JP2014234508A - 熱可塑性樹脂組成物及び筐体 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及び筐体 Download PDF

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Abstract

【課題】漆黒性及び表面外観に優れ、かつ高い落錘衝撃強度を有する熱可塑性樹脂組成物、及び該熱可塑性樹脂組成物を含む筐体を提供することを目的とする。
【解決手段】JIS K7136に基づいて測定した曇価が50%以下である非晶性熱可塑性樹脂(I)100質量部と、
ジブチルフタレート吸油量が65〜110mL/100gであり、窒素吸着比表面積が180m2/g以上であるカーボンブラック(A)0.1〜2質量部と、を含む、
熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物及び該熱可塑性樹脂組成物を含む筐体に関する。
近年、樹脂を使用した各種製品の筐体は、その機能に加えて高級感のある色調が求められるようになっている。中でも家電、ゲーム機、及び自動車の内装材等を中心に、高い漆黒性が求められる傾向にある。
従来、漆黒調の着色は、染料の組み合わせにより行われることが多かったが、最近では、コストや耐候性等の点からカーボンブラックによる着色が求められることが増えている。しかし、カーボンブラックにより着色を行うと、染料と比べ、高い漆黒性を得ることが難しいこと、筐体の表面に粒子感が出やすく良好な表面外観を得ることが難しいこと、着色時に耐衝撃性が低下することが知られている。筐体としての使用においては、高級感のある外観が必要である。高級感のある外観を得るためには、高い漆黒性を有するだけでなく、表面に粒子感がなく均一な概観を有することが重要である。また、筐体としての使用においては、耐衝撃性に優れることが好ましい。
そこで、例えば特許文献1では、DBP(ジブチルフタレート)吸油量がある値以上のカーボンブラックを用いることで耐衝撃性の低下が抑えられることが開示されている。
特開平11−5885号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、耐衝撃性の低下を抑えることはできるが、高い漆黒性や、粒子感のない良好な表面外観を得る点については記載されていない。そのため、高級感のある外観を必要とされる用途として用いるには問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、漆黒性及び表面外観に優れ、かつ高い落錘衝撃強度を有する熱可塑性樹脂組成物、及び該熱可塑性樹脂組成物を含む筐体を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、曇価が特定範囲にある樹脂組成物に、DBP吸油量と窒素吸着比表面積が特定範囲にあるカーボンブラックを、特定量添加することで、上記問題点を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
JIS K7136に基づいて測定した曇価が50%以下である非晶性熱可塑性樹脂(I)100質量部と、
ジブチルフタレート吸油量が65〜110mL/100gであり、窒素吸着比表面積が180m2/g以上であるカーボンブラック(A)0.1〜2質量部と、を含む、
熱可塑性樹脂組成物。
〔2〕
前記非晶性熱可塑性樹脂(I)が、芳香族ビニル単量体を含む、前項〔1〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔3〕
前記非晶性熱可塑性樹脂(I)からなる厚み2.5mm成形品のJIS K7211−1976に準拠した落錘衝撃50%破壊エネルギーの保持率を100%とした場合において、
厚み2.5mm成形品のJIS K7211−1976に準拠した落錘衝撃50%破壊エネルギーの保持率が、80%以上である、前項〔1〕又は〔2〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔4〕
JIS Z8729に基づいて測定したL*が、9.5以下である、前項〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔5〕
前項〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、筐体。
本発明によれば、漆黒性及び表面外観に優れ、かつ高い落錘衝撃強度を有する熱可塑性樹脂組成物、及び該熱可塑性樹脂組成物を含む筐体を供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、
JIS K7136に基づいて測定した曇価が50%以下である非晶性熱可塑性樹脂(I)100質量部と、
ジブチルフタレート吸油量が65〜110mL/100gであり、窒素吸着比表面積が180m2/g以上であるカーボンブラック(A)0.1〜2質量部と、を含む。
〔非晶性熱可塑性樹脂(I)〕
本実施形態で用いる非晶性熱可塑性樹脂(I)のJIS K7136に基づいて測定した曇価は、50%以下であり、30%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。曇価の下限値は特に制限されないが、低いほど好ましく、より好ましくは0%である。曇価が上記範囲内にあることにより、カーボンブラックを含む樹脂組成物の高漆黒性がより向上する。なお、曇価は非晶性熱可塑性樹脂(I)中の不純物を極力低減させることや、非晶性熱可塑性樹脂(I)が後述の(X)、(Y)から構成される場合には両者の屈折率を近くすることにより低く制御できる。また、曇価は実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂(I)は、非晶性樹脂であれば特に制限はされず、具体的には、ポリスチレン(GPPS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、メチルメタクリレート−スチレン共重合体(MS樹脂)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−スチレン共重合体(MAS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−アクリレート−スチレン共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合体(AES樹脂)、及びアクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体(ACS樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリトリメチレンテレフタレート等のエステル系樹脂;その他、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、塩化ビニル樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステルエラストマー、芳香族ポリエステルエラストマー、及びポリアミド系エラストマーが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、ここで「非晶性」とは、融点(Tm)をもたない樹脂のことをいう。
これらのうち、非晶性熱可塑性樹脂(I)が、芳香族ビニル単量体を含むことが好ましく、芳香族ビニル単量体を含むスチレン系樹脂であることがより好ましい。このような非晶性熱可塑性樹脂(I)を用いることにより、熱可塑性樹脂組成物の成形加工性がより向上する傾向にある。
さらに、非晶性熱可塑性樹脂(I)は、ゴム質重合体(X)が熱可塑性樹脂(Y)からなる連続相中に分散している樹脂がより好ましい。このような非晶性熱可塑性樹脂(I)を用いることにより、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性がより向上する傾向にある。このような樹脂としては、特に限定されないが、例えば、HIPS、MBS樹脂、MAS樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂、及びACS樹脂が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ゴム質重合体(X)がグラフト成分を含む場合、グラフト成分は、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びアクリル系単量体からなる群より選ばれる一種以上の単量体を含む重合体がゴム質重合体にグラフト共重合したものであることが好ましい。なお、グラフト成分は、これらの単量体以外に、これらの単量体と共重合可能な他の単量体を含んでいてもよい。グラフト成分の含有率は、ゴム質重合体(X)100質量%に対して、200質量%以下が好ましく、50〜180%がより好ましく、60〜160%がさらに好ましい。グラフト成分の含有率が上記範囲内にあることにより、耐衝撃性、耐傷性により優れる射出成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物となる傾向にある。
このようなゴム質重合体(X)のグラフト成分の含有率は、実施例に記載の方法により、アセトン不溶分としてゴム成分を取り出し、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)によりゴム成分及びその他の成分を分析し、その結果を元にして求めることができる。
ゴム質重合体(X)は均一な組成であってもよいし、異なる組成の重合体を含むものでもよく、また、連続的に組成が変化しているものであってもよい。
熱可塑性樹脂(Y)中に含まれる樹脂は、特に限定されないが、例えば、射出成形可能な樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂(Y)は、ゴム成分(X)と一緒に用いることにより、熱可塑性樹脂組成物の射出成形品に、耐衝撃性、強度、硬さ、耐熱性を付与できる傾向にある。
このような熱可塑性樹脂(Y)としては、ゴム成分(X)との混和性の点から、非晶性の熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂(Y)のガラス転移温度(Tg)は、90〜300℃が好ましく、95〜250℃がより好ましく、100〜200℃がさらに好ましい。Tgが上記範囲内であることにより、強度、硬さ、耐熱性により優れる射出成形品を与える熱可塑性樹脂組成物となる傾向にある。このような熱可塑性樹脂(Y)としては、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン、AS樹脂、メタクリル樹脂、MS樹脂、ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエーテル樹脂等を挙げることができる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、熱可塑性樹脂(Y)中に含まれる樹脂の還元粘度(ηsp/c)は、0.2〜1.5dl/gが好ましく、0.3〜0.8dl/gがより好まし。還元粘度を0.2dl/g以上とすることにより、耐衝撃性や強度により優れる射出成形品を与える熱可塑性樹脂組成物となる傾向にある。また、還元粘度を1.5dl/g以下とすることにより、成形加工性により優れる熱可塑性樹脂組成物となる傾向にある。なお、還元粘度は実施例に記載の方法により測定することができる。
熱可塑性樹脂組成物において、ゴム成分(X)と熱可塑性樹脂(Y)の合計を100質量%とした場合、ゴム成分(X)の含有量は、5〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。含有量が5質量%以上であることにより、耐衝撃性、及び射出成形した際の成形品の型離れがより優れる傾向にある。また、含有量が50質量%以下であることにより、成形性、及び、着色後の漆黒性がより優れる傾向にある。
熱可塑性樹脂(Y)がシアン化ビニル単量体を含む場合、相容性の点から、ゴム成分(X)中のグラフト部分も、シアン化ビニル単量体を含む組成であることが好ましい。この場合、ゴム成分(X)中のグラフト成分、及び熱可塑性樹脂(Y)におけるシアン化ビニル系単量体の含有量は、それぞれにおいて15〜45質量%が好ましい。
熱可塑性樹脂(Y)が、芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体を含む共重合体と、メタクリル系単量体及びアクリル系単量体を含む共重合体と、の混合物の場合には、ゴム成分(X)中のグラフト成分、及び熱可塑性樹脂(Y)におけるシアン化ビニル系単量体の含有量は、それぞれ15〜30質量%が好ましく、15〜25質量%がより好ましい。シアン化ビニル系単量体の含有量が上記範囲内であることにより、着色後の漆黒性により優れる傾向にある。また、アクリル系単量体の共重合体中のメタクリル酸メチルの含有量は、75〜98質量%が好ましく、85〜98質量%がより好ましい。アクリル系単量体の共重合体中のメタクリル酸メチルの含有量が上記範囲内であることにより、着色後の漆黒性により優れる傾向にある。
熱可塑性樹脂(Y)が芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体との共重合体であるか、又は芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、アクリル系単量体からなる3元共重合体である場合には、ゴム成分(X)中のグラフト成分、及び熱可塑性樹脂(Y)におけるシアン化ビニル系単量体の含有量は、それぞれ30〜45質量%が好ましく、35〜45質量%がより好ましい。シアン化ビニル系単量体の含有量が上記範囲内であることにより、着色後の漆黒性により優れる傾向にある。
熱可塑性樹脂(Y)がアクリル系単量体を含む場合には、ゴム成分(X)中のグラフト成分、及び熱可塑性樹脂(Y)におけるアクリル系単量体の含有量は、それぞれ5〜20質量%が好ましい。アクリル系単量体の共重合体中のメタクリル酸メチルの含有量が上記範囲内であることにより、着色後の漆黒性により優れる傾向にある。また、アクリル系単量体の存在は流動性を向上させるため、深美のある漆黒性を有する射出成形品が得られ易くなる傾向にある。アクリル系単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸ブチルやメタクリル酸ブチルが好ましく使用される。
〔カーボンブラック(A)〕
本実施形態で用いるカーボンブラック(A)は、ジブチルフタレート吸油量が65〜110mL/100gであり、窒素吸着比表面積が180m2/g以上である。このようなカーボンブラック(A)としては、特に限定されないが、例えば、ファーネス法、サーマル法、コンタクト法等、公知の方法により製造されたものを使用することができる。
カーボンブラック(A)の、JIS K6217−4に基づいて測定したジブチルフタレート吸油量は、65〜110mL/100gであり、70〜105mL/100gが好ましく、70〜100mL/100gがより好ましい。ジブチルフタレート吸油量(以下、「DBP吸油量」ともいう。)が65mL/100g以上であることにより、カーボンブラック(A)は非球形の形状となり、凝集しにくく、耐衝撃性保持率が向上する。また、ジブチルフタレート吸油量が110mL/100g以下であることにより、カーボンブラック(A)のストラクチャー内部の空隙が小さくなり、耐衝撃性保持率が向上する。
カーボンブラック(A)の、JIS K6217−2に基づいて測定した窒素吸着比表面積は、180m2/g以上であり、200m2/g以上が好ましく、220m2/g以上がより好ましい。窒素吸着比表面積が180m2/g以上であることにより、より高い漆黒調着色が可能になる。
これらのカーボンブラック(A)の含有量は、非晶性熱可塑性樹脂(I)100質量部に対し、0.1〜2質量部であり、0.1〜1.7質量部がより好ましい。含有量が0.1部以上であることにより、より高い漆黒性を発現させることができる。また、含有量が2質量部以下であることにより、耐衝撃性により優れる。
本実施形態で用いるカーボンブラック(A)は、作業性の点から予め、必要に応じて用いる、熱可塑性樹脂及び添加剤と混練し、高濃度のカーボンブラック(A)を含むマスターバッチ化したものを用いてもよい。マスターバッチに用いる熱可塑性樹脂は、必要に応じて任意に選択することができるが、カーボンブラック(A)の分散性の点から非晶性熱可塑性樹脂(I)と相容する樹脂であることが好ましい。
〔その他の配合剤及び添加剤〕
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、その他の配合剤及び添加剤を含むこともできる。その他の配合剤及び添加剤としては、特に限定されないが、例えば、滑剤、紫外線吸収剤、耐光剤、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、及び発泡剤等の熱可塑性樹脂組成物に一般的に含まれるものが挙げられる。本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物が筐体に用いられる場合を考慮すると、耐傷性付与の点から、滑剤を含むことが好ましい。
なお、本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物には、耐傷付き性付与の観点から摺動補助剤を含有してもよい。摺動補助剤の含有量は非晶性熱可塑性樹脂(I)に対し、0.05〜2質量%であることが好ましい。このような含有量であることにより、耐衝撃性により優れる傾向にある。
摺動補助剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族金属塩等の滑剤、ポリオレフィン類、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等が挙げられる。
脂肪族金属塩等としては、特に限定されないが、例えば、脂肪酸金属塩及びアミド基又はエステル基を有する滑剤が好ましい。このような脂肪族金属塩を少なくとも1種以上配合することにより、耐傷付き性により優れる傾向にある。
脂肪酸金属塩としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛から選ばれる1種以上が含まれた金属と脂肪酸の塩が挙げられる。このような金属と脂肪酸の塩としては、特に限定されないが、具体的には、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム(モノ、ジ、トリ)、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ラウリン酸カルシウムが挙げられる。このなかでもステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛が好ましい。このなかでも、ステアリン酸系の金属塩がより好ましく、ステアリン酸カルシウムがさらに好ましい。このような脂肪酸金属塩を用いることにより、耐傷付き性により優れる傾向にある。
ポリオレフィン類としては、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、α−オレフィン等の少なくとも1種以上を原料として重合された樹脂が挙げられる。ポリオレフィン類としては、エチレン、プロピレン、α−オレフィン等の少なくとも2種以上を原料として重合された樹脂も含む。このような樹脂としては、特に限定されないが、具体的には、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリエチレン(高密度、低密度、直鎖状低密度)、酸化型ポリオレフィン、グラフト重合ポリオレフィン等が挙げられる。これらのうち、酸化型ポリオレフィンワックス、スチレン系樹脂をグラフトしたポリオレフィンが耐傷付き性の点で好ましく、さらに好ましくは、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、アクリロニトリル−スチレン共重合体グラフトポリプロピレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体グラフトポリエチレン、スチレン重合体グラフトポリプロピレン、及びスチレン重合体グラフトポリエチレンである。
ポリエステルエラストマーとしては、特に限定されないが、例えば、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物との重縮合、オキシカルボン酸化合物の重縮合ラクトン化合物の開環重縮合、或いはこれらの各成分の混合物の重縮合等によって得られるポリエステルが挙げられる。ホモポリエステル又はコポリエステルの何れを用いてもよい。
上記ジカルボン酸化合物としては、特に限定されないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4−ジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;及びこれらのジカルボン酸の混合物等が挙げられ、これらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体等も含まれる。また、これらのジカルボン酸化合物は、エステル形成可能な誘導体、例えば、ジメチルエステルのような低級アルコールエステルの形で使用することも可能である。本実施形態においては、これらのジカルボン酸化合物を単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。このうち、特にテレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、アジピン酸及びドデカンジカルボン酸が重合性、色調及び耐衝撃性の点から好ましく用いられる。
上記ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブテンジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、シクロヘキサンジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、シクロヘキサンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられ、これらのポリオキシアルキレングリコール及びこれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体が挙げられる。これらのジヒドロキシ化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記オキシカルボン酸化合物としては、特に限定されないが、例えば、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ジフェニレンオキシカルボン酸等が挙げられ、これらのアルキル、アルコキシ及びハロゲン置換体も含まれる。これらのオキシカルボン酸化合物は、単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、ポリエステルエラストマーの製造のために、ε−カプロラクトン等のラクトン化合物を用いることもできる。
ポリアミドエラストマーとしては、特に限定されないが、例えば、炭素数6以上のアミノカルボン酸もしくはラクタム、又はm+nが12以上のナイロンmn塩等が挙げられ、ハードセグメントとしては、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナン酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノベルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸;カプロラクタムラウロラクタム等のラクタム類、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン11,6、ナイロン11,10、ナイロン12,6、ナイロン11,12、ナイロン12,10、ナイロン12,12等のナイロン塩が挙げられる。
また、ポリオール等のソフトセグメントとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−及び1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック又はランダム共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとのブロック又はランダム共重合体等が挙げられる。これらのソフトセグメントの数平均分子量は2.0×102〜6.0×103、好ましくは2.5×102〜4.0×103である。なお、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの両末端を、アミノ化又はカルボキシル化して用いてもよい。なお、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて公知の方法により測定することができる。
これらの摺動補助剤の中では、耐傷付き性の点で特にステアリン酸系金属塩とワックス類を併用したものがよい。
摺動補助剤を添加する場合には、その相容性を向上させる目的で、酸変性或いはエポキシ変性した変性樹脂を混合してもよい。また、ゴム成分(X)、熱可塑性樹脂(Y)の一部を、鮮映性を損なわない範囲で酸変性、エポキシ変性してもよい。このような熱可塑性樹脂(Y)としては、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂(Y)が芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、アクリル系単量体の中から選ばれる単量体の共重合体の場合、それらにカルボキシル基又はグリシジル基を含有するビニルモノマーを共重合させたもの等が挙げられる。
カルボキシル基を含有するビニルモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、マレイン酸等の遊離カルボキル基を含有する不飽和化合物;無水マレイン酸、無水イタコン酸、クロロ無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の酸無水物型カルボキシル基を含有する不飽和化合物等が挙げられる。これらの中では、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が耐傷付き性の点で好適である。
グリシジル基を含有するビニルモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、メチルグリシジルメタクリレート等が挙げられる。これらの中ではメタクリル酸グリシジルが耐傷付き性の点で好適である。
さらに本実施形態の射出成形品においては、必要に応じて、ホスファイト系、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系及びシアノアクリレート系の紫外線吸収剤及び酸化防止剤;高級脂肪酸や酸エステル系及び酸アミド系、さらに高級アルコール等の滑剤及び可塑剤;モンタン酸及びその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステラアマイド及びエチレンワックス等の離型剤;亜リン酸塩、次亜リン酸塩等の着色防止剤;核剤;アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系等の帯電防止剤;1,3−フェニレンビス(2,6−ジメチルフェニル=ホスファート)、テトラフェニル−m−フェニレンビスホスファート、フェノキシホスホリル、フェノキシホスファゼン等のリン系難燃剤;ハロゲン系難燃剤等の添加剤を原材料として用いてもよい。これらの含有量はそれぞれ0.05〜1質量%が耐候性の点で好ましい。
〔熱可塑性樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、単軸又は2軸のベント付き押出機、プラストミル、ニーダー、バンバリーミキサー及びブラベンダー等の熱可塑性樹脂組成物の製造に一般的に用いられる各種混合装置を用いて製造することができる。これらのうち、カーボンブラック(A)の分散性の観点から、2軸のベント付き押出機を用いて製造することが好ましい。
〔L*値〕
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物の、JIS Z8729に準拠して測定したL*値(明度)は、9.5以下であり、8.5以下が好ましい。また、L*値の下限は、特に制限されず0に近いほど好ましい。L*値が9.5以下であることにより、熱可塑性樹脂組成物を含む成形品の漆黒性がより優れ、より高級感のある色調を有する傾向にある。L*値は、非晶性熱可塑性樹脂(I)の曇価と、使用するカーボンブラック(A)の組合せにより調整することができ、より具体的には、非晶性熱可塑性樹脂(I)の曇価を高く、使用するカーボンブラック(A)の窒素吸着比表面積を小さくすることにより高く制御でき、非晶性熱可塑性樹脂(I)の曇価を低く、使用するカーボンブラック(A)の窒素吸着比表面積を大きくすることにより低く制御できる。なお、L*値は、実施例に記載の方法により測定することができる。
〔落錘衝撃50%破壊エネルギーの保持率〕
非晶性熱可塑性樹脂(I)からなる厚み2.5mm成形品のJIS K7211−1976に準拠した落錘衝撃50%破壊エネルギーの保持率を100%とした場合において、厚み2.5mm成形品のJIS K7211−1976に準拠した落錘衝撃50%破壊エネルギーが、80%以上であり、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。また、落錘衝撃50%破壊エネルギーの保持率の上限は、特に制限されず高いほど好ましく、100%であることがより好ましい。落錘衝撃50%破壊エネルギーの保持率が80%以上であることにより、元の非晶性熱可塑性樹脂(I)の耐衝撃性を十分に発揮することができ、筐体としたときの強度の発現が容易になる。落錘衝撃50%破壊エネルギーの保持率は、用いるカーボンブラックのジブチルフタレート吸油量を特定範囲にすることにより高く制御できる。落錘衝撃50%破壊エネルギーの保持率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
落錘衝撃50%エネルギー試験に用いる試験片としては、射出成形により得られる成形品を用いることができる。厚み2.5mmの成形品の成形方法は、射出成形機を用い設定温度250℃、金型温度60℃で成形することが好ましい。また形状は、50mm×90mm×2.5mmの平板であることが好ましい。落錘衝撃破壊50%エネルギーは、JIS K7211−1976に準じて評価される。重鐘は球2形(質量:1±0.05kg、形状:直径約6.3mm)を用い、温度23℃、湿度50±5%の環境下で試験片20枚を用いて50%破壊高さを求めエネルギーに換算する。
具体的には下記式(1)、(2)から計算される。
50(50%破壊高さ)=H1+d[Σ(i×ni)/N±1/2]・・・(1)
50(50%破壊エネルギー)=m×g×H50 ・・・(2)
ここに、H1:高さ水準(i)が0のときの試験高さ(cm)
d:試験高さを上下させるときの高さ間隔(cm)
i:H1のときを0とし、1つずつ増減する高さ水準
ni:各水準において破壊した(又は破壊しなかった)試験片の数
N:破壊した(又は破壊しなかった)試験片の総数
m:重鐘の重量(kg)
g:重力の加速度(9.80665m/S2)を代入し計算する。
本実施形態では、H1=60cm、d=2.5cm、m=1kgで測定し計算する。
〔筐体〕
本実施形態に係る筐体は、上記熱可塑性樹脂組成物を含む。本実施形態における筐体とは、特に限定されないが、例えば、機械や電気等何らかの機能を有する機器の外装(カバー)が挙げられる。筐体の用途としては、特に限定されないが、例えば、家電機器、OA機器、住設機器及び車両機器等が挙げられる。家電機器としては、特に限定されないが、例えば、掃除機、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器、電器ポット、電話機、コーヒーメーカー、液晶やプラズマ等のテレビ、ビジュアルレコーダー、オーディオステレオ、スマートフォンを含む携帯機器、据置型ゲーム機、各種リモコン等の外装等が挙げられる。OA機器としては具体的に、ファックスやコピー等の複合機器、液晶モニター、プリンター、パソコン等の外装やこれらに付属する外装等が挙げられる。住設機器としては、特に限定されないが、例えば、システムキッチン、洗面台、システムバス等の外装やこれらに付属する外装が挙げられる。車両機器としては、特に限定されないが、例えば、自動車の内装のガーニッシュカバー、シフトレバーインジケーターカバー、ドアハンドル枠、パワーウィンドウスイッチ枠、センタークラスター、カーステレオやカーナビ枠、センターピラーカバー等の外装やこれらに付属する外装が挙げられる。これらのうちタブレットパソコン含むタブレット端末、スマートフォンを含む携帯電話、携帯型ゲーム機の携帯機器、テレビやゲーム、エアコン等の各種リモコン、テレビ、据置型ゲーム機等が好ましい。これらの筐体は、手に触れる時間が長いか、及び/又は、目立つような場所に置かれるため、高漆黒性であることが求められる。それと同時に製品を落下させるか、又は製品に衝撃を与える等した際に破壊されないために、耐衝撃性が求められる。そのためには、着色されても高い耐衝撃性を有することが好ましい。
以下、本実施形態を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本実施形態は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
(1)曇価の測定方法
実施例及び比較例で用いた非晶性熱可塑性樹脂を、90mm×50mm×2.5mmの平板の試験片に成形した。該試験片の曇価を、JIS K7136に基づいて測定を行った。なお、曇価値としては、試験片3枚の平均値を用いた。
(2)L*の評価方法
実施例及び比較例で作製した熱可塑性樹脂組成物を、90mm×50mm×2.5mmの平板の試験片に成形した。該試験片のL*を、スガ試験機株式会社製 S&M COLOUR COMPUTER MODEL SM−5を用いて評価した。L*は、明度指数であってCIE 1976のL*、a*、b*表色系のL*とした。なお、L*値としては、試験片3枚の平均値を用いた。なお、L*が小さいほど漆黒性に優れる。
(3)表面外観の評価方法
実施例及び比較例で作製した熱可塑性樹脂組成物を、90mm×50mm×2.5mmの平板の試験片に成形した。該試験片の表面外観は、表面における粒子感を、目視で評価した。評価基準は以下のようにした。
○ 粒子感がなく、均一な漆黒調であった
△ 粒子感がわずかにあった
× 粒子感があり、ぎらぎらしていた
(4)落錘衝撃強度保持率の評価方法
実施例及び比較例で作製した熱可塑性樹脂組成物を、90mm×50mm×2.5mmの平板の試験片に成形した。該試験片の落錘衝撃強度を、JIS K7211−1976に準じて測定した。また、実施例及び比較例で用いた非晶性熱可塑性樹脂組成物(I)を、90mm×50mm×2.5mmの平板の試験片に成形し、JIS K7211−1976に準じて落錘衝撃強度の測定を行った。得られた測定値を用いて以下の計算式から落錘衝撃強度保持率を算出した。なお、試験の値は試験片3枚の平均値を用いた。
(落錘衝撃強度保持率)=(樹脂組成物の破壊エネルギー)/(熱可塑性樹脂組成物(I)の破壊エネルギー)×100(%)
(5)アセトン不溶分の測定方法
実施例及び比較例で作製した非晶性熱可塑性樹脂に含まれるアセトン不溶分の含有量、及び線膨張係数は以下の方法により確認した。乾燥した遠沈管を1サンプルにつき2本準備した。まず、遠沈管をデシケーター中で15分以上放冷後、電子天秤で0.1mgまで精秤した。非晶性熱可塑性樹脂から約1gを切削し遠沈管に計量し、0.1mgまで精秤した。メスシリンダーでアセトン約20mLを採取し遠沈管に入れ、シリコーン栓をして振とう機で2時間振とうした。振とう後、シリコーン栓に付着しているサンプルは、少量のアセトンを用いて遠沈管内へ落とした。2本の遠沈管を日立高速冷却遠心機のローターへ対角線上にセットした。遠心分離機を操作して、回転数20000rpmで60分間遠心分離した。遠心分離終了後、沈殿管をローターから取り出し、上澄み液をデカンテーションした。
再度、メスシリンダーでアセトン約20mLを採取し、デカンテーション後の遠沈管に入れシリコーン栓をした後、振とう機で1時間振とうした。この操作をもう一度繰り返した後、回転数20000rpmで50分間遠心分離した。遠心分離終了後、沈殿管をローターから取り出し、上澄み液をデカンテーションした。この2回目のデカンテーションと同様の操作をもう一度行った。
さらに、メスシリンダーでメタノール約20mLを採取した。回転数20000rpmで30分間遠心分離した。遠心分離終了後、沈殿管をローターから取り出し上澄み液をデカンテーションした。80℃で30分間乾燥した後、130℃で30分間乾燥した。乾燥後デシケーター中で30分以上放冷した。十分に放冷後電子天秤で0.1mgまで精秤し、以下の式により算出した。
アセトン不溶分(質量%)
=[アセトン不溶分量(g)÷サンプル採取量(g)]×100
非晶性熱可塑性樹脂が無機系不溶分を含んでいる場合は以下の式により算出した。
アセトン不溶分(質量%)=[(無機系不溶分を含むアセトン不溶成分(質量%)−無機系不溶分(質量%))/(100−無機系不溶分(質量%))]×100
ここでの無機系不溶分とは、例えば着色顔料に用いられたチタン、ガラスファイバー、タルク、炭酸カルシウム等をいう。
(6)線膨張係数の測定法
アセトン不溶分の線膨張係数測定試料としては、(5)におけるデカンテーション後、沈殿物を乾燥させ、ここから無機物を取り除き、熱コンプレッション成形等で固めたものを用いた。非晶性熱可塑性樹脂の線膨張係数の測定は、ASTM D696に従って行った。
(7)還元粘度
非晶性熱可塑性樹脂0.25gを2−ブタノン50mLにて溶解してサンプル溶液とし、30℃にてCannon−Fenske型毛細管中の流出時間を測定することで非晶性熱可塑性樹脂の還元粘度を得た。
(熱可塑性樹脂(I−1)の製造例)
(共重合体(B−1)の製造方法)
重合反応槽に、ポリブタジエンゴムラテックス(日機装(株)社製マイクロトラック粒度分析計「nanotrac150」にて測定した質量平均粒子径=0.28μm、固形分量=40質量部)100質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.01質量部、及び脱イオン水45質量部を加え、気相部を窒素置換した後、55℃に昇温した。続いて、1.5時間かけて70℃まで昇温しながら、アクリロニトリル18.9質量部、スチレン51.1質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.01質量部、クメンハイドロパーオキシド0.5質量部よりなる単量体混合液、及び脱イオン水22質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部、硫酸第一鉄0.004質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.04質量部を溶解してなる水溶液を4時間にわたり添加した。添加終了後1時間、重合反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完結させた。
このようにして得られたABSラテックスに、シリコーン樹脂製消泡剤、及びフェノール系酸化防止剤エマルジョンを添加した後、硫酸アルミニウム水溶液を加えて凝固させ、さらに、十分な脱水、水洗を行った後、乾燥させて共重合体(B−1)を得た。(B−1)中にはアセトン不溶分と、アセトン可溶分が含まれていた。アセトン不溶分と、アセトン可溶分との割合は、58.6質量%と、41.4質量%であった。フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いた組成分析の結果、アセトン不溶分はアクリロニトリル6.4質量%、ブタジエン68.3質量%、スチレン25.3質量%、グラフト率46.4%、線膨張係数12.9×10-5/℃であり、アセトン可溶分はアクリロニトリル20.1質量%、スチレン79.9質量%であり、還元粘度0.34dl/gであった。
(共重合体(C−1)の製造方法)
アクリロニトリル13質量部、スチレン52質量部、溶媒としてトルエン35質量部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.05質量部からなる混合物を、窒素ガスを用いてバブリングさせた後、特許第3664576号の実施例2に記載されたものと同様の二段傾斜パドル型(傾斜角度45度)攪拌翼を供えた内容積150lの反応槽に、スプレーノズルを用いて連続的に37.5kg/時間の速度で供給した。
重合温度は130℃とし、反応槽内での反応液の充満率が70容量%を維持できるように、供給液量と同量の反応液を連続的に抜き出した。反応槽の液相部相当部分には温調のためのジャケットが設けられ、ジャケット温度は128℃であった。また、攪拌所要動力は4kW/m、重合転化速度は39.8wt%/hrであった。
抜き出した反応液は、250℃、10mmHgの高真空に保たれた揮発分除去装置へ導入し、未反応単量体、有機溶剤を脱気回収し、生成した共重合体(C−1)をペレットとして回収した。フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル20.8質量%、スチレン79.2質量%であった。また、還元粘度は0.75dl/gであった。
上記(B−1)、(C−1)を二軸押出機(TEM−35B、東芝機械(株)製)を使用してシリンダー設定温度250℃で混練し、非晶性熱可塑性樹脂(I−1)のペレットを得た。
(熱可塑性樹脂(I−2)の製造例)
(共重合体(B−2)の製造方法)
重合反応槽に、ポリブタジエンゴムラテックス(日機装(株)社製マイクロトラック粒度分析計「nanotrac150」にて測定した質量平均粒子径=0.28μm、固形分量=40質量%、膨潤指数41%)110質量部、及び脱イオン水45質量部を加え、気相部を窒素置換した後、55℃に昇温した。続いて、1.5時間かけて70℃まで昇温しながら、アクリロニトリル24質量部、スチレン36質量部、クメンハイドロパーオキシド0.1質量部よりなる単量体混合液、及び脱イオン水22質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部、硫酸第一鉄0.004質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.04質量部を溶解してなる水溶液を4時間にわたり添加した。添加終了後1時間、重合反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完結させた。
このようにして得られたABSラテックスに、シリコーン樹脂製消泡剤、及びフェノール系酸化防止剤エマルジョンを添加した後、硫酸アルミニウム水溶液を加えて凝固させ、さらに、十分な脱水、水洗を行った後、乾燥させて重合体(B−2)を得た。(B−2)中にはアセトン不溶分と、アセトン可溶分が含まれていた。アセトン不溶分と、アセトン可溶分との割合は、87.9質量%と12.1質量%であった。フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いた組成分析の結果、アセトン不溶分はアクリロニトリル21.9質量%、ブタジエン45.5質量%、スチレン32.6質量%、グラフト率157%、線膨張係数13.9×10-5/℃であり、アセトン可溶分はアクリロニトリル39.8質量%、スチレン60.2質量%であり、還元粘度は0.52dl/gであった。
(共重合体(C−2)の製造方法)
反応槽への供給液として、アクリロニトリル31質量部、スチレン31質量部、ブチルアクリレート8質量部、溶媒としてトルエン30質量部、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.05質量部を用い、温調ジャケット温度を129℃とした以外は、共重合体(B)の製造例1と同様の方法で、共重合体(C−2)を製造した。重合転化速度は30.5wt%/hrであった。抜き出した反応液は、250℃、10mmHgの高真空に保たれた揮発分除去装置へ導入し、未反応単量体、有機溶剤を脱気回収し、共重合体(C−2)はペレットとして回収した。(C−2)の組成は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR−IR)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル39.1質量%、スチレン51.1質量%、ブチルアクリレート9.8質量%であった。また、還元粘度は0.42dl/gであった。
上記(B−2)、(C−2)を二軸押出機(TEM−35B、東芝機械(株)製)を使用してシリンダー設定温度250℃で混練し、非晶性熱可塑性樹脂(I−2)のペレットを得た。
(熱可塑性樹脂(I−3)の製造例)
メタクリル酸メチル68.6質量部、アクリル酸メチル1.4質量部、エチルベンゼン30質量部からなる単量体混合物に、1,1−ジ−t−ブチルパ−オキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン150ppm、及びn−オクチルメルカプタン1500ppmを添加し、均一に混合した。
この溶液を内容積10リットルの密閉式耐圧反応器に連続的に供給し、攪拌下に平均温度135℃、平均滞留時間2時間で重合した。この重合液を反応器に接続された貯槽に連続的に送り出し、重合体と未反応単量体及び溶液と分離し、重合体を押出機にて連続的に溶融状態で押出し、共重合体(I−3)のペレットを得た。
この共重合体の還元粘度は、0.35dl/gであり、熱分解ガスクロ法を用いて組成分析したところ、メタクリル酸メチル単位/アクリル酸メチル単位=98.0/2.0(質量比)の結果を得た。さらに、樹脂組成物中のラウリン酸とステアリルアルコールを定量したところ、樹脂組成物100質量部当たり、それぞれ0.03及び0.1質量部との結果を得た。
(熱可塑性樹脂(I−4)の製造例)
ニッケル(Ni)製撹拌翼を取り付けた500mLのガラスリアクター中に、1.1―ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン0.30モル、ビスフェノールA0.30モル、ジフェニルカーボネート0.67モルを入れ、N2雰囲気下、180℃で30分間撹拌した。
その後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの15%水溶液を、芳香族ジヒドロキシ化合物との合計1モルに対して2.5×10-4モルになる量、また水酸化ナトリウムを芳香族ジヒドロキシ化合物との合計1モルに対して1×10-6モルとなる量加えて、N2雰囲気下、180℃で30分間、エステル交換反応を行なった。
さらにその後、210℃に昇温して、圧力を徐々に200mmHgまで減圧して1時間、さらに240℃まで昇温して200mmHgで20分間、圧力を徐々に150mmHgまで減圧して20分間、さらに100mmHgまで減圧し20分間、15mmHgまで減圧して15分間反応させ、280℃に昇温し、最終的に0.5mmHgまで減圧して1.5時間反応させて熱可塑性樹脂(I−4)を得た。得られた熱可塑性樹脂(I−4)(ポリカーボネート共重合体)の極限粘度を、塩化メチレン中(0.5dl/g)、20℃でウベローデ粘度計を用いて測定したところ、0.50dl/gであった。
(カーボンブラック(A))
カーボンブラック(A)は以下のものを用いた。
A−1 東海カーボン(株)製 トーカブラック #8500
A−2 東海カーボン(株)製 トーカブラック #8300
A−3 Columbian Chemicals Company製 Raven 3500
A−4 Columbian Chemicals Company製 Raven 2300Ultra
A−5 三菱化学(株)製 #40
A−6 三菱化学(株)製 #44
(実施例1)
非晶性熱可塑性樹脂(I−1)100質量部、カーボンブラック(A−1)0.45質量部を混合した後、二軸押出機(TEM−35B、東芝機械(株)製)を使用してシリンダー設定温度250℃で混練し、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。その後、射出成形機(EC−60N、東芝機械(株)製)を使用して、バレル設定温度250℃、射出速度25mm/sにて90mm×50mm×2.5mmの平板を成形した。
(実施例2〜9、比較例1〜5)
表記載の組成比に応じて配合を行い、実施例1と同様の方法で熱可塑性樹脂のペレット、及び試験片を得た。
Figure 2014234508
Figure 2014234508
以上より本発明の熱可塑性樹脂組成物は、高漆黒性であり、表面外観が良好で、耐衝撃の低下が小さいことが分かる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、高漆黒性で、表面外観に優れ、耐衝撃性の低下も抑えられるため、高級家電、ゲーム機、カメラ、携帯電話等の筐体、テレビ等の飾り枠、自動車の内層部材等において産業上の利用可能性を有する。

Claims (5)

  1. JIS K7136に基づいて測定した曇価が50%以下である非晶性熱可塑性樹脂(I)100質量部と、
    ジブチルフタレート吸油量が65〜110mL/100gであり、窒素吸着比表面積が180m2/g以上であるカーボンブラック(A)0.1〜2質量部と、を含む、
    熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記非晶性熱可塑性樹脂(I)が、芳香族ビニル単量体を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記非晶性熱可塑性樹脂(I)からなる厚み2.5mm成形品のJIS K7211−1976に準拠した落錘衝撃50%破壊エネルギーの保持率を100%とした場合において、
    厚み2.5mm成形品のJIS K7211−1976に準拠した落錘衝撃50%破壊エネルギーの保持率が、80%以上である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. JIS Z8729に基づいて測定したL*が、9.5以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、筐体。
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