JP2009203577A - パルプ成形物及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】茶ポリフェノールによる抗酸化性及び抗菌性を備え、食品等への色移りや変質等が抑制されたパルプ成形物の提供を可能とする。
【解決手段】パルプ繊維と、含ピロリドンポリマーと、茶抽出物又は茶ポリフェノールとを含有する水性スラリーを調製し、前記水性スラリーを抄造してパルプ成形物を得る。含ピロリドンポリマー及び茶ポリフェノールは、成形物全体に均一になる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、抗菌性及び抗酸化性を有するパルプ成形物及びその製造方法に関する。より詳しくは、茶成分の配合によってその抗菌性及び抗酸化性を好適に発揮し、包装紙などとして使用した場合に生じ得る被包装物への色移りや変質、パルプ自体の変色が抑制され、鮮度保持シート等として好適に利用可能なパルプ成形物及びその製造方法に関する。
近年、抗菌性や抗酸化性を有する機能性物質を配合したシート材を、食品や食材の酸化防止、腐敗抑制等を目的とした鮮度保持シートとして食品包装に利用することが普及している。このようなシートに配合される機能性物質は、食品等との接触を考えると安全性の高い物質である必要があり、この点において、天然に存在する安全性が既知の物質が有用である。
消費者の健康指向の高まりによって需要が伸びている茶系飲料は、抗菌、抗酸化機能を有する有効成分であるポリフェノール類を豊富に含むことが知られており、茶葉に含まれるポリフェノール類の抗菌、消臭機能を様々な製品に利用することが試みられており、紙の製造における使用も提案されている。
例えば、下記特許文献1〜5には、茶の抗菌・消臭機能を付与した紙が提案されている。特許文献1〜3においては、茶葉又は茶滓の破砕物を混合したパルプを抄造した抗菌性紙が開示され、特許文献4,5では、茶葉から抽出されるカテキン又はポリフェノールを塗布・噴霧などによって紙の表面に定着させたものが提示されている。
茶葉や茶殻の利用は、廃棄物を利用できる点で好ましい反面、紙の製造に際して乾燥が進むにつれてパルプと茶葉又は茶殻との間に隙間が生じてパルプ繊維、茶葉又は茶殻が紙から脱離し易くなる。又、紙中の茶成分の分布も均一にし難く、紙に付与される機能の高さにも限度がある。このため、機能性を重視する用途の場合には、茶抽出物を利用する方が有利である。
特開2007−197871号公報 特開平6−235198号公報 特開2006−21811号公報 特開2001−3297号公報 特開2002−17828号公報
茶抽出物を用いて抗菌・抗酸化性を付与した紙を鮮度保持シートとして使用する場合、包装される食品等が茶成分の移行によって変色や変質を生じないことが必要である。上記特許文献4,5においては、紙に塗布又は噴霧する茶抽出物を含む液に高分子や樹脂からなる結合材を配合して、茶抽出物を紙表面に定着させており、このような結合材の使用は、鮮度保持紙から茶成分が移行するのを抑制するには有効である。
しかし、結合材を用いる場合、その種類や使用形態によって、茶成分が結合材に被覆又は封止されて茶成分の機能発揮が物理的に妨げられる可能性がある。又、ポリフェノールは、金属との接触によって変色を生じるので、結合材によってポリフェノールが紙表面に定着されていても、紙上のポリフェノールと食品上の金属成分とが接触すれば同じように変色し、特に含水量の多い食品等の包装では色移りや変色が起こり易い。
更に、茶成分を有する紙は、酸化により紙自体が変色するので、紙の変色を抑制することが求められる。
また、茶抽出物又はこれを含有する溶液を紙に塗布又は噴霧した場合、これを乾燥する際に加熱による茶成分の変色によって商品価値を損なう。これを防止するためには、加熱温度を低下させる必要があり、乾燥に長時間を要して生産効率が低下するという問題もある。
本発明は、茶の有効成分が配合されたパルプ成形物であって、食品等への色移りや変質、酸化等によるパルプ自体の変色が抑制され、好適な抗酸化性及び抗菌性を発揮するパルプ成形物を提供することを課題とする。
又、本発明は、茶の有効成分による好適な抗菌性、抗酸化性及び消臭性を発揮し、鮮度保持シート等として良好に使用できる美観に優れたパルプ成形物を、低コストで効率よく製造可能なパルプ成形物の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明では、茶の有効成分との親和性に着目して、茶の有効成分による抗菌性、抗酸化機能を十分に活用できるパルプ成形物の提供を実現した。
本発明の一態様によれば、パルプ成形物の製造方法は、パルプ繊維と、含ピロリドンポリマーと、茶ポリフェノールとを含有する水性スラリーを調製し、前記水性スラリーを抄造することを要旨とする。
又、本発明の他の態様によれば、パルプ成形物の製造方法は、パルプ繊維と、含ピロリドンポリマーと、茶抽出物とを含有する水性スラリーを調製し、前記水性スラリーを抄造することを要旨とする。
更に、本発明の一態様によれば、パルプ成形物は、含ピロリドンポリマーと、茶ポリフェノールとを含有するパルプ成形物であって、前記含ピロリドンポリマー及び前記茶ポリフェノールは、パルプ成形物表面における濃度がパルプ成形物内部における濃度と等しい又はそれ以下であることを要旨とする。
又、本発明の他の態様によれば、パルプ成形物は、茶抽出物と、含ピロリドンポリマーとを全体に均一に含有するシート状のパルプ成形物であることを要旨とする。
本発明によれば、含ピロリドンポリマーを結合材として配合し、全体に均一に、つまり、表面におけるポリフェノール濃度が内部における濃度以下となるように構成することによって、色、表面形状等の美観を損なうことなく適正量の茶の機能成分が紙に配合され、抗菌性及び抗酸化性を有する紙を効率よく製造できる繊維シートの製造方法が確立され、好適な抗菌・抗酸化性を発揮する鮮度保持シートが安価に提供される。
緑茶に含まれるポリフェノール類には、抗菌性、抗酸化性及び消臭性を有するカテキンが含まれ、カテキンを配合して製品を製造することによって製品に抗菌性、抗酸化性及び消臭性を付与することができる。カテキンだけでなく、それ以外のポリフェノールにも抗酸化性成分及び消臭性成分が存在し、紅茶、ウーロン茶等の茶類にも豊富に含まれる。
上述のような茶の有効成分の抗菌性及び抗酸化性を紙に付与するために茶抽出物を紙表面に塗布又は噴霧すると、得られた紙は、食品等を包装した際に接触によって食品等への色移りや、食品に含まれる金属との反応による変色、変質を生じる。茶抽出物に結合材を配合して塗布又は噴霧した場合には、紙への定着によって茶抽出物の色移りは多少緩和されるが、茶抽出物が紙表面に集中して分布する構造は同じであり、金属との接触による変色等の防止に不利である点では変わらない。ポリフェノールを含む水溶液に紙を浸漬した場合にも、ポリフェノールは紙の内部まで十分に浸透せず、大部分が表面に分布するため、塗布又は噴霧したものと大差はない。
本願発明者らは、抗菌、抗酸化作用を有する茶抽出物の導入に際して、上記課題の解決を目的として、ポリフェノールの導入形態や、ポリフェノールに対して作用し得る食品衛生上無害な物質の活用に着目し、鋭意検討を続けてきた。その結果、パルプの成形形態を特定し、特定の結合材を併用することによって、ポリフェノールの機能を有効に発揮しつつ接触物への着色が抑制されたパルプ成形物が提供可能であることを見出した。具体的には、パルプの成形形態として抄造形態を採用して、抄造前のパルプスラリーにポリフェノールを配合することによって、ポリフェノールの分布がパルプ成形物の表面に集中せず、全体に均一になる。抄造によって成形されるパルプ成形物は、別途抄造されるパルプ成形物を重ねて積層する事も可能であり、内部のポリフェノール量が表面より多いパルプ成形物も容易に得られる点で好ましい。つまり、本発明では、成形物表面のポリフェノール濃度が内部における濃度以下となるように抄造によってパルプ繊維をシート状に成形する。結合材については、ピロリドン環を含有するポリマーを茶抽出物と共に紙に導入することによって、茶抽出物の繊維への定着性を向上させるだけでなく、ポリフェノールの変色の抑制及び紙自体の酸化による変色の抑制が可能である。又、抄造前のスラリーに配合することによってパルプ繊維との馴染みも良い。従って、本発明の一形態として、パルプ成形物は、茶抽出物と含ピロリドンポリマーとを含有し、成形物の内部と表面とで茶抽出物の分布に実質的な差が無いことを特徴とする。非水解紙、不織布等のようなシート、フィルター、マットなどの形態の繊維製品として供給され、抗菌性及び抗酸化性を必要とする用途において有効に利用することができる。抄造による成形形態では、パルプスラリーに配合される茶抽出物及び含ピロリドンポリマーが紙製品の表面に集中しないので、塗布等の形態に比べて、表面に存在する茶抽出物の量を増加させずに全体としての茶抽出物含有量を増加可能であるので、鮮度保持シート等として用いた時に被包装物への影響を抑制しつつ好適に抗菌性、抗酸化性等の機能を発揮することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明におけるパルプ成形物は、パルプ(紙繊維)を主体とするが、他の繊維を排除するものではなく、パルプの機能を実質的に阻害しない範囲でパルプ以外の繊維を含むことができる。具体的には、パルプ繊維に対して200質量%程度以下の範囲で他の繊維素材を添加可能である。使用可能な繊維として、例えば、綿、麻、ケナフ、ジュート、ウール、シルク、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、レーヨン等の天然又は化学繊維が挙げられ、繊維の長さには特に限定がなく、必要に応じて好適な長さのものを選択して使用できる。
ポリフェノールは、フラボノイド類、タンニン、クロロゲン酸、没食子酸、エラグ酸、フェノール酸など、更には、植物色素であるアントシアニン、ルチン、ヘスペリジン、ナリンジンなどを含む一群の物質の総称であり、植物界には8000種を越える物質が存在するといわれている。本発明におけるポリフェノールは、茶抽出物に含まれるポリフェノール(茶ポリフェノール)であり、茶抽出物又はこれから分離されるポリフェノールが好適に用いられる。
本発明で用いられる茶抽出物は、カメリアシネンシス,Lの茶葉又は茎等から得られる不発酵茶、半発酵茶又は発酵茶の抽出物である。このような茶抽出物に含まれる、フェノール性水酸基を三つ以上有するフェノール類が、本発明において好適に利用されるポリフェノールである。茶抽出物は、水、有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶液を用いて茶葉から抽出することにより得られ、有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、1−又は2−プロパノール、アセトンなどの親水性溶媒が挙げられる。茶抽出物として市販のものを用いることもできる。このような市販品としては、例えば、緑茶から抽出したポリフェノール製品である「テアフラン30A」「テアフラン30F」「テアフラン90S」(それぞれ商品名、株式会社伊藤園製)、「ポリフェノン」(三井農林株式会社製)、「サンフェノン」(太陽化学株式会社製)が挙げられる。茶抽出物は、フラボノイド骨格を有するポリフェノールを含有しており、特に緑茶に含まれる8種のカテキン(カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート)、テアフラビン、テアルビジン、メチル化カテキン等のカテキン類は、抗菌性を有する点で機能性の高いポリフェノールである。尚、本発明において、「総ポリフェノール」は、酒石酸鉄比色定量法において、標準品として没食子酸エチルを用い、没食子酸の換算量として求める方法によって定量され得る成分のことを意味し、「総ポリフェノールの含有量」とは、上記定量方法によって没食子酸の換算量として算出される質量値を示すものである。総ポリフェノールの具体的な定量方法は、実施例に記載する通りである。
本発明のパルプ成形物に含まれるポリフェノールの量が不足するとポリフェノールの効果が顕著でなく、過剰であると抄造時に泡立ち等によりパルプのロスが発生して歩留まりが悪くなり、又、食品等の接触物への着色という問題も発生する。従って、ポリフェノールの配合量は、抗菌・抗酸化に有効であって、作業上や製品の出来上がりに問題を生じない範囲に設定される。ポリフェノールの量は、酒石酸鉄試薬の滴下前後のハンターLab表色系におけるL値の差によって規定することができ、本発明においては、パルプ成形物への酒石酸鉄試薬の滴下前後におけるL値の差が2以上、好ましくは2〜23の範囲、より好ましくは11〜23の範囲となる含有量が好適であり、このようなポリフェノール含有量に相当する茶抽出物を製造時に使用するように適切に調整する。このようなL値範囲において、パルプ成形物の総ポリフェノールの含有量は、概して、パルプに対して0.70〜30質量%程度となる。ポリフェノールやカテキンの量が多すぎると、食材等への色移りもしくは着色・変色のおそれが生じる。
本発明において用いられる含ピロリドンポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)等のような分子内にピロリドン環構造を有するポリマーであり、1種又は複数種を組み合わせて使用できる。含ピロリドンポリマーは、一般的な高分子又は樹脂による接合材と同様に、茶抽出物をパルプ繊維に付着させて定着性を向上させる機能を有するが、それだけではなく、ピロリドン環がポリフェノールに対する親和性又は配位性を示すことによってポリフェノールを吸着すると共に、ポリフェノールが他の物質から受ける影響等に対して保護的又は緩衝的に作用し得る。従って、含ピロリドンポリマーの含有量は、ポリフェノールの配合量に対応して設定され、パルプ成形物中の含ピロリドンポリマー/総ポリフェノールの割合(質量比)が、1.25〜5.6、好ましくは2.0〜5.6となるように製造時の配合量を調整する。
本発明において使用される含ピロリドンポリマーの1つであるPVPは、水溶性のポリマーであり、パルプへの分散性の観点から、毛細管粘度計により測定される相対粘度値(25℃)からFikentscherの式に従って計算されるK値が14〜103、好ましくは14.1〜33.0、より好ましくは14.1〜15となるような粘度のものが好適に使用される。尚、Fikentscherの式は下記の通りであり(式中、C:含ピロリドンポリマー水溶液中の含ピロリドンポリマー濃度[質量%]、η:含ピロリドンポリマー水溶液の水に対する相対粘度)、式から計算されるK値は、分子量と相関する粘性特性値である。
K=(1.5logη−1)/(0.15+0.003C)+(300Clogη+
(C+1.5Clogη)1/2/(0.15C+0.003C
又、PVPPは、ピロリドン部分が架橋された構造を有し、水に完全に不溶の高分子化合物である。
含ピロリドンポリマー及び茶抽出物(ポリフェノール)を含有するパルプ成形物は、非水解紙等の抄紙、不織布、マット等の加圧繊維成形物などの様々な形態の製品として提供でき、含ピロリドンポリマー及び茶抽出物(ポリフェノール)は、パルプ繊維に付着していれば良い。従って、これらの成分は、個別に又は混合して一緒にパルプスラリーに導入可能であり、又、順次又は同時に抄造前のパルプスラリーに配合して抄紙・成形することができ、得られる非水解紙、不織布、マット等の繊維製品には抗菌性が付与される。
含ピロリドンポリマー及び茶抽出物をパルプスラリーに配合してパルプ成形物を調製する方法について、以下に具体的に説明する。
パルプスラリーの調製に用いる紙パルプは、木チップ、古紙等から得られる化学パルプ、再生パルプ、機械パルプなどを好適に使用できる。具体的には、木チップを原料とした場合は、木チップを蒸解し、脱リグニン工程を経て洗浄と脱水を繰り返し行うことにより得られる無漂白パルプ、及び、この無漂白パルプを更に漂白・洗浄した漂白パルプが好適に用いられる。また、無漂白パルプ及び漂白パルプは、木チップをリファイナーにより磨り潰したものを用いて調製しても良い。古紙を原料とした場合は、古紙をパルパー(解繊機)にて解繊した後に洗浄して得られる無漂白パルプ、及び、この無漂白パルプを更に漂白・洗浄した漂白パルプが好適に用いられる。このような化学パルプ、再生パルプ、機械パルプは、各々単独で抄紙に使用しても適宜混合して用いても良い。このようなパルプを解繊機を用いて水中で解繊することにより、紙パルプの水性スラリーが調製される。パルプ以外の繊維素材を配合する場合は、パルプの解繊時に配合すると均一に分散し易い。
含ピロリドンポリマー及び茶抽出物のパルプスラリーへの配合は、個別に行っても一緒に行っても良く、パルプスラリーに順次添加したり、含ピロリドンポリマー及び茶抽出物の混合物を予め調製して同時にパルプスラリーに添加することも可能であり、又、含ピロリドンポリマー及び茶抽出物の混合液中でパルプを解繊してもよい。パルプ繊維に含ピロリドンポリマーを接触させた後に茶抽出物を添加すると、得られるパルプ成形物における色移りの抑制効果が相対的に高くなる傾向がある。茶抽出物の添加後にPVPを添加する場合は、K値が低めの範囲14.1〜33.0のPVPを使用することが好ましい。
茶抽出物水溶液及び含ピロリドンポリマー水性液を個別に、又は、予め調製した両者の混合液をパルプの水性スラリーに添加して均一に混合分散することによって、抄造用のパルプスラリーが得られる。茶抽出物の添加量は、添加する茶抽出物に含まれる総ポリフェノールの割合が原料パルプに対して0.70〜30質量%程度(乾燥質量換算)、好ましくは0.75〜15質量%となるように調整し、含ピロリドンポリマーの添加量は、総ポリフェノールに対する含ピロリドンポリマーの質量比が1.25〜5.6程度、好ましくは2.0〜5.6程度となるように調節する。総ポリフェノールの量が0.70質量%未満であると、抗菌性及び抗酸化性の発揮が不十分となり、30質量%を超えると、抄造した紙の変色・変質の抑制が難しくなる。含ピロリドンポリマーの質量比が1.25未満であると、ポリフェノールの定着が不十分になって食品等と接触した際に色移りの抑制が困難になり、質量比が5.6を超えると、茶抽出物が封止され易くなって抗菌性及び抗酸化性の発揮が阻害される。パルプスラリーには、必要に応じて、通常の抄紙に使用可能な各種添加剤などを適宜配合可能であり、例えば、サイズ剤、各種合成樹脂や澱粉、変性澱粉等の脱落防止用の紙力増強剤、タルクや炭酸カルシウム、シリカ、カオリン等の無機顔料、尿素−ホルマリン樹脂やスチレン樹脂等の有機填料、染料、顔料などが挙げられる。但し、茶抽出物及び含ピロリドンポリマーの性質を実質的に阻害しない範囲で使用する。
上述に従って調製されるパルプスラリーは、網を用いて抄造する。詳細には、目開きが500μm未満の網上に流し込み、厚さを調整しながら水を抜いて所望の寸法のフェルト状に成形する。成形物をプレス機等を用いて脱水した後、加熱、空気乾燥等により残留水分を減らして乾燥することによって、茶抽出物及び含ピロリドンポリマーが配合された抄紙が得られる。加熱乾燥の場合、温度は100℃以下、好ましくは80℃以下で乾燥する。
上述のパルプ抄造物を、脱水・乾燥する前に複数積層してより厚い成形物を形成したり、茶抽出物及び含ピロリドンポリマーを含まないパルプスラリーの抄造物2枚の間に挟持して乾燥することによって内部の茶抽出物濃度が高い積層紙を形成することも可能である。又、他の繊維素材の抄造物と重ね合わせて複合化してもよい。
ポリフェノールは、含ピロリドンポリマーのピロリドン環とポリフェノールとの親和性によって、含ピロリドンポリマーに対して均一に分布し易くなる。従って、両者の共存状態では、微細な懸濁状態となり、抄造の際に紙繊維中に細かく均一に分散し易い。この点において、含ピロリドンポリマーは、他の水溶性高分子又は樹脂からなる接合材とは異なる。澱粉又は澱粉粕を接合材として用いた場合には、均質な紙が得られ難く、茶抽出物の定着も不十分であるため、色移り等の抑制効果が極めて低い。MC(メチルセルロース)やHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)等の水溶性高分子を接合材として用いた場合は、ポリフェノールとの混合物が粘性の塊を生じ易いため、パルプスラリーに細かく分散し難く、パルプ繊維間にポリフェノールを均一に分布させることは困難である。つまり、MCやHPMC等は、ポリフェノールを紙の表面に塗工する場合には利用できるが、抄造での導入には不向きであり、紙の変色を抑制する効果も得られない。このようなことから、含ピロリドンポリマーは、ピロリドン環とポリフェノールとの親和性がポリフェノールの紙への均一定着性を高めるだけでなく、ポリフェノールの関与による紙の変色を抑制する効果を有し、均質な紙を得るためにも適した材料である。
このようにして得られるパルプ成形物は、ポリフェノールを有効成分として抗菌性及び抗酸化性を持続的に発揮する、生体への安全性が高い繊維体であり、パルプ性状及び抄造条件(厚さ、密度)によって、水解紙、非水解紙、不織布、フェルト、マット等の形態の繊維製品となる。パルプ成形物中のポリフェノールは、酒石酸鉄試薬による呈色(黒色変化)によって検出でき、本発明では、この呈色によるハンターLab表色系のL値の差(呈色によるL値の変化量)が2〜23となるパルプ成形物が好適に得られる。
又、本発明のパルプ成形物は、含ピロリドンポリマーの配合によってポリフェノールのパルプからの脱離が抑制される。これは、水に接触させた時に溶出する量の減少によって確認することができる。又、紫外線によるポリフェノールの酸化も抑制され、これは紫外線照射前後の色差によって確認することができ、具体的には、紫外線照射前後における色差ΔEが6未満となるパルプ成形物を得ることができる。
従って、本発明のパルプ成形物は、その抗菌性及び抗酸化性を活かして、食品や食材を包装する抗菌シートとして利用でき、被包装物の酸化、腐敗を抑制し、鮮度を保持可能な期間を延長することができ、被包装物への着色も防止される。また、本発明を医療関係に適用した場合には、例えば医療用シーツ等として使用した時に、少なくとも黄色ブドウ球菌に対して優れた抗菌性を示すことから、院内感染などの二次感染の予防に極めて有効である。従って、黄色ブドウ球菌等の病原性細菌に対する優れた抗菌性を活かして、細菌増殖に適した環境において抗酸化・抗菌性を要求される衛生用品、具体的には、医療用シーツ(例えば、疾患者用使い捨てシーツ)、医療用覆布、包帯、医療用ガーゼ、絆創膏、マスク、ペーパータオル、おしめシート、パンティシート、汗とりパット、生理用ナプキン、おねしょシート、母乳パット、失禁パット又はおむつ等の衛生用品として好適に利用できる。同様にして、エアーフィルター、靴底敷き用素材、ペット用トイレ、鮮魚や魚の切り身のドリップ吸収シート、業務用冷蔵庫内の抗菌・消臭シートなど、広い範囲において抗酸化・抗菌を目的として利用できる。
又、本発明のパルプ成形物は、その製造に当たって製紙産業において特別な設備、原料等を必要とせず、食材等への着色等の問題点が解決され、用途が広がり、より多くの消費者に提供できる。
以下、実施例を参照して本発明を詳述するが、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。
[茶抽出物及びPVPの配合順序]
(比較例1)
パルプスラリー(パルプ3g、水300ml)に水200mlを加えて抄造し、熱風乾燥機(Drying Sterilizer SG82、YAMATO SCIENTIFIC CO., LTD.製)にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(比較例2)
パルプスラリー(パルプ3g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F、株式会社伊藤園製緑茶抽出物、総ポリフェノール:35質量%以上)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、水100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(比較例3)
パルプスラリー(パルプ3g、水300ml)にポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15、東京化成工業株式会社製、K値:14.1)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、水100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(実施例1)
パルプスラリー(パルプ3g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.6質量%水溶液100mlを加え、30秒間撹拌し、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(実施例2)
パルプスラリー(パルプ3g、水300ml)中にポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、茶抽出物(テアフラン30F)の0.6質量%水溶液を100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(実施例3)
パルプスラリー(パルプ3g、水300ml)中に、予めポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15)の0.6質量%水溶液100mlと茶抽出物(テアフラン30F)の0.6質量%水溶液100mlとを混合したものを加え、30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(試料の測定方法及び評価)
以下の手順に従って、茶抽出物の総ポリフェノール含有量及び上記比較例1〜3及び実施例1〜3で得た各パルプ成形物試料の静菌活性値、増殖値、卵の着色を測定又は観察し、各試料における抗菌、作製容易、着色抑制について評価した。結果を表1に示す。
<茶抽出物の成分分析>
茶抽出物(テアフラン30F)に含まれる8種のカテキンとカフェインについてHPLCを用いて分析し、含有量(質量%)を調べたところ、ガロカテキン:0.99%、エピガロカテキン:10.16%、カテキン:0.22%、カフェイン:5.79%、エピカテキン:2.91%、エピガロカテキンガレート:12.95%、ガロカテキンガレート:0.33%、エピカテキンガレート:2.60%、カテキンガレート:0.23%であり、8種のカテキンの合計量は30.38%、総ポリフェノールの含有量は37.59%であった。
<総ポリフェノールの定量>
「茶業研究報告,Vol.71,p.43〜74,1990年」の記載に従い、酒石酸鉄比色定量法に準拠して、標準品として没食子酸エチルを用いて没食子酸の換算量として、試料の総ポリフェノール含有量を算出した。具体的には、以下の条件で総ポリフェノールの含有量を定量した。
1)酒石酸鉄試薬の調製:硫酸第一鉄・七水和物100mg及び酒石酸カリウム・ナトリウム500mgを蒸留水に溶解して容積を100mlに調整した。
2)りん酸緩衝液の調製:1/15Mりん酸水素二ナトリウム水溶液及び1/15Mりん酸二水素カリウム水溶液を混合してpH7.5に調整した。
3)標準液の調製:50ppm,100ppm,150ppm,200ppm及び250ppm(質量/容積比)の各濃度に調整した没食子酸エチルの水溶液を調製した。
4)試料溶液の調製:試料をイオン交換水に溶解して試料濃度が250ppm(質量/容積比)となるように容積を調整した試料溶液を調製した。尚、対照として用いた緑茶抽出物については、成分含有量が低いため、試料濃度が500ppmとなるように試料溶液を調製した。
5)測定方法:標準液或いは試料溶液5mlに酒石酸鉄試薬5mlを加え、りん酸緩衝液を用いて25mlに定容して混和した後に、UV540nmでの吸光度を測定した。標準液の測定値から検量線を作成し、それを用いて試料中の没食子酸エチル相当量を求め、1.5倍量を総ポリフェノール含有量とした。
<パルプ成形物の静菌活性値の測定>
「JIS L1902:2002 菌液吸収法」に従って、試料0.4gをオートクレーブで滅菌した後、試験菌株として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC-12732)を使用して約10CFU/mlになるように1/20ニュートリエント培地で調整した菌液0.2mlを試料に接種し、37℃で18時間保存した後、菌数を測定した。試験はn=3とし、下記の計算式によって静菌活性値を求めた。
静菌活性値=log[(比較例1の18時間後菌数)/(試料の18時間後菌数)]
<菌の増殖値の測定>
「JIS L1902:2002 菌液吸収法」に従って、試料0.4gをオートクレーブで滅菌した後、試験菌株として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC-12732)を使用して約10CFU/mlになるように1/20ニュートリエント培地で調整した菌液0.2mlを試料に接種し、初期の菌数を測定した。この後、試料を37℃で18時間保存した後、菌数を測定した。試験はn=3とし、下記の計算式によって増殖値を求めた。
増殖値=log[(試料の18時間後菌数)/(試料の初期菌数)]
<卵の着色>
スライスした厚焼き卵の間に試料を挟み、常温で15時間保存した後の厚焼き卵の表面色の変化を観察し、着色の殆ど無いものを1、非常に濃いものを4として4段階で判定した。
<評価基準>
抗菌性:静菌活性値が2.2以上の場合を「A」、静菌活性値が2.2以下で、増殖値が1以下の場合を「B」、静菌活性値が2.2以下で、増殖値が1以上の場合を「C」として3段階で評価した。
作製容易:抄造時に泡立ちがなく、容器にこびりつきがないものを「A」、泡立ち又はこびりつきが僅かにあるものを「B」、泡立ち又はこびりつきがかなりあるものを「C」とした。
着色抑制:卵の着色の薄いものから順に「A」〜「D」の4段階で評価した。
<評価>
表1において、比較例2及び実施例1〜3における静菌活性値及び増殖値がほぼ同等の値を示していることから、ポリビニルピロリドンの存在はポリフェノールの抗菌性に実質的に影響を及ぼさないことが明らかである。又、実施例1〜3から、ポリビニルピロリドンと茶抽出物とをパルプに配合することによって、ポリフェノールによる抗菌性を保持しつつ、パルプ成形物から卵への着色を抑制可能であり、ポリビニルピロリドンの添加が有効であることがわかる。
又、実施例1〜3では、茶抽出物及びポリビニルピロリドンの投入順によって僅かな相違が見られる。実施例1の静菌値及び増殖値は、実施例1における抗菌性が実施例2より僅かに高いことを示している。この理由は、実施例1ではパルプ繊維に先に付着した茶抽出物の全てをポリビニルピロリドンが被覆固定する構造になるため、実施例2のパルプ繊維に付着したポリビニルピロリドンがポリフェノールを捕捉する構造に比べてポリフェノールの絶対量が多くなり得ることによると考えられる。又、実施例2は、実施例1より卵への着色抑制力が若干高く、この理由として、実施例1の構造では、パルプ繊維に定着しているポリフェノールのうちピロリドン環との作用が弱い又は無いものが実施例2より存在し易くなることが考えられる。
(表1)
茶抽出物及びPVPの配合順序による相違
/500ml水 配合 測定結果 評価
パルプ 茶抽出 PVP 順序 静菌 増殖値 卵の 抗菌 作製 着色
(g) 物(g)(g) 活性値 着色 性 容易 抑制
比較例1 3 − − 0 1.78 1 C A A
比較例2 3 0.6 − 2.41 -0.63 4 A A D
比較例3 3 − 0.6 -0.4 2.19 1 C A A
実施例1 3 0.6 0.6 茶→P 2.46 -0.68 3 A B C
実施例2 3 0.6 0.6 P→茶 2.38 -0.59 2 A B B
実施例3 3 0.6 0.6 同時 2.38 -0.59 3 A B C
[茶抽出物及びPVPの配合量]
(比較例4)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に水200mlを加えて抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(比較例5)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)中にポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15、東京化成工業株式会社製)の0.15質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、水100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(比較例6)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)にポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15)の0.25質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、水100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(比較例7)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F、株式会社伊藤園製、総ポリフェノール濃度:35質量%以上)の0.03質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、水100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(比較例8)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.075質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、水100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(比較例9)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.15質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、水100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(比較例10)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.3質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、水100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(比較例11)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、水100mlを加えて30秒撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(実施例4)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.03質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15)の0.03質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(実施例5)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.075質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15)の0.075質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(実施例6)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.15質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15)の0.15質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(実施例7)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.3質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15)の0.3質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(実施例8)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(試料の測定方法及び評価)
以下の手順に従って、上記比較例4〜11及び実施例4〜8で得た各パルプ成形物試料における酒石酸鉄試薬滴下によるL値の差及び色差ΔE、水への溶出による吸光度、紫外線照射前後の色差ΔEを求め、各試料におけるポリフェノールの定着、作製容易、UV耐性について評価した。結果を表2に示す。
<酒石酸鉄試薬滴下によるL値の差>
(+)-酒石酸ナトリウムカリウム四水和物500mg及び硫酸鉄(II)七水和物100mgを脱イオン水100mlに溶解して酒石酸鉄試薬を得た。
各パルプ成形物試料に、酒石酸鉄試薬100μlを滴下し、80℃に設定した乾燥機内で5分間乾燥させて、滴下していない部分及び滴下した部分についてハンターLab表色系のL値を分光色差計(日本電色工業株式会社製SE2000)を用いて測定し、滴下していない部分のL値から滴下した部分のL値を差し引いて滴下によるL値の差を求めた。
<酒石酸鉄試薬滴下による色差ΔE
各パルプ成形物試料の酒石酸鉄試薬を滴下していない部分及び滴下した部分について、ハンターLab表色系のL値,a値及びb値を分光色差計(日本電色工業株式会社製SE2000)を用いて測定し、色差ΔEの値を下記の計算式により求めた(式中、L0,a0及びb0は滴下しない部分のL値,a値及びb値であり、L1,a1及びb1は滴下した部分のL値,a値及びb値である)。
△E=[(L1−L0)+(a1−a0)+(b1−b0)1/2
<水への溶出による280nmの吸光度>
各パルプ成形物試料100mgを2mlの水に投入して約3時間静置した後に撹拌し、フィルター(Ekicrodisc13、0.45μm Versapor、日本ポール株式会社製)を用いてろ過し、ろ液の吸光度を分光光度計(UV-160A、SHIMADZU製)で測定した。
<光照射試験前後の色差ΔEH>
UVランプ(捕虫器用FL 15BA-37-K、15W、National製)4本を4.5cm間隔で並列させた。この直下13cmの位置に各パルプ成形物試料を配置して、紫外線を24時間照射した。各試料について、照射前後のL値,a値及びb値を測定し、色差ΔEの値を下記の計算式により求めた(式中、L0,a0及びb0は照射前のL値,a値及びb値であり、L2,a2及びb2は照射後のL値,a値及びb値である)。
ΔE=[(L2−L0)+(a2−a0)+(b2−b0)1/2
<評価基準>
ポリフェノールの定着:酒石酸鉄試薬滴下によるL値の差が2以上のものを「○」、それ以外を「×」とした。
作製容易:抄造時に泡立ちがなく、容器にこびりつきがないものを「A」、泡立ち又はこびりつきが僅かにあるものを「B」、泡立ち又はこびりつきがかなりあるものを「C」とした。
UV耐性:UV照射前後の色差ΔEの値が6未満である場合を「〇」、それ以外の場合を「×」とした。
<評価>
表2の酒石酸鉄試薬滴下によるL値の差及び色差ΔEの値を参照すると、パルプ成形物のポリフェノールの量は茶抽出物の配合量に対応しており、スラリーへの配合量によってパルプ成形物への定着量を調整可能であることは明らかである。前述の表1によれば、ポリビニルピロリドンの有無に関係なく、少なくとも0.2g/パルプ1g以下の範囲でも茶抽出物をパルプに定着させて抗菌性等の機能を有効に発揮可能であることは明らかであるので、パルプ成形物のポリフェノール定着量及び有効性をパルプスラリーへの茶抽出物の配合量によって調整可能と見なせる。
酒石酸鉄試薬滴下によるL値の差及び色差△Eの値は、ポリビニルピロリドンの配合に応じて低下するが、ポリフェノールと酒石酸鉄試薬との作用をポリビニルピロリドンが緩衝すると考えられる。
水への溶出による280nmの吸光度の値によれば、ポリビニルピロリドンの配合によってポリフェノールの水への溶出が抑制されることを示している。更に、紫外線照射前後の色差ΔEから、ポリビニルピロリドンは、UV耐性を付与してポリフェノールの紫外線による劣化を抑制することが解る。従って、ポリビニルピロリドンを添加することによって、光に対して色が安定な紙を作製することができる。
比較例4,7〜11と比較例6及び実施例4〜8とを配合量と対応させて比較することによって、ポリビニルピロリドンの好適な配合量を検討すると、茶抽出物及びポリビニルピロリドンの配合量が0.03〜0.3gの範囲において、紫外線照射前後の色差ΔEは、増加が抑制される傾向が強く、ポリビニルピロリドンによるUV耐性の付与効果が高いと考えられる。
実施例4のパルプ成形物について、静菌活性値及び増殖値を調べることによって、抗菌性があることを確認しており、茶抽出物の配合量をパルプに対して2質量%(総ポリフェノール換算で0.7質量%)以上となるように設定することによって、抗菌性紙として有効なパルプ成形物が得られる。
尚、実施例4,6及び比較例9のパルプ成形物について、水解試験を行って非水解紙であることを確認した。具体的には、特開2006−000565号公報を参照して、パルプ成形物試料100mg及び水25mlを50mlビーカーに投入し、180°回転による振とうを行って、試料が崩壊して20mm以下の大きさになるまでの振とう回数を測定した。この結果、実施例4,6及び比較例9の何れも浸透回数が200回に達しても20mm以下にならならず、非水解紙であるのに対し、市販のトイレットペーパーでは26回で20mm以下になり、水解紙である。
Figure 2009203577
[ポリビニルピロリドンのK値]
(実施例9)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F、株式会社伊藤園製、ポリフェノール濃度:35質量%以上)の0.075質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-30、東京化成工業株式会社製、K値:27.0〜33.0)の0.075質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造して、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(実施例10)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.075質量%水溶液100mlを加え、30秒間撹拌し、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-90、東京化成工業株式会社製、K値:88.0〜96.0)の0.075質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造して、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(試料の測定方法及び評価)
上記の手順に従って、実施例5,9,10で得た各パルプ成形物試料における酒石酸鉄試薬滴下によるL値の差、水への溶出による吸光度、紫外線照射前後の色差ΔEの測定及び卵への着色の観察を行い、各試料におけるポリフェノールの定着、UV耐性、着色抑制について上記と同様に評価した。又、紙の仕上がり及び紙上のカテキンの均一分散性について以下のように評価した。結果を表3に示す。
(評価方法)
紙の仕上がり:パルプ成形物の外観を観察して、色の均一性及び美観が許容できるものを「〇」、許容できないものを「×」、どちらともいえないものを「△」として仕上がりを評価した。
紙上のカテキンの均一分散性:酒石酸鉄試薬に浸漬し、均一に着色するか否かを観察し、均一であるものを「〇」、まだらなものを「×」とした。
(抄造状況の観察:ポリビニルピロリドンのK値による変化)
上記実施例9、実施例10において、抄造状況を観察し、前記実施例5における抄造状況と比較したところ、いずれにおいても抄造作業は実施例5と同様に順調であった。従って、これらの実施例のような茶抽出物及びポリビニルピロリドンの濃度においては、ポリビニルピロリドンのK値に関係なく、良好な紙を作製できることが分かる。但し、実施例10では、容器にパルプ混合物のへばりつきが見られ、漉き上げ時に若干の損失が発生した。実施例9でも僅かなへばりつきが見られた。
茶抽出物とポリビニルピロリドンとの混合物を予め調製して、これをパルプスラリーに配合するように手順を変更すると、ポリビニルピロリドンのK値が高いほどパルプスラリーへの微細分散性が低下する傾向が見られる。このことから、ポリフェノールとピロリドン環との作用によって生じる物性変化によって、高分子量の場合ほど状態変化を起こし易くなると考えられる。従って、K値が88を超える高い値の含ピロリドンポリマーを使用する場合、パルプスラリーに配合する前にポリフェノールと含ピロリドンポリマーとが作用することを避けて、ポリフェノール及び含ピロリドンポリマーは個別にパルプスラリーに配合するように手順を制限することが、均質に抄紙する上で有効である。これに対して、K値が小さい場合、ポリフェノール及び含ピロリドンポリマーの混合物は、非常に微細な懸濁状態となって、抄造時にパルプ繊維上に細かく分散して定着し易く、均質なパルプ成形物が得易いと考えられる。
Figure 2009203577
[茶抽出物とPVPとの比率]
(比較例12)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F、株式会社伊藤園製、ポリフェノール濃度35質量%以上)の1.2質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、水100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造して、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(実施例11)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の1.2質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15、東京化成工業株式会社製)の1.2質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造して、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(試料の測定方法及び評価)
前述と同様の手順に従って、比較例12及び実施例11で得た各パルプ成形物試料における酒石酸鉄試薬滴下によるL値の差及び色差ΔE、水への溶出による吸光度を測定し、各試料におけるポリフェノールの定着及び作製容易について評価した。結果を表4に示す。
表4における設定範囲において、ポリフェノールの定着及び保護は有効に発揮されることが解る。但し、PVPの配合量の増加によって抄造時に容器へのこびり付きが見られるようになり、過剰量のPVPによって凝集等が起こり得ると考えられる。又、ポリフェノールの配合量がある程度を越えると、水への溶出を抑制し難くなる傾向が見られる。この点について、実施例8及び11の結果を参照すると、茶抽出物としてテアフラン30Fを用いた場合では、総ポリフェノール換算でパルプ繊維に対して好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下となるように茶抽出物の配合量を設定するのがよい。
Figure 2009203577
(比較例13)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)にポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15、東京化成工業株式会社)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、水100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造して、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(比較例14)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F、株式会社伊藤園製、ポリフェノール濃度35質量%以上)の0.9質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、水100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造して、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(実施例12)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.3質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造して、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(実施例13)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.9質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造して、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(実施例14)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の1.2質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造して、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(試料の測定方法及び評価)
前述と同様の手順に従って、上記比較例13,14及び実施例12〜14で得た各パルプ成形物試料における酒石酸鉄試薬滴下によるL値の差及び色差ΔEを測定し、各試料におけるポリフェノールの定着及び作製容易について評価した。結果を表5に示す。
表5において、茶抽出物に対するPVPの比率が変動してもポリフェノールの定着及び保護は有効に発揮されることが解る。
表4及び表5において使用している量の範囲では、茶抽出物及びポリビニルピロリドンは好適にパルプに導入され、茶抽出物とPVPとの比率を特に制限する必要はない。但し、パルプスラリーへの均質分散性及び作業性の点においてポリビニルピロリドンの適正配合量には上限があることから、ポリビニルピロリドンの配合量は、茶抽出物の配合量に応じて必要最少量に設定することが望ましい。テアフラン30F(総ポリフェノール:35質量%以上)とポリビニルピロリドンK-15(K値:14.1)との組み合わせにおいては、同程度の配合量に設定するのが適正と考えられる。この場合、ポリフェノールに対するポリビニルピロリドンの質量比に換算すれば、2.7程度となる。
Figure 2009203577
[茶種及びポリフェノール含量による相違]
(実施例15)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出精製物(テアフラン90S、株式会社伊藤園製、原料:緑茶、ポリフェノール濃度:90質量%以上)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15、東京化成工業株式会社製)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造して、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(実施例16)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に烏龍茶の抽出精製物(原料:黄金桂、ポリフェノール濃度:52.9質量%以上)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造して、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(実施例17)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に紅茶の抽出精製物(原料:紅茶、ポリフェノール濃度:83.0質量%以上)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造して、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(試料の測定方法及び評価)
前述と同様の手順に従って、上記実施例15〜17で得た各パルプ成形物試料における酒石酸鉄試薬滴下によるL値の差及び色差ΔE、水への溶出による吸光度を測定し、各試料におけるポリフェノールの定着及び作製容易について評価した。結果を表6に示す。
表6から、原料茶の発酵程度に関わらず、何れの茶の抽出物でも好適にポリフェノールをパルプに定着させることができることが解る。また、ポリフェノール含量の高い茶抽出物を用いた方が抄紙作業を行い易い傾向が見られることから、均質分散性を低下させ作業性を悪化させる原因成分として、総ポリフェノール以外の抽出成分に含まれる可能性も考えられ、総ポリフェノールの含有量が60質量%程度以上の高い茶抽出精製物を使用すると好適である。
Figure 2009203577
[PVPP及び他の高分子化合物]
(実施例18)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F、株式会社伊藤園製、総ポリフェノール濃度:35質量%以上)の0.03質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、ポリビニルポリピロリドン(DiverganF(pod:06014601)、BASF製)の0.03質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(実施例19)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.15質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、ポリビニルポリピロリドン(DiverganF(pod:06014601))の0.15質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(実施例20)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、ポリビニルポリピロリドン(DiverganF(pod:06014601))の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(比較例15)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.03質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、デンプン(デンプン(溶性)試薬特級、片山化学工業株式会社製)の0.03質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(比較例16)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.15質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、デンプン(デンプン(溶性)試薬特級)の0.15質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(比較例17)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、デンプン(デンプン(溶性)試薬特級)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(比較例18)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.03質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、デンプン粕(ジャガイモを原料としてデンプンを除去したもの、水分量:79.3%)の0.03質量%水溶液(水分量から乾物換算で水に添加)を調製して、この水溶液100mlをパルプスラリーに加えて30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(比較例19)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.15質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、デンプン粕(上記と同様)の0.15質量%水溶液100mlを調製して加え、30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(比較例20)
パルプスラリー(パルプ1.5g、水300ml)に茶抽出物(テアフラン30F)の0.6質量%水溶液100mlを加えて30秒間撹拌し、デンプン粕(上記と同様)の0.6質量%水溶液100mlを調製して加え、30秒間撹拌した後に抄造し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(試料の測定方法及び評価)
前述と同様の手順に従って、上記比較例15〜20及び実施例18〜20で得た各パルプ成形物試料における酒石酸鉄試薬滴下によるL値の差、紫外線照射前後の色差ΔE及び卵の着色を測定又は観察し、各試料におけるポリフェノールの定着、UV耐性及び卵の着色抑制について評価した。又、パルプ成形物の外観を観察して、色の均一性及び美観が許容できるものを「〇」、許容できないものを「×」として仕上がりを評価した。結果を表7に示す。
表7によれば、ポリビニルポリピロリドンは、ポリビニルピロリドンと同様にポリフェノールを定着させる機能を発揮し、食品への着色を抑制すると共にUV耐性を付与することが解る。これに比べ、デンプンの場合は、抄造における加工制御が難しく、デンプン粕の場合は、パルプ成形物の紙としての仕上がり状態が悪く、粒上のものが存在して汚く見える。卵への着色についても、デンプン又はデンプン粕を配合した場合は、かなり濃い着色が見られた。従って、デンプン及びデンプン粕では、食品への着色を抑制し難く、製品の仕上がりが良くない。
Figure 2009203577
[配合形態による相違]
(比較例21)
茶抽出物(テアフラン30F、株式会社伊藤園製、総ポリフェノール濃度:35質量%以上)0.6gと、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15、東京化成工業株式会社製)0.6gとを水500mlに溶解した。この溶液をペーパータオルに染み込ませて軽く絞った後に、比較例4に従って作成したパルプ成形物の片面に密着させて溶液を塗布し、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(比較例22)
茶抽出物(テアフラン30F)0.6gと、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15)0.6gとを水500mlに溶解した。この溶液に、比較例4に従って作成したパルプ成形物を1〜2秒間浸漬し、溶液が浸透したのを確認した後に引き上げて熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(比較例23)
茶抽出物(テアフラン30F)6.0gと、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドンk-15)6.0gとを水500mlに溶解した。この溶液をペーパータオルに染み込ませて軽く絞った後に、比較例4に従って作成したパルプ成形物の片面に密着させて溶液を塗布した。この塗布作業を5回繰り返し行った後、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させてパルプ成形物を得た。
(評価)
比較例21〜23のパルプ成形物について、前述と同様にして、酒石酸鉄試薬の滴下によるL値の差を測定し、卵への着色を観察して、ポリフェノールの定着及び着色抑制について評価した。結果を表8に示す。
比較例21において卵の着色が少ないのは、塗布量が少ないためであり、塗布を繰り返して塗布量を多くした比較例23のものでは着色が強く、茶成分が移行し易い。
一方、比較例22及び実施例8は、卵の着色については同等であるが、L値の差から、ポリフェノールの搭載量に差があることが解る。この理由は、浸漬の場合にはパルプ成形物の内部までポリフェノールが浸透せずに表面に留まり、殆どが表面に偏在しているためと考えられる。
実施例8と比較例21〜23との比較から、塗布又は浸漬によりポリフェノールが表面に集中的に分布する構造では、ポリフェノールの実用的な配合と着色抑制とを満足させることは難しく、抗菌性を発揮しつつ接触物への着色が抑制されたパルプ成形物を得るには、抄造によってパルプ成形物全体に均一にポリフェノールを分散させることが有効であることが明らかである。
(表8)
茶抽出物及びPVPの配合形態による相違
/500ml水 配合 測定結果 評価
パルプ 茶抽出 PVP 形態 酒石酸鉄試薬 卵の ポリフェ 着色
物 の滴下による 着色 ノールの 抑制
(g) (g) (g) L値の差 定着
比較例21 1.5 0.6 0.6 塗布 4.38 1 A A
比較例22 1.5 0.6 0.6 浸漬 9.26 3 A C
比較例23 1.5 6.0 6.0 塗布 13.25 4 A D
実施例8 1.5 0.6 0.6 抄造 16.44 3 A C

Claims (12)

  1. パルプ繊維と、含ピロリドンポリマーと、茶ポリフェノールとを含有する水性スラリーを調製し、前記水性スラリーを抄造することを特徴とするパルプ成形物の製造方法。
  2. パルプ繊維と、含ピロリドンポリマーと、茶抽出物とを含有する水性スラリーを調製し、前記水性スラリーを抄造することを特徴とするパルプ成形物の製造方法。
  3. 前記茶ポリフェノール又は茶抽出物は緑茶由来であり、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、テアフラビン、テアルビジン及びメチル化カテキンからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 前記含ピロリドンポリマーは、ポリビニルピロリドン及びポリビニルポリピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーであり、前記ポリビニルピロリドンはK値が14〜103の範囲である請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。
  5. 前記水性スラリーの茶ポリフェノール又は茶抽出物の含有割合は、パルプ繊維の乾燥質量に対して総ポリフェノールが0.7〜30質量%となるように調整され、前記含ピロリドンポリマーは、総ポリフェノールに対する質量比が1.25〜5.6の割合で配合される請求項1〜4の何れかに記載の製造方法。
  6. 含ピロリドンポリマーと、茶ポリフェノールとを含有するパルプ成形物であって、前記含ピロリドンポリマー及び前記茶ポリフェノールは、パルプ成形物表面における濃度がパルプ成形物内部における濃度と等しい又はそれ以下であることを特徴とするパルプ成形物。
  7. 茶抽出物と、含ピロリドンポリマーとを全体に均一に含有するシート状のパルプ成形物。
  8. 前記茶抽出物は茶ポリフェノールを含有する請求項7記載のパルプ成形物。
  9. 前記茶ポリフェノールは、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、テアフラビン、テアルビジン及びメチル化カテキンからなる群より選択される少なくとも1種を含む緑茶由来ポリフェノールであり、抗菌性及び消臭性を有する請求項6又は8記載のパルプ成形物。
  10. 前記含ピロリドンポリマーは、ポリビニルピロリドン及びポリビニルポリピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーであり、前記ポリビニルピロリドンはK値が14〜103の範囲である請求項6〜9の何れかに記載のパルプ成形物。
  11. 前記含ピロリドンポリマーは、総ポリフェノールに対する質量比が1.25〜5.6の割合で含まれ、非水解性紙又は不織布として成形される請求項6〜10の何れかに記載のパルプ成形物。
  12. 前記パルプ繊維の乾燥質量に対して、総ポリフェノール量は0.7〜30質量%、前記カテキン量は0.6〜26質量%である請求項6〜11の何れかに記載のパルプ成形物。
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