JP6765888B2 - 画像加熱装置 - Google Patents

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Description

本発明は、記録材上のトナー像を加熱する画像加熱装置に関する。この画像加熱装置は、例えば、複写機、プリンタ、FAX、及びこれらの機能を複数備えた複合機等の画像形成装置において用いられ得る。
例えば電子写真方式を利用した画像形成装置には、一般に加熱回転体と加圧部材とで形成されるニップ部(定着ニップ)でトナー像を担持したシートを加圧加熱しながら挟持搬送してトナー像を用紙に定着する定着装置(画像加熱装置)が多く用いられている。シートはトナー像を形成することができる記録媒体(記録材:以下、用紙または紙、もしくはメディアと記す)である。また、高速・高画質な画像を出力するために、加熱回転体あるいは加圧部材に用紙の搬送安定性の高く、幅広いニップ部を確保できる定着ベルトを用いる定着装置が増加してきている。
このような方式の定着装置においては、用紙の坪量に応じて、最適な定着性や分離能力を得られる適切な定着温度条件が異なる。一般的に、用紙の坪量に応じて定着装置の設定温度(温調温度)を変更する。
また、近年のメディアの多様化に伴い、通紙が要求されている用紙の種類も多岐にわたってきている。特に省資源/省スペースなどの観点から超薄紙の通紙要望が高まってきている。超薄紙を安定して通紙するためには、定着装置の用紙分離能力を向上させつつ、定着装置の温度を最適に設定する必要がある。
用紙の坪量に応じて定着装置の設定温度(温調温度)を変更する場合、メディア混載時においては各坪量に応じて異なる設定温度になると温調待ち時間が発生してしまう。特に、温調を高温から低温に変更する場合、定着装置の加熱回転体を冷却するために多大な時間が必要となる。これに対し、ファン(FAN)による空冷により温調時間の短縮を図った構成が知られている(特許文献1)。
一方、定着性を確保するためには用紙および用紙上のトナー像に必要な熱量を与えればよいため、用紙の坪量に応じて、用紙の搬送速度を低下させて定着ニップ通過時間を長くする手段がある。これは構成を複雑化せずに最適な定着性を確保できる利点を有する反面、用紙の搬送速度低下が生産性低下に影響を与えることもある。
これに対し、生産性低下に影響を与えず最適な定着性を確保する手段の一つとして、定着ニップ幅を可変な構成にして、用紙の坪量に応じて定着ニップ幅を変更し、結果的に用紙の定着ニップ通過時間を長くする構成(特許文献2)が知られている。
定着ニップ幅を変更する手段として、特許文献2には、無端ベルト内径側に配置したベルト軌道変更部材の着脱により、無端ベルトの軌道を変更し、定着ニップ幅を拡張させる構成が記載されている。また、無端ベルトの対向する加圧回転体に対する巻付け角を変更する構成(特許文献3)が挙げられる。
特開2013−45030号公報 特開2002−221866号公報 特開2005−331637号公報
しかし、特許文献2の定着ニップ幅変更手段は、ベルト内面側に配置された、例えば定着ローラや定着パッドなどの固定部材とベルト軌道変更部材の間に隙間ができることで、部分的に圧抜けが発生し、画像不良が発生する可能性がある。また、特許文献3の定着ニップ幅変更手段は、無端ベルトと加圧回転体に挟持搬送される用紙に大きなストレスを与えてしまい、用紙カール等が増大することがあり得る。
圧抜けによる画像不良の発生を防止するために、定着パッドなどの固定部材とベルト軌道変更部材との隙間を狭くする必要がある。しかしながら、従来、ベルト内面側に配置されてニップを形成する固定部材においては、回転するベルト内面との摺動性を向上させるために摺動面側に摺動性の高いシート部材が設けられる。そこで、固定部材同士を近接させて圧抜けを抑えようとすると、近接する部分でシート部材が噛み込んで破損してしまう可能性がある。
また、噛み込まないようにシート部材を短くしすぎると、固定部材が露出して摺動性の低下や固定部材のエッジ部でベルト内面の摩耗を促進し耐久性が低下する可能性がある。
本発明の目的は、ニップ幅が可変な構成でありながら、圧抜けなどによる画像不良を防止でき、耐久性の低下を抑制することができる画像加熱装置を提供することである。
本発明に係る画像加熱装置は、記録材上のトナー像を加熱するためのニップ部を形成する少なくとも一方がエンドレスベルトである一対の回転体と、記エンドレスベルトをその内側から他方の回転体に向けて押圧する第1のパッド部材と、前記エンドレスベルトを張架する張架ローラと、前記エンドレスベルトの回転方向において前記第1のパッド部材よりも上流側であって前記張架ローラよりも下流側に設けられ、前記エンドレスベルトの内側に設けられ、前記エンドレスベルトに対して押圧と離間が可能である第2のパッド部材と、前記第1のパッド部材と前記第2のパッド部材が前記ニップ部を形成して記録材を加熱する第1加熱状態と、前記第2のパッド部材が前記エンドレスベルトから離間し、前記第1のパッド部材が前記ニップ部を形成して記録材を加熱する第2加熱状態と、に切り換えるために前記第2のパッド部材を移動させる移動機構と、記第1のパッド部材と前記第2のパッド部材と、前記エンドレスベルトとの間に設けられ、前記エンドレスベルトの内面と摺動する単一のシート状部材と、前記エンドレスベルトの回転方向において前記第2パッド部材よりも上流側であって前記張架ローラよりも下流側に設けられ、前記シート状部材の一端が固定されたシート固定部材と、を備え、前記シート固定部材は、前記シート状部材を介して前記エンドレスベルトを押圧して配置されている、ことを特徴とする
本発明によれば、ニップ幅が可変な構成でありながら、圧抜けなどによる画像不良を防止でき、耐久性の低下を抑制することが可能となる。
実施形態における定着装置の要部の横断左側面図 実施形態における画像形成装置の概略構成図 定着装置の外観斜視図 同装置の要部の左側面図 同装置の要部の横断左側面図(その1) 同装置の要部の横断左側面図(その2) (a)と(b)は上側ベルトアセンブリの左側と右側のパッド可変機構の斜視図 定着パッドと可変パッドと摺動シートの分解斜視図 パッド可変機構の動作図(その1) パッド可変機構の動作図(その2) パッド可変機構の動作図(その3) ベルト寄り制御機構部分の斜視図 下側ベルトアセンブリの着脱制御フローチャート 制御系統のブロック図 定着処理フローチャート 温調制御フローチャート 変形例の模式図(その1) 変形例の模式図(その2) 可変パッドに対する摺動シートの位置関係を示す説明図
以下に図面を用いて、本発明を実施するための好ましい形態を例示的に詳しく説明する。
《実施形態》
(画像形成装置)
図2は本実施形態における画像形成装置1の概略構成図であり、シート(記録材:以下用紙または紙と記す)Sの搬送方向(シート搬送方向)Vに沿った断面模式図である。この画像形成装置1は、中間転写体を用いたフルカラー電子写真プリンタ(以下、プリンタと記す)である。このプリンタ1は、プリンタ制御部(以下、CPUと記す)10にインターファイス22を介して接続される外部ホスト装置23から入力する画像データ(電気的な画像情報)に対応した画像を用紙Sに形成して画像形成物を出力することができる。
CPU10はプリンタ1の動作を統括的に制御する制御部(実行部)であり、外部ホスト装置23やプリンタ操作部24と各種の電気的情報信号の授受をする。また、各種のプロセス機器やセンサなどから入力する電気的情報信号の処理、各種のプロセス機器への指令信号の処理、所定のイニシャルシーケンス制御、所定の作像シーケンス制御を司る。外部ホスト装置23は、パーソナルコンピュータ、ネットワーク、イメージリーダ、ファクシミリなどのである。
プリンタ1内には、図面上、左側から右側に第1から第4の4つの画像形成部U(UY、UM、UC、UK)が並設されている。各画像形成部Uはそれぞれの現像器5に収容した現像剤であるトナーの色がイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)と異なるだけで、構成は互いに同じ電子写真画像形成機構である。
即ち、各画像形成部Uは、それぞれ、電子写真感光体(以下、ドラムと記す)2と、このドラム2に作用するプロセス機器としての、帯電ローラ3、レーザスキャナ4、現像器5、一次転写ローラ6などを有する。
各画像形成部Uのドラム2はそれぞれ矢印の反時計方向に所定の速度で回転駆動される。そして、第1の画像形成部UYのドラム2には形成するフルカラー画像のY色成分像に対応するY色トナー画像が形成される。第2の画像形成部UMのドラム2にはM色成分像に対応するM色トナー画像が形成される。また、第3の画像形成部UCのドラム2にはC色成分像に対応するC色トナー画像が形成される。第4の画像形成部UKのドラム2にはK色成分像に対応するK色トナー画像が形成される。各画像形成部Uのドラム2に対するトナー画像の形成プロセス・原理は公知に属するからその説明は省略する。
各画像形成部Uの下側には中間転写ベルトユニット7が配設されている。このユニット7は、中間転写体としての可撓性を有する無端状の中間転写ベルト8を有する。ベルト8は、駆動ローラ11と、テンションローラ12と、二次転写対向ローラ13の3本のローラ間に懸回張設されている。ベルト8は駆動ローラ11が駆動されることで矢印の時計方向にドラム2の回転速度に対応した速度で循環移動される。二次転写対向ローラ13にはベルト8を介して二次転写ローラ14が所定の押圧力で当接している。ベルト8と二次転写ローラ14との当接部が二次転写ニップ部である。
各画像形成部Uの一次転写ローラ6はベルト8の内側に配設されていて、それぞれ、ベルト8を介してドラム2の下面に当接している。各画像形成部Uにおいてドラム2とベルト8との当接部が一次転写ニップ部である。一次転写ローラ6には所定の制御タイミングで所定の一次転写バイアスが印加される。
各画像形成部Uのドラム2にそれぞれ形成されたY色トナー、M色トナー、C色トナー、K色トナーが循環移動するベルト8の表面に各一次転写ニップ部において順次に重畳されて一次転写される。これにより、ベルト8上に4色重ね合わせも未定着のフルカラートナー画像が合成形成されて、二次転写ニップ部に搬送される。
一方、第1または第2の給紙カセット15または16に収容されている用紙Sが給紙機構の動作により1枚分離給送され、搬送路17を通ってレジストローラ対18に送られる。レジストローラ対18は、用紙Sを一旦受け止めて、用紙が斜行している場合、真っ直ぐに直す。そして、レジストローラ対18は、ベルト8上のトナー像と同期を取って、用紙Sを二次転写ニップ部に搬送する。
用紙Sが二次転写ニップ部で挟持搬送される間、二次転写ローラ14には所定の二次転写バイアスが印加される。これにより、用紙Sに対してベルト8側のフルカラートナー像が一括して順次に二次転写される。そして、二次転写ニップ部を出た用紙Sはベルト8の面から分離され、搬送路19を通って、画像加熱装置としての定着装置100に導入される。用紙Sは定着装置100で加熱・加圧されて用紙上(シート上)の未定着トナー像が固着画像として定着される。定着装置100を出た用紙Sはフルカラー画像形成物として排出ローラ対20によって排出トレイ21へ搬送されて排出される。
(定着装置)
本実施形態の定着装置100は、ベルトニップ方式、電磁誘導加熱(IH)方式、オイルレス定着方式の画像加熱装置である。
ここで、定着装置100について正面とは用紙入口側の面、背面とは用紙出口側の面、左右とは装置を正面から見て左又は右である。本実施形態においては左側を手前側、右側を奥側とする。上下とは重力方向において上又は下である。上流側または下流側は用紙Sの搬送方向(シート搬送方向)Vに関して上流側または下流側である。
また、定着装置100又はこれを構成している部材に関して、長手方向(長手)または幅方向(幅)とは定着装置の用紙搬送路面内において用紙Sの搬送方向Vに直交する方向に平行な方向(もしくはその方向の寸法)である。短手方向(短手)とは定着装置100の用紙搬送路面内において、紙Sの搬送方向Vに平行な方向(もしくはその方向の寸法)である。
図3は本実施形態における定着装置100の外観斜視図である。図4は同装置100の要部の左側面図であり、下側ベルトアセンブリBの加圧状態時を示している。図1は同装置100の要部の横断左側面図であり、下側ベルトアセンブリBの加圧状態かつ可変パッド173bの当接時を示している。図5は同装置100の要部の横断左側面図であり、下側ベルトアセンブリBの加圧状態かつ可変パッド173bの離間時を示している。図6は同装置100の要部の横断左側面図であり、下側ベルトアセンブリBの離間状態時を示している。
図7の(a)と(b)は、それぞれ、上側ベルトアセンブリAの左側と右側のパッド可変機構(移動機構、切り替え機構)180の斜視図である。図7Aは定着パッド173aと可変パッド173bと摺動シート199の分解斜視図である。図7Bは左側のパッド可変機構180の要部の左側面図であり、可変パッド173bの離間時を示している。図7Cと図7Dはそれぞれ同機構の要部の左側面図であり、可変パッド173bの当接時を示している。図8はベルト寄り制御機構部分の斜視図である。
定着装置100は、モータ301(図3)で夫々のベルトが駆動される加熱ユニットとしての上側ベルトアセンブリAと、加圧ユニットとしての下側ベルトアセンブリBを有する。また、モータ302(図3)で駆動される、下側ベルトアセンブリBの上側ベルトアセンブリAに対する加圧−離間機構(接離手段)を有する。
また、上側ベルトアセンブリAにおける定着ベルト105を加熱する加熱手段であるIHヒータ(磁束発生手段)170を有する。また、可変パッド173bの位置を切り替える左側と右側の切り替え機構180(図7)、定着ベルト105の寄り制御機構(図8)等を有する。以下、これらについて順次に説明する。
1)上側ベルトアセンブリAとIHヒータ170
上側ベルトアセンブリAは装置筐体の左右の上側板140間に配設されている。このアセンブリAは、表面に離型層を有し、用紙Sの画像担持面に対向する定着回転体(定着部材:第1の回転体)としての可撓性を有する定着ベルト(エンドレスベルト:無端状のベルト部材)105を有する。また、この定着ベルト105を懸架する複数のベルト懸架部材としての、駆動ローラ(支持ローラ)131、テンションローラを兼ねるステアリングローラ132、定着パッド(第1のパッド部材)173aを有する。
駆動ローラ131は左右の上側板140間において用紙出口側に配設されており、左右の軸部131a(図7)が、それぞれ、左右の上側板140間にベアリング154a(図8)を介して回転可能に支持されている。そして、左右の上側板140の外側には、それぞれ、駆動ローラ131側から用紙入口側に延びているステアリングローラ支持アーム154(図4:右側は不図示)が配設されている。右側の支持アーム154(不図示)は右側の上側板140に対して固定されている。
図8を参照して、左側の支持アーム154は駆動ローラ131の左側の軸131aに対してベアリング154aを介して支持させてあり、軸131aを中心上下方向に揺動可能である。左側の支持アーム154の自由端部にはピン151が植設されている。また、左側の上側板140の外面には用紙入口側に軸160が植設されている。
この軸160に対してU字型の溝部161aを有するフォーク板161が一体に設けられたウォームホィール(はす歯歯車)152が回転可能に支持されている。そして、左側の支持アーム154のピン151はフォーク板161の溝部161aに係合している。ここで、上側板140にはステッピングモータ155が配設されており、このステッピングモータ155の回転軸に固着されたウォーム157がウォームホィール152に噛合している。
ステッピングモータ155が正転駆動または逆転駆動されることで、ウォーム157、ウォームホィール152を介してフォーク板161が上方向または下方向に回動する。これに連動して左側の支持アーム154が軸131aを中心に上方向または下方向に回動する。
ステアリングローラ132は左右の上側板140間において用紙入口側に配設されており、左右の軸部132a(図7)が、夫々左右の支持アーム154に対して軸受153(図8)を介して回転可能に支持されている。軸受153は支持アーム154に対してベルトテンション方向にスライド移動可能に支持されていると共にテンションバネ156により駆動ローラ131から遠のく方向に移動付勢されている。
図1、図7、図7Aを参照して、定着パッド173aは例えばステンレス鋼(SUS材)で形成された部材である。定着パッド173aは、定着ベルト105の内側において駆動ローラ131とステアリングローラ132との間の駆動ローラ131寄りにパッド受け面(摺動面)を下向きにして配置されている。より具体的には、定着パッド173aは左右両端部の被固定部173a−1がそれぞれ左右のパッド支持部材181のパッド固定部181aに固定されて支持されている。左右のパッド支持部材181はそれぞれ左右の上側板140に固定されて支持されている。
可変パッド(第2のパッド部材)173bは例えばステンレス鋼(SUS材)で形成された部材である。可変パッド173bは、定着ベルト105の内側において定着パッド173aとステアリングローラ132との間にパッド受け面(摺動面)を下向きにして定着パッド173aから離間する方向と近接する方向に可動に配置されている。
より具体的には、可変パッド173bは左右両端部のスライダ部173b−1がそれぞれ左右のパッド支持部材181側のほぼ前後方向に長いスライド溝181bに嵌係合されて左右のパッド支持部材181間に支持されている。これにより、可変パッド173bは定着ベルト105と平行を保ちながら定着パッド173aから離間する方向と逆に接近する方向に可動に配置されている。
即ち、可変パッド173bは定着ベルト105の内側において定着パッド173aよりも用紙搬送方向Vの上流側に配置され、定着パッド173aから離間する方向と接近する方向に可動の部材である。
図1、図7Aを参照して、摺動シート199は、定着ベルト105の内面との摩擦抵抗を減らすために低摺動性シート(摺動性のシート状部材)としてのポリイミド製のフィルムをフッ素樹脂でコーティングしたものである。この摺動シート199は定着ベルト105の内面よりも表面の摩擦抵抗が小さいシート部材である。
この摺動シート199の長手幅は定着ベルト105の幅(本実施形態においては380mm)より長く390mm、厚みは70μmとしている。摺動シート199のベルト搬送方向上流端は可変パッド173bとステアリングローラ132との間において両端部が左右の上側板140間に固定支持された固定板198に固定されている。
そこから可変パッド173bの加圧部を経由し、定着パッド173aのベルト搬送方向下流端まで1枚の連続したシートであり、定着ベルト105の内面と定着パッド173aおよび可変パッド173bとの摺動部分を覆っている。この摺動シート119によって駆動ローラ131の駆動トルクが抑えられるので、安定して定着ベルト105を回転させることができる。
即ち、摺動シート119は、定着ベルト(エンドレスベルト)105の内面と摺動可能に設けられ定着パッド(第1のパッド部材)173aと可変パッド(第2のパッド部材)173bを覆う単一のシート状部材である。
ここで、図13に比較例として定着パッド173aおよび可変パッド173bにそれぞれ摺動シート199a、119bを配置した場合の横断面模式図を示す。
可変パッド173bを定着パッド173aに近接配置する場合に、図13の(a)において、可変パッド173b側に配置された摺動シート199bが可変パッド173bの加圧面よりベルト搬送方向側に長い場合(余長部分199b−1がある場合)である。このような場合には、図に示すように、定着パッド173aの加圧面にその余長部分199b−1が噛み込んでしまう恐れがある。噛み込んでしまった場合は、その噛み込み部分での摩耗量の増大や、摺動シート199bさらには摺動シート199aが破れてしまうという問題がある。
また、図13の(b)において、可変パッド173b側に配置された摺動シート199bが可変パッド173bの加圧面より搬送方向側に短い場合である。このような場合には、可変パッド173bの加圧面露出部173b−3で定着ベルト105の内面とエッジ当りする可能性がある。そのために、定着ベルト内面の摩耗量が増大するという問題がある。
これに対して、本実施形態においては、図1、図7Aのように、1枚の連続した摺動シート199で可変パッド173bと定着パッド173aの両方の加圧面(摺動面)間を覆っている。そのため、上記のような問題が発生することなく、定着ベルト内面摩耗による耐久性の低下を抑制することができる。
駆動ローラ131、ステアリングローラ132、定着パッド173aおよび可変パッド173bに掛け渡されている定着ベルト105には所定のテンション(張力)が掛けられている。具体的には、テンションバネ156の付勢力によるステアリングローラ132のベルトテンション方向への移動によりテンションが掛けられている。本実施形態においては200Nのテンションを掛けている。そして、定着パッド173aの下向きのパッド受け面(加圧面:摺動面)に対して、定着ベルト105の下行側ベルト部分の内面が摺動シート199を介して接している。
定着ベルト105としては、IHヒータ170により発熱させられるとともに耐熱性を具備したものであれば適宜選定して差し支えない。例えば、厚さ75μm、幅380mm、周長200mmのニッケル金属層もしくはステンレス層などの磁性金属層に、例えば厚さ300μmのシリコンゴムをコーティングし、表層(離型層)にPFAチューブを被覆したものが用いられる。
駆動ローラ131は、例えば中実ステンレスによって外径がφ18に形成された芯金表層に耐熱シリコンゴム弾性層を一体成型により形成したローラである。駆動ローラ131は、定着ベルト105と後述する第2の回転体としての加圧ベルト120とで形成される定着ニップ部Nのニップ域の用紙出口側に配設され、後述する加圧ローラ121の圧接により弾性層が所定量弾性的に歪ませられるものである。
ここで、本実施形態では、駆動ローラ131と加圧ローラ121とが定着ベルト105及び加圧ベルト120を挟んで形成するニップ形状を略ストレートに形成している。しかし、用紙Sの定着ニップ部N内での速度差による用紙Sの座屈を制御するために、駆動ローラ131と加圧ローラ121のクラウン形状を意図的に逆クラウン形状とするなど、様々なローラのクラウン形状を取ることも可能である。
ステアリングローラ132は、例えばステンレスによって外径がφ20、内径φ18程度に形成された中空ローラである。このステアリングローラ132は、定着ベルト105を張架して張りを与えるテンションローラとして機能する。それとともに、後述する寄り制御機構により傾きが制御されて定着ベルト105の移動方向に直交する幅方向への蛇行を調整するローラ(ステアリングローラ)として働く。
駆動ローラ131には、ローラ軸131aの左端側に駆動入力ギアG(図4)が同軸に固定して配設されている。このギアGに対して駆動モータ301(図3)から駆動伝達手段(不図示)を介して駆動入力がなされ、駆動ローラ131が図1の矢印の時計方向に所定の速度で回転駆動される。この駆動ローラ131の回転によって、定着ベルト105が矢印の時計方向に駆動ローラ131の速度に対応した速度で循環搬送される。ステアリングローラ132はベルト105の循環搬送に従動して回転する。
定着ベルト105の下行側ベルト部分の内面は定着パッド173aの下向きのパッド受け面(摺動面)に対して摺動シート199を介して摺動して移動する。用紙Sを後述する定着ニップ部Nで安定的に搬送するために、定着ベルト105と駆動ローラ131間では確実に駆動を伝達している。
定着ベルト105を加熱する加熱手段としてのIHヒータ170は、励磁コイルと磁性体コアとそれらを保持するホルダーなどから構成されている誘導加熱コイルユニットである。上側ベルトアセンブリAの上側に配置されており、定着ベルト105の上面部分とステアリングローラ132の部分にかけて定着ベルト105に非接触に所定の間隔を存して対向させて、左右の上側板140間に固定して配設されている。
IHヒータ170の励磁コイルにはCPU10で制御されるヒータコントローラ170C、ヒータドライバ170D(図9A)を介して交流電流が供給される。これにより励磁コイルは交流磁束を発生し、交流磁束は磁性体コアに導かれて誘導発熱体である定着ベルト105の磁性金属層に渦電流を発生させる。その渦電流は誘導発熱体の固有抵抗によってジュール熱を発生させる。
これにより、定着ベルト105が急峻に電磁誘導加熱される。その定着ベルト105表層温度がサーミスタ(温度センサ)220により検知される。そして、サーミスタ220による検知温度情報がCPU10にフィードバックされる。CPU10はサーミスタ220から入力する検知温度が所定の目標温度に維持されるようにIHヒータ170の励磁コイルに対する供給電力を制御(温調制御)している。
2)パッド可変機構(移動機構)180
図7、図7A〜図7Dを参照して、可変パッド173bの位置を切り替える切り替え機構であるパッド可変機構180を説明する。
上側ベルトアセンブリAにおいて、定着パッド173aは定着ベルト105の内面に当接して定着ベルト105およびこれに対向する加圧ベルト120との間で用紙搬送方向Vに関して所定幅の第1のニップ部N1(図5)を形成するためのパッド部材である。可変パッド173bは定着ベルト105の内側において上記の定着パッド173aよりも用紙搬送方向Vの上流側に配置された可動のパッド部材である。
パッド可変機構180は定着パッド173aに対して可変パッド173bの位置を切り替える機構である。具体的にはパッド可変機構180は可変パッド173bを定着パッド173aから所定に離間させた第1ポジション(第2位置)に配置する第1の動作を実行可能である。また、パッド可変機構180は可変パッド173bを定着パッド173aに対して所定に隣接させて定着パッド173aと共に上記の第1の幅よりも幅広の第2の幅のニップ部N2(図1)を形成するための第2ポジション(第1位置)に配置する第2の動作を実行可能である。
即ち、第1の動作は、定着パッツド173a(第1のパッド部材)のみが定着ベルト105に当接する状態を取り得るように可変パッド173b(第2のパッド部材)を移動させるパッド可変機構180の動作である。第2の動作は定着パッド173a及び可変パッド173bが定着ベルト105に当接する状態を取り得るように可変パッド173bを移動させるパッド可変機構180の動作である。
本実施形態においては上記のように可変パッド173bの位置を切り替えるパッド可変機構180は図7の(a)と(b)のように定着装置100の左側と右側とに配設されている。この左側と右側のパッド可変機構180は左右対称の同一機構であり同期して動作する。そこで、以下の説明においては主として左側のパッド可変機構180を代表して説明する。
パッド可変機構180は可変パッド173b、パッド支持部材181、パッド離間カム182、パッド付勢バネ183、駆動列184等により構成される。可変パッド173bはこのパッド可変機構180により定着処理を行う用紙Sの坪量に応じて位置を変更制御される。即ち、CPU10は装置に導入使用される用紙の坪量に応じてパッド可変機構180を制御して上記の第1の動作あるいは第2の動作を実行する。
より具体的には、CPU10は定着処理を行う用紙Sの坪量が所定値以上(第2の坪量)であるときは上記の第2の動作が実行されるようにパッド可変機構180を制御する。また、所定値未満(第1の坪量)であるときは上記の第1の動作が実行されるようにパッド可変機構180を制御する。
本実施形態においては、坪量が151gsm未満の用紙に対して定着処理を行う場合は、可変パッド173bは、図5、図7Bのように、離間位置(第1ポジション)Xに配置されている。151gsm以上の用紙に対して定着処理を行う場合は、可変パッド173bは、図1、図7C、図7Dのように、当接位置(第2ポジション)Yに配置される。
可変パッド173bは初期(常時)は、図7Bのように、離間位置Xをホームポジションとしてこの離間位置Xに移動されて保持されている。従って、151gsm未満の用紙に対して定着処理を行う場合は、可変パッド173bはホームポジションである離間位置Xに保持されたままにおいて定着処理が実行される。
151gsm以上の坪量の用紙Sに対して定着処理を行う際には、可変パッド173bはホームポジションである離間位置Xから図1、図7C、図7Dの当接位置Yに移動されて定着処理が実行される。
具体的には、151gsm以上の坪量の用紙Sに対して定着処理を行う際には、CPU10は駆動モータ401を所定の回転数をもってCW回転させる。これにより、駆動列184を介して可変パッドカム182が回転する。そうすると、可変パッド173bの左右のバネ座面173b−2とパッド支持部材181の左右のバネ座面181cに配置されたパッド付勢バネ183の付勢力で可変パッド173bが定着パッド173aに接近する方向に移動する。即ち、可変パッド173bがパッド支持部材181に設けられたスライド溝181bに沿って定着パッド173aに接近する方向に移動する。
そして、可変パッド173bは定着パッド173aの左右の受け部173a−2に対して左右の当接部173cが当接して受け止められて位置決めされる(図7C、図7D)。この位置決めにより、定着パッド173aの用紙搬送方向Vに対する後ろ側端部と、可変パッド173bの先端部とのギャップWは0.2mm程度で、画像弊害が無いギャップで保持される。即ち、可変パッド173bが離間位置Xから当接位置Yに配置された状態に保持される。
CPU10は151gsm以上の坪量の用紙Sに対して定着処理を行うジョブが終了したら、駆動モータ401を所定の回転数をもってCCW回転する。これにより、駆動列184を介して可変パッドカム182が逆回転する。そうすると、パッド付勢バネ183を圧縮しながら可変パッド173bがパッド支持部材181に設けられたスライド溝181bに沿って定着パッド173aから遠のく方向に移動する。即ち、可変パッド173bが当接位置Yからホームポジションである離間位置Xに戻し移動されて保持される。
3)下側ベルトアセンブリBと加圧−離間機構
図1を参照して、下側ベルトアセンブリBは上側ベルトアセンブリAの下側に配置されている。このアセンブリBは、定着装置100の用紙出口側において左右の下側板303に固定して設けられたヒンジ軸304(図4)を中心に上下方向に回動可能に支持されている下フレーム(加圧フレーム)306に対して組みつけられている。
このアセンブリBは、上側ベルトアセンブリA側の定着ベルト105との間で第1のニップ部N1(図5)あるいは第2のニップ部N2(図1)を形成する定着回転体(加圧部材:第2の回転体)120を有する。本実施形態においてこの定着回転体120は可撓性を有する加圧ベルト(エンドレスベルト:無端状のベルト部材)である。また、この加圧ベルト120を張りを持たせて懸架する複数のベルト懸架部材としての、加圧ローラ(加圧ローラ)121、テンションローラ122、加圧パッド125を有する。
加圧ローラ121は、図4に示すように左右の軸部121aが、夫々下フレーム306の左右の側板間にベアリング159を介して回転可能に支持されている。テンションローラ122は左右の軸部122aが、夫々下フレーム306の左右の側板に軸受158を介して回転可能に支持されている。軸受158は、下フレーム306に対してベルトテンション方向にスライド移動可能に支持されていると共に、テンションバネ127により加圧ローラ121から遠のく方向に移動付勢されている。
なお、定着装置100の右側における上記の軸部121a、ベアリング159、122a、軸受158、テンションバネ127は不図示であるが、定着装置100の左側と左右対称の関係構成である。
図1に戻って、加圧パッド125は例えばシリコンゴムで形成された部材であり、下フレーム306の左右の側板間に左右両端部が固定されて支持されている。加圧パッド125の表面には、摺動する加圧ベルト120の内面および加圧ローラ26との摩擦抵抗を減らすために低摺動性シートとしてのポリイミド製のフィルムをフッ素樹脂でコーティングした摺動シート124が設けられている。この摺動シート124は加圧ベルト120の内面よりも表面の摩擦抵抗が小さいシート部材である。
加圧ローラ121は下フレーム306の左右の側板間において用紙出口側に位置している。一方、テンションローラ122は下フレーム306の左右の側板間において用紙入口側に位置している。加圧パッド125は、加圧ベルト120の内側において加圧ローラ121とテンションローラ122との間の加圧ローラ121寄りにパッド面を上向きにして非回転に支持されて固定配置されている。
加圧ローラ121、テンションローラ122、加圧パッド125に掛け渡されている加圧ベルト120には所定のテンション(張力)が掛けられている。具体的には上記の定着装置左右側のテンションバネ127の付勢力によるテンションローラ122のベルトテンション方向への移動により所定のテンションが掛けられている。本実施形態においては、200Nのテンションを掛けている。ここで、加圧パッド125の上向きのパッド面に対して加圧ベルト120の上行側のベルト部分の内面が接している。
加圧ベルト120としては、耐熱性を具備したものであれば適宜選定して差し支えない。例えば、厚さ50μm、幅380mm、周長200mmのニッケル金属層に例えば厚さ300μmのシリコンゴムをコーティングし、表層(離型層)にPFAチューブを被覆したものが用いられる。加圧ローラ121は例えば中実ステンレスによって外径がφ20に形成されたローラであり、テンションローラ122は例えばステンレスによって外径がφ20、内径φ18程度に形成された中空ローラである。
ここで、下側ベルトアセンブリBは、接離手段としての加圧−離間機構により、ヒンジ軸304(図4)を中心に上下方向に回動制御される。即ち、下側ベルトアセンブリBは加圧−離間機構により持ち上げ回動されることで図1あるいは図5のように加圧位置Uに移動される一方、持ち下げ回動されることで図6のように離間位置(加圧解除位置)Dに移動される。そして、下側ベルトアセンブリBは加圧位置U(図1、図2)に移動されることで上側ベルトアセンブリAとの間で定着ニップ部を形成する。
この場合において、上側ベルトアセンブリAの可変パッド173bが図7Bのように離間位置Xに移動されている場合は次のとおりである。加圧ローラ121と加圧パッド125とがそれぞれ上側ベルトアセンブリAの駆動ローラ131と定着パッド173aとに対して加圧ベルト120および定着ベルト105を挟んで所定の加圧力で圧接する。
これにより、上側ベルトアセンブリAの定着ベルト105と下側ベルトアセンブリBの加圧ベルト120との間に用紙搬送方向Vにおいて所定の第1の幅の定着ニップ部N1が形成される(図5)。ここで、本実施形態における定着ニップ部N1の幅は20mm程度である。
一方、上側ベルトアセンブリAの可変パッド173bが図7C、図7Dのように当接位置Yに移動されている場合は次のとおりである。加圧ローラ121と加圧パッド125とがそれぞれ上側ベルトアセンブリAの駆動ローラ131と定着パッド173aおよび可変パッド173bとに対して加圧ベルト120および定着ベルト105を挟んで所定の加圧力で圧接する。
これにより、上側ベルトアセンブリAの定着ベルト105と下側ベルトアセンブリBの加圧ベルト120との間に用紙搬送方向Vにおいて上記の定着ニップ部N1(図5)の第1の幅よりも所定に幅広である第2の幅の定着ニップ部N2が形成される(図1)。ここで、本実施形態における定着ニップ部N2は45mm程度である。
また、下側ベルトアセンブリBは加圧位置Uから離間位置Dに移動されることで、上側ベルトアセンブリAに対して加圧が解除(ニップ解除)されて非接触に離間する(図6)。
本実施形態においては、上記のように、上側ベルトアセンブリA側に可変パッド173bを設けている。定着ニップ部突入時の用紙Sの搬送を加圧ベルト120に沿わせている。そのため、下側ベルトアセンブリB側に可変パッドを設けた場合、定着ニップ部突入時の用紙Sの姿勢変化への影響が懸念されるためである。用紙Sの搬送姿勢への影響がない場合においては、下側ベルトアセンブリB側に可変パッドを設けても問題ない。
ここで、本実施形態における上記の加圧−離間機構について説明する。図4で、下フレーム306には、ヒンジ軸304側とは反対側に、下側ベルトアセンブリBを上側ベルトアセンブリAに対して弾性的に圧接するための加圧バネ305を有する加圧バネユニットが配設されている。
左右の下側板303間の下部には加圧カム軸307が回転可能に軸受けされて配設されている。この加圧カム軸307の左右側にそれぞれ下フレーム306の下面を支持する同形状・同位相の一対の偏心加圧カム308が固定して配設されている。加圧カム軸307の右端側には加圧ギア309(図3)が同軸に固定して配設されている。このギア309に対して加圧モータ302から駆動伝達手段(不図示)を介して駆動入力がなされ、加圧カム軸307が回転駆動される。
加圧カム軸307は、偏心加圧カム308について図4、図1、図5のように大隆起部を上向きにした第1の回転角位置と、図6のように大隆起部を下向きにした第2の回転角位置を形成する。
加圧カム軸307が第1の回転角位置に回転されて停止されることで、下側ベルトアセンブリBを搭載している下フレーム306が偏心加圧カム308の大隆起部により持ち上げられる。そして、下側ベルトアセンブリBが上側ベルトアセンブリAに対して加圧バネユニットの加圧バネ305を押し縮めながら当接する。これにより、下側ベルトアセンブリBが、上側ベルトアセンブリAに対して加圧バネ305の圧縮反力で弾性的に所定の圧力(例えば400N)で押圧付勢され、図1、図5の加圧位置Uに保持される。
ここで、駆動ローラ131に対する加圧ローラ121の圧接により駆動ローラ131には加圧ローラ121と接する方向と逆側に数百ミクロン程度の反り変形が生じる。この定着ローラ131の反り変形は、定着ニップ部N1(図5)、同N2(図1)の長手方向の中央部での圧抜けの要因となる。この圧抜けをなくすために駆動ローラ131または駆動ローラ131および加圧ローラ121はクラウン形状を取ることで、駆動ローラ131と加圧ローラ121によるニップ形状を略ストレートに形成している。本実施形態では駆動ローラ131に300μmの正クラウン形状を設けている。
また、加圧カム軸307が第2の回転角位置に回転されて停止されることで、偏心加圧カム308の大隆起部が下向きとなり小隆起部が下フレーム306の下面に対応して下側ベルトアセンブリBが持ち下げられる。即ち、下側ベルトアセンブリBは、上側ベルトアセンブリAに対して加圧が解除されて、非接触に所定に離間した図6の離間位置Dに保持される。
ここで、図9の制御フローチャートと、図9Aの制御系統のブロック図により、下側ベルトアセンブリBの上下動制御を説明する。下側ベルトアセンブリBは、常時は図6の離間位置Dに保持されている。CPU10による加圧命令により<S9−001>、モータドライバ302Dを介して加圧モータ302がCW方向に所定の回転数であるN回転し<S9−002>、加圧カム軸307が半回転駆動される。
これにより、偏心加圧カム308が図6の第2の回転角位置から図1、図5の第1の回転角位置に転換されて、下側ベルトアセンブリBが持ち上げ回動され加圧ローラ121と加圧パッド125が加圧位置Uに移動する<S9−003>。
即ち、加圧ローラ121と加圧パッド125が、図1のように、上側ベルトアセンブリAの駆動ローラ131と定着パッド173aおよび可変パッド173bに加圧ベルト120と定着ベルト105を挟んで所定の当接圧で圧接する。或いは、加圧ローラ121と加圧パッド125が、図5のように、上側ベルトアセンブリAの駆動ローラ131と定着パッド173aに加圧ベルト120と定着ベルト105を挟んで所定の当接圧で圧接する。
これにより、定着ベルト105と加圧ベルト120との間に用紙搬送方向Vにおいて所定幅の定着ニップ部N2(図1)あるいは定着ニップ部N1(図5)が形成される<S9−004>。
また、下側ベルトアセンブリBが図1や図5の加圧位置に保持されている状態において、CPU10による離間命令により<S9−005>、モータドライバ302Dを介して加圧モータ302がCCW方向に所定の回転数:N回転される<S9−006>。これにより、加圧カム軸307が半回転駆動され、偏心加圧カム308が図1、図5の第1の回転角位置から図6の第2の回転角位置に転換される。
即ち、下側ベルトアセンブリBが持ち下げ回動されて、加圧ローラ121と加圧パッド125が離間位置Dに移動する<S9−007>。これにより、定着ニップ部N1あるいは同N2の形成が解除される<S9−008>。
4)定着動作と温調制御
次に、図9Aの制御系統のブロック図と図10の制御フローチャートにより、定着装置100の定着動作について説明する。定着装置100の待機状態時において、上側ベルトアセンブリAの可変パッド173bは図6の離間位置Xに保持されている。また、下側ベルトアセンブリBは図6の離間位置Dに保持されている。駆動モータ301は駆動が停止されており、IHヒータ170への給電も停止している。
CPU10は、プリントジョブ開始信号の入力に基づいて所定の作像シーケンス制御を開始する。定着装置100については、プリントジョブで使用される用紙Sの坪量設定に応じて動作の判定を行う<S10−001>。
使用される用紙の坪量(シート坪量)が151gsm以上であれば、CPU10は可変パッド位置検知手段(不図示)からの信号により可変パッド173bが図7の離間位置Xにあるか否かを判断する。離間位置Xにあると判断されたら、モータドライバ410Dを介してパッド駆動モータ410を駆動して可変パッドカム182を半回転駆動させる。即ち、可変パッド173bを図7Bの離間位置Xから図7C、図7Dの当接位置Yに移動させる<S10−002>。離間位置Xにないと判断されたら、パッド駆動モータ410を駆動せず可変パッド173bを当接位置Yのまま待機させる。
また、使用される用紙の坪量が151gsm未満であれば、CPU10は可変パッド位置検知手段からの信号により可変パッド173bが図7Bの離間位置Xにあるか否かを判断する。離間位置Xにあると判断されたら、パッド駆動モータ410を駆動せず可変パッド173bを離間位置Xのまま待機させる。また、離間位置Xにないと判断されたら、モータドライバ410Dを介してパッド駆動モータ410を駆動して可変パッドカム182を半回転駆動させる。即ち、可変パッド173bを図7C、図7Dの当接位置Yから図7Bの離間位置Xに移動させる。
CPU10は、その後、所定の制御タイミングにおいてモータドライバ302Dを介して加圧モータ302を駆動して加圧カム軸307を半回転駆動させることで、下側ベルトアセンブリBを図6の離間位置Dから図1、図5の加圧位置Uに移動させる。
これにより、用紙Sの坪量が151gsm以上の場合、すなわち可変パッド173bが当接位置Yにある場合には、図1に示す定着ベルト105と加圧ベルト120との間に定着ニップ部N2が形成される<S10−003>。
また、用紙Sの坪量が151gsm未満の場合、すなわち可変パッド173bが離間位置Xにある場合には、図5に示す定着ベルト105と加圧ベルト120との間に定着ニップ部N1が形成される<S10−003>。
次に、CPU10は、モータドライバ301Dを介して駆動モータ301を駆動して駆動入力ギアG(図4)に駆動を入力する。これにより、上側ベルトアセンブリAの駆動ローラ131が前記のように駆動されて定着ベルト105の回転が開始される。
また、駆動入力ギアGの回転力が駆動ギア列(不図示)を介して下側ベルトアセンブリBの加圧ローラ121にも伝達されて、加圧ローラ120が図1において矢印の反時計方向に回転駆動される。この加圧ローラ121の回転に伴い、また回転する定着ベルト105との摩擦力で、加圧ベルト120が、図1で矢印の反時計方向に回転を開始する<S10−004>。定着ベルト105と加圧ベルト120の移動方向は定着ニップ部N2(図1)、同N1(図5)において同方向であり移動速度もほぼ同じである。
次に、CPU100はヒータコントローラ170C、ヒータドライバ170Dを介してIHヒータ170に電力を供給する。これにより、回転する定着ベルト105を電磁誘導加熱して所定の目標温度に立ち上げて温調制御する。即ち、通紙される用紙Sの坪量や紙種に応じて定着ベルト105を140度から200度の目標温度に立ち上げて維持する温調制御を開始する<S10−005>。
このようにして、第1の定着ニップ部N1(図5)あるいは第2の定着ニップ部N2(図1)の形成、定着ベルト105及び加圧ベルト120の回転、定着ベルト105の温度立ち上げと温調がなされる。この状態において、画像形成部より、表面に未定着のトナー画像tが形成されている用紙Sが定着装置100に導入される。
用紙Sは定着装置100のシート入口部に配設されている入口ガイド184に案内されて、定着ベルト105と加圧ベルト120との圧接部である第1の定着ニップ部N1あるいは第2の定着ニップ部N2へ進入する。入口ガイド184にはフォトインタラプタを備えたフラグセンサ185が配置されており、用紙Sの通過タイミングの検知を行う。
用紙Sは画像担持面が定着ベルト105に対向し、その反対面が加圧ベルト120に対向して第1の定着ニップ部N1あるいは第2の定着ニップ部N2で挟持搬送されていく。そして、未定着トナー像tが定着ベルト105の熱とニップ圧により用紙面に固着画像として定着される。定着ニップ部N2あるいは同N1を通過した用紙Sは、定着ベルト105に表面から分離して、定着装置100の用紙出口側から出て排出ローラ対20(図2)によって排出トレイ21へと搬送排出される。
そして、所定の1枚または連続複数枚のプリントジョブにおける用紙Sの搬送が終了したら、CPU10は定着ベルト105の加熱、温調制御を終了してIHヒータ170への電力供給をOFFにする<S10−006>。また、駆動モータ301をOFFにして定着ベルト105及び加圧ベルト120の回転を停止させる<S10−007>。
また、モータドライバ302Dを介して加圧モータ302を駆動して加圧カム軸307を半回転駆動させることで下側ベルトアセンブリBを図1あるいは図5の加圧位置Uから図6の離間位置Dに移動させる。これにより、定着ベルト105と加圧ベルト120と定着ニップ部N2あるいは同N1が解除される<S10−008>。また、可変パッド173bが図7C、図7Dに示す当接位置Yにある場合は、モータドライバ410Dを介してパッド駆動モータ410を半回転駆動させることで可変パッド173bを図7Bに示す離間位置Xに移動させる<S10−009>。
この状態において、CPU10は次のプリントジョブ開始信号の入力待ちをする。
ここで、図9Aの制御系統のブロック図と図11の制御フローチャートにより、定着ベルト105の温度制御を説明する。上側ベルトアセンブリAには、定着ベルト105の表面温度を検知する温度検知部材としてのサーミスタ220が配設されている。CPU10は、プリントジョブ開始信号の入力に基づいて所定の制御タイミングでヒータコントローラ170C・ヒータドライバ170Dを介してIHヒータ170に電力を印加する<S11−001>。定着ベルト105は、IHヒータ170による電磁誘導加熱により昇温する。
その定着ベルト105の温度がサーミスタ220により検知されて、検知温度情報(温度に関する電気的情報)がCPU10に入力する。CPU10は、サーミスタ220による検知温度が所定の規定値(目標温度)以上となったら、IHヒータ170に対する電力を停止する。その後、CPU10はサーミスタ220による検知温度が所定の規定値よりも低くなったら<S11−004のNo>、IHヒータ170に対する電力の印加<S11−001>を再開する。
上記のステップS11−001〜S11−004の繰り返しにより、定着ベルト105が所定の目標温度に温調維持される。そして、上記の定着ベルト温調制御が所定の1枚または連続複数枚のプリントジョブの終了<S11−005>まで実行される。
5)ベルト寄り制御機構
定着ベルト105は、その回転過程において用紙搬送方向Vと直交する幅方向の一方側又は他方側へ片寄るように移動する現象(ベルトの寄り移動)が発生する。定着ベルト105に圧接して第1の定着ニップ部N1(図5)あるいは第2の定着ニップ部N2(図1)を形成する加圧ベルト120も、定着ベルト105と一緒に寄り移動する。
本実施形態においては、この定着ベルト105の寄り移動をスイング型寄り制御で所定の寄り範囲内に安定させるようにしている。スイング型寄り制御は、ベルト位置が幅方向中央部から所定量以上移動したことを検知した場合に、ステアリングローラ132を定着ベルト105の寄り移動方向と反対向きに傾けるという方法である。
このスイング型寄り制御を繰り返すことにより、定着ベルト105が周期的に幅方向の片側からもう一方の側まで移動するため、定着ベルト105の寄り移動を安定して制御することができる。即ち、定着ベルト105はシートSの搬送方向Vと直交する方向に往復移動可能に構成されている。
上側ベルトアセンブリAにおいて、定着ベルト105の左側(手前側)でステアリングローラ132寄りの位置に定着ベルト端部位置を検知するためのセンサ部(不図示)が設けられている。CPU10はこのセンサ部によって定着ベルト105の端部位置(ベルト寄り移動位置)を検出し、それに応じて、ステッピングモータ155を正転方向(CW)または逆転方向(CCW)に所定の回転数をもって「回転させる。
これにより、前述した図8の機構157、152、161、151を介して、左側のステアリングローラ支持アーム154が軸131aを中心に上方または下方に所定の制御量だけ回動する。これに連動して、ステアリングローラ132の傾きが変化して定着ベルト105の寄り制御がなされる。
《変形例》
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明の思想の範囲内において、上述の種々の構成を公知の構成に置き換えることは可能である。
(変形例1)
上述した本実施形態では、第2の定着ニップ部N2(図1)を形成する際、可変パッド173bは定着パッド173aの受け部173a−2に対して当接部173c(図7D)で当接する構成にしている。
この構成に限られず、図12の(a)の模式図に示すように、可変パッド173bが定着パッド173aに対して単に面当たりすることでパッド間のギャップWを狭める構成としてもよい。
その際、図12の(c)に示すように、当接部に弾性部材181dを設けることで定着パッド173aと可変パッド173bのギャップWを0.2mm以下に詰める構成であってもよい。
図12の(b)は図12の(a)における可変パッド173bが離間位置Xに移動されており、定着ベルト105と加圧ベルト120との間で第1の定着ニップ部N1が形成されている状態時の模式図である。
また、図12Aの(d)に示すように、可変パッド173bと加圧パッド125との当接部に弾性部材181eを設けることで定着パッド173aと可変パッド173bのギャップWを0.2mm以下に詰める構成であってもよい。
また、同図の(e)に示すように、定着パッド173aと可変パッド173bの当接面に弾性部材181dを設ける。これとともに、可変パッド173bと加圧パッド125との当接部に弾性部材181eを設ける。これにより、定着パッド173aと可変パッド173bのギャップWを0.2mm以下に詰める構成であってもよい。
(変形例2)
実施形態の定着装置100においては、ベルト105の内側において可変パッド173b(第2のパッド部材)を定着パッド173a(第1のパッド部材)よりも用紙搬送方向Vの上流側に配置したが、これに限られない。その逆、即ち、可変パッド173bを定着パッド173aよりも用紙搬送方向Vの下流側に配置する装置構成にすることもできる。
(変形例3)
また、上述した実施形態では、加熱機構として電磁誘導加熱方式について説明したが、これに限らず、ハロゲンヒータなどの他の方式の加熱機構を用いる場合にも同様に適用することができる。具体的には、例えば、駆動ローラ131や加圧ローラ121の内部にハロゲンヒータなどの加熱機構を配設したものである。
(変形例4)
実施形態の定着装置100においては、用紙上のトナー像tを加熱するための第1の定着ニップ部N1あるいは第2の定着ニップ部N2を形成する一対の回転体105、120を何れも無端状のベルト部材としているがこれに限られない。回転体105、120の一方を無端状のベルト部材とし、他方をローラ体にした装置構成にすることもできる。即ち、回転体105、120の少なくとも一方を無端状のベルト部材にした装置構成にすることができる。
(変形例5)
また、上述した実施形態では、未定着トナー像tを用紙Sに定着する定着装置を例に説明したが、これに限らず、画像の光沢を向上させるべく、用紙Sに仮定着されたトナー像を加熱加圧する装置(この場合も定着装置と呼ぶ)にも同様に適用可能である。
100・・画像加熱装置(定着装置)、105・120・・一対の回転体(定着ベルトと加圧ベルト)、N1・・第1のニップ部、N2・・第2のニップ部、S・・シート(用紙)t・・トナー像、V・・シート搬送方向、173a・・第1のパッド部材(定着パッド)、173b・・第2のパッド部材(可変パッド)、180・・切り替え機構(移動機構、パッド可変機構)、199・・摺動性のシート状部材

Claims (5)

  1. 記録材上のトナー像を加熱するためのニップ部を形成する少なくとも一方がエンドレスベルトである一対の回転体と、
    記エンドレスベルトをその内側から他方の回転体に向けて押圧する第1のパッド部材と、
    前記エンドレスベルトを張架する張架ローラと、
    前記エンドレスベルトの回転方向において前記第1のパッド部材よりも上流側であって前記張架ローラよりも下流側に設けられ、前記エンドレスベルトの内側に設けられ、前記エンドレスベルトに対して押圧と離間が可能である第2のパッド部材と、
    前記第1のパッド部材と前記第2のパッド部材が前記ニップ部を形成して記録材を加熱する第1加熱状態と、前記第2のパッド部材が前記エンドレスベルトから離間し、前記第1のパッド部材が前記ニップ部を形成して記録材を加熱する第2加熱状態と、に切り換えるために前記第2のパッド部材を移動させる移動機構と、
    記第1のパッド部材と前記第2のパッド部材と、前記エンドレスベルトとの間に設けられ、前記エンドレスベルトの内面と摺動する単一のシート状部材と、
    前記エンドレスベルトの回転方向において前記第2パッド部材よりも上流側であって前記張架ローラよりも下流側に設けられ、前記シート状部材の一端が固定されたシート固定部材と、を備え、
    前記シート固定部材は、前記シート状部材を介して前記エンドレスベルトを押圧して配置されている、
    ことを特徴とする画像加熱装置。
  2. 前記エンドレスベルトの内側に設けられ、前記記録材の搬送方向において前記第1のパッド部材よりも下流側に設けられ、前記ニップ部を形成する回転体を有する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の画像加熱装置。
  3. 前記第2のパッド部材は、前記第1加熱状態において前記第1のパッド部材に当接して位置決めされる当接部を有する、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像加熱装置。
  4. 前記第2のパッド部材は、前記第1加熱状態において前記第1のパッド部材と当接する面に弾性部材を有する
    ことを特徴とする請求項に記載の画像加熱装置。
  5. 前記シート固定部材は、板状の形状である、
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像加熱装置。
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