JP5798448B2 - 加熱装置 - Google Patents
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Description
近年では、クイックスタートや省エネルギーの観点からフィルム加熱方式の加熱定着装置やフィルム自身を発熱させる電磁誘導加熱方式の加熱定着装置も実用化されている。
フィルム加熱方式の加熱定着装置は、加熱体としてのヒータと、このヒータに接触して加熱しつつ回転する可撓性を有する回転体としての定着フィルムと、定着フィルムを介してヒータと定着ニップ部を形成する加圧部材としての加圧ローラと、から構成される。
定着ニップ部の定着フィルムと加圧ローラとの間に未定着トナー像を担持させた記録材を導入し、定着フィルムと一緒に挟持搬送させることで、定着フィルムを介してヒータの熱を与えながら定着ニップ部の加圧力で未定着トナー像を記録材面に定着させるものである。この加熱定着装置はヒータ及び定着フィルムに低熱容量の部材を用いており、画像形成実行時のみ熱源であるヒータを通電して所定の定着温度に発熱させれば良いため、画像形成装置の電源オンから画像形成実行可能状態までの待ち時間が短く、スタンバイ時の消費電力も大幅に小さいという利点がある。
また、特許文献3は、円筒状金属素管を基層とし、外表面に離型性層を備えた加熱用金属スリーブを開示している。さらに、特許文献4は、金属または耐熱プラスチックのチューブの外面に耐熱エラストマー層が形成され、さらにその外面にシリコーンゴムまたはフッ素樹脂の層が形成された定着用ベルトを開示している。
定着フィルムの基層として、従来から用いられてきたポリイミドのような耐熱性樹脂の代わりに、樹脂よりも熱伝導率の高い金属を用いると、定着フィルム自体の熱伝導率を高くすることができるため、ヒータの熱をより効率的に記録材へ伝えることができる。そのため、画像形成装置の高速化に対応できる。また、金属を基層に用いた定着フィルムは、充分な強度を有するため、耐久性、ロバスト性が向上する。
また、従来、トナー像が定着ニップ部を通過する際に、カラー画像を多重に転写されたトナー像の形状に定着フィルム表面が追随することができないため、部分的に定着性のムラが生じるという問題があった。定着性のムラは、画像の光沢ムラとして現れたり、OHT(オーバーヘッドプロジェクタ用透明シート)においては透過性のムラとなり、投影した際に透過性のムラが画像欠陥として現れたりしてしまうというものである。これに対し、定着フィルムの基層上に弾性層を設けることで、定着フィルム表面をトナー層に沿って変形可能とし、画像上不均一に載っているトナーに対し定着フィルムから熱を包み込むように伝達できるため、均一な定着性を得ることができる。
電磁誘導加熱方式の加熱定着装置は、定着フィルムの基層として薄い金属を用いることが多い。さらに、カラー画像形成装置に電磁誘導加熱方式の加熱定着装置を適用する場合は、基層上に弾性層を設けた定着フィルムを用いることもある。
そのために、定着フィルムの基層上または弾性層上に、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素樹脂を有する離型層を表層として設けている。
上記のような定着フィルムを用いた加熱定着装置では、定着フィルムとヒータ或いは摺動部材との間に潤滑剤(潤滑剤)を介在させることにより、定着フィルムとヒータ或いは摺動部材との間の摺動摩擦を低減し、定着フィルムの回転運動を円滑にしている。
加熱定着装置は180℃以上の高温下で使用されることもあるため、潤滑剤としては高温環境のような過酷な条件下で極めて良好な安定性を示すフッ素系潤滑剤を採用している。潤滑剤は基油、増稠剤、添加剤を基本構成としており、フッ素系潤滑剤は、基油としてパーフルオロポリエーテル(PFPE)、増稠剤としてPTFEの単独重合体または共重合体、添加剤として少量の防錆剤のような添加物質から構成されている。
PFPEの直鎖タイプは、図6に示すように、側鎖タイプに比べて動粘度の温度依存性が小さい。すなわち、直鎖タイプは側鎖タイプよりも低温環境下での粘度は低く、高温環境下での粘度は高くなる。加熱定着装置としては、低温環境下で冷えた状態からの起動に必要な駆動トルクを低減したいため、潤滑剤としては低温環境下での粘度は低い方が定着フィルムの回転も容易となるため好ましい。また、連続プリント時のように高温下で使用された場合に定着フィルム端部から潤滑剤が流出し、摺動摩擦部から潤滑剤が枯渇してしまうのを抑制したいため、潤滑剤としては高温環境下での粘度は高い方がはみ出しを抑制できるため好ましい。そのため、従来の加熱定着装置に採用していた潤滑剤は、直鎖タイプのPFPEを使用していた。
その結果、定着フィルムの表層に用いられているPFAのようなフッ素樹脂と回り込んだ潤滑剤とが反応して、定着フィルムの表層がひび割れやクラックを引き起こすことがあった。ひび割れやクラックは画像上に横スジとなって現れてしまうため、結果として画像品質を低下させてしまうことがあった。
このメカニズムとしては、まず潤滑剤に含まれる基油としてのPFPEが、定着フィルムの表層であるPFAのようなフッ素樹脂内に浸透して、フッ素樹脂の膨潤を引き起こす。それに伴い、フッ素樹脂のポリマー同士の距離が離れるため、フッ素樹脂自体の強度が低下する。そして、回転のような定着フィルムへの機械的なストレスが加わることにより、表層にひび割れやクラックが引き起こされていると考えられている。
本発明の目的は、潤滑剤長期間の使用によっても加熱性能が変化しにくい、耐久性に優れた加熱装置を提供することにある。
図1は、本発明に係る画像形成装置の一例の概略構成図である。
本実施例におけるフルカラー画像形成装置は、電子写真方式を用いて、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のトナー像を重ね合わせることでフルカラー画像を得るものである。
本実施例における、フルカラー画像形成装置のプロセススピードは115mm/sec、一分間の印字枚数はLTRサイズ紙で20枚である。
それぞれのカートリッジは、イエロー(Y)トナーを現像器に充填したイエローカートリッジ、マゼンタ(M)トナーを現像器に充填したマゼンタカートリッジ、シアン(C)トナーを現像器に充填したシアンカートリッジ、そしてブラック(K)トナーを現像器に充填したブラックカートリッジである。そして、上記フルカラー画像形成装置には、上記4色のカートリッジが装填されている。
光学系5より、画像データに基づいた走査光が、帯電ローラ(3Y、3C、3M、3K)により一様に帯電された感光体ドラム(1Y、1C、1M、1K)上を露光することにより、感光体ドラム(1Y、1C、1M、1K)表面に画像に対応する静電潜像が形成される。不図示のバイアス電源より現像ローラ(2Y、2C、2M、2K)に印加される現像バイアスを帯電電位と潜像(露後部)電位との間の適切な値に設定することで、負の極性に帯電されたトナーが感光体ドラム(1Y、1C、1M、1K)上の静電潜像に選択的に付着することにより、現像が行われる。
本実施例においては、中間転写体として、駆動ローラ7によって駆動され、テンションローラ8によって張架されている中間転写ベルト6を用いている。中間転写ベルト6へ感光体ドラム(1Y、1C、1M、1K)上のトナー像を転写する、一次転写手段としては、一次転写ローラ(9Y、9C、9M、9K)を用いている。一次転写ローラ(9Y、9C、9M、9K)に対して、不図示のバイアス電源より、トナーと逆極性の一次転写バイアスを印加することにより、中間転写ベルト6に対して、トナー像が一次転写される。一次転写後、感光体ドラム(1Y、1C、1M、1K)上に転写残として残ったトナーは、クリーニング手段(4Y、4C、4M、4K)により除去される。
上記工程を中間転写ベルト6の回転に同調して、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対して行い、中間転写ベルト6上に、各色の一次転写トナー像を順次重ねて形成していく。単色のみの画像形成(単色モード)時には、上記工程は、目的の色についてのみ行われる。
図2は像加熱装置としての加熱定着装置Fを示す断面図である。なお、図2は記録材Pの搬送方向に沿った断面図である。また、図3は加熱定着装置Fの横側面図である。ここでは、まず加熱定着装置Fの概略構成について説明を行い、構成部品の詳細については後述する。
そして、定着部材20の長手方向両端部において、定着フランジ24に加圧バネ25を縮設させている。この加圧バネ25により定着部材20を所定の加圧力をもって、加圧ローラ30の上面に対して、定着フィルム23の有する後述の弾性層232の弾性と加圧ローラ30の有する弾性層302の弾性とに抗して押圧させて、所定幅の定着ニップ部Nを形成させている。なお、加圧ローラ30は後述する芯金301部を支持部材26にて受けることにより回転可能に固定されている。定着ニップ部Nでは、定着部材20の加圧ローラ30に対する加圧により、定着フィルム23がヒータ21と加圧ローラ30との間に挟まれてヒータ21の下面の扁平面に倣って撓む。これにより定着フィルム23の内面がヒータ21の下面の扁平面、具体的には後述する保護層213に密着した状態になる。ガイド22は定着フィルム23の内部に配置され、定着フィルム23の内周面との摺動面を有する。加圧ローラ30は定着フィルム23と共に定着ニップ部Nを形成する。
この加圧ローラ30の回転駆動に伴って、定着ニップ部Nにおける加圧ローラ30と定着部材20側の定着フィルム23との摩擦力で定着フィルム23に回転力が作用する。そして、定着フィルム23がその内側にあるヒータ21の下面と密着し、そして摺動面にて摺動移動しながら、ガイド22の外周を時計回り方向に、加圧ローラ30の回転に従動することで回転状態になる(加圧ローラ駆動式)。
なお、加圧部材の形態としては、本実施例における加圧ローラ30以外に、回動ベルトのようなベルトの形態でも構わない。
定着フィルム23を摺動面にて摺動移動させながら、言い換えると、加圧ローラ30の回転により定着フィルム23が回転しながら、ヒータ21に対する通電によりヒータ21の温度が所定の温度に立ち上がって温調される。この状態において、未定着トナー像Tを担持した記録材Pが、不図示の定着入口ガイドに沿って定着ニップ部Nの定着フィルム23と加圧ローラ30との間に搬送される。そして、その記録材Pが定着ニップ部Nで挟持し搬送されることで、記録材P上(被加熱材上)の未定着トナー像Tが定着フィルム23を介してヒータ21の熱で加熱されて記録材P上(シート上)に熱定着される。定着ニップ部Nを通過した記録材Pは、定着フィルム23の外面から分離して、不図示の耐熱性の定着排紙ガイドに案内されて、排出トレイ上に排出される。
ヒータ21は、定着フィルム23の内側に配置される加熱体である。ヒータ21は、図2に示すように、例えばアルミナ(酸化アルミニウム)、AlN(窒化アルミニウム)のような高絶縁性のセラミックスや、ポリイミド、PPS、液晶ポリマーのような耐熱性樹脂からなる細長い基板211を有する。そしてこの基板211の表面に、例えばAg/Pd(銀パラジウム)、RuO2、Ta2Nのような発熱ペースト層を印刷した発熱体212と、この発熱体212の保護と絶縁性とを確保するための耐圧ガラスのような保護層213と、を順次形成したものである。
なお、加熱体であるヒータ21はセラミックヒータに限られるものではなく、例えば鉄板のような強磁性物質を含む電磁誘導発熱部材のような発熱部材にすることもできる。
保持部材としてのガイド22は、ヒータ21を支持する役目や、加圧部材の役目、定着ニップ部Nとの反対方向への放熱を防ぐための断熱部材の役目をしている。このガイド22は、剛性・耐熱性・断熱性の部材であり、液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEKのような材料により形成されている。ガイド22は、定着フィルム23の内部に配置される。
本実施例では、ガイド22の素材として液晶ポリマーを使用している。
加圧ローラ30は、定着フィルム23を介在させてヒータ21と対向配置される加圧部材である。加圧ローラ30は、図2に示すように、ステンレス、SUM、Alのような金属製の芯金301と、芯金301の外側にシリコーンゴムやフッ素ゴムのような耐熱ゴムあるいはシリコーンゴムを発泡して形成された弾性層302と、を有する。さらに、離型性と耐磨耗性を向上させるため、弾性層302を覆うようにPFA、PTFE、ポリテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)のような離型層303を形成してあってもよい。
定着フィルム23は、ヒータ21と加圧ローラ30との間に介在し、加圧ローラ30と接触する定着ニップ部Nで記録材Pを挟持搬送しつつヒータ21の熱を記録材Pに与える回転体である。
定着フィルム23は、図4に示すように両端が開放されており、小熱容量で可撓性を有するエンドレスベルトからなる基層231と、この基層231を覆うように配置された弾性を有する弾性層232と、弾性層232を覆うように配置された離型性を有する離型層233と、から構成される。
また、基層231は、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PESのような可撓性を有する耐熱性樹脂であっても良い。樹脂製の基層231の場合には、BN、アルミナ、Alのような高熱伝導性粉末を混入してあっても良い。膜厚は金属製の場合と同様に、15μm以上200μm以下の厚さが必要である。
定着フィルム23とヒータ21及びガイド22との間の摩擦抵抗を小さく抑え、加熱定着装置Fの寿命を通じて安定した摺動性を維持させるために、ヒータ21やガイド22の摺動面と定着フィルム23との間に潤滑剤Gを塗布している。ヒータ21は180℃以上の温度で使用されることもあるので、潤滑剤Gとしては高温環境のような過酷な条件下で極めて良好な安定性を示すフッ素系潤滑剤を使用している。潤滑剤Gは基油と増稠剤から構成され、防錆剤のような添加剤を加えても良い。
基油としてはパーフルオロポリエーテル(PFPE)を使用している。PFPEは、図5の式1から式4に示すような化学構造を有し、大きく直鎖型の直鎖タイプ(式1、式2)と側鎖にトリフルオロメチル基(−CF3)を有する側鎖型の側鎖タイプ(式3、式4)とに分類される。そして本発明に係る潤滑剤Gは、基油として、直鎖タイプのPFPEと側鎖タイプのPFPEとを混合したものを用いる。
加熱定着装置Fを長期間使用すると、定着フィルム23とヒータ21やガイド22との間に介在されていた潤滑剤が定着フィルム23端部から流出し、定着フィルム23表面に回り込んでしまう。ここで、当該潤滑剤が、直鎖タイプのPFPEのみを基油として含む潤滑剤である場合、定着フィルム23の表層の離型層233に用いられているPFAチューブと回り込んだ当該潤滑剤とが反応して、定着フィルム23の表層の離型層233に、図7に示すようなクラックを引き起こすことがあった。クラックは、図8に示すように、横スジとなって画像に現れてしまうため、画像品質を低下させてしまうことがあった。クラックに起因する横スジは定着フィルム23のクラックの位置に対応し、定着フィルム23の外径が18mmのため、画像には約56.5mmピッチで同様の横スジが繰り返される。また、この横スジはトナー量の多いベタ画像のような画像で見えやすく、OHTのような透明シートで光を透過させるとさらに見えやすくなる。
まず、実施例1〜3に係る潤滑剤として、直鎖タイプのPFPE(図5の式1)と側鎖タイプ(図5の式3)のPFPEとをブレンドした基油を含む潤滑剤を用意した。実施例1〜3に係る潤滑剤の基油中の直鎖タイプのPFPEおよび側鎖タイプのPFPEの分子量および配合比率を表1に示す。
また、比較例1〜3に係る潤滑剤として、従来例である直鎖タイプ(図5の式1)の基油のみからなる潤滑剤(比較例1と2)と、側鎖タイプ(図5の式3)の基油のみからなる潤滑剤(比較例3)を用意した。比較例1〜3に係る潤滑剤の基油中のPFPEの分子量及び組成比を表1に示す。なお、各潤滑剤において増稠剤は全て同一のものを使用した。
上記(3a)で用意した実施例1〜3および比較例1〜3に係る潤滑剤によって定着フィルムにクラックが発生するか否かを評価するために以下の方法で加速試験を行った。
1)図2に示す加熱定着装置Fの定着フィルム23の表面に潤滑剤を直接塗布する。
2)記録材Pを通紙しない状態で、加熱定着装置Fを200℃温調で10分間空回転する。
3)空回転停止後、1時間静置して加熱定着装置Fを室温程度にまで冷却する。
4)OHTを用紙としてイエロー単色のベタ画像をプリントし、画像上に図8に示すような横スジの有無(クラックの有無)を確認する。
5)もしクラックの発生が無い場合は、上記1)から4)を5回繰り返してクラックの発生を確認する。
その結果を表1に示す。
一方、本実施例のブレンドタイプの基油からなる潤滑剤の場合、実施例1に係る、直鎖タイプの配合比率が80%と大きい潤滑剤を用いた場合には加速試験の3回目でクラックが発生した。しかし、実施例2〜3に係る、直鎖タイプの配合比率が50%を下回る潤滑剤を用いた場合には、加速試験を5回行ってもクラックは発生しなかった(実施例2、3)。
一方、側鎖タイプのPFPEは化学構造的に側鎖にトリフルオロメチル基を有しており、その側鎖が立体障害となって、PFAに浸透する際に側鎖タイプのPFPEはPFA内で詰まりやすいため、PFAに浸透する量としては直鎖タイプよりも少なくなる性質を有する。PFAに浸透する量により膨潤の程度も変わるため、浸透する量が多い直鎖タイプのPFPEの方がPFAの強度を低下させやすい、すなわち定着フィルム23の離型層233のクラックを引き起こしやすいのである。
また、本実施例では、定着フィルム23の離型層233としてPFAのチューブ成型品を用いて説明したが、コーティング品を用いても良い。チューブ成型品の方が成型時や被覆時に延伸を伴う製法のため、延伸による樹脂の配向によりクラックを引き起こしやすい性質はあるが、コーティング品でもPFPEの浸透により膨潤するため、コーティング条件によってはクラックを引き起こすことがある。少なくとも、PFPEの浸透による膨潤により、定着フィルム23の離型層233の表面性や強度、耐磨耗性を低下させているため、本実施例による効果は同様に得ることはできる。
次に、潤滑剤の基油として側鎖タイプのPFPEを使用した場合の懸念点として考えられる低温環境下での加熱定着装置Fの起動トルクについて、上述の潤滑剤を用いて比較検討を行った。
加熱定着装置Fの起動トルクとしては、15℃の低温環境下で、かつ加熱定着装置Fが冷えた状態からの駆動トルクを測定した。結果を表2に示す。
次に、潤滑剤の基油として側鎖タイプのPFPEを使用した場合のもう一つの懸念点として考えられる加熱定着装置Fの耐久性について、上述の潤滑剤を用いて比較検討を行った。
加熱定着装置Fの耐久性としては、各実施例および各比較例に係る潤滑剤を用いた画像形成装置によって10万枚の電子写真画像を形成する耐久試験後における、定着フィルム23の内周面と摺動するヒータ21面に残っている潤滑剤の状態を目視により確認した。そして、潤滑剤の劣化具合から画像形成装置の耐久性の比較を行った。
ここで潤滑剤の劣化とは、耐久試験での潤滑剤の流出による摺動摩擦部における潤滑剤の枯渇により、定着フィルム23やガイド22の摺動面から定着フィルム23やガイド22のような部材の削り粉が生じ、その削り粉が潤滑剤と混ざることよって潤滑剤が変色し粘度が増大し、定着フィルム23の回転運動を安定して行えない状態を示す。結果を表3に示す。
表3中の潤滑剤の状態を表す記号の定義は以下の通りである。
A:は潤滑剤の劣化が軽微で問題の無いレベル。
B:潤滑剤の劣化は若干あるが実用上は問題の無いレベル。
C:潤滑剤が劣化しておりヒータ21と定着フィルム23との間の摺動性の低下により記録材Pの搬送性が不安定になると思われるレベル。
すなわち、潤滑剤の基油として側鎖タイプのPFPEを使用した場合の懸念点として考えられていた加熱定着装置Fの耐久性は、直鎖タイプのPFPEを少量でもブレンドさせることで実用上問題の無いレベルにすることができるのである。本実施例においては、直鎖タイプのPFPEの配合比率を少なくとも20%以上とすれば、加熱定着装置Fの耐久性は実用上問題が無い。
以上説明したように、本発明によれば、直鎖タイプと側鎖タイプとをブレンドしたPFPEからなる潤滑剤を使用することにより、定着フィルムの表層に発生するクラックやひび割れを抑制し、画像品質の低下も抑制できる。また、耐久試験を通して記録材の搬送も安定して行うことができる。
F・・・加熱定着装置
P・・・記録材
T・・・トナー像
G・・・潤滑剤(グリース)
20・・・定着部材
21・・・ヒータ
22・・・ガイド
23・・・定着フィルム
30・・・加圧ローラ
211・・基板
212・・発熱体
213・・保護層
214・・温度検知素子
301・・芯金
302・・弾性層
303・・離型層
Claims (2)
- フッ素樹脂を含む表層を有し、かつ、両端が開放されている、可撓性の回転体と、
該回転体を加熱する加熱体と、
該回転体の内部に配置され、該回転体の内周面との摺動面を有する該回転体の保持部材と、
該回転体と共にニップ部を形成する加圧部材と、を有し、
該回転体および該加圧部材の回転により、該ニップ部において記録材を挟持し、かつ、搬送しつつ該記録材を加熱する加熱装置であって、
該回転体と該保持部材の摺動面との間に、直鎖型のパーフルオロポリエーテルと側鎖型のパーフルオロポリエーテルとを含有する潤滑剤が介在させられていることを特徴とする加熱装置。 - 前記側鎖型のパーフルオロポリエーテルは、側鎖にトリフルオロメチル基を有する請求項1に記載の加熱装置。
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