JP2023032595A - ベルト装置、定着装置及び画像形成装置 - Google Patents

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智史 東海
Tomohito Tokai
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Abstract

【課題】ベルトの摩耗を効果的に抑制する。【解決手段】回転可能な無端状のベルト310と、ベルト310の内周面に対して相対的に摺動する摺動部材330と、多孔質弾性体を有すると共にベルト310を介して摺動部材330に接触しベルト310との間にニップ部SNを形成する加圧部材320と、ベルト310の内周面と摺動部材330との間に介在する潤滑剤と、を備えるベルト装置であって、摺動部材330に対して摺動するベルト310の摺動面の弾性仕事率が55%以上である。【選択図】図2A

Description

本発明は、ベルト装置、定着装置及び画像形成装置に関する。
複写機又はプリンタなどの画像形成装置に搭載されるベルト装置として、無端状のベルトを用いた定着装置が知られている。
一般的に、ベルト式の定着装置においては、ベルトが回転すると、ベルトの内側に配置されているヒータ又は摺動シートなどに対してベルトが摺動する。このため、摺動によりベルトが摩耗してしまう問題がある。
斯かる問題に対して、下記特許文献1(特開2009-14893号公報)においては、ベルトの摩耗を抑制するために、ベルトと摺動シートの互いに摺動する摺動面をいずれもPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)により形成し、摺動シートの摺動面の表面硬度H2がベルトの摺動面の表面硬度H1以上となるようにする(H1≦H2)構成が提案されている。
ところで、定着装置においては、ベルトに接触してニップ部を形成する加圧部材として、断熱性の高い発泡ゴムなどから成るローラを用いる場合がある。この場合、加圧部材に吸熱されないため、定着効率を向上させることが可能である。しかしながら一方で、断熱性が高いローラを用いると、用紙が通過しない非通紙領域において、特にベルトの温度が上昇しやすくなるといった問題がある。すなわち、非通紙領域においては、そもそもベルトの熱が用紙によって奪われにくいことに加え、加圧部材の高い断熱性によってベルトに熱が蓄えられるため、温度上昇が顕著となる。
そして、非通紙領域においてベルト及び加圧部材の温度が上昇すると、ベルトと加圧部材の間に介在する潤滑剤の温度も上昇するため、潤滑剤の粘度が低くなり、潤滑機能が低下する。また、熱により潤滑剤が揮発しやすくなるため、潤滑剤の量が次第に減少する。これにより、非通紙領域においては、ベルトの摩耗が発生やすくなり、その摩耗により生じた摩耗粉が通紙領域にも拡散すると、ベルトの表面に細かい傷がつき、異常画像が発生する虞がある。
このように、加圧部材として発泡ゴムなどの断熱性の高い多孔性弾性体を用いた構成においては、熱による潤滑剤の機能低下及び潤滑剤量の減少が生じやすいため、ベルトの摩耗が発生しやすい傾向にある。
このようなベルトの摩耗に対する対策として、ベルト及び摺動シートなどの摺動面の材料と表面硬度を、上記のような特定の材料及び表面硬度に設定することが考えられる。しかしながら、実際は、摺動面の材料として、PTFE以外の材料が用いられる現状がある。従って、摺動面がPTFE以外の材料から成る構成においては、ベルトの摩耗抑制効果が得られにくい場合があり、別の対策が求められる。
上記課題を解決するため、本発明は、回転可能な無端状のベルトと、前記ベルトの内周面に対して相対的に摺動する摺動部材と、多孔質弾性体を有すると共に前記ベルトを介して前記摺動部材に接触し前記ベルトとの間にニップ部を形成する加圧部材と、前記ベルトの内周面と前記摺動部材との間に介在する潤滑剤と、を備えるベルト装置であって、前記摺動部材に対して摺動する前記ベルトの摺動面の弾性仕事率が55%以上であることを特徴とする。
本発明によれば、ベルトの摩耗を効果的に抑制できる。
本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。 本発明の実施形態に係る画像形成装置の原理図である。 本発明の実施形態に係る第1の定着装置の断面図である。 本発明の実施形態に係る第2の定着装置の断面図である。 本発明の実施形態に係る第3の定着装置の断面図である。 本発明の実施形態に係る第4の定着装置の断面図である。 (a)~(d)は弾性仕事率の測定方法を説明するための図である。 弾性仕事率と定着ベルトの耐摩耗ランクとの関係を示す図である。 リングオン試験装置の構成を示す図である。 弾性仕事率と摩擦係数の関係を示す図である。 摩擦係数の差分と弾性仕事率との関係を示す図である。 振動及び異音の発生状況を検証する試験結果を示す図である。 弾性仕事率と戻り率の違いを説明するための図である。 (a)は片端に電極を設けたシングルタイプの抵抗発熱体の平面図、(b)はシングルタイプの抵抗発熱体の断面図である。 両端に電極を設けたデュアルタイプの抵抗発熱体の平面図である。 両端に電極を設けたマルチタイプの抵抗発熱体の平面図である。
以下、本発明の実施形態に係るベルト装置と、そのベルト装置を使用した定着装置及び画像形成装置(レーザプリンタ)について図面を参照して説明する。なお、本発明における「ベルト装置」とは、回転可能な無端状のベルトと、ベルトの内周面に対して相対的に摺動する摺動面を有する摺動部材と、ベルトを介して摺動部材に接触しベルトとの間にニップ部を形成する加圧部材と、ベルトの内周面と摺動部材との間に介在する潤滑剤と、を備える装置を意味する。また、「定着装置」とは、ベルトと加圧部材との間のニップ部に、画像を記録する記録媒体であるシート部材を搬送して、未定着のトナーをシート部材上に定着させる装置を意味する。また、「画像形成装置」とは、定着装置を具備し、シート部材に現像剤やインクを付着させて画像形成を行う装置を意味する。
レーザプリンタは、画像形成装置の一例である。従って、本発明における「画像形成装置は、レーザプリンタに限定されないことは勿論である。すなわち、画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、及びインクジェット記録装置のいずれか一つ、又はこれらの少なくとも2つ以上を組み合わせた複合機として構成することも可能である。
なお、各図中の同一又は相当する部分には同一の符号を付し、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。また、各構成部品の説明にある寸法、材質、形状、その相対配置などは例示であって、特に特定的な記載がない限りこの発明の範囲をそれらに限定する趣旨ではない。
以下の実施形態においては、本発明のシート部材である「記録媒体」を「用紙」として説明するが、「記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「記録媒体」は、紙(用紙)だけでなくOHPシート又は布帛、金属シート、プラスチックフィルム、あるいは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含む。
現像剤又はインクを付着させることができる媒体、記録紙、記録シートと称されるものも、すべて「記録媒体」に含まれる。また、「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ等も含まれる。
また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字及び図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することも意味する。
<レーザプリンタの構成>
図1Aは、本発明のベルト装置ないし定着装置300を備えた画像形成装置100の一実施形態としてのカラーレーザプリンタの構成を概略的に示す構成図である。また、図1Bは、当該カラーレーザプリンタの原理を単純化して示す図である。
画像形成装置100は、画像形成手段としての4つのプロセスユニット1K,1Y,1M,1Cを備える。これらプロセスユニットは、カラー画像の色分解成分に対応するブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色の現像剤によって画像を形成する。
各プロセスユニット1K,1Y,1M,1Cは、互いに異なる色の未使用トナーを収容したトナーボトル6K,6Y,6M,6Cを有する以外は、同様の構成となっている。このため、1つのプロセスユニット1Kの構成を以下に説明し、他のプロセスユニット1Y,1M,1Cの説明を省略する。
プロセスユニット1Kは、像担持体2K(例えば感光体ドラム)と、ドラムクリーニング装置3Kと、除電装置を有している。プロセスユニット1Kは、さらに像担持体の表面を一様帯電する帯電手段としての帯電装置4Kと、像担持体上に形成された静電潜像の可視像処理を行う現像手段としての現像装置5K等を有している。そして、プロセスユニット1Kは、画像形成装置100の本体に対して着脱自在に装着され、消耗部品を同時に交換可能となっている。
露光器7は、この画像形成装置100に設置された各プロセスユニット1K,1Y,1M,1Cの上方に配設されている。そして、この露光器7は、画像情報に応じた書き込み走査、すなわち、画像データに基づいてレーザダイオードからレーザ光Lをミラー7aで反射して像担持体2Kに照射するように構成されている。
転写装置15は、この実施形態において各プロセスユニット1K,1Y,1M,1Cの下方に配設されている。この転写装置15は、図1Bの転写手段TMに対応する。一次転写ローラ19K,19Y,19M,19Cは、各像担持体2K,2Y,2M,2Cに対向して中間転写ベルト16に当接して配置されている。
中間転写ベルト16は、各一次転写ローラ19K,19Y,19M,19C、駆動ローラ18、従動ローラ17に掛け渡された状態で循環走行するようになっている。二次転写ローラ20は、駆動ローラ18に対向し中間転写ベルト16に当接して配置されている。なお、像担持体2K,2Y,2M,2Cが各色の第1の像担持体とすれば、中間転写ベルト16はそれらの像を合成した第2の像担持体である。
ベルトクリーニング装置21は、中間転写ベルト16の走行方向において、二次転写ローラ20より下流側に設置されている。また、クリーニングバックアップローラが中間転写ベルト16に対してベルトクリーニング装置21と反対側に設置されている。
用紙Pを積載するトレイを有する用紙給送装置200は、画像形成装置100の下方に設置されている。この用紙給送装置200は、記録媒体供給部を構成するもので、記録媒体としての多数枚の用紙Pを束状で収容可能であり、用紙Pの搬送手段としての給紙ローラ60とローラ対210と共にユニット化されている。
用紙給送装置200は、用紙の補給等のために、画像形成装置100の本体に対して挿脱可能とされている。給紙ローラ60とローラ対210は、用紙給送装置200の上方に配置され、用紙給送装置200の最上位の用紙Pを給紙路32に向けて搬送するようになっている。
分離搬送手段としてのレジストローラ対250は、二次転写ローラ20の搬送方向直近上流側に配置され、用紙給送装置200から給紙された用紙Pを一旦停止させることができる。この一旦停止により用紙Pの先端側に弛みが形成されて用紙Pの斜行(スキュー)が修正される。
レジストローラ対250の搬送方向直近上流側にはレジストセンサRSが配設され、このレジストセンサRSによって用紙先端部分の通過が検知されるようになっている。レジストセンサRSが用紙先端部分の通過を検知した後、所定時間が経過すると、当該用紙はレジストローラ対250に突き当てられて一旦停止する。
用紙給送装置200の下流端には、ローラ対210から右側に搬送された用紙を上方に向けて搬送するための搬送ローラ240が配設されている。図1Aに示すように、搬送ローラ240は、用紙を上方のレジストローラ対250へ向けて搬送する。
ローラ対210は、上下一対のローラで構成されている。当該ローラ対210は、FRR分離方式またはFR分離方式とすることができる。
FRR分離方式は、駆動軸によりトルクリミッタを介して反給紙方向に一定量のトルクを印加された分離ローラ(戻しローラ)を給送ローラに圧接させてローラ間のニップにおいて用紙を分離する方式である。これに対して、FR分離方式は、トルクリミッタを介して固定軸に支持された分離ローラ(摩擦ローラ)を給送ローラに圧接させてローラ間のニップにおいて用紙を分離する方式である。
この実施形態においては、ローラ対210をFRR分離方式で構成している。すなわち、ローラ対210は、用紙をマシン内部に搬送する上側の給送ローラ220と、この給送ローラ220と逆方向にトルクリミッタを介して駆動軸により駆動力を与えられる下側の分離ローラ230で構成されている。
分離ローラ230は、給送ローラ220に向けてバネ等の付勢手段で付勢されている。なお、前記給紙ローラ60は、給送ローラ220の駆動力がクラッチ手段を介して伝達されることにより図1Aにおいて左回転するようになっている。
レジストローラ対250に突き当てられた用紙Pは、中間転写ベルト16上に形成されたトナー画像が好適に転写されるタイミングに合わせ、二次転写ローラ20と駆動ローラ18との間の二次転写ニップ(図1Bにおいては転写ニップN)に送り出される。そして、送り出された用紙Pは、二次転写ニップにおいて印加されたバイアスによって、中間転写ベルト16上に形成されたトナー画像が所望の転写位置に高精度に静電的に転写される。
転写後搬送路33は、二次転写ローラ20と駆動ローラ18の二次転写ニップの上方に配設されている。定着装置300は、転写後搬送路33の上端近傍に設置されている。
定着装置300は、可撓性を有する無端状のベルトから成る定着ベルト310と、この定着ベルト310に対して所定の圧力で接触しながら回転する加圧部材としての加圧ローラ320を備えている。
定着後搬送路35は、定着装置300の上方に配設され、定着後搬送路35の上端で、排紙路36と反転搬送路41に分岐している。この分岐部に切り替え部材42が配置され、切り替え部材42はその揺動軸42aを軸として揺動するようになっている。また、排紙路36の開口端近傍には、排紙ローラ対37が配設されている。
反転搬送路41は、分岐部と反対側の他端で給紙路32に合流している。そして、反転搬送路41の途中には、反転搬送ローラ対43が配設されている。排紙トレイ44は、画像形成装置100の上部に、画像形成装置100の内側方向に凹形状を形成して、設置されている。
粉体収容器10(例えばトナー収容器)は、転写装置15と用紙給送装置200の間に配置されている。そして、粉体収容器10は、画像形成装置100の本体に対して着脱自在に装着されている。
本実施形態の画像形成装置100は、転写紙搬送の関係により、給紙ローラ60から二次転写ローラ20までの所定の距離が必要である。そして、この距離に生じたデッドスペースに粉体収容器10を設置し、レーザプリンタ全体の小型化を図っている。
転写カバー8は、用紙給送装置200の上部で、用紙給送装置200の引出方向正面に設置されている。そして、この転写カバー8を開くことにより、画像形成装置100の内部を点検可能にしている。転写カバー8には、手差し給紙用の手差し給紙ローラ45、及び手差し給紙用の手差しトレイ46が設置されている。
<レーザプリンタの作動>
次に、本実施形態に係るレーザプリンタの基本的動作について図1Aを参照して以下に説明する。最初に、片面印刷を行う場合について説明する。
給紙ローラ60は、画像形成装置100の制御部からの給紙信号によって回転する。そして、給紙ローラ60は、用紙給送装置200に積載された束状用紙Pの最上位の用紙のみを分離し、給紙路32へ送り出す。
給紙ローラ60及びローラ対210によって送り出された用紙Pは、その先端がレジストローラ対250のニップに到達すると、弛みを形成し、その状態で待機する。そして、中間転写ベルト16上に形成されたトナー画像をこの用紙Pに転写する最適なタイミング(同期)を図ると共に、用紙Pの先端スキューを補正する。
手差しによる給紙の場合は、手差しトレイ46に積載された束状用紙が、最上位の用紙から一枚ずつ手差し給紙ローラ45によって反転搬送路41の一部を通り、レジストローラ対250のニップまで搬送される。以後の動作は用紙給送装置200からの給紙と同じである。
ここで、作像動作については、1つのプロセスユニット1Kを説明し、他のプロセスユニット1Y,1M,1Cについてのその説明を省略する。まず、帯電装置4Kは、像担持体2Kの表面を高電位に均一に帯電する。そして、露光器7は、画像データに基づいたレーザ光Lを像担持体2Kの表面に照射する。
レーザ光Lが照射された像担持体2Kの表面は、照射された部分の電位が低下して、静電潜像が形成される。現像装置5Kは、トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体を有し、トナーボトル6Kから供給された未使用のブラックトナーを、現像剤担持体を介して、静電潜像が形成された像担持体2Kの表面部分に転移させる。
トナーが転移した像担持体2Kは、その表面にブラックトナー画像を形成(現像)する。そして、像担持体2K上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト16に転写する。
ドラムクリーニング装置3Kは、中間転写行程を経た後の像担持体2Kの表面に付着している残留トナーを除去する。除去された残留トナーは、廃トナー搬送手段によって、プロセスユニット1K内にある廃トナー収容部へ送られ回収される。また、除電装置は、クリーニング装置3Kによって残留トナーが除去された像担持体2Kの残留電荷を除電する。
各色のプロセスユニット1Y,1M,1Cにおいても、同様にして像担持体2Y,2M,2C上にトナー画像が形成され、各色トナー画像が重なり合うように中間転写ベルト16に転写される。
各色トナー画像が重なり合うように転写された中間転写ベルト16は、二次転写ローラ20と駆動ローラ18の二次転写ニップまで走行する。一方、レジストローラ対250は、突き当てられた用紙Pを所定のタイミングで挟み込んで回転し、中間転写ベルト16上のトナー画像が好適に転写されるタイミングに合わせて、二次転写ローラ20の二次転写ニップまで用紙Pを搬送する。このようにして、中間転写ベルト16上のトナー画像が、レジストローラ対250によって送り出された用紙Pに転写される。
また、トナー画像が用紙Pに転写された後、中間転写ベルト16上に残留するトナーは、ベルトクリーニング装置21によって除去される。そして、中間転写ベルト16から除去されたトナーは、廃トナー搬送手段によって、粉体収容器10へと搬送され、粉体収容器10内に回収される。
トナー画像が転写された用紙Pは、転写後搬送路33を通って定着装置300へと搬送される。そして、定着装置300に搬送された用紙Pは、定着ベルト310と加圧ローラ320によって挟まれ、加熱及び加圧されることにより、未定着トナー画像が用紙Pに定着される。トナー画像が定着された用紙Pは、定着装置300から定着後搬送路35へ送り出される。
切り替え部材42は、定着装置300から用紙Pが送り出されたタイミングで、図1Aの実線で示すように定着後搬送路35の上端近傍を開放している位置にある。この状態において、定着装置300から送り出された用紙Pは、定着後搬送路35を経由して排紙路36へ送り出される。そして、排紙ローラ対37が、排紙路36へ送り出された用紙Pを挟み込み、回転駆動することにより、用紙Pが排紙トレイ44に排出される。これにより、片面印刷が完了する。
次に、両面印刷を行う場合について説明する。両面印刷の場合は、まず、上記片面印刷の場合と同様にして用紙Pにトナー画像を転写し、定着装置300において未定着のトナー画像が用紙Pに定着される。その後、用紙Pが定着装置300から排紙路36へ送り出された後、用紙Pの後端が切り替え部材42を通過したタイミングで、切り替え部材42が、図1Aの点線で示すように揺動軸42aを軸として揺動し、定着後搬送路35の上端を閉鎖する。また、この定着後搬送路35の上端の閉鎖とほぼ同時に、排紙ローラ対37が、用紙Pを画像形成装置100外へ搬送する方向と逆の方向に回転し、反転搬送路41へ用紙Pを送り出す。
反転搬送路41へ送り出された用紙Pは、反転搬送ローラ対43を経て、レジストローラ対250に至る。そして、用紙Pは、レジストローラ対250によって一旦停止されて先端スキューが補正された後、最適なタイミングで二次転写ニップへ送り出される。
そして、上記画像形成工程と同じ工程を経て形成された裏面用のトナー画像が、用紙Pに転写される。その後、用紙Pは、転写後搬送路33を通って定着装置300へと搬送され、定着ベルト310と加圧ローラ320によって挟まれ、加熱及び加圧されることにより、未定着トナー画像が用紙Pの裏面に定着される。
このようにして、表裏両面にトナー画像が定着された用紙Pは、定着装置300から定着後搬送路35へ送り出される。このとき、切り替え部材42は、図1Aの実線で示す位置、すなわち定着後搬送路35の上端近傍を開放するような位置に戻されている。
これにより、定着装置300から送り出された用紙Pは、定着後搬送路35を経由して排紙路36へ送り出され、排紙ローラ対37によって排紙トレイ44へ排出される。以上のようにして、両面印刷が完了する。
<定着装置>
次に、本発明の実施形態に係る定着装置300について、さらに説明する。定着装置300は、後述する図2A~図2Dのように各種の型式が可能であるが、まず、図2Aに示される第1の定着装置300について説明する。
図2Aに示すように、第1の定着装置300は、上記定着ベルト310及び上記加圧ローラ320のほか、加熱源としてのヒータ330と、加熱源保持部材としてのヒータホルダ340と、支持部材としてのステー350を備えている。
定着ベルト310は、無端状の薄肉のベルトであり、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)を主成分とする筒状の基材を有している。定着ベルト310の基材の材料は、ポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂、あるいは、ニッケル又はSUSなどの金属材料であってもよい。基材の材料として金属材料を用いた場合は、基材の内周面にポリイミド又はPTFEなどから成る摺動層を設けてもよい。
また、定着ベルト310の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFA又はPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成されている。また、基材と離型層の間に、厚さ50~500μmのゴム等から成る弾性層を設けてもよい。
加圧ローラ320は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金321と、この芯金321の外周面に設けられた弾性層322と、弾性層322の外周面に設けられた離型層323とで構成されている。弾性層322は、例えば厚みが3.5mmの発泡ゴムで形成され、離型層323は、例えば厚みが40μm程度のフッ素樹脂層によって形成されている。
加圧ローラ320は、バネなどの付勢部材によって定着ベルト310側へ押圧され、定着ベルト310の外周面に圧接されている。これにより、定着ベルト310と加圧ローラ320との間(接触箇所)に、ニップ部としての定着ニップSNが形成されている。
定着ベルト310の内側には、ヒータホルダ340及びステー350が配設されている。
ヒータホルダ340は、ヒータ330を保持する部材である。ヒータホルダ340は、ヒータ330の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料によって構成されることが好ましい。特に、ヒータホルダ340が、LCP又はPEEKなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂によって構成される場合は、ヒータホルダ340の耐熱性を確保しつつ、ヒータ330からヒータホルダ340への伝熱が抑制されるので、効率的に定着ベルト310を加熱できる。
ステー350は、ヒータホルダ340を支持する部材である。ステー350によってヒータホルダ340の定着ニップSN側の面とは反対の面が支持されることにより、ヒータホルダ340が加圧ローラ320の加圧力によって撓むのが抑制される。これにより、定着ベルト310と加圧ローラ320との間に均一な幅の定着ニップSNが形成される。また、ステー350は、その剛性を確保するため、SUS又はSECCなどの鉄系金属材料によって形成されることが好ましい。
ヒータ330は、定着ベルト310の長手方向(用紙搬送方向に交差する用紙幅方向)に渡って伸びるように配置されと共に、定着ベルト310の内周面に接触し、定着ベルト310を内側から加熱する加熱源である。また、加圧ローラ320を加熱するヒータが設けられていてもよい。本実施形態に係るヒータ330は、板状の基材341と、基材341の定着ニップSN側の面に設けられた抵抗発熱体370と、抵抗発熱体370を覆う絶縁層385とを有している。基材341は、アルミナ又は窒化アルミなどのセラミック、ガラス、マイカ、ポリイミドなどの耐熱性と絶縁性に優れる材料によって構成される。また、基材341は、ステンレス(SUS)、鉄又はアルミニウムなどの金属材料(導電性材料)の上に絶縁層を形成したものであってもよい。特に、基材341の材料が、アルミニウム、銅、銀、グラファイト、グラフェンなどの高熱伝導材料である場合は、ヒータ330の均熱性が向上し、画像品質を高めることができる。抵抗発熱体370は、例えば、銀パラジウム(AgPd)及びガラス粉末などを調合したペーストを基材341の表面にスクリーン印刷などにより塗工し、その後、基材341を焼成することによって形成される。また、抵抗発熱体370の材料として、銀合金(AgPt)又は酸化ルテニウム(RuO)などの抵抗材料を用いることも可能である。絶縁層385は、アルミナ又は窒化アルミなどのセラミック、ガラス、マイカ、ポリイミドなどの耐熱性と絶縁性に優れる材料によって構成される。
また、ヒータ330には、温度検知部材としてのサーミスタTHが設けられている。サーミスタTHによって検知された温度に基づいてヒータ330の出力が制御されることにより、定着ベルト310の温度が所定の温度となるように維持される。本実施形態においては、サーミスタTHが、ヒータ330の基材341に接触するように配置されているが、ヒータ330の温度を検知する温度検知部材は、接触式の温度センサに限らず、非接触式の温度センサであってもよい。
ところで、上記本発明の実施形態に係る定着装置のように、ヒータが定着ベルトの内周面に接触するように配置されている構成においては、加圧ローラの回転に伴って定着ベルトが従動回転すると、定着ベルトがヒータに対して摺動する。このとき、ヒータに対する定着ベルトの摺動により、定着ベルトが摩耗し、発生した摩耗粉によって定着ベルトの回転トルクが増加したり、定着ベルトの摩耗に伴って異常画像(光沢ムラ又は光沢スジなど)が発生したりする問題がある。
斯かる問題を改善する対策の1つとして、定着ベルトとヒータとの摺動箇所においてグリスなどの潤滑剤を付与することが行われている。定着ベルトとヒータとの間に潤滑剤を介在させることにより、ヒータに対する定着ベルトの摺動性が向上するため、定着ベルトの摩耗の発生を抑制できる。
しかしながら、本実施形態に係る定着装置のように、加圧部材として、発泡ゴムからなる弾性層を有する加圧ローラを用いる構成においては、熱による潤滑剤の劣化及び潤滑剤量の減少が発生しやすい傾向にある。すなわち、発泡ゴムなどの多孔質弾性体を有する加圧ローラは、ソリッドゴムなどの多孔質ではない弾性層を有する加圧ローラに比べて、熱伝導率が低く、断熱性が高いため、ヒータの幅(加熱幅)よりも小さい幅の用紙が通紙された場合、用紙が通過しない非通紙領域(記録媒体非通過領域)において、定着ベルトの温度上昇が顕著になるため、潤滑剤の粘度が低くなり、潤滑機能が低下する。また、熱により潤滑剤が揮発しやすくなるため、定着ベルトとヒータとの間に介在する潤滑剤の量が次第に減少する。その結果、非通紙領域において、定着ベルトの摩耗が発生し、その摩耗により生じた摩耗粉が通紙領域にも拡散することにより、定着ベルトの表面に細かい傷がつき、異常画像が発生する虞がある。
そこで、本発明者らは、定着ベルトの耐摩耗性を向上させるべく、定着ベルトの摩耗試験を行った。その結果、定着ベルトの耐摩耗性は、定着ベルトの摺動面(内周面)における弾性仕事率を高めることによって向上することが分かった。以下、弾性仕事率と耐摩耗性の関係について説明する。
<弾性仕事率>
まず、「弾性仕事率」とは、部材に応力を負荷したときに生じる変位から、応力と変位との関係を取り、弾性変形の仕事量を算出して、その弾性変形の仕事量を全仕事量(弾性変形の仕事量+塑性変形の仕事量)で除した値である。つまり、弾性仕事率を数式によって表すと、下記式(1)の通りとなる。弾性仕事率は、1(100%)に近い材料ほど、弾性変形しやすい材料とういことができる。
Figure 2023032595000002
<弾性仕事率の測定方法>
弾性仕事率は、ダイヤモンド圧子を用いた微小表面硬度計の負荷除荷試験(押し込み試験)により測定できる。具体的には、図3に示すように、ダイヤモンド圧子AがサンプルBに接触を開始した状態(図3(a)に示す状態)から、一定負荷速度でダイヤモンド圧子Aを押し込み(負荷過程)、押し込み荷重が設定荷重に達した状態(図3(b)に示す状態)において一定時間静止する。その後、一定除荷速度でダイヤモンド圧子Aを引き上げ(除荷過程)、最終的にサンプルBに荷重がかからなくなった状態(図3(c)に示す状態)にする。
このときの荷重(押し込み荷重)と変位(押し込み量)の関係を表したものが図3(d)のグラフである。図3(d)において、(a)に示される状態は、ダイヤモンド圧子AがサンプルBに接触を開始した状態(図3(a)に示す状態)であり、ダイヤモンド圧子Aの荷重及びサンプルBの変位はともに0である。続いて、(b)に示される状態は、押し込み荷重が設定荷重に達した状態(図3(b)に示す状態)であり、ダイヤモンド圧子Aの荷重及びサンプルBの変位はともに最大となる。最後に、(c)に示される状態は、ダイヤモンド圧子Aを引き上げ、サンプルBに荷重がかからなくなった状態(図3(c)に示す状態)である。このとき、ダイヤモンド圧子Aの荷重は0となるが、サンプルBの変位が0とならないのは、サンプルBに塑性変形が生じているからである。また、図3(d)において、Weは弾性変形の仕事量を示し、Wtは塑性変形の仕事量を示す。
弾性仕事率は、上記負荷除荷試験を行った際の荷重と変位の関係(図3(d)のグラフ)を記録し、この関係から、ダイヤモンド圧子Aが表面層に行った全仕事量(弾性変形の仕事量We+塑性変形の仕事量Wt)に対する弾性変形の仕事量Weの割合を算出することによって得られる。
本発明の実施形態においては、弾性仕事率の測定を一定温湿度下で行った。具体的に、本実施形態における弾性仕事率は、温度23℃、相対湿度50%の環境条件下で行なわれた上記試験の測定値を示す。また、本実施形態においては、フィッシャースコープHM-2000(フィッシャーインストルメンツ製)、ビッカース圧子を用いて設定荷重20mN、最大荷重に達するまでの時間30sec、クリープ時間5secの条件で荷重印可し、30secかけて除荷を行い、弾性仕事率を測定した。なお、弾性仕事率は、これと同等の性能を有する他の装置を用いて測定されてもよい。
また、本測定試験においては、サンプルである定着ベルトを金属基板上に吊架し、弾性仕事率を測定した。弾性仕事率は、基板のバネ特性の影響を受けるため、基板としては剛直な金属板、スライドガラスなどが適当である。また、架橋表面層の下層(例えば、ベルト基材など)の硬度や弾性の要素も影響するため、これらの影響を減らすように最大変位が内面コート膜厚の1/10になるように規定加重を調整した。さらに、基材表面に設けられたゴム(弾性層)や離形層の影響を除外するため、測定時は表層のゴム(弾性層)や離形層を剥離することが好ましい。本測定試験においては、表層のゴム及び離形層を剥離した状態で測定を行った。
<弾性仕事率と摩耗ランク>
図4に、上記測定試験によって得られた定着ベルトの弾性仕事率と、定着ベルトの耐摩耗ランクとの関係を示す。
耐摩耗ランクの評価試験においては、定着ベルトを定着装置に組み付け、ヒータによって定着ベルトを一定温度(定着温度)に加熱しつつ、定着ベルトの回転距離が寿命距離に達するまで回転と停止を繰り返し、定着ベルトの摩耗状態を確認した。本評価試験に用いた定着装置は、内周面にポリイミド層が設けられた定着ベルトと、定着ベルトに対して相対的に摺動するガラス層を有するヒータと、ニップ形成部材(ヒータホルダ)と、発泡ゴムから成る弾性層を有する加圧ローラを備える構成とした。定着ベルトの内周面の表面硬度は約500N/mm、ヒータのガラス層の表面硬度は約3500N/mmであった。これらの表面硬度は、ISO14577に準拠する測定方法により測定した値であり、定着ベルトの内周面及びヒータのガラス層に対する圧子の押し込み量は1μmとした。また、本評価試験における摩耗評価は、定着ベルトの摩耗状態が実用上使用可能なレベルを耐摩耗ランク「3」以上とし、画像品質に全く影響がないレベルを耐摩耗ランク「4」以上とした。
図4に示す本試験結果から、弾性仕事率が55%以上であれば、実用的な耐摩耗性を確保でき、さらに、弾性仕事率が62%以上であれば、高品質な耐摩耗性を確保することができることが分かった。これは、弾性仕事率が高い部材ほど負荷応力が除去された際の応力緩和能力が高いため、定着ベルトの摺動に伴う負荷が緩和され、負荷が定着ベルトの内周面に対する永久歪として残るのを抑制できたからと考えられる。
そのため、本発明に係る定着装置においては、ヒータに対して摺動する定着ベルトの内周面(摺動面)の弾性仕事率を55%以上としている。これにより、定着ベルトの内周面(摺動面)の耐摩耗性が向上し、摺動箇所における異音の発生を長期に亘って効果的に抑制できるようになる。また、定着ベルトの内周面(摺動面)の弾性仕事率を62%以上とした場合は、摺動箇所における異音の発生を長期に亘って効果的に抑制できると共に、スジ画像などの異常画像の発生を防止でき、高品質の画像を提供できるようになる。
なお、上述の試験においては、定着ベルトに対して相対的に摺動するヒータの摺動面を、定着ベルトの内周面(摺動面)の表面硬度よりも大きい表面硬度のガラス層によって構成しているが、本発明は、この表面硬度の関係に限定されるものではない。すなわち、弾性仕事率と耐摩耗性の関係は、定着ベルトとヒータの互いに摺動する摺動面の表面硬度の関係とは別異の関係であるので、表面硬度の関係に左右されず成立する。従って、上述の例とは反対に、ヒータの摺動面の表面硬度が定着ベルトの内周面(摺動面)の表面硬度よりも小さい場合であっても、定着ベルトの内周面(摺動面)の弾性仕事率を55%以上とすることにより、定着ベルトの耐摩耗性を向上させることができる。
<弾性仕事率と摩擦係数の関係>
また、本発明者らは、定着ベルトの弾性仕事率と摩擦係数との関係を調べる試験を行った。試験は、内周面の弾性仕事率が異なる3種類の定着ベルトのサンプルを用意し、図5に示されるリングオン試験機400を用いて各サンプルの動摩擦係数と静止摩擦係数を測定した。詳しくは、リングオン試験機400の回転盤401に定着ベルトのサンプルを貼り付け、下記の条件の下、ガラス製の当接子402の先端を回転盤401上の定着ベルトの表面(内周面)に接触させた状態で、回転盤401を回転させた。そして、回転盤401が動き出した瞬間の摩擦係数(静止摩擦係数)と、回転盤401を24時間回転させた場合の摩擦係数の平均値(動摩擦係数)を測定した。すなわち、定着ベルト(回転盤401)とヒータ(当接子402)の互いに摺動する摺動面間の動摩擦係数と静止摩擦係数を測定した。
(動摩擦係数の測定条件)
・当接子先端の接触面:直径10mmの円
・当接子先端の潤滑剤塗布量:50mg
・潤滑剤の種類:東レ・ダウコーニング社製のグリスHP300
・当接子の接触箇所における回転盤の回転速度:250mm/sec
・当接子の接触荷重:1kg/cm
・温度:23℃
(静止摩擦係数の測定条件)
・当接子の先端に潤滑剤を塗布していない以外、上記動摩擦係数の測定条件と同じである。
図6に、本試験によって得られた弾性仕事率と摩擦係数の関係を示す。
図6に示されるように、定着ベルトの内周面の弾性仕事率が大きくなると、定着ベルトとヒータの摺動面間の動摩擦係数と静止摩擦係数の差分δが小さくなった。また、このときの摩擦係数の差分δと弾性仕事率の関係を図7に示す。一般的に、動摩擦係数と静止摩擦係数の差分が大きいほど、定着ベルトが振動しやすくなり、定着ベルトの振動に起因する異音も発生しやすくなることが知られている。
そこで、続けて振動及び異音の発生を調べる官能試験を行ったところ、図8に示される結果となった。図8に示されるように、定着ベルトの内周面の弾性仕事率が、50%、55%、62%のいずれの場合も、異音の発生は確認されなかった。しかしながら、弾性仕事率が50%の場合は、僅かに振動が確認された。一方、弾性仕事率が55%、62%である場合は、振動の発生が全く確認されなかった。このことから、振動、及び振動に起因する異音の発生を効果的に抑制するには、定着ベルトの内周面の弾性仕事率が55%であることが好ましいといえる。すなわち、定着ベルトの内周面の弾性仕事率が大きいほど、動摩擦係数と静止摩擦係数の差分δが小さくなるため、定着ベルトの振動に伴う異音の発生もしにくくなる。さらに言えば、振動と異音の発生を効果的に抑制するには、 弾性仕事率が55%以上であること、すなわち、図7における動摩擦係数と静止摩擦係数の差分δが0.14以下であることが好ましいといえる。
以上のように、本発明によれば、定着ベルトの内周面(摺動面)の弾性仕事率を55%以上とすることにより、定着ベルトの耐摩耗性を効果的に向上させることができる。これにより、加圧部材が多孔質弾性体を有する構成、すなわち、非通紙領域において温度上昇が生じやすく熱による潤滑剤の劣化及び潤滑剤量の減少が生じやすい構成においても、定着ベルトの摩耗を長期に亘って抑制できるようになる。しかも、本発明によれば、定着ベルト又はヒータの摺動面がPTFE以外の材料から成る構成においても、定着ベルトの摩耗を効果的に抑制できるため、定着ベルト及びヒータの材料選択の自由度が広がる。従って、本発明によれば、耐久性と実用性に優れる定着装置の提供を実現できる。
また、ヒータと定着ベルトとの間(摺動箇所)に介在する潤滑剤としては、フッ素グリス又はシリコーンオイルを含めることができる。このような潤滑剤を摺動箇所に介在させることにより、高温下及び高圧下の摺動箇所においても長期に亘って潤滑性を維持でき、定着ベルトの摩耗を抑制できる。
また、定着ベルトは、基材と、基材よりも外周側に設けられる表層(離型層)と、を有し、表層(離型層)と基材との間にゴム層などの弾性層を有しないものが好ましい。弾性層を有しない定着ベルトは、弾性層を有する定着ベルトに比べて、断熱性が低く、ヒータから定着ベルト表面(外周面)への熱伝導率が良い。このため、弾性層を有しない定着ベルトの場合、弾性層を有する定着ベルトの場合に比べ、抵抗発熱体の発熱量又は温度を低く設定できる。一般的に、定着ベルトは温度が高くなると強度が低下し摩耗しやすくなるため、定着ベルトが弾性層を有しない構成とすることにより、抵抗発熱体の発熱量又は温度を低く設定でき、定着ベルトの摩耗を生じにくくすることができる。また、定着ベルトとヒータの間に介在する潤滑剤の劣化も抑制できるので、潤滑機能を長期に亘って維持できる。このため、弾性層を有しない定着ベルトの場合は、定着ベルトの摩耗が生じにくくなり、定着ベルトの長寿命化を図れる。
また、本発明は、多孔質弾性体の熱伝導率が0.15W/m・k以下の加圧部材を備える構成において、特に大きな効果を期待できる。このような構成においては、非通紙領域における温度上昇が顕著になりやすいので、熱による潤滑機能の低下も生じやすい。従って、多孔質弾性体の熱伝導率が0.15W/m・k以下の構成に対して本発明を適用することにより、定着ベルトの摩耗を効果的に抑制し、定着ベルトの長寿命化を期待できる。また、加圧部材が有する多孔質弾性体としては、スポンジゴム、膨張ゴム又は軟質ウレタンフォームなどの発泡ゴムのほか、ゴム以外の材料から成るものも適用可能である。
<熱伝導率の測定方法>
加圧部材が有する多孔質弾性体の熱伝導率(λ)は、密度(ρ)と、比熱(C)と、熱拡散率(α)を用いて、下記式(2)によって求められる。
Figure 2023032595000003
具体的に、本発明においては、次のような測定方法によって得られた密度(ρ)、比熱(C)、及び熱拡散率(α)を用いて熱伝導率(λ)を算出した。
密度(ρ)は、株式会社島津製作所製の乾式自動密度計(商品名:Accupyc1330)を用いて測定した。比熱(C)は、株式会社島津製作所製の示差走査型熱量測定装置(商品名:DSC-60)を用いて測定し、基準物質としてはサファイヤを用いた。また、比熱(C)の測定を5回行い、50℃における平均値を用いた。熱拡散率(α)は、1mm以下となるように切り出された加圧ローラの弾性層を測定試料とし、株式会社アイフェイズ製の熱拡散率・熱伝導率測定装置(商品名:ai-Phase Mobile 1u)を用いて測定した。
<弾性仕事率と戻り率の違い>
ここで、弾性仕事率と類似する指標として戻り率がある(特許文献4:特許第6036469号公報参照)。「戻り率」とは、対象部材に荷重をかけた際の最大変位をh1とし、その後、荷重を除去した状態での変位をh2とした場合(図9参照)、下記式(3)によって表される値である。
Figure 2023032595000004
例えば、図9に示すように、対象部材に付与される荷重と対象部材の変位との関係を表したグラフにおいては、対象部材の変位がh1からh2へ変化する際の戻り速度(戻り変形の速度)が異なる場合、それぞれの戻り速度に応じて異なる戻り線1,2,3が表示される。しかしながら、戻り率は、戻り速度の違いは考慮されず、最大変位量に対する変位差の割合を表すものであるので、いずれの戻り線の場合も戻り率は同じ値となる。
これに対して、弾性仕事率は、戻り速度の情報も加味し、除荷に伴って対象部材が弾性復帰する際のエネルギー損失を示す値である。このため、弾性仕事率は、戻り線1,2,3が互いに異なる場合、すべて異なる値となる。従って、戻り率が同じ場合でも、除荷のプロファルによっては弾性仕事率が異なる場合があり、定着ベルトの摺動箇所における摩擦力(回転トルク)が弾性仕事率の違いによって異なる場合がある。具体的には、弾性仕事率から得られるエネルギー損失の差分が大きい場合、定着ベルトの摺動箇所における摩擦力(トルク)が大きくなる。そのため、定着ベルトなどの摺動面の特性としては、摩擦力の有無又はその大小関係を判断できない戻り率よりも、耐摩耗性に加えて摩擦力の情報も確認できる弾性仕事率の方が有用である。
<定着ベルトの製造方法>
本発明の実施形態に係る定着ベルトにおいては、筒状基材を構成する材料の主成分として、ポリイミド(PI)を用いている。ポリイミドを主成分とすることにより、高い弾性仕事率を確保できる。また、基材の材料として金属材料を用いる場合は、基材の内周面にポリイミド系塗料を塗布するとよい。
以下、本実施形態に係る定着ベルトの製造方法について説明する。
<塗料調合>
・塗工液の調合は、ポリイミドワニス100gに対してNMP(N-メチルーピロリドン)を80g入れて混合する。
・ポリイミドワニスは、ユニチカ(株)製のU-イミドワニスARを用いる。
・NMPは、関東化学製のN-メチルーピロリジノン特級を用いる。
・この調合液をAとする。
・上記調合液Aに対して、卓上型のミキサーで羽攪拌を実施しながら針状無機フィラーを徐々に投入して混錬を実施する。
・ポリイミドワニス100gに対して、針状無機フィラーを20g投入する。
・針状無機フィラーは玉にならないよう10~15分程度かけて徐々に投入し混錬する。
・針状無機フィラーは大塚化学(株)製のティスモDを用いる。
・この調合液をBとする。
<塗装>
・定着ベルトの内周面に対する上記調合液Bの塗装方法は、スプレー塗装やディッピング塗装を用いる。
・本実施形態においては、塗装方法としてスプレー塗装を用いる。
・調合液Bを圧送タンクへ入れる。
・定着ベルトの内周面に調合液Bを塗装するために、被塗装体の定着ベルトを回転させる。
・定着ベルトの回転数は、900~1000rpmの範囲で設定する。
・本実施形態においては、定着ベルトの回転数を900rpmに設定する。
・塗装速度は、30mm/sに設定し、複数回塗装するうちの1回分における塗布重量を0.7~1.2gの範囲になるようにする。
・塗布重量の調整は調合液Bを圧送する圧力で実施する。
・本実施形態においては、圧力が125kPaであり、その時の1回分の塗布重量を1.0gとする。
・塗布後に200℃の温風にて予備乾燥を実施し、塗装を重ねていく。
・塗装と予備乾燥は3~4回繰り返す。
・塗装終了後に、NMPを揮発させるため260℃の乾燥炉に投入して30分間加熱処理する。
・摺動層の膜厚は8~15μmが望ましい。
・本実施形態においては、調合液Bを合計4.2g塗布し、膜厚を11μmとする。
<焼成>
・焼成は縦型の遠赤焼成炉で実施する。
・縦に配置した定着ベルトの左右に遠赤線ヒータを配置し、ヒータは定着ベルトの長さ以上の範囲を加熱する。
・定着ベルトが所定の温度になるように遠赤ヒータの温度設定をする。
・定着ベルトの実体温度が360℃になるように遠赤ヒータ温度を設定する。
・焼成時間は30分間。
以上のようにして製造された定着ベルトの摺動面(内周面)における弾性仕事率を測定したところ、室温23℃の条件下においては弾性仕事率が70.0%であり、165℃の加熱条件下においては弾性仕事率が60.2%であった。この場合、いずれの温度条件下においても、弾性仕事率が定着ベルトの耐摩耗性向上の基準となる上記55%以上となった。
また、定着ベルトの弾性仕事率は、定着ベルトの焼成条件を変更することにより調整可能である。以下、他の焼成条件の例を示す。
<焼成>
・定着ベルトの実体温度が280℃になるように遠赤線ヒータ温度を設定する。
・焼成時間は30分間。
・焼成温度と焼成時間以外の条件は、上記製造方法と同じである。
上記他の焼成条件によって製造した定着ベルトの摺動層(内周面)における弾性仕事率を測定したところ、室温23℃条件下においては弾性仕事率が60.4%であり、165℃の加熱条件下においては弾性仕事率が52.1%であった。
このように、定着ベルトの基材の材料としてポリイミドを用いる場合、ベルトの焼成条件を変更することにより、定着ベルトの摺動面(内周面)における弾性仕事率を適宜調整することが可能である。すなわち、定着ベルトの基材の材料としてポリイミドを用いることにより、定着ベルトの弾性仕事率を所望の値に容易に調整でき、定着ベルトの耐摩耗性の向上を実現可能である。なお、本発明に係る定着ベルトの材質は、ポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂でもよい。また、定着ベルトの記載をニッケル又はSUSなどの金属材料によって構成し、その基材に対してポリイミド又はPTFEなどを塗布してもよい。
<定着装置の他の実施形態>
また、本発明に係る定着装置は、図2Aに示す実施形態に限らず、図2B~図2Dに示すような実施形態であってもよい。以下、図2B~図2Dを参照して第2~第4の定着装置について説明する。
図2Bに示す第2の定着装置300は、定着ベルト310の加圧ローラ320側とは反対側に押圧ローラ390を有し、当該押圧ローラ390とヒータ330との間で定着ベルト310を挟んで加熱する。
また、ヒータ330は補助ステー351によって支持され、さらに、補助ステー351はステー350によって支持されている。ステー350の補助ステー351側とは反対側には、ニップ形成部材381が取り付けられ、ニップ形成部材381は、定着ベルト310を介して加圧ローラ320と当接して定着ニップSNを形成している。
図2Cに示す第3の定着装置300は、前述の押圧ローラ390が省略され、ヒータ330が定着ベルト310の曲率に合わせて円弧状に形成されている。このように、ヒータ330が円弧状に形成されていることにより、ヒータ330と定着ベルト310とのベルト回転方向の接触長さを長くでき、加熱効率を向上させることができる。その他の構成は、図2Bに示す第2の定着装置と同じである。
図2Dに示す第4の定着装置300は、加圧ローラ320の両側にそれぞれベルト311,312を有している。図2Dにおける左側のベルト311の内側には、ヒータ330、ヒータホルダ340、ステー350などが配置され、ベルト311を介してヒータ330が加圧ローラ320に押し当てられている。また、図2Dにおける右側のベルト312の内側には、ニップ形成部材381及びステー352が配置され、ベルト312を介してニップ形成部材381が加圧ローラ320に押し当てられることにより、定着ニップSNが形成されている。
<ヒータの構成>
本発明に係る定着装置が備えるヒータの構成としては、例えば、図10A~図10Cに示すような種々の構成を採用できる。いずれのタイプのヒータ330においても、抵抗発熱体370が、細長の金属製薄板部材を絶縁材料で被覆した基材341の上に形成される。
<シングルタイプの抵抗発熱体>
図10Aは、シングルタイプの抵抗発熱体370を示したもので、抵抗発熱体370は、基材341の長手方向に平行二列で直列線状に配置される。二列の各抵抗発熱体370の一端部は、基材341の一端側で長手方向に形成された小抵抗値の給電線379a,379cを介して給電用の電極370c,370dにそれぞれ接続される。この電極370c,370dは、交流電源を含む電力供給手段に接続される。
また、各抵抗発熱体370の他端部は、基材341の他端側で短手方向に形成された小抵抗値の給電線379bを介して、基材341の長手方向反対側に向けて折り返す形で接続される。各抵抗発熱体370、各電極370c,370d及び各給電線379a~379cは、例えばスクリーン印刷などによって所定の線幅及び厚みに形成される。
各抵抗発熱体370と各給電線379a~379cの表面は、薄いオーバーコート層ないし絶縁層385によって覆われている。当該絶縁層385によって、定着ベルトの摺動性が確保されると共に、定着ベルトと各抵抗発熱体370及び各給電線379a~379cとの間の絶縁性が確保される。絶縁層385に耐熱性ガラスを使用することにより、ヒータ330の摺動層における潤滑剤が抵抗発熱体370に含侵しないので、ニップ面での油膜切れを抑制できる。
<デュアルタイプの抵抗発熱体>
図10Bは、デュアルタイプの抵抗発熱体を示したもので、このタイプの抵抗発熱体は、長手方向中央の中央抵抗発熱体370-1と、この中央抵抗発熱体370-1の両側に配置された左右一対の端部抵抗発熱体370-2で構成されている。中央抵抗発熱体370-1と各端部抵抗発熱体370-2の対向する端部は、基材341の短手方向に対して傾斜して形成されている(平行四辺形)。当該傾斜により、中央抵抗発熱体370-1と端部抵抗発熱体370-2の間の隙間が、基材341の短手方向から見た場合に隙間が少なくなり、両者の間の温度落ち込みを低減できる。
中央抵抗発熱体370-1の一端が、給電線379dを介して左側の電極370eに接続され、他端が、給電線379fを介して右側の電極370hに接続されている。また、左側の端部抵抗発熱体370-2の一端が、給電線379dを介して左側の電極370eに接続され、他端が、給電線379eを介して左側の電極370fに接続されている。また、右側の端部抵抗部材370-2の一端が、給電線379dを介して左側の電極370eに接続され、他端が、給電線379hを介して右側の電極370gに接続されている。
上記のように、各抵抗発熱体370-1,370-2と各電極370e~370hが接続されていることにより、中央抵抗発熱体370-1と端部抵抗発熱体370-2は独立に発熱可能である。具体的に、各電極370e,370hに電圧を印加すると、中央抵抗発熱体370-1が発熱し、各電極370e,370fに電圧を印加すると、左側の端部抵抗発熱体370-2が発熱し、各電極370e,370gに電圧を印加すると、右側の端部抵抗発熱体370-2が発熱する。
また、各電極370f,370gを外部で並列に接続しておけば、左右の各端部抵抗発熱体370-2を同時に発熱させることができる。その場合、用紙が中央基準であれば温度は左右対称になるので、各端部抵抗発熱体370-2の両端それぞれに対してサーミスタを設けず、片方だけにサーミスタを設ければ良いのでコストダウンできる。
<マルチタイプの抵抗発熱体>
図10Cは、マルチタイプの抵抗発熱体を示したもので、このタイプの抵抗発熱体は、電気的に並列接続された複数のPTC素子371~378を有している。PTC素子は、正の温度抵抗係数を有する材料で構成され、温度が上昇すると抵抗値が上昇する特徴を有する。温度抵抗係数(TCR=Temperature Coefficient of Resistance)は、例えば1500PPM(parts per million)とすることができる。抵抗発熱体をこのようなマルチタイプとすることにより、温度を長手方向に均一化しやすくなるので、グリス粘度のばらつきを抑制し、長手方向におけるニップ面のグリス量を均一化できる。
各PTC素子371~378は、基材341の長手方向で直線状かつ等間隔に配置されている。各PTC素子371~378の短手方向両側には小抵抗値の給電線370a,370bが直線状に互いに平行に配設され、これら給電線370a,370bに各PTC素子371~378の両端が接続されている。そして、各PTC素子371~378は、各給電線370a,370bを介して、ヒータ330の長手方向両端側に配置された各電極370c,370dに接続されている。
PTC素子371~378は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材341に塗工し、その後、当該基材341を焼成することによって形成することができる。PTC素子371~378の材料は、前述したもの以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO)の抵抗材料を用いてもよい。
PTC素子371~378を使用することにより、小サイズ通紙などで非通紙領域のPTC素子の温度が上昇した際に、抵抗発熱体の温度抵抗依存性により、当該PTC素子の発熱量が低下し、温度上昇を抑制することができる。この特徴により、例えばPTC素子371~378の全幅よりも狭い紙(例えばPTC素子373~376の幅内)を印刷した場合、紙幅より外側のPTC素子は紙に熱を奪われないため温度が上昇する。するとそれらPTC素子の抵抗値が上昇する。ここで、PTC素子371~378にかかる電圧は一定なので、用紙幅より外側のPTC素子の出力は、抵抗値が上昇することにより相対的に低下し、端部温度上昇が抑制される。
図10Cに示す例とは異なり、複数のPTC素子371~378を電気的に直列接続することもできる。しかしながら、複数のPTC素子371~378を直列接続すると、連続印刷において紙幅よりも外側の抵抗発熱体が温度上昇した場合、その温度上昇を抑制するには、印刷スピードを低下させる必要がある。これに対して、図10Cに示す例のように、複数のPTC素子371~378を電気的に並列接続した場合は、印刷スピードを維持したまま非通紙部温度上昇を抑制することができるため、生産性を維持できる利点がある。
また、定着ベルトは温度が高くなると強度が低下し摩耗しやすくなるが、抵抗発熱体を図10Cに示すようなマルチタイプとすることにより、小サイズ用紙通紙時における非通紙部の過昇温を抑制でき、結果的に定着ベルトの摩耗を抑制できる。さらに、潤滑剤の蒸発抑制効果も得られる。
各PTC素子371~378の形状は、図10C(a)に示す長方形のほか、図10C(b)に示すような長手方向の端部に段部を有する形状、あるいは、図10C(c)に示すような平行四辺形であってもよい。
図10C(b)に示す例においては、各PTC素子371~378の端部にL字状の切り欠きによる段部を形成し、当該段部が隣接するPTC素子の段部とオーバーラップしている。また、図10C(c)に示す例においては、各PTC素子371~378の端部に設けられた傾斜部が隣接するPTC素子の端部の傾斜部とオーバーラップしている。このように各PTC素子371~378の端部同士を互いにオーバーラップさせることにより、PTC素子同士の隙間における発熱量低下の影響を抑制できる。
図10Cに示す各例においては、電極370c,370dがPTC素子371~378を挟むように両側にそれぞれ配置されているが、電極370c,370dはPTC素子371~378の片側に配置されてもよい。その場合、長手方向におけるヒータ330の小型化を図れる。
また、各PTC素子371~378の形状は、図10Cに示すようなブロック状(長方形又は平行四辺形など)に限らず、所望の出力(抵抗値)を得るために線状のPTC素子を蛇行状に形成した形状であってもよい。
以上、本発明の実施形態について、ベルト装置の一例である定着装置に対し本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明は、定着装置以外のベルト装置にも適用可能である。例えば、インクジェット式の画像形成装置において、インクが付着した用紙をベルトによって搬送しながら加熱して乾燥させる乾燥装置(ベルト装置)などに対して本発明を適用することも可能である。
また、上述の実施形態においては、定着ベルトとヒータとの間の摺動箇所における摩耗及び異音の発生を抑制する場合を例に説明したが、本発明は、図2C又は図2Dに示されるニップ形成部材381とベルトとの間の摺動箇所にも適用可能である。すなわち、本発明において、ベルトに対して相対的に摺動する摺動部材は、ヒータに限らず、ニップ形成部材などを含む種々の摺動部材であってもよい。
100 画像形成装置
300 定着装置(ベルト装置)
310 定着ベルト(ベルト)
320 加圧ローラ(加圧部材)
330 ヒータ(加熱源、摺動部材)
370 抵抗発熱体(発熱体)
SN 定着ニップ(ニップ部)
特開2009-14893号公報

Claims (10)

  1. 回転可能な無端状のベルトと、
    前記ベルトの内周面に対して相対的に摺動する摺動部材と、
    多孔質弾性体を有すると共に前記ベルトを介して前記摺動部材に接触し前記ベルトとの間にニップ部を形成する加圧部材と、
    前記ベルトの内周面と前記摺動部材との間に介在する潤滑剤と、
    を備えるベルト装置であって、
    前記摺動部材に対して摺動する前記ベルトの摺動面の弾性仕事率が55%以上であることを特徴とするベルト装置。
  2. 前記ベルトの摺動面の弾性仕事率が62%以上である請求項1に記載のベルト装置。
  3. 前記多孔質弾性体の熱伝導率は、0.15W/m・k以下である請求項1又は2に記載のベルト装置。
  4. 前記ベルトは、ポリイミドを含む基材を有する請求項1から3のいずれか1項に記載のベルト装置。
  5. 前記ベルトは、基材と、基材よりも外周側に設けられる表層と、を有し、前記表層と前記基材との間に弾性層を有しない請求項1から4のいずれか1項に記載のベルト装置。
  6. 前記潤滑剤は、フッ素グリス又はシリコーンオイルを含む請求項1から5のいずれか1項に記載のベルト装置。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載のベルト装置と、
    前記ベルト装置のベルト及び加圧部材の少なくとも一方を加熱する加熱源と、
    を備えることを特徴とする定着装置。
  8. 前記加熱源は、前記ベルトの内周面に対して相対的に摺動する摺動部材である請求項7に記載の定着装置。
  9. 前記加熱源は、前記加熱源の長手方向に渡って複数配列されると共に互いに独立して発熱制御可能な発熱体を有する請求項7又は8に記載の定着装置。
  10. 請求項1から6のいずれか1項に記載のベルト装置、又は請求項7から9のいずれか1項に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
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