JP5825395B2 - 撥水撥油剤組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、物品に撥水撥油性、防汚性を付与できる撥水撥油剤組成物に関する。
従来から、低表面張力を有する疎水性固体で物品を被覆して表面を改質する技術が知られている。たとえば、疎水性のワックス類、分子内に長鎖のアルキル基を1個以上有するカルボン酸類、アミン類、チオール類等の炭化水素系の低分子化合物、アクリレート系またはビニル系の高分子化合物、または、シリコーン類等を用いて物品を処理する技術がある。ただし、前記の炭化水素系の低分子化合物またはシリコーン類は、物品に撥水性を付与できるが、撥油性は付与できない欠点があった。
一方、表面に撥水性および撥油性を同時に付与する技術として、分子内にポリフルオロアルキル基(以下、ポリフルオロアルキル基をR基と記す。)を含有する重合性単量体の重合単位を含む重合体またはこれと他の単量体との共重合体(合わせて、以下、R基含有ポリマとも記す。)、または、R基を有する低分子化合物を、有機溶媒溶液または水性分散液としたものを用いて物品を処理することが行われている。
この撥水撥油性の発現は、コーティング膜におけるR基の表面配向により、表面に臨界表面張力の低い「低表面エネルギーの表面」が形成されることに起因する。撥水性および撥油性を両立させるためには、表面におけるR基の配向が重要であり、R基の表面配向を実現するためには、ポリマ中にR基に由来する微結晶の融点が存在することが必要であるとされてきた。そのために、ホモポリマにおいて、R基に由来する微結晶の融点を有するR基含有単量体(結晶性R基含有単量体)が使用されてきた。
この結晶性R基含有単量体は、撥水撥油性の発現という観点では目的を達するが、その他の実用上の機能については改良が行われてきた。たとえば、洗濯、ドライクリーニング、摩擦等に対する耐久性を向上させるために、結晶性R基含有単量体とともに高硬度を与える単量体もしくは架橋反応基を有する単量体を用いること、または、得られた共重合体を皮膜強度の高いポリマとブレンドすること等の改良が行われてきた。
一方、結晶性R基含有単量体の重合単位を含む共重合体(結晶性ポリマ)については、硬い風合いを柔軟にする検討、低温キュア条件下における撥水性の発現のためにR基の融点を下げる検討、が行われてきた。たとえば、広範な鎖長範囲のパーフルオロアルキル基(以下、パーフルオロアルキル基をR基と記す。)含有単量体をアルキル基含有単量体と共重合させる例が公知である。また、同様に広範な鎖長範囲のR基を含むシリコーンを使用する方法が公知である。
たとえば、特開平7−173025号公報(フッ素系化合物と特定融点のワックスを配合した化粧用組成物)、特開平10−237133号公報(R基(メタ)アクリレートおよびステアリル(メタ)アクリレートおよびその他の2種の単量体を必須成分とする4元共重合体)、特開平10−81873号公報(フッ素系撥水撥油剤と特定鎖長のR基含有アルコールまたはパーフルオロポリエーテル基含有アルコールの配合物)、特開平8−109580号公報(アミノ基含有シリコーンとR基含有エステル化合物の反応物)等が公知例として挙げられる。
一方、使用するR基含有単量体の鎖長を限定する例としては、特開昭62−179517号公報(R基の鎖長分布を規定したアクリル系7元共重合体)等が挙げられるが、少なくとも結晶性R基含有単量体を40%含む。
また、結晶性ポリマを有効成分とする撥水撥油剤を用いて加工した表面において、接着性と風合いが両立しない問題があった。すなわち、結晶性ポリマを含む撥水撥油剤を用いて加工した繊維製品の表面に、各種機能を付与するための接着加工、たとえば、防水性能を付与するためにフィルムラミネートまたはシームテープを接着する加工、透湿防水性能を付与するためにウレタンまたはアクリル樹脂を接着する加工等を施そうとしても、結晶性R基が接着性を阻害してしまうため、充分な接着性を確保することが難しかった。結晶性R基含有単量体と塩化ビニル等の特定の単量体との共重合体を用いることによって接着性を改善することが行われているが、この方法では繊維の風合いを更に硬くする傾向があるため、接着性と風合いは両立できていなかった。
これらの公知例に代表される当分野の技術は、R基が本来有する撥水性・撥油性を損なうことなく、それ以外に要求される機能の面から物性の改良が行われている。しかし、R基を含む結晶性ポリマをその主成分としているため、これに起因する後述する欠点を根本的に改良できていなかった。
特開平7−173025号公報 特開平10−237133号公報 特開平10−81873号公報 特開平8−109580号公報 特開昭62−179517号公報
従来の撥水撥油剤においては、撥水撥油性の付与と耐久性の付与を両立させるためには、結晶性R基含有単量体のうちでも、R基の微結晶に由来する融点が高い(通常の場合70℃以上)結晶性R基含有単量体を用いることが不可欠とされていた。
ところが、結晶性R基含有単量体を用いると、ポリマ全体がそれに由来する高い結晶性を有するため、そのようなポリマで被覆、加工された物品は、非常に硬くなる。たとえば、本来柔軟であるべき繊維製品等の場合には、その柔軟な風合いが損われたり、また、コーティング膜が硬くかつ脆いために、物品を取り扱うときのハンドマーク、チョークマーク等の傷が最終製品である原反に発生しやすかった。
また、加工した初期は高い撥水撥油性を発現するが、使用中の摩耗または繰り返し行われる洗濯により、その性能が極端に低下してしまう欠点があった。すなわち、初期の性能を安定して維持できる撥水撥油剤が望まれていた。さらに、コーティング膜に、表面の接着性の不足、物品の品位を低下させるひび、割れ等が起こりやすく、この種の撥水撥油剤をより広範な素材に適用するために、上記問題点の改善が望まれていた。
また、結晶性ポリマを主成分とする場合、撥水撥油性の高い均一なコーティング膜を得るために、通常は、塗布後に微結晶の融点以上の高温処理を行ってポリマを融解させた後、冷却し、皮膜を形成する過程が不可欠であった。しかし、このような高温処理を行うと、極細繊維や異型断面糸等の素材からなる繊維製品の場合には、染色堅牢度の低下、風合いの硬化、変色等の問題を引き起こし、加工物品の品位をさらに損なうことがあった。
従来より、結晶性ポリマの問題点を解決すべく、ポリマの結晶性を下げたり、ポリマを柔軟にする技術が公知である。また、低温で造膜させる目的で、造膜助剤を用いたり、内部可塑効果を有する分岐アルキル基を含有する重合性単量体を結晶性R基含有単量体と共重合させる技術が公知である。しかし、これらの場合、撥水撥油性を発現すべきR基由来の結晶が部分的に破壊されるため、撥水撥油性が発現しなかったり、耐久性が低下する問題があった。
本発明者等は、全く新規な撥水撥油性の発現機構に関し詳細に検討した。そして驚くべきことに、ホモポリマにおいてはR基の微結晶に由来する融点を有しないか、または融点が低いため、これまでの撥水コーティング分野では用いられなかったR基含有単量体を、ホモポリマでは撥水撥油性が発現しない結晶性炭化水素系単量体と組合せることにより、結晶性炭化水素系単量体が有する結晶性をさらに強化できることを見出した。すなわち、表面配向を強化させる相乗効果により、ポリマ内にR基に由来する微結晶が存在しないか、または該微結晶の融点が低くても、撥水撥油性が発現することを見出した。
この原理に基づく撥水撥油剤は、ポリマにおけるR基に由来する微結晶が存在しないか、またはその融点が高くないため、従来の問題点であった風合いの硬化、皮膜の脆化等の品位の低下を伴わずに物品に撥水撥油性を付与できる。さらに、加工した物品を従来より低温で加工しても充分な撥水撥油性を付与できる。さらに、摩耗または洗濯等によっても性能の低下が少ない。
本発明は、下記単量体(a)の重合単位および下記単量体(b)の重合単位から実質的になる共重合体を必須とする撥水撥油剤組成物を提供する。
単量体(a):R基を有する単量体であって、ホモポリマのR基に由来する微結晶の融点が存在しないか、または50℃以下であるR基を有する単量体。
単量体(b):R基以外の有機基を有する単量体であって、ホモポリマの有機基に由来する微結晶の融点が30℃以上であるR基以外の有機基を有する単量体。
本発明においては、ホモポリマのR基に由来する微結晶の融点が存在しないか、または50℃以下である単量体(a)(以下、R単量体と記すこともある。)の重合単位を含むことが重要である。また、本発明においては、R単量体と共重合性を有し、かつ、そのホモポリマの有機基に由来する微結晶の融点が30℃以上である、R基以外の有機基を有する単量体(b)の重合単位を含むことも重要であり、実質的にR単量体と単量体(b)の共重合体を必須とするものである。
本発明による、ホモポリマのR基に由来する微結晶の融点が存在しないかまたは50℃以下であるR単量体(a)の重合単位、および、ホモポリマの有機基に由来する微結晶の融点が30℃以上であるR基以外の有機基を含む単量体(b)の重合単位、を実質的に含む共重合体を有効成分とする撥水撥油剤組成物は、R基に特有の微結晶を有しないにもかかわらず、物品に撥水撥油性を付与できる。また、該組成物は柔軟な皮膜を形成するため、風合い等の品位を損なわずに物品に撥水撥油性を付与できる。さらに、従来品に比べて、低温で加工しても優れた撥水撥油性を発現できる。また、摩擦や洗濯に対する耐久性にも優れるため、従来のものに比べて、初期の性能を維持することができる。さらには、柔軟かつ接着性を阻害しにくい皮膜が形成できるため、該皮膜の表面にさらに機能性膜をコーティングすることができる。
本発明で用いる単量体(a)は、R単量体の2種以上の混合物を用いてもよい。
基に由来する微結晶の融点の有無は、示差熱量測定(JIS−K−7121−1987、K−7122−1987に記載のDSC測定法)により確認できる。本法の場合、微結晶の融解、凝固に伴う熱量が3kJ/mol以下の場合に、そのR基含有ポリマは微結晶を含まないと判断される。
基に由来する微結晶の存在の有無は、補助的に広角または小角X線散乱により、その自己パッキングによるピークを観測することによっても確認できる。ポリマ中に微結晶が存在すれば、通常その特性的なパッキング面間隔は5Å程度であることが観測される。
単量体とは、R基および重合性不飽和基を有する化合物をいう。R単量体は、R基Zと重合性不飽和基Xが特定の2価有機基Yで結合された、(Z−Y)Xで表される化合物が好ましい。ただし、Zは炭素数6以下のR基、または、C2m+1O(CFCF(CF)O)CF(CF)−(mは1〜6の整数。dは1〜4の整数。)で表される基であり、nは1または2であり、nが2の場合には、(Z−Y)は、同じであっても異なっていてもよい。Xは、nが1の場合は−CR=CH、−COOCR=CH、−OCOCR=CH、−OCH−φ−CR=CHまたは−OCH=CHであり、nが2の場合は=CH(CHCR=CH、=CH(CHCOOCR=CH、=CH(CHOCOCR=CHまたは−OCOCH=CHCOO−(Rは水素原子、メチル基またはハロゲン原子。φはフェニレン基。qは0〜4の整数。)である。また、Yは2価有機基または単結合である。
基は、アルキル基の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換された基であり、炭素数は1〜20が好ましい。R基は、アルキル基の水素原子の少なくとも数にして20〜80%がフッ素原子に置換された基が好ましい。また残余の水素原子の一部または全部が塩素原子に置換されていてもよい。さらに、該R基は直鎖状か、または、分岐状でもよい。分岐状の場合には、結合手から遠い末端またはその近傍に短い分岐を有するものが好ましい。
さらに上記の好ましいR基のうちでも、F(CF−(kは1〜20の整数)で表される直鎖状RF基、または、C2j+1(CMCM−(M、M、M、Mはそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、かつ、その1つはフッ素原子であり、j、iはそれぞれ1以上の整数で20≧(j+2×i)≧6を満足する。)で表される基が好ましい。特に、炭素数6以下のR基、または、C2m+1O(CFCF(CF)O)CF(CF)−(mは1〜6の整数。dは1〜4の整数。)で表される基が好ましい。
基の炭素数は1〜20が好ましく、特に1〜12が好ましい。炭素数が少ないものは、ホモポリマとした場合にR基に由来する微結晶が出現しにくく、また共重合体が柔軟な皮膜を形成できるため好ましい。R基としては、炭素−炭素不飽和二重結合などの不飽和基を1個以上有する鎖状ポリフルオロ炭化水素基であってもよい。
基は、その炭素原子の一部がエーテル性酸素原子で置換されているポリフルオロオキサアルキル基であってもよい。特に、パーフルオロオキシプロピレン基を1個以上有するポリフルオロオキサアルキル基(特にパーフルオロオキサアルキル基)が好ましい。この場合の炭素数は、酸素原子に置換される前の炭素原子を含め6〜18が好ましい。
具体的なR基としては、以下のR基が挙げられるが、これに限定されない。
F(CF−、F(CF−、F(CF−、(CFCF(CF−、H(CF−、HCFCF−、Cl(CF−、F(CF(CHCF−、F(CF(CHCF−、F(CF(CFClCF−、CFCF=CFCFCF=CF−、CFCFC(CF)−CH(CF)(CFCF)、C2e+1O[CF(CF)CFO]−CF(CF)−、CO[CF(CF)CFO](CF−(eは3〜6の整数、hは0〜3の整数、vは2〜6の整数。)。
基と重合性不飽和基とは、単結合で結合していてもよく、2価有機基を介して結合していてもよい。2価有機基としては、アルキレン基が含まれる基が好ましい。該アルキレン基としては、直鎖であっても、分岐を有するものであってもよい。また、該2価有機基には、−O−、−NH−、−CO−、−SO−、−CD=CD−(D、Dはそれぞれ独立して、水素原子またはメチル基を示す。)等が含まれていてもよい。2価有機基としては、アルキレン基が好ましい。
Yとしては、−RM−Q−RN−で表される2価有機基(RM、RNはそれぞれ独立して、単結合、1個以上の酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜22の飽和または不飽和の炭化水素基を示し、Qは単結合、−OCONH−、−CONH−、−SONH−または−NHCONH−を示す。)が好ましい。
Yとしては、−CH−、−CHCH−、−(CH)11−、−CHCHCH(CH)−、−CH=CHCH−、−(CHCHRO)CHCH−(wは1〜10の整数、Rは水素原子またはメチル基を示す。)、−COCONHC−、−COCOOC−、−COOC−等が好ましく挙げられる。
Xとしては、エチレン性の重合性不飽和基、すなわち、オレフィン類の残基、ビニルエーテル類の残基、ビニルエステル類の残基、(メタ)アクリレート類の残基、マレイン酸エステル類の残基、フマル酸エステル類の残基等が好ましい。ここでオレフィン類の残基とは−CR=CH、ビニルエステル類の残基とは−COOCR=CH、ビニルエーテル類の残基とは−OCR=CH、(メタ)アクリレート類の残基とは−OCOCR=CH、マレイン酸またはフマル酸エステル類の残基とは−OCOCH=CHCOO−で表される基を示す。他に、−OCH−φ−CR=CH、−OCH=CH等が挙げられる(φはフェニレン基を示す。)。
ただし、Rは重合性を妨げないために水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)または炭素数1〜3の短鎖のアルキル基(特にメチル基)が好ましい。共重合体の重合性を考慮すると、Xとしては、(メタ)アクリレート類の残基、マレイン酸またはフマル酸エステルの残基が好ましく、溶媒に対する溶解性または乳化重合の容易性等の観点から(メタ)アクリレート類の残基が特に好ましい。
単量体としては、特にR基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。このようなR単量体としては、下記単量体(a)等、種々の単量体を使用できる。これらの単量体としては、公知の単量体を使用できる。本発明で用いる単量体(a)としては、他の単量体との重合性、形成皮膜の柔軟性、基材に対する接着性、溶媒に対する溶解性、乳化重合の容易性等の観点から、上記のように特に(メタ)アクリレート類が好ましい。
基がR基であり、かつYが−(CH)−、−(CHCH)−または−(CH−である(メタ)アクリレートである場合は、炭素数が7以上であると微結晶の融点が存在して目的とする機能が発現しないため、本発明に用いる単量体(a)からは除外される。この場合のR基は炭素数6以下のR基が好ましい。最も好ましくは、炭素数4〜6の直鎖状R基である。
Yが−CHCHCH(CH)−または−CH=CH−CH−であり、Xが(メタ)アクリレートの場合、好ましいR基の炭素数は1〜10であり、特に好ましくは4〜8である。R基が酸素を含むポリフルオロポリエーテル基であり、Xが(メタ)アクリレートの場合、好ましいR基の炭素数は4〜18である。
本発明における単量体(b)としては、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類またはビニルエステル類が好ましく挙げられる。単量体(b)は、通常はR基とはみなされない孤立した少数のフッ素原子を含んでいてもよい。また、単量体(b)が有する有機基としては、微結晶の融点が30℃以上である長鎖の炭化水素基であるのが好ましい。
長鎖の炭化水素基を有する単量体(b)としては、炭素数が14以上である直鎖状炭化水素基を有する単量体が好ましく、特に炭素数16〜24の直鎖状飽和アルキル基、を有する単量体が好ましい。単量体(b)としては、炭素数15以上の飽和炭化水素基を含有する(メタ)アクリレートがとりわけ好ましい。また、炭素数15以上の飽和炭化水素基を含有するビニルエステルも好ましい。
共重合体における、単量体(a)の重合単位/単量体(b)の重合単位のモル比は0.1/1〜9/1が好ましく、特に0.2/1〜5/1が好ましく、とりわけ0.2/1〜1.5/1が好ましい。この範囲内の組成では、撥水撥油性または皮膜の柔軟性が優れるため好ましい。また、共重合体は、基材への密着性、接着性、摩擦に対する耐久性等、撥水撥油性以外の物性を改良する目的で、単量体(a)、単量体(b)以外の単量体(他の単量体ともいう)を含んでいてもよい。
他の単量体としては、エチレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、フッ化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、メチロール化ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルキルエーテル、ハロゲン化アルキルビニルエーテル、ビニルアルキルケトン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アジリジニル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、メチルポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンジ(メタ)アクリレート、ポリシロキサンを有する(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル、N−ビニルカルバゾール、マレイミド、N−メチルマレイミド、(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、炭素数8〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、側鎖にシリコーンを有する(メタ)アクリレート、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート、アルキレンジ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
特に、塩化ビニル、分子内に水酸基等の反応基を含むヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、メチルポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2官能性のポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブロック化イソシアナトエチル(メタ)アクリレートは、共重合体を含む組成物の基材への密着性を改良する点から好ましい。
本発明の撥水撥油剤組成物において、有効成分となる共重合体の調製方法は特に限定されない。たとえば、有機溶媒を用いた溶液重合法、水を分散媒としノニオン性界面活性剤および/またはカチオン性界面活性剤含む分散重合法、乳化重合法等通常の重合手法を採用できる。得られた共重合体の溶液、分散液、乳化液は、そのまま使用してもよく、または、希釈して使用してもよい。また、共重合体を分離した後、溶媒、分散媒、乳化媒に溶解、分散、乳化してもよい。
撥水撥油剤組成物の形態は、取り扱いの簡便性を考慮すると、界面活性剤および/または有機溶剤を少量含む水性分散系が好ましい。また該組成物には必要により、浸透剤、消泡剤、吸水剤、帯電防止剤、防皺剤、風合い調整剤、造膜助剤、ポリアクリルアミドやポリビニルアルコールなどの水溶性高分子、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化剤等種々の添加剤を添加してもよい。
本発明の撥水撥油剤組成物は、作業用衣料またはユニフォーム等への撥水撥油処理に用いられる。また、有機溶媒液体またはその蒸気存在下で使用される濾過材料用のコーティング剤、表面保護剤、エレクトロニクス用コーティング剤、防汚コーティング剤としての用途にも用いられる。
本発明の撥水撥油剤組成物を用いて物品を処理すると、皮膜が柔軟であるため繊維製品においてはその風合いが柔軟になり、高品位な撥水撥油性を物品に付与できる。また、共重合体にR基に由来する微結晶を含まないため、表面の接着性に優れ、低温でのキュアリングでも撥水撥油性を付与できる。また、摩擦や洗濯による性能の低下が少なく、加工初期の性能を安定して維持することができる。また、紙へ処理した場合は、低温、短時間の乾燥条件でも、優れたサイズ性、撥水性および耐油性を紙に付与できる。
本発明の撥水撥油剤組成物で処理される物品としては、特に限定はなく、天然繊維、合成繊維またはその混紡繊維等からなる繊維製品、金属、ガラス、樹脂、紙、皮革等が挙げられる。
本発明を実施例(例1〜13、19〜21)、比較例(例14〜18)により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[例1]
100mLガラス製重合アンプルに、CCHCHOCOCH=CH(ホモポリマの微結晶の融点なし。以下C4FAと記す。)の8.1g、ステアリルアクリレート(ホモポリマの微結晶の融点42℃。以下STAと記す。)の12.3g、ヒドロキシエチルアクリレート(以下HEAと記す)の0.4g、ポリオキシアルキレングリコールモノメタクリレート(ポリオキシアルキレン部分はプロピレンオキサイドの3モル、エチレンオキサイドの7モルが付加した構造である。以下PAGMと記す。)の0.3g、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(以下PEOPと記す。)の1.7g、ステアリルトリエチルアンモニウムクロリド(以下STEAと記す。)の0.4g、水の26.2g、アセトンの10.5g、分子量調整剤であるステアリルメルカプタン(以下STMと記す。)の0.1g、開始剤である2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩(以下ABMAと記す。)の0.04gを入れた。
そして、窒素置換を行い、55℃で12時間重合反応を行ったところ、固形分濃度38.1%のエマルションを得た。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、30℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は37.2℃であった。
[例2]
100mLガラス製重合アンプルに、C4FAの4.1g、ベヘニルアクリレート(ホモポリマの微結晶の融点57℃)の16.2g、HEAの0.4g、PAGMの0.3g、エチレングリコールジメタクリレートの0.1g、PEOPの1.7g、STEAの0.4g、水の26.2g、アセトンの10.5g、STMの0.1g、ABMAの0.04gを入れた。
そして、窒素置換を行い、60℃で12時間重合反応を行ったところ、固形分濃度38.8%のエマルションを得た。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、30℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は55.2℃であった。
[例3]
100mLガラス製重合アンプルに、C4FAの4.1g、セチルアクリレートの16.2g、HEAの0.4g、PAGMの0.3g、PEOPの1.7g、STEAの0.4g、水の26.2g、アセトンの10.5g、STMの0.1g、ABMAの0.04gを入れた。
そして、窒素置換を行い、55℃で12時間重合反応を行ったところ、固形分濃度37.4%のエマルションを得た。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、30℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は27.3℃であった。
[例4]
100mLガラス製重合アンプルに、C13CHCHOCOCH=CH(ホモポリマの微結晶の融点なし。以下C6FAと記す。))の8.1g、STAの12.2g、HEAの0.4g、PAGMの0.3g、PEOPの1.7g、STEAの0.4g、水の26.2g、アセトンの10.5g、STMの0.1g、ABMAの0.04g入れた。
そして、窒素置換を行い、55℃で12時間重合反応を行ったところ、固形分濃度38.1%のエマルションを得た。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、38℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は38.4℃であった。
[例5]
撹拌翼を備えた1000mLのガラス製反応容器に、C4FAの55.6g、STAの88g、ジオクチルマレエートの13g、N−メチロールアクリルアミドの5.5g、ポリエチレンオキサイドポリプロピレンオキサイド重合物の2g、ポリオキシエチレンオレイルエーテルの7.4g、アセチレングリコールエチレンオキシド30モル付加物の0.8g、アセチレングリコールエチレンオキシド10モル付加物の0.8g、水の296.4g、アセトンの82g、STMの0.6gを入れた。
これを55℃で1時間前分散した後、高圧ホモジナイザ(ゴウリン社製乳化機、LAB60−10TBS)を用いて、200kg/cmで処理し、乳化液を得た。得られた乳化液を1000mLのステンレス製オートクレーブに入れ、窒素置換した。これに、塩化ビニルの43gを加えた後、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)]プロパンの2.2gを加え、55℃で8時間重合反応を行ったところ、固形分濃度32.5%のエマルションを得た。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、30℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は32℃であった。
[例6]
100mLガラス製重合アンプルに、C6FAの8.5g、ベヘニルアクリレートの11.7g、HEAの0.4g、PAGMの0.3g、PEOPの1.7g、STEAの0.4g、水の26.2g、アセトンの10.5g、STMの0.1g、ABMAの0.04gを入れた。
そして、窒素置換を行い、60℃で12時間重合反応を行ったところ、固形分濃度38.1%のエマルションを得た。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、30℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は56.8℃であった。
[例7]
撹拌翼を備えた500mLのガラス製反応容器に、C6FAの51.2g、STAの70.4g、HEAの2.5g、PAGMの1.8g、PEOPの10.1g、STEAの2.5g、水の157.2g、アセトンの63g、STMの0.7gを入れた。
そして、50℃で30分間前分散した後、高圧ホモジナイザ(ゴウリン社製乳化機)を用いて、200kg/cmで処理し、乳化液を得た。この乳化液を500mLのステンレス製オートクレーブに入れ、窒素置換した。これに、塩化ビニルの4.8gを加えた後、ABMAの0.2gを加え、55℃で12時間重合反応を行ったところ、固形分濃度38.6%のエマルションを得た。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、30℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は39℃であった。
[例8]
100mLガラス製重合アンプルに、CCHCHOCOC(CH)=CH(ホモポリマの微結晶の融点なし)の13.8g、STAの6.2g、HEAの0.4g、PAGMの0.3g、PEOPの1.7g、STEAの0.4g、水の26.2g、アセトンの10.5g、STMの0.1g、ABMAの0.04gを入れた。
そして、窒素置換を行い、55℃で12時間重合反応を行ったところ、固形分濃度38.4%のエマルションを得た。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、30℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は35.6℃であった。
[例9]
100mLガラス製重合アンプルに、C4FAの2.6g、C6FAの6.0g、STAの11.7g、HEAの0.4g、PAGMの0.3g、PEOPの1.7g、STEAの0.4g、水の26.2g、アセトンの10.5g、STMの0.1g、ABMAの0.04gを入れた。
そして、窒素置換を行い、55℃で12時間重合反応を行ったところ、固形分濃度37.8%のエマルションを得た。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、30℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は37.8℃であった。
[例10]
100mLガラス製重合アンプルに、CO(CFCF(CF)O)CF(CF)CHOCOCH=CH(ホモポリマの微結晶の融点なし)の8.7g、STAの11.5g、HEAの0.4g、PAGMの0.3g、PEOPの1.7g、STEAの0.4g、水の26.2g、アセトンの10.5g、STMの0.1g、ABMAの0.04gを入れた。
そして、窒素置換を行い、55℃で12時間重合反応を行ったところ、固形分濃度39.2%のエマルションを得た。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、30℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は38℃であった。
[例11]
1Lのガラス製ビーカーに、C4FAの256.3g、ヒドロキシエチルメタクリレートの1.4g、3,5−ジメチルピラゾールでイソシアネート基がブロックされた2−イソシアネートエチルメタクリレートの16.5g、n−ドデシルメルカプタンの3.6g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数30)の7.4g、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体の2.5g、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド(純度63%)の2.5g、ジプロピレングリコールの108g、イオン交換水の389.9g、酢酸の1.1gを入れた。
このビーカーを50℃の湯浴に入れて加温し、内容物をホモミキサー(特殊機化社製、TKホモミクサーMK2)を用いて混合し混合液を得た。この混合液を50℃に保ちながら高圧ホモジナイザ(ゴウリン社製乳化機、LAB60−10TBS)を用いて、40MPaで処理し、乳化液を得た。得られた乳化液の698.8gを1Lのオートクレーブに入れ、30℃以下に冷却した。気相を窒素置換し、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]の1.4gを加えて、撹拌しながら60℃で8時間重合反応を行ったところ、固形分濃度34.3%のエマルションAを得た。
エマルジョンAの調製方法において、モノマの組成として、C4FAの93.2gを用い、ヒドロキシエチルメタクリレートの2.7gを用い、3,5−ジメチルピラゾールでイソシアネート基がブロックされた2−イソシアネートエチルメタクリレートの同量を用い、STAの161.8gを追加で用いる以外は、エマルションAを得るのと同様にして、固形分濃度34.1%のエマルションBを得た。
エマルションAおよびエマルションBを、それぞれ固形分濃度が20%となるようにイオン交換水にて希釈した後、エマルションAとエマルションBを質量比で2対1となるように混合した。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、30℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は37℃であった。
[例12]
C4FAの代わりにC6FAを用いる以外は、例11と同様にして、エマルションCおよびエマルションDを得た。エマルションCの固形分濃度は33.9%であり、エマルションDの固形分濃度は34.2%であった。
エマルションCおよびエマルションDについて、例11と同様にしてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は37.4℃であった。
[例13]
100mLガラス製重合アンプルに、(CCHOCOCH=CH(13a)、C(C)CHCOCOCH=CH(13b)およびC(CCH)CHCHOCOCH=CH(13c)の混合物(13a:13b:13cの質量比は4:3:3。各々の化合物においてホモポリマの微結晶の融点なし。)の8.1g、STAの12.3g、HEAの0.4g、PAGMの0.3g、PEOPの1.7g、STEAの0.4g、水の26.2g、アセトンの10.5g、STMの0.1g、ABMAの0.04gを入れた。
そして、窒素置換を行い、55℃で12時間重合反応を行ったところ、固形分濃度38.3%のエマルションを得た。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、30℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は37℃であった。
[例14]
100mLガラス製重合アンプルに、C4FAの1.8g、C6FAの4.3g、C1021CHCHOCOCH=CHの2.6g、STAの11.5g、HEAの0.4g、PAGMの0.3g、PEOPの1.7g、STEAの0.4g、水の26.2g、アセトンの10.5g、STMの0.1g、ABMAの0.04gを入れた。
そして、窒素置換を行い、55℃で12時間重合反応を行ったところ、固形分濃度37.9%のエマルションを得た。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、30℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は43.4℃と90.1℃であった。
[例15]
100mLガラス製重合アンプルに、C4FAの21.2g、PEOPの1.7g、STEAの0.4g、水の26.2g、アセトンの10.5g、STMの0.1g、ABMAの0.04gを入れた。
そして、窒素置換を行い、55℃で12時間重合反応を行ったところ、固形分濃度38.2%のエマルションを得た。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、30℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は観測されなかった。
[例16]
100mLガラス製重合アンプルに、STAの21.2g、PEOPの1.7g、STEAの0.4g、水の26.2g、アセトンの10.5g、STMの0.1g、ABMAの0.04gを入れた。
そして、窒素置換を行い、55℃で12時間重合反応を行ったところ、固形分濃度38.8%のエマルションを得た。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、30℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は43℃であった。
[例17]
100mLガラス製重合アンプルに、ベヘニルアクリレートの21.2g、PEOPの1.7g、STEAの0.4g、水の26.2g、アセトンの10.5g、STMの0.1g、ABMAの0.04gを入れた。
そして、窒素置換を行い、60℃で12時間重合反応を行ったところ、固形分濃度39.5%のエマルションを得た。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、30℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は58℃であった。
[例18]
100mLガラス製重合アンプルに、C2g+1CHCHOCOCH=CH(gの平均が9、ホモポリマの微結晶の融点78℃)の8.7g、STAの13.2g、HEAの0.4g、PAGMの0.3g、エチレングリコールジメタクリレートの0.1g、PEOPの1.7g、STEAの0.4g、水の26.2g、アセトンの10.5g、STMの0.1g、ABMAの0.04gを入れた。
そして、窒素置換を行い、55℃で12時間重合反応を行ったところ、固形分濃度38.1%のエマルションを得た。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、30℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は39.5℃と62℃であった。
[試験布の作製]
例1〜18で得られたエマルションを用いて、下記の方法にて試験布を作製し、撥水性、撥油性、洗濯耐久性(HL5)を評価した。結果を表3に示す。また、風合い、柔軟性、接着性(剥離強度)についても、下記に示す方法により評価した。結果を表4に示す。
得られたエマルションを固形分濃度が2%となるようにイオン交換水にて希釈し、さらにトリメチロールメラミンおよび有機アミン塩触媒(住友化学工業社製、商品名「ACX」)をそれぞれ0.3質量%となるように添加して、試験液とした。これらの試験液をポリエステル布に浸漬塗布し、ウェットピックアップが90質量%となるように絞った。これを、85℃にて180秒間乾燥(以下、低温処理と記す。)したもの、または、110℃で90秒間乾燥した後に170℃で60秒間乾燥(以下、高温処理と記す。)したもの、の2種類の試験布を作製した。
[撥水性の評価]
JIS L−1092のスプレー法による撥水性ナンバ(表1参照)で表す。なお、下記の撥水性ナンバに+を付して表した評価結果は、それぞれの評価がその数字よりもわずかに良好なものを示し、−はわずかに低いことを示す。結果を表3にまとめた。
Figure 0005825395
[撥油性の評価]
AATCC−TM118−1966により行い、表2に示す撥油性ナンバで表す。結果を表3にまとめた。
Figure 0005825395
[洗濯耐久性(HL5)の評価]
JIS−L0217別表103の水洗い法に従い、低温処理の試験布を用いて洗濯を5回繰り返し、75℃で5分間乾燥した後の撥水性および撥油性を評価した。
[風合いの評価]
触感により◎:非常に柔らかい、○:柔らかい、△:原反と同等または少し硬い、×:原反より硬い、の4段階の評価基準で示す。
[柔軟性の評価]
例1〜18で得られたエマルションを用いて、固形分濃度が2質量%となるようにイオン交換水にて希釈し柔軟性評価用試験液とした。該試験液を綿布に浸漬塗布し、ウェットピックアップが90質量%となるように絞った。110℃にて90秒間乾燥し、続いて170℃にて60秒間処理した。これを、縦方向2cm×横方向10cmの長方形に切り出したものを柔軟性評価用の試験布とした。
水平棒(直径3mm、長さ50mm)の上に、柔軟性評価用の試験布を長辺または短辺の中心線に合わせて置き、垂れ下がった短辺間の距離(単位:mm)を測定した。切り出す方向を変えた試験布について、長辺または短辺間の距離を各々5回づつ測定し、10回の測定の平均値を計算し、柔軟性の指標とした。この数字が小さいほど試験布は柔軟であることを意味する。
[接着性(剥離強度)の評価]
例1〜18で得られたエマルションを用いて、固形分濃度が1.2質量%となるようにイオン交換水にて希釈し、さらにメラミン樹脂(住友化学社製、商品名「スミテックスレジンM3」)および触媒(住友化学社製、商品名「スミテックスアクセレレーターACX」)をそれぞれ0.3質量%となるように添加して、接着性試験液とした。
得られた接着性試験液を、染色およびフィックス処理済のナイロンタスラン布に浸漬塗布し、2本のゴムローラーの間で布を絞った。この操作を2回繰り返した後、ウェットピックアップが90質量%となるように絞った。そして100℃で60秒間乾燥し、さらに150℃で60秒間保持したものを接着性評価用の試験布とした。
得られた接着性評価用の試験布の表面に、アジペート系ポリエステルとMDIからなるポリエステル型ポリウレタン樹脂のDMF溶液(樹脂濃度30質量%)の100部とヘキサメチレンジイソシアネートの1部との混合物を100g/mとなるようにバーコータで塗布した。次に、該試験布を25℃の水に1分間浸漬して樹脂を凝固させた後、50℃の温水で5分間洗浄した。この試験布を130℃にて2分間保持してコーティング布を得た。
得られたコーティング布の樹脂面に、幅2.5cm、長さ15cmのホットメルトテープ(サン化成社製「MELCOテープ」)を転写プレス器(奥野電気製)を用いて150℃、30秒間にて接着した。そして、25℃、湿度60%の条件にて72時間保持した。得られた布について、引っ張り試験機を用いて、ナイロンタスラン布とポリウレタン樹脂との間の接着性を測定した。
Figure 0005825395
Figure 0005825395
[例19]
撹拌翼を備えた1Lの反応器に、C4FAの92g、STAの84g、塩化ビニリデンの103.6g、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロリド(CH=C(CH)COOCHCH(OH)CH(CH・Cl)の2.7g、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルの13.3g、モノオクタデシルトリメチルアンモニウムクロリドの2.7g、イオン交換水の398.4g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGMME)の119.5g、アゾビスイミダゾリンプロパンの0.5gを入れた。
そして、窒素置換を行い、300r.p.m.で撹拌しながら60℃に保ち、15時間重合反応を行ったところ、固形分濃度35.5%のエマルションを得た。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、30℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は36℃であった。
[例20]
例19において、C4FAを42.4g用い、C6FAの64gを追加で用いる以外は、例19と同様にして固形分濃度36.6%のエマルションを得た。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、30℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は36.2℃であった。
[例21]
例19において、C4FAの92gの代わりに、C6FAの121.3gを用いる以外は、例19と同様にして固形分濃度37.7%のエマルションを得た。得られたエマルションをメタノールで2回洗浄した後、30℃にて一晩真空乾燥させてポリマを得た。得られたポリマの微結晶の融点は37.3℃であった。
[加工紙の作製]
例19〜21で得られたエマルションを固形分濃度が0.9質量%となるようにイオン交換水にて希釈し処理浴とした。この処理浴に、無サイズ紙(坪量85g/m)を浸漬して、サイズプレスを用いてピックアップを60質量%とし、次いで、80℃に加温したドラムドライヤで30秒間乾燥し、加工紙を得た。得られた加工紙について、撥油度、撥水度およびサイズ性を評価した。結果を表7に示す。
[加工紙における耐油度の評価]
サラダオイルを加工紙の表面に滴下し、30秒後に加工紙の裏へ浸透するか否かを目視にて判定した。
[加工紙における撥水度の評価]
JIS P−8137により、表5に示す撥水度で表す。
Figure 0005825395
[加工紙におけるサイズ性の評価]
JIS−P−8122により、ステキヒトサイズ度(秒)を測定した。値が大きいほうがサイズ性に優れることを意味する。
[試験皮革の作製]
例19〜21で得られたエマルションを、それぞれ固形分濃度が4質量%となるようにpH6の水道水にて希釈した。希釈後のエマルションの1リットルを、3リットルのビーカーに入れ、約200mm四方のクロムなめし牛皮革を漬け込み、50℃で60分間浸漬処理を行った。続けて該皮革を水洗し、乾燥した後、通常の方法で揉み、その後70℃で40分間乾燥したものを試験皮革とした。得られた試験皮革について耐水性を評価した。
[試験皮革における耐水性の評価]
試験皮革を、それぞれ袋状にして水を入れ、48時間後の水の浸透状態を目視にて観察し、表6に示した。
Figure 0005825395

Claims (5)

  1. 下記単量体(a)の重合単位および下記単量体(b)の重合単位を含み、前記単量体(a)および(b)の合計量が全単量体の(143.6×100/162.1)重量%以上である共重合体を必須とする撥水撥油剤組成物であって、前記共重合体は乳化重合法により得られたものである撥水撥油剤組成物。
    単量体(a):ポリフルオロアルキル基を有する単量体であって、該単量体のホモポリマのポリフルオロアルキル基に由来する微結晶の融点が存在しないか、または50℃以下であるポリフルオロアルキル基であって、炭素数4〜6のパーフルオロアルキル基を有する単量体。
    単量体(b):ポリフルオロアルキル基以外の有機基を有する単量体であって、ホモポリマの有機基に由来する微結晶の融点が30℃以上であるポリフルオロアルキル基以外の有機基であって、炭素数14以上の直鎖状炭化水素基を有する単量体。
  2. 前記共重合体における、単量体(a)の重合単位/単量体(b)の重合単位のモル比が0.2/1〜9/1である、請求項1に記載の撥水撥油剤組成物。
  3. 前記単量体(a)が、(Z−Y)Xで表される化合物である、請求項1または2に記載の撥水撥油剤組成物。
    ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
    Z:炭素数4〜6のパーフルオロアルキル基。
    Y:2価有機基または単結合。
    n:1または2。
    X:重合性不飽和基であって、nが1の場合は−CR=CH、−COOCR=CH、−OCOCR=CH、−OCH−φ−CR=CHまたは−OCH=CHであり、nが2の場合は=CH(CHCR=CH、=CH(CHCOOCR=CH、=CH(CHOCOCR=CHまたは−OCOCH=CHCOO−である。ただし、Rは水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φはフェニレン基であり、qは0〜4の整数である。
  4. 前記単量体(b)が、有機基として炭素数14以上の飽和炭化水素基を有するアクリレートまたはメタクリレートである、請求項1〜3のいずれかに記載の撥水撥油剤組成物。
  5. 上記共重合体が、さらに分子内に反応基を含む単量体の重合単位を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の撥水撥油剤組成物。
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