JP3959633B2 - 茶殻配合紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、茶殻の抗菌機能を生かした茶殻配合紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、有害な細菌や雑菌の付着・増殖を防止するために抗菌処理を施した紙が知られている。このような抗菌紙は、例えば抗菌処理を施す紙の表面に、p−ヒドロキシ安息香酸エステルと多価脂肪族アルコールとを少なくとも含有する塗工液を塗工して製造する方法(特許文献1)や、ナリジクス酸又はナリジクス酸塩の溶液、乳濁液又は懸濁液を紙に塗布又は浸漬して製造する方法(特許文献2)や、製紙工程中に存在する中心的な2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)抵抗性微生物の増殖を的確に判定し、最適な抗菌剤を使用して効率良く抗菌処理して製紙する方法(特許文献3)等が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−248495号公報
【特許文献2】
特開2000−80596号公報
【特許文献3】
特開2002−242098号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の抗菌紙では、紙の表面に抗菌剤をコーティングしたり或は沁み込ませたり、又は製紙原料中に抗菌剤を混入する製造方法であって、いずれも化学薬品を用いるものである。抗菌剤をコーティングしたり或は沁み込ませる場合は、製紙工程とは別に加工工程が必要となる。一方、製紙原料中に抗菌剤を混入する場合は、製紙工程中に薬剤処理できるためその後の加工工程を必要としないが、常法の製紙工程で用いられる装置の他に抗菌剤を収容するタンクや抗菌剤を供給するための装置等が必要となって設備費の高騰を招く問題点がある。又、化学薬品による抗菌剤は高価であり、副作用の危険もあって安全性の面からも問題がある。
【0005】
本発明者らは、上記従来技術の問題点を鑑みて鋭意研究した結果、天然物である茶葉に含まれているカテキン、ポリフェノール等の成分が抗菌機能を有することに着目し、且つ茶殻を用いてこれを砕片状に調製すると製紙用パルプと絡み合い、常法の製紙工程で抄紙できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0006】
飲料用に使用された茶殻は、通常は廃棄のために焼却処分されている。このように焼却処分されていた茶殻を抗菌紙の製造原料として利用できることは、資源の有効利用につながり、しかも天然物であるから副作用の危険が無くて安全性に優れており、コストが安価である点でも極めて好ましい。
【0007】
かくして、本発明は、化学薬品による抗菌剤を用いることなく、且つ常法の製紙工程で抗菌紙を製造できるようにした茶殻配合紙を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1は、破片状に調製した茶殻と繊維状パルプとを絡み合わせて抗菌機能を付与する目的で抄紙した茶殻配合紙であって、茶殻配合率の多い原料と、茶殻配合率の少ない原料とを調製し、これら2つの原料を用いて交互に抄紙することにより、一方の表面の表層部に茶殻が多く偏在してなることを特徴とする。
【0009】
又、本発明に係る請求項2は、破片状に調製した茶殻と繊維状パルプとを絡み合わせて抗菌機能を付与する目的で抄紙した茶殻配合紙であって、茶殻配合率の多い原料と、茶殻配合率の少ない原料とを調製し、これら2つの原料を用いて交互に抄紙することにより、両面の表層部に茶殻が多く偏在してなることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る茶殻配合紙を製造する実施形態について説明する。
本実施形態では、例えば缶入り緑茶(四国コカコーラ社製の商品名「まろ茶」)の製造後に廃棄された茶殻を原料として用いた。この茶殻は製造後1日程度経過したもので、茶葉が十分開いた膨潤状態にあり、含水率を計測したところ平均で80%程度であった。 この茶殻を離解機に投入して切断刃により細かく粉砕し、その後叩解機により擂り潰すことにより約1mmないし2mm位の大きさの砕片状に調製した。
【0013】
上記実施形態では、茶殻として使用後の緑茶を用いたが、これに限定されることなく他の茶葉例えば使用後の紅茶やウーロン茶等を用いることもできる。カテキンやポリフェール等の抗菌性成分は、紅茶やウーロン茶等よりも緑茶のほうが多く含むため、茶殻としては緑茶を用いることが好ましい。
【0014】
製紙用パルプ原料としては、例えばダンボール古紙を用いた。このダンボール古紙を細かく砕いて水に分散させ、離解機により離解すると共に叩解機により叩解して繊維状パルプを調製した。本実施形態の場合はダンボール古紙を用いたが、これに限定されることなく新聞、雑誌等の古紙を用いることができる。更に、古紙のみならず木材チップ等を蒸解して得られる製紙用パルプを用いることもできる。古紙の方がコスト的に安価であるから好ましい。
【0015】
上記砕片状に調製した茶殻と、繊維状パルプを用いて常法の製紙工程により茶殻配合紙を抄紙した。茶殻の配合率は、例えば次の3通りで実施した。
実施例1:茶殻の配合率を10重量%とした茶殻配合紙
実施例2:茶殻の配合率を20重量%とした茶殻配合紙
実施例3:茶殻の配合率を30重量%とした茶殻配合紙
【0016】
上記実施例1〜3により抄紙された茶殻配合紙の物性を試験した結果を表1に示す。尚、比較例として、茶殻の配合率を0重量%とした紙(上記繊維状パルプのみで抄紙したもの)を用いた。
【表1】
【0017】
表1における紙の強度試験は、JISに定める方法に準じてそれぞれ行った。
(1)引張強さに関しては、MD(縦方向)では実施例1が比較例より強い値を示し、実施例2及び実施例3は比較例よりも若干弱い値を示した。CD(横方向)では実施例1及び実施例2が比較例より強い値を示し、実施例3は比較例と同値であった。
(2)湿潤引張強さに関しては、MD(縦方向)では実施例1及び実施例3が比較例より強い値を示し、実施例2は比較例より若干弱い値を示した。CD(横方向)では実施例1が比較例と同値であり、実施例2及び実施例3は比較例より若干弱い値を示した。
(3)破裂度に関しては、実施例1〜実施例3のいずれも比較例よりも弱い値を示した。
(4)これらを総合的に判断すると、実施例1〜実施例3の中では実施例1が全体的に強度の優れたものである。実施例2又は実施例3は、破裂度を除けば比較例とほぼ同等の強度を有している。従って、実施例1〜実施例3の茶殻配合紙は、比較例に比して強度的に遜色のないものであるといえる。
【0018】
次に、上記実施例1〜3により抄紙した茶殻配合紙の抗菌試験を行った。
この抗菌試験は、JIS:L1902〜1998繊維製品の抗菌試験に準じて、試験菌種は黄色葡萄球菌(Staphylococcus aureus IFO12732)と、腸管出血性大腸菌O157(Escherichia coli IID959)とを用いて行った。初期菌数が3.5×104の黄色葡萄球菌又は初期菌数が2.2×104の腸管出血性大腸菌O157を実施例で得られた茶殻配合紙と、比較例での茶殻無配合紙の表面に付着させ、室内にて18時間増殖して得られた菌数を計数手段で計測した結果を表2に示す。
【表2】
【0019】
表2の結果によると、実施例2の茶殻配合紙の場合、黄色葡萄球菌に関しては、初期菌数3.5×104が18時間経過後に6.6×102に減少し、初期菌数の約1/50になった。腸管出血性大腸菌O157に関しては、初期菌数2.2×104が18時間経過後に2.0×102に減少し、初期菌数の約1/100になった。これに対し、比較例の茶殻無配合紙の場合は、黄色葡萄球菌に関しては、初期菌数3.5×104が18時間経過後に2.3×106に増加し、初期菌数の約50倍になった。腸管出血性大腸菌O157に関しては、初期菌数2.2×104が18時間経過後に5.0×106に増加し、初期菌数の約200倍になった。
【0020】
このように茶殻配合紙は、黄色葡萄球菌及び腸管出血性大腸菌O157を死滅させる効果のあることが判明した。他の細菌や雑菌に関しては、抗菌試験を行わなかったが、これらの菌類に対しても同様の効果が得られることが十分予想できる。茶殻に多く含まれているカテキン、ポリフェノール等の抗菌成分が大いに寄与しているものと思われる。
【0021】
上記実施例1〜3の茶殻配合紙は、いずれも砕片状に調製された茶殻と繊維状パルプとが内部でほぼ均一に絡み合っているものであるが、砕片状に調製した茶殻が一方の表面又は両面の表層部に多く偏在している茶殻配合紙を抄紙することもできる。
【0022】
例えば茶殻配合率の多い原料と、茶殻配合率の少ない又は繊維状パルプのみの原料とを調製し、茶殻配合率の多い原料にて先に抄紙工程を行い、続いてその上に茶殻配合率の少ない又は繊維状パルプのみの原料にて抄紙工程を行えば、一方の表面の表層部に茶殻が多く偏在している茶殻配合紙を抄紙することができる。
【0023】
又、茶殻配合率の多い原料と、茶殻配合率の少ない又は繊維状パルプのみの原料とを調製し、茶殻配合率の多い原料にて先に抄紙工程を行い、続いてその上に茶殻配合率の少ない又は繊維状パルプのみの原料にて抄紙工程を行い、更にその上に茶殻配合率の多い原料にて抄紙工程を行うことにより、両面の表層部に茶殻が多く偏在している茶殻配合紙を抄紙することができる。
【0024】
本発明に係る茶殻配合紙は、例えば畳や絨毯の下張り或は押入れの下敷き、食器戸棚の棚や引き出しの下敷きとして、又は生鮮食品や菓子、果物等の包装紙や包装箱、切り花の包み紙や植物の種子収納袋等として利用することができる。更に、トイレや洗面所等に備え付ける使い捨ての手拭紙や、靴の中敷き等にも利用できる。いずれにしても、茶殻の抗菌機能を充分生かした使用が可能である。
【0025】
これらの使用態様によって、茶殻配合率を適宜設定し或は上記のように一方の面又は両面の表層部に茶殻を多く偏在させ、又はほぼ均一に分散させる等のバリエーションを採用すると好ましい。
【0026】
尚、上記実施形態では、茶殻の配合率は10重量%、20重量%、30重量%の3通りであったが、本発明では茶殻配合率は1〜98重量%で実施することが可能であり、茶殻配合紙の用途に応じて適宜茶殻配合率を設定するものとする。又、茶殻配合紙の抗菌試験においては、茶殻配合率20重量%のもので行ったが、10重量%或は30重量%のもの又はその他の配合率のものでも、無配合のものに比して好成績が得られると予想することができる。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、破片状に調製した茶殻と繊維状パルプとを絡み合わせて抗菌機能を付与する目的で抄紙した茶殻配合紙であって、茶殻配合率の多い原料と、茶殻配合率の少ない原料とを調製し、これら2つの原料を用いて交互に抄紙することにより、一方の表面又は両面の表層部に茶殻が多く偏在してなる茶殻配合紙を提供できるので、特に紙の表面で強い抗菌作用を発揮させることができる。これにより、化学薬品からなる抗菌剤を用いることなく、天然物である茶葉の有する抗菌機能を積極的に活かした茶殻配合紙を作ることができる。又、紙の表面に抗菌剤をコーティングしたり或は沁み込ませるものではないから、製紙工程とは別に加工工程が必要になることはない。更に、製紙原料中に抗菌剤を混入するものではないから、常法の製紙工程で用いられる装置の他に抗菌剤を収容するタンクや抗菌剤を供給するための装置等は必要とせず、設備費の高騰を招くことはない。茶殻は安価であるからコストの低減が図れ、且つ副作用の危険がないから充分な安全性を確保することができる。
Claims (2)
- 破片状に調製した茶殻と繊維状パルプとを絡み合わせて抗菌機能を付与する目的で抄紙した茶殻配合紙であって、茶殻配合率の多い原料と、茶殻配合率の少ない原料とを調製し、これら2つの原料を用いて交互に抄紙することにより、一方の表面の表層部に茶殻が多く偏在してなることを特徴とする茶殻配合紙。
- 破片状に調製した茶殻と繊維状パルプとを絡み合わせて抗菌機能を付与する目的で抄紙した茶殻配合紙であって、茶殻配合率の多い原料と、茶殻配合率の少ない原料とを調製し、これら2つの原料を用いて交互に抄紙することにより、両面の表層部に茶殻が多く偏在してなることを特徴とする茶殻配合紙。
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