[実施例1]
(1)画像形成装置
図1は本実施例における画像形成装置1の概略構成図であり、シート(記録材)Sの搬送方向Vに沿った断面模式図である。この画像形成装置1は、中間転写体を用いたフルカラー電子写真プリンタ(以下、プリンタと記す)である。このプリンタ1は、プリンタ制御部(以下、CPUと記す)10にインターファイス22を介して接続される外部ホスト装置23から入力する画像データ(電気的な画像情報)に対応した画像をシートSに形成して画像形成物を出力することができる。
CPU10はプリンタ1の動作を統括的に制御する制御手段であり、外部ホスト装置23やプリンタ操作部24と各種の電気的情報信号の授受をする。また、各種のプロセス機器やセンサなどから入力する電気的情報信号の処理、各種のプロセス機器への指令信号の処理、所定のイニシャルシーケンス制御、所定の作像シーケンス制御を司る。外部ホスト装置23は、パーソナルコンピュータ、ネットワーク、イメージリーダ、ファクシミリなどのである。
プリンタ1内には、図面上、左側から右側に第1から第4の4つの画像形成部U(UY、UM、UC、UK)が並設されている。各画像形成部Uはそれぞれの現像器5に収容した現像剤であるトナーの色がイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)と異なるだけで、構成は互いに同じ電子写真画像形成機構である。
即ち、各画像形成部Uは、それぞれ、電子写真感光体(以下、ドラムと記す)2と、このドラム2に作用するプロセス機器としての帯電ローラ3、レーザスキャナ4、現像器5、一次転写ローラ6などを有する。
各画像形成部Uのドラム2はそれぞれ矢印の反時計方向に所定の速度で回転駆動される。そして、第1の画像形成部UYのドラム2には形成するフルカラー画像のY色成分像に対応するY色トナー画像が形成される。第2の画像形成部UMのドラム2にはM色成分像に対応するM色トナー画像が形成される。また、第3の画像形成部UCのドラム2にはC色成分像に対応するC色トナー画像が形成される。第4の画像形成部UKのドラム2にはK色成分像に対応するK色トナー画像が形成される。各画像形成部Uのドラム2に対するトナー画像の形成プロセス・原理は公知に属するからその説明は省略する。
各画像形成部Uの下側には中間転写ベルトユニット7が配設されている。このユニット7は、中間転写体としての可撓性を有する無端状の中間転写ベルト8を有する。ベルト8は、駆動ローラ11と、テンションローラ12と、二次転写対向ローラ13の3本のローラ間に懸回張設されている。ベルト8は駆動ローラ11が駆動されることで矢印の時計方向にドラム2の回転速度に対応した速度で循環移動される。二次転写対向ローラ13にはベルト8を介して二次転写ローラ14が所定の押圧力で当接している。ベルト8と二次転写ローラ14との当接部が二次転写ニップ部である。
各画像形成部Uの一次転写ローラ6はベルト8の内側に配設されていて、それぞれ、ベルト8を介してドラム2の下面に当接している。各画像形成部Uにおいてドラム2とベルト8との当接部が一次転写ニップ部である。一次転写ローラ6には所定の制御タイミングで所定の一次転写バイアスが印加される。
各画像形成部Uのドラム2にそれぞれ形成されたY色トナー、M色トナー、C色トナー、K色トナーが循環移動するベルト8の表面に各一次転写ニップ部において順次に重畳されて一次転写される。これにより、ベルト8上に4色重ね合わせも未定着のフルカラートナー画像が合成形成されて、二次転写ニップ部に搬送される。
一方、第1または第2の給紙カセット15または16に収容されているシートSが給紙機構の動作により1枚分離給送され、搬送路17を通ってレジストローラ対18に送られる。レジストローラ対18は、シートSを一旦受け止めて、シートが斜行している場合、真っ直ぐに直す。そして、レジストローラ対18は、ベルト8上のトナー画像と同期を取って、シートSを二次転写ニップ部に搬送する。
シートSが二次転写ニップ部で挟持搬送される間、二次転写ローラ14には所定の二次転写バイアスが印加される。これにより、シートSに対してベルト8側のフルカラートナー画像が一括して順次に二次転写される。そして、二次転写ニップ部を出たシートSはベルト8の面から分離され、搬送路19を通って、画像処理装置としての画像加熱定着装置100に導入される。シートSは定着装置100で加熱・加圧されて未定着トナー画像が固着画像として定着される。定着装置100を出たシートSはフルカラー画像形成物として排出ローラ対20によって排出トレイ21へ搬送されて排出される。
(2)定着装置100
図2は本実施例における定着装置100の外観斜視図である。図3は同装置100の要部の横断右側面図であり、下側ベルトアセンブリBの加圧状態時を示している。図4は同装置100の要部の横断右側面図であり、下側ベルトアセンブリBの加圧解除状態時を示している。図5は同装置100の要部の左側面図であり、下側ベルトアセンブリBの加圧状態時を示している。図6はベルト寄り制御機構部分の斜視図である。
ここで、定着装置100又はこれを構成している部材に関して、長手方向(長手)または幅方向(幅)とは定着装置のシート搬送路面内において、シートSの搬送方向Vに直交する方向に平行な方向(もしくはその方向の寸法)である。短手方向(短手)とは定着装置のシート搬送路面内において、シートSの搬送方向Vに平行な方向(もしくはその方向の寸法)である。
また、定着装置100について正面とはシート入口側の面、背面とはシート出口側の面、左右とは装置を正面から見て左又は右である。本実施例においては左側を手前側、右側を奥側とする。上下とは重力方向において上又は下である。上流または下流とはシートSの搬送方向Vに関して上流又は下流である。ベルトまたはシートの幅とはシート搬送方向に直交する方向の寸法である。
本実施例の定着装置100は、ベルトニップ方式、電磁誘導加熱(IH)方式、オイルレス定着方式の画像加熱装置である。
この定着装置100は、加熱ユニットとしての上側ベルトアセンブリAと、加圧ユニットとしての下側ベルトアセンブリBを有する。また、上側ベルトアセンブリAに対する下側ベルトアセンブリBの加圧−離間機構(接離手段)を有する。また、上側ベルトアセンブリAにおける定着ベルト105を加熱する加熱機構であるIHヒータ(磁束発生手段)170、定着ベルト105の寄り制御機構、定着ベルト105の表面性を回復する粗し機構(表面性回復機構)等を有する。以下、これらについて順次に説明する。
(2−1)上側ベルトアセンブリAとIHヒータ170
上側ベルトアセンブリAは装置筐体の左右の上側板140間に配設されている。このアセンブリAは、表面に離型層を有し、シートSの画像担持面に対向する定着回転体(定着部材:第1の定着回転体)としての可撓性を有する定着ベルト(エンドレスベルト)105を有する。また、この定着ベルト105を懸架する複数のベルト懸架部材としての、駆動ローラ(支持ローラ)131、テンションローラを兼ねるステアリングローラ132、パッドステー137を有する。
駆動ローラ131は左右の上側板140間においてシート出口側に配設されており、左右の軸部131aが、それぞれ、左右の上側板140間にベアリング(不図示)を介して回転可能に支持されている。
左右の上側板140の外側には、それぞれ、駆動ローラ131側からシート入口側に延びているステアリングローラ支持アーム154が配設されている。右側の支持アーム154(不図示)は右側の上側板140(不図示)に対して固定されている。図6を参照して、左側の支持アーム154は駆動ローラ131の左側の軸131aに対してベアリング154aを介して支持させてあり、軸131aを中心上下方向に揺動可能である。左側の支持アーム154の自由端部にはピン151が植設されている。また、左側の上側板140の外面にはシート入口側に軸160が植設されている。
この軸160に対してU字型の溝部161aを有するフォーク板161が一体に設けられたウォームホィール(はす歯歯車)152が回転可能に支持されている。そして、左側の支持アーム154のピン151はフォーク板161の溝部161aに係合している。上側板140にはステッピングモータ155が配設されている。このモータ155の回転軸に固着されたウォーム157がウォームホィール152に噛合している。
ステッピングモータ155が正転駆動または逆転駆動されることでウォーム157、ウォームホィール152を介してフォーク板161が上方向または下方向に回動する。これに連動して左側の支持アーム154が軸131aを中心に上方向または下方向に回動する。
ステアリングローラ132は左右の上側板140間においてシート入口側に配設されており、左右の軸部132aが、それぞれ、上記の左右の支持アーム154に対して軸受153を介して回転可能に支持されている。軸受153は支持アーム154に対してベルトテンション方向にスライド移動可能に支持されていると共にテンションバネ156により駆動ローラ131から遠のく方向に移動付勢されている。
パッドステー137は例えばステンレス鋼(SUS材)で形成された部材である。パッドステー137は、定着ベルト105の内側において駆動ローラ131とステアリングローラ132との間の駆動ローラ131寄りにパッド受け面を下向きにして、左右両端部が左右の上側板140間に固定されて支持されている。
駆動ローラ131、ステアリングローラ132、パッドステー137に掛け渡されている定着ベルト105はテンションバネ156の付勢力によるステアリングローラ132のベルトテンション方向への移動により所定のテンション(張力)が掛けられている。本実施例においては200Nのテンションを掛けている。パッドステー137の下向きのパッド受け面に対して定着ベルト105の下行側のベルト部分の内面が接している。
定着ベルト105としては、IHヒータ170により発熱させられるとともに耐熱性を具備したものであれば適宜選定して差し支えない。例えば厚さ75μm、幅380mm、周長200mmのニッケル金属層もしくはステンレス層などの磁性金属層に、例えば厚さ300μmのシリコンゴムをコーティングし、表層(離型層)にPFAチューブを被覆したものが用いられる。
駆動ローラ131は例えば中実ステンレスによって外径がφ18に形成された芯金表層に耐熱シリコンゴム弾性層を一体成型により形成したローラである。駆動ローラ131は、定着ベルト105と後述する第2の回転体としての加圧ベルト120とで形成される定着ニップ部Nのニップ域のシート出口側に配設され、後述する加圧ローラ121の圧接により弾性層が所定量弾性的に歪ませられるものである。
本実施例では駆動ローラ131と加圧ローラ121とが定着ベルト及び加圧ベルト120を挟んで形成するニップ形状を略ストレートに形成している。しかし、シートSの定着ニップ部N内での速度差によるシートSの座屈を制御するために駆動ローラ131と加圧ローラ121のクラウン形状を意図的に逆クラウン形状とするなど、様々なローラのクラウン形状を取ることも可能である。
ステアリングローラ132は例えばステンレスによって外径がφ20、内径φ18程度に形成された中空ローラである。このステアリングローラ132は定着ベルト105を張架して張りを与えるテンションローラとして機能するとともに、後述する寄り制御機構により傾きが制御されて定着ベルト105の移動方向に直交する幅方向への蛇行を調整するステアリングローラとして働く。
駆動ローラ131にはローラ軸131aの左端側に駆動入力ギアGが同軸に固定して配設されている。このギアGに対して駆動モータ301(図2)から駆動伝達手段(不図示)を介して駆動入力がなされ、駆動ローラ131が図4の矢印の時計方向に所定の速度で回転駆動される。
この駆動ローラ131の回転によって定着ベルト105が矢印の時計方向に駆動ローラ131の速度に対応した速度で循環搬送される。ステアリングローラ132はベルト105の循環搬送に従動して回転する。定着ベルト105の下行側ベルト部分の内面はパッドステー137の下向きのパッド受け面に対して摺動して移動する。シートSを後述する定着ニップ部Nで安定的に搬送するために、定着ベルト105と駆動ローラ131間では確実に駆動を伝達している。
定着ベルト105を加熱する加熱手段としてのIHヒータ170は、励磁コイルと磁性体コアとそれらを保持するホルダーなどから構成されている誘導加熱コイルユニットである。上側ベルトアセンブリAの上側に配置されており、定着ベルト105の上面部分とステアリングローラ132の部分にかけて定着ベルト105に非接触に所定の間隔を存して対向させて、左右の上側板140間に固定して配設されている。
IHヒータ170の励磁コイルは交流電流が供給されることによって交流磁束を発生し、交流磁束は磁性体コアに導かれて誘導発熱体である定着ベルト105の磁性金属層に渦電流を発生させる。その渦電流は誘導発熱体の固有抵抗によってジュール熱を発生させる。励磁コイルに供給される交流電流は、定着ベルト105の表層温度を検知するためのサーミスタ220からの温度情報をもとに定着ベルト105の表面温度が140〜200℃程度(目標温度)に温調制御される。
(2−2)下側ベルトアセンブリBと加圧−離間機構
下側ベルトアセンブリBは上側ベルトアセンブリAの下側に配置されている。このアセンブリBは定着装置100のシート出口側において左右の下側板303に固定して設けられたヒンジ軸304を中心に上下方向に回動可能に支持されている下フレーム(加圧フレーム)306に対して組みつけられている。
このアセンブリBは、上側ベルトアセンブリA側の定着ベルト105との間でニップ部Nを形成する定着回転体(加圧部材:第2の定着回転体)としての可撓性を有する加圧ベルト(エンドレスベルト)120を有する。また、この加圧ベルト120を張りを持たせて懸架する複数のベルト懸架部材としての、加圧ローラ(加圧ローラ)121、テンションローラ122、加圧パッド125を有する。
加圧ローラ121は左右の軸部121aが、それぞれ、下フレーム306の左右の側板間にベアリング159を介して回転可能に支持されている。テンションローラ122は左右の軸部122aが、それぞれ、下フレーム306の左右の側板に軸受158を介して回転可能に支持されている。軸受158は下フレーム306に対してベルトテンション方向にスライド移動可能に支持されていると共にテンションバネ127により加圧ローラ121から遠のく方向に移動付勢されている。
加圧パッド125は例えばシリコンゴムで形成された部材であり、下フレーム306の左右の側板間に左右両端部が固定されて支持されている。加圧ローラ121は下フレーム306の左右の側板間においてシート出口側に位置している。テンションローラ122は下フレーム306の左右の側板間においてシート入口側に位置している。加圧パッド125は加圧ベルト120の内側において加圧ローラ121とテンションローラ122との間の加圧ローラ121寄りにパッド面を上向きにして非回転に支持されて配置されている。
加圧ローラ121、テンションローラ122、加圧パッド125に掛け渡されている加圧ベルト120はテンションバネ127の付勢力によるテンションローラ122のベルトテンション方向への移動により所定のテンション(張力)が掛けられている。本実施例においては200Nのテンションを掛けている。加圧パッド125の上向きのパッド面に対して加圧ベルト120の上行側のベルト部分の内面が接している。
加圧ベルト120としては耐熱性を具備したものであれば適宜選定して差し支えない。例えば、厚さ50μm、幅380mm、周長200mmのニッケル金属層に例えば厚さ300μmのシリコンゴムをコーティングし、表層(離型層)にPFAチューブを被覆したものが用いられる。加圧ローラ121は例えば中実ステンレスによって外径がφ20に形成されたローラである。また、テンションローラ122は例えばステンレスによって外径がφ20、内径φ18程度に形成された中空ローラである。
下側ベルトアセンブリBは接離手段としての加圧−離間機構によりヒンジ軸304を中心に上下方向に回動制御される。即ち、下側ベルトアセンブリBは加圧−離間機構により持ち上げ回動されることで図4のように加圧位置に移動される。また、持ち下げ回動されることで図5のように離間位置に移動される。
下側ベルトアセンブリBは加圧位置に移動されることで、加圧ローラ121と加圧パッド125とがそれぞれ上側ベルトアセンブリAの駆動ローラ131とパッドステー137とに対して加圧ベルト120および定着ベルト105を挟んで所定の加圧力で圧接する。これにより、上側ベルトアセンブリAの定着ベルト105と下側ベルトアセンブリBの加圧ベルト120との間にシートSの搬送方向Vにおいて所定幅の定着ニップ部Nが形成される。また、下側ベルトアセンブリBは離間位置に移動されることで、上側ベルトアセンブリAに対して加圧が解除されて非接触に離間する。
本実施例における上記の加圧−離間機構について説明する。下フレーム306には、ヒンジ軸304側とは反対側に、下側ベルトアセンブリBを上側ベルトアセンブリAに対して弾性的に圧接するための加圧バネ305を有する加圧バネユニットが配設されている。
左右の下側板303間の下部には加圧カム軸307が回転可能に軸受けされて配設されている。この加圧カム軸307の左右側にそれぞれ下フレーム306の下面を支持する同形状・同位相の一対の偏心加圧カム308が固定して配設されている。加圧カム軸307の右端側には加圧ギア309(図2)が同軸に固定して配設されている。このギア309に対して加圧モータ302から駆動伝達手段(不図示)を介して駆動入力がなされ、加圧カム軸307が回転駆動される。
加圧カム軸307は、偏心加圧カム308について図3、図5のように大隆起部を上向きにした第1の回転角位置と、図4のように大隆起部を下向きにした第2の回転角位置とに回転制御される。
加圧カム軸307が第1の回転角位置に回転されて停止されることで、下側ベルトアセンブリBを搭載している下フレーム306が偏心加圧カム308の大隆起部により持ち上げられる。そして、下側ベルトアセンブリBが上側ベルトアセンブリAに対して加圧バネユニットの加圧バネ305を押し縮めながら当接する。これにより、下側ベルトアセンブリBが上側ベルトアセンブリAに対して加圧バネ305の圧縮反力で弾性的に所定の圧力(例えば400N)で押圧付勢され、図4の加圧位置に保持される。
ここで、駆動ローラ131に対する加圧ローラ121の圧接により駆動ローラ131には加圧ローラ121と接する方向と逆側に数百ミクロン程度の反り変形が生じる。この定着ローラ131の反り変形は、定着ニップ部Nの長手方向の中央部での圧抜けの要因となる。この圧抜けをなくすために駆動ローラ131または駆動ローラ131および加圧ローラ121はクラウン形状を取ることで、駆動ローラ131と加圧ローラ121によるニップ形状を略ストレートに形成している。本実施例では駆動ローラ131に300μmの正クラウン形状を設けている。
また、加圧カム軸307が第2の回転角位置に回転されて停止されることで、偏心加圧カム308の大隆起部が下向きとなり小隆起部が下フレーム306の下面に対応して下側ベルトアセンブリBが持ち下げられる。即ち、下側ベルトアセンブリBは上側ベルトアセンブリAに対して加圧が解除されて非接触に所定に離間した図4の離間位置に保持される。
図7の(a)の制御フローチャートと(b)の制御系統のブロック図により下側ベルトアセンブリBの上下動制御を説明する。
下側ベルトアセンブリBは常時は図4の離間位置に保持されている。CPU10による加圧命令により<S13−001>、モータドライバ302Dを介して加圧モータ302がCW方向に所定の回転数であるN回転し<S13−002>、加圧カム軸307が半回転駆動される。これにより、偏心加圧カム308が図5の第2の回転角位置から図3、図5の第1の回転角位置に転換されて、下側ベルトアセンブリBが持ち上げ回動され加圧ローラ121と加圧パッド125が加圧位置に移動する<S13−003>。
即ち、加圧ローラ121と加圧パッド125が上側ベルトアセンブリAの駆動ローラ131とパッドステー137に加圧ベルト120と定着ベルト105を挟んで所定の当接圧で圧接する。これにより、定着ベルト105と加圧ベルト120との間にシート搬送方向Vにおいて所定幅の定着ニップ部Nが形成される<S13−004>。
また、下側ベルトアセンブリBが図3の加圧位置に保持されている状態において、CPU10による加圧命令により<S13−005>、モータドライバ302Dを介して加圧モータ302がCCW方向に所定の回転数であるN回転される<S13−006>。これにより、加圧カム軸307が半回転駆動され、偏心加圧カム308が図3、図5の第1の回転角位置から図4の第2の回転角位置に転換される。即ち、下側ベルトアセンブリBが持ち下げ回動されて加圧ローラ121と加圧パッド125が離間位置に移動する<S13−008)。これにより、定着ニップ部Nの形成が解除される<S13−009>。
(2−3)定着動作と温調制御
次に、図8の(a)の制御フローチャートと(b)の制御系統のブロック図により定着装置100の定着動作について説明する。定着装置100の待機状態時において、下側ベルトアセンブリBは図4の離間位置に保持されている。駆動モータ301は駆動が停止されている。IHヒータ170への給電も停止している。
CPU10はプリントジョブ開始信号の入力に基づいて所定の作像シーケンス制御を開始する。定着装置100については所定の制御タイミングにおいてモータドライバ302Dを介して加圧モータ302を駆動して加圧カム軸307を半回転駆動させることで下側ベルトアセンブリBを図4の離間位置から図3の加圧位置に移動させる。これにより、定着ベルト105と加圧ベルト120との間に定着ニップ部Nが形成される<S16−001>。
次に、CPU100はモータドライバ301Dを介して駆動モータ301を駆動して駆動入力ギアGに駆動を入力する。これにより、上側ベルトアセンブリAの駆動ローラ131が前記のように駆動されて定着ベルト105の回転が開始される。
また、駆動入力ギアGの回転力が駆動ギア列(不図示)を介して下側ベルトアセンブリBの加圧ローラ121にも伝達されて、加圧ローラ120が図3において矢印の反時計方向に回転駆動される。この加圧ローラ121の回転に伴い、また回転する定着ベルト105との摩擦力で加圧ベルト120が矢印の反時計方向に回転を開始する<S16−002>。定着ベルト105と加圧ベルト120の移動方向は定着ニップ部Nにおいて同方向であり移動速度もほぼ同じである。
次に、CPU100はヒータコントローラ170C(図9の(b))、ヒータドライバ170Dを介してIHヒータ170に電力を供給することにより回転する定着ベルト105を電磁誘導加熱して所定の目標温度に立ち上げて温調制御する。即ち、通紙されるシートSの坪量や紙種に応じて定着ベルト105を140度から200度の目標温度に立ち上げて維持する温調制御を開始する<S16−003>。
そして、定着ニップ部Nの形成、定着ベルト105及び加圧ベルト120の回転、定着ベルト105の温度立ち上げと温調がなされた状態において、画像形成部より、表面に未定着トナー画像t(図3)が形成されているシートSが定着装置100に導入される。シートSは定着装置100のシート入口部に配設されている入口ガイド184に案内されて定着ベルト105と加圧ベルト120との圧接部である定着ニップ部Nへ進入する。入口ガイド184にはフォトインタラプタを備えたフラグセンサ185が配置されており、シートSの通過タイミングの検知を行う。
シートSは画像担持面が定着ベルト105に対向し、その反対面が加圧ベルト120に対向して定着ニップ部Nで挟持搬送されていく。そして、シート上の未定着トナー画像tが定着ベルト105の熱とニップ圧によりシート面に固着画像として定着される。定着ニップ部Nを通過したシートSは定着ベルト105に表面から分離して定着装置100のシート出口側から出て排出ローラ対20(図1)によって排出トレイ21へと搬送排出される。
そして、所定の1枚または連続複数枚のプリントジョブにおけるシートSの搬送が終了したら、CPU10は定着ベルト105の加熱、温調制御を終了してIHヒータ170への電力供給をOFFにする<S16−004)。また、駆動モータ301をOFFにして定着ベルト105及び加圧ベルト120の回転を停止させる<S16−005>。
また、モータドライバ302Dを介して加圧モータ302を駆動して加圧カム軸307を半回転駆動させることで下側ベルトアセンブリBを図3の加圧位置から図4の離間位置に移動させる。これにより、定着ベルト105と加圧ベルト120と定着ニップ部Nが解除される(S16−006>。この状態において、CPU10は次のプリントジョブ開始信号の入力待ちをする。
図9の(a)の制御フローチャートと(b)の制御系統のブロック図により定着ベルト105の温度制御を説明する。上側ベルトアセンブリAには定着ベルト105の表面温度を検知する温度検知部材としてのサーミスタ220が配設されている。CPU10はプリントジョブ開始信号の入力に基づいて所定の制御タイミングでヒータコントローラ170C・ヒータドライバ170Dを介してIHヒータ170に電力を印加する<S17−001>。定着ベルト105はIHヒータ170による電磁誘導加熱により昇温する。
その定着ベルト105の温度がサーミスタ220により検知されて検知温度情報(温度に関する電気的情報)がCPU10に入力する。CPU10はサーミスタ220による検知温度が所定の規定値(目標温度)以上となったらIHヒータ170に対する電力を停止する。その後、CPU10はサーミスタ220による検知温度が所定の規定値よりも低くなったら<S17−004のNo>、IHヒータ170に対する電力の印加<S17−001>を再開する。
上記のステップS17−001〜S17−004の繰り返しにより定着ベルト105が所定の目標温度に温調維持される。そして、上記の定着ベルト温調制御が所定の1枚または連続複数枚のプリントジョブの終了<S17−005>まで実行される。
(2−4)ベルト寄り制御機構
定着ベルト105はその回転過程においてシート搬送方向Vと直交する幅方向の一方側又は他方側へ片寄るように移動する現象(ベルトの寄り移動)が発生する。定着ベルト105に圧接して定着ニップ部Nを形成する加圧ベルト120も定着ベルト105と一緒に寄り移動する。
本実施例においてはこの定着ベルト105の寄り移動をスイング型寄り制御で所定の寄り範囲内に安定させるようにしている。スイング型寄り制御はベルト位置が幅方向中央部から所定量以上移動したことを検知した場合にステアリングローラ132を定着ベルト105の寄り移動方向と反対向きに傾けるという方法である。このスイング型寄り制御を繰り返すことにより、定着ベルト105が周期的に幅方向の片側からもう一方の側まで移動するため、定着ベルト105の寄り移動を安定して制御することができる。即ち、定着ベルト105はシートSの搬送方向Vと直交する方向に往復移動可能に構成されている。
上側ベルトアセンブリAにおいて、定着ベルト105の左側(手前側)でステアリングローラ132寄りの位置に定着ベルト端部位置を検知するためのセンサ部(不図示)が設けられている。CPU10はこのセンサ部によって定着ベルト105の端部位置(ベルト寄り移動位置)を検出し、それに応じて、ステッピングモータ155を正転方向(CW)または逆転方向(CCW)に所定の回転数回転させる。
これにより、前述した図5・図6の機構157、152、161、151を介して、左側のステアリングローラ支持アーム154が軸131aを中心に上方または下方に所定の制御量だけ回動する。これに連動して、ステアリングローラ132の傾きが変化して定着ベルト105の寄り制御がなされる。
(2−5)定着ベルト105の粗し機構
次に、図10を用いて定着ベルト105の表面性回復を行う粗し機構(表面性回復機構)について説明する。本実施例においては、上側ベルトユニットAの駆動ローラ131の上方に、定着ベルト105の外面を摺擦することで定着ベルト105の表面性を回復させる摺擦回転体(粗し部材)としての粗しローラ(摺擦ローラ)400が配設されている。
この粗しローラは、上述したように、シートのエッジ部と接触した定着ベルトの部位が他の部位に比べて部分的に粗面化してしまう場合に有効なものである。つまり、粗しローラは、定着ベルトの長手方向のほぼ全域に亘り摺擦することにより、部分的に表面が粗れてしまった部位とそうではない部位とで表面粗さがほぼ同等となるようにして、劣化状態を目立たなくなるようにするものである。
このように劣化状態を目立たなくすることを、本例では、表面性を回復させると呼んでいる。具体的には、本例では、表面粗さRzが2.0程度に部分的に粗らされた定着ベルトの表面を、このような粗しローラによる粗し処理(摺擦処理)により、表面粗さRzが0.5〜1.0に回復させるようにしている。
このように、本例では、粗しローラと呼んでいるものの、粗しローラの役割は定着ベルト105の表面粗さを長期に亘り十分に低い状態に維持させるためのものである。これは、画像の光沢ムラを抑制しつつ、画像の光沢低下を抑制することに繋がる。
粗しローラ400は、装置筐体の左右の上側板140にそれぞれ同軸に固定された固定軸142に回転可能に支持された左右一対のRF支持アーム141間に軸受け(不図示)を介して回転可能に支持されている。
粗しローラ400はφ12mmのステンレス製の芯金の表面に接着層を介して砥粒を密に接着してある。砥粒は、画像の目標光沢度に合わせて、番手(粒度)が#1000〜#4000のものを用いるのが好ましい。砥粒の平均粒径は、番手(粒度)が#1000の場合は約16μm、#4000番手の場合は約3μmである。
砥粒は、アルミナ系(通称「アランダム」または「モランダム」とも称される)である。アルミナ系は、工業的に最も幅広く用いられる砥粒で、定着ベルト105の表面に比べて各段に硬度が高く、粒子が鋭角形状のため研磨性に優れている。本例では、番手(粒度)が#2000の砥粒(平均粒径が7μm)を用いている。
(2−6)粗しローラを接離させる接離機構
本例では、粗しローラを定着ベルトに対して接離させる接離機構(移動機構)を有している。以下、具体的に説明する。
粗しローラは、摺擦処理時、その長手方向両端の軸部がそれぞれ定着ベルトに向けて押圧機構により押圧される構成となっている。本例では、後述する左右のRF支持アーム141がこの押圧機構の役割を担っている。
左右のRF支持アーム141の上側には、それぞれ、RFカム(偏心カム)407が配設されている。左右のRFカム407は装置筐体の左右の上側板140間に回転可能に軸受けされて支持されたRFカム軸408に対して同形状・同位相で固定されている。左右のRF支持アーム141は、それぞれ、粗しローラ400を支持している側とは反対側のアーム端部と左右の上側板140にそれぞれ固定した固着したRF離間軸406との間にRF離間ばね405が張設されている。
このRF離間ばね405の張力により左右のRF支持アーム141はそれぞれ固定軸142を中心に粗しローラ400を持ち上げる方向に常時回動付勢されており、アーム上面が対応する左右のRFカム407の下面に弾性的に押圧されている。図10の(b)のように、RFカム軸408の右側端部にはRF着脱ギア409が固定されている。このRF着脱ギア409に対してRF加圧モータ410のRFモータギア411が噛合している。
本実施例においては、左右のRFカム407は常時は図3、図4のように大隆起部が上向きとなっている回転角の第1姿勢で停止されている。この状態時においては、左右のRF支持アーム141はそれぞれ対応するRFカム407の小隆起部に対応している。そのため、粗しローラ400は定着ベルト105に対して所定に離間している離間位置に保持されている。即ち、粗しローラ400は定着ベルト105の上方に持ち上げられていて定着ベルト105には作用しない。
左右のRFカム407は上記の第1姿勢から180°回転されて図10の(a)のように大隆起部が下向きとなっている回転角の第2姿勢に転換されて保持される。この状態時においては、左右のRF支持アーム141がそれぞれ対応するRFカム407によりRF離間ばね405に抗して固定軸142を中心に押し下げられる。そして、粗しローラ400が駆動ローラ131のベルト懸回部において定着ベルト105の表面に所定の押圧力で接触(当接)して粗しニップ部Rを形成する加圧位置(当接位置)に転換されて保持される。
また、駆動ローラ131の端部に固定されたRF駆動ギア401に対して粗しローラ400の端部に固定されたRFギア403が噛合する。これにより、駆動ローラ131の回転力がRF駆動ギア401とRFギア403を介して粗しローラ400に伝達されて、粗しローラ400は定着ベルト105と逆方向に回転する。即ち、表面に研磨層を備えた粗しローラ400は、定着ベルト105に対してウィズ方向(表面が同一方向へ移動する方向)に周速差を持って回転して、定着ベルト105の表面を一様に荒らす機能(表面を均す機能)を有している。
即ち、摺擦部材である粗しローラ400は定着ベルト105に対して周速差を持って回転するローラ部材である。粗しローラ400上記の離間位置と加圧位置との位置転換は左右のRFカム407がRF加圧モータ410により、RFモータギア411、RF着脱ギア409、RFカム軸408を介して上記のように第1姿勢と第2姿勢とに姿勢転換されることでなされる。なお、図10の(a)においては、上側ベルトユニットAに加圧されて定着ニップ部Nを形成している下側のベルトユニットBは省略している。
図11の(a)は上記の粗し機構の動作制御フローチャートである。粗し機構の左右のRFカム407は上記のように常時は図3、図4のように大隆起部が上向きとなっている回転角の第1姿勢で停止されている。即ち、粗しローラ400は定着ベルト105に対して所定に離間している離間位置に保持されている。
CPU100は所定の加圧制御タイミング<S15−001:加圧命令>にて、モータドライバ410DによりRF加圧モータ410をCW方向に所定の回転数であるM回転する<S15−002>。それにより、左右のRFカム407が第1姿勢(図3、図4)から第2姿勢(図10の(a))に転換されて、粗しローラ400が離間位置(第1位置)から加圧位置(第2位置)に移動される<S15−003>。粗しローラ400が加圧位置に移動することで、定着ベルト105と粗しローラ400が圧接し粗しニップ部Rが形成される<S15−004>。
そして、CPU100は所定の離間制御タイミング<S15−005:離間命令>にて、モータドライバ410DによりRF加圧モータ410をCCW方向に所定の回転数であるM回転する<S15−006>。それにより、左右のRFカム407が第2姿勢(図10の(a))から第1姿勢(図3、図4)に戻し転換されて、粗しローラ400が加圧位置から離間位置に移動される<S15−007>。粗しローラ400が離間位置に移動することで、定着ベルト105と粗しローラ400が圧接し粗しニップ部Rが解除される<S15−008>。
次に、粗しローラ400による定着ベルト105の表面性回復動作に入るタイミングについて図12を用いて説明する。図12(b)のブロック図に示すように、本実施例においては、CPU10はプリントジョブの実行において定着装置100により定着処理されたシートSの枚数(画像加熱処理されたシートの枚数)をカウンタWでカウントしてその積算値をメモリZに記憶している。
そして、積算値(カウンタによりカウントされたシートの枚数)が所定の枚数N(所定値:本例では3000枚)に到達した場合、実行しているプリントジョブの終了後、またはプリントジョブ(定着処理)の実行を中断する。そして、粗しローラ400による定着ベルト105の表面性回復動作(摺擦回転体による摺擦処理)を実行する。表面性回復動作が終了すると、メモリZに記憶された積算値を0にリセットする。プリントジョブを中断した場合は、定着ベルト105の表面性回復動作を実行した後、残りプリントジョブを再開する。
図12(a)は上記の表面性回復動作フロー図である。CPU10は通紙枚数積算値が所定の通紙枚数N以上となったら<S18−001>、実行しているプリントジョブの終了後またはプリントジョブを一時中断して<S18−002>、表面性回復動作を開始する<S18−003>。また、カウンタを0にリセットする。表面性回復動作が終了すると、次のプリントジョブ待ちの状態、または中断されたプリンタジョブの再開しその終了後に次のプリントジョブ待ちの状態となる<S18−004>。
尚、本実施例では、定着装置100に対する所定枚数のシートへの定着処理後に粗しローラ400による定着ベルト105の表面性回復動作に入る例について述べた。これに限定されず、特定のシートのみの枚数をカウントしたり、特定の種類のシートのプリントジョブの前や、プリント待ち状態でのプリンタ操作部24(図1)からのユーザーの操作/指示により適時に定着ベルト105の表面性回復動作を実行させても良い。粗しローラ400による定着ベルト105の摺擦処理は画像加熱処理が行われていないときに実行されることが好ましい。
(2−7)送風機構
上記のように定着ベルト105は、粗しローラ400が加圧位置に移動することによって、摺擦を受け、その表面性の回復がなされる。この場合、粗しニップ部分に定着ベルト表層の削りカスが発生し得る。その削りカスが定着ベルト上に線状に残留することで粗し動作直後の画像上に削りカスが定着ベルト軸方向に線状に付着することがある。特に粗し動作直後の光沢度の高い画像においては定着ベルト表層の削りカスが顕著に現れ、画像品位の低下を引き起こす恐れがある。
この粗しローラ400による定着ベルト表層の削りカスが定着ベルト上に線状に残留することを防止し、粗し動作直後に画像上に現れる削りカスを目立たなくするために、送風機構を用いて粗し動作時の定着ベルト表層の削りカスを拡散するようにしている。以下、この送風機構を用いた削りカス拡散構成について詳述する。
送風機構は、少なくとも摺擦回転体である粗しローラ400が前記当接位置から前記離間位置へ移動するとき、粗しローラ400と第1の定着回転体である定着ベルト105との間に向けてエアーを吹き付けるエアー吹き付け機構である。
図13は本実施例における送風機構の模式図、図14は送風機構の斜視図、図15は送風機構の模式図である。送風機構はファン601とダクト602を有している。ファン601の動作は制御器であるCPU10により制御される。ファン601は、粗しローラ400が加圧位置に移動したときの定着ベルト105との粗しニップ部(当接部)Rに向けて、定着ベルト105に対して長手方向全域(ベルト幅方向全域)に送風可能となるようにダクト602を介して送風する。
本実施例においては、粗しローラ400が定着ベルト105に加圧される(当接する)とき、ファン601が駆動しダクト602を介して風速Vw(例えば10m/s)で風を定着ベルト105と粗しローラ400の作る粗しニップ部R近傍に吹き付ける。これにより、粗し動作時に発生する定着ベルト表層の削りカスを拡散させる。即ち、粗しローラ400による定着ベルト表層の削りカスが定着ベルト上に線状に残留することを防止し、粗し動作直後に画像上に現れる削りカスを目立たなくすることが可能になる。
本実施例においては、粗しローラ400は定着ベルト105を内面から回転可能に支持する複数の支持ローラの1つである駆動ローラ131に対向させて配設し、粗し動作は粗しローラ400を定着ベルト105を介して駆動ローラ131に圧接させて行わせている。
図15を用いて説明する。本例では、ファン601は、定着ベルトの回転方向上流側から下流側に向けて送風を行う構成となっている。また、駆動ローラ131と粗しローラ400の2つの回転中心(軸心)を通る直線Jと送風Vwの風向Kが成す角度をθとしたとき、45deg≦θ≦60degの範囲にダクト602の送風開口部602aを有し、粗しニップ部Rに送風を行うようにしている。
即ち、送風機構は、エアーの吹き付け方向と支持ローラである駆動ローラ131と粗しローラ400の中心軸を通る直線とのなす角θが、45°≦θ≦60°を満足するように、エアーを吹き付ける。これにより粗し動作時に発生する定着ベルト表層の削りカスの拡散効果が向上する。
また、駆動ローラ131と粗しローラ400が作る粗しニップ部Rのニップ線Mを基準に、駆動ローラ131から離れる方向に平行線Tを引いたとき、その距離a=14mmの範囲内にダクト602の送風開口部602aを設置する。これにより粗し動作時に発生する定着ベルト表層の削りカスの拡散効果が向上する。ここで、ニップ線Mはニップ部Rの幅方向(駆動ローラ131の回転方向)においてニップ部Rの入口部と出口部とを結んだ線である。
次に図16を用い定着ベルト105の表面性回復動作(粗し動作)の詳細について説明する。CPU10は先ずファン601の駆動を開始し送風を行う〈S12−1〉。次に粗しローラ400を離間位置(第1位置)から加圧位置(第2位置)に移動させて定着ベルト105に対して粗しニップ部Rを形成する〈S12−2〉。
次に、駆動モータ301をONにして所定時間T1回転させる。即ち、定着ベルト105を所定の時間T1回転させる〈S12−3〉。この時ファン601からの送風により粗しニップ部Rに発生するカスを拡散させることで、その堆積を防止し、粗しローラ400および定着ベルト105が傷つくのを防ぐ。
所定の時間T1経過後、CPU10は粗しローラ400を離間位置に移動させて定着ベルト105に対する粗しニップ部Rの形成を解除する〈S12−4〉。これにより定着ベルト表層の表面性回復動作の処理(摺擦処理)は終了するが、この間もファン601による送風は継続する。そして、粗しニップ部Rの解除後も駆動モータ301は所定の時間T2(例えば2sec)回転駆動された状態で定着ベルト表層に残留しているカスを寄り一層拡散させる。最後に駆動モータ301の回転を停止させて〈S19−004〉、定着ベルト表面性回復動作が終了される。
以上においては、粗しローラによる摺擦処理が開始される直前から、摺擦処理の終了直後にかけて、ファン601による送風を行っているが、このような例だけに限らず、次のような構成にしても構わない。
つまり、本例では、定着ベルト上にその長手方向に沿って線状に残留し得る削りカスの拡散を目的としていることから、少なくとも粗しローラが加圧位置(当接位置)から離間位置へ移動するとき、ファン601による送風を行えば良い。
また、粗しローラが加圧位置から離間位置へ移動した後も、続けて、所定時間に亘り、ファン601による送風を行うと、より一層、削りカスを拡散させることができるので、より好ましい。
さらに、粗しローラの加圧位置から離間位置への移動開始タイミングよりも早いタイミングでファン601による送風を開始させると、事前に有る程度の拡散を行うことができるので、より好ましい。
[実施例2]
本実施例の定着装置は実施例1と同様にベルト加熱方式の定着装置である。実施例2はベルト方式の定着装置に適用される。実施例1において図13の送風手段601・602の配置では、粗し動作時に発生する異物を拡散させる際、定着ベルト105上で拡散させることになる。画像上目立たなくすることは可能であるが、結果として異物が定着ベルト105上に残留することがある。
本実施例はベルト加熱式の定着装置における粗しローラ400と送風手段601・602の位置関係を規定することで、粗し動作時に発生する異物を掃出し、定着ベルト105上に異物が残留することを防ぐものである。
図17の(a)乃至(d)は、何れも、複数の懸架部材としての3本の懸架ローラ701間(複数の懸架部材間)に定着ベルト105を懸架した構成のベルト定着装置における粗しローラ400と送風手段601・602の配置を示す模式図である。
粗しローラ400は実施例1と同様に駆動ローラ131に対応する懸架ローラ701に対向し定着ベルト105に接触する。このとき、懸架ローラ701と粗しローラ400の軸心間を結んだ線Jに交差しない、2本のローラ701・400の外周に接する2本の共通接線U1・U2を引いたときを考える。そして、上記2本の両ローラ701・400の軸心間を結んだ線Jを基準に、上記の共通接線U1・U2に関して定着ベルト105と交差する側の領域をD、定着ベルト105と交わらない側の領域をEとする。送風手段601および冷却ダクト602はD側に配置し、E側に向けて送風を行う。
即ち、送風手段601・602を、共通接線が定着ベルト105と交差する側の領域内(領域D内)に配置する。この構成により、図17の(a)乃至(d)の何れの構成の場合も、粗し動作時に発生する異物を掃出し、定着ベルト105上に異物が残留することを防ぐことができる。
懸架ローラ701と粗しローラ400の2本の共通接線U1・U2がともに図18の(a)や(b)のように定着ベルト105と交差する場合においては次の場合に異物掃出し効果が得られる。即ち、図18の(a)のように、粗しローラ400に対向する懸架ローラ701の軸心を基準にとった座標系における第3象限および第4象限に粗しローラ400がある場合に送風による良好な異物掃出し効果が得られる。このときダクト602の配置は第3象限、第4象限どちらにあっても構わない。
なお、図18の(b)のように、前述の座標系における第1象限および第2象限に粗しローラ400があると、定着ベルト105上からの異物の掃出しができないため、このような配置は行わない。
以上のように、本実施例においても、粗しローラ400による定着ベルト表層の削りカスが定着ベルト上に線状に残留することを防止し、粗し動作直後に画像上に現れる削りカスを目立たなくすることが可能になる。
以上、本発明に係る実施例について説明したが、本発明の思想の範囲内において、上述の種々の構成を公知の構成に置き換えることは可能である。
例えば、粗しローラにより摺擦処理する対象として定着ベルトを例に説明したが、本発明は、これに限らず、加圧ベルトを粗しローラにより摺擦処理する例にも同様に適用することができる。この場合、シートの両面に画像を形成する際に、特に、有効となる。
また、定着ベルトと加圧ベルトを用いた定着装置を例に説明した。しかし、本発明は、これに限らず、定着ベルトの代わりに定着ローラを用いる場合や、加圧ベルトの代わりに加圧ローラや表面の摩擦係数が小さい非回転のパッドを用いる場合にも同様に適用することができる。
また、未定着トナー像をシートに定着する定着装置を例に説明したが、本発明は、これに限らず、画像の光沢を向上させるべく、シートに仮定着されたトナー像を加熱加圧する装置(この場合も定着装置と呼ぶ)にも同様に適用可能である。
また、加熱機構として電磁誘導加熱方式について説明したが、本発明は、これに限らず、ハロゲンヒータなどの他の方式の加熱機構を用いる場合にも同様に適用することができる。具体的には、例えば、駆動ローラ131や加圧ローラ121の内部にハロゲンヒータなどの加熱機構を配設したものである。