JP2004339245A - グリース組成物及び転動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】高速高温条件下においても優れた性能を有するグリース組成物、及び、優れた潤滑性を有し高温下においても長寿命な転動装置を提供する。
【解決手段】玉軸受1の空隙部内に、ジウレア化合物及びフッ素樹脂を増ちょう剤として含有し、合成油及びパーフルオロポリエーテル油を基油として含有するグリース組成物Gを充填した。
このジウレア化合物は、シクロヘキシルアミンとジイソシアネートとの反応により得られるものを主成分としている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高速高温条件下においても優れた性能を有し、高速高温条件下で使用される転動装置の寿命を向上させることが可能なグリース組成物に関する。また、本発明は、優れた潤滑性を有し高温下においても長寿命な転動装置に係り、特に、オルタネータ,電磁クラッチ等の自動車電装部品や、アイドラプーリ等の自動車エンジン補機のように、高速高温条件下で使用される機器の回転部位や摺動部位に好適に使用可能な転動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車(乗用車)は小型軽量化や居住空間の拡大が望まれていることから、エンジンルーム空間の縮小が余儀なくされており、そのため電装部品やエンジン補機の小型軽量化がより一層進められている。このことに加えて、静粛性の向上が望まれエンジンルームの密閉化が進んでいるため、エンジンルーム内の高温化が促進されている。そのため、前記各部品には高温に耐える性質も必要とされてきている。例えば、電動ファンモータ用軸受は、従来は130〜150℃の軸受温度で使用されていたが、近年では180〜200℃の高温に耐えることが必要とされてきている。
【0003】
150℃以上の高温環境下で使用される軸受に対しては、従来は、例えば特許第2977624号公報に示されるように、合成油系潤滑油にリチウム系石けん及びウレア化合物を混合したグリースを軸受内部に封入することで対応してきた。しかしながら、このようなグリースであっても160℃以上の高温下では早期に焼付きを生じるので、耐熱性のより高いグリースが必要とされている。例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を増ちょう剤としパーフルオロポリエーテル油(PFPE油)を基油としたフッ素系グリースは耐熱性が優れているので、このフッ素系グリースを充填した転がり軸受は160℃以上の高温環境下でも使用可能である。
【0004】
【特許文献1】
特許第2977624号公報
【特許文献2】
特開平11−181465号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようなフッ素系グリースは、一般的なグリースに配合される添加剤を添加することが難しく、潤滑性,防錆性,及び金属腐食を防ぐ性能に劣る傾向がある。さらに、フッ素系グリースは、合成油系グリースに比べて5〜20倍程度高価であるという問題点も有している。
【0006】
また、特開平11−181465号公報には、ウレア系グリースにフッ素油を配合して耐熱性を向上させたグリース組成物が記載されている。しかしながら、ウレア系グリースの基油である鉱油又は合成油はフッ素油との親和性が乏しいので、前記グリース組成物は離油度が大きく、高速で回転する部品用の軸受に用いるにはさらなる改良が必要であった。
【0007】
そこで、本発明は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、高速高温条件下においても優れた性能を有するグリース組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、優れた潤滑性を有し高温下においても長寿命な転動装置を提供することを併せて課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1のグリース組成物は、基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物において、前記増ちょう剤を、下記の化学式(I)で表されるジウレア化合物とフッ素樹脂とで構成したことを特徴とする。
【0009】
【化2】
Figure 2004339245
【0010】
なお、化学式(I)中のRは、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基を表し、R及びRは脂環式炭化水素基を表す。
このような構成のグリース組成物は、従来のフッ素系グリースと比較して安価であるとともに、高速高温条件下においても優れた性能を有し、高速高温条件下で使用される転動装置の寿命を向上させることが可能である。
【0011】
また、本発明に係る請求項2のグリース組成物は、請求項1に記載のグリース組成物において、前記化学式(I)中のR及びRが炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であるジウレア化合物と、前記化学式(I)中のRが脂環式炭化水素基でRが炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であるジウレア化合物と、の少なくとも一方を前記増ちょう剤としてさらに含有しており、全てのジウレア化合物が有するR,Rにおける炭素数6〜12の芳香族炭化水素基の割合が60モル%未満であることを特徴とする。
【0012】
全てのジウレア化合物が有するR,Rにおける炭素数6〜12の芳香族炭化水素基の割合が60モル%以上であると、高温下におけるグリース組成物の流動性に問題が生じるため、長時間の使用に耐えられないおそれがある。
さらに、本発明に係る請求項3のグリース組成物は、請求項1又は請求項2に記載のグリース組成物において、前記脂環式炭化水素基をシクロヘキシル基又は炭素数7〜12のアルキルシクロヘキシル基としたことを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明に係る請求項4のグリース組成物は、請求項1〜3のいずれかに記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤を前記ジウレア化合物30〜80質量%と前記フッ素樹脂70〜20質量%とで構成したことを特徴とする。ジウレア化合物が30質量%未満であるとフッ素樹脂は70質量%超過となるので、グリース組成物が高コストとなる。一方、ジウレア化合物が80質量%超過でフッ素樹脂が20質量%未満であると、グリース組成物の耐熱性が不十分となる。このような問題がより生じにくくするためには、ジウレア化合物30〜60質量%とフッ素樹脂70〜40質量%とで増ちょう剤を構成することがより好ましい。
【0014】
さらに、本発明に係る請求項5のグリース組成物は、請求項1〜4のいずれかに記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤の含有量を組成物全体の5〜40質量%としたことを特徴とする。
5質量%未満であるとグリース状態を維持することが困難となり、40質量%超過であると、グリース組成物が硬化しすぎて十分な潤滑性を発揮することが困難となる。ただし、グリース組成物の混和ちょう度を考慮すると、増ちょう剤の含有量は組成物全体の10〜30質量%とすることがより好ましい。
【0015】
さらに、本発明に係る請求項6のグリース組成物は、請求項1〜5のいずれかに記載のグリース組成物において、前記基油を、ジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種10〜90質量%と、パーフルオロポリエーテル油90〜10質量%と、で構成したことを特徴とする。
【0016】
ジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種を基油として含有していることから、種々の添加剤を添加することができる。よって、前記グリース組成物は、潤滑性,防錆性,及び金属腐食を防ぐ性能に優れている。また、ジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種を基油として含有し、ジウレア化合物を増ちょう剤として含有していることから、前記グリース組成物はフッ素系グリースと比較して安価である。
【0017】
ジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種が10質量%未満であると、グリース組成物に添加剤を添加した場合に添加効果が十分に得られない。そして、ジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種が10質量%未満であるとパーフルオロポリエーテル油は90質量%超過となるので、グリース組成物が高コストとなる。
【0018】
一方、ジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種が90質量%超過で、パーフルオロポリエーテル油が10質量%未満であると、グリース組成物の耐熱性が不十分となる。
このような問題がより生じにくくするためには、ジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種30〜80質量%と、パーフルオロポリエーテル油70〜20質量%と、で前記基油を構成することがより好ましい。
【0019】
なお、基油におけるジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種とパーフルオロポリエーテル油との比率は、増ちょう剤におけるジウレア化合物とフッ素樹脂との比率に、ほぼ一致させることがより好ましい。
さらに、本発明に係る請求項7のグリース組成物は、請求項6に記載のグリース組成物において、前記ジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種の40℃における動粘度を20〜500mm/sとし、前記パーフルオロポリエーテル油の40℃における動粘度を20〜500mm/sとしたことを特徴とする。
【0020】
両者の40℃における動粘度が500mm/sを超えると、該グリース組成物を充填した転動装置のトルクが大きくなる。また、低温での流動性が不十分となって、転動装置を低温下で起動する際に異音が発生するおそれがある。
ただし、動粘度が20mm/s未満であると、蒸発損失や潤滑性の問題から適当ではない。すなわち、基油の粘度が低すぎると、高温において例えば軸受の回転中に軌道面と転動体との金属接触を避けるのに十分な潤滑油膜の形成が困難となる。
【0021】
このような問題がより生じにくくするためには、両者の40℃における動粘度は、30〜400mm/sとすることがより好ましい。
さらに、本発明に係る請求項8のグリース組成物は、請求項6に記載のグリース組成物において、前記パーフルオロポリエーテル油を、40℃における動粘度が20〜190mm/sである直鎖状のパーフルオロポリエーテル油20〜80質量%と、40℃における動粘度が50〜500mm/sである分岐鎖状のパーフルオロポリエーテル油80〜20質量%と、で構成したことを特徴とする。
【0022】
直鎖状のパーフルオロポリエーテル油の40℃における動粘度が190mm/sを超えると、該グリース組成物を充填した転動装置のトルクが大きくなる。また、低温での流動性が不十分となって、転動装置を低温下で起動する際に異音が発生するおそれがある。一方、40℃における動粘度が20mm/s未満であると、蒸発損失や潤滑性の問題から適当ではない。
【0023】
また、分岐鎖状のパーフルオロポリエーテル油の40℃における動粘度が500mm/sを超えると、該グリース組成物を充填した転動装置のトルクが大きくなる。一方、40℃における動粘度が50mm/s未満であると、耐焼付き性の問題、すなわち、高温において油膜が形成されにくくなるため焼付きが生じやすくなるという問題から適当ではない。
【0024】
さらに、両者の混合物における直鎖状のパーフルオロポリエーテル油の割合が80質量%を超えると、耐焼付き性の問題から適当ではなく、20質量%未満であると、低温での流動性が不十分となり適当ではない。
さらに、本発明に係る請求項9のグリース組成物は、請求項8に記載のグリース組成物において、前記ジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種の40℃における動粘度を20〜500mm/sとし、前記直鎖状のパーフルオロポリエーテル油と前記分岐鎖状のパーフルオロポリエーテル油とを混合したパーフルオロポリエーテル油の40℃における動粘度を23〜350mm/sとしたことを特徴とする。
【0025】
ジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種の40℃における動粘度が500mm/sを超え、パーフルオロポリエーテル油(2種を混合したもの)の40℃における動粘度が350mm/sを超えると、該グリース組成物を充填した転動装置のトルクが大きくなる。また、低温での流動性が不十分となって、転動装置を低温下で起動する際に異音が発生するおそれがある。
【0026】
ただし、ジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種の40℃における動粘度が20mm/s未満で、パーフルオロポリエーテル油(2種を混合したもの)の40℃における動粘度が23mm/s未満であると、蒸発損失や潤滑性の問題から適当ではない。すなわち、基油の粘度が低すぎると、高温において例えば軸受の回転中に軌道面と転動体との金属接触を避けるのに十分な潤滑油膜の形成が困難となる。
【0027】
このような問題がより生じにくくするためには、前記両者の40℃における動粘度は、30〜300mm/sとすることがより好ましい。
さらに、本発明に係る請求項10のグリース組成物は、請求項1〜9のいずれかに記載のグリース組成物において、混和ちょう度を220〜385としたことを特徴とする。
【0028】
混和ちょう度が220未満であると、グリース組成物が硬すぎるため、該グリース組成物を充填した転動装置のトルク性能が低下する。また、385を超えると転動装置からのグリース組成物の漏れ量が多くなる。
さらに、本発明に係る請求項11の転動装置は、外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材と前記外方部材との間に形成され前記転動体が配設された空隙部内に、請求項1〜10のいずれかに記載のグリース組成物を充填したことを特徴とする。
【0029】
このような構成の転動装置は、優れた潤滑性を有し高温下においても長寿命である。
以下に、本発明のグリース組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
〔ジウレア化合物について〕
本発明のグリース組成物の増ちょう剤には、ジウレア化合物とフッ素樹脂との両方を使用する必要がある。なお、本発明の目的を損なわない程度の量であれば、他種の増ちょう剤を併用してもよい。
【0030】
本発明において増ちょう剤として使用されるジウレア化合物は、前述の化学式(I)で表される化合物であるが、Rは炭素数6〜15の芳香族炭化水素基であり、R及びRは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基の炭素数が前記下限値より小さいと、増ちょう剤が基油に分散しにくく、また、増ちょう剤と基油とが分離しやすくなる。一方、炭化水素基の炭素数が前記上限値より大きい増ちょう剤は、工業的に非現実的である。
【0031】
このようなジウレア化合物は、別途合成したものを基油に分散させてもよいし、基油中で合成することによって基油に分散させてもよい。ただし、後者の方法の方が、基油中に増ちょう剤を良好に分散させやすいので、工業的に製造する場合には有利である。
ジウレア化合物を基油中で合成する場合の合成方法は、特に限定されるものではないが、Rの芳香族炭化水素基を有するジイソシアネート1モルと、R,Rの炭化水素基を有するモノアミン2モルとを、反応させる方法が最も好ましい。
【0032】
前記ジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート,トリレンジイソシアネート,キシリレンジイソシアネート,ビフェニレンジイソシアネート,ジメチルジフェニレンジイソシアネート,又はこれらのアルキル基置換体等を好適に使用できる。
また、R,Rが脂環式炭化水素基である場合のモノアミンとしては、例えば、シクロプロピルアミン,シクロブチルアミン,シクロペンチルアミン,シクロヘキシルアミン,メチルシクロヘキシルアミン,エチルシクロヘキシルアミン,ジメチルシクロヘキシルアミン,ジエチルシクロヘキシルアミン,ブチルシクロヘキシルアミン,プロピルシクロヘキシルアミン,アミルシクロヘキシルアミン,シクロヘプチルアミン,シクロオクチルアミン,シクロノニルアミン等を好適に使用できる。
【0033】
さらに、R,Rが芳香族炭化水素基である場合のモノアミンとしては、例えば、アニリン,クロロアニリン,トルイジン,フェネチルアミン,ビフェニルアミン,ベンジルアミン,メチルベンジルアミン,フェニルイソプロピルアミン,フェニルヘキシルアミン等を好適に使用できる。
〔フッ素樹脂について〕
一方、もう一つの増ちょう剤であるフッ素樹脂の種類は特に限定されるものではないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や、テトラフルオロエチレンと全体又は一部分がフッ素化された他のエチレン系不飽和炭化水素モノマーとの共重合体(以降はテトラフルオロエチレン共重合体と記す)等が好ましい。
【0034】
このテトラフルオロエチレン共重合体としては、例えば、以下の▲1▼〜▲4▼に示すようなものがあげられる。
▲1▼パーフルオロアルキル−トリフルオロエチレンエーテル類、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロイソブテン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルキルエチレン類(例えばパーフルオロプロペン等)のうちの1種以上のコモノマーを、PTFEに0.01〜3モル%、好ましくは0.05〜0.5モル%共重合させた変性ポリテトラフルオロエチレン。
【0035】
▲2▼少なくとも1種のパーフルオロアルキルビニルエーテル(パーフルオロアルキル基は1〜6個の炭素を有している)を、0.5〜8モル%共重合させたテトラフルオロエチレン(TFE)熱可塑性共重合体。例としては、パーフルオロプロピルビニルエーテルとTFEとの共重合体、パーフルオロメチルビニルエーテルとTFEとの共重合体、パーフルオロエチルビニルエーテルとTFEとの共重合体等があげられる。
【0036】
▲3▼3〜8個の炭素を有するパーフルオロオレフィンを2〜20モル%共重合させたTFE熱可塑性共重合体。例としては、ヘキサフルオロプロペンとTFEとの共重合体等があげられる。なお、この共重合体には、5モル%未満であれば、トリフルオロエチレンエーテル構造を有する他のコモノマーを共重合体させてもよい。
【0037】
▲4▼パーフルオロメチルビニルエーテル(0.5〜13モル%)と、下記の式(II)〜式(IV)のフッ素化合物モノマーのうちの1種以上(0.05〜5モル%)と、を共重合させたTFE熱可塑性共重合体。
【0038】
【化3】
Figure 2004339245
【0039】
【化4】
Figure 2004339245
【0040】
【化5】
Figure 2004339245
【0041】
ただし、式(IV)中のRは、1〜5個の炭素を有するパーフルオロアルキル基で、CFが好ましい。また、X及びXは相互に独立して、1〜3個の炭素を有するパーフルオロアルキル基又はFで、CFが好ましい。
また、式(II)及び式(III )中のRは、下記の(i)〜(iii )のうちの少なくとも1つである。
【0042】
(i)2〜12個の炭素を有するパーフルオロアルキル基
(ii)下記式(V)のような化学構造を有するもの。ただし、式(V)中のrは1〜4の整数であり、r’は0〜3の整数である。
【0043】
【化6】
Figure 2004339245
【0044】
(iii )下記式(VI)のような化学構造を有するもの。
【0045】
【化7】
Figure 2004339245
【0046】
ただし、式(VI)中の構造単位(OCFX)と(OCFCFY)は、連鎖に沿って統計的に分布している。また、Tは1〜3個の炭素を有するパーフルオロアルキル基で、任意に1個のH又はClを有する。さらに、X及びYはF又はCFであり、Zは−CFX−又は−CFCFY−である。さらに、q及びq’は0〜10の整数で相互に同じか又は異なる数値であり、その場合のフッ素化合物モノマーの数平均分子量は200〜2000である。
【0047】
なお、▲1▼〜▲4▼には、分子式中の数値,共重合比,及び平均分子量について好適な数値範囲が前述のように規定されているが、これらの数値が前記範囲の下限値未満であると、グリース組成物をグリース状とするのに十分な増ちょう性がテトラフルオロエチレン共重合体に付与されない。また、前記範囲の上限値超過であると、グリース組成物が硬化して十分な潤滑性を発揮することが困難となる。
【0048】
〔基油について〕
本発明のグリース組成物の基油には、ジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種とパーフルオロポリエーテル油との両方を使用する必要がある。ただし、本発明の目的を損なわない程度の量であれば、他種の基油を併用してもよい。
前記ジアルキルジフェニルエーテル油とは、下記の化学式(VII)で表されるような化合物である。
【0049】
【化8】
Figure 2004339245
【0050】
なお、化学式(VII)中のRはアルキル基であり、R及びRの一方が水素原子で他方がRと同種又は異種のアルキル基である。これらのアルキル基はの直鎖状であることが好ましく、その炭素数は8〜20が好ましく、12〜14がより好ましい。
【0051】
また、エステル系合成油としては、ジエステル油,ポリオールエステル油,これらのコンプレックスエステル油,芳香族エステル油等をあげることができる。
ジエステル油としては、例えば、ジ−2−エチルヘキシルセバケート,ジオクチルアジペート,ジイソデシルアジペート,ジトリデシルアジペート等があげられ、ポリオールエステル油としては、例えば、トリメチロールプロパンカプリレート,ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート等があげられる。そして、芳香族エステル油としては、例えば、トリオクチルトリメリテート,トリデシルトリメリテート等のようなトリメリト酸エステルや、テトラオクチルピロメリテート等のようなピロメリト酸エステルがあげられる。
さらに、ポリα−オレフィン油とは、下記の化学式(VIII)で表されるような化合物である。
【0052】
【化9】
Figure 2004339245
【0053】
なお、化学式(VIII)中のRはアルキル基であり、同一分子中に2種以上のアルキル基が混在していてもよい。ただし、n−オクチル基が最も好ましく、化学式(VIII)中のnは3〜8が好ましい。
一方、本発明のグリース組成物に使用されるパーフルオロポリエーテル油の種類は特に限定されるものではなく、以下に示すようなフルオロオキシアルキレン構造単位から選択される少なくとも1種から構成されるものが好ましい。なお、式中のXはCF(CF−であり、このnは0〜4の整数である。
【0054】
【化10】
Figure 2004339245
【0055】
パーフルオロポリエーテル油が上記フルオロオキシアルキレン構造単位の2種以上から構成されている場合は、各構造単位は連鎖に沿って統計的に分布している。そして、その末端基は、CF−,C−,C−,CFCl(CF)CF−,CFCFClCF−,CFClCF−,CFCl−,CHF−,CFCHF−等のような、1個のH及び/又はClを任意に有するフルオロアルキル基である。
【0056】
このようなパーフルオロポリエーテル油には、例えば下記の化学式(IX)で表されるような直鎖状のものと、例えば下記の化学式(X)で表されるような分岐鎖状のものとがある。
【0057】
【化11】
Figure 2004339245
【0058】
【化12】
Figure 2004339245
【0059】
〔添加剤について〕
本発明のグリース組成物には、その各種性能をさらに向上させるために、所望により種々の添加剤を添加してもよい。使用される添加剤としては、例えば、酸化防止剤,防錆剤,極圧剤,油性剤,及び金属不活性化剤等があげられ、これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0060】
酸化防止剤としては、従来のグリース組成物に慣用される公知のものを問題なく使用することができる。例えば、フェニル−1−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛などである。
また、防錆剤としては、アルカリ金属,アルカリ土類金属等のスルホン酸塩、アルキルコハク酸エステル,アルケニルコハク酸エステル等のコハク酸誘導体、ソルビタンモノオレエート等の多価アルコールの部分エステルなどがあげられる。
【0061】
さらに、極圧剤としては、リン系極圧剤,ジチオリン酸亜鉛,有機モリブデン等があげられる。
さらに、油性剤としては、脂肪酸,動植物油等の油性向上剤があげられる。
さらに、金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール,亜硝酸ソーダ等があげられる。
【0062】
その他には、ベントン,シリカゲル等のゲル化剤、ポリメタクリレート,ポリイソブテン,ポリスチレン等の粘度指数向上剤等も使用可能である。
このような添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない程度の量であれば、特に限定されるものではない。
【0063】
なお、本発明のグリース組成物の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、ジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種を基油とし、ジウレア化合物を増ちょう剤とするジウレアグリースと、パーフルオロポリエーテル油を基油としフッ素樹脂を増ちょう剤とするフッ素グリースとを別々に製造し、これらを混合することにより製造してもよい。あるいは、ジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種とパーフルオロポリエーテル油とを混合した基油に、ジウレア化合物及びフッ素樹脂を増ちょう剤として添加することにより製造してもよい。
【0064】
このようなグリース組成物を備えた転動装置は、優れた潤滑性を有し高温下においても長寿命であるので、オルタネータ,電磁クラッチ等の自動車電装部品、アイドラプーリ等の自動車エンジン補機のように、高速高温条件下で使用される機器の回転部位や摺動部位に好適に使用可能である。
なお、本発明は、種々の転動装置に適用することができ、例えば、転がり軸受,ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等があげられる。
【0065】
本発明における前記内方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には内輪、同じくボールねじの場合にはねじ軸、同じくリニアガイド装置の場合には案内レール、同じく直動ベアリングの場合には軸をそれぞれ意味する。また、前記外方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には外輪、同じくボールねじの場合にはナット、同じくリニアガイド装置の場合にはスライダ、同じく直動ベアリングの場合には外筒をそれぞれ意味する。
【0066】
【発明の実施の形態】
本発明に係るグリース組成物及び転動装置の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る転動装置の一実施形態である玉軸受1の構造を示す縦断面図である。この玉軸受1は、内輪10と、外輪11と、内輪10と外輪11との間に転動自在に配設された複数の玉13と、複数の玉13を保持する保持器12と、外輪11に取り付けられた接触形のシール14,14と、で構成されている。また、内輪10と外輪11とシール14,14とで囲まれた軸受空間にはグリース組成物Gが充填され、シール14により玉軸受1内に密封されている。そして、このようなグリース組成物Gにより、前記両輪10,11の軌道面と玉13との接触面が潤滑されている。
【0067】
このグリース組成物Gは、20質量%の増ちょう剤と80質量%の基油とで構成されている。そして、増ちょう剤は、50質量%のジウレア化合物と50質量%のPTFEとで構成されており、基油は50質量%のジアルキルジフェニルエーテル油と50質量%のパーフルオロポリエーテル油(PFPE油)とで構成されている。このグリース組成物GはPTFEとPFPE油とを含有しているので、耐熱性が優れている。
【0068】
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
例えば、基油及び増ちょう剤の種類は上記のものに限定されるものではなく、また、グリース組成物Gには各種添加剤を添加してもよい。
また、本実施形態においては転動装置の例として深溝玉軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
【0069】
また、本発明は、転がり軸受に限らず、他の種類の様々な転動装置に対して適用することができる。例えば、ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等である。
次に、上記のグリース組成物Gとほぼ同様な構成の20種(実施例1〜14及び比較例1〜6)のグリース組成物について、ちょう度測定,防錆性試験,焼付き性試験,グリース漏れ性試験を行った。
【0070】
実施例1〜14及び比較例1〜6のグリース組成物の構成は表1〜4に示す通りであり、ジウレア化合物及びフッ素樹脂(PTFE又はコポリマー)からなる増ちょう剤と、合成油(ジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種)及びPFPE油からなる基油と、を含有している(比較例1,2,4,及び5を除く)。そして、添加剤として、グリース組成物全体の1.0質量%のアミン系酸化防止剤と、0.5質量%のカルシウムスルフォネート系防錆剤と、0.05質量%のベンゾトリアゾール系金属不活性化剤と、を含有している。
【0071】
【表1】
Figure 2004339245
【0072】
【表2】
Figure 2004339245
【0073】
【表3】
Figure 2004339245
【0074】
【表4】
Figure 2004339245
【0075】
なお、表1〜4に記載された基油及び増ちょう剤の含有量は、基油と増ちょう剤の合計量を100とした場合の値であって、上記添加剤については考慮されていない。また、増ちょう剤の種類及び基油の種類の欄に記載された数値は、増ちょう剤全体及び基油全体における各成分の量比(質量%)を示している。
以下に、表1〜4に記載されたグリース組成物の各成分について説明する。
【0076】
・脂環式ジウレア:シクロヘキシルアミンと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとの反応により得られるジウレア化合物
・芳香族ジウレア:トルイジンと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとの反応により得られるジウレア化合物
・コポリマー:フッ化ビニリデンとヘキサフルオロイソブチレンのコポリマー(モル比は1:1)
・ジアルキルジフェニルエーテル油1(ADPE油1):40℃における動粘度が100mm/sのもの
・ジアルキルジフェニルエーテル油2(ADPE油2):40℃における動粘度が32mm/sのもの
・ポリオールエステル油(POE油):40℃における動粘度が70mm/sのもの
・芳香族エステル油(AE油):40℃における動粘度が100mm/sのもの
・ポリα−オレフィン油(PAO油):40℃における動粘度が70mm/sのもの
・PFPE油1:直鎖状のPFPE油で、40℃における動粘度が190mm/sのもの
・PFPE油2:分岐鎖状のPFPE油で、40℃における動粘度が400mm/sのもの
次に、各試験方法及び試験結果について説明する。
【0077】
〔ちょう度測定について〕
JIS K2220に準拠して混和ちょう度の測定を行った。
結果を表1〜4に併せて示す。実施例1〜14のグリース組成物は良好な混和ちょう度であったのに対して、比較例6は増ちょう剤の含有量が多すぎるため混和ちょう度が小さかった。また、比較例5は基油としてPFPE油のみを使用したため、グリース状とならなかった。
【0078】
〔防錆性試験について〕
内径17mm,外径47mm,幅14mmのゴムシール付き深溝玉軸受(図1と同様の構成である)に、実施例1〜14及び比較例1〜6のグリース組成物を軸受空間容積の50%を占めるように充填した。
回転速度1800min−1で30秒間慣らし運転(回転)した後、軸受内部に0.5質量%の塩水を0.5ml注入し、再び回転速度1800min−1で30秒間慣らし運転した。次いで、80℃,100%RHに調整された恒温恒湿槽にこの玉軸受を48時間静置した後、玉軸受を分解して軌道面に発生している錆の状況を肉眼で観察した。そして、以下のようなランクに評価した。
【0079】
#7:錆の発生なし
#6:シミ状の微小な錆あり
#5:直径0.3mm以下の点状の錆あり
#4:直径1.0mm以下の錆あり
#3:直径5.0mm以下の錆あり
#2:直径10.0mm以下の錆あり
#1:軌道面のほぼ全面に錆が発生
なお、#7〜#5を防錆性良好とし、#4〜#1を防錆性不良とした。
【0080】
結果を表1〜4に併せて示す。実施例1〜14のグリース組成物は良好な防錆性を示した。したがって、実施例1〜14のグリース組成物は、雨水等と接触しやすく錆が発生しやすい過酷な環境下で使用される軸受にも好適に用いることができる。それに対して、比較例1は合成油を含有していないため(すなわち、通常のフッ素グリースであるため)防錆性が不良であった。
【0081】
〔焼付き性試験について〕
内径8mm,外径22mm,幅7mmの鉄シールド付き深溝玉軸受(図1とほぼ同様の構造である)に、実施例1〜14及び比較例1〜6のグリース組成物を軸受空間容積の50%を占めるように充填し、図2に示すようなASTM D 1741の軸受寿命試験機に類似の試験機に装着した。
【0082】
そして、軸受温度180℃、アキシアル荷重59Nの条件下で3000min−1の回転速度で回転させ(その他の条件はASTM D 1741に準拠した)、焼付きが生じて外輪の温度が190℃以上に上昇するまでの時間を寿命とした。そして、3000時間回転させても190℃以上に上昇しなかった場合は、試験を打ち切った。該回転試験は1種の軸受につき4個行い、その平均値を試験結果とした。
【0083】
結果を表1〜4に併せて示す。実施例1〜14のグリース組成物は、いずれも1000時間以上という良好な寿命を示した。それに対して、比較例2はフッ素樹脂とPFPE油を含有していないため(すなわち、通常のジウレアグリースであるため)、高温での耐焼付き性が劣っていた。また、比較例3は、全ジウレア化合物中の脂環式ジウレアの割合が少ないため、すなわち、全ジウレア化合物が有する官能基(前述の化学式(I)におけるR,R)における脂環式炭化水素基の割合が少ないため、高温での耐焼付き性が不十分であった。さらに、比較例4はPFPE油を含有していないため、高温での耐焼付き性が不十分であった。
【0084】
〔グリース漏れ性試験について〕
内径17mm,外径40mm,幅12mmのゴムシール付き深溝玉軸受(図1と同様の構成である)に、実施例1〜14及び比較例1〜6のグリース組成物を軸受空間容積の35%を占めるように充填した。そして、外輪温度180℃、アキシアル荷重200Nの条件下で内輪を14500min−1の回転速度で20時間回転させ、回転中に軸受から漏洩したグリース組成物の質量を測定した。
【0085】
グリース組成物の漏れ量が、充填したグリース組成物の量の10質量%以下であった場合を合格とした。なお、該試験は1種の軸受につき4個行い、その平均値を試験結果とした。
試験結果を表1〜4に併せて示す。実施例1〜14のグリース組成物は漏洩した量は少なく、すべて合格であった。
【0086】
なお、実施例1〜4及び比較例3のグリース組成物の焼付き性試験の結果をグラフ化したものを、図3に示す。このグラフの横軸は、全ジウレア化合物が有する官能基(前述の化学式(I)におけるR,R)における脂環式炭化水素基の割合を示している。
このグラフから分かるように、全ジウレア化合物が有する官能基における脂環式炭化水素基の割合が40〜100モル%の場合(すなわち、芳香族炭化水素基の割合が60〜0モル%の場合)には、焼付き寿命が優れていた。
【0087】
また、実施例6のグリース組成物において増ちょう剤のうちのPTFEの割合を種々変更したものを用意して、それらについて防錆性試験,焼付き性試験,及びグリース漏れ性試験を行った。なお、これらのグリース組成物においては、増ちょう剤のうちのPTFEの割合に応じて、基油のうちのPFPE油の割合も変化させた。各試験の結果をグラフ化したものを、図4及び図5に示す。
【0088】
これらのグラフから分かるように、増ちょう剤のうちのPTFEの割合が20〜70質量%の場合(すなわち、ジウレア化合物の割合は80〜30質量%)には、防錆性及び焼付き寿命がいずれも優れており、グリース漏れ量は少なかった。
次に、基油の一部であるパーフルオロポリエーテル油を、直鎖状のものと分岐鎖状のものとの混合物としたグリース組成物の例について説明する。
【0089】
前述のグリース組成物Gとほぼ同様な構成の20種(実施例21〜35,比較例11〜13,及び参考例1,2)のグリース組成物について、ちょう度測定,焼付き性試験,低温トルク試験を行った。
実施例21〜35,比較例11〜13,及び参考例1,2のグリース組成物の構成は表5〜8に示す通りであり、ジウレア化合物及びフッ素樹脂(PTFE又はコポリマー)からなる増ちょう剤と、合成油(ジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種)及びPFPE油からなる基油と、を含有している(比較例11,12を除く)。そして、添加剤として、グリース組成物全体の1.0質量%のアミン系酸化防止剤と、0.5質量%のカルシウムスルフォネート系防錆剤と、0.05質量%のベンゾトリアゾール系金属不活性化剤と、を含有している。
【0090】
【表5】
Figure 2004339245
【0091】
【表6】
Figure 2004339245
【0092】
【表7】
Figure 2004339245
【0093】
【表8】
Figure 2004339245
【0094】
なお、表5〜8に記載された基油及び増ちょう剤の含有量は、基油と増ちょう剤の合計量を100とした場合の値であって、上記添加剤については考慮されていない。
以下に、表5〜8に記載されたグリース組成物の各成分について説明する。
・脂環式ジウレア:シクロヘキシルアミンと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとの反応により得られるジウレア化合物
・芳香族ジウレア:トルイジンと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとの反応により得られるジウレア化合物
・コポリマー:フッ化ビニリデンとヘキサフルオロイソブチレンのコポリマー(モル比は1:1)
・ジアルキルジフェニルエーテル油(ADPE油):40℃における動粘度が100mm/sのもの
・ポリオールエステル油(POE油):40℃における動粘度が70mm/sのもの
・芳香族エステル油(AE油):40℃における動粘度が97mm/sのもの
・ポリα−オレフィン油(PAO油):40℃における動粘度が70mm/sのもの
・直鎖PFPE油:直鎖状のPFPE油で、40℃における動粘度が157mm/sのもの
・分岐鎖PFPE油:分岐直鎖状のPFPE油で、40℃における動粘度が400mm/sのもの
次に、各試験方法及び試験結果について説明する。
【0095】
〔ちょう度測定について〕
JIS K2220に準拠して混和ちょう度の測定を行った。
結果を表5〜8に併せて示す。実施例21〜35のグリース組成物は良好な混和ちょう度であったのに対して、比較例13は増ちょう剤の含有量が多すぎるため混和ちょう度が小さかった。
【0096】
〔焼付き性試験について〕
内径8mm,外径22mm,幅7mmの鉄シールド付き深溝玉軸受(図1とほぼ同様の構造であるが、保持器はプレス保持器である)に、20種(実施例21〜35,比較例11〜13,及び参考例1,2)のグリース組成物を軸受空間容積の50%を占めるように充填し、図2に示すようなASTM D 1741の軸受寿命試験機に類似の試験機に装着した。
【0097】
そして、軸受温度180℃、アキシアル荷重59Nの条件下で3000min−1の回転速度で回転させ(その他の条件はASTM D 1741に準拠した)、焼付きが生じて外輪の温度が190℃以上に上昇するまでの時間を寿命とした。該回転試験は1種の軸受につき4個行い、その平均値を試験結果とし、1500時間以上であった場合を合格とした。
【0098】
結果を表5〜8に併せて示す。実施例21〜35のグリース組成物は、いずれも良好な寿命を示した。それに対して、比較例12はフッ素樹脂とPFPE油を含有していないため(すなわち、通常のジウレアグリースであるため)、高温での耐焼付き性が劣っていた。また、参考例1は、分岐鎖状のPFPE油を含有していないため、高温での耐焼付き性が不十分であった。
【0099】
〔低温トルク試験について〕
内径8mm,外径22mm,幅7mmの鋼シール付き深溝玉軸受(図1とほぼ同様の構造であるが、保持器はプレス保持器である)に、20種(実施例21〜35,比較例11〜13,及び参考例1,2)のグリース組成物を軸受空間容積の30%を占めるように充填した。この玉軸受を−40℃の高温槽内に4時間入れた後、内輪を100min−1の回転速度で10分間回転させ、回転時の玉軸受の動トルクを測定した。
【0100】
結果を表5〜8に併せて示す。なお、各表においては、動トルク値が20N・cm以下である場合を◎印、20N・cm超過且つ25N・cm以下である場合を○印、25N・cm超過である場合を×印で示してある。
実施例21〜35のグリース組成物は、いずれも動トルク値が25N・cm以下で、すべて合格であった。それに対して、比較例11のグリース組成物は、通常のフッ素グリースであるため、低温における動トルク値が大きかった。また、比較例13のグリース組成物は、グリース全体における増ちょう剤の量が多すぎるため、低温における動トルク値が大きかった。さらに、参考例2のグリース組成物は、直鎖状のPFPE油を含有していないため、低温における動トルク値が大きかった。
【0101】
【発明の効果】
以上のように、本発明のグリース組成物は、安価であるとともに、高速高温条件下においても優れた性能を有する。また、本発明の転動装置は、優れた潤滑性を有し高温下においても長寿命である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る転動装置の一実施形態である玉軸受の構造を示す縦断面図である。
【図2】グリース組成物の焼付き性を評価する軸受寿命試験機の構成を示す断面図である。
【図3】全ジウレア化合物が有する官能基における脂環式炭化水素基の割合と、玉軸受の焼付き寿命と、の相関を示すグラフである。
【図4】増ちょう剤のうちのフッ素樹脂の割合と、玉軸受の焼付き寿命及びグリース組成物の防錆性と、の相関を示すグラフである。
【図5】増ちょう剤のうちのフッ素樹脂の割合と、玉軸受の焼付き寿命及びグリース漏れ量との相関を示すグラフである。
【符号の説明】
1 玉軸受
10 内輪
11 外輪
13 玉
G グリース組成物

Claims (11)

  1. 基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物において、前記増ちょう剤を、下記の化学式(I)で表されるジウレア化合物とフッ素樹脂とで構成したことを特徴とするグリース組成物。
    Figure 2004339245
    なお、化学式(I)中のRは、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基を表し、R及びRは脂環式炭化水素基を表す。
  2. 前記化学式(I)中のR及びRが炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であるジウレア化合物と、前記化学式(I)中のRが脂環式炭化水素基でRが炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であるジウレア化合物と、の少なくとも一方を前記増ちょう剤としてさらに含有しており、全てのジウレア化合物が有するR,Rにおける炭素数6〜12の芳香族炭化水素基の割合が60モル%未満であることを特徴とする請求項1に記載のグリース組成物。
  3. 前記脂環式炭化水素基をシクロヘキシル基又は炭素数7〜12のアルキルシクロヘキシル基としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグリース組成物。
  4. 前記増ちょう剤を前記ジウレア化合物30〜80質量%と前記フッ素樹脂70〜20質量%とで構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のグリース組成物。
  5. 前記増ちょう剤の含有量を組成物全体の5〜40質量%としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のグリース組成物。
  6. 前記基油を、ジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種10〜90質量%と、パーフルオロポリエーテル油90〜10質量%と、で構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のグリース組成物。
  7. 前記ジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種の40℃における動粘度を20〜500mm/sとし、前記パーフルオロポリエーテル油の40℃における動粘度を20〜500mm/sとしたことを特徴とする請求項6に記載のグリース組成物。
  8. 前記パーフルオロポリエーテル油を、40℃における動粘度が20〜190mm/sである直鎖状のパーフルオロポリエーテル油20〜80質量%と、40℃における動粘度が50〜500mm/sである分岐鎖状のパーフルオロポリエーテル油80〜20質量%と、で構成したことを特徴とする請求項6に記載のグリース組成物。
  9. 前記ジアルキルジフェニルエーテル油,エステル系合成油,及びポリα−オレフィン油のうちの少なくとも一種の40℃における動粘度を20〜500mm/sとし、前記直鎖状のパーフルオロポリエーテル油と前記分岐鎖状のパーフルオロポリエーテル油とを混合したパーフルオロポリエーテル油の40℃における動粘度を23〜350mm/sとしたことを特徴とする請求項8に記載のグリース組成物。
  10. 混和ちょう度を220〜385としたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のグリース組成物。
  11. 外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材と前記外方部材との間に形成され前記転動体が配設された空隙部内に、請求項1〜10のいずれかに記載のグリース組成物を充填したことを特徴とする転動装置。
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