<第1実施形態>
[画像形成装置]
本発明の第1実施形態に係る定着装置について、図1乃至図6を用いて説明する。まず、本実施形態に係る定着装置を適用可能な画像形成装置について、図1を用いて説明する。図1に示す画像形成装置100は、中間転写ベルト20に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。
まず、本画像形成装置100の記録材の搬送プロセスについて説明する。記録材Pは、記録材収納庫(給紙カセット)10内に積載される形で収納されており、給紙ローラ13により画像形成タイミングに合わせて給紙される。記録材収納庫10からの給紙は、例えば摩擦分離方式などが用いられる。給紙ローラ13により送り出された記録材Pは、搬送パス114の途中に配置されたレジストローラ12へと搬送される。そして、レジストローラ12において記録材Pの斜行補正やタイミング補正を行った後、記録材Pは二次転写部T2へと送られる。二次転写部T2は、対向する二次転写内ローラ21および二次転写外ローラ11により形成される転写ニップであり、所定の加圧力と静電的負荷バイアスを与えることで記録材上にトナー像を吸着させる。
以上説明した二次転写部T2までの記録材Pの搬送プロセスに対して、同様のタイミングで二次転写部T2まで送られて来る画像の形成プロセスについて説明する。まず、画像形成部について説明するが、各色の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、現像装置1a、1b、1c、1dで使用するトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外はほぼ同様に構成される。そこで、以下では、代表としてブラックの画像形成部Pdについて説明し、その他の画像形成部Pa、Pb、Pcについては、説明中の符号末尾のdを、a、b、cに読み替えて説明されるものとする。
画像形成部Pdは、主に現像装置1d、帯電装置2d、感光ドラム3d、感光ドラムクリーナ4d、及び露光装置5d等から構成される。図中R1方向に回転駆動される感光ドラム3dの表面は、帯電装置2dにより予め表面を一様に帯電され、その後画像情報の信号に基づいて駆動される露光装置5dによって静電潜像が形成される。次に、感光ドラム3d上に形成された静電潜像は、現像装置1dによるトナー現像を経て可視像化される。その後、画像形成部Pdと中間転写ベルト20を挟んで対向配置される一次転写ローラ6dにより所定の加圧力および静電的負荷バイアスが与えられ、感光ドラム3d上に形成されたトナー像が、中間転写ベルト20上に一次転写される。感光ドラム3d上に僅かに残った一次転写残トナーは、感光ドラムクリーナ4dにより回収され、再び次の作像プロセスに備える。以上説明した画像形成部Pdは、図1に示す構造の場合、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4セット存在する。ただし、色数は4色に限定されるものではなく、また色の並び順もこの限りではない。現像装置1dは、例えば現像剤としてトナーと磁性キャリアを混合させた二成分現像剤を使用する。
中間転写ベルト20について説明する。中間転写ベルト20は、二次転写内ローラ21、テンションローラ22、および張架ローラ23によって張架され、図中矢印R2方向へと搬送駆動される無端ベルトである。ここで、二次転写内ローラ21は、中間転写ベルト20を駆動する駆動ローラを兼ねる。画像形成部Pにより並列処理される各色の作像プロセスは、中間転写ベルト20上に一次転写された上流の色のトナー像上に順次重ね合わせるタイミングで行われる。その結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト20上に形成され、二次転写部T2へと搬送される。なお、二次転写部T2を通過した後の二次転写残トナーは、転写クリーナ装置30によって回収される。
以上、それぞれ説明した搬送プロセスおよび作像プロセスをもって、二次転写部T2において記録材Pとフルカラートナー像のタイミングが一致し、二次転写が行われる。その後、記録材Pは定着装置9(像加熱装置)へと搬送され、所定の圧力と熱量が加えられて記録材上にトナー像が溶融固着される。こうして画像定着された記録材Pは、排紙ローラ14により、そのまま排紙トレイ120上に排出されるか、もしくは両面画像形成を行うかの選択が行われる。
両面画像形成を要する場合には、切り替え部材110(フラッパーなどと呼ばれる)によって、搬送経路が排紙トレイ120に続く経路から両面搬送パス111へ切り替えられ、排紙ローラ14により搬送された記録材Pは両面搬送パス111へと搬送される。その後、給紙ローラ13より搬送されてくる後続ジョブの記録材Pとのタイミングを合わせて、反転ローラ112によって先後端が入れ替えられ、両面パス113を介して再び搬送パス114へと送られる。その後の搬送ならびに裏面の作像プロセスに関しては、上述と同様なので説明を省略する。
また、本画像形成装置100は操作部Sと制御部50とを備える。操作部Sは、各種情報を表示する表示部(不図示)、ユーザ入力を受け付ける操作キー(不図示)などを有する。利用者(ユーザ)は、操作部Sの操作キーを用いて画像形成ジョブの開始命令を出したり、表示部に表示された中から画像の画質設定や記録材収納庫10にセットする記録材Pの各種情報(例えば紙種や坪量など)を選択的に入力したりすることができる。制御部50は、入力された情報に従って画像形成条件を決定し、該画像形成条件で画像形成を行うために本画像形成装置100の各部を制御する。制御部50は画像形成ジョブの実行時に、定着装置9の制御を行って所定の温度で記録材Pを加熱しトナー像を加熱定着させる。こうした定着装置9の制御については後述することから、ここでの詳細な説明を省略する。
[定着装置]
次に、定着装置9の構成について図2を用いて説明する。定着装置9は、第一回転体としての定着ローラ40と、第二回転体としての加圧ローラ41とを備える。定着ローラ40と加圧ローラ41は、定着装置9のハウジング(不図示)などにボールベアリング(不図示)等を介して回転自在に軸支されている。定着ローラ40と加圧ローラ41は、図示を省略したが、一方の軸端に固定された歯車が歯車機構によって相互に連結され、モータ等の駆動源(不図示)によって歯車機構を介して一体に回転駆動される。
定着ローラ40は、円筒状に形成された金属製の芯金40bに、耐熱性の弾性層40c、耐熱性の離型層40dを内径側から順に重ねてなる。例えば、定着ローラ40の芯金40bは、外径77mm、厚み6mm、長さ350mmのアルミニウム製である。弾性層40cは、厚さ3mmのHTV(高温加硫型)シリコンゴムからなり、芯金40bの外周面を被覆している。離型層40dは、トナーとの離型性向上のため、厚さ50μmのフッ素樹脂(例えばPFAチューブ)からなり、弾性層40cの表面を被覆している。
定着ローラ40の芯金40bの内部には、通電により出力制御され発熱する例えば定格電力1200Wのハロゲンヒータ40aが、定着ローラ40の幅方向(長手方向、軸線方向)ほぼ全体にわたって非回転に配置されている。ハロゲンヒータ40aは、定着ローラ40の表面温度が所定の目標温度となるように内部から定着ローラ40を加熱する。定着ローラ40の表面温度は、サーミスタ42aによって検出される。そして、この検出温度に基づいて、制御部50(図1参照)によりハロゲンヒータ40aがON(通電)又はOFF(非通電)制御されることで、定着ローラ40の表面温度は所定の目標温度に調整される。
加圧ローラ41は、円筒状に形成された金属製の芯金41bに、耐熱性の弾性層41c、耐熱性の離型層41dを内径側から順に重ねてなる。例えば、加圧ローラ41の芯金41bは、外径59mm、厚み5mm、長さ350mmのアルミニウム製である。弾性層41cは、厚さ1mmのHTVシリコンゴムからなり、芯金41bの外周面を被覆している。離型層41dは、厚さ50μmのフッ素樹脂(例えばPFAチューブ)からなり、弾性層41cの表面を被覆している。
加圧ローラ41の芯金41bの内部には、通電により発熱する例えば定格電力400Wのハロゲンヒータ41aが、加圧ローラ41の幅方向(長手方向、軸線方向)ほぼ全体にわたって非回転に配置されている。ハロゲンヒータ41aは、加圧ローラ41の表面温度が所定温度となるように内部から加圧ローラ41を加熱する。加圧ローラ41の表面温度は、サーミスタ42bによって検出される。そして、この検出温度に基づいて、制御部50(図1参照)によりハロゲンヒータ41aがON‐OFF制御されることで、加圧ローラ41の表面温度は例えば100℃などの一定温度に調整される。
上述の加圧ローラ41は、定着ローラ40に所定圧力、例えば784N(約80kg)の圧力で圧接されることにより、定着ローラ40と定着ニップ部N1を形成する。記録材Pは、定着ニップ部N1で挟持搬送されることで加熱及び加圧される。そのため、定着ローラ40と加圧ローラ41とが定着ニップ部N1で同一方向に回転するように、定着ローラ40は図中矢印R3方向に、加圧ローラ41は図中矢印R4方向に回転される。また、加圧ローラ41は、不図示の加圧着脱機構により、定着ローラ40を圧接した着状態と、定着ローラ40から離した脱状態に移動可能である。加圧ローラ41の着脱状態は、制御部50によって判断される。
[クリーニングユニット]
また、定着装置9は、定着ローラ40の清掃部材としてクリーニングユニット60を備える。クリーニングユニット60は、不織布であるクリーニングウェブ61と、回収ローラ62と、ウェブローラ63とを有する。回収ローラ62は、例えば直径20mmに形成されたステンレス製の円筒部材である。回収ローラ62は、定着ローラ40の幅方向(長手方向、軸線方向)ほぼ全体にわたって定着ローラ40に当接した状態で回転可能に設けられ、記録材Pに定着されずに定着ローラ40上に付着したトナーを回収する。回収ローラ62は、定着ローラ40に常時当接され、定着ローラ40に従動回転する。
ウェブローラ63はクリーニングウェブ61を支持し、該支持したクリーニングウェブ61を例えば約40Nの力で回収ローラ62へ押圧する。クリーニングウェブ61は回収ローラ62へ押圧されることで、回収ローラ62上の定着ローラ40から回収されたトナーを拭い取る。クリーニングウェブ61は一方向(図中矢印X方向)に巻き取られるので、回収ローラ62との当接面にはクリーニングウェブ61のトナーを拭っていない新しい面が常時供給される。ウェブローラ63は、不図示のウェブ着脱機構により、回収ローラ62を圧接した着状態と、回収ローラ62から離した脱状態に移動可能である。なお、回収ローラ62は、ウェブローラ63が脱状態では約10Nの押圧で、ウェブローラ63が着状態ではウェブ着脱機構の押圧力40Nを加えた約50Nの力で定着ローラ40に押圧される。ウェブローラ63の着脱状態は、制御部50によって判断される。
[外部加熱ユニット]
画像形成装置では、厚紙など坪量(単位面積当たり重量)の大きな記録材でも、高い生産性(単位時間当たりのプリント枚数)を求められる。坪量の大きな記録材で生産性を上げるためには、定着装置9における加熱処理のスピードを高速化する必要がある。しかし、坪量の大きな記録材は熱を多く奪うため、定着に要する熱量が坪量の低い記録材に比べて大きくなる。そこで、図2に示すように、定着装置9は外部加熱装置としての外部加熱ユニット80を備え、必要に応じて外部加熱ユニット80により外部から定着ローラ40を加熱する。より具体的には、外部加熱ユニット80は、定着ローラ40から記録材Pにより多くの熱が移った場合に、定着ローラ40内のハロゲンヒータ40aと加圧ローラ41内のハロゲンヒータ41aでは供給が遅れる分の熱量を素早く補うために設けられる。外部加熱ユニット80(詳しくは外部加熱ベルト80e)は、定着ローラ40と接触して定着ローラ40を加熱する。
外部加熱ユニット80は、外部加熱ベルト80eと、外部加熱ベルト80eを張架する第一ローラとしての外部加熱ローラ80a及び第二ローラとしての外部加熱ローラ80bと、外部加熱手段としてのハロゲンヒータ80c、80dとを有する。ベルト部材としての外部加熱ベルト80eは、例えば無端ベルト状に形成されたステンレスなどの金属製の基材の上に、フッ素樹脂(例えばPFAチューブ)等からなる耐熱性の摺動層が被覆されたものである。外部加熱ローラ80a、80bは、定着ローラ40や加圧ローラ41と同様に、例えば円筒状に形成されたアルミニウムなどの金属製の芯金の上に、フッ素樹脂(例えばPFAチューブ)等からなる耐熱性の摺動層が被覆されたものである。
外部加熱ユニット80は、ベルト着脱機構57(後述の図3参照)により定着ローラ40を外部加熱ベルト80eで圧接した着状態と、定着ローラ40から外部加熱ベルト80eを離した脱状態に移動可能である。外部加熱ユニット80の着脱状態は、制御部50によって判断される。
外部加熱ユニット80が着状態である場合、外部加熱ローラ80a、80bは定着ローラ40に外部加熱ベルト80eを介して所定圧力で圧接される。そして、外部加熱ベルト80eは定着ローラ40の表面に接触し、外部加熱接触部N2を形成する。即ち、外部加熱ベルト80eは、定着ローラ40と幅広の外部加熱接触部N2を形成して、定着ローラ40へ供給する熱量を大きくするために設けられている。
外部加熱ベルト80e及び外部加熱ローラ80a、80bは、定着ローラ40に従動回転する(図中矢印R5方向)。これら外部加熱ローラ80a、80bは、外部加熱ベルト80eの回転方向に関して外部加熱接触部N2を挟むように配置される。そして、このうちの外部加熱ローラ80aが外部加熱接触部N2の上流に隣接するように、外部加熱ローラ80bが外部加熱接触部N2の下流に隣接するように、それぞれ配置されている。つまり、外部加熱ローラ80aは、定着ローラ40の回転方向(図中矢印R3方向)に関し、外部加熱ローラ80bよりも上流側であって外部加熱接触部N2より上流に配置されている。
外部加熱ローラ80aの内部には、第一加熱手段として、通電により発熱する例えば定格電力1500Wのハロゲンヒータ80cが、外部加熱ローラ80aの幅方向ほぼ全体にわたって固定配置されている。外部加熱ローラ80bの内部には、第二加熱手段として、通電により発熱する例えば定格電力1500Wのハロゲンヒータ80dが、外部加熱ローラ80bの幅方向ほぼ全体にわたって固定配置されている。本実施形態では、各ハロゲンヒータ80c、80dへは各々の定格電力と同じ電力が供給される。なお、上述の幅方向は、外部加熱ローラ80a、80bの長手方向、回転軸線方向でもある。
また、外部加熱ユニット80は、第一温度検知手段としてのサーミスタ81a及び第二温度検知手段としてのサーミスタ81bを有する。サーミスタ81aは、外部加熱ベルト80eの外周面のうち定着ローラ40の回転方向上流側で外部加熱ローラ80aと接触する位置に設けられ、外部加熱ローラ80aが外部加熱ベルト80eに接触する領域の外部加熱ベルト80eの温度を検知する。サーミスタ81bは、外部加熱ベルト80eの外周面のうち定着ローラ40の回転方向下流側で外部加熱ローラ80bと接触する位置に設けられ、外部加熱ローラ80bが外部加熱ベルト80eに接触する領域の外部加熱ベルト80eの温度を検知する。
[制御部]
制御手段としての制御部50(図1参照)は、外部加熱ベルト80eひいては定着ローラ40の表面温度を所定の目標温度に調整するために、サーミスタ81a、81bにより検知した温度に基づいてハロゲンヒータ80c、80dをON‐OFF制御する。ただし、制御部50は画像形成準備時に、サーミスタ81aにより検知した温度に基づいてハロゲンヒータ80cを、サーミスタ81bにより検知した温度に基づいてハロゲンヒータ80dを、それぞれON‐OFF制御する。また、制御部50は画像形成時に、サーミスタ81aにより検知した温度に基づいてハロゲンヒータ80c及びハロゲンヒータ80dの両方を同時にON‐OFF制御する。
ここで、画像形成時とは、記録材Pに画像形成するプリント信号に基づいて、画像形成開始してから画像形成動作が完了するまでの期間である。具体的には、プリント信号を受けた(画像形成ジョブの入力)後の前回転時(画像形成前の準備動作)から、後回転(画像形成後の動作)までのことを指し、画像形成期間、紙間(非画像形成時)を含む期間である。画像形成準備時とは、画像形成装置100の電源がオンされているが、画像形成ジョブが実行されていない状態である。上述したように、画像形成時とは、前回転動作から、画像形成期間、紙間、後回転を含む一連の動作であるため、画像形成準備時とは、画像形成装置100の電源がオンされている状態でこの一連の動作を実行していない期間のことを言う。また、画像形成準備時はスタンバイ時(スタンバイ状態)を含み、スタンバイ時(スタンバイ状態)とは、画像形成装置100の電源オン後又は画像形成後に、上記画像形成時の一連の動作が可能な状態でプリント信号の受信を待機している状態である。
制御部50は、ハロゲンヒータ80c及びハロゲンヒータ80dをON‐OFF制御することで、外部加熱ベルト80eひいては定着ローラ40の表面温度を所定の目標温度に調整する。表1に、スタンバイ時と画像形成時に用いる定着ローラ40及び外部加熱ベルト80eの目標温度(表中では設定温度と記す)をそれぞれ示す。制御部50は、上述したようにハロゲンヒータ40a、41aと、ハロゲンヒータ80c、80dそれぞれのON‐OFFを制御して、外部加熱ベルト80eひいては定着ローラ40の表面温度を表1に示した目標温度に調整する。表1に示すように、定着ローラ40及び外部加熱ベルト80eの目標温度は記録材Pの坪量に応じて決まる。
次に、定着装置9の制御について図3乃至図6を用いて説明する。まず、図3に定着装置9の制御系のブロック図を示す。制御部50は定着装置9の各部を制御する例えばCPU等を含むコンピュータであり、図3に示すようにメモリ51を有する。メモリ51はROMやRAM等であり、本画像形成装置100を制御するための各種プログラムやデータ等を格納する。また、メモリ51は、プログラムの実行に伴う演算処理結果などを一時的に記憶することもできる。制御部50は不図示のインタフェースを介して操作部S(図1参照)に接続され、ユーザによる画像形成ジョブなどの各種プログラムの実行開始操作や各種データ入力などを受け付ける。制御部50は、画像形成ジョブの実行に応じて、不図示のインタフェースを介して接続された後述する各部を制御して定着装置9を動作させる。
制御部50には、ベルト着脱機構57が接続されている。ベルト着脱機構57は、外部加熱ユニット80を定着ローラ40に対し接離可能に移動する。これにより、定着装置9は、定着ローラ40と外部加熱ベルト80eとが圧接した着状態、又は定着ローラ40と外部加熱ベルト80eとが離れた脱状態のいずれかの状態になる。
制御部50は、モータコントローラ52及びモータドライバ53を介して複数の駆動モータ54をそれぞれ個別に制御する。各駆動モータ54は、制御部50による制御に応じて定着ローラ40、加圧ローラ41をそれぞれ所定方向に且つ所定速度で回転駆動する。また、制御部50は、ヒータコントローラ55及びヒータドライバ56を介してハロゲンヒータ40a、41a、80c、80dをそれぞれ個別にON‐OFF制御する。既に述べたように、ハロゲンヒータ40aの制御に応じて定着ローラ40の表面温度が調整され、ハロゲンヒータ41aの制御に応じて加圧ローラ41の表面温度が調整される。また、ハロゲンヒータ80c、80dの制御に応じて、外部加熱ベルト80eの表面温度が調整される。
制御部50には、不図示のインタフェースを介してサーミスタ42a、42b、81a、81bが接続されている。制御部50は、サーミスタ42aから定着ローラ40の表面温度(以下、便宜的に定着ローラ温度と記す)を、サーミスタ42bから加圧ローラ41の表面温度を取得する。また、制御部50は、サーミスタ81aから外部加熱ベルト80eの定着ローラ回転方向上流側の表面温度(以下、便宜的に外部加熱上流温度と記す)を取得する。さらに、制御部50は、サーミスタ81bから外部加熱ベルト80eの定着ローラ回転方向下流側の表面温度(以下、便宜的に外部加熱下流温度と記す)を取得する。制御部50は、サーミスタ42a、42b、81a、81bにより検知された温度に基づいてハロゲンヒータ40a、41a、80c、80dをON‐OFF制御して、定着ローラ40の表面温度を所定の目標温度に調整する制御を行う。
ここで、図4に、比較例の定着装置を用いて多数枚の厚紙(一例として坪量250g/m2)に画像形成が行われた場合の、サーミスタ42a、81a、81bにより検知された定着ローラ温度、外部加熱上流温度、外部加熱下流温度の時間推移を示す。比較例の定着装置では、外部加熱ユニット80に関し、サーミスタ81aにより検知された温度に基づいてハロゲンヒータ80cの制御を行い、サーミスタ81bにより検知された温度に基づいてハロゲンヒータ80dの制御を行う。図4において、縦軸は表面温度を表し、横軸は時間を表す。この場合の画像形成時に用いる、定着ローラ温度の目標温度Trpは170℃、外部加熱上流温度の目標温度Tex1p(第一目標温度)及び外部加熱下流温度の目標温度Tex2p(第二目標温度)は215℃である(表1参照)。なお、加圧ローラ41の表面温度の目標温度は常時100℃である。
図4に示すように、画像形成時に、定着ローラ温度、外部加熱上流温度は、それぞれ目標温度である170℃、215℃に達している。画像形成時の定着ローラ温度、外部加熱上流温度は多少変動しながら推移しているが、これはハロゲンヒータ40a、80cのON‐OFF制御に応じて所定の温度リップルをもって各表面温度が変動し得ることを示している。
他方、画像形成時に、外部加熱下流温度は目標温度である215℃に達することなく、目標温度以下で推移している。これは、外部加熱接触部N2で熱の供給が行われ、外部加熱接触部N2を通過した直後である定着ローラ回転方向下流側の表面温度は、外部加熱接触部N2よりも前の定着ローラ回転方向上流側の表面温度よりも低くなるからである。即ち、外部加熱上流温度が目標温度215℃に達すれば、ハロゲンヒータ80cはOFFされるので、外部加熱ベルト80eに与えられる熱量が減る。その結果、外部加熱ベルト80eから定着ローラ40に与える熱量は、外部加熱ベルト80eが外部加熱ローラ80a、80bから受ける熱の総量よりも大きくなるので、外部加熱下流温度は目標温度215℃に達することがない。外部加熱下流温度が目標温度215℃に達しないことから、ハロゲンヒータ80dはOFFされることなくONされた状態が続く。なお、外部加熱下流温度についても多少変動しながら推移しているが、これは定着ローラ40から記録材Pへと熱が移ることに応じた熱変動を示す。
ハロゲンヒータ80dがOFFされることなくONされた状態が続くと、画像形成後に、特に外部加熱ローラ80bの温度が急激に上がり、外部加熱下流温度が高温側に大きくオーバーシュートし得る。画像形成ジョブの実行の都度、外部加熱下流温度がオーバーシュートして高温になる状態が繰り返されると、熱劣化により定着ローラ40や外部加熱ローラ80bさらには外部加熱ベルト80eが破損する恐れが大きい。
この問題を解決するための1つの方法として、画像形成時には外部加熱上流温度と外部加熱下流温度とを異なる温度、具体的には外部加熱上流温度よりも外部加熱下流温度を低い温度に設定することが考えられる。しかしながら、外部加熱上流温度と外部加熱下流温度の温度差は紙種や紙間によって異なり、上記の方法は多種多様な紙種や紙間に対応できないことから採用し難い。
そこで、本画像形成装置100では、画像形成時にはサーミスタ81aにより検知された温度のみに基づきハロゲンヒータ80c、80dの両方を同時にON‐OFF制御するようにした。以下、図2や図3を適宜参照しながら、図5及び図6を用いて説明する。図5は、定着装置の制御(モード)を示すフローチャートである。この定着装置の制御は、制御部50により装置本体の電源オンにあわせて開始され、画像形成ジョブの終了にあわせて終了される。なお、ここでは、ユーザが坪量250g/m2の厚紙を紙種に設定したうえで、多数枚の厚紙に連続して画像形成を行う画像形成ジョブを実行する場合を例に説明する。
図5に示すように、制御部50は、スタンバイ時に用いる、定着ローラ温度の目標温度Trs、外部加熱上流温度の目標温度Tex1s及び外部加熱下流温度の目標温度Tex2s、加圧ローラ41の表面温度の目標温度Tbsを設定する(S1)。上述の表1からすると、スタンバイ時に用いる、定着ローラ温度の目標温度Trsは165℃に、外部加熱上流温度の目標温度Tex1s及び外部加熱下流温度の目標温度Tex2sは190℃に設定される。また、加圧ローラ41の表面温度の目標温度Tbsは100℃に設定される。
制御部50は、定着装置9の各ハロゲンヒータ40a、41a、80c、80dへの通電を開始する(S2)。即ち、制御部50は、ヒータコントローラ55及びヒータドライバ56を介してハロゲンヒータ40a、41a、80c、80dを通電(ON)する制御を行う。制御部50は上記通電後、定着ローラ40の表面温度、外部加熱ベルト80eの上流側表面温度及び下流側表面温度、加圧ローラ41の表面温度がそれぞれ目標温度Trs、Tex1s、Tex2s、Tbsに到達したか否かを判定する(S3)。この判定は、各サーミスタ42a、81a、81b、42により検知された温度との比較に基づいて行われる。制御部50は、上記各表面温度が目標温度Trs、Tex1s、Tex2s、Tbsに到達するまで、当該S3の処理を繰り返して待機する(S3のNO)。即ち、制御部50は、サーミスタ81aによる検知温度が目標温度Tex1s(第一目標温度)になるようにハロゲンヒータ80cへの通電を制御する。また、制御部50は、サーミスタ81bによる検知温度が目標温度Tex1s(第二目標温度)になるようにハロゲンヒータ80dへの通電を制御する。このようにして、画像形成準備時には定着ローラ40の予備加熱が行われる。
上記各表面温度がそれぞれ目標温度Trs、Tex1s、Tex2s、Tbsに到達した場合(S3のYES)、制御部50は、定着装置9をスタンバイ状態に移行し(S4)、定着ローラ40を画像形成時よりも遅い速度で回転開始する(S5)。制御部50は、モータコントローラ52及びモータドライバ53を介して駆動モータ54を制御し、例えば定着ローラ40を画像形成時の所定速度(例えば500mm/sec)の半分の速度で回転させる。また、制御部50は、定着装置9がスタンバイ時(スタンバイ状態)である場合、目標温度Trs、Tex1s、Tex2s、Tbsを維持するように各ハロゲンヒータをON‐OFF制御して温度調整する。
制御部50は、プリント信号を受信したか否かを判定する(S6)。制御部50は、プリント信号を受信するまで、当該S6の処理を繰り返して待機する(S6のNO)。プリント信号を受信した場合(S6のYES)、制御部50は画像形成を開始する(S7)。そして、制御部50は、画像形成時に用いる、定着ローラ温度の目標温度Trp、外部加熱上流温度の目標温度Tex1p及び外部加熱下流温度の目標温度Tex2p、加圧ローラ41の表面温度の目標温度Tbpに、各目標温度を変更する(S8)。上述の表1からすると、画像形成時に用いる、定着ローラ温度の目標温度Trpは170℃に、外部加熱上流温度の目標温度Tex1p及び外部加熱下流温度の目標温度Tex2pは215℃に変更される。なお、加圧ローラ41の表面温度の目標温度Tbpは100℃のままである。
制御部50は、画像形成時の所定速度(例えば500mm/sec)まで増速するように定着ローラ40を回転駆動する(S9)。また、制御部50は、画像書き出し信号(以下、I−Top信号と記す)の受信(S10)に応じて、I−Top信号の受信時間を基準時間として記録材Pの給紙を開始する(S11)。この際には、上記のS8で変更した目標温度に、定着ローラ温度、外部加熱上流温度、外部加熱下流温度、加圧ローラ41の表面温度が到達したか否かに関わらず記録材Pの給紙を開始してよい。これは以下の理由による。即ち、目標温度に到達するとハロゲンヒータがOFFされて、その後に記録材Pが定着ニップ部N1に到達することがある。その場合は各ローラの芯金温度が低下しているため、特に記録材Pが連続して搬送されると、定着ローラ温度は記録材Pにトナーを定着するのに必要な所定温度つまりは目標温度を下回り得る。こうした定着ローラ温度の温度低下による記録材Pに対するトナー定着不良を避けるためである。
制御部50は給紙を開始すると、I−Top信号の受信時間を基準として記録材Pが定着ニップ部N1に到達するまえに、外部加熱ベルト80eと加圧ローラ41とウェブローラ63とを定着ローラ40に押圧して接触させる(S12)。即ち、外部加熱ベルト80eと加圧ローラ41とウェブローラ63は、ベルト着脱機構、加圧着脱機構、ウェブ着脱機構により、それぞれが定着ローラ40に接した状態つまりは着状態に移動される。
そして、制御部50は、外部加熱ベルト80eの温度制御を、外部加熱上流温度を検知するサーミスタ81aにより検知された温度のみに基づいて行うように変更する(S13)。即ち、制御部50は、外部加熱ベルト80eが着状態であることを検知すると、サーミスタ81aにより検知した温度に基づいて、ハロゲンヒータ80c、80dの両方を同時にON‐OFF制御するように切り替える。より詳しくは、定着ローラ40の回転方向下流側のハロゲンヒータ80dが、定着ローラ40の回転方向上流側のサーミスタ81aの検知温度に基づいて、ハロゲンヒータ80cと同時にON‐OFF制御されるように切り替えられる。この場合、制御部50は、サーミスタ81aによる検知温度が目標温度Tex1sになるようにハロゲンヒータ80cへの通電を制御すると同時にハロゲンヒータ80dへの通電を制御する。なお、外部加熱ベルト80eの温度制御を上記のようにサーミスタ81aのみに切り替えた場合でも、制御部50は外部加熱下流温度に異常がないかをサーミスタ81bにより検知される温度に基づいて監視する。制御部50は外部加熱下流温度に異常があった場合、例えば操作部Sの表示部にエラーを表示してユーザに通知する。
制御部50は、画像形成終了信号を受信したか否かを判定する(S14)。画像形成終了信号を受信した場合(S14のYES)、制御部50は、各目標温度をスタンバイ時の目標温度Trs、Tex1s、Tex2s、Tbsへ変更する(S15)。そして、制御部50は、ベルト着脱機構、加圧着脱機構、ウェブ着脱機構により、外部加熱ユニット80、加圧ローラ41、ウェブローラ63を定着ローラ40から離間させて脱状態にする(S16)。即ち、定着装置9をスタンバイ状態に移行する。スタンバイ状態の場合にこれらが着状態のままであると、定着ニップ部N1や外部加熱接触部N2での弾性層の変形又は歪みが残存し、画像形成時に横スジや光沢スジ(光沢ムラ)等が発生して画像品質が低下し得る。これを避けるため、スタンバイ状態では、外部加熱ユニット80、加圧ローラ41、ウェブローラ63を定着ローラ40から離間させている。
制御部50は定着装置9をスタンバイ状態に移行させると、上記のS13で変更したサーミスタ81aのみによる外部加熱ベルト80eの温度制御を変更前に戻す(S17)。即ち、制御部50は、外部加熱ベルト80eが脱状態であると検知すると、外部加熱ベルト80eの温度制御を元に戻す。つまり、外部加熱ベルト80eの温度制御を、外部加熱上流温度を検知するサーミスタ81aにより検知された温度のみに基づいて行うのではなく、サーミスタ81a及びサーミスタ81bにより検知された温度に基づいて行うように戻す。こうして、外部加熱ベルト80eが脱状態である場合、サーミスタ81aにより検知された温度に基づいてハロゲンヒータ80cの制御が行われ、サーミスタ81bにより検知された温度に基づいてハロゲンヒータ80dの制御が行われる。
図6に、本実施形態の定着装置9を用いて多数枚の厚紙(一例として坪量250g/m2)に画像形成が行われた場合の、サーミスタ42a、81a、81bにより検知された定着ローラ温度、外部加熱上流温度、外部加熱下流温度の時間推移を示す。図6において、縦軸は表面温度を表し、横軸は時間を表す。
図6を上述した図4と比較して理解できるように、本実施形態の定着装置9においても、画像形成時には、定着ローラ温度、外部加熱上流温度は、それぞれ目標温度である170℃、215℃に達している。また、画像形成時、定着ローラ温度、外部加熱上流温度はそれぞれハロゲンヒータ40a、80cのON‐OFF制御に応じて、所定の温度リップルをもって多少変動しながら推移している。他方、外部加熱下流温度はハロゲンヒータ80dのON‐OFF制御に応じて、目標温度である215℃に達することなく目標温度以下で推移している。そして、後回転動作時には、外部加熱ローラ80bの表面温度がオーバーシュートして上昇することを抑制できていることが分かる。
以上のように、画像形成時には、定着ローラ40の回転方向下流側のハロゲンヒータ80dが、定着ローラ40の回転方向上流側のサーミスタ81aの検知温度に基づいて、ハロゲンヒータ80cと同時にON‐OFF制御される。即ち、画像形成時には、定着ローラ40の回転方向上流側のベルト表面温度に比べて温度が低くなる、外部加熱接触部N2を通過した後の外部加熱ベルト80eの表面温度に基づいて、ハロゲンヒータ80dのON‐OFF制御を行わないようにした。こうすると、二個の外部加熱ローラ80a、80b各々への供給電力に偏りが生じず、これらは同じように加熱される。そのため、画像形成後に外部加熱ベルト80eが停止した際に、外部加熱ローラ80bの表面温度が急激に上がることがない。つまり、特に外部加熱ローラ80bの表面温度がオーバーシュートして上昇することを抑制できる。これにより、熱劣化による定着ローラ40や外部加熱ローラ80bさらには外部加熱ベルト80eが破損する恐れを減らせる。また、定着ムラ、光沢ムラ、色ムラなどの画像不良が生じる可能性を低くすることができる。
<第2実施形態>
ところで、ユーザは設定した坪量よりも坪量の大きな記録材Pを記録材収納庫10に誤ってセットして、画像形成ジョブを実行することがある。例えば、記録材Pとして坪量81g/m2の普通紙を設定したにも関わらず、坪量81g/m2の普通紙と坪量240g/m2の厚紙とを混在させたような場合である。この場合、坪量81g/m2の普通紙に引き続き坪量240g/m2の厚紙が搬送されるので、普通紙の後に厚紙への画像形成が連続して行われる。画像形成時に記録材Pが普通紙から厚紙に変わると、定着ローラ40から記録材Pに移る熱量が増す。そのため、外部加熱ユニット80から定着ローラ40への熱供給が追い付かなくなり、結果として、定着ローラ40の表面温度が定着に必要な目標温度よりも低いまま厚紙への画像形成が行われる。以下、この点について説明する。
まず、表2に、記録材Pとして坪量81g/m2の普通紙が設定されたにも関わらず、画像形成時に坪量81g/m2以上の記録材Pが搬送されて、定着ローラ40の表面温度が最も低くなった場合の最下点温度を、記録材Pの坪量毎に示す。
ユーザ設定と同じ坪量81g/m2の普通紙が搬送されている場合、サーミスタ81a、81bに検知される外部加熱上流温度及び外部加熱下流温度が210℃(表1参照)になるように、各ハロゲンヒータ80c、80dは個別に制御される。ただし、多数枚の記録材Pへの画像形成に伴い、サーミスタ81bにより検知される外部加熱下流温度は徐々に低下し、例えば208℃に維持される。これは、外部加熱接触部(ニップ)で外部加熱ベルト80eから定着ローラ40に熱が供給されることによる。そして、坪量が大きくなるにつれて定着ローラ40から記録材Pへ移る熱が多くなるため、表2に示すように、ユーザ設定された坪量よりも搬送された記録材Pの坪量が大きければ大きいほど、サーミスタ81bにより検知される外部加熱下流温度は低くなる。
図7は、坪量81g/m2の普通紙に引き続き坪量240g/m2の厚紙が搬送されて画像形成が行われた場合の、サーミスタ81aの検知温度Tex1とサーミスタ81bの検知温度Tex2の温度差(Tex1−Tex2)を示した図である。
図7に示すように、坪量81g/m2の記録材Pが搬送され画像形成が開始されると、温度差(Tex1−Tex2)は0℃の状態から徐々に広がって温度差2℃に維持される。この温度差は、記録材Pへの熱移動により温度の低下する定着ローラ40へ外部加熱ベルト80eから熱が供給されることに伴い生じるため、坪量が同じ記録材Pが連続して搬送されている場合には変化せずに安定する。しかし、坪量240g/m2の記録材Pが搬送されると、定着ローラ温度がより低くなり、外部加熱ベルト80eから定着ローラ40へ供給する熱が増える。そうすると、サーミスタ81bの検知温度Tex2の温度が坪量81g/m2の記録材Pの場合に比べて低下することから、サーミスタ81aの検知温度Tex1との温度差が10℃に広がる。
表3に、記録材Pへのトナー定着に適正な定着ローラ40の表面温度の上限温度(許容上限温度)と下限温度(定着可能温度)とを、記録材Pの坪量毎に示す。
上述のように、例えばユーザ設定が坪量81g/m2である場合に坪量の大きい記録材Pが搬送されると、定着ローラ40の表面温度はトナー定着に必要な定着可能温度を下回ってしまう。即ち、ユーザ設定が坪量81g/m2の場合に坪量240g/m2の記録材Pが搬送されてしまうと、定着ローラ40の最下点温度が150℃となり(表2参照)、坪量240g/m2の記録材Pのときの定着可能温度157℃(表3参照)を下回る。
ところが、定着ローラ40の表面温度が定着可能温度を下回る低い温度のままでは、トナー像が記録材Pに定着されずに、そのトナーが定着ローラ40に付着するコールドオフセットと呼ばれる現象が発生し、これが画像不良を生じさせる原因となり得る。また、定着ローラ40に付着したトナーが後続の記録材Pに付着すると、画像汚れとなる。さらに、ユーザがコールドオフセットの発生に気付かずに画像形成を継続した場合には、定着ローラ40の他にクリーニングユニット60や外部加熱ベルト80eなどにもトナーは付着し得る。そうした状態で、定着装置9の動作が停止され定着装置9、より具体的には定着ローラ40、クリーニングユニット60、外部加熱ベルト80eなどが冷えると、それらに付着したトナーが固着する。それらにトナーが固着すると、定着装置9が再動作された際に、定着ローラ40、クリーニングユニット60、外部加熱ベルト80eなどを傷つける恐れが大きい。それ故に、ユーザ設定された記録材Pの各種情報(例えば坪量)と異なる記録材Pが画像形成時に搬送されたような場合には、定着ローラ40の表面温度を少なくとも定着可能温度を上回る温度まで上げる必要がある。しかし、上述した第1実施形態のように、画像形成時に外部加熱ベルト80eの表面温度をサーミスタ81aのみで制御するようにした場合、定着ローラ40の表面温度を定着可能温度を上回る温度まで上げるのが難しくなる。
そこで、以下では、上記問題を解決する第2実施形態に係る定着装置について説明する。ただし、第2実施形態に係る定着装置9の構成及び制御系については上述した第1実施形態と同様であることから(図2、図3参照)、説明を省略する。
ここで、表4に、スタンバイ時と画像形成時に用いる定着ローラ40及び外部加熱ベルト80eの各目標温度(表中では設定温度と記す)を示す。制御部50は、上述したようにハロゲンヒータ40a、41aと、ハロゲンヒータ80c、80dそれぞれのON‐OFFを制御して、外部加熱ベルト80eひいては定着ローラ40の表面温度を表4に示した目標温度に調整する。表4から理解できるように、定着ローラ40及び外部加熱ベルト80eの各目標温度は記録材Pの坪量に応じて決まる。また、外部加熱ヒータつまりはハロゲンヒータ80c、80dの点灯Duty(点灯比率)は記録材Pの坪量ごとに異なる。なお、第2実施形態に係る定着装置では、制御部50はハロゲンヒータ80c、80dを点灯Dutyに従って通電する制御を行う。
上記の「点灯Duty」とは、予め決められた所定時間(例えば5秒間)にわたるハロゲンヒータ80c、80dへの通電を100%とした場合の、所定時間のうちハロゲンヒータ80c、80dに実際に通電する時間の割合を表す。図8に、点灯Dutyとハロゲンヒータ80c、80dの通電時間と非通電時間との関係を示した。図8の縦軸は点灯Duty(%)を表し、横軸は時間(秒)を表す。図8に示すように、例えば点灯Dutyが60%である場合、5秒間の内の最初の3秒間は通電され(ON)、残りの2秒間は通電されない(OFF、非通電)ことを表す。
図9は、第2実施形態の定着装置の制御を示すフローチャートである。ただし、上述の図5に示した制御と説明の重複する部分については説明を省略する。また、記録材Pとして坪量81g/m2の普通紙が設定されているにも関わらず、画像形成時に坪量240g/m2の厚紙が搬送された場合を例に説明する。
図9に示すように、制御部50はS1の処理の実行後、定着装置9の各ハロゲンヒータ40a、41a、80c、80dへの通電を開始する(S2)。ただし、ここでのハロゲンヒータ80c、80dの点灯Dutyは、ユーザが設定した坪量に関わらず100%とする。つまり、ハロゲンヒータ80c、80dは常時通電される。その後、制御部50は、S3〜S7の各処理を実行する。
制御部50は、画像形成時に用いる、定着ローラ温度の目標温度Trp、外部加熱上流温度の目標温度Tex1p及び外部加熱下流温度の目標温度Tex2p、加圧ローラ41の表面温度の目標温度Tbpに、各目標温度を変更する(S8)。上述の表4からすると、画像形成時に用いる、定着ローラ温度の目標温度Trpは170℃に、外部加熱上流温度の目標温度Tex1p及び外部加熱下流温度の目標温度Tex2pは210℃に変更される。加圧ローラ41の表面温度の目標温度Tbpは、100℃である。この際に、坪量81g/m2の設定に従って点灯Dutyを40%にして、ハロゲンヒータ80c、80dを通電する。つまり、ハロゲンヒータ80c、80dは3秒間隔で2秒間ずつ繰り返し通電される。
制御部50は、S9〜S12の各処理の実行後に、外部加熱ベルト80eの温度制御を、外部加熱上流温度を検知するサーミスタ81aにより検知された温度のみに基づいて行うように変更する(S13)。即ち、制御部50は、外部加熱ベルト80eの着状態を検知すると、サーミスタ81aにより検知した温度に基づいて、ハロゲンヒータ80c及びハロゲンヒータ80dの両方を同時にON‐OFF制御可能にする。ただし、この第2実施形態では、ハロゲンヒータ80c及びハロゲンヒータ80dは同時にON制御されても、これらヒータ80c、80dはそれぞれ点灯Dutyに従って通電(ON)と非通電(OFF)が所定時間間隔で繰り返される。このようにして、画像形成後に外部加熱ベルト80eの表面温度がオーバーシュートするのを抑制する。
制御部50は、サーミスタ81aの検知温度Tex1とサーミスタ81bの検知温度Tex2の温度差(Tex1−Tex2)が第一所定値としての温度差Tup(例えば4℃)より大きいか否かを判定する(S21)。温度差(Tex1−Tex2)が第一所定値以下つまり所定の温度差Tup以下である場合(S21のNO)、制御部50は、ハロゲンヒータ80c、80dの点灯Dutyを40%から変更することなく画像形成を継続する(S22)。即ち、この場合には、サーミスタ81bの検知温度Tex2の温度が大きく低下しておらず、サーミスタ81aの検知温度Tex1との温度差が小さい。そのため、定着ローラ40の表面温度が定着可能温度を下回る低い温度になる恐れが小さく、定着ローラ40の表面温度を高くするために外部加熱下流温度を上げる制御つまりハロゲンヒータ80dの点灯Dutyをアップする制御を行う必要がない。
制御部50はプリント終了信号を受信したか否かを判定し(S23)、プリント終了信号を受信していない場合には(S23のNO)、上記S21の処理に戻る。プリント終了信号を受信した場合には(S23のYES)、後回転動作を行って(S24)、当該処理を終了する。ここでの後回転動作では、制御部50は、上述した図5のS15〜S17の処理を実行する。即ち、制御部50は、各目標温度をスタンバイ時の目標温度Trs、Tex1s、Tex2s、Tbsへ変更する(S15)。制御部50は、外部加熱ユニット80、加圧ローラ41、ウェブローラ63を定着ローラ40から離間させて脱状態にする(S16)。制御部50は、サーミスタ81aのみによる外部加熱ベルト80eの温度制御を変更前に戻す(S17)。
他方、温度差(Tex1−Tex2)が所定の温度差Tupより大きい場合(S21のYES)、制御部50はハロゲンヒータ80c、80dのうち、ハロゲンヒータ80dの点灯Dutyをアップする(S25)。例えば、40%であった点灯Dutyを100%にアップする。即ち、この場合には、サーミスタ81bの検知温度Tex2の温度が大きく低下しており、サーミスタ81aの検知温度Tex1との温度差が大きくなっている。そのため、定着ローラ40の表面温度が定着可能温度を下回る低い温度になる恐れがある。そこで、定着ローラ40の表面温度を高くするために、外部加熱下流温度を上げる制御つまりハロゲンヒータ80dの点灯Dutyをアップする制御を行っている。
制御部50は、S25の処理後、温度差(Tex1−Tex2)が所定の温度差Tup以下か否かを判定する(S26)。温度差(Tex1−Tex2)が所定の温度差Tupより大きい場合(S26のNO)、制御部50は、ハロゲンヒータ80dの点灯Dutyを変更後の100%から元に戻すことなく画像形成を継続する(S27)。つまり、温度差(Tex1−Tex2)が所定の温度差Tupより大きい間は、定着ローラ40の表面温度が定着可能温度を下回る低い温度になる恐れがあるので、引き続き外部加熱下流温度を上げる必要がある。そのために、ハロゲンヒータ80dを変更後のアップした点灯Dutyに従って通電する。
制御部50はプリント終了信号を受信したか否かを判定し(S28)、プリント終了信号を受信していない場合には(S28のNO)、上記S26の処理に戻る。プリント終了信号を受信した場合には(S28のYES)、後回転動作行って(S24)、当該処理を終了する。ここでの後回転動作では、既に述べたように図5のS15〜S17の処理を実行する。
上記S26の処理において、温度差(Tex1−Tex2)が所定の温度差Tup以下である場合(S26のYES)、制御部50は、ハロゲンヒータ80dの点灯Dutyを変更前の点灯Dutyに戻す(S29)。例えば、100%であった点灯Dutyを40%にダウンする。即ち、ハロゲンヒータ80dの点灯Dutyをアップする制御を行うが故に(S25参照)、外部加熱下流温度が上がり、定着ローラ40の表面温度は定着可能温度を上回る温度になる。しかし、定着ローラ40の表面温度をさらに高くしてしまうと、定着ローラ40等は破損し得る。そこで、ハロゲンヒータ80dの点灯Dutyをダウンして元に戻すことによって、定着ローラ40の表面温度のさらなる上昇を抑制している。制御部50は、S29の処理後、上記S21の処理に戻ってS21〜S29の処理を繰り返す。
以上のように、第2実施形態でも、画像形成時に、定着ローラ40の回転方向下流側のハロゲンヒータ80dは、定着ローラ40の回転方向上流側のサーミスタ81aの検知温度に基づいて、ハロゲンヒータ80cと同時にON‐OFF制御される。そして、二つのサーミスタ81aと81bの検知温度の差に基づいて、外部加熱ベルト80eから定着ローラ40へ供給される熱量が不足している場合、ハロゲンヒータ80dの点灯Dutyをアップする制御を行う。これにより、画像形成時に記録材Pが例えば普通紙から厚紙に変わり、定着ローラ40から記録材Pに移る熱量が増したとしても、外部加熱ユニット80から定着ローラ40に対して十分な熱供給を行うことができる。そのため、定着ローラ40の表面温度が定着に必要な目標温度よりも低いまま厚紙への画像形成が行われることがない。したがって、コールドオフセットが発生して画像不良が生じ難い。
なお、第2実施形態では、温度差(Tex1−Tex2)が所定の温度差Tupより大きい場合にハロゲンヒータ80dのみ点灯Dutyを変更したが(S25参照)、これに限らず、ハロゲンヒータ80c、80d両方の点灯Dutyを変更してよい。その場合、上記S26の処理において、温度差(Tex1−Tex2)が所定の温度差Tup以下となれば、ハロゲンヒータ80c、80d両方の点灯Dutyを変更前の点灯Dutyに戻す(S29)。
<第3実施形態>
ところで、画像形成時に記録材Pの搬送間隔が所定時間よりも開くと、単位時間当たりに定着ニップ部N1に搬送される記録材Pの枚数が減少することから、定着ローラ40の表面温度の低下が想定よりも小さくなる。そうなると、外部加熱ユニット80から定着ローラ40への熱供給が過多になってしまい、定着ローラ40の表面温度が目標温度よりも高くなり得る。目標温度よりも高い温度で記録材Pに定着されたトナー像は、光沢や濃度が不均一となりやすい。また、定着ローラ40の表面温度が高いと、トナーの粘度が記録材Pへ定着する適正粘度よりも小さくなる。その場合、トナー像が記録材Pに定着されずに定着ローラ40にトナーが付着するホットオフセットと呼ばれる現象が発生し、上述したようなコールドオフセットが発生した場合と同様の問題が生じ得る。以下、この点について図10及び図11を用いて説明する。
図10に、画像形成時に記録材P(一例として坪量81g/m2)の搬送間隔が所定時間よりも開いた場合の、定着ローラ40の表面温度の時間推移を示す。この場合、画像形成時には、定着ローラ40の表面温度(定着ローラ温度)が目標温度170℃になるように(表4参照)、各ハロゲンヒータ40a、41a、80c、80dは制御される。しかしながら、記録材Pの搬送間隔が所定時間よりも開いてしまうと、定着ローラ40から記録材Pへと移る単位時間当たりの熱量は減少する。これに伴い、定着ローラ40に供給される熱量が相対的に多くなるので、図10に示すように、定着ローラ40の表面温度が徐々に上昇しトナー定着に適正な許容上限温度である180℃(表3参照)を超えてしまう。そうなると、ホットオフセットと呼ばれる現象が発生し画像不良が生じる原因となる。
図11は、画像形成時に記録材P(一例として坪量81g/m2)の搬送間隔が所定時間よりも開いた場合の、サーミスタ81aの検知温度Tex1とサーミスタ81bの検知温度Tex2の温度差(Tex1−Tex2)を示した図である。
図11に示すように、所定の時間間隔で記録材Pが搬送された場合には、単位時間当たりに定着ニップ部N1に搬送される記録材Pの枚数に変わりなく、定着ローラ40の表面温度は想定通りに低下する。そのため、温度差(Tex1−Tex2)は2℃で維持される。既に述べたように、この温度差は、記録材Pへの熱移動により温度の低下する定着ローラ40に対して外部加熱ベルト80eから熱が供給されることに伴い生じる。そのため、所定の搬送間隔で記録材Pが搬送されていれば、記録材Pへの熱移動と外部加熱ベルト80eからの熱供給が定着ローラ40において均衡して、温度差(Tex1−Tex2)は変化することなく安定する。
ところが、記録材Pの搬送間隔が所定時間よりも開き、単位時間当たりに定着ニップ部N1に搬送される記録材Pの枚数が減ると、図11に示すように温度差(Tex1−Tex2)は徐々に小さくなる。これは、記録材Pの搬送間隔が開くことによって、定着ローラ40の表面温度が上昇するからである。即ち、記録材Pへ移動する熱量が減ることで定着ローラ40の表面温度が高くなり、これに伴い外部加熱ベルト80eから定着ローラ40へ供給する熱量が減る。そうすると、外部加熱ベルト80eの表面温度が下がることなく高いまま、サーミスタ81bによって温度検知される。この場合、サーミスタ81aの検知温度Tex1は変わらずともサーミスタ81bの検知温度Tex2が相対的に上がることから、温度差(Tex1−Tex2)は小さくなる。
画像形成時に温度差(Tex1−Tex2)が小さくなる、つまり定着ローラ40の表面温度が上昇すると、ホットオフセットが発生して画像不良が生じ得る。それ故に、記録材Pの搬送間隔が所定時間よりも開いたような場合には、定着ローラ40の表面温度を少なくとも許容上限温度を下回る温度まで下げる必要がある。しかし、上述した第1実施形態のように、画像形成時に外部加熱ベルト80eの表面温度をサーミスタ81aのみで制御するようにした場合、定着ローラ40の表面温度を許容上限温度を下回る温度まで下げるのが難しくなる。
そこで、以下では、上記問題を解決する第3実施形態に係る定着装置について説明する。ただし、第3実施形態に係る定着装置9の構成及び制御系については上述した第1実施形態と同様であることから(図2、図3参照)、説明を省略する。
図12は、第3実施形態の定着装置の制御を示すフローチャートである。ただし、上述の図5に示した制御と説明の重複する部分については説明を省略する。また、記録材Pとして坪量81g/m2の普通紙が画像形成時に用いられた場合を例に説明する。
図12に示すように、制御部50はS1の処理の実行後、定着装置9の各ハロゲンヒータ40a、41a、80c、80dへの通電を開始する(S2)。ただし、ここでのハロゲンヒータ80c、80dの点灯Dutyは、100%とする。その後、制御部50は、S3〜S7の各処理を実行する。
制御部50は、画像形成時に用いる、定着ローラ温度の目標温度Trp、外部加熱上流温度の目標温度Tex1p及び外部加熱下流温度の目標温度Tex2p、加圧ローラ41の表面温度の目標温度Tbpに、各目標温度を変更する(S8)。上述の表4からすると、画像形成時に用いる、定着ローラ温度の目標温度Trpは170℃に、外部加熱上流温度の目標温度Tex1p及び外部加熱下流温度の目標温度Tex2pは210℃に変更される。加圧ローラ41の表面温度の目標温度Tbpは、100℃である。この際に、坪量81g/m2の設定に従って点灯Dutyを40%にして、ハロゲンヒータ80c、80dを通電する。つまり、ハロゲンヒータ80c、80dは3秒間隔で2秒間ずつ繰り返し通電される。
制御部50は、S9〜S12の各処理の実行後に、外部加熱ベルト80eの温度制御を、外部加熱上流温度を検知するサーミスタ81aにより検知された温度のみに基づいて行うように変更する(S13)。即ち、制御部50は、外部加熱ベルト80eの着状態を検知すると、サーミスタ81aにより検知した温度に基づいて、ハロゲンヒータ80c及びハロゲンヒータ80dの両方を同時にON‐OFF制御可能にする。ただし、この第3実施形態では、ハロゲンヒータ80c及びハロゲンヒータ80dが同時にON制御されても、これらヒータ80c、80dはそれぞれ点灯Dutyに従って通電(ON)と非通電(OFF)が所定時間間隔で繰り返される。このようにして、画像形成後に外部加熱ベルト80eの表面温度がオーバーシュートするのを抑制する。
制御部50は、サーミスタ81aの検知温度Tex1とサーミスタ81bの検知温度Tex2の温度差(Tex1−Tex2)が第二所定値としての温度差Tdown(例えば0.3℃)以下であるか否かを判定する(S31)。温度差(Tex1−Tex2)が所定の温度差Tdownよりも大きい場合(S31のNO)、制御部50は、ハロゲンヒータ80c、80dの点灯Dutyを40%から変更することなく画像形成を継続する(S32)。即ち、この場合には、サーミスタ81bの検知温度Tex2の温度が大きく上昇しておらず、サーミスタ81aの検知温度Tex1との温度差が小さくない。そのため、定着ローラ40の表面温度が許容上限温度を上回る高い温度になる恐れが小さく、定着ローラ40の表面温度を低くするために外部加熱下流温度を下げる制御つまりハロゲンヒータ80dの点灯Dutyをダウンする制御を行う必要がない。
制御部50はプリント終了信号を受信したか否かを判定し(S33)、プリント終了信号を受信していない場合には(S33のNO)、上記S31の処理に戻る。プリント終了信号を受信した場合には(S33のYES)、後回転動作を行って(S34)、当該処理を終了する。ここでの後回転動作では、既に述べたように図5のS15〜S17の処理を実行する。
他方、温度差(Tex1−Tex2)が第二所定値以下つまり所定の温度差Tdown以下である場合(S31のYES)、制御部50はハロゲンヒータ80c、80dのうち、ハロゲンヒータ80dの点灯Dutyをダウンする(S35)。例えば、40%であった点灯Dutyを0%にダウンする。点灯Dutyが0%である場合、ハロゲンヒータ80dはONされない。即ち、この場合には、サーミスタ81bの検知温度Tex2の温度が大きく上昇し、サーミスタ81aの検知温度Tex1との温度差が小さくなっている。そのため、定着ローラ40の表面温度が許容上限温度を上回る高い温度になる恐れがある。そこで、定着ローラ40の表面温度を低くするために、外部加熱下流温度を下げる制御つまりハロゲンヒータ80dの点灯Dutyをダウンする制御を行っている。
制御部50は、S35の処理後、温度差(Tex1−Tex2)が所定の温度差Tdownより大きいか否かを判定する(S36)。温度差(Tex1−Tex2)が所定の温度差Tdown以下である場合(S36のNO)、制御部50は、ハロゲンヒータ80dの点灯Dutyを変更後の0%から元に戻すことなく画像形成を継続する(S37)。つまり、温度差(Tex1−Tex2)が所定の温度差Tdown以下である間は、定着ローラ40の表面温度が許容上限温度を上回る高い温度になる恐れがあるので、引き続き外部加熱下流温度を下げる必要がある。そのために、ハロゲンヒータ80dを変更後のダウンした点灯Dutyに従って通電する。
制御部50はプリント終了信号を受信したか否かを判定し(S38)、プリント終了信号を受信していない場合には(S38のNO)、上記S36の処理に戻る。プリント終了信号を受信した場合には(S38のYES)、後回転動作を行って(S34)、当該処理を終了する。ここでの後回転動作では、既に述べたように図5のS15〜S17の処理を実行する。
上記S36の処理において、温度差(Tex1−Tex2)が所定の温度差Tdownよりも大きい場合(S36のYES)、制御部50は、ハロゲンヒータ80dの点灯Dutyを変更前の点灯Dutyを元に戻す(S39)。例えば、0%であった点灯Dutyを40%にアップする。即ち、ハロゲンヒータ80dの点灯Dutyをダウンする制御を行うが故に(S35参照)、外部加熱下流温度が下がり、定着ローラ40の表面温度は許容上限温度よりも低い温度になる。しかし、定着ローラ40の表面温度をさらに低くしてしまうと、定着可能温度を下回る低い温度になる恐れがある。そこで、ハロゲンヒータ80dの点灯Dutyをアップして元に戻すことによって、定着ローラ40の表面温度のさらなる下落を抑制している。制御部50は、S39の処理後、上記S31の処理に戻ってS31〜S39の処理を繰り返す。
以上のように、第3施形態でも、画像形成時に、定着ローラ40の回転方向下流側のハロゲンヒータ80dは、定着ローラ40の回転方向上流側のサーミスタ81aの検知温度に基づいて、ハロゲンヒータ80cと同時にON‐OFF制御される。そして、二つのサーミスタ81a、81bの検知温度の差に基づいて、外部加熱ベルト80eから定着ローラ40へ供給される熱量が過多である場合、ハロゲンヒータ80dの点灯Dutyをダウンする制御を行う。これにより、記録材Pの搬送間隔が所定時間よりも開き、単位時間当たりに定着ニップ部N1に搬送される記録材Pの枚数が減ったとしても、外部加熱ユニット80から定着ローラ40に対して最適な熱供給を行うことができる。そのため、定着ローラ40の表面温度が定着に必要な目標温度よりも高いまま画像形成が行われることがない。したがって、ホットオフセットの発生に伴う画像不良は生じ難い。
なお、第3実施形態では、温度差(Tex1−Tex2)が所定の温度差Tdown以下である場合にハロゲンヒータ80dのみ点灯Dutyを変更したが(S35参照)、これに限らず、ハロゲンヒータ80c、80d両方の点灯Dutyを変更してよい。その場合、上記S36の処理において、温度差(Tex1−Tex2)が所定の温度差Tdownよりも大きくなれば、ハロゲンヒータ80c、80d両方の点灯Dutyを変更前の点灯Dutyに戻す(S39)。
<他の実施形態>
なお、上述の実施形態では、ハロゲンヒータ80c、80dについて同じ定格電力のものを使用したが、これに限らず、定格電力が異なるヒータを用いてもよい。その場合、ハロゲンヒータ80dはハロゲンヒータ80cよりも低い定格電力のヒータを用いる。これは、ハロゲンヒータ80dの定格電力がハロゲンヒータ80cよりも大きいと、画像形成後に外部加熱ベルト80eの表面温度がオーバーシュートするのを抑制することが難しくなるからである。即ち、ハロゲンヒータ80dの定格電力が大きいと、サーミスタ81aにより検知した温度に基づいてハロゲンヒータ80dもON‐OFF制御するようにしたにも関わらず、ハロゲンヒータ80dの出力は大きくなる。そうなると、画像形成後に外部加熱ベルト80eの表面温度はオーバーシュートし得る。これを避けるため、定格電力がハロゲンヒータ80cの定格電力以下であるハロゲンヒータ80dを用いている。また、各ハロゲンヒータ40a、41a、80c、80dは特定の配光分布を持つ1つのヒータであってよいが、これに限らず、異なる配光分布を持つヒータを複数有するものであってもよい。
なお、上述の実施形態では、内部にハロゲンヒータ40aを具備した定着ローラ40を採用したが、定着ローラ40にヒータを具備せず、外部加熱ユニット80のみで定着ローラ40を加熱する構成であってもよい。また、上述の実施形態では、内部にハロゲンヒータ41aを具備した加圧ローラ41を採用したが、加圧ローラ41にヒータを具備しない構成であってもよい。さらに、芯金上に弾性層を具備した加圧ローラ41を採用したが、これに限らず、加圧ベルトや、又は弾性層の無い加圧ローラ及び加圧ベルト等の他の形態であってもよい。
なお、上述の実施形態では、加熱手段としてハロゲンヒータを採用した。しかし、加熱手段としては、ハロゲンヒータ以外の電磁誘導加熱方式や面状発熱体等の他の加熱手段であってもよい。また、上述の実施形態では、各ハロゲンヒータへは各々の定格電力と同じ電力が供給される。但し、定格電力未満の電力を供給する場合であっても、ハロゲンヒータ80c、80dに供給する最大電力を同じにし、必要に応じて点灯Dutyを変更することで本発明の効果を得ることができる。