊維については単独でも2種類以上の組み合わせで用いてもよい。
複合化する繊維の繊維長は特に制限されないが、例えば、平均繊維長が0.1μm〜15mm程度とすることができ、10μm〜12mm、50μm〜10mm、200μm〜8mmなどとしてもよい。このうち、本発明においては、平均繊維長が50μmより長いことが脱水やシート化が容易なため好ましい。平均繊維長が200μmより長いことが通常の抄紙工程で使用する脱水およびもしくは抄紙用のワイヤー(フィルター)のメッシュを使用して脱水やシート化が可能なためさらに好ましい。
複合化する繊維の繊維径は特に制限されないが、例えば、平均繊維径が1nm〜100μm程度とすることができ、10nm〜100μm、0.15μm〜100μm、1μm〜90μm、3〜50μm、5〜30μmなどとしてもよい。このうち、本発明においては、平均繊維径が500nmより高いことが水やシート化が容易なため好ましい。平均繊維径が1μmより高いことが通常の抄紙工程で使用する脱水およびもしくは抄紙用のワイヤー(フィルター)のメッシュを使用して脱水やシート化が可能なためさらに好ましい。
複合化する繊維の量は、繊維表面の15%以上が無機バインダで被覆されるような量とすることが好ましい。例えば、繊維と無機バインダとの質量比を、25/75〜95/5とすることが好ましく、30/70〜90/10とすることがより好ましく、40/60〜85/15とすることがさらに好ましい。
〔複合体を形成していない繊維〕
複合繊維含有スラリー中には、複合体を形成していない繊維が含まれていてもよい。複合体を形成していない繊維も含むことで、得られるシートの強度を向上させることができる。ここでいう「複合体を形成していない繊維」とは、無機バインダが複合化されていない繊維が意図される。複合体を形成していない繊維としては特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。複合体を形成していない繊維としては、例えば、上記に例示した繊維の他にも様々な、天然繊維、合成繊維、半合繊維、無機繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、ウール、絹糸、コラーゲン繊維等の蛋白系繊維、キチン・キトサン繊維、アルギン酸繊維等の複合糖鎖系繊維等が挙げられる。合成繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、半合繊維としてはレーヨン、リヨセル、アセテート等が挙げられる。無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維等が挙げられる。
また、合成繊維とセルロース繊維との複合繊維は、複合体を形成していない繊維として使用することができ、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維等とセルロース繊維との複合繊維も複合体を形成していない繊維として使用することができる。
以上に示した例の中でも、複合体を形成していない繊維は、木材パルプを含むか、若しくは、木材パルプと非木材パルプ及び/又は合成繊維との組合せを含むことが好ましく、木材パルプのみであることがより好ましい。また、繊維長が長く強度の向上に有利なことから、針葉樹クラフトパルプがさらに好ましい。
複合繊維と複合体を形成していない繊維との質量比は、10/90〜100/0とすることが好ましく、20/80〜90/10、30/70〜80/20としてもよい。複合繊維の配合量が多い程、得られるシートにおいて、炭化ケイ素の特性が発現し易い。
〔炭化ケイ素〕
本発明の一態様に係る炭化ケイ素複合繊維を構成する炭化ケイ素は、繊維中に高い定着率で存在することにより、複合繊維に、高い熱伝導率及び耐熱性を付与することができる。
炭化ケイ素複合繊維中に占める炭化ケイ素の比率は、灰分として、5質量%以上とすることが可能であり、40質量%以上とすることもでき、例えば、5〜30質量%であり、好ましくは15〜35質量%である。複合繊維中の炭化ケイ素の比率が高いほど、高い熱伝導率及び耐熱性を付与することができる。
本発明において、炭化ケイ素としては、工業用又は実験用として一般に市販される任意の純度の製品を用いることができるが、熱伝導率及び耐熱性から、炭化ケイ素を50質量%以上含有するものを用いることが好ましく、80質量%以上含有するものを用いることがより好ましい。
炭化ケイ素の平均一次粒子径は、200〜8000nmであることが好ましく、300〜5000μmであることがより好ましく、500〜1000μmであることがさらに好ましい。炭化ケイ素の平均一次粒子径をこの範囲とすることにより、より歩留りの高い成形シートを与える複合繊維を得ることができる。
炭化ケイ素としては、表面処理を施したものを使用してもよい。表面処理剤としては、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛等の金属酸化物等が挙げられるがこれに限定されない。
〔炭化ケイ素複合繊維の製造〕
炭化ケイ素複合繊維は、繊維及び炭化ケイ素を含むスラリー中で、固形状の無機バインダを合成することによって製造することができる。
繊維及び炭化ケイ素を含むスラリー中で無機バインダを合成することによって、繊維に固形状の無機バインダが固着すると共に、炭化ケイ素が無機バインダに固着する結果、三者が複合化した複合繊維を生成することができる。この複合繊維を用いることで、繊維中に炭化ケイ素が効率よく定着した炭化ケイ素複合繊維を得ることができる。
例えば、無機バインダがハイドロタルサイトである場合、繊維及び炭化ケイ素を含む溶液中でハイドロタルサイトを合成することによって、ハイドロタルサイトと炭化ケイ素と繊維との複合繊維を製造することができる。
ハイドロタルサイトの合成方法は公知の方法によることができる。例えば、まず、反応容器内に中間層を構成する炭酸イオンを含む炭酸塩水溶液とアルカリ性水溶液(水酸化ナトリウム等)に繊維を浸漬し、懸濁してスラリーを形成する。次いで、得られたアルカリ性スラリー中に炭化ケイ素を添加し、分散させる。次いで、炭化ケイ素が添加されたアルカリ性スラリーに、酸溶液(基本層を構成する二価金属イオン及び三価金属イオンを含む金属塩水溶液)を添加し、温度、pH等を制御して共沈反応により、ハイドロタルサイトを合成する。これにより、繊維表面上にハイドロタルサイトが形成されるときに、スラリー中に分散する炭化ケイ素がハイドロタルサイトに取り込まれたり、密着したりする。その結果、スラリー中に存在する炭化ケイ素を、高い比率で効率よく、且つ、均一に、繊維に固着させることができる。
繊維を浸漬し、懸濁して得られるスラリーは、pHが11〜14の範囲となるように、より好ましくは12〜13の範囲となるように調整することが好ましい。スラリーのpHがこの範囲であることにより、次いで添加される炭化ケイ素が、スラリー中に均一に分散することができる。
また、基本層を構成する二価金属イオンの供給源として、マグネシウム、亜鉛、バリウム、カルシウム、鉄、銅、銀、コバルト、ニッケル、マンガンの各種塩化物、硫化物、硝酸化物、硫酸化物を用いることができる。また、基本層を構成する三価金属イオンの供給源として、アルミニウム、鉄、クロム、ガリウムの各種塩化物、硫化物、硝酸化物、硫酸化物を用いることができる。
また、例えば、無機バインダが他の金属化合物である場合、同様に、繊維及び炭化ケイ素を含む溶液中で金属化合物を合成することによって、金属化合物と炭化ケイ素と繊維との複合繊維を製造することができる。
金属化合物の合成法は特に限定されず、公知の方法により合成することができ、気液法及び液液法のいずれでもよい。気液法の一例としては炭酸ガス法があり、例えば水酸化マグネシウムと炭酸ガスとを反応させることで、炭酸マグネシウムを合成することができる。また、水酸化カルシウムと炭酸ガスとを反応させる炭酸ガス法により、炭酸カルシウムを合成することができる。例えば、炭酸カルシウムは、可溶性塩反応法、石灰・ソーダ法、ソーダ法により合成してもよい。液液法の例としては、酸(塩酸、硫酸等)と塩基(水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等)を中和によって反応させたり、無機塩と酸もしくは塩基を反応させたり、無機塩同士を反応させたりする方法が挙げられる。例えば、水酸化バリウムと硫酸とを反応させることで硫酸バリウムを得ることができる。塩化アルミニウムまたは硫酸アルミニウムと水酸化ナトリウムとを反応させることで、水酸化アルミニウムを得ることができる。炭酸カルシウムと硫酸アルミニウムとを反応させることでカルシウムとアルミニウムとが複合化した無機バインダを得ることができる。
また、このようにして無機バインダを合成する際に、反応液中に、炭化ケイ素とは異なるさらなる任意の金属や金属化合物を共存させることもでき、この場合はそれらの金属もしくは金属化合物も、無機バインダ中に効率よく取り込まれ、複合化できる。
また、2種類以上の無機バインダを繊維に複合化させる場合には、繊維及び炭化ケイ素の存在下で1種類の無機バインダの合成反応を行なった後、当該合成反応を止めて別の種類の無機バインダの合成反応を行なってもよく、互いに反応を邪魔しなかったり、一つの反応で目的の無機バインダが複数種類合成されたりする場合には2種類以上の無機バインダを同時に合成してもよい。
複合繊維を製造する際には、さらに公知の各種助剤を添加することができる。このような添加剤は、無機バインダに対して、好ましくは0.001〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%の量で添加することができる。
本発明において合成反応の温度は、例えば、30〜100℃とすることができるが、40〜80℃が好ましく、50〜70℃がより好ましく、60℃程度とすると特に好ましい。温度が高すぎたり低すぎたりすると、反応効率が低下しコストが高くなる傾向がある。
さらにまた、合成反応は、反応時間によって制御することができ、具体的には、反応物が反応槽に滞留する時間を調整して制御することができる。その他、本発明においては、反応槽の反応液を攪拌する事や、中和反応を多段反応とすることによって反応を制御することもできる。
本発明の一態様に係る炭化ケイ素複合繊維は、種々の用途に用いることができ、例えば、紙、繊維、不織布、セルロース系複合材料、フィルター材料、塗料、プラスチック及びその他の樹脂、ゴム、エラストマー、セラミック、ガラス、金属、タイヤ、建築材料(アスファルト、アスベスト、セメント、ボード、コンクリート、れんが、タイル、合板、繊維板など)、各種担体(触媒担体、医薬担体、農薬担体、微生物担体など)、しわ防止剤、粘土、研磨材、改質剤、補修材、断熱材、防湿材、撥水材、耐水材、遮光材、シーラント、シールド材、防虫剤、接着剤、インキ、化粧料、医用材料、ペースト材料、食品添加剤、錠剤賦形剤、分散剤、保形剤、保水剤、濾過助材、精油材、油処理剤、油改質剤、電波吸収材、絶縁材、遮音材、防振材、半導体封止材、放射線遮断材、衛生用品、化粧品、肥料、飼料、香料、塗料・接着剤・樹脂用添加剤、変色防止剤、導電材、伝熱材等のあらゆる用途に広く使用することができる。また、前記用途における各種充填剤、コーティング剤などに用いることができる。
本発明の一態様に係る炭化ケイ素複合繊維は、製紙用途に適用してもよい。本発明の一態様に係る炭化ケイ素複合繊維を含む紙も本発明の一態様である。紙としては、例えば、印刷用紙、新聞紙、インクジェット用紙、PPC用紙、クラフト紙、上質紙、コート紙、微塗工紙、包装紙、薄葉紙、色上質紙、キャストコート紙、ノンカーボン紙、ラベル用紙、感熱紙、各種ファンシーペーパー、水溶紙、剥離紙、工程紙、壁紙用原紙、メラミン化粧紙用原紙、不燃紙、難燃紙、積層板原紙、プリンテッドエレクトロニクス用紙、バッテリー用セパレータ、クッション紙、トレーシングペーパー、含浸紙、ODP用紙、建材用紙、化粧材用紙、封筒用紙、テープ用紙、熱交換用紙、化繊紙、減菌紙、耐水紙、耐油紙、耐熱紙、光触媒紙、たばこ用紙、板紙(ライナー、中芯原紙、白板紙など)、紙皿原紙、カップ原紙、ベーキング用紙、研磨紙、合成紙などが挙げられる。
〔複合繊維を含むシート〕
炭化ケイ素複合繊維は、前記炭化ケイ素複合繊維を含む複合繊維含有スラリーを抄紙して、シートを成形することができる。本発明の一態様に係る炭化ケイ素複合繊維を用いてシートを成形することで、炭化ケイ素のシートへの歩留りが良好である。また、炭化ケイ素を均一にシートに配合することができるので、表裏差が少ないシートを得ることができる。
複合繊維シートの坪量は、目的に応じて適宜調整できる。例えば、20〜600g/mであり、好ましくは50〜300g/m、より好ましくは70〜200g/mに調整され得る。
さらに、炭化ケイ素複合繊維からなるシートは、用途等に応じて、単層構造であっても、複数層を積層した多層構造であってもよく、多層構造においては各層の組成は同じであっても異なっていてもよい。
シート製造に用いる抄紙機(抄造機)としては、例えば長網抄紙機、丸網抄紙機、ギャップフォーマ、ハイブリッドフォーマ、多層抄紙機、これらの機器の抄紙方式を組合せた公知の抄紙機などが挙げられる。
シート成形において使用する複合繊維含有スラリー中に含まれている複合繊維としては、1種類のみであってもよく、2種類以上を混合したものであってもよい。
シート成形に際し、複合繊維含有スラリーには、抄紙を妨げない限りにおいて、複合繊維以外の物質を更に添加してもよい。このような添加剤としては、湿潤及び/又は乾燥紙力剤(紙力増強剤)が挙げられる。これにより、複合繊維シートの強度を向上させることができる。紙力剤としては例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリアミン、エピクロロヒドリン樹脂、植物性ガム、ラテックス、ポリエチレンイミン、グリオキサール、ガム、マンノガラクタンポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアミン、ポリビニルアルコール等の樹脂;前記樹脂から選ばれる2種以上からなる複合ポリマー又は共重合ポリマー;澱粉及び加工澱粉;カルボキシメチルセルロース、グアーガム、尿素樹脂等が挙げられる。紙力剤の添加量は特に限定されない。
その他、目的に応じて、濾水性向上剤、内添サイズ剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、嵩高剤、炭酸カルシウム、カオリン、タルク等の填料等が挙げられる。各添加剤の使用量は特に限定されない。
本発明の一態様に係る炭化ケイ素複合繊維を含むシートは、高い熱伝導率及び耐熱性を期待する各種用途に好適に用いることができる。例えば、本発明の一態様に係る炭化ケイ素複合繊維を含むシートは、熱伝導率を有するシートとして特に好適に使用することができる。
本発明の一態様に係る炭化ケイ素複合繊維を含むシートは、高い灰分歩留で且つ均一に、炭化ケイ素が繊維中に定着しているため、熱伝導率を有するシートとして用いたときに、優れた熱伝導率を示すことができる
本発明の一態様に係る炭化ケイ素複合繊維を含むシートから、熱伝導率を有するシートを製造するには、従来公知の製造方法を用いることができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。また、本明細書において特に記載しない限り、濃度や部などは質量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
実験1(実施例)
(1)アルカリ溶液と酸溶液の調製
ハイドロタルサイト(HT)を合成するための溶液を準備した。アルカリ溶液(A溶液)として、NaCO(和光純薬)およびNaOH(和光純薬)の混合水溶液を調製した。また、酸溶液(B溶液)として、MgSO(和光純薬)およびAl(SO(和光純薬)の混合水溶液を調製した。
・アルカリ溶液(A溶液、NaCO濃度:0.03M、NaOH濃度:0.5M)
・酸溶液(B溶液、MgSO濃度:0.6M、Al(SO濃度:0.15M)
(2)複合繊維の合成
複合体化する繊維として、セルロース繊維を使用した。具体的には、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、日本製紙製)と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、日本製紙製)とを8:2の質量比で混合し、シングルディスクリファイナー(SDR)を用いてカナダ標準濾水度を300mlに調整したパルプ繊維を用いた(平均繊維長:1.2mm、平均繊維径:25μm)。
アルカリ溶液にパルプ繊維を添加し、パルプ繊維を含む水性懸濁液(スラリー)を準備した(パルプ繊維濃度:3.3%、pH:約13.2)。この水性懸濁液(パルプ固形分26g)を、5L容の反応容器に入れ、さらに、炭化ケイ素(富士フイルム和光純薬)19.5gを添加し、十分に撹拌した。
この水性懸濁液を撹拌しながら、図1に示すような装置を用いて、酸溶液を滴下した。なお、図中の「A」は、パルプ繊維及び炭化ケイ素を含む水性懸濁液であり、「B」は酸溶液であり、「P」はポンプである。反応温度は50℃、滴下速度は4ml/minであり、反応液のpHが約7.5になった段階で滴下を停止した。滴下終了後、30分間、反応液を撹拌し、10倍量の水を用いて水洗して塩を除去し、炭化ケイ素微粒子と固形状のハイドロタルサイト(MgAl(OH)16CO・4HO)とパルプ繊維との複合繊維を合成した(パルプ固形分:約60質量%、ハイドロタルサイト:約30質量%、炭化ケイ素:約30質量%)。
走査型電子顕微鏡を用いて、得られた複合繊維の表面を観察した(図2)。得られた複合繊維は、繊維表面の90%以上が固形状のハイドロタルサイトで覆われていた。また、固形状のハイドロタルサイトの平均一次粒子径は、200nm1μm以下であった。さらに、粒子径が600μm程度の炭化ケイ素が、ハイドロタルサイトに覆われるように繊維に担持されていた。
(3)手抄きシートの作製
得られた複合繊維のスラリーを希釈し、水性懸濁液を準備した(パルプ繊維濃度:0.77%、pH:7.8)。JIS P 8222:1998に準じて150メッシュのワイヤーを用いて、坪量100g/mの手抄きシート(シート1−1)および坪量200g/mの手抄きシート(シート1−2)を作製した。いずれも灰分歩留は約99%だった。
実験2(実施例)
パルプ繊維に対する炭化ケイ素の比率を小さくした以外は、実験1と同様にして、坪量100g/mの手抄きシートを作製した(シート2)。具体的には、パルプ繊維を含む水性懸濁液(パルプ固形分25g)を、5L容の反応容器に入れ、さらに、炭化ケイ素(富士フイルム和光純薬)12.5gを添加した以外は、実施例1と同様にして炭化ケイ素微粒子と固形状のハイドロタルサイト(MgAl(OH)16CO・4HO)とパルプ繊維との複合繊維を合成した(パルプ固形分:約50質量%、ハイドロタルサイト:約25質量%、炭化ケイ素:約25質量%)。得られた複合繊維のスラリーから、実験1と同様にして、坪量100g/mの手抄きシートを作製した。
実験3(比較例)
実施例1と同様にして、アルカリ溶液(A溶液)にパルプ繊維を添加して、パルプ繊維を含む水性懸濁液を準備した。調製した水性懸濁液(パルプ固形分35g)に、炭化ケイ素15g(パルプ固形分70質量%、炭化ケイ素30質量%)を添加し、十分に懸濁して、水性懸濁液を準備した(パルプ繊維濃度:0.71%、pH:約7.4)。次いで、パルプ繊維と炭化ケイ素を含む水性懸濁液から、JIS P 8222:1998に基づいて150メッシュのワイヤーを用いて、坪量100g/mの手抄きシートを作製した(シート3)。
実験4(比較例)
実施例1で使用したパルプ繊維(LBKP:NBKP=8:2の質量比、カナダ標準濾水度を300ml)から水性懸濁液(スラリー)を準備し、このスラリーから、JIS P 8222:1998に基づいて150メッシュのワイヤーを用いて、坪量100g/mの手抄きシートを作製した(シート4)。
手抄きシートの評価
得られた手抄きシートについて、灰分、炭化ケイ素含量、坪量、厚さ(紙厚)、密度、熱伝導率、耐熱性を、以下の方法により測定した。
(1)灰分、炭化ケイ素含量
JIS P 8251:2003に基づき、「ハイドロタルサイト含量+(無機分−(ハイドロタルサイト含量×0.6))」という式から灰分を算出した。なお、「無機分」は、シートを525℃で2時間燃焼させた後の質量である。また、「0.6」は、ハイドロタルサイトを525℃で2時間燃焼させたときの質量減少率である。
また、「灰分−ハイドロタルサイト含量(処方値)」を炭化ケイ素含量とした。
(2)坪量、紙厚、密度
坪量は、JIS P 8124:1998に基づき測定した。紙厚は、JIS P 8118:1998に基づき測定した。密度は、紙厚及び坪量の測定値より算出した。
(3)熱伝導率
周期加熱法により熱拡散率を測定し、以下の式より熱伝導率を算出した上で、下記の基準に基づいて3段階で評価した。
「熱伝導率(W/m・K)=熱拡散率×定圧比熱×密度」
◎:5.0以上
○:0.1以上、5.0未満
×:0.1未満
(4)耐熱性
10cm角に切り出したシートを70℃で3時間乾燥した後、乾燥用シリカゲルを入れたデシケータ中に2時間静置し、燃焼性試験のサンプルとした。
サンプルの上部をクリップに取り付けて、宙吊りの状態で静置した。点火したライター(サンプルに接していない状態における炎の長さ:30mm)を、サンプルの下部に素早く近づけ、サンプルに対して炎が10mm接する状態で固定して5秒間加熱し続け、そのときの火の燃え広がり方を観察した(図4)。具体的には、下記の基準に基づいて3段階で評価した。
◎:サンプルの残存率 50%以上
○:サンプルの残存率 20%以上、50%未満
×:サンプルの残存率 20%未満
本発明の複合繊維を含むシートは、ハイドロタルサイトによって炭化ケイ素がしっかりと繊維に定着しているため、手抄きシートとした場合、高い灰分歩留で炭化ケイ素がシート中に定着していた。また、本発明の複合繊維を含むシートは、熱伝導性や耐熱性の機能が付与されたことを確認し、炭化ケイ素が少ない場合でも優れた耐熱性能を有することが確認された。
これに対し、無機バインダを用いていないシート3(比較例)は、炭化ケイ素の定着率が低く、熱伝導性や耐熱性も低下した。炭化ケイ素を全く含まないシート4(比較例)は、熱伝導性や耐熱性が著しく低かった。

Claims (8)

  1. 繊維、炭化ケイ素及び無機バインダを含み、無機バインダによって炭化ケイ素が繊維に定着している複合繊維であって、
    前記無機バインダが、ケイ酸、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、銅、鉄、及び亜鉛から選択される少なくとも1つを含む無機化合物を含んでなる、上記複合繊維。
  2. 前記無機バインダの少なくとも一部が、マグネシウム、亜鉛及びバリウムから選択される少なくとも1つの金属とアルミニウムとを含む無機塩を含む、請求項1に記載の複合繊維。
  3. 前記無機バインダが、ハイドロタルサイトを含む、請求項1又は2に記載の複合繊維。
  4. 前記繊維が、セルロース繊維である、請求項1〜3のいずれかに記載の複合繊維。
  5. 前記繊維の表面の15%以上が炭化ケイ素および無機バインダによって被覆されている、請求項1〜4のいずれかに記載の複合繊維。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の複合繊維を含んでなるシート。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の複合繊維の製造方法であって、
    繊維および炭化ケイ素を含むスラリーを調製する工程と、
    前記スラリー中で無機バインダを合成して、無機バインダによって炭化ケイ素が繊維に定着している複合繊維を得る工程と、
    を含む、上記方法。
  8. 繊維および炭化ケイ素を含むスラリーのpHが11〜14である、請求項7に記載の方法。
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