JP5898072B2 - 樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents
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Description
特に、本発明は、耐候性、耐摩耗性及び漆黒性の全てにおいて優れた成形品を与える樹脂組成物を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、例えば自動車部材として有用な、優れた黒色外観及びスモーク性を有する成形体を得るための樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明の樹脂組成物は、アクリル系樹脂(A)、及び、数平均粒子径が10〜40nmのカーボンブラック(B)を含有する。
本願発明では、熱可塑性樹脂であるアクリル系樹脂(A)を使用する。アクリル系樹脂は、特に優れた透明性を有し、かつ、耐衝撃性に優れており、また、樹脂成形体を特に優れた黒色外観を有する成形体とすることができる。アクリル系樹脂には、一部変性したものが含まれていてもよく、例えば、マレイミド変性アクリル樹脂のように、イミドにより変性した樹脂等が含まれる。
アクリル系樹脂は、優れた衝撃強度を得る観点から、その全体量を100重量%として、ゴム含有アクリル系グラフト共重合体(A1)5〜100重量%、及び、アクリル樹脂(A2)95〜0重量%を含有することが好ましい。ゴム含有アクリル系グラフト共重合体(A1)、及び、アクリル樹脂(A2)の含有量は、それぞれ、10〜50重量%、及び、90〜50重量%であることがより好ましい。
また、後述する特定の吸光係数を有する成形体とする場合は、ゴム変性アクリル系樹脂の組成を、ゴム含有アクリル系グラフト共重合体(A1)10〜40重量%、アクリル樹脂(A2)60〜90重量%、及び、その他の材料0〜5重量%とすることが好ましい。その他の材料としては、後述の紫外線吸収剤や光安定剤、各種の酸化防止剤、カーボンブラック以外の着色剤等を使用することができる。
ゴム含有アクリル系グラフト共重合体(A1)は、優れた衝撃強度及び透明性を得る観点から、ゴム共重合体(A1c)の内層、及び、該内層を覆うグラフト成分(A1s)の外層を、A1c:A1sの重量比が5:95〜85:15となるように含む多層構造グラフト共重合体とすることが好ましい。上記A1c:A1sの重量比は、衝撃強度をより高める観点から、25:75〜80:20であることがより好ましい。
また、特に優れた衝撃強度及び透明性を得る観点から、さらに、最内層重合体(A1a)を、A1a:(A1c及びA1sの合計量)の重量比が10:90〜40:60となるように含み、かつ、この最内層重合体(A1a)の存在下に、上記ゴム共重合体(A1c)の単量体が重合されてなるようにした、少なくとも3層構造を有する多層構造グラフト共重合体とすることがより好ましい。
上記ゴム共重合体(A1c)は、優れた衝撃強度及び透明性を得る観点から、アクリル酸アルキルエステル50〜99.9重量%、アクリル酸アルキルエステル以外の共重合可能なビニル単量体0〜49.9重量%、及び、多官能性単量体0.1〜10重量%からなるゴム共重合体用単量体の重合体であることが好ましく、アクリル酸アルキルエステル70〜99重量%、アクリル酸アルキルエステル以外の共重合可能なビニル単量体0〜29重量%、及び、多官能性単量体0.1〜5重量%からなるゴム共重合体用単量体の重合体であることがより好ましい。
上記アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記ビニル基含有多官能性単量体類としては、ジビニルベンゼン、ジビニルアジペート等が挙げられる。上記アリル基含有多官能性単量体類としては、(メタ)アクリル酸アリル、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
上記グラフト成分(A1s)は、優れた衝撃強度、透明性、及び、成形加工性を得る観点から、メタクリル酸アルキルエステル50〜100重量%、及び、メタクリル酸アルキルエステル以外の共重合可能なビニル単量体0〜50重量%からなるグラフト成分用単量体の重合体であることが好ましく、メタクリル酸アルキルエステル80〜100重量%、及び、メタクリル酸アルキルエステル以外の共重合可能なビニル単量体20〜0重量%からなるグラフト成分用単量体の重合体であることがより好ましい。本発明の樹脂組成物の流動性を向上させ、成形加工性をより向上させる観点から、グラフト成分用単量体100重量部に対し、さらに、ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のメルカプタン化合物を0.01〜5重量部加えることが好ましい。
上記最内層重合体(A1a)は、メタクリル酸アルキルエステル及び芳香族ビニル化合物からなる群から選ばれる1種以上の単量体40〜99.9重量%、共重合可能な他のビニル単量体59.9〜0重量%、並びに、多官能性単量体0.1〜5重量%とからなる最内層重合体用単量体の重合体であることが好ましく、メタクリル酸アルキルエステル及び芳香族ビニルからなる群から選ばれる1種以上55〜90重量%、共重合可能な他のビニル単量体45〜10重量%、並びに、多官能性単量体0.1〜5重量%とからなる最内層重合体用単量体の重合体であることがより好ましい。
メタクリル酸アルキルエステル、共重合可能な他のビニル単量体、及び、多官能性単量体としては、それぞれ上述のものを使用することができる。
アクリル樹脂(A2)は、本発明の樹脂組成物の基材樹脂として、前記ゴム含有アクリル系グラフト共重合体(A1)及び本発明に係るカーボンブラック(B)を包む連続層樹脂、即ち、マトリクス樹脂として機能する。優れた透明性を得る観点から、アクリル酸アルキルエステル0〜50重量%、及び、メタクリル酸アルキルエステル100〜50重量%からなるアクリル樹脂用単量体の重合体であることが好ましい。
本発明に係る樹脂組成物は、数平均粒子径が10〜40nmのカーボンブラック(B)を含有する。
特定の吸光係数を有する樹脂成形体を得る場合は、黒色性を付与する観点から、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.001〜0.1重量部であることが好ましく、更に、スモーク性を付与する観点から、0.001〜0.05重量部、即ち、10〜500重量ppmであることがより好ましく、20〜300重量ppmがさらに好ましく、40〜250重量ppmがさらにより好ましく、40〜100重量ppmが特に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物が、さらに、融点(mp)が120〜250℃の有機リン系安定剤を含有することが好ましい。これは、樹脂組成物から本発明の樹脂成形体を得る際に、加工性を向上させるために高温で成形することや、大型の成形機を用いるために樹脂組成物の滞留時間が長くなってしまうことから、特に加工時の熱安定性をさらに向上せしめて、漆黒性の優れた外観の成形体を得ることができるためである。また、加工時に上述の効果を発揮させる観点、及びブリードアウトを防止する観点から、有機リン系安定剤の融点が140℃〜200℃であることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、成形体の漆黒性を維持しつつ耐摩耗性を優れたものとする観点から、また、アクリル系樹脂(A)とのほどよい相溶性と、なおかつある程度の外部滑性のバランスを示すとの観点から、さらに、C10〜C30の脂肪酸のエステル、及び、C10〜C30の脂肪酸のアミドからなる群から選ばれる1種以上の滑剤を含有することが好ましい。
脂肪族炭化水素としては、流動パラフィン、天然パラフィン、合成パラフィン、マイクロワックス(マイクロクリスタリンワックス)、ポリエチレンワックス、並びに、これらの部分酸化物、フッ化物、塩化物等が挙げられる。脂肪族系アルコールとしては、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、混合脂肪族アルコール等が挙げられる。脂肪酸としては、ラウリン酸、ステアリン酸、混合脂肪酸(牛脂、魚油、ヤシ油、大豆油、ナタネ油、米ヌカ油などからの脂肪酸)等が挙げられる。金属石けんとしては、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。シリコーンオイルとしては、ポリジメチルシロキサンを主成分とするシリコーンオイルがあげられ、さらにそのシリコーンのオイルのうち、カルボン酸基を含有するシリコーンオイル、水酸基を含有するシリコーンオイル等の変性シリコーンオイルが挙げられる。
本発明の樹脂組成物には、さらに必要に応じて、各種の紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、カーボンブラック以外の着色剤、有機リン系以外の安定剤等を添加することができる。
紫外線吸収剤は、その紫外線吸収能の観点から、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系及びベンゾフェノン系の紫外線吸収剤からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤の例としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−sec−ブチル−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕、2−(2−ヒドロキシ−5−メチル−3−ドデシルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。トリアジン系の紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等が挙げられる。ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤の例としては、2−ヒドロキシ−4−フェニルメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドレイトベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−フェニルプロポキシベンゾフェノン等が挙げられる。
光安定剤としては特に限定されず、公知の光安定剤を使用することができるが、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ドデシルコハク酸イミド、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルベンゾエート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリル酸エステル、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルメチル)マロネート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1−[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジメチル縮合物、2−tert−オクチルアミノ−4,6−ジクロロ−s−トリアジン/N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン縮合物、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン/ジブロモエタン縮合物、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−N−オキシル、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−tert−オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物などを挙げることができる。
本発明の樹脂成形体は、本発明の樹脂組成物を成形して得られ、優れた黒色性、即ち、優れた黒色外観を有する。
本発明の樹脂形成体を本発明の自動車部材として用いることができ、外装部材、内装部材のいずれにも使用することができる。例えば、漆黒性の成形体であれば、ピラーカバー等のカバー類、ピラーガーニッシュ、リアガーニッシュ、リアスポイラー、スイッチカバー、コンソール近辺に用いられるインテリアガーニッシュ等のガーニッシュ類、フードアッパー等のフード周辺部品、ラジエーターグリル等として好適に使用することができる。また、上述の特定の吸光係数を有する光半透過性の樹脂成形体であれば、サイドバイザーやルーフバイザー、サンルーフ等として好適に使用することができる。
(ゴム含有アクリル系グラフト共重合体(A1)):株式会社カネカ製アクリル系モディファイヤー カネエースM210(多層構造のゴム粒子、コア:多層構造のアクリルゴム、シェル:メタアクリル酸メチルを主成分とするアクリル系ポリマー、おおよその粒子径:220nm)
(アクリル樹脂(A2))
アクリル樹脂1:三菱レイヨン株式会社製アクリペットVH001(カタログ値:荷重たわみ温度(JIS K7191、1.80MPa)100℃、メルトフローレート(JIS K7210、230℃、37.3N)2.0g/10min)(3mm厚の成形体の全光線透過率:92.5%)
アクリル樹脂2:株式会社クラレ製パラペットF1000(3mm厚の成形体の全光線透過率:92.5%)
アクリル樹脂3:旭化成ケミカルズ株式会社製デルペット80NE(カタログ値:荷重たわみ温度(ISO75−1、75−2)97℃、メルトフローレート(ISO1133 cond13)2.3g/10min)(3mm厚の成形体の全光線透過率:92%)
アクリル樹脂4:旭化成ケミカルズ株式会社製デルペット720V(カタログ値:荷重たわみ温度(ISO75−1、75−2)93℃、メルトフローレート(ISO1133 cond13)21g/10min)(3mm厚の成形体の全光線透過率:92%)
カーボンブラック(三菱化学株式会社製#2600、TEMによる実測粒子径10nm)
カーボンブラック40重量部、アクリル樹脂2:59重量部、酸化防止剤(BASF社製イルガノックス1010)0.5重量部、及び、分散剤0.5重量部を、44mmの2軸押出機を用いて、260℃で2回ペレット化(カーボンブラックとアクリル樹脂の混合物をペレット化し、このペレットにその他の成分を混合して2回目のペレット化を行う)した後粉砕することで、カーボンブラックのマスターバッチ(CB−1)を製造し、カーボンブラックそのものを使用するのではなく、マスターバッチを使用して樹脂組成物を製造した。
株式会社アデカ製PEP−36(ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト)
株式会社アデカ製HP−10(2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト)
各表に記載した配合成分以外に、BASF社製チヌビン234(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)、株式会社アデカ製アデカスタブLA−63(ヒンダードアミン系光安定剤)、及び、BASF社製イルガノックス1010(ヒンダードフェノール系酸化防止剤)を、それぞれ0.5重量部ずつ使用した。
(単軸押出)
40mmの単軸押出機(株式会社石中鉄工所製)を用いて、ダイヘッド温度を260℃に設定し、上記原料をドライブレンドした配合物を押し出してストランドとして、ペレタイザーでペレット化した。
(二軸押出)
44mmの2軸押出機JSW−TEX44(株式会社日本製鋼所製)を用いて、ダイヘッド温度を260℃に設定し、同様にペレット化した。
(射出成形)
実施例1〜3、比較例1で使用するサンプルの作製は、以下のように行った。すなわち、FANUCオートショットFAS−150B(型締力150トン)射出成形機を用いて、ノズル先端温度を所定の各温度に設定し、150×150×3mmの大型平板サンプル(鏡面仕上げ)を成形した。
実施例4〜6、比較例2、3で使用するボス強度測定用サンプルの作製には、FANUCオートショットFAS−150B(型締力150トン)射出成形機を用い、ノズル先端温度を250℃に設定した。直径160mm、厚さ2.5mmの円形状であって、円周沿いに複数のボス部を有するM5ボス強度評価用成形体を成形した。
表1に示す組成に従い、配合、押出機による押出、成形、評価を行った。
(滞留熱安定性)
射出成形時の滞留熱安定性を評価した。滞留時間なしの場合は、冷却時間を標準冷却時間である18秒に設定し、タイムサイクルは標準タイムサイクルである37秒となった。評価の際の滞留時間は、設定の分だけ冷却時間を延長する形式とした。例えば、滞留時間60秒の場合は、冷却時間を標準冷却時間+滞留時間である78秒に設定し、タイムサイクルは標準タイムサイクル+滞留時間である97秒となった。加えて、2ショットごとに滞留時間を延長する成形方式とした。つまり、各温度で、滞留時間なしで2ショット成形した後、滞留時間60秒で2ショット成形し、滞留時間120秒で2ショット成形し、滞留時間180秒で2ショット成形した。成形温度を変更する場合には、完全にパージを行った。
成形体を目視して、フラッシュ(複数の線が流れたように見える模様、シルバーストリーク)の状態により、以下のように判断した。
○:フラッシュが見られず、きれいな鏡面となっていた。
△:微小なフラッシュが見られた。
×:明らかにフラッシュが認められた。
××:シリンダーのパージにおいてすでに樹脂が発泡しており、正常に成形できなかった。
−:成形を実施しなかった。
表3に示す組成に従い、配合、押出機による押出、成形、評価を行った。比較例2、3では、原料であるアクリル樹脂をそのまま成形した。
(ボス強度)
ボス強度(M5)の評価:外径8.0mm、内径4.5mm、深さ10mmのボス1、および、外径10.0mm、内径4.3mm、深さ10mmのボス2のそれぞれに、M5.0×6mmのナベ頭タッピングビスを2回繰り返してねじ込み、ボスに発生するクラックの有無を目視により確認した。ねじ込み条件及び評価結果は以下の通りである。
トルク:3N・m
回転数:1000rpm
試料数:3
○:クラックなく、空回りなどの異常もなし
×:割れや著しいクラックが発生
実施例4の樹脂組成物を用いて、自動車のB−ピラーを想定して、断面略コの字形で600×100×10mm(厚み3mm)の平板を、360トンの射出成形機(日精樹脂工業株式会社)を用いて、280℃で成形したところ、漆黒性の良品成形体が得られた。
実施例4の成形体の一部をミクロトームで切り出した超薄切片につき、ルテニウム染色を施した上で、TEM(透過型電子顕微鏡)観察を行った。図1に示すように、微細なカーボンブラックが樹脂中に良好に分散していることが認められる。なお、カーボンブラックの粒子が連なっているように見えるのは、前方の粒子と後方の粒子が重なって見えるためである。微細なカーボンブラックを用いること、及び、カーボンブラックが凝集せずに良好に分散することが、漆黒性を発現させる上で必要であることが分かる。そのような樹脂組成物からなる樹脂成形体及び自動車部材は優れた外観を有する。
以下に記載の原料、方法を用いてサンプルを作製し、各種評価を実施した。
(ゴム含有アクリル系グラフト共重合体(A1)):株式会社カネカ製カネエースM210
(アクリル樹脂(A2))
(A2−1):旭化成ケミカルズ株式会社製デルペット80NE
(A2−2):旭化成ケミカルズ株式会社製デルペット720V
WAXE:モンタン酸ワックス(モンタン酸エチレングリコールエステル)、クラリアント社製
G47:C11−24脂肪酸C13−24エステル、エメリーオレオケミカルズジャパン社製のLOXIOL G47
WH255C:高級脂肪酸アミド(ライトアマイド)、共栄社化学株式会社製
EB−FF:エチレンビスステアリン酸アミド、花王株式会社製
FZ3703:シリコーンオイル、日本ユニカー株式会社製
カーボンブラック(三菱化学株式会社製#2600、TEMによる実測粒子径が10nm)
カーボンブラックの分散性を向上させるために、カーボンブラック40重量部、アクリル系可塑剤性樹脂(メタクリル酸メチル87重量%、及び、アクリル酸メチル13重量%の共重合体で、メルトフローレート(JIS K7210、230℃、37.3N)が15g/10minのもの)60重量部、及び、酸化防止剤(BASF社製イルガノックス1010)0.5重量部を、44mmの2軸押出機を用いて、240℃で2回ペレット化した後粉砕することで、カ−ボンブラックのマスターバッチ(CB−2)を製造した。
ゴム含有アクリル系グラフト共重合体(A1)15重量部、(A2−1)50重量部、(A2−2)35重量部、(CB−2)0.5重量部、及び、表4に記載した量の滑剤に、BASF社製チヌビン234(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)0.5重量部、株式会社アデカ製アデカスタブLA−63(ヒンダードアミン系光安定剤)0.5重量部、及び、BASF社製イルガノックス1010(ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.5重量部をドライブレンドし、44mmの2軸押出機を用いて、240℃でペレット化した。そのペレットを用いて、150×150×3mmの平板、50×90×3mmのカラープレート(CP)、及び、63.5×12.7×6.3mmのバーを成形し、評価した。
(L値の測定)
平板サンプル、及び、カラープレートサンプルにつき、色差計として日本電色工業株式会社製SE2000(JISZ8722準拠、0−45度後分光方式)を用いて、漆黒性の指標であるL値を測定した。即ち、樹脂成形体の測定面に真上(90°)から光を照射し、測定面から45°の方向に反射する光を測定することで評価した。なお、L値測定用のサンプルは、あらかじめ#7000のコンパウンドで鏡面仕上げされた金型(鋼材に大同特殊鋼株式会社製NAK80を使用)を用いて製作した。
成形体サンプルにおいて、射出成形時の金型面により形成された鏡面について、以下の条件にて、摩耗試験機にて摩耗試験を行った。
使用機器:ヘイドン式摩耗試験機14DR(新東科学株式会社製)
移動速度:6000mm/分
移動長さ:5cm
移動回数:50往復
荷重重さ:1kg
摩耗ジグ:ASTM式ジグを、方当たりしないように軸に対して固定し、ジグがサンプルに対して常に平行になるようにした。ASTMジグの下側に、硬質プラスチック製、2cm×2cm、厚み2mmの小型板を接着した。その上から、カナキン3号の布を4重巻きにて取り付け、ASTMジグの止め具にて固定した。このようにして、布とサンプルが約4cm2の面積で接触し、なおかつ荷重が正しくサンプルに伝わった状態のまま、摩耗試験を行った。
試験後、目視で、表面にほぼ傷がついていないものを4、明らかに多数の筋状の傷がついていてサンプルを正面(正面とは、サンプルの平板に対して垂直法線方向に観察者の頭部があり、背後からの光があっても観察者の頭の影となってさえぎられているような条件)から見ても白くなってしまっているものを1、4と1の間であって正面から傷が認められるものを2、4と2の間であって正面から見た場合には傷が見えにくいが斜めから見た場合には傷が見えるものを3として評価した。
具体的には、実施例7において、1kgf荷重にて50往復という非常に過酷な条件の摩耗試験にもかかわらず良好な耐摩耗性を示しているが、滑剤のない比較例4との漆黒度のL値の差が1未満に収まっていることは驚くべき事である。さらに、実施例8においては、実施例7ほどではないものの比較的良好な耐摩耗性を示しているが、滑剤のない比較例4との漆黒度のL値の差が0.3未満に収まっていることは同じく驚くべき事である。加えて、実施例9において、実施例8を上回る良好な耐摩耗性と、実施例8と同程度の優れた漆黒度を示していることから、滑剤としてモンタン酸エステル以外のエステル系滑剤も好ましいものであることが分かる。実施例10、11においては、滑剤の種類がアミド系であり、実施例7〜実施例9で用いたエステル系滑剤と化学的に明らかに異なる性質のものであるにもかかわらず、それらに匹敵する漆黒度と耐摩耗性を両立しており、滑剤としてアミド系滑剤も好ましいものであることが分かる。なお、実施例11の摩耗性試験の結果は、3と4の間であった。ステアリン酸アミドを使用しても、L値の変化が少なく、耐摩耗性は良好であることが分かる。
しかるに、比較例5においては、漆黒度が劣るにもかかわらず耐摩耗性が改善されていないことから、滑剤の種類の選択、特に滑剤の融点と極性に着目した選択が重要であることが分かる。
以下に記載の原料、方法を用いてサンプルを作製し、各種評価を実施した。
(ゴム含有アクリル系グラフト共重合体(A1)):株式会社カネカ製カネエースM210
(アクリル樹脂(A2))
(A2−3):メタクリル酸メチル97重量%、及び、アクリル酸メチル3重量%からなるアクリル樹脂用単量体の共重合体で、メルトフローレート(JIS K7210、230℃、37.3N)が2.0g/10minのもの(3mm厚の成形体の全光線透過率:92%)
(A2−4):メタクリル酸メチル87重量%、及び、アクリル酸メチル13重量%からなるアクリル樹脂用単量体の共重合体で、メルトフローレート(JIS K7210、230℃、37.3N)が15g/10minのもの(3mm厚の成形体の全光線透過率:92%)
(組成物(CB−4))
カーボンブラックの分散性を向上させるために、カーボンブラック(三菱化学株式会社製#2600、TEMによる実測粒子径が10nm)40重量部、前記A2−3を60重量部、及び、酸化防止剤(BASF社製イルガノックス1010)0.5重量部を、44mmの2軸押出機を用いて、240℃で2回ペレット化した後粉砕することで、カーボンブラックのマスターバッチ(CB−3)を製造した。表5に示す組成で、ゴム含有アクリル系グラフト共重合体(A1)、及び、アクリル樹脂(A2)からなるゴム変性アクリル系樹脂(A)に、カーボンブラックマスターバッチ(CB−3)を配合し、さらに、BASF社製チヌビン234(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)0.5重量部、株式会社アデカ製アデカスタブLA−63(ヒンダードアミン系光安定剤)0.5重量部、及び、BASF社製イルガノックス1010(ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.5重量部を添加した配合物を、44mmの2軸押出機を用いて、240℃でペレット化し、組成物(CB−4)を製造した。
(組成物(CB−5))
比較のため、表5に示す組成で、ゴム含有アクリル系グラフト共重合体(A1)、及びアクリル樹脂(A2)からなるゴム変性アクリル系樹脂(A)に、市販されているカーボンブラックのマスターバッチである住化カラー株式会社製SPAB−8K500(カーボン濃度45重量%)を配合し、さらに、チヌビン234(0.5重量部)、アデカスタブLA−63(0.5重量部)、及び、イルガノックス1010(0.45重量部)を添加した配合物を、44mmの2軸押出機を用いて、240℃でペレット化し、組成物(CB−5)を製造した。
(参考例1)
ゴム含有アクリル系グラフト共重合体(A1)15重量部、並びに、(A2−3)50重量部及び(A2−4)35重量部からなるアクリル樹脂(A2)85重量部とからなるゴム変性アクリル系樹脂(A)100重量部に、チヌビン234(0.5重量部)、アデカスタブLA−63(0.5重量部)、及び、イルガノックス1010(0.5重量部)を添加してドライブレンドし、44mmの2軸押出機を用いて、240℃でペレット化した。そのペレットを用いて、150×150×3mmの平板、50×90×3mmのカラープレート、及び、63.5×12.7×6.3mmのバーを成形した。
参考例1のゴム変性アクリル樹脂組成物101.5重量部に、組成物(CB−4)を、実施例12では2.5重量部、実施例13では5重量部、実施例14では10重量部、実施例15では20重量部、各々添加し、この組成物を参考例1と同様にして成形することで、平板、カラープレート(CP)及びバーを得た。
実施例12〜15において、組成物(CB−4)を、組成物(CB−5)に代えた事以外は同様にして、比較例6〜9のサンプルを作製し評価した。
即ち、参考例1のゴム変性アクリル樹脂組成物101.5重量部に、組成物(CB−5)を、比較例6では2.5重量部、比較例7では5重量部、比較例8では10重量部、比較例9では20重量部、各々添加し、この組成物を参考例1と同様にして成形することで、平板、カラープレート及びバーを得た。
(L値の測定)
L値は、平板サンプル、及び、カラープレート(CP)サンプルにつき、色差計として日本電色工業株式会社製SE2000(JISZ8722準拠、0−45度後分光方式)を用いて測定した。即ち、樹脂成形体の測定面に真上(90°)から光を照射し、測定面から45°の方向に反射する光を測定することで評価した。なお、L値測定用のサンプルは、あらかじめ#7000のコンパウンドで鏡面仕上げされた金型(鋼材に大同特殊鋼株式会社製NAK80を使用)を用いて製作した。
全光線透過率、及び、曇価は、平板サンプルにつき、日本電色工業株式会社製NDH−300Aを用いて、JIS K7105に準拠して測定した波長380〜780nmでの平均透過値である。
また、これらの測定結果を基に平行光線透過率を下記数式2により求めた。
アイゾット衝撃試験は、バーサンプルを用いて、ASTM D256に準拠して、1/4インチ、ノッチなし、23℃の条件で実施した。
平板サンプルの一部をミクロトームで切り出し、その超薄切片をルテニウム染色を施した上で、TEM観察を行った。数平均粒子径(分散粒径)は、成形体中に分散するカーボンブラック凝集体をTEMで観察し、輪郭を有して分離できない成分の大きさを測定し、N=50個で算術平均したものである。
平板サンプルを用いて、スモーク性を目視で、4:非常に優れている、3:4よりは劣るが非常に優れている、2:優れている、1:劣っている(色調ムラがある)の4段階で評価した。
耐候性の評価は、150×150×3mmの平板サンプルを、47×72×3mmに切断して、スガ試験機株式会社製WEL−SUN−HCH・B型サンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機(サンシャインスーパーロングライフウェザロメーター)を用いて、ブラックパネル温度63℃で、60分照射中12分間水噴霧のサイクルという条件にて2000時間暴露する耐候性試験を実施し、ΔEが3未満を維持するものを耐候性優良と評価した。
サンプルの外観を目視にて評価した。優れた黒色外観であれば○、そうでなければ×で評価した。
図2に組成物(CB−4)のサンプルの電子顕微鏡写真を示す。カーボンブラックが一次粒子の状態で、数平均粒子径としては10〜15nmで均一に分散していることが分かる。なお、カーボンブラックの粒子が連なっているように見えるのは、前方の粒子と後方の粒子が重なって見えるためである。図中の粒子径220nmの粒子は、ゴム含有アクリル系グラフト共重合体(A1)である。
Claims (8)
- アクリル系樹脂(A)、及び、数平均粒子径が10〜40nmのカーボンブラック(B)を溶融混練した後に粉砕し、カーボンブラック(B)を数平均粒子径が10〜40nmの状態で分散させる工程を含むことを特徴とする射出成形用樹脂組成物の製造方法。
- 前記カーボンブラック(B)が、数平均粒子径が10〜40nmの状態で一次分散していることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用樹脂組成物の製造方法。
- さらに、融点が120〜250℃の有機リン系安定剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形用樹脂組成物の製造方法。
- さらに、C10〜C30の脂肪酸のエステル、及び、C10〜C30の脂肪酸のアミドからなる群から選ばれる1種以上の滑剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形用樹脂組成物の製造方法。
- 樹脂組成物を成形して得られる成形体の吸光係数が0.02〜0.04ppm−1cm−1であることを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形用樹脂組成物の製造方法。
- 前記アクリル系樹脂(A)が、該アクリル系樹脂から得られる3mm厚の成形体の全光線透過率が85%以上となるアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の射出成形用樹脂組成物の製造方法。
- 前記アクリル系樹脂(A)が、ゴム変性アクリル系樹脂を含むことを特徴とする請求項6に記載の射出成形用樹脂組成物の製造方法。
- アクリル系樹脂(A)、及び、数平均粒子径が10〜40nmのカーボンブラック(B)を溶融混練した後に粉砕し、カーボンブラック(B)を数平均粒子径が10〜40nmの状態で分散させる工程、および、
得られた樹脂組成物を射出成形する工程
を含む樹脂成形体の製造方法。
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